説明

安定化された経皮薬物送達システム

安定なアモルファス形の治療薬と、水素結合形成官能基を有する兼用ポリマー性安定及び分散剤とを含む固体分散経皮薬物送達システム、及びこれらのシステムの製造法を提供する。兼用ポリマー性安定及び分散剤対治療薬の重量比も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は、2008年5月30日出願の米国仮出願第61/057,455号に基づく優先権を主張し、その全文を引用によって本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本発明は、安定なアモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能なポリマー性安定剤を含む固体分散経皮薬物送達システム、並びにこれらのシステムの製造法に関する。さらに、本発明は、治療薬の安定化におけるポリマー性安定剤対治療薬の重量比の重要性にも関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]皮膚を通じて薬物を送達する経皮薬物送達は、多くの利点を提供する。第一に、それは、快適で便利かつ非侵襲的な薬物投与法である。経皮送達された薬物は、皮下の血管に直接入り、初回通過肝代謝及び分解を迂回して標的部位に輸送される。この方法は、高い薬物バイオアベイラビリティを可能にする。このシステムは比較的少量の薬物しか必要としないので、持続薬物送達のための効果的な方法となり得、投与回数の削減を可能にする。さらに、このような送達手段は、中断のない療法と血中薬物濃度に対する高度の制御を提供する。こうした特徴は、経口剤形の投与及び注射に付随する一時的に高い血中薬物濃度に起因する副作用の回避に役立つ。
【0004】
[0004]しかしながら、角質層と呼ばれる皮膚の外層は、ほとんどすべての化合物に対して薬物吸収のバリアとなり、有効量の薬物送達の妨げになることが多い。角質層の疎水性のために、親水性塩の薬物の吸収は特に困難である。巨大分子及び極度に疎水性の薬物も皮膚を通じての吸収に困難がある。
【0005】
[0005]角質層のバリアを克服するのに化学的増強剤が一般的に使用される。しかしながら、これらの増強剤は、皮膚刺激などの副作用や製剤不適合性を導入しかねない上に、依然として薬物の治療的用量要件を満足するのに十分なほど薬物吸収を増大できないことが多い。
【0006】
[0006]さらに、物理的手段も角質層のバリア機能を克服するために使用される一般的方法である。これらの手段は、イオントフォレーシス(イオン導入、iontophoresis)、エレクトロポレーション(電気穿孔、electroporation)、ソノフォレーシス(超音波導入、sonophoresis)、及び皮膚のマイクロアブレーション(skin micro abrasion)などである。
【0007】
[0007]米国特許第4,409,206号には、アモルファス性の医薬品有効成分を埋め込んだポリアクリレートフィルムの形態の製剤が開示されている。
【0008】
[0008]米国公開第2005/0064022号には、テラゾシン経皮デバイス及び使用法が記載されている。該公報には、スプレー乾燥、ローラー乾燥及び凍結乾燥後に経皮送達デバイスに組み込むことによるアモルファス形のテラゾシンの製剤が開示されている。さらに詳しくは、該公報には、アモルファステラゾシンを皮膚に投与するための経皮治療システムが開示され、該システムは、支持層(backing layer)、感圧接着剤レザバー層(pressure-sensitive adhesive reservoir layer)及び/又はマトリックス層、そして所望により、除去可能な保護層を含む。
【0009】
[0009]米国公開第2005/0175678号は、ロチゴチンの経皮投与に適切なポリマーマトリックス及びその製造法に向けられている。該ポリマーマトリックスは、過飽和量のロチゴチン塩基を含有し、マトリックスのポリマー接着剤中に溶解されないロチゴチンの一部がアモルファス粒子として接着剤マトリックスに分散されている。該公報はさらに、マトリックス接着剤がロチゴチンの経皮投与用システムの構成要素になりうることも開示している。そのようなシステムは、保護層、支持層、更なるポリマー接着剤層、及び/又はロチゴチンの放出を制御する膜などの構成要素を有しうる。
【0010】
[00010]米国特許第6,902,741号は、親水性非架橋ポリマー中に性ホルモンの封入体を含有する性ホルモン含有接着剤マトリックスを含む経皮システムに向けられている。封入体中に含有される活性性ホルモンは、好ましくは活性物質の50重量%を超える程度までアモルファスである。該活性性ホルモン含有ラミネートは、活性性ホルモン封入体が溶解又は分散形で接着剤マトリックス中に含有されていること、及び該活性性ホルモン封入体は接着剤マトリックスに組み込まれる前に予備製造されていることを特徴とする。従って、プロセスは、活性ホルモン封入体を予備製造するステップと、その後該封入体を接着剤マトリックスポリマー溶液に配合する別のステップとを必要とする。
【0011】
[00011]薬物が過飽和された経皮システムの様々な製造法が知られている。米国特許第4,409,206号、4,490,322号、4,797,284号、4,880,633号、5,352,457号、5,869,089号、5,906,830号、6,153,216号、6,156,335号、及び6,623,763号には、経皮システムの製造法が記載されている。米国特許第4,490,322号には、長期経皮投与用のポリアクリレートフィルムの製造法が開示されている。該方法は、溶媒中に医薬品と凍結乾燥ラテックスポリアクリレートコポリマーの溶液を形成することによる方法である。米国特許第5,906,830号には、過飽和経皮システムの製造法が開示されている。該方法は、非溶解薬物とレザバーマトリックス材料の混合物を予め決められた温度に加熱し、その後冷却することを含む。
【0012】
[00012]スコポラミンは、その分子がラミネート送達システム中でもパッチ送達システム中でも再結晶するため、経皮投与が難しい分子である。この再結晶が起こるために送達速度が減退する。いくつかの米国特許(4,832,953、5,662,928、6,569,448、6,238,700)には、結晶スコポラミン又はそれらの水和物の除去又は形成を防止するためにラミネート及びパッチをアニールするためのアニール法が記載されている。これらのプロセスは、長たらしく複雑でコストもかかる。
【0013】
[00013]オキシブチニンも経皮送達には厄介な分子である。米国特許第5,164,190号には、薬物を飽和濃度の20%〜80%の濃度で担体中に溶解させた拡散メカニズムによる疎水性薬物の経皮投与が開示されている。米国特許出願第2004/0057985号には、マトリックス層が互いに非混和性の二つの相、すなわち内相及び外相を含む経皮システムが開示されている。
【0014】
[00014]米国特許出願第2004/0081683号には、接着剤ポリマー及びオキシブチニンを含むアミン官能性薬物からなり、アミン官能性薬物の塩を吸収する粒子を含まない粘着性(self-adhesive)マトリックスを含有する経皮システムが開示されている。
【0015】
[00015]ナルトレキソンは皮膚からあまり吸収されないので、皮膚吸収を増強するためのプロドラッグが開発されている。しかしながら、プロドラッグの吸収速度も治療用量を達成するには依然として不十分である。
【0016】
[00016]テストステロンも、高レベルのエンハンサーの存在下でも皮膚からあまり吸収されない。
【0017】
[00017]結晶エストラジオールの経皮送達速度は、必要とされる治療用量は低いにもかかわらず、治療的レベルを達成できないことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,409,206号
【特許文献2】米国公開第2005/0064022号
【特許文献3】米国公開第2005/0175678号
【特許文献4】米国特許第6,902,741号
【特許文献5】米国特許第4,409,206号
【特許文献6】米国特許第4,490,322号
【特許文献7】米国特許第4,797,284号
【特許文献8】米国特許第4,880,633号
【特許文献9】米国特許第5,352,457号
【特許文献10】米国特許第5,869,089号
【特許文献11】米国特許第5,906,830号
【特許文献12】米国特許第6,153,216号
【特許文献13】米国特許第6,156,335号
【特許文献14】米国特許第6,623,763号
【特許文献15】米国特許第4,832,953号
【特許文献16】米国特許第5,662,928号
【特許文献17】米国特許第6,569,448号
【特許文献18】米国特許第6,238,700号
【特許文献19】米国特許第5,164,190号
【特許文献20】米国特許出願第2004/0057985号
【特許文献21】米国特許出願第2004/0081683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
[00018]そこで、様々な治療薬のために皮膚からの吸収速度を改良できる安定な経皮システムが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[00019]本発明に従って、様々な治療薬のために改良された安定性及び皮膚からの吸収速度を有する固体分散経皮薬物送達システムを提供する。本発明の経皮薬物送達システムは、安定なアモルファス形の治療薬、及び前記治療薬と水素結合を形成できる分散剤でもあるポリマー性安定剤を含む。本発明の経皮薬物送達システムはさらに、治療薬対ポリマー性安定剤の比率に依存した、治療薬の長期安定性も特徴とする。
【0021】
[00020]本発明の経皮薬物送達システムはさらに少なくとも三つの層、すなわち支持フィルム(backing film)、接着剤層、及び保護用剥離ライナーを含む。接着剤層は、接着剤、アモルファス形の治療薬、及び水素結合形成官能基を含む兼用(combination)ポリマー性安定及び分散剤、及び保護用剥離ライナーを含む。
【0022】
[00021]本発明は、治療薬が、例えば、(i)スコポラミン、オキシブチニン、ナルトレキソン、テストステロン、エストラジオール、ロチゴチン、フェンタニル、エチニルエストラジオール、又はノルエルゲストラール(norelgestral)、(ii)(i)のいずれかのものの製薬学的に許容しうる塩、又は(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)のいずれかのものの組合せでありうる経皮薬物送達システムに特に適応される。
【0023】
[00022]本発明の別の態様は第四の層を含む。この第二接着剤層、又は皮膚接触接着剤層も、接着剤、アモルファス形の治療薬、及び水素結合形成官能基を含む兼用ポリマー性安定及び分散剤を含む。この第二接着剤層は、第一接着剤層(薬物レザバー接着剤層(drug reservoir adhesive layer))と保護用剥離ライナーの間に存在する。第二接着剤は第一接着剤と同じでも異なっていてもよく、第二のアモルファス形の治療薬は第一治療薬と同じでも異なっていてもよい。第二の兼用ポリマー性安定及び分散剤は、前記第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤と同じでも異なっていてもよい。
【0024】
[00023]本発明の別の態様は第五の層を含む。この第五層は、薬物レザバー接着剤層と皮膚接触接着剤層の間に存在する膜を含む。
【0025】
[00024]本発明の別の態様において、接着剤層(薬物レザバー接着剤層及び/又は皮膚接触接着剤層)はさらに、皮膚浸透増強剤、粘着付与剤、及び/又は凝集促進剤を含んでいてもよい。
【0026】
[00025]本発明によれば、少なくとも一つの水素結合形成基を含有するアモルファス形の治療薬は、同じく少なくとも一つの水素結合形成基を含有するポリマー材料のマトリックス内に分散されると、長期間安定なままである。治療薬とポリマー材料の分子間の水素結合による会合も、更なる分散能力を提供する。大きい分散能力は、ポリマー性安定/分散剤を持たない同一の薬物送達デバイスと比較される。大きい分散能力とは、例えば、水素結合なしの分散と比較して、ポリマー材料中に分散される治療薬の量の増大又はポリマー材料全体に分散された治療薬の均一性の高さを含みうる。
【0027】
[00026]本発明によれば、治療薬の安定性は、少なくとも一つの水素結合形成基を含有するポリマー材料対治療薬の重量比が少なくとも0.5であると増大する。
【0028】
[00027]本発明によれば、経皮薬物送達システム中の治療薬の安定性は、治療薬が結晶を形成することなく長期間アモルファス状態を維持する能力によって特徴付けられる。
【0029】
[00028]本発明の一側面において、前記治療薬の少なくとも95%は、室温で少なくとも6ヶ月間貯蔵後もアモルファス形である。本発明の別の側面において、前記治療薬の少なくとも99%は、室温で少なくとも6ヶ月間貯蔵後もアモルファス形である。本発明のさらに別の側面において、前記治療薬の少なくとも99%は、室温で少なくとも18ヶ月間貯蔵後もアモルファス形である。
【0030】
[00029]本発明の別の側面において、治療薬は、前記ポリマー性安定/分散剤を含まない同一の経皮薬物送達における治療薬の皮膚吸収速度と比べて、少なくとも25%増大した皮膚吸収速度を有する。本発明の別の側面において、吸収速度は少なくとも50%増大する。本発明の別の側面において、皮膚吸収速度は少なくとも75%増大する。
【0031】
[00030]さらに、治療薬が低いガラス転移温度を有している場合、アモルファス形の治療薬を分散させるのに必要なポリマー材料対アモルファス形の治療薬の重量比は2以上となる。本発明の一側面において、低いガラス転移温度は50℃未満である。本発明の別の側面において、低いガラス転移温度は40℃未満である。
【0032】
[00031]高いガラス転移温度を有するアモルファス形の治療薬を安定化させるのに必要なポリマー材料対アモルファス形の治療薬の重量比は0.5以上である。本発明の一側面において、高いガラス転移温度は少なくとも60℃である。本発明の別の側面において、高いガラス転移温度は少なくとも70℃である。本発明の一側面において、高いガラス転移温度を有するアモルファス形の治療薬を安定化させるのに必要なポリマー材料対アモルファス形の治療薬の重量比は0.5〜10である。別の側面において、それは0.5〜2である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】[00032]図1は、本発明の三層経皮送達デバイスの拡大概略断面図を示す。
【図2】[00033]図2は、本発明の四層経皮送達デバイスの拡大概略断面図を示す。
【図3】[00034]図3は、本発明の五層経皮送達デバイスの拡大概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[00035]本発明は、固体分散経皮薬物送達システムであって、前記システムは、安定なアモルファス形の治療薬と、前記治療薬と水素結合を形成できるポリマー性安定及び分散剤とを含む。さらに、本発明の固体分散経皮薬物送達システムの治療薬の安定性は、治療薬対ポリマー性安定剤の重量比を最適化することによって増強される。驚くべきことに、安定性は治療薬対ポリマー性安定剤の重量比を最適化することによって増強され、そのような最適比は治療薬のガラス転移温度に依存することがわかった。本明細書において“経皮”とは、医薬品有効成分の皮膚又は粘膜組織内への及びそれらを通過する送達を意味する。図面に本発明のいくつかの態様が描かれている。図において、経皮送達デバイスは皮膚パッチの形態であり、皮膚に適用されると医薬品有効成分を経皮的に送達する機能を果たす。
【0035】
[00036]本明細書において、“ガラス転移温度”又は“Tg”という用語は、物質が標準大気圧での測定で液体状態からガラス状態に転移する温度のことである。高いガラス転移温度を有する薬物は、例えば、少なくとも60℃(すなわち80℃)のTgを有する薬物を含む。低いガラス転移温度を有する薬物は、例えば、50℃未満(すなわち30℃)のTgを有する薬物を含む。
【0036】
[00037]本明細書において、治療薬の“結晶性”及び“結晶化度”という用語は、治療薬のX線回折パターンがアモルファス化合物の場合の散漫に散乱されたX線とは対照的に規則的な鋭いパターンを示すことを意味する。あるいは、結晶化度は、X線結晶化度に較正された技術、例えばFT−IR、密度カラム(density column)、又はDSCによって測定することもできる。本明細書において、“アモルファス”という用語は、治療薬が結晶性ではないことを意味する。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18版,173ページ;The United States Pharmacopeia,23版(1995)1843−1844ページ参照。典型的には、本発明のアモルファス治療薬は、X線回折による測定で約5%未満、好ましくは約2%未満、さらに好ましくは約1%未満、及び最も好ましくは約0.5%〜0%の結晶化度を有する。
【0037】
[00038]本発明の固体分散経皮薬物送達システムは少なくとも三層を含む。図1に三層の経皮送達デバイス10が描かれている。該デバイスは、支持層11、アモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能な水素結合形成官能基を有する安定剤を含む接着剤層12、及び保護用剥離ライナー13を含む。図2には四層の経皮送達デバイス20が描かれている。該デバイスは、薬物レザバー層22、及び皮膚接触層23(それぞれアモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能な水素結合形成官能基を有する安定剤を含む)、支持層21、及び保護用剥離ライナー24を含む。図3には五層の経皮送達デバイス30が描かれている。該デバイスは、薬物レザバー層32、及び皮膚接触層34(それぞれアモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能な水素結合形成官能基を有する安定剤を含む)、薬物レザバー層32と皮膚接触層34に挟まれた膜33、支持層31、及び保護用剥離ライナー35を含む。
【0038】
[00039]これらの固体分散経皮送達デバイスの、皮膚に対する最外層は、支持層11、21、又は31である。支持層はフレキシブルな基材で、医薬品有効成分が意図する薬物送達方向から移動しないようなバリアを提供するとともに、デバイスの支持も提供する。支持層の組成は重要ではない。これらの品質を備えたあらゆる周知の支持層が本発明に使用できる。例えば、下記の材料で構成される支持層が使用できる。すなわち、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエステル/エチレン−酢酸ビニル、金属化ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデン、アルミホイルのような金属フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、又はそれらの混合物又はコポリマー又はラミネートなどである。利用されうる具体的な支持層は、Mediflex(登録商標)1200(Mylan Technologies,Inc社より入手可能)、Mediflex(登録商標)1501、Mediflex(登録商標)1502、Mediflex(登録商標)1503、及びScotchpak(登録商標)1109などである。好適なのは、ポリエチレン及びポリエステルで構成された支持層である。最も好適なのは、支持層としてMediflex(登録商標)1501及びMediflex(登録商標)1200の使用である。
【0039】
[00040]そのような支持層の厚さも重要ではない。約1ミル〜約10ミルの範囲の厚さを有する支持層が本発明の実施に利用されうる。好ましくは、支持層は約1.5ミル〜約6ミルの範囲の厚さを有することになろう。最も好ましくは、支持層は約3ミルの厚さを有することになろう。
【0040】
[00041]少なくとも一つの接着剤層が、デバイスを適用した場合に患者に面する支持層の側に、支持層に隣接して配置される。接着剤層は、接着剤、アモルファス形の少なくとも一つの治療薬、及び前記治療薬と水素結合が可能な少なくとも一つの水素結合形成官能基を含む安定剤を含む。安定剤は分散剤としても機能するので、それによって治療薬のための接着剤層の能力が増大する。
【0041】
[00042]接着剤層は、所望のシステム構造、送達される薬物、及び経皮デバイスの放出特性に応じて、薬物レザバー接着剤層のことも皮膚接触接着剤層のこともある。さらに、デバイスは、一つ又は複数の薬物レザバー接着剤層を含有していてもよい。薬物レザバー接着剤層及び皮膚接触接着剤層は同じ構成成分を含有していてもよいが、いずれか一つの成分の量及び/又は具体的種類は二つの層間で異なっていてもよい。
【0042】
[00043]接着剤層のサイズ及び形状は重要ではなく、デバイスの構造及び放出特性、並びに送達される薬物に依存する。唯一の制限は、接着剤層が支持層より大きくならないことである。
【0043】
[00044]接着剤層に含有される“接着剤材料”は、当該技術分野で知られているものの生体適合性ポリマー又はポリマー材料でよい。例えば、該接着剤材料は、シリコーン、天然及び合成ゴム、ポリエチレン−スチレン−エチレンブロックポリマー、ポリスチレン−ブタジエン、ポリイソブチレン(“PIB”)、ポリブテン、ネオプレン、ポリブタジエン、ポリイソブテン、ポリイソプレン、ポリシロキサン、架橋及び非架橋アクリルコポリマーを含むアクリル系接着剤、酢酸ビニル接着剤、ポリアクリレート、エチレンビニルアセテートコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、ポリウレタン、可塑化重量ポリエーテルブロックアミドコポリマー(plasticized weight polyether block amide copolymers)、可塑化スチレン−ゴムブロックコポリマー、及びそれらの混合物から選ばれうる。二つ以上の接着剤層を含有する態様では、選ばれる接着剤材料の種類は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。好ましくは、接着剤材料は、ポリシロキサン、PIB、及びアクリル系からなる群から選ばれる。最も好ましくは、接着剤材料は一つ又は複数のポリシロキサンである。
【0044】
[00045]少なくとも一つの接着剤層に存在する接着剤材料の量は、接着剤層の約30%〜約95重量%の範囲、好ましくは接着剤層の約35%〜約90重量%の範囲、最も好ましくは接着剤層の約36%〜約80重量%の範囲である。二つ以上の接着剤層を含有する態様においては、接着剤材料の量は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。
【0045】
[00046]一つの好適な態様において、接着剤材料はPIBである。別の好適な態様においては、低分子量PIB(約25,000〜約50,000粘度平均分子量)と高分子量PIB(約700,000〜約1,500,000粘度平均分子量)を含むPIBブレンドが使用される。PIBブレンドが利用される態様において、低分子量PIB対高分子量PIBの比率は約95:5〜約55:45の範囲である。
【0046】
[00047]接着剤層内に含有される安定剤は、デバイス内の治療薬と水素結合が可能な少なくとも一つの水素結合形成官能基を含む。接着剤層の安定剤上に存在しうる水素結合形成官能基の非制限的例は、ヒドロキシル、低級アルコキシ、エーテル、アミノ、フルオロ、及びカルボニルなどである。
【0047】
[00048]安定剤は、貯蔵の環境条件下で治療薬の分解速度を低下させる化合物又は中性の製薬用基剤である。安定剤は治療薬の長期安定性を改良しうる。ここで、“長期”という用語は少なくとも6ヶ月を含む。一側面において、少なくとも12ヶ月間にわたって安定性が改良される。一側面において、少なくとも18ヶ月間にわたって安定性が改良される。一側面において、少なくとも24ヶ月間にわたって安定性が改良される。一態様において、改良された安定性とは治療薬の5%未満しか結晶性でないことを意味する。別の態様において、改良された安定性とは治療薬の1%未満しか結晶性でないことを意味する。
【0048】
[00049]接着剤層に使用される安定剤の非制限的例は、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン−ビニルアセテート)コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、又はそれらの組合せなどである。好適な態様において、安定剤は、ポリビニルピロリドン又はポリ(ビニルピロリドン−ビニルアセテート)コポリマーである。最も好ましくは、安定剤はポリビニルピロリドンである。
【0049】
[00050]接着剤層中に存在する安定剤の量は、変動し、安定剤の素性(アイデンティティー)及び接着剤材料及び/又は治療薬の量及び素性に依存することになろう。一般的に、安定剤の量は、接着剤材料の重量を基にして約2〜約40wt%の範囲であろう。好ましくは、同一基準で約5〜約30wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約5〜20wt%、又はそれぞれ同一基準で約10%〜約20重量%の量で存在するであろう。
【0050】
[00051]“治療薬”又は“医薬品有効成分”という用語は、固体経皮送達デバイスの主要活性成分を言うのに使用される。これは、デバイスの装用者に対して治療的、予防的及び/又は生理学的効果を有する生物活性化合物又は化合物の混合物である。それは安定なアモルファス形で存在し、該治療薬と水素結合が可能なポリマー性安定剤と固体分散を形成している。
【0051】
[00052]医薬品有効成分の非制限的例は、抗炎症物質、オピオイド受容体アンタゴニスト、抗コリン作用薬、冠動脈拡張薬、脳血管拡張薬、末梢血管拡張薬、アルファ−アドレナリン遮断薬、抗感染薬、向精神薬、抗躁病薬、刺激剤、抗ヒスタミン剤、充血除去薬、胃腸鎮静剤、抗狭心症薬、血管拡張薬、抗不整脈薬、抗高血圧薬、血管収縮薬、片頭痛治療薬、抗凝固薬及び抗血栓薬、鎮痛薬、解熱剤、睡眠薬、鎮静剤、抗催吐薬、制吐薬、抗けいれん薬(anti-convulsant)、神経筋肉薬、血糖上昇及び降下薬、甲状腺及び抗甲状腺製剤、利尿薬、抗けいれん薬(anti-spasmodic)、抗催吐薬、子宮弛緩薬、抗肥満薬、同化薬、赤血球生成薬、抗喘息薬、気管支拡張薬、去痰薬、粘液溶解薬、抗尿酸血薬などである。
【0052】
[00053]接着剤層の治療薬は、水素結合形成官能基を含有する医薬品有効成分である。そのような官能基は、ヒドロキシル、低級アルコキシ、エーテル、アミノ、フルオロ、及びカルボニルなどであるが、これらに限定されない。接着剤層での使用が可能な好適な治療薬の非制限的例は、スコポラミン、オキシブチニン、ナルトレキソン、テストステロン、エストラジオール、ロチゴチン、フェンタニル、エチニルエストラジオール、メチルフェニデート、ノルエルゲストラール(norelgestral)及びピロキシカムなどである。治療薬への言及は、それらの塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ及び前述のいずれかの誘導体化合物も含む。例えば、スコポラミンは誘導体化合物のブチルスコポラミンを含む。
【0053】
[00054]接着剤層に存在する治療薬の量は、変動し、因子の中でも特に、その素性、デバイスの意図する投与、存在する接着剤層の数、及び治療薬の量及び素性に依存する。一般的に、治療薬の量は、接着剤材料の重量を基にして約0.5〜約40wt%の範囲であろう。好ましくは、同一基準で約1〜約25wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約5〜約15wt%の量で存在することになろう。
【0054】
[00055]図1に描かれているような単一の接着剤層を含有する態様において、接着剤層に存在する医薬品有効成分の量は、接着剤材料の約1%〜約25重量%の範囲、好ましくは接着剤材料の約5%〜約20重量%の範囲、最も好ましくは接着剤材料の約7%〜約9重量%の範囲である。
【0055】
[00056]図2及び3に描かれているような二つの接着剤層を含有する態様において、薬物レザバー接着剤層中の医薬品有効成分の量は、薬物レザバー接着剤材料の約1%〜約30重量%、好ましくは薬物レザバー接着剤材料の約4%〜約20重量%、最も好ましくは薬物レザバー接着剤材料の約5%〜約15重量%の範囲である。同様に、図2及び3に描かれているような二つの接着剤層を含有する態様において、皮膚接触接着剤層中の医薬品有効成分の量は、皮膚接触接着剤材料の約0%〜約5重量%、好ましくは皮膚接触接着剤材料の約2%〜約4重量%、最も好ましくは皮膚接触接着剤材料の約1%〜約2.5重量%の範囲である。
【0056】
[00057]一態様において、安定剤対治療薬の重量比は約0.5以上である。使用される特定の比率は、治療薬のガラス転移温度に依存する。低いガラス転移温度を有する治療薬は、安定剤対治療薬の比率が2以上の場合に、経皮薬物送達システム中で安定な状態を保つ。スコポラミン及びオキシブチニンのような低い相対ガラス転移温度を有する治療薬は、治療薬を分散及び安定化させるために、重量にして増大された量の安定剤を必要とする。高いガラス転移温度を有する治療薬は、安定剤対治療薬の比率が0.5以上の場合に、経皮薬物送達システム中で安定な状態を保つ。ナルトレキソンのような高い相対ガラス転移温度を有する治療薬は、治療薬を分散及び安定化させるために、重量にして少ない量の安定剤を必要とする。従って、経皮薬物送達システム中の治療薬の安定性は、治療薬のガラス転移温度と安定剤対治療薬の重量比との間の反比例する相関関係に基づいている。
【0057】
[00058]スコポラミンの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約18wt%までの範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約13wt%までの範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約1〜約12wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対スコポラミンの重量比は約0.5以上である。好ましくは該重量比は約2以上であろう。
【0058】
[00059]オキシブチニンの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約25wt%までの範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約20wt%までの範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約1〜約15wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対オキシブチニンの重量比は約0.5以上である。好ましくは該重量比は約2以上であろう。
【0059】
[00060]ナルトレキソンの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約5〜約25wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約7.5〜約20wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約10〜約15wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対ナルトレキソンの重量比は約0.5以上である。好ましくは安定剤対ナルトレキソンの重量比は約1〜1.5である。
【0060】
[00061]テストステロンの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約5〜約25wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約5〜約20wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約5〜約15wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対テストステロンの重量比は約0.5以上である。
【0061】
[00062]エストラジオールの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約1〜約10wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約1〜約8wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約1〜約6wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対エストラジオールの重量比は約0.5以上である。
【0062】
[00063]ロチゴチンの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約1〜約20wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約5〜約15wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約5〜約10wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対ロチゴチンの重量比は約0.5以上である。
【0063】
[00064]フェンタニルの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約1〜約20wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約2〜約10wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約2〜約5wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対フェンタニルの重量比は約0.5以上である。
【0064】
[00065]エチニルエストラジオールの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約0.1〜約10wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約0.2〜約6wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約0.5〜約5wt%の量で存在することになろう。
【0065】
[00066]メチルフェニデートの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約1〜約25wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約5〜約20wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約5〜約15wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対メチルフェニデートの重量比は約0.5以上である。
【0066】
[00067]ノルエルゲストラール(norelgestral)の場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約0.5〜約10wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約0.5〜約8wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約0.5〜約5wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対ノルエルゲストラールの重量比は約0.5以上である。
【0067】
[00068]ピロキシカムの場合、安定剤は一般的に、接着剤材料の重量を基にして約0〜約18wt%の範囲の量で存在することになろう。好ましくは、同一基準で約0〜約13wt%の範囲であろう。最も好ましくは、同一基準で約1〜約12wt%の量で存在することになろう。さらに、安定剤対ピロキシカムの重量比は約0.5以上である。
【0068】
[00069]接着剤層はさらに、一つ又は複数の製薬学的に許容しうる添加剤を含んでいてもよい。添加剤の非制限的例は、凝集促進添加剤、浸透増強剤、可塑剤、粘着付与剤、及び類似の添加剤などである。この目的のための適切な物質は当業者には公知である。
【0069】
[00070]接着剤層に存在する添加剤の量は、接着剤材料の約0.05%〜約40重量%の範囲、好ましくは約1%〜約20%の範囲、さらに好ましくは接着剤材料の約3%〜約20重量%の範囲である。二つ以上の接着剤層を含有する(すなわち、第一の接着剤層と少なくとも第二の接着剤層を有する)態様においては、添加剤の量及び/又は種類は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。
【0070】
[00071]凝集促進剤の非制限的例は、コロイド状二酸化ケイ素、酸化亜鉛、ポリビニルピロリジン、アクリレートコポリマー、クロスポビドン、エチルセルロース、アクリルコポリマー、ベントナイト、粘土、及びそれらの混合物などである。好適な態様において、凝集促進剤はコロイド状二酸化ケイ素である。
【0071】
[00072]接着剤層に存在する凝集促進剤の量は、接着剤材料の約0%〜約15重量%の範囲、好ましくは接着剤材料の約3%〜約10重量%の範囲、最も好ましくは接着剤材料の約5%〜約8重量%の範囲である。二つ以上の接着剤層を含有する態様においては、凝集促進剤の量及び/又は種類は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。
【0072】
[00073]浸透増強剤の非制限的例は、ラウリン酸メチル、オレイン酸エチル、モノオレイン酸グリセロール、オレイン酸、オレイルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクチルドデカノール、ω−ペンダデカラクトン(pendadecalactone)、シクロペンダデカノン(cyclopendadecanone)、モノラウリン酸プロピレングリコール、ユーカリプトール、Ceraphyl 31、1−ドデカノール、トランスクトール P(transcutol P)、トリアセチン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エタノール、オクタノール、リモネン、モノオレイン酸ソルビタン、n−アルキルフェノールエーテルエトキシレート、n−アルキルエーテルエトキシレート、及びそれらの混合物などである。
【0073】
[00074]接着剤層に存在する浸透増強剤の量は、接着剤材料の約0%〜約40重量%の範囲、好ましくは接着剤材料の約0%〜約30重量%の範囲、最も好ましくは接着剤材料の約0%〜約20重量%の範囲である。二つ以上の接着剤層を含有する態様においては、浸透増強剤の量及び/又は種類は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。
【0074】
[00075]可塑剤の非制限的例は、鉱油、シリコーン流体、及びそれらの混合物などである。
【0075】
[00076]接着剤層に存在する可塑剤の量は、接着剤材料の約0%〜約40重量%の範囲、好ましくは接着剤材料の約0%〜約30重量%の範囲、最も好ましくは接着剤材料の約0%〜約20重量%の範囲である。二つ以上の接着剤層を含有する態様においては、可塑剤の量及び/又は種類は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。
【0076】
[00077]粘着付与剤の非制限的例は、シリコーン流体、鉱油、ポリブテン、及びそれらの混合物などである。
【0077】
[00078]接着剤層に存在する粘着付与剤の量は、接着剤材料の約0%〜約40重量%の範囲、好ましくは接着剤材料の約0%〜約30重量%の範囲、最も好ましくは接着剤材料の約0%〜約10重量%の範囲である。二つ以上の接着剤層を含有する態様においては、粘着付与剤の量及び/又は種類は各接着剤層で同じでも異なっていてもよい。
【0078】
[00079]これらの固体分散経皮送達デバイスの最内層は、保護用剥離ライナー、13、24、又は35である。この層は、接着剤層の支持層から離れた側に隣接して位置する。固体分散経皮送達デバイスを適用及び使用する前に、この保護用剥離ライナーは、接着剤層/皮膚接触層、12、23、又は34から剥がされて廃棄される。これは、デバイスの適用前に薬物が移動することに対するバリアを提供し、接着剤層から容易に除去可能である。保護用剥離ライナーの組成は重要ではない。このような品質を備えた周知の剥離ライナー層が本発明に使用できる。典型的には、剥離ライナーは、熱硬化された又は光開始剤/触媒の存在下で紫外線硬化されたシリコーン又はフルオロポリマーで被覆されたベースフィルムを含む。
【0079】
[00080]図1に描かれているような三層の固体経皮送達デバイスでは、唯一の接着剤層である薬物レザバー接着剤層12は、支持層11と保護用剥離ライナー13の間に存在し配置されている。そのような態様においては、剥離ライナー13の除去及びデバイスの適用後、皮膚に接触及び接着するのは薬物レザバー接着剤層12である。
【0080】
[00081]図2に描かれているような四層の固体経皮送達デバイスでは、薬物レザバー接着剤層22と皮膚接触接着剤層23の両方が存在し、互いに隣接している。薬物レザバー接着剤層22は、支持層21と皮膚接触接着剤層23の間に配置されている。一方、皮膚接触接着剤層23は、薬物レザバー接着剤層22と保護用剥離ライナー24の間に配置されている。そのような態様においては、剥離ライナー24の除去及びデバイスの適用後、皮膚接触接着剤層23が皮膚に接触及び接着する。
【0081】
[00082]図3に描かれているような五層の固体経皮送達デバイスでは、薬物レザバー接着剤層32と皮膚接触接着剤層34の両方が存在するが、膜層33によって分離されている。薬物レザバー接着剤層は、支持層31と膜層33の間に配置されている。一方、皮膚接触接着剤層は、膜層33と剥離ライナー35の間に配置されている。そのような態様においては、剥離ライナー35の除去及びデバイスの適用後、皮膚接触接着剤層34が皮膚に接触及び接着する。
【0082】
[00083]五層の固体経皮送達デバイスにおけるように、二つの接着剤層を含有する態様は、膜、織りメッシュ又は不織布33をさらに含んでいてもよい。膜33は、薬物レザバー接着剤層32と皮膚接触接着剤層34の間に配置されている。膜層は、拡散の制御及び医薬品有効成分の制御放出の提供といった様々な目的を果たすことができる。膜層は、膜が速度制御をするように、すなわちデバイスにおける膜の存在が、膜を持たない類似のデバイスと比べてデバイスの皮膚浸透プロフィールを変更できるように選ばれる。膜、織りメッシュ又は不織布は、二つの接着剤層間で接着剤の移動を削減するための係留層としての役割も果たしうる。
【0083】
[00084]適切な膜は連続フィルム膜及び微孔性膜などで、織物でも不織材料でもよい。膜は、好ましくは、当業者によって従来使用されているフレキシブルなポリマー材料からできている。膜層の製造に使用できるポリマーフィルムは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチル酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン及びその他の適切なポリマーを含むものなどであるが、これらに限定されない。一態様において、膜層は、約0.5〜約28wt%の酢酸ビニルを含有するエチレン:酢酸ビニルコポリマーから製造された微孔性フィルム膜である。適切な織りメッシュは、Saatitech,Inc.社から入手できるSaatifil(登録商標)PES、例えばPES 105/52などである。適切な不織布は、DuPont Nonwovens Sontara Technologiesから入手できるSontara(登録商標)である。
【0084】
[00085]好適な態様において、膜層は微孔性ポリプロピレン膜、例えば、Celgard(登録商標)2400(Celgard,Inc.社より入手可能)、Solupor;Cotran 9702、Cotran 9705、Cotran 9706、Cotran 9707、Cotran 9712、Cotran 9715、Cotran 9716、Cotran 9728(3M(登録商標)社から入手可能)、及びSolupor(登録商標)10P05A(DSM SoluTech社から入手可能)である。膜厚は、一般的に、約10μm〜約100μmの範囲でありうる。好ましくは、膜厚は約15μm〜約50μmの範囲でありうる。
【0085】
[00086]本発明は、本明細書中に記載の固体経皮送達デバイスの製造法にも関する。
【0086】
[00087]一態様は、支持層11、アモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能な水素結合形成官能基を有する安定剤を含む接着剤層12、及び保護用剥離ライナー13を含む三層の経皮デバイス10の製造法に向けられる。まず、薬物レザバー接着剤層を、治療薬とポリマー性安定剤の両方を溶媒中に完全に溶解して均一な溶液を形成し、該溶液を接着剤又は接着剤溶液と混合して新しい溶液又は懸濁液を形成し、次いで該溶液又は懸濁液で剥離ライナーをコーティングすることによって製造する。該溶液又は懸濁液は、浸透増強剤のような所望成分を含有していてもよい。次に、コーティングされた剥離ライナーを乾燥させて乾燥接着剤を形成する。次に、乾燥接着剤を支持フィルムにラミネートして三層フィルムを形成する。三層を含有する個別デバイス(又はパッチ)をラミネートから打ち抜く。ラミネートからの該層の打ち抜きには当該技術分野で公知の伝統的方法が使用できる。別の態様は、(a)第一のアモルファス形の治療薬と水素結合形成官能基を含む第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤とを含む第一の均一溶液を、(ii)第一の接着剤又は接着剤溶液と混合して、第二の溶液又は懸濁液を形成し、(b)剥離ライナーを前記第二の溶液又は懸濁液でコーティングして第一の被覆剥離ライナーを形成し、そして(c)前記第一の被覆剥離ライナーを乾燥させることを含む経皮薬物送達デバイスの製造法に向けられる。
【0087】
[00088]別の態様においては、アモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能な水素結合形成官能基を有する安定剤をそれぞれ含む薬物レザバー層22及び皮膚接触層23、支持層21、及び保護用剥離ライナー24を含む四層の経皮デバイス20の製造法である。まず、剥離ライナー上の薬物レザバー接着剤層を製造する。薬物レザバー接着剤層は、治療薬とポリマー性安定剤の両方を溶媒中に完全に溶解して均一な溶液を形成し、該溶液を接着剤又は接着剤溶液と混合して新しい溶液又は懸濁液を形成し、次いで該溶液又は懸濁液で剥離ライナーをコーティングすることによって製造される。該溶液又は懸濁液は、浸透増強剤のような所望成分を含有していてもよい。次に、コーティングされた剥離ライナーを乾燥させて乾燥接着剤を形成する。次に、乾燥接着剤を支持フィルムにラミネートして三層フィルムを形成する。
【0088】
[00089]第二に、剥離ライナー上の皮膚接触接着剤層を製造する。皮膚接触接着剤層は、治療薬とポリマー性安定剤の両方を溶媒中に完全に溶解して均一な溶液を形成し、該溶液を接着剤又は接着剤溶液と混合して新しい溶液又は懸濁液を形成し、次いで該溶液又は懸濁液で剥離ライナーをコーティングすることによって製造される。該溶液又は懸濁液は、浸透増強剤のような所望成分を含有していてもよい。次に、コーティングされた剥離ライナーを乾燥させて乾燥接着剤を形成する。
【0089】
[00090]最後に、四層ラミネートを形成するために、皮膚接触接着剤層及び薬物レザバー層の利用可能な側を一緒にラミネートする。四層を含有する個別デバイス(又はパッチ)をラミネートから打ち抜く。ラミネートからの該層の打ち抜きには当該技術分野で公知の伝統的方法が使用できる。
【0090】
[00091]別の態様は、(a)(i)第一のアモルファス形の治療薬と水素結合形成官能基を含む第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤とを含む第一の均一溶液を、(ii)第一の接着剤又は接着剤溶液と混合して、第二の溶液又は懸濁液を形成し、(b)剥離ライナーを前記第二の溶液又は懸濁液でコーティングして第一の被覆剥離ライナーを形成し、そして(c)前記第一の被覆剥離ライナーを乾燥させることを含む経皮薬物送達デバイスの製造法を含む。
【0091】
[00092]別の態様においては、アモルファス形の治療薬及び前記治療薬と水素結合が可能な水素結合形成官能基を有する安定剤をそれぞれ含む薬物レザバー層32及び皮膚接触層34、薬物レザバー層32と皮膚接触層34の間に挟まれた膜33、支持層31、及び保護用剥離ライナー35を含む五層の経皮デバイス30の製造法である。まず、剥離ライナー上の薬物レザバー接着剤層を製造する。薬物レザバー接着剤層は、治療薬とポリマー性安定剤の両方を溶媒中に完全に溶解して均一な溶液を形成し、該溶液を接着剤又は接着剤溶液と混合して新しい溶液又は懸濁液を形成し、次いで該溶液又は懸濁液で剥離ライナーをコーティングすることによって製造される。該溶液又は懸濁液は浸透増強剤を含有していてもよい。次に、コーティングされた剥離ライナーを乾燥させて乾燥接着剤を形成する。次に、乾燥接着剤を支持フィルムにラミネートして三層フィルムを形成する。次に剥離ライナーを剥がすと薬物レザバー接着剤層が支持フィルム上に残る。
【0092】
[00093]別の態様においては、(a)(i)第一のアモルファス形の治療薬と水素結合形成官能基を含む第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤とを含む第一の均一溶液を、(ii)第一の接着剤又は接着剤溶液と混合して、第二の溶液又は懸濁液を形成し、(b)剥離ライナーを第二の溶液又は懸濁液でコーティングして第一の被覆剥離ライナーを形成し、そして(c)第一の被覆剥離ライナーを乾燥させることを含む経皮薬物送達デバイスの製造法である。この方法はさらに、(a’)(i)第一の治療薬と同じでも異なっていてもよい第二のアモルファス形の治療薬、及び水素結合形成官能基を含む、第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤と同じでも異なっていてもよい第二の兼用ポリマー性安定及び分散剤を含む第二の均一溶液を、(ii)第一の接着剤又は接着剤溶液と同じでも異なっていてもよい第二の接着剤又は接着剤溶液と混合して、第三の溶液又は懸濁液を形成し、(b’)第一の剥離ライナーと同じでも異なっていてもよい第二の剥離ライナーを前記第三の溶液又は懸濁液でコーティングし、(c’)第二の被覆剥離ライナーを乾燥させ、(d)第一の乾燥被覆剥離ライナーを、膜、織りメッシュ、又は不織メッシュの一つの側にラミネートし、そして(e)第二の乾燥被覆剥離ライナーを、膜、織りメッシュ、又は不織メッシュの第二の側にラミネートすることを含む。
【0093】
[00094]皮膚接触接着剤層及び薬物レザバー層は、膜、織りメッシュ、又は不織布に同時にラミネートすることができる。この同時ラミネーションの場合、皮膚接触接着剤層を、治療薬とポリマー性安定剤の両方を溶媒中に完全に溶解して均一な溶液を形成することによって最初に製造する。この溶液を接着剤又は接着剤溶液と混合して新しい溶液又は懸濁液を形成する。該溶液又は懸濁液は、浸透増強剤のような所望成分を含有していてもよい。次に、該溶液又は懸濁液を剥離ライナー上にコーティングする。次に、コーティングされた剥離ライナーを乾燥させて乾燥接着剤を形成する。次に、膜、織りメッシュ、又は不織布を皮膚接触接着剤層の利用可能な側にラミネートし、同時に薬物レザバー接着剤層を膜、織りメッシュ、又は不織布の他方の側にラミネートして、五層ラミネートを形成させる。五層を含有する個別デバイス(又はパッチ)をラミネートから打ち抜く。
【0094】
[00095]非同時ラミネーションの場合、膜、皮膚接触接着剤層、及び剥離ライナーを有するラミネートを製造する。皮膚接触接着剤層は、治療薬とポリマー性安定剤の両方を溶媒中に完全に溶解して均一な溶液を形成することによって製造される。この溶液を接着剤又は接着剤溶液と混合して新しい溶液又は懸濁液を形成する。該溶液又は懸濁液は、浸透増強剤のような所望成分を含有していてもよい。次に、該溶液又は懸濁液を剥離ライナー上にコーティングする。次に、コーティングされた剥離ライナーを乾燥させて乾燥接着剤を形成する。次に、膜を皮膚接触接着剤層の利用可能な側にラミネートする。最後に、五層ラミネートを形成するために、皮膚接触接着剤ラミネート上の膜の利用可能な側を薬物レザバー接着剤層の利用可能な側にラミネートする。五層を含有する個別デバイス(又はパッチ)をラミネートから打ち抜く。ラミネートからの該層の打ち抜きには当該技術分野で公知の伝統的方法が使用できる。
【0095】
[00096]本発明の手順を実施するにあたり、当然のことながら、特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件などへの言及は、限定を意図しているのではなく、当業者が、その解説が示されている特定の文脈において関心又は価値があると認識するすべての関連材料を含むものとして読まれるべきであることは理解されるはずである。例えば、一つの緩衝系又は培地を別のものに置換してもなお、同一ではなくても類似の結果が達成されることは可能であることが多い。当業者は、そのような系及び方法論に関して十分な知識を有しているので、本明細書に開示された方法及び手順の使用に際して、過度な実験をせずとも最適にそれらの目的を果たすような置換をなすことが可能である。
【0096】
[00097]次に、本発明を以下の非制限的実施例によってさらに説明する。これらの実施例の開示内容を適用する際には、本発明に従って開示された方法のその他及び異なる態様が必ずや当業者には思い浮かぶであろうことは、はっきりと心に留めておくべきである。
【0097】
[00098]以上及び以下に引用されたすべての出願、特許及び出版物の全開示内容は、それらの全体を引用によって本明細書に援用する。
【0098】
[00099]以下の実施例で本発明及びその特有の特徴をさらに例示する。これらの実施例は本発明をいかなる方法によっても制限しないものとする。
【実施例】
【0099】
[000100]実施例1〜9:安定なアモルファス形のスコポラミン及びスコポラミンと水素結合を形成できるポリマー性分散及び安定剤を含有するスコポラミンの固体分散経皮システム。
【0100】
[000101]実施例1:ガラス瓶にPlastone29/32(12g)とエタノール(7.56g)を加えた。該混合物を、粘稠溶液が形成されるまで、スパチュラで混合し、45℃の水浴中で加熱及び超音波処理した。この溶液にスコポラミン塩基(4.00g)を加えた。該混合物を、透明粘稠溶液が形成されるまで、スパチュラで混合、加熱、超音波処理及び振り回した(swirl)。溶液をしばらく冷却した後、Dow Corning社のシリコーン接着剤7−4302(40.82g、60%固体)及び酢酸エチル(8.34g)を加えた。該材料を高剪断で迅速混合してクリーム状の均一懸濁液を得た。一晩ローリングして気泡を除去した後、該懸濁液を剥離ライナーに被覆し、室温で5分間、40℃に設定されたオーブン中で5分間、及び85℃に設定されたオーブン中で5分間乾燥させて、剥離ライナー上に接着剤の薄層を形成させた。支持フィルムMediflex(登録商標)1502を接着剤側にラミネートした。個別パッチに打ち抜き、袋詰めした。支持フィルムと剥離ライナー間に得られた接着剤層は不透明で、顕微鏡分析によりスコポラミン結晶がないことが観察された。打ち抜かれたパッチのDSC分析から、スコポラミンはアモルファス形でPlastone(PVP)マトリックス内に分散され、さらにこれがシリコーン接着剤マトリックス内に分散されていることが示された。パッチ中の分散アモルファススコポラミンは、29℃のガラス転移温度(Tg)を有していた。非分散アモルファススコポラミンのガラス転移温度は約10℃である。分散アモルファススコポラミンの高いガラス転移温度は、分散剤PVPとスコポラミン分子間の、水素結合を含む分子間相互作用の結果である。X線回折はスコポラミンがパッチ中でアモルファス形であることを示していた。インビトロの流量(flux)研究では、211μg/cmが72時間以内に送達されたことが示された。安定なアモルファス形のスコポラミンを含有するこの固体経皮システムの流量は、結晶スコポラミン製剤の流量(88μg/cm)よりずっと高い。
【0101】
[000102]個別の袋入りパッチを40℃及び室温で貯蔵した。40℃で8ヶ月又は室温で19ヶ月後、顕微鏡及びDSC及びX線粉末回折による分析で結晶は観察されず、スコポラミンはパッチ中でアモルファス形を維持していることが示された。
【0102】
【表1】

【0103】
[000103]表1のデータから、分散されたスコポラミンのアモルファス形を長期間安定させるのにPVP対スコポラミンの重量比は2:1で十分であることがわかる。
【0104】
[000104]実施例10〜15:安定なアモルファス形のナルトレキソン及びナルトレキソンと水素結合を形成できるポリマー性分散及び安定剤を含有するナルトレキソンの固体分散経皮システム。表2のデータから、ナルトレキソンは、そのアモルファス形はアモルファススコポラミンのガラス転移温度より高いガラス転移温度を有しているが、それを分散及び安定させるのに少ないPVPしか必要としないことがわかる。該固体分散経皮システムは、結晶性懸濁液経皮システムの実施例15より高い流量を有している。
【0105】
【表2】

【0106】
[000105] 表2のデータから、分散されたナルトレキソンのアモルファス形を長期間安定させるのにPVP対ナルトレキソンの重量比は1:1で十分であることがわかる。
【符号の説明】
【0107】
10 三層の経皮送達デバイス
11 支持層
12 接着剤層
13 保護用剥離ライナー
20 四層の経皮送達デバイス
21 支持層
22 薬物レザバー層
23 皮膚接触層
24 保護用剥離ライナー
30 五層の経皮送達デバイス
31 支持層
32 薬物レザバー層
33 膜
34 皮膚接触層
35 保護用剥離ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮薬物送達デバイスであって、
(a)支持フィルムと;
(b)第一の接着剤、
第一のアモルファス形の治療薬、及び
水素結合形成官能基を含む第一の兼用(combination)ポリマー性安定及び分散剤
を含む固体分散物を含む第一の接着剤層と;
(c)保護用剥離ライナーと
を含む経皮薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記ポリマー性安定/分散剤対前記アモルファス形の治療薬の重量比が少なくとも0.5である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記治療薬の少なくとも95%が、室温で少なくとも6ヶ月間の貯蔵後にアモルファス形である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記治療薬の少なくとも99%が、室温で少なくとも6ヶ月間の貯蔵後にアモルファス形である、請求項3に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記治療薬の少なくとも99%が、室温で少なくとも18ヶ月間の貯蔵後にアモルファス形である、請求項4に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記治療薬が、前記ポリマー性安定/分散剤を含まない同一の経皮薬物送達物中の前記治療薬の皮膚吸収速度に比べて、少なくとも50%増大した皮膚吸収速度を有する、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記治療薬が、(i)スコポラミン、オキシブチニン、ナルトレキソン、テストステロン、エストラジオール、ロチゴチン、フェンタニル、エチニルエストラジオール、又はノルエルゲストラール(norelgestral)、(ii)(i)のいずれかのものの製薬学的に許容しうる塩、又は(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
(d)前記第一の接着剤層と前記保護用剥離ライナーとの間に第二の接着剤層をさらに含み、前記第二の接着剤層は、
前記第一の接着剤と同じでも異なっていてもよい第二の接着剤、前記第一の治療薬と同じでも異なっていてもよい第二のアモルファス形の治療薬、及び
水素結合形成官能基を含む、前記第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤と同じでも異なっていてもよい第二の兼用ポリマー性安定及び分散剤
を含む、請求項1に記載の経皮薬物送達デバイス。
【請求項9】
(e)前記第一及び第二の接着剤層の間に膜
をさらに含む、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記第一の接着剤層が、皮膚浸透増強剤、粘着付与剤、凝集促進剤、及び前述のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれるメンバーをさらに含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記第一、第二、又は第一及び第二の接着剤層が、独立して、皮膚浸透増強剤、粘着付与剤、凝集促進剤、及び前述のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれるメンバーをさらに含む、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記アモルファス形の治療薬が少なくとも一つの水素結合形成基を含有する、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記アモルファス形の治療薬と前記ポリマー性安定/分散剤との間に一つ又は複数の水素結合があり、前記薬物送達デバイスは、前記ポリマー性安定/分散剤を含まない同一の経皮薬物送達デバイスと比べてより大きい分散能力を有する、請求項12に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
ポリマー性安定/分散剤対アモルファス形の治療薬の重量比が0.5以上である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記ポリマー性安定剤対前記アモルファス形の治療薬の重量比が2以上であり、前記アモルファス形の治療薬が50℃未満のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項16】
ポリマー性安定剤対アモルファス形の治療薬の重量比が2〜10であり、前記アモルファス形の治療薬が40℃未満のガラス転移温度を有する、請求項15に記載の薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記ポリマー性安定剤対前記アモルファス形の治療薬の重量比が0.5以上であり、前記アモルファス形の治療薬が少なくとも60℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記ポリマー性安定剤対前記アモルファス形の治療薬の重量比が0.5〜10であり、前記アモルファス形の治療薬が少なくとも70℃のガラス転移温度を有する、請求項17に記載の薬物送達デバイス。
【請求項19】
前記ポリマー性安定剤対前記アモルファス形の治療薬の重量比が0.5〜2である、請求項18に記載の薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記アモルファス形の治療薬が1.0%未満の結晶化度を含有する、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記接着剤層が約0.05〜約40重量%の前記治療薬を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記接着剤層が約1〜約20重量%の前記アモルファス形の治療薬を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記接着剤が、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、アクリル系接着剤、又は前述のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項24】
経皮薬物送達デバイスの製造法であって、前記方法は、
(a)(i)第一のアモルファス形の治療薬、及び水素結合形成官能基を含む第一の兼用ポリマー性安定及び分散剤を含む第一の均一溶液を、
(ii)第一の接着剤又は接着剤溶液と
混合して、第二の溶液又は懸濁液を形成し、
(b)剥離ライナーを前記第二の溶液又は懸濁液でコーティングして第一の被覆剥離ライナーを形成し、そして
(c)前記第一の被覆剥離ライナーを乾燥させる
ことを含む方法。
【請求項25】
(d)前記乾燥被覆剥離ライナーを支持フィルム上にラミネートする
ステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(e)前記ラミネートから一つ又は複数の単位剤形を打ち抜く
ステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記均一溶液、接着剤、接着剤溶液、第二の溶液又は懸濁液の一つ又は複数が、独立して、皮膚浸透増強剤、粘着付与剤、凝集促進剤、又は前述のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれるメンバーをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
(a’)(i)前記第一の治療薬と同じでも異なっていてもよい第二のアモルファス形の治療薬、及び水素結合形成官能基を含む、前記第一の兼用安定及び分散剤と同じでも異なっていてもよい第二の兼用ポリマー性安定及び分散剤を含む第二の均一溶液を、
(ii)前記第一の接着剤又は接着剤溶液と同じでも異なっていてもよい第二の接着剤又は接着剤溶液と
混合して、第三の溶液又は懸濁液を形成し、
(b’)前記第一の剥離ライナーと同じでも異なっていてもよい第二の剥離ライナーを前記第三の溶液又は懸濁液でコーティングし、
(c’)第二の被覆剥離ライナーを乾燥させ、
(d)第一の乾燥被覆剥離ライナーを支持フィルム上にラミネートし、
(e)前記第一の剥離ライナーを前記第一の被覆剥離ライナーから除去して第一の乾燥コーティング層を形成し、そして
(f)第二の乾燥被覆剥離ライナーを前記第一の乾燥コーティング層にラミネートする
ことをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第一の均一溶液、第一の接着剤又は接着剤溶液、第二の溶液又は懸濁液、第二の均一溶液、第二の接着剤又は接着剤溶液、又は第三の溶液又は懸濁液の一つ又は複数が、独立して、皮膚浸透増強剤、粘着付与剤、凝集促進剤、及び前述のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれるメンバーをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a’)(i)前記第一の治療薬と同じでも異なっていてもよい第二のアモルファス形の治療薬、及び水素結合形成官能基を含む、前記第一の兼用安定及び分散剤と同じでも異なっていてもよい第二の兼用ポリマー性安定及び分散剤を含む第二の均一溶液を、
(ii)前記第一の接着剤又は接着剤溶液と同じでも異なっていてもよい第二の接着剤又は接着剤溶液と
混合して、第三の溶液又は懸濁液を形成し、
(b’)前記第一の剥離ライナーと同じでも異なっていてもよい第二の剥離ライナーを前記第三の溶液又は懸濁液でコーティングし、
(c’)第二の被覆剥離ライナーを乾燥させ、
(d)第一の乾燥被覆剥離ライナーを、膜、織りメッシュ、又は不織メッシュの一つの側にラミネートし、そして
(e)第二の乾燥被覆剥離ライナーを、前記膜、織りメッシュ、又は不織メッシュの第二の側にラミネートする
ことをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(d)及び(e)が同時に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(d)がステップ(e)の前に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第一の均一溶液、第一の接着剤又は接着剤溶液、第二の溶液又は懸濁液、第二の均一溶液、第二の接着剤又は接着剤溶液、又は第三の溶液又は懸濁液の一つ又は複数が、独立して、皮膚浸透増強剤、粘着付与剤、凝集促進剤、及び前述のいずれかのものの組合せからなる群から選ばれるメンバーをさらに含む、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521974(P2011−521974A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511876(P2011−511876)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045739
【国際公開番号】WO2009/158120
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510315892)マイラン・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】