説明

多関節ロボット

【課題】本発明はメンテナンスが容易な多関節ロボットを提供する。
【解決手段】搬送物を載置するハンド部8と、前記ハンド部8と連結され、少なくとも2つ以上の回転関節3、4、5を備え、前記ハンド部8を1方向に移動するように伸縮し、上下方向に対向するように配置された多関節アーム21、22と、上下に移動するようにコラム12に取り付けられた上下方向に移動する移動機構11と前記多関節アーム21、22とを連結する支持部材10と、前記コラム12の下端部に連結され、前記コラム12に取り付けられた前記多関節アーム21、22を旋回する台座13とからなる多関節ロボットにおいて、前記台座13を旋回させる減速機37の出力軸39の固定面が前記台座13を支持する前記軸受42の厚みの略中心に位置するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶用のガラス基板や半導体ウェハ等の薄板状のワークをストッカに出し入れする多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多関節ロボットしては、肩関節部の回転中心と台座の回転中心とをオフセットすることで台座を回動させる際に多関節ロボットの旋回半径を小さくするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
従来の多関節ロボット1は、図6に示すように関節部3,4,5により回転可能に連結されて回転駆動源よる回転力を伝達し所望の動作をさせるアーム2を二組備えてなるもので、二組のアーム2に設けられる基端の関節部3の回転中心軸を上下(または軸方向)に配置するように構成されている。
多関節ロボット1は、二組のアーム2を備え、一方のアーム駆動型装置2を供給用、他方を取り出し用とし、ワーク9の供給動作と別のワーク9の取り出し動作とを同時に行うことを可能としている。
また、従来の多関節ロボット1は、アーム2によりワーク9を保持するハンド部8は図中矢印Xで示すワーク9の取り出し・供給方向に直線移動可能であるように構成される。
また、従来の多関節ロボット1は、アーム2が設けられている支持部材10を上下に移動させる移動部材11(以下、上下移動機構11と呼ぶ)を備えて、アーム2の上下位置を調整可能としている。また、上下移動機構11の台座13は回動可能に設けられ、多関節ロボット1を旋回して向きを変えられるようにしている。
さらに、従来の多関節ロボット1では、図中矢印Yで示す方向、即ちハンド部8の移動方向と支持部材10の上下移動方向とのそれぞれに直交する方向に、台座13を基台14に対して移動可能に設けて上下移動機構11の位置を調整可能としている。
また、従来の多関節ロボット1に備えられる二組のアーム2は、例えば、複数の関節部を有するものであり、即ち多関節ロボット1は、水平多関節型ロボットとして構成される。本実施形態でのアーム2は、第一アーム6(以下、上腕6と呼ぶ)と、上腕6と連結される第二アーム7(以下、前腕7と呼ぶ)と、前腕7と連結されワーク9を保持するハンド部8とを備える。
上腕6の基端は、支持部材10に駆動軸を介して連結されて、回動可能な関節部3(以下、肩関節部3と呼ぶ)を構成する。この肩関節部3がアーム2の基端の関節部3となる。また、上腕6の先端と前腕7の基端とが駆動軸を介して連結されて、回動可能な関節部4(以下、肘関節部4と呼ぶ)を構成する。また、前腕7の先端とハンド部8とが駆動軸を介して連結されて、回動可能な関節部5(以下、ハンド関節部5と呼ぶ)を構成する。肩関節部3の回転中心軸が同軸上であるように、上下方向に対面するように配置する。
アーム2は、図示しない回転駆動源により肩関節部3と肘関節部4とハンド関節部5とを回動させて、ハンド部8をワーク取り出し・供給方向に移動させる。この際、アーム2では、その機構上、ハンド部8が一方向を向いて、上腕6と前腕7とを伸ばしきった伸長位置と、上腕6と前腕7とを折り畳んだ状態とした縮み位置との間を直線移動するように、伸縮動作を行う。
ここで、従来の多関節ロボット1では、図7に示すアーム2の縮み位置において、ハンド部8により保持されるワーク9の中心が、台座13の回転中心と一致するものとなるように設計されている。さらに、肩関節部4の回転中心と台座13の回転中心とをハンド部8の移動方向に対して直交方向にオフセットすることで台座13を回動させる際に多関節ロボット1の周囲に必要となる最小領域円15から肘関節部4やハンド部8が突出することがないようにして、多関節ロボット1の旋回半径を小さくすることができる。
また、従来の多関節ロボットでは、電動機の回転をベルトで差動減速機に伝達し、差動減速機の回転をベアリングで支持したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
従来の多関節ロボットの旋回構造は、図8に示すようにモータ102は、略円筒状をした回転部材104の外周部近傍に、倒立して取り付けてあり、その軸と減速機構103の入力に結合した駆動入力軸193とに装着してある歯付プーリ191、192と歯付ベルト109により回転駆動力を供給する働きをする。減速機構103は固定部材105に取り付けてあり、回転部材104の頂部はロボットの基台117とボルト116により取り付けられ、底部のベアリング112により固定部材105に対して回転自在保持されている。
【特許文献1】特開2001−274218(第4頁〜5頁、図1、図2)
【特許文献2】特開平2−160485号公報(第2頁〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液晶用のガラス基板や半導体ウェハ等の薄板状のワークをストッカに出し入れする多関節ロボットは大型化が進み、処理する基板の枚数も増えるとともに短時間で処理することが求められている。このためロボットには、基板を配置するストッカが天井に届くほどの高さになるまで設備自体が大型化するにも関わらず、ワークのストッカへの出し入れをするパスラインは、低く抑える必要がある。つまり、天井に届くほど高いパスラインから地を這うほど低いパスラインにすることで、ストッカにはより多くの基板を配置できるようになり、多関節ロボットには高さ方向を有効に利用できることが要求されている。
また、高速、高精度を実現することが大きな課題となっている。一方、大型化する設備は、周囲のクリーン度を清浄に保つために多額の設備投資が必要となっており、そのためにストッカにはより多くの基板を配置させ、処理することが望まれている。このためにも前述した高いパスラインから低いパスラインまで上下方向に移動できることが望まれる。
また、クリーン度に関しては、クリーン度を確保するために使用されるロボットは、ロボットの内部が露出しないように構成される必要がある。このため、使用されるロボットの駆動機構は、ロボット内部に配置されることが要求される。
また、液晶基板や半導体ウェハの生産枚数は、年々多くなっており、生産性を上げるためにロボットには、搬送スループットが求められている。しかしながら、ロボットは機械部品を含んでいるためにメンテナンスが必要であり、メンテナンス時間もスループットに関わる大きなファクタとなっており、容易にメンテナンスできることが望まれている。メンテンスに関しては、当然ながら動力を伝達する部位の交換作業が発生する。最も交換作業が多いのは、減速機の交換となっている。この減速機の交換をいかに容易にするかが課題となっていた。特に、台座が旋回する際には、コラムやアームやハンドのモーメントが駆動する減速機に作用することになるために、台座の旋回軸の減速機は損傷する可能性が高かった。
このような課題に対して、従来の多関節ロボットは、コラムとコラムに取り付けられたアームおよびハンドを旋回する台座の旋回機構は、減速機が台座に直結した構成となっていたために、メンテナンスする際に内蔵されている減速機を取り替えるためには、コラムを別に支持して作業する必要あり、容易にメンテナンスすることができないために、減速機の交換作業時間がかかり、生産性が低下するという問題が生じていた。
また、従来の多関節ロボットは、アーム基端が上下に同軸に配置された構造となっている。このために、アーム基端に配置された機構部品であるモータやプーリの交換を行うためには、片方のアームを取り外した後に交換する等の方法を取らざるを得ないため、メンテナンス時間が膨大に係り、生産性が低下するという問題が生じていた。
また、従来の多関節ロボットの旋回機構の構造では、一般的な垂直多関節ロボットのように旋回機構の上にアームが配置された構造であれば、底部にベアリングを配置した構成でも上部のモーメント荷重が大きく作用することはないので問題とならないが、台座を介して側部のコラムを旋回させると大きなモーメント荷重が作用することになる。そうすると、減速機の出力平面とベアリングの支持平面が一致していないので、旋回時のモーメント荷重は大きく作用することになり、減速機だけでなくベアリングも損傷することになり、メンテナンスが難しくなるといった問題が生じていた。
また、ワークのパスラインを低くする必要があるが、図8に示された旋回機構では内部に不要な空間があり、これを従来の多関節ロボットに組み合わせても低いパスラインを形成することはできないために、ストッカ下部へのワークの出し入れができないという問題が生じていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、メンテナンスが容易で低いパスラインを実現できる多関節ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、搬送物を載置するハンド部と、前記ハンド部と連結され、少なくとも2つ以上の回転関節を備え、前記ハンド部を1方向に移動するように伸縮し、上下方向に対向するように配置された多関節アームと、上下に移動するようにコラムに取り付けられた上下方向に移動する移動機構と前記多関節アームとを連結する支持部材と、前記コラムの下端部に連結され、前記コラムに取り付けられた前記多関節アームを旋回する台座とからなる多関節ロボットにおいて、前記台座を旋回させる減速機の出力軸の固定面が前記台座を支持する前記軸受の厚みの略中心に位置するものである。
請求項2に記載の発明は、前記多関節アームと前記コラムと前記移動機構および前記台座を旋回支持した状態で、前記減速機を取り外すものである。
請求項3に記載の発明は、前記減速機を取り外すためのカバーを前記台座の上面かつ前記減速機の上面に備えたものである。
請求項4に記載の発明は、前記軸受がクロスローラベアリングであるものである。
請求項5に記載の発明は、前記減速機への入力が、ベルトを介して前記台座に配置されたモータによりなされるものである。
請求項6に記載の発明は、前記減速機の半径方向の外側に前記軸受が配置されたものである。
請求項7に記載の発明は、前記台座の旋回は減速機の出力により行われ、前記減速機とは別に前記台座に備えられた軸受により前記台座の旋回支持がされ、前記減速機の出力軸に前記減速機の入力軸の保持部材を締結したものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1および7に記載の発明によると、コラムとコラムに取り付けられたアームおよびハンドを旋回する台座をメンテナンスするために、内蔵されている減速機の取替え作業を行う際、減速機とは別に配置された軸受により台座は支持されているので、コラムを別に支持して作業する必要がなく、容易にメンテナンスすることができる。
また、台座の高さ方向への無駄な空間を取り除くことができる。つまり、ハンド部の底面は台座の高さまで低く配置できるようになり、低パスラインでのワークの搬送が実現できる。つまり、ハンド部の底面は台座の高さまで低く配置できるようになり、低パスラインでのワークの搬送が実現できる。
また、台座の旋回によるコラム、アームやハンドの大きなモーメントが作用しても、クロスローラベアリングのようなあらゆる方向からの荷重に対しても精度良く保持できる軸受を用いて、大きな回転半径で支持することにより、精度良く支持できるとともに、減速機を取り出す際にもコラムを別に支持して作業する必要がなく、容易にメンテナンスすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の多関節ロボットの斜視図である。図2は、本発明の多関節ロボットの上面図である。図3は本発明の多関節ロボットの正面図である。
本発明の多関節ロボット1は、図示しないストッカの高層化に対応するために複数ブロックに分けられたコラム12が連結された構造となっている。このように各コラムブロック16を順次連結することで高層に対応した高さをもつ多関節ロボット1を形成している。本実施例では、4つのコラムブロック16が連結された構造となっている。各コラムブロック16の両端面は、コラムブロック16間が連結されるように嵌合構造となっており、さらに、リニアガイドからなる案内機構を精度良く配置するために図示しない位置決め穴を有し、位置決め冶具を用いて調整することで組み立てられる。
また、本発明の多関節ロボット1は、関節部3,4,5により回転可能に連結されて回転駆動源よる回転力を伝達し所望の動作をさせるアーム2を二組備えている。また、アーム2によりワーク9を保持するハンド部8は図中矢印Xで示すワーク9の取り出し・供給方向に直線移動可能であるように構成される。また、二組のアーム2に設けられる基端の関節部3の回転中心軸の関係は、図2に示すように、上アーム21の基端の関節部3に対してハンド部8の移動方向にずれるように下アーム22の基端の関節部3が配置するように構成されている。
また、アーム2が設けられている支持部材10を上下に移動させる上下移動部材11を備えて、アーム2の上下位置を調整可能としている。また、上下移動機構11の台座13は回動可能に設けられ、多関節ロボット1を旋回して向きを変えられるようにしている。ここで、上下移動機構11は、ハンド部8の移動方向と同方向に配置され、支持部材10は上下駆動機構11からハンド部8の移動方向に対して直交する方向に突出し、アーム2の基端の関節部3に連結されている。また、下アーム22に連結する支持部材10は、アーム2が上下移動機構11により下方へ移動した際に、台座13に干渉しないように図2に示すようにハンド部8の移動方向にオフセットした形状を形成している。また、上下移動機構11は、図示しないシールド機能を有する保護カバーで覆われ、コラム12内部からの発塵を抑制している。
次に、台座13の構造について図4を用いて説明する。台座13の内部には台座13を駆動するモータ31と減速機構36が内包されている。台座13の厚さを薄く構成するために内部にはリブ51が形成され、コラム12に取り付けられたアーム体の重量を保持できるように高剛性な構造となっている。台座13の詳細な構造について説明する。モータ31は台座13にボルトなどで固定されており、モータ31の出力軸32はモータ用軸受33で回転自在に支持され、出力軸32にはベルト34の一端が装着されている。ベルト34のもう一端は、減速機カバー45の直下に配置された入力ギヤ用軸受35で回転自在に支持された入力ギヤ36に装着され、モータ31の動力がベルト34を介して入力ギヤ36に伝達される。入力ギヤ用軸受35の外輪は軸受保持部材49に固定され、軸受保持分材49は差動減速機37の出力軸39に締結されている。このように出力軸39に軸受保持部材49を締結する構成で出力軸39を軸受保持部材49の取り付けベースを兼用したことにより、台座の高さ方向への無駄な空間を取り除くことができる。つまり、ハンド部の底面は台座の高さまで低く配置できるようになり、低パスラインでのワークの搬送が実現できる。また、差動減速機37と減速機カバー45までの高さは、入力ギヤ軸受35の軸受厚さとベルト34の幅で求められ、最小寸法となっている。また、入力ギヤ36は、差動減速機37に入力される。差動減速機37の固定部38は、ベース17に固定され、差動減速機37の出力軸39は出力軸固定ボルト40によって台座13に固定される固定部材41に固定されている。差動減速機37部分の高さは、差動減速機37、入力ギヤ軸受35の軸受厚さとベルト34の幅で求められ、最小寸法となっている。
また、台座13の厚さを薄くするために台座13の旋回動作を支持する軸受に多段済みする必要がなく、あらゆる方向からの荷重を保持できるクロスローラベアリング42で構成している。クロスローラベアリング42の内輪は、台座13と固定される固定部材43に保持され、台座13を回転自在に支持している。また、クロスローラベアリング42の外輪は、ベース17に固定される固定部材44に動かないように保持されている。旋回時のコラム12の振動や倒れを防止するために、クロスローラベアリング42のアキシャルすきまは、例えば、0から15μm程度のマイナス公差で構成されている。こうすることで、クロスローラベアリングのアキシャルすきまのゼロとなるのでコラム12の振動や倒れが生じない構成となっている。
クロスローラベアリング42と差動減速機37の関係について説明する。差動減速機37の入力ギヤ36の回転中心を旋回中心としたときに、差動減速機37の出力軸39は、旋回中心を中心として、入力ギヤ36の回転半径よりも外側に回転半径を持つように差動減速機37の出力軸39は回転する。また、クロスローラベアリング42は、旋回中心を中心にして、差動減速機37の出力軸39の回転半径よりも外側に回転半径を持つようにクロスローラベアリング42の内輪は回転する。このように、クロスローラベアリング42と差動減速機37は回転中心を同じくし、差動減速機37よりも外側に回転半径を持つようにクロスローラベアリング42は配置されている。また、高さ方向としては、差動減速機37の出力軸39と台座13とを固定する固定部材41との固定面の高さがクロスローラベアリング42の略高さ中心になるように配置されている。つまり、こうすることで、コラムや上下移動機構、上下アームのモーメント荷重を大きなクロスローラベアリングで支えることができるようになっており、高さを出力軸の固定面とクロスローラベアリングの略高さ中心を合せることで、台座の駆動する際のねじれを抑制するものである。
このような構成とすることで、台座13の回転支持は、クロスローラベアリング42で行い、台座13の回転は差動減速機37の出力により行うことにより、たとえ減速機37を交換する場合でも、台座13はクロスローラベアリング42で支持されているので、減速機37だけを自由に取り外すことが可能となる。
本発明が特許文献1と異なる部分は、上アームの基端の関節部に対してハンド部の移動方向にずれるように下アームの基端の関節部が配置するように構成されるとともに、台座の回転支持は、クロスローラベアリングで行い、台座の回転は差動減速機の出力により行う部分である。
尚、本実施例では減速機について差動減速機を用いて説明したが、例えば、遊星減速機のようなものでも良いことは当然である。
【0008】
次に、動作について図1を用いて説明する。本発明の多関節ロボット1に備えられる二組のアーム2は、例えば、複数の関節部を有するものであり、即ち多関節ロボット1は、水平多関節型ロボットとして構成される。本実施形態でのアーム2は、従来のアーム2の構造と同様な構造を備えている。
上腕6の基端は、支持部材10に駆動軸を介して連結されて、回動可能な肩関節部3を構成する。この肩関節部3がアーム2の基端の関節部3となる。また、上腕6の先端と前腕7の基端とが駆動軸を介して連結されて、回動可能な肘関節部4を構成する。また、前腕7の先端とハンド部8とが駆動軸を介して連結されて、回動可能なハンド関節部5を構成する。
アーム2は、図示しない回転駆動源により肩関節部3と肘関節部4とハンド関節部5とを回動させて、ハンド部8をワーク取り出し・供給方向に移動させる。この際、アーム2では、その機構上、ハンド部8が一方向を向いて、上腕6と前腕7とを伸ばしきった伸長位置と、上腕6と前腕7とを折り畳んだ状態とした縮み位置との間を直線移動するように、伸縮動作を行う。
【0009】
ここで、本実施例の多関節ロボット1の旋回半径について下アーム22を用いて説明する。図5に示すアーム22の縮み位置において、ハンド部8により保持されるワーク9の中心が、台座13の回転中心と一致するものとなるように設計されている。さらに、肩関節部3の回転中心と、ハンド関節部5の回転中心と、台座13の回転中心とがハンド部8の移動方向の軸線上に一致するようにオフセットすることで台座13を回動させる際に多関節ロボット1の周囲に必要となる最小領域円15から肘関節部4やハンド部8が突出することがないようにして、多関節ロボット1の旋回半径を小さくすることができる。
ここでは、図面が煩雑になるのを避けるために下アームを用いて説明したが、上アーム21についても同様に、ワーク9の中心は台座13の回転中心と一致するように設計されており、肩関節部3、ハンド関節部5と台座13の回転中心の位置関係も下アームと同じ構成である。
次に上下方向の動作について説明する。アーム2は、支持部材10に取り付けられ、上下移動機構11に上下方向に図示しないコントローラの指令により移動する。図3に示すように下方に移動する際には、支持部材10が台座13に衝突しないようにハンド8の移動方向にオフセットした形状を形成していることから支持部材10は、上下移動機構11の最下点の移動位置まで下降することが可能である。
【0010】
次に、減速機の交換作業の例について図4を用いて説明する。はじめに減速機カバー45をカバー用ボルト46が抜かれて取り除く。そうすると、入力ギヤ用軸受35および台座13に固定された固定部材41を確認できる。次に、入力ギヤ36の固定ボルト47を抜き、入力ギヤ36とベルト部分を切り離す。そうすることでベルト34を取り外す。次に、出力軸固定ボルト40を抜き取り、台座13に固定される固定部材41を外す。そうすることで差動歯車機37の出力軸39は自由に取り出せる状態となる。次に、差動歯車減速機37の固定部38を締結している固定部用ボルト48を抜き取り、差動歯車減速機37の固定部38をベース17から取り外す。このようにして差動歯車減速機37は自由に台座13から取り出すことができる。
以上の通り、差動歯車減速機を取り出すことができる。この際、台座はクロスローラベアリングで支持されているので、台座に取り付けられたコラムおよび上下移動機構に特別な器具を備えることなく、作業することができる。
また、モータの交換においてもモータ上部に配置されたカバーを取り外すことにより容易に交換作業が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す多関節ロボットの斜視図
【図2】本発明の実施例を示す多関節ロボットの上面図
【図3】本発明の実施例を示す多関節ロボットの正面図
【図4】本発明の実施例を示す台座の側断面図
【図5】本発明の実施例を示す多関節ロボットの旋回半径を示す図
【図6】従来の多関節ロボットの斜視図
【図7】従来の多関節ロボットの旋回半径を示す図
【図8】従来の多関節ロボットの旋回構造を示す正面図
【符号の説明】
【0012】
1 多関節ロボット
2 アーム
21 上アーム
22 下アーム
3 肩関節部
4 肘関節部
5 ハンド関節部
6 上腕
7 前腕
8 ハンド部
9 ワーク
10 支持部材
11 上下移動機構
12 コラム
13 台座
14 基台
15 最小領域円
16 コラムブロック
17 ベース
31 モータ
32 出力軸
33 モータ用軸受
34 ベルト
35 入力ギヤ用軸受
36 入力ギヤ
37 差動減速機
38 固定部
39 出力軸
40 出力軸固定ボルト
41 固定部材
42 クロスローラベアリング
43 固定部材
44 固定部材
45 減速機カバー
46 カバー用ボルト
47 固定ボルト
48 固定部用ボルト
49 軸受保持部材
50 開口部
51 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を載置するハンド部と、前記ハンド部と連結され、少なくとも2つ以上の回転関節を備え、前記ハンド部を1方向に移動するように伸縮し、上下方向に対向するように配置された多関節アームと、上下に移動するようにコラムに取り付けられた上下方向に移動する移動機構と前記多関節アームとを連結する支持部材と、前記コラムの下端部に連結され、前記コラムに取り付けられた前記多関節アームを旋回する台座とからなる多関節ロボットにおいて、
前記台座を旋回させる減速機の出力軸の固定面が前記台座を支持する前記軸受の厚みの略中心に位置することを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
前記多関節アームと前記コラムと前記移動機構および前記台座を旋回支持した状態で、前記減速機を取り外すことを特徴とする請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項3】
前記減速機を取り外すためのカバーを前記台座の上面かつ前記減速機の上面に備えたことを特徴とする請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項4】
前記軸受がクロスローラベアリングであることを特徴とする請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項5】
前記減速機への入力は、ベルトを介して前記台座に配置されたモータによりなされることを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。
【請求項6】
前記減速機の半径方向の外側に前記軸受が配置されたことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。
【請求項7】
前記台座の旋回は減速機の出力により行われ、前記減速機とは別に前記台座に備えられた軸受により前記台座の旋回支持がされ、前記減速機の出力軸に前記減速機の入力軸の保持部材を締結したことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−269126(P2009−269126A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121771(P2008−121771)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【特許番号】特許第4258851号(P4258851)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】