説明

大型映像表示装置の制御装置

【課題】複数の表示ユニットより構成される大型映像表示装置において、表示ユニットにおける明るさや温度ムラを補正する機構を備えた大型映像表示装置を得る。
【解決手段】映像表示装置1に正対してカメラ2を設置し、カメラで映像表示装置及びその周辺を撮影して、その撮影画像をコントローラ3に取り込み、コントローラで画像処理して映像表示装置及びその周辺の輝度画像を求めることにより、映像表示装置の点灯強度を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の映像表示ユニットを組み合わせて構築された映像表示装置の点灯強度を調整するようにした大型映像表示装置の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型映像表示装置は、屋内外を問わず多様な環境下で使用されている。特に太陽光の影響を受け周囲の明るさが変化しやすい屋外では、映像表示装置の周囲の明るさに応じて映像表示装置の点灯強度を調整することが求められる。
また、映像表示装置内の冷却が不均一であることなどが原因で、映像表示装置内に温度に起因する色むらが生じるので、温度に応じて映像表示装置の冷却強度を調整することが求められる。
【0003】
従来、大型映像表示装置の近辺に配置されて大型映像表示装置周辺における色温度を測定する色温度センサ、または観客席に配置されて大型映像表示装置の画面もしくは周辺を撮影するCCDカメラを設け、色温度センサまたはCCDカメラが検出した色温度データに対応して映像信号のレベルを制御し、映像の色表示が最適になるようにした大画面映像表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、多様でかつ変化の激しい屋外で使用される大型映像表示装置では、照度のみ、温度のみといった1種類の環境データに基づいて、画面輝度や冷却強度を制御するのでは、視覚の上で適切な画質の実現、および映像表示装置の信頼性の維持の面で最適な制御が果たせないことから、複数種類の環境データの組み合わせに基づいて映像表示装置の動作条件を制御するようにした表示装置も知られている。
例えば、環境データとして、照度、温度、風量、降雨量、風向などを検出する複数のセンサを設け、これら複数のセンサが出力する複数種類の環境データの組み合わせに基づいて、映像表示装置の画面輝度や冷却強度や画面色度を制御する表示制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、大型映像表示装置を構成する各表示素子の輝度が異なると画質が悪くなることから、製造時また使用途中で表示素子の輝度を調整する手段として、映像表示装置のブロック単位(例えば表示ユニット)を撮影するCCDカメラを設け、CCDカメラで撮影した表示ユニットの映像から各表示素子の発光輝度を検出し、検出した発光輝度と予め設定された基準輝度を比較し、その比較結果に基づいて表示ユニットの各表示素子の発光輝度を補正するようにした映像表示装置の検査装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−282175号公報
【特許文献2】特許第3714856号公報
【特許文献3】特許第3729510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の特許文献1に記載された大画面映像表示装置は、色温度センサまたはCCDカメラで大型映像装置周辺の色温度を測定して赤、緑および青の3原色の色要素信号に分離し、予めメモリに蓄積されている最適な各色温度データと比較して、最も近い最適補正データで映像表示装置に供給する3原色信号を補正して周辺色温度に対する色調整を行なうようしたもので、比較対象が大型映像装置周辺の色温度と予め設定された色温度であり、映像表示装置自体とその周辺の明るさに応じた調整ではないため大型映像表示装置の輝度制御として最適ではなかった。また3原色の色要素信号に分離するなど構成的にも複雑または高価となる問題があった。
【0008】
また、特許文献2のように照度センサや温度センサを用いた表示装置は、照度センサや温度センサの設置位置における計測値を代表値として用いる必要があった。この方法では例えば、雲の陰り・日陰などで局所的に照度が異なる場合には、局所情報が表示装置全体の点灯強度を決定することになるという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載された映像表示装置の検査装置は、表示装置の各表示素子の発光輝度のみ検出して、検出した発光輝度と予め設定された基準輝度を比較して各表示素子の発光輝度を補正するものであり、屋外のように太陽光の影響を受け周囲の明るさが変化しやすい環境条件で映像表示装置が使用される場合は、視覚の上で適切な画質を実現することは困難であった。
【0010】
また、大型映像表示装置では、輝度差が大きい映像を表示装置に表示した後や表示装置内の冷却が不均一であることなどが原因で、表示装置内に温度に起因する色むらが生じたり、大型ゆえに表示素子の不点灯が生じても発見や位置の特定が困難という問題があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、カメラで撮影した映像表示装置およびその周辺の明るさに応じて映像表示装置の点灯強度を調整することにより、最適な画質を実現する映像表示装置の制御装置を提供することを目的とするものである。
またこの発明は、表示装置に温度に起因する色むらが生じないよう表示装置内の冷却制御を最適に行ったり、表示素子の不点灯の発見や位置の特定が容易な映像表示装置の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る大型映像表示装置の制御装置は、複数の表示ユニットを組み合わせて構築された映像表示装置に正対して設けられたカメラと、このカメラで撮影した映像表示装置の撮影画像および映像表示装置の周辺の撮影画像をもとに、映像表示装置の明るさ情報と映像表示装置周辺の明るさ情報を用い、映像表示装置の点灯強度を調整するコントローラを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、カメラで撮影した映像表示装置の撮影画像および映像表示装置の周辺の撮影画像をもとに、映像表示装置の明るさ情報と映像表示装置周辺の明るさ情報を用いて、映像表示装置の点灯強度や、色むら、温度むらを調整するため、映像表示装置内の均一性の保たれた画質の良い映像が得られる。
またこの発明によれば、スクリーンの不点灯箇所、故障箇所を検出して修理が必要な箇所を特定することで、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1における制御装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】この発明に使用される映像表示装置の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における輝度画像の例を示す図である。
【図4】この発明に使用されるカメラのイメージセンサの例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるフローチャートを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に使用される映像表示装置を示す概念図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるフローチャートを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるラベリング処理の一工程を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるラベリング画像を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3におけるフローチャートを示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3における映像表示装置を示す概念図である。
【図12】この発明の実施の形態4における映像表示装置を示す概念図である。
【図13】この発明の実施の形態4におけるフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における大型映像表示装置の制御装置について、図1〜図5に基づいて説明する。
図1はこの発明の大型映像表示装置の制御装置を示す概念図であり、TVカメラやビデオ装置からの映像信号を画像として表示する映像表示装置1と、映像表示装置1の正面に向かって対面するよう正対して位置が固定された状態で設置されたCCDの撮像素子(イメージセンサ)を有するカメラ2と、映像表示装置1とカメラ2を制御するコントローラ3で構成されている。
カメラ2は映像表示装置1の全体と映像表示装置1の周辺を同時に撮影するようになっている。
【0016】
コントローラ3は、映像表示装置1に映像信号を送ると共に、映像表示装置1の点灯強度などを調整する制御信号を送るスクリーンコントローラ3aと、スクリーンコントローラ3aおよびカメラ2を制御するパソコン3bからなっている。
映像表示装置1は、図2に示すように、複数の表示ユニット11を縦横に組み合わせて構築され、各表示ユニット11には、図示しない赤、青、緑のLED(発光ダイオード)などの発光素子が縦横に複数並べて構成されている。
【0017】
図3はカメラ2で撮影した画像をグレースケール変換したグレー画素4の全体を示す輝度画像5の例を示し、撮影された輝度画像5のうち、映像表示装置1に該当する箇所をスクリーンエリア内6、それ以外の部分をスクリーンエリア外7として分けている。また輝度画像5上の任意の座標をI、映像表示装置1の四隅の座標をA、B、C、Dとする。
図4はカメラ2で撮影した画像をグレースケール変換して、グレー画素4とする場合のイメージセンサの概略図を示している。多くの場合、カメラ2のイメージセンサは、図4のように赤センサ21Rが1つ、緑センサ21Gが2つ、青センサ21Bが1つの合計4つのセンサで1画素を構成するように整列している。この場合、グレー画素4のグレー画素値とは赤センサ1つ、緑センサ2つ、青センサ1つのセンサ値を固有の係数を乗じて加え合わせて求めることができる。すなわち、イメージセンサが(n×n)個あるならば、グレー画素4は(n−1)×(n−1)個生じることになる。
【0018】
次にこの発明の実施の形態1における大型映像表示装置の制御装置について、その制御動作を図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、この制御動作は主にコントローラ3のソフトウェアによって行なわれるものである。
ステップS11は、コントローラ3のスクリーンコントローラ3aより映像信号を映像表示装置1に送って画像表示させ、パソコン3bよりカメラ2を制御し、一定時間間隔(T)でカメラ2のシャッターを切り、映像表示装置1およびその周辺を撮影する。
ステップS12は、カメラ2で撮影した画像データを逐次パソコン3bへダウンロードし、ダウンドードした画像データは全ての画素に対して下式が適用され、グレースケール変換する。グレースケール変換された画像の全体を輝度画像と呼び、図3に示すような輝
度画像5を作成する。
【0019】
グレースケール変換された輝度画像5の各画素値をGrayとすると、Grayは以下の(1)式で求めることができる。

Gray=Redconst×Redbright+Greenconst×Greenbright+Blueconst×Bluebright (1)

但し、Redconst、Greenconst、Blueconstはそれぞれカメラ2に固有のイメージセンサの係数である。
Redbright、Greenbright、Bluebrightはカメラ2内の各センサが検出した画素値で
ある。
【0020】
次にステップS13は、撮影された輝度画像5のうち、映像表示装置1に該当する箇所をスクリーンエリア内6、それ以外の部分をスクリーンエリア外7として分け、輝度画像5の各画素がスクリーンエリア内かスクリーンエリア外を判定する。
この判定の仕方は次の通りで行なう。
図3に示すように、輝度画像5上の任意の座標をI、映像表示装置1の四隅の座標をA、B、C、Dとする。各点の座標は(2)式で表される。

I=(i,1,0)
A=(a,a,0)
B=(b,b,0) (2)
C=(c,c,0)
D=(d,d,0)
【0021】
映像表示装置1周辺の各点A、B、C、D及び輝度画像5上の任意の座標Iを結ぶベクトルは以下の(3)式で表される。
【数1】

【0022】
このとき、輝度画像5上の任意の座標Iが、スクリーンエリア内6かスクリーンエリア外7かを判定するために、各ベクトル成分の外積を(4)式により求める。
【数2】

【0023】
スクリーンエリア内6かスクリーンエリア外7かの判定は、以下の(5)式のベクトル式より求めた外積のz成分が全て負となるか否かで判定することができる。

(b−a)(a−i)−(a−i)(b−a)<0
(c−b)(b−i)−(b−i)(c−b)<0
(d−c)(c−i)−(c−i)(d−c)<0 (5)
(a−d)(d−i)−(d−i)(a−d)<0

上記の(5)式を全て満たせば、任意の座標Iはスクリーンエリア内6にあると判定する。また、1つでも符号が異なるものがあればスクリーンエリア外7と判定する。
【0024】
ステップS14は、スクリーンエリア内6と判定されたグレー画素4をGrayinside
し、スクリーンエリア内6のグレー画素値の総和Sinsideを以下の(6)式で求める。

inside=ΣGrayinside (6)

ステップS15は、ステップS14と同様に、スクリーンエリア外7と判定されたグレー画素4をGrayoutsideとし、スクリーンエリア外7のグレー画素値の総和Soutside
以下の(7)式で求める。

outside=ΣGrayoutside (7)

【0025】
ステップS16は、すべてのグレー画素Grayinside、Grayoutsideに対してグレー画
素値の総和SinsideまたはSoutsideへの加算が終わるまで繰り返し、最終のグレー画素
になったかを判断する。
ステップS17は、ステップS14、S15で求めたスクリーンエリア内6のグレー画素値の総和Sinsideとスクリーンエリア外7のグレー画素値の総和Soutsideから、スク
リーンエリア内外の輝度比αを(8)式により算出する。
【数3】

【0026】
ステップS18は、スクリーンエリア内外の輝度比αに応じて、映像表示装置1の点灯強度(点灯輝度)を(9)式になるよう段階的に変更する。

inside=α ・ Soutside (9)

なお、輝度比αはカメラ2の特性や設置環境、映像表示装置1に表示する映像内容、ユーザの趣向により設定可能な係数とする。
【0027】
以上のように、スクリーンエリア内外のグレー画素4の総和をもとに、映像表示装置1およびその周囲の明るさを認識し、映像表示装置1の点灯強度を自動的に調整する。例えば、スクリーンエリア外7のグレー画素値の総和Soutsideが大きいとき、すなわち映像
表示装置1の周辺が明るいとき、点灯強度を強くすることで映像表示装置1が明るくなり、周囲の明るさに負けず映像表示装置1の表示内容をはっきりと見ることができる。また、スクリーンエリア外7のグレー画素値の総和Soutsideが小さいとき、すなわち映像表
示装置1の周辺が暗いとき、点灯強度を弱くすることで映像表示装置1が暗くなり、周囲が暗くても眩し過ぎることなく映像表示装置1を見ることができ、また映像表示装置1の消費電力を下げることができる。
【0028】
ステップS19は、カメラ2のシャッターを切る時間間隔T(sec)を設定するもので
、この時間間隔T(sec)でカメラ2が映像表示装置1およびその周辺を撮影する。
そして映像表示装置1およびその周辺を撮影した画像をもとに、上記ステップに従って映像表示装置1およびその周辺の明るさを求め、映像表示装置1を適切な点灯強度に調整する。
【0029】
実施の形態2.
次にこの発明の実施の形態2における大型映像表示装置の制御装置について、図6〜図9に基づいて説明する。
上記の実施の形態1では、カメラ2で撮影した画像をグレースケール変換した輝度画像5を用いて、映像表示装置1の点灯強度を制御する方法について述べた。実施の形態2では、さらに映像表示装置1内の各表示ユニット11に組み込まれた赤外線発光素子13の点灯強度をカメラ2で測定し、映像表示中に映像表示装置1内の色ムラや温度ムラを調整するようにしたものである。
【0030】
図6は実施の形態2で使用される映像表示装置の概念図を示し、図6において、映像表示装置1は複数の表示ユニット11を縦横に組み合わせることで構成されている。各表示ユニット11には赤外線発光LED等の赤外線発光素子13を1つずつ埋め込み、全ての赤外線発光素子13を同じ電流で駆動する。
その他の構成は図1に示す構成と同じで、映像表示装置1に正対してカメラ2が設置され、映像表示装置1およびカメラ2をコントローラ3で制御するようになっている。
【0031】
次にこの発明の実施の形態2における大型映像表示装置の制御装置について、その制御動作を図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、この制御動作は主にコントローラ3のソフトウェアによって行なわれるものである。
ステップS21は、赤外線発光素子13の発光強度をカメラ2で撮影して測定する。ステップS22は、カメラ2で撮影した画像データを逐次パソコン3bへダウンロードし、ダウンドードした画像データにラベリング処理を施し、連結画素にラベルを付ける。
ラベリング処理は、ある閾値以上の画素値を持つ領域を連結するために用いるもので、明るい画素が集まっている領域に同じラベルを付ける。
【0032】
以下、ラベリング処理の手順について詳しく説明する。
1)赤外線発光素子13を点灯させた画像を得る。
2)赤外線発光素子13を消灯した画像を得る。
3)上記1)で得た輝度画像から上記2)で得た輝度画像を引き去り(背景差分)、
赤外線発光素子13の光だけを抽出する。
4)上記3)で得た輝度画像を閾値処理により2値化する。その時の画像データ41
の例を図8に示し、白枠の箇所と黒枠の箇所で区別している。
5)上記4)で2値化したデータから同じ値の領域を抽出し、図9に示すように同
じ値の領域は連結して連結画素42とし、連結画素42の領域ごとに採番して、
ラベリング処理を行い、ラベリング画像43を作成する。
6)ノイズ耐性を上げるためには、最小連結画素数をパラメータとして持つとよい。
【0033】
ラベリング処理により、同一の赤外線発光素子の光には同じラベルが採番されていることになる。つまり、同じラベルの画素値の総和を求めることで、各々の赤外線発光素子13の輝度を得ることが出来る。
ステップS23は、ラベリング処理画像から各赤外線発光素子13の輝度値を抽出するものである。同一ラベルの画素は同一の赤外線発光素子13の輝度とみなすことが出来る。
同一ラベル領域から各赤外線発光素子13の輝度を抽出する方法は複数考えられる。例えば、連結画素42の輝度値の総和を求める方法や、連結画素42の輝度値の平均を求める方法、連結画素42内の最大輝度値を代表値とする方法などが考えられるが,外乱が多い屋外での使用には総和や平均といった方法が望ましい。
【0034】
ステップS24は、抽出した輝度値に角度補正をするものである。赤外線発光素子13の輝度値はカメラ2の撮影画角に応じて変化する。輝度値が変化する主因は、カメラ2のレンズ収差と赤外線発光素子13の配光特性である。そのため輝度値の角度依存性を補正する。角度依存性の補正を行うことで赤外線発光素子13の輝度値を相対比較することが可能になる。
【0035】
ステップS25は、各赤外線発光素子13の輝度値を相対比較し、その相対輝度値に基づいて映像表示装置1に設けられている冷却ファンなどの冷却設備を制御する。
一般に赤外線LED等の赤外線発光素子13には温度特性があり,周囲温度が高温であるほど赤外線発光素子13の輝度値は小さくなり、周辺温度が低温であるほど輝度値は高くなる。この性質を利用して相対的に輝度値が小さくなっている箇所は表示ユニット11の温度が上昇しているので、表示ユニット11の周辺ファンの制御等の冷却制御に使用することで、映像表示装置1の温度ムラを均一化することができる。
【0036】
ステップS26は、実施の形態1と同様に、カメラ2のシャッターを切る時間間隔T(sec)を設定するもので、この時間間隔T(sec)でカメラ2が映像表示装置1の各表示ユニット11に設けられた赤外線発光素子13を撮影する。
そして撮影した赤外線発光素子13からの光の画像をもとに、上記ステップに従って各赤外線発光素子13の輝度を相対比較することにより、映像表示装置1内の冷却設備を制御して映像表示装置1の温度ムラを均一化し、画質の良い映像が得られるようにする。
【0037】
実施の形態3.
次にこの発明の実施の形態3における大型映像表示装置の制御装置について、図10〜図11に基づいて説明する。
上記の実施の形態2では、映像表示装置1内に組み込まれた赤外線発光素子13の情報を用いて、映像表示装置1内の温度ムラを制御する方法について述べたが、実施の形態3では、赤外線発光素子13を用いることなく映像表示装置1内の色ムラや温度ムラを調整するようにしたものである。
実施の形態3における大型映像表示装置の制御装置の構成は、図1に示す構成と同じに付き、説明を省略する。
【0038】
この発明の実施の形態3における大型映像表示装置の制御装置について、その制御動作
を図10のフローチャートに基づいて説明する。なお、この制御動作は主にコントローラ3のソフトウェアによって行なわれるものである。
ステップS31は映像表示装置1の発光素子を点灯し、ある特定の色、例えば赤色を表示させる。ステップS32は、特定の色で表示された映像表示装置1をカメラ2で撮影する。
ステップS33は、撮影した画像をパソコン3bへダウンロードし、パソコン3bでスクリーンエリア内6の画像を検出し、スクリーンエリア内6にある画素に対して、色の三刺激値Xbright、Ybright、Zbrightを(10)式により演算して求める。なお、三刺激値とは、色彩工学の用語で、R(赤)、G(緑)、B(青)に対する刺激値を指し、光のRGBの三原色とほぼ等価になる。
【0039】
【数4】

但し、xr,xg,xb,yr,yg,yb,zr,zg,zbはそれぞれカメラ2に固有のイメージセンサの係数である。
【0040】
ステップS34は、ステップ33で求めた三刺激値が、「意図した色」と同じかどうか比較する。演算によりイメージセンサより得られた三刺激値と、「意図した色」の三刺激値とが異なる場合(No)、ステップS35に進む。
ここで、「意図した色」とは、理想的な色を指し、その三刺激値は予め決められている。例えば赤色の場合、ユーザが映像表示装置1に表示したい理想的な赤色(意図した色)を映像表示装置1に表示しても、実際に映像表示された赤色は、同じ赤色でも外光などさまざまな要因により微妙に異なることがある。つまり、実際に映像表示装置1を撮影した画像より演算で求めた色とは異なる。
【0041】
ステップS35は、イメージセンサより得られた三刺激値と、「意図した色」の三刺激値との差分情報に基づき色補正係数を求める。
ステップS36は、ステップS35で求めた色補正係数に基づき、スクリーンコントローラ3aにより映像表示装置1を制御し、最適な色に補正して映像表示装置1の発光素子を点灯する。
【0042】
また、図11に示すように映像表示装置1の各表示ユニット11の四隅のみを点灯した画像を撮影し、撮影画像より表示ユニット11の位置を特定する。表示ユニット11毎に三刺激値の平均を求めることで、表示ユニット11毎に「意図した色」との差分情報を得ることができ、表示ユニット11単位での色調整が可能となる。
【0043】
また、例えば発光素子としてLED(発光ダイオード)を用いた映像表示装置1の場合、一般に赤色LEDには温度特性があり、温度が高いときに暗くなり、温度が低いときには暗くなる性質がある。この性質を利用して、映像表示装置1に赤色を表示させて映像表示装置1をカメラ2で撮影すれば、スクリーンエリア内6の画像により映像表示装置1の温度分布を捉えることができる。この温度分布情報をもとに冷却ファンの制御等の冷却制御に使用することで、映像表示装置1の温度ムラを均一化することができる。
【0044】
実施の形態4.
次にこの発明の実施の形態4における大型映像表示装置の制御装置について、図12〜
図13に基づいて説明する。実施の形態4における大型映像表示装置の制御装置の構成は、図1に示す構成と同じに付き、説明を省略する。
上記の実施の形態1〜3では、輝度画像5や赤外線発光素子13などを用いて映像表示装置1の点灯強度や色等を制御する方法について述べた。実施の形態4では、映像表示装置1に白色を点灯させ、カメラ2で映像表示装置1を撮影した撮影画像をもとに映像表示装置1内の発光素子12の不点灯箇所、故障箇所を検出して、修理が必要な箇所を特定するようにしたものである。
【0045】
図12は実施の形態4の発明における映像表示装置の概念図を示し、映像表示装置1内の全ての発光素子(LED)12から不点灯の発光素子14を検出し、不点灯の発光素子14がどの表示ユニット11に含まれるかを特定するようにしたものである。
この発明の実施の形態4における大型映像表示装置の制御装置について、その制御動作を図13のフローチャートに基づいて説明する。なお、この制御動作は主にコントローラ3のソフトウェアによって行なわれるものである。
【0046】
ステップS41は、まず、映像表示装置1の各表示ユニット11の四隅の発光素子12を図11に示すように点灯する。ステップS42は、各表示ユニット11の四隅のみを点灯した映像表示装置1をカメラ2で撮影する。
ステップS43は、撮影した画像をパソコン3bへダウンロードし、パソコン3bで撮影画像より表示ユニット11の位置を特定し、表示ユニット11の検出画像を作成する。ステップS44は、映像表示装置1内の全ての発光素子12を点灯して白色表示し、カメラ2で撮影する。
【0047】
ステップS45は、撮影された画像に、図9に示すようにラベリング処理を施し、連結画素42にラベル付けを行い、映像表示装置1内の全ての発光素子12の明るさを特定する。
ステップS46は、同一ラベル領域から、発光素子12の各素子毎の輝度値を求め、各素子毎のグレー画素値の総和が一定基準に満たない発光素子12を不点灯素子と判定して、不点灯の発光素子14を検出する。
【0048】
ステップS47は、ステップS44の撮影画像とステップS43の表示ユニット検出画像を重ね合わせ、どの発光素子12がどの表示ユニット11に含まれるかを検出することで、不点灯の発光素子14がどの表示ユニット11に含まれるかを検出し、故障表示ユニットを特定する。
なお、表示ユニット11内に含まれる発光素子12の個数があらかじめ分かっている場合には、撮影画像のみで故障表示ユニットの位置を特定することも可能である。
【0049】
映像表示装置1が大きい場合には、カメラ2の画素数で認識できる発光素子(LED)の数を映像表示装置1の発光素子の数が超えているため、発光素子12の位置検出が不可能となる。この場合には、映像表示装置1をいくつかのブロックに分け、複数台のカメラ2を使用するか、1台のカメラ2で複数ブロックを撮影することで、1回の撮影範囲が小さくでき、カメラ2で発光素子12の個々の明るさを認識することができる。
こうして、LED等のドットマトリックス状に配置された発光素子12を使用した映像表示装置1では、LED素子の不点灯を検出し、容易にメンテナンス可能にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1:映像表示装置 2:カメラ
3:コントローラ 3a:スクリーンコントローラ
3b:パソコン(PC) 4:グレー画素
5:輝度画像 6:スクリーンエリア内
7:スクリーンエリア外
11:表示ユニット 12:発光素子(LED)
13:赤外線発光素子 14:不点灯の発光素子
21R:赤センサ 21G:緑センサ
21B:青センサ
41:画像データ 42:連結画素
43:ラベリング画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示ユニットを組み合わせて構築された映像表示装置に正対して設けられたカメラと、このカメラで撮影した前記映像表示装置の撮影画像および前記映像表示装置の周辺の撮影画像をもとに、前記映像表示装置の明るさ情報と前記映像表示装置周辺の明るさ情報を用い、前記映像表示装置の点灯強度を調整するコントローラを備えた大型映像表示装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記コントローラは、前記カメラで撮影された画像をグレースケール変換して輝度画像とし、この輝度画像を前記映像表示装置のスクリーンエリア内とそれ以外のスクリーンエリア外とに分け、前記スクリーンエリア内外の輝度比に応じて、前記映像表示装置の点灯強度を調整するようにした大型映像表示装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記映像表示装置の各映像表示ユニット内に赤外線発光素子を組み込み、前記コントローラは、前記カメラで撮影した前記赤外線発光素子の発光輝度を検出し、前記赤外線発光素子の各発光輝度の相対輝度値をもとに前記映像表示装置の冷却制御を行うようにした大型映像表示装置の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記コントローラは、前記カメラで撮影した前記赤外線発光素子の輝度画像を閾値処理して2値化し、同じ輝度の領域を抽出してラベリングすることにより、前記赤外線発光素子の発光輝度を検出するようにした大型映像表示装置の制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記コントローラは、前記カメラで撮影した前記赤外線発光素子の各発光輝度の輝度値を、前記カメラの撮影角度に応じて角度補正するようにした大型映像表示装置の制御装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記映像表示装置に意図した色を点灯させ、前記コントローラは、前記カメラで撮影した前記映像表示装置の画像により色の三刺激値を求め、この求めた三刺激値と前記意図した色の三刺激値との差分を演算し、前記差分情報により前記映像表示装置に色補正をするようにした大型映像表示装置の制御装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記映像表示装置の発光素子を点灯して白色表示させ、前記コントローラは、前記カメラで撮影した前記映像表示装置の撮影画像をもとに、前記映像表示装置内の発光素子の不点灯箇所、故障箇所を検出して、修理が必要な箇所を特定するようにした大型映像表示装置の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の大型映像表示装置の制御装置において、前記映像表示装置の発光素子として発光ダイオードを用いて白色を点灯させ、前記コントローラは、前記カメラで撮影した前記映像表示装置の輝度画像を閾値処理して2値化し、同じ輝度の領域を抽出してラベリングすることにより、前記映像表示装置の各発光ダイオードの発光輝度を検出し、各発光ダイオード毎の輝度値が所定基準に満たない素子を不点灯素子と判定するようにした大型映像表示装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−150002(P2011−150002A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9109(P2010−9109)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】