説明

安全制動機能を備えた制動装置

【課題】二重に構成された制動装置を利用して安全制動機能を実現する制動装置を提供する。
【解決手段】本発明の制動装置は、ブレーキペダルの操作時に制動がなされるように制御するECU1と、正常制動時にホイールディスクを押さえて制動するように前記ECU1によって制御されるメイン制動機2、および前記メイン制動機2の故障を検知したECU1を介してホイールディスクを押さえて安全のための非常制動を実現するように、ホイールディスクに取り付けられて補助的な制動機能を実現するサブ制動機10を利用し、二重の制動装置で構成されることにより、メイン制動機2のモータ故障時、F−S(Fail−Safe)を実現し、非常制動を実現して安全性を高めつつ、油圧制動方式のように安定的なFR(Failure Rate)を実車適用されたEWBやEMBにおいても実現することは勿論、EMBとEWBのようなBBW(Brake By Wire)技術が適用された制動装置の商用化を早める特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制動装置に関し、より詳しくは、二重に構成された制動装置を利用して安全制動機能を実現する制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧式ブレーキは制動時に油圧を利用してパッドを強くディスク側に押す方式で実現される。
このような油圧式ブレーキは、複雑な構成と油圧使用による制動性能の信頼性と安定性の強化にある程度限界性があり、そのため、油圧式ブレーキが有することができない構成の単純さを招き、制動性能の信頼性を強化できる電動制動装置であるEMB(Electro Mechanical Brake)が適用される傾向である。
【0003】
このようなEMBはモータ動力を直接に直進移動力に切り換えて制動を実現する方式である。
このようにモータ動力を用いるEMB方式としてEWB(Electro Wedge Brake)もあって、これは、制動時にアクチュエータを介して作動するウェッジ組立体を利用してブレーキパッドをディスク側に加圧することによって摩擦させることで、入力を倍力するウェッジ作用で制動を実現する方式である。
このようなEMBとEWBを通常BBW(Brake By Wire)技術と称する。
【0004】
しかし、このような電動制動装置は12Vで実現しなければならず、電子信号と電気装置で制動を行うため、FR(Failure Rate)が油圧制動方式に比べて高く増加する根本的な限界を有する。
【0005】
そのため、FR(Failure Rate)を安定的な油圧制動方式のように低くするために様々な方法が開発され、その一例としてEWBやEMBを制御する制御ロジックとこれを反映する回路を構成し、F−S(Fail−Safe)を実現してFR(Failure Rate)を低くするが、このような方式は動力源であるモータの故障(Fail)状況において、機構的に制動力を発生させる装置を備えないことによって安全性が低下し、このような安定性の低下によって実車適用にはばかられる原因を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、前記のようなことを考慮して発明されたものであり、モータ動力でウェッジ作用を発生するか、直線移動力を発生するEWBやEMBを適用して車両制動を実現すると共に、別途のEWBやEMBタイプの制動装置で、モータ故障時、F−S(Fail−Safe)を実現しつつ、安全のための非常制動力を発生させることにより、油圧制動方式のように安定的なFR(Failure Rate)を実車適用されたEWBやEMBにおいても実現できるようにすることを目的とする。
【0007】
また、本発明のEWBやEMBタイプの制動装置と共に付加された別途の制動装置が安全のための非常制動力だけを提供することにより、前・後輪に対する取り付けが全て要求されないため、主制動構造に比べ、小型でありながら薄肉なパッドの適用によって重量と費用を最小化できるようにすることを目的とする。
【0008】
また、本発明は、EWBやEMBタイプの制動装置を実車に適用しても、非常制動装置をさらに付加することにより、BBW(Brake By Wire)制動装置に対する法律条件を充足させ、商用化をより促進できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するための本発明は、安全制動機能を備えた制動装置が、センサを介してブレーキペダルの操作を検知し、制動がなされるように制御するECU;
ホイールディスクを加圧するパッドを備えたキャリパーを備え、前記ECUの制御により駆動されるモータからホイールディスクを押さえて制動する出力トルクを発生させるメイン制動機;および
前記メイン制動機から離隔した位置においてホイールディスクを加圧するパッドを備えたキャリパーを備え、前記メイン制動機の故障を検知したECUから発生した制御信号によって前記パッドをホイールディスク側に押して車両を制動させるサブ制動機;
から構成されることを特徴とする。
【0010】
このために、前記メイン制動機は、EWB(Electro Wedge Brake)タイプであって、ECUによって制御され、回転を直線移動に切り換える切り換え部を備えたモータ;
前記モータの駆動によって提供される直線移動を利用して、ホイールディスクを加圧する入力を倍力するローラと移動・固定板とからなるメインウェッジ;および
ホイールディスクを囲み、前記メインウェッジの移動時、ホイールディスクを加圧するインナー・アウターパッドを備えたキャリパー;
から構成される。
【0011】
また、前記サブ制動機は、ホイールディスクを囲み、インナー・アウターパッドを備えたキャリパー;
ECUの制御によってオン・オフになり、荷重を加えるように引き出されるロッドを備えたソレノイド;および
前記ソレノイドロッドから加えられる荷重によって押し出され、パッドをホイールディスク側に押すと共にウェッジ作用を実現するように、ソレノイドロッドから荷重を受ける移動板と、キャリパーに固定された固定板、および前記移動・固定板に窪んだウェッジ面に位置したローラからなるサブウェッジ;
から構成される。
【0012】
また、前記ソレノイドはサブウェッジを側面から押す位置に設けられ、キャリパーを利用して固定される。
また、前記キャリパーにはサブウェッジの両側面に対し間隔をおいた位置に左・右ストッパーがさらに形成されることを特徴とする。
【0013】
これと共に、前記移動板には間隔をおいて固定板を収容するように両側面に左・右延長端が突出延長され、前記左側延長端はソレノイドのロッドが加える荷重を直接受けることを特徴とする。
また、前記ウェッジ面が有する角度は摩擦係数>tan(ウェッジ面角度)以内であることを特徴とする。
これと共に、前記サブウェッジにはキャリパーを介して弾性的に支持されるリターンスプリングがさらに備えられることを特徴とする。
【0014】
これとは異なり、前記サブ制動機は、ホイールディスクを囲み、インナー・アウターパッドを備え、サブウェッジに間隔をおいて左・右ストッパーを形成したキャリパー;
ホイールディスクを拘束しながら、ホイールディスクの回転方向に押し出されるパッドと共に押し出される移動板と、キャリパーに固定された固定板、および前記移動・固定板に窪んだウェッジ面に位置したローラからなるサブウェッジ;
一端は前記移動板に固定され、他端は移動板と共に動くように移動板に固定されたウェッジフレームに持続的な荷重を加える圧縮スプリング;および
前記ウェッジフレームを拘束するソレノイドロッドを備え、ECUの制御によってオン・オフになり、ウェッジフレームの拘束状態を切り換えるソレノイドから構成されることを特徴とする。
【0015】
また、前記ソレノイドはサブウェッジの側面部位に設けられる。
これに加え、前記ソレノイドにはソレノイドロッドに荷重を加える引張スプリングがさらに備えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、実車にEWBやEMBタイプの制動装置を適用し、動力源であるモータの故障時、F−S(Fail−Safe)を実現しつつ、安全のための非常制動を行う別途の制動装置を付加させ、油圧制動方式のように安定的なFR(Failure Rate)が実車適用されたEWBやEMBにおいても実現することができ、これにより、BBW(Brake By Wire)制動装置に対する法律条件の充足によって商用化を実現できる効果がある。
【0017】
また、本発明のEWBやEMBタイプを適用したBBW(Brake By Wire)制動装置は、非常制動力だけを提供する別途の制動装置を利用するため、前輪や後輪に選択装着することは勿論、主制動構造に比べ、小型でありながら薄肉なパッドの適用によって重量と費用の増加を最小化できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る安全制動機能を備えた制動装置の構成図である。
【図2】本発明に係るEWBタイプのメイン制動機の制動作動図である。
【図3】本発明に係るメイン制動機の故障時、EWBタイプのサブ制動機の安全制動作動図である。
【図4】本発明の他の実施形態として、EWBタイプのサブ制動装置の構成図である。
【図5】メイン制動機の故障時、図4のEWBタイプのサブ制動機の安全制動作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付した例示図面に基づいてより詳細に説明するが、下記の実施形態は一例に過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が色々な他の形態で実現できるため、ここで説明する実施形態に限定されることはない。
【0020】
図1は本発明に係る安全制動機能を備えた制動装置の構成図であり、本発明の制動装置は、ブレーキペダルの操作時に制動がなされるように制御するECU1、正常制動時にホイールディスクを押さえて制動するように前記ECU1によって制御されるメイン制動機2、および前記メイン制動機2の故障を検知したECU1を介してホイールディスクを押さえて安全のための非常制動を実現するように、ホイールディスクに取り付けられて補助的な制動機能を実現するサブ制動機10から構成される。
【0021】
このために、本実施形態による前記メイン制動機2はEWB(Electro Wedge Brake)であって、これは、通常、アクチュエータを介して作動するウェッジ組立体を利用してブレーキパッドをディスク側に加圧することによって摩擦させることで、入力を倍力するウェッジ作用によって制動を実現する方式である。
【0022】
また、本発明では、メイン制動機として、前記EWBタイプのメイン制動機を用いることなく、電動ブレーキ装置であるEMB(Electro Mechanical Brake)を適用することができ、これは、モータ動力をスクリューを利用して軸方向直線移動力に切り換えてホイールディスクを加圧する方式である。
このような、EWB(Electro Wedge Brake)やEMB(Electro Mechanical Brake)を通常BBW(Brake By Wire)技術と称し、本実施形態では、メイン制動機2はEWB方式を適用して説明する。
【0023】
このような前記メイン制動機2は、一般的に、ECU1によって制御され、回転を直線移動に切り換える切り換え部を備えたモータ3と、前記モータ3の駆動によって提供される直線移動を利用して、ホイールディスクを加圧する入力を倍力するメインウェッジ4、およびホイールディスクを囲み、前記メインウェッジ4の移動時、ホイールディスクを加圧するインナー・アウターパッド(21、22)を備えたキャリパー5から構成される。
【0024】
これと共に、前記メイン制動機2には、ホイールディスクに対するパッド(22、23)の設定間隔維持のための摩耗補正と、モータ3の故障やメインウェッジ4の作動不良によるF−S(Fail−Safe)の実現、および電子式駐車ブレーキであるEPB(Electric Parking Brake)機能も共に実現できるように、各々に要求される装置であるNSL(Non−Self Locking)タイプのスクリュー構造とソレノイドを備えており、これはEWBタイプの制動装置の一般的な構成である。
【0025】
また、前記メインウェッジ4は、キャリパー5に固定された固定板4bと、前記固定板4bに対しローラ4cを介して対向し、前記モータ3の駆動によって切り換えられた直線移動力を受けて固定板4bに対し直線移動する移動板4aとから構成される。
【0026】
このような構造を有する前記メインウェッジ4から発生するウェッジ(Wedge)現象を利用した自己倍力(Self−Energizing)作用は同分野制動機でよく知られたものであり、これは、固定板4bに対して移動板4aが直線移動すれば、前記固定・移動板(4b、4a)間において溝に位置したローラ4cの位置移動が発生し、これにより、移動板4aが固定板4bから離れてパッドをホイールディスク側に押して追加的な入力(Input Force)を発生する。
【0027】
このような前記メイン制動機2の作動は、一例としてECU1がモータ2を回転させれば、図2に示すように、メインウェッジ4が作用してパッドをホイールディスク側に押すようにウェッジ作用を発生する。
すなわち、モータ3の回転がEPB(Electro Parking Brake)のケーブル引張力切り換え部のように軸とナット間のスクリュー結合構造によって直線移動に切り換えられると、メインウェッジ4の移動板4aが移動してローラ4cの位置も移動し、前記移動板4aの継続的な前進移動により、図2(A)から(C)のように運動してウェッジ作用を発生させる。
【0028】
次に、制動解除時、モータ3の逆回転により、図2(D)、(E)のように、移動板4aが初期状態に復帰し、車両後進制動時には、図2(F)、(G)のように、移動板4aが、前進制動時、逆に移動して同一のウェッジ作用を発生させる。
このようなメイン制動機2に対し、ECU1がメイン制動機2のモータ3の故障時、独自に駆動させるサブ制動機10もメイン制動機2と同様にウェッジ作用を実現するサブウェッジ13を備える。
【0029】
すなわち、前記サブ制動機10は、図1に示すように、ホイールディスクを囲み、インナー・アウターパッド(21、22)を備えたキャリパー12を備え、ECU1の制御によってオン・オフになるソレノイド11aを備えた制動操作部11と共に、前記ソレノイド11aを介して移動し、パッド20をホイールディスク側に押して加圧するウェッジ作用を実現するサブウェッジ13を備えて構成される。
【0030】
このために、前記制動操作部11は、メイン制動機2のモータ3の故障を検知するECU1によってオンになる時、長く引き出されて荷重を加えるロッド11bを備えたソレノイド11aからなる。
ここで、前記ソレノイド11aはロッド11bがサブウェッジ13を側面から押す位置に設けられ、キャリパー12を利用して固定される。
【0031】
また、前記キャリパー12には左・右ストッパー(12a、12b)がさらに形成され、前記左・右ストッパー(12a、12b)はサブウェッジ13の両側面に対し所定間隔をおいた位置においてサブウェッジ13の移動距離を拘束する。
すなわち、前記左・右ストッパー(12a、12b)は、前進や後進制動時、前・後に移動するサブウェッジ13の過度な移動を遮断するためのものであり、このような間隔はサブ制動機10に要求される制動力大きさに合わせて算定される。
【0032】
しかし、前記左・右ストッパー(12a、12b)はソレノイド11aを利用して作らないこともでき、これは、ソレノイド11aから引き出されてサブウェッジ13を押すロッド11bの引き出し長さを一定値、すなわち、サブウェッジ13の安定的な作動のための移動距離に合わせてロッド11bの長さを定めて実現することができる。
【0033】
また、前記サブウェッジ13は、キャリパー5に固定された固定板15と、前記固定板15に対しローラ16を介して対向し、ソレノイド11aが加える直線移動力を受けて固定板15に対し直線移動する移動板14とから構成される。
【0034】
これに加え、前記サブウェッジ13にはキャリパー12を介して弾性的に支持されるリターンスプリング17がさらに備えられ、前記リターンスプリング17はソレノイド11aのオフ切り換え時、移動板14の初期復帰を手伝う。
【0035】
これと共に、前記移動板14には間隔をおいて固定板15を収容するように両側面に左・右延長端(14b、14c)が突出延長され、このような左側延長端14bはソレノイド11aのロッド11bから加圧力を受ける反面、右側延長端14cはキャリパー12と共にリターンスプリング17を弾性的に支持する作用をする。
【0036】
また、前記ローラ16が載置されるように移動・固定板(14、15)に窪んだ溝であるウェッジ面(14a、15a)は制動力を安定的に形成するための幾何学的な構造を有し、これは、ローラ16から発生する摩擦力を入力(Input Force)として活用して制動力を付加することにより、ウェッジ面(14a、15a)に対するローラ16の摩擦力制御が不十分である場合にホイールジャミング(Wheel Jamming)が発生し、それによって過度な制動力が発生し得る脆弱性があるため、それを防止するためである。
【0037】
これは、前記サブウェッジ13の作動によるローラ16の摩擦角が、ウェッジ面(14a、15a)が有するウェッジ角より大きく形成されないようにするためであり、このために前記ウェッジ面(14a、15a)が有する角度は摩擦係数>tan(ウェッジ面角度)のような関係を有する範囲内で決定される。
【0038】
これにより、前記サブ制動機10が作動、すなわち、ECU1がメイン制動機2のモータ3の故障状態を検知したり、メイン制動機2側の電源供給異常を検知したりして、メイン制動機2を介した正常な車両制動がなされない時、前記ECU1はサブウェッジ13を介したウェッジ作用によって非常制動力を提供し、これによって車両を安全な場所に移動させることができる。
【0039】
このような作動実現は、ECU1がソレノイド11aをオンにすれば、図3に示すように、前記ソレノイド11aのロッド11bが引き出されてサブウェッジ13を押し、前記サブウェッジ13の押されによってローラ16の位置移動が起こり、インナーパッド21をホイールディスクに加圧させるウェッジ作用を発生させる。
すなわち、前記ソレノイド11aから加えられる荷重によって移動板14がリターンスプリング17を圧縮しながら押し出されば、移動板14と固定板15のウェッジ面(14a、15a)間に位置したローラ16が摩擦を起こしながら位置移動する。
【0040】
このような前記ローラ16の位置移動は、移動板14が押し出されると同時に固定板15から離れ、これによって移動板14がインナーパッド21をホイールディスク側に押し、ホイールディスクを拘束しながら制動力を発生させる。
【0041】
このような前記サブウェッジ13の自己倍力ウェッジ作用は、メイン制動機2を通じて説明したのと同様に実現され、前記サブウェッジ13の作用により、運転者はメイン制動機2の異常状況においても車両を安全に制御しながら移動させることができる。
【0042】
一方、本発明のサブ制動機10はサブウェッジ13の作動実現を様々な方式で達成することができ、一例として、サブウェッジ13の作動のためにスプリング加圧力を利用するように構成することができる。
すなわち、サブウェッジ13が移動板14と固定板15およびウェッジ面(14a、15a)間に位置したローラ16からなる構造において、前記移動板14にはホイールディスク側に移動板14を加圧する圧縮スプリング34の荷重が作用するように付加し、オン・オフになるソレノイド31を利用して、前記圧縮スプリング34の加圧力がメイン制動機2の故障時にだけ伝達されるように構成する。
【0043】
このような作用のために、前記圧縮スプリング34は、一端は移動板14に固定され、他端は移動板14に固定されて移動板14と共に動くウェッジフレーム33に固定させることにより、前記圧縮スプリング34が加える荷重がウェッジフレーム33を介して移動板14をホイールディスク側に押すことができる。
【0044】
これと共に、前記ソレノイド31はソレノイドロッド31aがウェッジフレーム33の内側に挿入されるようにサブウェッジ13の側面部位に設けられ、これは、前記ソレノイド31がオンまたはオフになった状態でソレノイドロッド31aがウェッジフレーム33を遮断することにより、圧縮スプリング34から持続的な荷重を受けるウェッジフレーム33の移動を遮断することができる。
【0045】
これに加え、前記ソレノイド31には引張スプリング32がさらに備えられ、前記引張スプリング32は、ソレノイド31が作動してから復帰する時、ソレノイドロッド31aをサブウェッジ13側に押すように作用する。
【0046】
また、前記キャリパー12には左・右ストッパー(12a、12b)がさらに形成され、前記左・右ストッパー(12a、12b)はサブウェッジ13の両側面に対し所定間隔をおいた位置においてサブウェッジ13の移動距離を拘束する。
【0047】
このように、前記圧縮スプリング34を利用した方式もサブウェッジ13のウェッジ作用によって非常制動力を提供し、すなわち、ECU1がメイン制動機2のモータ3の故障状態を検知したり、メイン制動機2側の電源供給異常を検知したりして、ソレノイド31をオンまたはオフに切り換えれば、ソレノイドロッド31aを介した拘束作用が解除されてサブウェッジ13が作動する。
【0048】
すなわち、図5に示すように、ソレノイドロッド31aを介した拘束作用が解除されたサブウェッジ13は圧縮スプリング34が加える荷重によって押し出され、これは、前記圧縮スプリング34がウェッジフレーム33を押すようになり、ウェッジフレーム33は移動板14を押し、インナーパッド21がホイールディスク側に押し出されるようになる。
【0049】
このようなホイールディスクに対する接触は、ホイールディスクを介した反力、すなわち、回転するホイールディスクによってインナーパッド21がホイールディスクの回転方向に押し出され、前記インナーパッド21の押されは移動板14を同一方向に共に移動させる。
【0050】
このような前記移動板14の押されにより、移動板14と固定板15のウェッジ面(14a、15a)間に位置したローラ16が摩擦を起こしながら位置移動し、これによって移動板14が固定板15から離れ、インナーパッド21がホイールディスクをより加圧して車両停止のための制動力を発生させる。
【0051】
このように、前記圧縮スプリング34を介した荷重がウェッジフレーム33に加圧力を加えることにより、サブウェッジ13に加える別途の入力がない状態においてもインナーパッド21をホイールディスク側に押し、ウェッジ作用による制動力を発生させ、運転者がメイン制動機2の異常状況においても車両を安全に制御しながら移動させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1:ECU
2:メイン制動機
3:モータ
4:メインウェッジ
4a、14:移動板
4b、15:固定板
4c、16:ローラ
5、12:キャリパー
10:サブ制動機
11:制動操作部
11a、31:ソレノイド
11b、31a:ロッド
12a、12b:左・右ストッパー
13:サブウェッジ
14a、15a:ウェッジ面
14b、14c:左・右延長端
17:リターンスプリング
20:パッド
21、22:インナー・アウターパッド
32:引張スプリング
33:ウェッジフレーム
34:圧縮スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを介してブレーキペダルの操作を検知し、制動がなされるように制御するECU;
ホイールディスクを加圧するパッドを備えたキャリパーを備え、前記ECUの制御により駆動されるモータからホイールディスクを押さえて制動する出力トルクを発生させるメイン制動機;および
前記メイン制動機から離隔した位置においてホイールディスクを加圧するパッドを備えたキャリパーを備え、前記メイン制動機の故障を検知したECUから発生した制御信号によって前記パッドをホイールディスク側に押して車両を制動させるサブ制動機;
から構成されることを特徴とする安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項2】
前記メイン制動機は、EWB(Electro Wedge Brake)タイプであって、ECUによって制御され、回転を直線移動に切り換える切り換え部を備えたモータ;
前記モータの駆動によって提供される直線移動を利用して、ホイールディスクを加圧する入力を倍力するローラと移動・固定板とからなるメインウェッジ;および
ホイールディスクを囲み、前記メインウェッジの移動時、ホイールディスクを加圧するインナー・アウターパッドを備えたキャリパー;
から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項3】
前記サブ制動機は、ホイールディスクを囲み、インナー・アウターパッドを備えたキャリパー;
ECUの制御によってオン・オフになり、荷重を加えるように引き出されるロッドを備えたソレノイド;および
前記ソレノイドロッドから加えられる荷重によって押し出され、パッドをホイールディスク側に押すと共にウェッジ作用を実現するように、ソレノイドロッドから荷重を受ける移動板と、キャリパーに固定された固定板、および前記移動・固定板に窪んだウェッジ面に位置したローラからなるサブウェッジ;
から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項4】
前記ソレノイドはサブウェッジを側面から押す位置に設けられ、キャリパーを利用して固定されることを特徴とする、請求項3に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項5】
前記キャリパーにはサブウェッジの両側面に対し間隔をおいた位置に左・右ストッパーがさらに形成されることを特徴とする、請求項3に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項6】
前記移動板には間隔をおいて固定板を収容するように両側面に左・右延長端が突出延長され、前記左側延長端はソレノイドのロッドが加える荷重を直接受けることを特徴とする、請求項3に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項7】
前記ウェッジ面が有する角度は摩擦係数>tan(ウェッジ面角度)以内であることを特徴とする、請求項3に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項8】
前記サブウェッジにはキャリパーを介して弾性的に支持されるリターンスプリングがさらに備えられることを特徴とする、請求項3に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項9】
前記サブ制動機は、ホイールディスクを囲み、インナー・アウターパッドを備え、サブウェッジに間隔をおいて左・右ストッパーを形成したキャリパー;
ホイールディスクを拘束しながら、ホイールディスクの回転方向に押し出されるパッドと共に押し出される移動板と、キャリパーに固定された固定板、および前記移動・固定板に窪んだウェッジ面に位置したローラからなるサブウェッジ;
一端は前記移動板に固定され、他端は移動板と共に動くように移動板に固定されたウェッジフレームに持続的な荷重を加える圧縮スプリング;および
前記ウェッジフレームを拘束するソレノイドロッドを備え、ECUの制御によってオン・オフになり、ウェッジフレームの拘束状態を切り換えるソレノイド;
から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項10】
前記ソレノイドはサブウェッジの側面部位に設けられることを特徴とする、請求項9に記載の安全制動機能を備えた制動装置。
【請求項11】
前記ソレノイドにはソレノイドロッドに荷重を加える引張スプリングがさらに備えられることを特徴とする、請求項9に記載の安全制動機能を備えた制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137848(P2010−137848A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261033(P2009−261033)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(507098483)ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】