説明

多関節ロボットおよびロボット関節構造

【課題】バックラッシュによるガタツキを抑制することにより、関節部を精度よく動作させることが可能な多関節ロボットを提供する。
【解決手段】この多関節ロボット100は、骨格フレーム21側に設けられ、互いに対向するように配置されるとともに、曲げ軸L4を回動中心として互いに独立して回動可能な一対の入力側傘歯車62と、一対の入力側傘歯車62の両方に噛み合うように骨格フレーム31側に設けられ、一対の入力側傘歯車62が回動することによって、回動軸L3を回動中心として回動可能であるとともに曲げ軸L4回りに揺動可能な出力側傘歯車63と、一対の入力側傘歯車62の両方に噛み合った状態で出力側傘歯車63を回動軸L3回りの一方の回動方向に付勢する定荷重バネ64とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットおよびロボット関節構造に関し、特に、傘歯車を含む関節部を備えた多関節ロボットおよびロボット関節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傘歯車を含む関節部を備えたロボット関節構造が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、第1の方向に対向して配置された一組(一対)の傘歯車と、第1の方向に直交する第2の方向に対向して配置された他の組の一対の傘歯車とを含む関節部を備えた複合駆動装置(ロボット関節構造)が開示されている。この複合駆動装置では、一方の組の一対の傘歯車は、第1軸を回動中心として互いに独立して回動可能に構成されている。また、他方の組の一対の傘歯車は、一方の組の傘歯車の両方に噛み合っており、一方の組の傘歯車が回動することによって、第1軸に直交する第2軸を回動中心として回動可能であるとともに第1軸回りに揺動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−197492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の複合駆動装置(ロボット関節構造)では、一方の組の一対の傘歯車を回動させることによって、これらに噛み合った状態の他方の組の一対の傘歯車を第2軸を回動中心として回動させるとともに第1軸回りに揺動させる構成であるので、一方の組の傘歯車と他方の組の傘歯車との間に噛み合い部のバックラッシュ(隙間)によるガタツキが生じるという不都合がある。このため、上記特許文献1の複合駆動装置(ロボット関節構造)では、関節部を精度よく動作させることができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、バックラッシュによるガタツキを抑制することにより、関節部を精度よく動作させることが可能な多関節ロボットおよびロボット関節構造を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における多関節ロボットは、隣接するリンク部の間に配置され、隣接するリンク部を第1軸を回動中心として屈曲された状態および第1軸に略直交する第2軸を回動中心として回動された状態になるように動作可能な複数の関節部を備え、複数の関節部のうちの少なくとも1つの関節部は、隣接するリンク部のうちの一方のリンク部側に設けられ、互いに対向するように配置されるとともに、第1軸を回動中心として互いに独立して回動可能な第1傘歯車および第2傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車の両方に噛み合うように隣接するリンク部のうちの他方のリンク部側に設けられ、第1傘歯車および第2傘歯車が回動することによって、第2軸を回動中心として回動可能であるとともに第1軸回りに揺動可能な第3傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車の両方に噛み合った状態で第3傘歯車を第2軸回りの一方の回動方向に付勢する付勢部とを含む。
【0008】
この発明の第1の局面による多関節ロボットでは、上記のように、複数の関節部のうちの少なくとも1つの関節部に、第2軸を回動中心として回動可能であるとともに第1軸回りに揺動可能な第3傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車の両方に噛み合った状態で第3傘歯車を第2軸回りの一方の回動方向に付勢する付勢部とを設けることによって、付勢部により、第3傘歯車の歯部が第1傘歯車および第2傘歯車の歯部に対して第2軸回りの一方側から押し当てられるので、第3傘歯車の歯部が第1傘歯車および第2傘歯車の歯部間で移動するのを抑制することができる。これにより、第1傘歯車および第2傘歯車と第3傘歯車との間のバックラッシュによるガタツキが抑制されるので、関節部を精度よく動作させることができる。すなわち、この多関節ロボットでは、第1傘歯車および第2傘歯車と第3傘歯車との間のバックラッシュによるガタツキを抑制することにより、関節部を精度よく動作させることができる。また、関節部を精度よく動作させることによって、関節部により移動されるリンク部の位置決め精度を向上させることができる。また、付勢部により、第3傘歯車を第2軸回りの一方の回動方向に付勢するだけで、第3傘歯車が第2軸を回動中心として回動する動作および第1軸回りに揺動する動作の両方の動作に対してガタツキが抑制されるので、これらの動作に対してガタツキを抑制するための機構をそれぞれ別個に設ける場合に比べて、より簡易な構成で関節部の動作精度を向上させることができる。また、複数の関節部を有する多関節ロボットでは、各関節部における誤差が積み重なって先端部に設けられたハンド部の位置決め誤差が大きくなるので、各関節部を精度よく動作させることが可能な本発明は多関節ロボットに適用する場合に特に有効である。
【0009】
この発明の第2の局面におけるロボット関節構造は、隣接するリンク部の間に配置され、隣接するリンク部を第1軸を回動中心として屈曲された状態および第1軸に略直交する第2軸を回動中心として回動された状態になるように動作可能な関節部を備え、関節部は、隣接するリンク部のうちの一方のリンク部側に設けられ、互いに対向するように配置されるとともに、第1軸を回動中心として互いに独立して回動可能な第1傘歯車および第2傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車の両方に噛み合うように隣接するリンク部のうちの他方のリンク部側に設けられ、第1傘歯車および第2傘歯車が回動することによって、第2軸を回動中心として回動可能であるとともに第1軸回りに揺動可能な第3傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車の両方に噛み合った状態で第3傘歯車を第2軸回りの一方の回動方向に付勢する付勢部とを含む。
【0010】
この発明の第2の局面によるロボット関節構造では、上記のように、関節部に、第2軸を回動中心として回動可能であるとともに第1軸回りに揺動可能な第3傘歯車と、第1傘歯車および第2傘歯車の両方に噛み合った状態で第3傘歯車を第2軸回りの一方の回動方向に付勢する付勢部とを設けることによって、付勢部により、第3傘歯車の歯部が第1傘歯車および第2傘歯車の歯部に対して第2軸回りの一方側から押し当てられるので、第3傘歯車の歯部が第1傘歯車および第2傘歯車の歯部間で移動するのを抑制することができる。これにより、第1傘歯車および第2傘歯車と第3傘歯車との間のバックラッシュによるガタツキが抑制されるので、関節部を精度よく動作させることができる。すなわち、第1傘歯車および第2傘歯車と第3傘歯車との間のバックラッシュによるガタツキを抑制することにより、関節部を精度よく動作させることができる。また、関節部を精度よく動作させることによって、関節部により移動されるリンク部の位置決め精度を向上させることができる。また、付勢部により、第3傘歯車を第2軸回りの一方の回動方向に付勢するだけで、第3傘歯車が第2軸を回動中心として回動する動作および第1軸回りに揺動する動作の両方の動作に対してガタツキが抑制されるので、これらの動作に対してガタツキを抑制するための機構をそれぞれ別個に設ける場合に比べて、より簡易な構成で関節部の動作精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による多関節ロボットの全体構成を示した正面図である。
【図2】本発明の一実施形態による多関節ロボットの肩間接部を示した部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による多関節ロボットの肘間接部および手首関節部を示した部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による多関節ロボットの肘間接部を示した拡大断面図である。
【図5】図4の200−200線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
まず、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態による多関節ロボット100の構成について説明する。
【0014】
多関節ロボット100は、図1に示すように、2本のアーム部1および2を備える人型ロボットである。また、多関節ロボット100は、2本のアーム部1および2が取り付けられる本体部3と、本体部3を支持する支持部4とを備えている。
【0015】
2本のアーム部1および2は、互いに同様の構成を有している。また、2本のアーム部1および2は、本体部3の側面(X方向の側面)に取り付けられており、本体部3を挟んで左右対称に形成されている。以下では、多関節ロボット100を正面側から見て、右側(X1方向側)に配置されたアーム部1の構成について説明し、左側に配置されたアーム部2についてはその説明を省略する。
【0016】
アーム部1は、図1〜図3に示すように、本体部3側から先端に向かって、順に、肩部10と、上腕部20と、下腕部30と、ハンド部40とを備えている。また、アーム部1は、肩部10および上腕部20の間に配置される肩関節部50と、上腕部20および下腕部30の間に配置される肘関節部60と、下腕部30およびハンド部40の間に配置される手首関節部70とを備えている。なお、肩関節部50、肘関節部60および手首関節部70は、本発明の「関節部」および「ロボット関節構造」の一例である。
【0017】
肩部10は、図1〜図3に示すように、一方端部が本体部3の側面に固定的に取り付けられている。また、肩部10は、他方端部が肩関節部50を介して上腕部20の一方端部に接続されている。また、肩部10は、図2および図3に示すように、骨格フレーム11と、骨格フレーム11を覆うように設けられたカバーフレーム12とから主として構成されている。骨格フレーム11は、図2に示すように、中空の円筒形状に形成されている。具体的には、骨格フレーム11は、本体部3から肩関節部50に向かって延びる貫通孔111を有している。貫通孔111は、後述するように、配線110を配置可能に構成されている。また、骨格フレーム11は、本体部3側の端部にフランジ部112を有し、フランジ部112を介して本体部3に固定的に取り付けられている。また、骨格フレーム11は、本体部3側よりも肩関節部50側の方が外形寸法および内径寸法が小さくなるように形成されている。また、骨格フレーム11とカバーフレーム12との間には、一対の軸受部101が配置されており、骨格フレーム11およびカバーフレーム12は、一対の軸受部101により、X方向に延びる回動軸L1を回動中心として互いに回動可能に支持されている。また、軸受部101は、骨格フレーム11を取り囲むように円環状に形成されている。なお、骨格フレーム11は、本発明の「リンク部」の一例であり、カバーフレーム12は、本発明の「カバー部」の一例である。また、貫通孔111は、本発明の「中空部」の一例であり、回動軸L1は、本発明の「第2軸」の一例である。
【0018】
また、カバーフレーム12は、円筒形状に形成されている。また、カバーフレーム12は、図2に示すように、肩関節部50の後述の2つのアクチュエータ51を挿入可能なように、2つの円形形状の開口部121を有している。また、開口部121は、アクチュエータ51を支持する後述の支持部213も挿入可能に構成されている。
【0019】
上腕部20は、図2に示すように、骨格フレーム21から主として構成されている。骨格フレーム21は、中空の円筒形状に形成されている。具体的には、骨格フレーム21は、肩関節部50側から肘関節部60側に向かって延びる貫通孔211を有している。また、骨格フレーム21は、肩関節部50側よりも肘関節部60側の方が外形寸法および内径寸法が小さくなるように形成されている。また、骨格フレーム21は、図2に示すように、肩関節部50の後述の2つのアクチュエータ51を挿入可能なように、2つの円形形状の開口部212を有している。具体的には、2つの開口部212は、2つのアクチュエータ51を支持する2つの支持部213にそれぞれ形成されている。骨格フレーム21は、支持部213により、開口部212に挿入されたアクチュエータ51を固定的に支持するように構成されている。支持部213は、内側に向かって突出するように形成されている。また、支持部213は、カバーフレーム12の開口部121に挿入されている。また、内側に突出した2つの支持部213の外側面とカバーフレーム12の2つの開口部121の内側面との間には、一対の軸受部102が配置されており、骨格フレーム21およびカバーフレーム12は、一対の軸受部102により、図2のY方向に延びる曲げ軸L2を回動中心として互いに回動可能に支持されている。また、軸受部102は、アクチュエータ51を取り囲むように円環状に形成されている。なお、骨格フレーム21は、本発明の「リンク部」の一例であり、曲げ軸L2は、「第1軸」の一例である。
【0020】
また、骨格フレーム21は、図3に示すように、肘関節部60の後述の2つのアクチュエータ61を挿入可能なように、2つの円形形状の開口部214を有している。具体的には、2つの開口部214は、2つのアクチュエータ61を支持する2つの支持部215にそれぞれ形成されている。また、骨格フレーム21は、支持部215により、開口部214に挿入されたアクチュエータ61を固定的に支持するように構成されている。支持部215は、内側に向かって突出するように形成されている。
【0021】
下腕部30は、一方端部が肘関節部60を介して上腕部20の他方端部に接続されている。また、下腕部30は、図2および図3に示すように、骨格フレーム31と、骨格フレーム31の肘関節部60近傍を覆うように設けられたカバーフレーム32とから主として構成されている。骨格フレーム31は、中空の円筒形状に形成されている。具体的には、骨格フレーム31は、肘関節部60から手首関節部70に向かって延びる貫通孔311を有している。貫通孔311は、後述するように、配線110を配置可能に構成されている。また、骨格フレーム31は、手首関節部70側よりも肘関節部60側の方が外形寸法および内径寸法が小さくなるように形成されている。また、骨格フレーム31とカバーフレーム32との間には、一対の軸受部103が配置されており、骨格フレーム31およびカバーフレーム32は、一対の軸受部103により、図3のX方向に延びる回動軸L3を回動中心として互いに回動可能に支持されている。また、軸受部103は、骨格フレーム31を取り囲むように円環状に形成されている。なお、骨格フレーム31は、本発明の「リンク部」の一例であり、カバーフレーム32は、本発明の「カバー部」の一例である。また、貫通孔311は、本発明の「中空部」の一例である。
【0022】
また、骨格フレーム31は、図3に示すように、手首関節部70の後述の2つのアクチュエータ71を挿入可能なように、2つの円形形状の開口部312を有している。具体的には、2つの開口部312は、2つのアクチュエータ71を支持する2つの支持部313にそれぞれ形成されている。また、骨格フレーム31は、支持部313により、開口部312に挿入されたアクチュエータ71を固定的に支持するように構成されている。支持部313は、内側に向かって突出するように形成されている。
【0023】
また、カバーフレーム32は、円筒形状に形成されている。また、カバーフレーム32は、図3に示すように、肘関節部60の後述の2つのアクチュエータ61を挿入可能なように、2つの円形形状の開口部321を有している。また、開口部321は、アクチュエータ61を支持する上述の支持部215も挿入可能に構成されている。
【0024】
また、開口部321に挿入された支持部215の外側面とカバーフレーム32の開口部321の内側面との間には、一対の軸受部104が配置されており、骨格フレーム21およびカバーフレーム32は、一対の軸受部104により、図3のZ方向に延びる曲げ軸L4を回動中心として互いに回動可能に支持されている。また、軸受部104は、アクチュエータ61を取り囲むように円環状に形成されている。
【0025】
ハンド部40は、一方端部が手首関節部70を介して下腕部30の他方端部に接続されている。また、ハンド部40は、図2および図3に示すように、骨格フレーム41と、骨格フレーム41の手首関節部70近傍を覆うように設けられたカバーフレーム42と、骨格フレーム41の他方端部側に設けられたハンド本体部43とから主として構成されている。骨格フレーム41は、中空の円筒形状に形成されている。具体的には、骨格フレーム41は、手首関節部70から先端部に向かって延びる貫通孔411を有している。貫通孔411は、後述するように、配線110を配置可能に構成されている。また、骨格フレーム41は、ハンド本体部43側よりも手首関節部70側の方が外形寸法および内径寸法が小さくなるように形成されている。また、骨格フレーム41とカバーフレーム42との間には、一対の軸受部105が配置されており、骨格フレーム41およびカバーフレーム42は、一対の軸受部105により、図3のX方向に延びる回動軸L5を回動中心として互いに回動可能に支持されている。また、一対の軸受部105は、骨格フレーム41を取り囲むように円環状に形成されている。なお、骨格フレーム41は、本発明の「リンク部」の一例であり、カバーフレーム42は、本発明の「カバー部」の一例である。また、貫通孔411は、本発明の「中空部」の一例である。
【0026】
また、カバーフレーム42は、円筒形状に形成されている。また、カバーフレーム42は、図3に示すように、手首関節部70の後述の2つのアクチュエータ71を挿入可能なように、2つの円形形状の開口部421を有している。また、開口部421は、アクチュエータ71を支持する上述の支持部313も挿入可能に構成されている。
【0027】
また、開口部421に挿入された支持部313の外側面とカバーフレーム42の開口部421の内側面との間には、一対の軸受部106が配置されており、下腕部30の骨格フレーム31およびカバーフレーム42は、一対の軸受部106により、図3のZ方向に延びる曲げ軸L6を回動中心として互いに回動可能に支持されている。また、軸受部106は、アクチュエータ71を取り囲むように円環状に形成されている。
【0028】
次に、本実施形態の関節部(50、60および70)の構成について説明する。本実施形態では、肩関節部50、肘関節部60および手首関節部70は、略同様の構成を有するため、ここでは、肘関節部60について詳細に説明し、肩関節部50および手首関節部70については、肘関節部60と異なる点についてのみ説明する。
【0029】
肘関節部60は、図4に示すように、一対のアクチュエータ61と、一対の入力側傘歯車62と、1つの出力側傘歯車63とから主として構成されている。また、肘関節部60は、隣接する上腕部20の骨格フレーム21と下腕部30の骨格フレーム31とを、曲げ軸L4を回動中心として屈曲された状態になるように動作可能に構成されている。また、肘関節部60は、隣接する上腕部20の骨格フレーム21と下腕部30の骨格フレーム31とを、回動軸L3を回動中心として回動された状態になるように動作可能である。なお、一対の入力側傘歯車62は、本発明の「第1傘歯車」および「第2傘歯車」の一例であり、出力側傘歯車63は、本発明の「第3傘歯車」の一例である。また、回動軸L3および曲げ軸L4は、それぞれ、本発明の「第2軸」および「第1軸」の一例である。
【0030】
一対のアクチュエータ61は、図示しない駆動源となるモータと減速機と回転角度を検出する回転位置検出器とにより主として構成されている。また、一対のアクチュエータ61は、回動軸L3に対して線対称な位置に配置されている。また、アクチュエータ61は、円形状の外側面を有しているとともに、アクチュエータ61の外側面が骨格フレーム21の支持部215に形成された開口部214に挿入された状態で支持部215により固定的に支持されている。また、一対のアクチュエータ61は、それぞれに取り付けられた入力側傘歯車62を曲げ軸L4を回動中心として互いに独立して回動可能である。また、アクチュエータ61は、曲げ軸L4が通る位置に曲げ軸L4に沿って延びる貫通孔611を有している。
【0031】
一対の入力側傘歯車62は、一対のアクチュエータ61に取り付けられている。すなわち、一対の入力側傘歯車62は、上腕部20側に設けられている。また、一対の入力側傘歯車62は、一対のアクチュエータ61により、曲げ軸L4を回動中心として互いに独立して回動可能に構成されている。また、一対の入力側傘歯車62は、Z方向に対向するように配置されている。また、一対の入力側傘歯車62は、回動軸L3に対して線対称な位置に配置されている。また、入力側傘歯車62は、曲げ軸L4が通る位置に曲げ軸L4に沿って延びる貫通孔621を有している。すなわち、アクチュエータ61の貫通孔611と入力側傘歯車62の貫通孔621とは、曲げ軸L4が延びる方向(図4のZ方向)に連続するように設けられている。
【0032】
出力側傘歯車63は、一対の入力側傘歯車62の両方に噛み合うように配置されている。これにより、出力側傘歯車63は、一対の入力側傘歯車62が同じ方向に同じ速度で回動される場合には、回動軸L3回りに回動されることなく曲げ軸L4回りに揺動される。また、出力側傘歯車63は、一対の入力側傘歯車62が互いに反対方向に同じ速度で回動される場合には、曲げ軸L4回りに揺動されることなく回動軸L3回りに回動される。また、本実施形態の肘関節部60では、一対の入力側傘歯車62の回動方向および回動速度を調整することによって、回動軸L3回りの回動動作および曲げ軸L4回りの揺動動作を組み合わせて出力側傘歯車63を動作することが可能である。また、出力側傘歯車63は、下腕部30の骨格フレーム31の肘関節部60側の端部に固定的に取り付けられている。これにより、骨格フレーム31は、出力側傘歯車63の動作に伴って、回動軸L3回りに回動されるとともに曲げ軸L4回りに揺動される。すなわち、肘関節部60は、出力側傘歯車63を曲げ軸L4回りに揺動することによって、隣接する上腕部20の骨格フレーム21と下腕部30の骨格フレーム31とを、曲げ軸L4を回動中心として屈曲された状態にすることが可能である。この際、下腕部30のカバーフレーム32は、骨格フレーム31と共に曲げ軸L4回りに揺動される。また、肘関節部60は、出力側傘歯車63を回動軸L3回りに回動することによって、隣接する上腕部20の骨格フレーム21と下腕部30の骨格フレーム31とを回動軸L3を回動中心として回動された状態にすることが可能である。この際、下腕部30のカバーフレーム32は、回動軸L3回りには回動されない。
【0033】
また、出力側傘歯車63は、回動軸L3が通る位置に回動軸L3に沿って延びる貫通孔631を有している。また、出力側傘歯車63の貫通孔631と骨格フレーム31の貫通孔311とは、回動軸L3が延びる方向(図4のX方向)に連続するように設けられている。また、出力側傘歯車63は、半径方向の大きさ(直径)が入力側傘歯車62の半径方向の大きさ(直径)よりも小さくなるように構成されている。また、出力側傘歯車63は、半径方向の大きさ(直径)が入力側傘歯車62よりも小さい分歯数も少なくなっている。本実施形態の肘関節部60のように、回動軸L3回りの回動方向に曲げ軸L4回りよりも小さい負荷しか掛からないと想定される場合には、上記のように、入力側傘歯車62に対して出力側傘歯車63の歯数を少なくすることができるので、その分、出力側傘歯車63の半径方向の大きさ(直径)を小さくすることが可能である。これにより、肘関節部60が幅方向(図4のZ方向)に大きくなるのを抑制することが可能である。
【0034】
ここで、本実施形態では、出力側傘歯車63は、回動軸L3回りの一方の方向に常に付勢されている。具体的には、肘関節部60には定荷重バネ64が設けられており、出力側傘歯車63は、定荷重バネ64により、一対の入力側傘歯車62に噛み合った状態で回動軸L3回りの一方の方向に一定の付勢力で付勢されている。定荷重バネ64は、変位量に拘わらず略一定の大きさの付勢力で出力側傘歯車63を付勢するように構成されている。また、定荷重バネ64は、下腕部30の骨格フレーム31の貫通孔311を取り囲むように骨格フレーム31の外周部に配置されている。詳細には、定荷重バネ64は、下腕部30の骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間に配置されている。より詳細には、定荷重バネ64は、下腕部30の骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間に配置された一対の軸受部103の間に配置されている。また、定荷重バネ64は、一対の軸受部103の半径方向の厚み範囲内に設けられている。なお、定荷重バネ64は、本発明の「付勢部」の一例である。
【0035】
また、定荷重バネ64は、図4および図5に示すように、骨格フレーム31を取り巻くようにぜんまい状に巻回された板バネからなる。また、定荷重バネ64は、一方端部が骨格フレーム31の外面に固定部641を介して取り付けられている。また、定荷重バネ64は、他方端部がカバーフレーム32の内面に固定部642を介して取り付けられている。すなわち、定荷重バネ64は、骨格フレーム31がカバーフレーム32に対して回動軸L3回りの一方方向に回動するように骨格フレーム31を付勢している。これにより、定荷重バネ64は、骨格フレーム31を介して回動軸L3回りの一方方向に出力側傘歯車63を一定の付勢力(定荷重)で付勢している。また、定荷重バネ64は、アクチュエータ61の駆動力よりも小さい一定の付勢力で出力側傘歯車63を付勢している。具体的には、定荷重バネ64は、アクチュエータ61の駆動力の略1/10倍の大きさの一定の付勢力で出力側傘歯車63を付勢している。
【0036】
また、肘関節部60には、アクチュエータや各種センサなどに接続される配線110が配置されている。具体的には、ハンド部40側から延びる配線110は、骨格フレーム31の貫通孔311内で回動軸L3に沿って配置されている。また、ハンド部40側から延びる配線110は、出力側傘歯車63の貫通孔631を介して、回動軸L3と曲げ軸L4とが交差する点の近傍を通るように配置されている。また、この配線110は、入力側傘歯車62の貫通孔621およびアクチュエータ61の貫通孔611を介して肘関節部60の外側を通るように配置されている。また、配線110は、入力側傘歯車62の貫通孔621内およびアクチュエータ61の貫通孔611内において曲げ軸L4に沿うように配置されている。これにより、肘関節部60が回動軸L3回りおよび曲げ軸L4回りのいずれの方向に動作する場合でも、配線110の変位量を小さくすることができる。また、このように配線110を配置すれば、肘関節部60の外側のみに配線110を配置する場合に比べて肘関節部60の周囲における配線110の配置スペースを小さくすることができるので、配線110を含む肘関節部60の周囲の必要スペースをコンパクトにすることができる。また、肘関節部60の外側に配置された配線110は、貫通孔216を介して骨格フレーム21の貫通孔211内に引き込まれる。このように、配線110を貫通孔内に配置することによって、配線110が損傷したり劣化したりするのを抑制することが可能である。また、アクチュエータ61に接続される配線110も、貫通孔216を介して骨格フレーム21の貫通孔211内に引き込まれる。また、肘関節部60の外側から貫通孔211内に引き込まれる配線110については、配線110を覆う図示しない配線カバーを設けることで保護することが可能である。この場合、肘関節部60の動作に伴う配線110の可動範囲が小さいので、配線カバーをコンパクトに構成することができる。
【0037】
次に、肩部10および上腕部20の間に配置される肩関節部50の構成について説明する。肩関節部50は、図2に示すように、一対のアクチュエータ51と、一対の入力側傘歯車52と、1つの出力側傘歯車53とから主として構成されている。また、肩関節部50は、隣接する肩部10の骨格フレーム11と上腕部20の骨格フレーム21とを、曲げ軸L2を回動中心として屈曲された状態になるように動作可能に構成されている。また、肩関節部50は、隣接する肩部10の骨格フレーム11と上腕部20の骨格フレーム21とを、回動軸L1を回動中心として回動された状態になるように動作可能である。また、一対のアクチュエータ51は、骨格フレーム21の支持部213に形成された開口部212に挿入された状態で支持部213により固定的に支持されている。また、一対の入力側傘歯車52は、一対のアクチュエータ51に取り付けられている。また、出力側傘歯車53は、一対の入力側傘歯車52の両方に噛み合った状態で、肩部10の骨格フレーム11の肩関節部50側の端部に固定的に取り付けられている。また、出力側傘歯車53は、定荷重バネ54により、一対の入力側傘歯車52に噛み合った状態で回動軸L1回りの一方の方向に一定の付勢力で付勢されている。定荷重バネ54は、肩部10の骨格フレーム11とカバーフレーム12との間の隙間で、かつ、一対の軸受部101の半径方向の厚み範囲内に設けられている。なお、一対の入力側傘歯車52は、本発明の「第1傘歯車」および「第2傘歯車」の一例であり、出力側傘歯車53は、本発明の「第3傘歯車」の一例である。また、定荷重バネ54は、本発明の「付勢部」の一例である。
【0038】
また、肩関節部50の出力側傘歯車53は、上記肘関節部60とは異なり、半径方向の大きさ(直径)が入力側傘歯車52の半径方向の大きさ(直径)と略同じ大きさになるように構成されている。また、出力側傘歯車53は、入力側傘歯車52に対してギア比が略1/1になるように構成されている。これは、本実施形態の肩関節部50では、回動軸L1回りと曲げ軸L2回りとで最大負荷が略同じになることを想定しているためである。また、肘関節部60と比較して、入力側傘歯車52と出力側傘歯車53の位置関係が逆になっているのは、人型ロボットの肩部の関節の軸構成への適合性を考慮したためである。なお、肩関節部50においても、肘関節部60と同様に、入力側傘歯車52と出力側傘歯車53とを配置することも可能である。
【0039】
なお、肩関節部50のアクチュエータ51、入力側傘歯車52、出力側傘歯車53および定荷重バネ54は、それぞれ、肘関節部60のアクチュエータ61、入力側傘歯車62、出力側傘歯車63および定荷重バネ64に対応している。
【0040】
また、図3に示すように、肩関節部50には、肘関節部60側から延びる配線110と、アクチュエータ51に接続される配線110とが配置されている。具体的には、肘関節部60側から延びる配線110は、回動軸L1に沿って配置され、出力側傘歯車53の貫通孔を介して本体部3の内部に引き込まれる。また、アクチュエータ51に接続される配線110は、アクチュエータ51の貫通孔および入力側傘歯車52の貫通孔を介して肩関節部50の内部に引き込まれる。肩関節部50の内部に引き込まれた配線110は、回動軸L1と曲げ軸L2とが交差する点の近傍を通るように配置され、出力側傘歯車53の貫通孔を介して本体部3の内部に引き込まれる。
【0041】
次に、下腕部30およびハンド部40の間に配置される手首関節部70の構成について説明する。手首関節部70は、図3に示すように、一対のアクチュエータ71と、一対の入力側傘歯車72と、1つの出力側傘歯車73とから主として構成されている。また、手首関節部70は、隣接する下腕部30の骨格フレーム31とハンド部40の骨格フレーム41とを、曲げ軸L6を回動中心として屈曲された状態になるように動作可能に構成されている。また、手首関節部70は、隣接する下腕部30の骨格フレーム31とハンド部40の骨格フレーム41とを、回動軸L5を回動中心として回動された状態になるように動作可能である。また、一対のアクチュエータ71は、骨格フレーム31の支持部313に形成された開口部312に挿入された状態で支持部313により固定的に支持されている。また、一対の入力側傘歯車72は、一対のアクチュエータ71に取り付けられている。また、出力側傘歯車73は、一対の入力側傘歯車72の両方に噛み合った状態で、ハンド部40の骨格フレーム41の手首関節部70側の端部に固定的に取り付けられている。また、出力側傘歯車73は、定荷重バネ74により、一対の入力側傘歯車72に噛み合った状態で回動軸L5回りの一方の方向に一定の付勢力で付勢されている。定荷重バネ74は、ハンド部40の骨格フレーム41とカバーフレーム42との間の隙間で、かつ、一対の軸受部105の半径方向の厚み範囲内に設けられている。なお、一対の入力側傘歯車72は、本発明の「第1傘歯車」および「第2傘歯車」の一例であり、出力側傘歯車73は、本発明の「第3傘歯車」の一例である。また、定荷重バネ74は、本発明の「付勢部」の一例である。また、回動軸L5および曲げ軸L6は、それぞれ、本発明の「第2軸」および「第1軸」の一例である。
【0042】
また、手首関節部70の出力側傘歯車73は、上記肘関節部60と同様に、半径方向の大きさ(直径)が入力側傘歯車72の半径方向の大きさ(直径)よりも小さくなるように構成されている。
【0043】
なお、手首関節部70のアクチュエータ71、入力側傘歯車72、出力側傘歯車73および定荷重バネ74は、それぞれ、肘関節部60のアクチュエータ61、入力側傘歯車62、出力側傘歯車63および定荷重バネ64に対応している。
【0044】
また、図2に示すように、手首関節部70にも、肘関節部60と同様に、ハンド部40の先端部側から延びる配線110が配置されている。
【0045】
本実施形態では、上記のように、肘関節部60に、回動軸L3を回動中心として回動可能であるとともに曲げ軸L4回りに揺動可能な出力側傘歯車63と、一対の入力側傘歯車62の両方に噛み合った状態で出力側傘歯車63を回動軸L3回りの一方の回動方向に付勢する定荷重バネ64を設けることによって、定荷重バネ64により、出力側傘歯車63の歯部が一対の入力側傘歯車62の歯部に対して回動軸L3回りの一方側から押し当てられるので、出力側傘歯車63の歯部が一対の入力側傘歯車62の歯部間で移動するのを抑制することができる。これにより、一対の入力側傘歯車62と出力側傘歯車63との間のバックラッシュによるガタツキが抑制されるので、肘関節部60を精度よく動作させることができる。すなわち、一対の入力側傘歯車62と出力側傘歯車63との間のバックラッシュによるガタツキを抑制することにより、肘関節部60を精度よく動作させることができる。
【0046】
また、肘関節部60を精度よく動作させることによって、肘関節部60により移動される骨格フレーム31の位置決め精度を向上させることができる。また、定荷重バネ64により、出力側傘歯車63を回動軸L3回りの一方の回動方向に付勢するだけで、出力側傘歯車63が回動軸L3を回動中心として回動する動作および曲げ軸L4回りに揺動する動作の両方の動作に対してガタツキが抑制されるので、これらの動作に対してガタツキを抑制するための機構をそれぞれ別個に設ける場合に比べて、より簡易な構成で肘関節部60の動作精度を向上させることができる。また、複数の関節部(50、60および70)を有する多関節ロボット100では、各関節部における誤差が積み重なって先端部に設けられたハンド部40の位置決め誤差が大きくなるので、各関節部を精度よく動作させることが可能な本発明は多関節ロボットに適用する場合に特に有効である。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、定荷重バネ64を、骨格フレーム31の外周部に配置する。このように構成すれば、骨格フレーム31の内部に定荷重バネ64を配置するための領域を設ける必要がないので、骨格フレーム31の外形寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、定荷重バネ64を、骨格フレーム31の外周部で、かつ、骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間に配置する。このように構成すれば、骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間の領域を利用して定荷重バネ64が配置されるので、定荷重バネ64を配置するための専用の領域を設ける必要がない。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間に配置され、骨格フレーム31およびカバーフレーム32を互いに回動可能に支持する一対の軸受部103を設けるとともに、定荷重バネ64を、骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間で、かつ、一対の軸受部103の厚み範囲内に設ける。このように構成すれば、骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間の間隔(半径方向における隙間の大きさ)を大きくすることなく定荷重バネ64を設けることができるので、定荷重バネ64を設けることに起因して多関節ロボット100の外形寸法が大きくなるのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、定荷重バネ64の一方端部を骨格フレーム31に接続するとともに他方端部をカバーフレーム32に接続し、骨格フレーム31を介して出力側傘歯車63を回動軸L3回りの一方の回動方向に付勢するように定荷重バネ64を構成する。このように構成すれば、定荷重バネ64により、骨格フレーム31がカバーフレーム32に対して回動されるように付勢されるので、骨格フレーム31を介して容易に出力側傘歯車63を付勢することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、定荷重バネ64を、骨格フレーム31を取り巻くように巻回された板バネにより構成する。このように構成すれば、板バネからなる簡易な構成の定荷重バネ64により、容易に、出力側傘歯車63を回動軸L3回りの一方の回動方向に付勢することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、定荷重バネ64を、変位量に拘わらず略一定の大きさの付勢力で出力側傘歯車63を付勢するように構成する。このように構成すれば、出力側傘歯車63が回動軸L3回りに回動されることにより定荷重バネ64の変位量が変動する場合でも、出力側傘歯車63の歯部を一対の入力側傘歯車62の歯部に対して一定の付勢力により安定して押し付けることができるので、定荷重バネ64の変位量に拘わらず一対の入力側傘歯車62と出力側傘歯車63との間のバックラッシュによるガタツキを確実に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、骨格フレーム31に、配線110を配置可能な貫通孔311を設け、定荷重バネ64を、貫通孔311を取り囲むように骨格フレーム31とカバーフレーム32との間の隙間に配置する。このように構成すれば、貫通孔311に定荷重バネ64を配置する場合とは異なり、配線110を配置可能な領域を狭めることなく定荷重バネ64を配置することができるので、定荷重バネ64を設けた場合でも、骨格フレーム31の貫通孔311に容易に配線110を配置することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、定荷重バネ64を、一対のアクチュエータ61の駆動力よりも小さい付勢力により出力側傘歯車63を付勢するように構成する。このように構成すれば、一対のアクチュエータ61により、定荷重バネ64の付勢力に抗して一対の入力側傘歯車62を回動させることができるので、定荷重バネ64により出力側傘歯車63を付勢する構成でも、肘関節部60を容易に動作させることができる。
【0055】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0056】
たとえば、上記実施形態では、本発明の多関節ロボットを人型ロボットに適用する例について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の多関節ロボットをアーム部のみからなるロボットなど、人型ロボット以外のロボットに適用してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、肩関節部、肘関節部および手首関節部の全ての関節部に本発明の付勢部としての定荷重バネを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、肩関節部、肘関節部および手首関節部のいずれか1つまたは2つにだけ本発明の付勢部を設ける構成でもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、本発明の付勢部の一例として、板バネからなる定荷重バネを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、板バネ以外の付勢部であってもよいし、変位量に応じて付勢力が変動する付勢部であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
11、21、31、41 骨格フレーム(リンク部)
12、32、42 カバーフレーム(カバー部)
50 肩関節部(関節部)
52、62、72 入力側傘歯車(第1傘歯車および第2傘歯車)
53、63、73 出力側傘歯車(第3傘歯車)
54、64、74 定荷重バネ(付勢部)
60 肘関節部(関節部)
70 手首関節部(関節部)
100 多関節ロボット
101、103、105 軸受部
111、311、411 貫通孔(中空部)
L1、L3、L5 回動軸(第2軸)
L2、L4、L6 曲げ軸(第1軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するリンク部の間に配置され、前記隣接するリンク部を第1軸を回動中心として屈曲された状態および前記第1軸に略直交する第2軸を回動中心として回動された状態になるように動作可能な複数の関節部を備え、
前記複数の関節部のうちの少なくとも1つの関節部は、
前記隣接するリンク部のうちの一方のリンク部側に設けられ、互いに対向するように配置されるとともに、前記第1軸を回動中心として互いに独立して回動可能な第1傘歯車および第2傘歯車と、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車の両方に噛み合うように前記隣接するリンク部のうちの他方のリンク部側に設けられ、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車が回動することによって、前記第2軸を回動中心として回動可能であるとともに前記第1軸回りに揺動可能な第3傘歯車と、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車の両方に噛み合った状態で前記第3傘歯車を前記第2軸回りの一方の回動方向に付勢する付勢部とを含む、多関節ロボット。
【請求項2】
前記付勢部は、前記他方のリンク部の外周部に配置されている、請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項3】
前記他方のリンク部の少なくとも一部を覆うカバー部をさらに備え、
前記付勢部は、前記他方のリンク部の外周部で、かつ、前記他方のリンク部と前記カバー部との間の隙間に配置されている、請求項2に記載の多関節ロボット。
【請求項4】
前記他方のリンク部と前記カバー部との間の隙間に配置され、前記他方のリンク部および前記カバー部を互いに回動可能に支持する軸受部をさらに備え、
前記付勢部は、前記他方のリンク部と前記カバー部との間の隙間で、かつ、前記軸受部の厚み範囲内に設けられている、請求項3に記載の多関節ロボット。
【請求項5】
前記付勢部は、一方端部が前記他方のリンク部に接続されるとともに、他方端部が前記カバー部に接続されており、前記他方のリンク部を介して前記第3傘歯車を前記第2軸回りの一方の回動方向に付勢するように構成されている、請求項3または4に記載の多関節ロボット。
【請求項6】
前記付勢部は、前記他方のリンク部を取り巻くように巻回された板バネからなる、請求項3〜5のいずれか1項に記載の多関節ロボット。
【請求項7】
前記付勢部は、変位量に拘わらず略一定の大きさの付勢力で前記第3傘歯車を付勢する定荷重バネからなる、請求項6に記載の多関節ロボット。
【請求項8】
前記他方のリンク部は、配線を配置可能な中空部を有し、
前記付勢部は、前記中空部を取り囲むように前記他方のリンク部と前記カバー部との間の隙間に配置されている、請求項3〜7のいずれか1項に記載の多関節ロボット。
【請求項9】
前記第1傘歯車および前記第2傘歯車のそれぞれを回動する第1駆動源および第2駆動源をさらに備え、
前記付勢部は、前記第1駆動源および前記第2駆動源の駆動力よりも小さい付勢力により前記第3傘歯車を付勢するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多関節ロボット。
【請求項10】
隣接するリンク部の間に配置され、前記隣接するリンク部を第1軸を回動中心として屈曲された状態および前記第1軸に略直交する第2軸を回動中心として回動された状態になるように動作可能な関節部を備え、
前記関節部は、
前記隣接するリンク部のうちの一方のリンク部側に設けられ、互いに対向するように配置されるとともに、前記第1軸を回動中心として互いに独立して回動可能な第1傘歯車および第2傘歯車と、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車の両方に噛み合うように前記隣接するリンク部のうちの他方のリンク部側に設けられ、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車が回動することによって、前記第2軸を回動中心として回動可能であるとともに前記第1軸回りに揺動可能な第3傘歯車と、前記第1傘歯車および前記第2傘歯車の両方に噛み合った状態で前記第3傘歯車を前記第2軸回りの一方の回動方向に付勢する付勢部とを含む、ロボット関節構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121080(P2012−121080A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271830(P2010−271830)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】