説明

官能化カーボンナノチューブで充填されたエポキシの向上した機械特性

本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)のエポキシマトリックスへの組み込みおよびそれによるエポキシ系CNTナノ複合材料を製造の方法に関する。初期およびオゾン処理CNTはいずれも、常に、この方法により樹脂中へ均質に分散される。初期CNT(p−MWCNT)と比べて、オゾン処理CNT(f−MWCNT)は、エポキシ樹脂内で機械特性についてかなり向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)のエポキシマトリックスへの組み込みおよびそれによるエポキシ系CNTナノ複合材料の製造方法に関する。初期およびオゾン処理CNTはいずれも、常に、この方法により樹脂中へ均質に分散される。初期CNT(p−MWCNT)と比べて、オゾン処理CNT(f−MWCNT)は、エポキシ樹脂内で機械特性をかなり向上させる。
【背景技術】
【0002】
多くの研究者は、Iijimaにより1991年に(Nature 1991年、第354巻、第56頁)カーボンナノチューブ(CNT)が発見されて以来、カーボンナノチューブに注目してきた。単壁カーボンナノチューブ(SWCNT)が、通常0.7〜2nmの範囲での直径を有する完全な円筒へと丸くなったグラファイト格子の単一層からなるのに対し、多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)は、より大きな直径を通常有する幾つかの円筒状シェルからなる。特有の構造は、CNTに優れた熱安定性および際立った機械特性、電気特性および構造特性を付与する。数十年にわたって、ポリマー材料の機械特性および電気特性を向上させるために、多くの注意がCNTの利用に払われてきた(WO2008057623、WO2006096203、WO2003040026、Adv Mater 2004年、第16巻、第58頁)。
【0003】
先行技術によれば、カーボンナノチューブは主に、3〜100nmの直径および該直径の数倍の長さを有する円筒状カーボンチューブであると理解される。該チューブは、配向炭素原子の1以上の層からなり、異なった形態のコアを有する。また、該カーボンナノチューブは、例えば「カーボンフィブリル」または「中空カーボンファイバー」とも称される。
【0004】
カーボンナノチューブは、専門文献において長い間知られている。Iijima(出版物:S.Iijima、Nature第354巻、第56〜58頁、1991年)がナノチューブを発見したと一般に考えられるが、これらの物質、特に、複数のグラファイト層を有する繊維状グラファイト物質は、1970年代または1980年代初期から知られている。TatesおよびBaker(GB1469930A1、1977年およびEP56004A2、1982年)は、炭化水素の触媒分解からの極めて微細な繊維状炭素の堆積物を最初に記載した。しかしながら、短鎖状炭化水素に基づいて製造された炭素フィラメントは、その直径についてさらに詳細に特徴付けられていない。
【0005】
従来法によるこれらのチューブの構造は、円筒型である。円筒構造の場合、単壁モノカーボンナノチューブと多壁円筒状カーボンナノチューブとの間で区別される。その製造のための従来法は、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、化学蒸着法(CVD法)および触媒化学蒸着法(CCVD法)である。
【0006】
また、上記円筒状カーボンナノチューブは、アーク放電法により製造することもできる。Iijima、Nature 第354巻、1991年、第56〜58頁は、アーク放電法による、丸くなって途切れのない閉じた円筒を形成し、および互いに入れ子になった2以上のグラフェン層からなるカーボンチューブの形成について報告する。キラル配置およびアキラル配置が、カーボンファイバーの縦軸に沿って、回転ベクトルに応じて可能である。
【0007】
凝集グラフェン層(いわゆるスクロール型)または破壊グラフェン層(いわゆるオニオン型)がナノチューブの構造のための基礎を形成するカーボンチューブの類似構造は、Bacon等、J.Appl.Phys.第34巻、1960年、第283〜290頁により最初に記載された。該構造は通常、スクロール型と称される。その後、類似構造がまた、Zhou等、Science、第263巻、1994年、第1744〜1747頁により、およびLavin等、Carbon 第40巻、2002年、第1123〜1130頁により見出された。
【0008】
エポキシは、硬化の際のその低収縮、優れた寸法安定性、良好な防食性および際立った接着性のために、工業においてよく用いられる熱硬化性ポリマーの1つである。しかしながら、エポキシ樹脂の脆い特性は、構造材料としてのその用途について、特に電気、航空および宇宙工業に用いる高性能用途について大きな欠点である。エポキシ樹脂のCNTによる補強および強靱化は、好ましい方法に見えるが、どのようにしてCNTをポリマーマトリックス中へ均質に分散させるか、およびどのようにしてCNTとポリマーマトリックスとの間での良好な接着を実現させるのかがこれまでの大きな課題である。
【0009】
大きなアスペクト比を有するCNTは、高度に絡み合い、従って、大きな凝集体を形成し、得られたエポキシ−CNT複合材料の機械的および電気的特性をいずれも損なわせる(Adv Mater 2000年、第12巻、第750頁およびAppl Phys Lett 1998年、第73巻、第3842頁)。
【0010】
幾つかの方法が、得られるナノ複合材料の向上した機械的、電気的および熱的特性に恩恵をもたらすポリマーマトリックス中へCNTを均質に分散させるために、CNT凝集体を効率的に細分化するために数年にわたって既に試されてきた。これらの一つは、機械混合、すなわちCNTフィラーをポリマー中へせん断強撹拌、例えば高速混合等により添加することである(WO2008054034、WO2008034939、Polymer 2006年、第47巻、第293頁、Comp Sci Tech 2004年、第64巻、第2363頁)。超音波処理の使用は、物理的混合を組み合わせるかどうかに拘わらず、向上した分散体を得るのに役立つことがある(Comp Sci Tech 2009年、第69巻、第335頁、SAMPE Conference Proceedings 2008年、第53巻、第329頁、Recent Adv Textile Comp Procs Intern Conf Textile Comp、第9版、Newark US、2008年10月13〜15日、J Mater Sci 2008年、第53巻、第5頁、Mater Sci Eng A:Struct Mater Props Microstruct Proc 2008年、第A475巻、第157頁)。
【0011】
上記処理の間、適当な有機溶媒および界面活性剤(WO2006096203、SAMPE 2002 Symp&Exhi、Chem Mater、2000年、第12巻、第1049頁、Gaofenzi Cailiao Kexue Yu Gongcheng 2008年、第24巻、第134頁)は、CNTポリマーブレンドを希釈し、2相の相溶性を増加させることを必要とし得る。しかしながら、強力な物理混合および超音波は、CNTの絡み合いを実際に細分化させるのに十分ではないことが記載されている(Polymer 1999年、第40巻、第5967頁、AIP Conf Proc 2000年、第N544巻、第521頁、Appl Phys Lett 2002年、第80巻、第2767頁)。
【0012】
均質なCNTのポリマーマトリックス中への分散に加えて、グラファイトCNTおよび有機ポリマーホスト間の相互作用もまた、ポリマー複合材料を強化する極めて重要な役割を果たす(WO2004070349、US2006202168、WO2005014708、US2007259994)。幾つかの試みが、無機フィラーおよび有機ホスト間での共有結合性相互作用を、「ポリソープ」と同様のポリマー鎖を含有するピレンセグメント(Chem Comm 2003年、第23巻、第2904頁、Chem Mater 2004年、第16巻、第4005頁、J Am Chem Soc 2006年、第128巻、第6556頁)またはポルフィリン(Adv Mater 2005年、第17巻、第871頁)を用いるπ−π超分子相互作用により向上させるためになされてきた。化学基またはグラフトポリマーを有する共有結合的に官能化されたCNTは、効率的に、分散を促進させ、良好なCNTポリマーの界面接着を確保する他の方法である(WO2007115162、US2008090951、WO2005028174、Nano Lett 2003年、第3巻、第1107頁、Adv Funct Mter 2004年、第14巻、第643頁、Compsites Part A:Appl Sci Manufc 2007年、第38A巻、第1331頁、Nanotechnology 2006年、第17巻、第155頁、SAMPE Conference Proceedings 2008年、第53巻、5&40、Comps Sci Tech 2008年、第68巻、第3259頁、Comps Sci Tech 2008年、第67巻、第3331頁、J Mater Sci 2008年、第43巻、第2653頁、Chem Mater 2007年、第19巻、第308頁、Eur Polym J 2006年、第42巻、第2765頁、J Appl Polym Sci 2006年、第100巻、第97頁、Polym Rev 2007年、第47巻、第265頁)。
【0013】
上記方法は、効率的であると分かるが、工業的実施について深刻な制限が存在する。溶媒の特別な費用に拘わらず、有機溶媒を用いてポリマー中へCNTを分散させることも、溶媒を硬化前にポリマーから完全に除去しなければならないので、時間およびエネルギーを消費する。さらに、有機溶媒は、環境および健康に有害な作用をもたらす。また、同様の問題が、CNTを官能化する場合に、濃縮HNO/HSOまたはHを用いて液体強酸化剤として用いる際、存在する。界面活性剤を用いてCNT分散体を向上させることも、該界面活性剤が、得られるナノ複合材料中に残存し、性能を低下させるので、問題となることがある。CNTの共有結合グラフトポリマーでの多段階変性は、複雑な化学手法および高い費用のために工業的用途に適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2008057623号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006096203号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2003040026号パンフレット
【特許文献4】英国特許第1469930A1号明細書
【特許文献5】欧州特許第56004A2号明細書
【特許文献6】国際公開第2008054034号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2008034939号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2004070349号パンフレット
【特許文献9】米国特許第2006202168号明細書
【特許文献10】国際公開第2005014708号パンフレット
【特許文献11】米国特許第2007259994号明細書
【特許文献12】国際公開第2007115162号パンフレット
【特許文献13】米国特許第2008090951号明細書
【特許文献14】国際公開第2005028174号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】S.Iijima、「Nature」、第354巻、第56〜58頁、1991年
【非特許文献2】Bacon等、「J.Appl.Phys.」、第34巻、1960年、第283〜290頁
【非特許文献3】Zhou等、「Science」、第263巻、1994年、第1744〜1747頁
【非特許文献4】Lavin等、「Carbon」、第40巻、2002年、第1123〜1130頁
【非特許文献5】「Adv Mater」、2000年、第12巻、第750頁
【非特許文献6】「Appl Phys Lett」、1998年、第73巻、第3842頁
【非特許文献7】「Polymer」、2006年、第47巻、第293頁、
【非特許文献8】「Comp Sci Tech」、2004年、第64巻、第2363頁
【非特許文献9】「Comp Sci Tech」、2009年、第69巻、第335頁
【非特許文献10】「SAMPE Conference Proceedings」、2008年、第53巻、第329頁
【非特許文献11】「Recent Adv Textile Comp Procs Intern Conf Textile Comp」、第9版、ニューアーク、米国、2008年10月13〜15日
【非特許文献12】「J Mater Sci」、2008年、第53巻、第5頁
【非特許文献13】「Mater Sci Eng A:Struct Mater Props Microstruct Proc」、2008年、第A475巻、第157頁
【非特許文献14】「SAMPE 2002 Symp&Exhi、Chem Mater」、2000年、第12巻、第1049頁
【非特許文献15】「Gaofenzi Cailiao Kexue Yu Gongcheng」、2008年、第24巻、第134頁
【非特許文献16】「Polymer」、1999年、第40巻、第5967頁
【非特許文献17】「AIP Conf Proc」、2000年、第N544巻、第521頁
【非特許文献18】「Appl Phys Lett」、2002年、第80巻、第2767頁
【非特許文献19】「Chem Comm」、2003年、第23巻、第2904頁、
【非特許文献20】「Chem Mater」、2004年、第16巻、第4005頁
【非特許文献21】「J Am Chem Soc」、2006年、第128巻、第6556頁
【非特許文献22】「Adv Mater」、2005年、第17巻、第871頁
【非特許文献23】「Nano Lett、2003年、第3巻、第1107頁
【非特許文献24】「Adv Funct Mter」、2004年、第14巻、第643頁
【非特許文献25】「Compsites Part A:Appl Sci Manufc」、2007年、第38A巻、第1331頁
【非特許文献26】「Nanotechnology」、2006年、第17巻、第155頁
【非特許文献27】「SAMPE Conference Proceedings」、2008年、第53巻、5&40
【非特許文献28】「Comps Sci Tech」、2008年、第68巻、第3259頁
【非特許文献29】「Comps Sci Tech」、2008年、第67巻、第3331頁
【非特許文献30】「J Mater Sci」、2008年、第43巻、第2653頁
【非特許文献31】「Chem Mater」、2007年、第19巻、第308頁、
【非特許文献32】「Eur Polym J」、2006年、第42巻、第2765頁
【非特許文献33】「J Appl Polym Sci」、2006年、第100巻、第97頁
【非特許文献34】「Polym Rev」、2007年、第47巻、第265頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、オゾン処理多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)を強化フィラーとして用いてエポキシ樹脂の機械的および電気的特性を向上させた。好ましくは、水蒸気の存在下でのオゾン分解は、MWCNTを効率的に官能基化させる。液体強酸化剤を用いる従来の酸化法と比べて、オゾン分解は、処理がより一層便利であり、環境に優しく、並びに費用が安い。表面変性でのMWCNTは、エポキシ樹脂と、最適な処理条件下でエポキシ樹脂と機械的にブレンドし、溶媒を方法全体において存在させない。この方法により、満足のいくMWCNTのエポキシへの均質な分散が、特に本発明のオゾン処理MWCNTについて得られる。MWCNT/エポキシナノ複合材料は、比較的低MWCNT含有量でさえ、純エポキシ樹脂と比べて、著しく向上した機械特性を示す。
【0017】
本発明は、強化CNTエポキシポリマー複合材料をもたらす、CNT凝集体の水蒸気の存在下でのオゾン分解による効率的な官能基化およびそのオゾン処理カーボンナノチューブ(CNT)のエポキシ樹脂への細分化方法を提供することである。本発明のある実施態様は、CNTのエポキシポリマーマトリックスへの組み込み法およびCNT/EPナノ複合材料を製造する方法を提供する。本発明のCNTは、約100nm以下の少なくとも1つの寸法を有し、ポリマーマトリックス中に実質的に均質に分散させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明によるエポキシ系ナノ複合材料の引張応力曲線を例示する。
【図2】図2は、純エポキシおよびp−およびf−MWCNTで充填されたエポキシ系ナノ複合材料の引張特性を例示する。
【図3】図3は、純エポキシおよびp−およびf−MWCNTで充填されたエポキシ系ナノ複合材料の破壊靱性を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の主題は、エポキシポリマー、カーボンナノチューブおよび必要に応じて硬化剤を含み、該カーボンナノチューブが、以下の工程:
a)カーボンナノチューブを反応ゾーン中へ設置する工程、
b)オゾン、酸素および水の混合物を前記カーボンナノチューブへ通過させる工程
を含む酸素/オゾンによる気相中での同時処理により酸化されていることを特徴とする複合材料である。
【0020】
好ましい材料は、オゾン、酸素および水の混合物が、工程b)においてカーボンナノチューブの凝集体を連続的に通過することを特徴とする。
【0021】
反応ゾーンにおける温度は、工程b)において、特に少なくとも200℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは10〜60℃である。
【0022】
カーボンナノチューブのオゾン分解の反応時間は、工程b)において、特に120分まで、好ましくは60分まで、より好ましくは30分までである。
【0023】
カーボンナノチューブの暴露は、工程b)において、特に、1体積%〜約11体積%のオゾンの割合を含むオゾン/酸素混合物を用いて行う。
【0024】
オゾン、酸素および水の混合物の流速は、工程b)において、特に、カーボンナノチューブ1g当たり約100L/時〜約1000L/時、好ましくは約100L/時〜約200L/時である。
【0025】
水蒸気の相対湿度は、工程b)における反応ゾーンにおいて、特に100%まで、好ましくは少なくとも10%〜100%まで、特に好ましくは10%〜90%である。
【0026】
さらに好ましい物質は、カーボンナノチューブの量が、複合材料の0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%であることを特徴とする。
【0027】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、上記材料は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルエポキシ(DGEBA)、ノボラックエポキシ、臭素化エポキシポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択されるエポキシポリマーを含んでなる。
【0028】
さらなる好ましい実施態様では、上記材料は、硬化剤がジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)等を含む芳香族アミン硬化剤の群から選択されることを特徴とする。
【0029】
本発明の他の主題は、以下の工程:1)オゾン処理CNTをエポキシ樹脂中へ機械的に混合してブレンドを形成する工程;2)前記ブレンドを高剪断系により分散してCNT/エポキシマスターバッチを形成する工程;3)硬化剤およびエポキシ樹脂の特定量を前記マスターバッチに添加して分散体を形成する工程;4)前記分散体を更に機械的に混合する工程;5)該混合物を脱気および硬化してCNT/エポキシ複合材料を形成する工程を含み、前記CNTを、エポキシマトリックス中へ分散しおよび組み込む製造方法を提供する。
【0030】
本発明の更なる主題は、風力タービン、車両および架橋建築部品およびスポーツ用品の製造のための新規な複合材料の使用である。
【0031】
本発明のさらなる実施態様は、オゾン処理CNTで強化されたナノ複合材料を提供する。例えば、該複合材料は、エポキシ樹脂、およびCNTの少量%、例えば約0.1〜1.0重量%を含み得る。
【0032】
本発明の他の実施態様では、約10%以上の極限強度を上昇させ、および約10%以上の破断点伸びを上昇させる任意の適当なCNT充填を用い得る。約50%以上任意の適当なCNT充填量は、臨界歪み応力度(KIC)の約50%以上の強化、および約130%以上の平面歪み臨界応力エネルギー解放率(GIC)の約130%以上の強化をもたらす任意の適当なCNT充填を用い得る。
【0033】
本発明の他の実施態様では、約20%以上の極限強度の上昇および約80%以上の破断点伸びの上昇を生じさせる任意の適当なオゾン処理CNT充填を用い得る。KICの約30%以上の強化およびGICの約2倍以上の強化をもたらす任意の適当なオゾン処理CNT充填を用い得る。
【0034】
本発明は、CNTをエポキシマトリックス中へ組み込む方法および該方法により製造されたCNT/エポキシナノ複合材料に関する。該CNTは、約100nm以下の少なくとも1つの寸法を有し、マトリックス材料中に実質的に均質に分散される。
【0035】
本発明のカーボンナノチューブは、多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)であり、上記CNTは、様々な長さ、直径、チューブ壁の数等であってよい。単壁カーボンナノチューブ(SWCNT)も本発明に適当であり得ることは注目すべき点である。
【0036】
好ましくは、高純度を有するカーボンナノチューブを、本発明に用いる。ここで、該純度は、カーボンナノチューブと任意の汚染物質、例えば金属残渣および非晶質不純物等との混合物におけるカーボンナノチューブのパーセンテージのことである。本発明では、カーボンナノチューブの純度は、95%を越え、好ましくは98%を越える。
【0037】
本発明のカーボンナノチューブは、単壁カーボンナノチューブ(SWCNT)または二重壁カーボンナノチューブ(DWCNT)または多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)である。これらは、魚の骨または血小板構造またはグラフェンまたは黒鉛シートにおけるカーボンナノファイバーであってもよい。これらの構造の全ては、黒鉛層において窒素、ホウ素等のようなヘテロ原子を含み得る。
【0038】
本発明によるカーボンナノチューブは、円筒型、スクロール型またはオニオン型構造に基づく全ての単壁または多壁カーボンナノチューブ構造を含む。好ましいのは、円筒型またはスクロール型の多壁カーボンナノチューブまたはこれらの混合物である。
【0039】
好ましいのは、5より大きい、より好ましくは100より大きい長さと直径の割合を有するカーボンナノチューブの使用である。
【0040】
より好ましくは、凝集体の形態でのカーボンナノファイバーを用い、該凝集体は、0.05〜5mm、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.2〜1mmの範囲での平均径を有する。
【0041】
カーボンナノチューブの平均径は、3〜100nm、好ましくは5〜80nm、特に好ましくは6〜60nmである。
【0042】
単一連続または不連続のグラフェン層を有する文献に記載の先行技術のCNTとは対照的に、カーボンの新規な形態では、複数のグラフェン層が組み合わさって丸くなった形態(マルチスクロール型)である積み重なりを形成する。このようなカーボンナノチューブおよびカーボンチューブ凝集体は、例えば公式出願番号102007044031.8を有する未公開独国特許出願の主題である(CNTおよびその製造に関するその内容はここに本出願の開示として含まれる)。このCNT構造は、単壁円筒状カーボンナノチューブ(円筒状SWNT)に対して多壁円筒状モノカーボンナノチューブ(円筒状MWNT)が振る舞うように、構造について単純スクロール型の既知のカーボンナノチューブに対して振る舞う。
【0043】
先行技術においてなお記載されることがあるオニオン型構造とは異なって、新規なカーボンナノチューブにおける個々のグラフェンまたは黒鉛層は、断面から見た場合、明らかに、CNTの中心から外縁に途切れることなく連続的に伸びる。これは、例えば、単純スクロール構造を有するCNT(Carbon 34、1996年、第1301〜1303頁)またはオニオン型構造を有するCNT(Science 263、1994年、第1744〜1747頁)と比較して、より開放した端が挿入のための入り口ゾーンとして利用可能であるので、他の物質の管状構造中への、向上したより速い挿入を可能とすることができる。
【0044】
カーボンナノチューブの製造のために今日知られている方法としては、アーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法が挙げられる。これらの方法の多くにおいて、カーボンブラック、非晶質炭素および大径を有する繊維が副生成物として形成される。触媒法の場合、担持触媒粒子上の堆積物とインサイチュで形成されるナノメーター範囲の直径を有する金属中心の堆積物とを区別することができる(いわゆる流れ法)。反応条件下でガス状である炭化水素からの炭素の触媒的堆積による製造の場合(以下、CCVD;触媒的炭素蒸着)、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼンおよびさらなる炭素含有出発物質が可能性のある炭素供与体として挙げられる。好ましくは、触媒法により得られるCNTを用いる。
【0045】
一般に、触媒は、金属、金属酸化物または分解性もしくは還元性金属成分を含む。例えばFe、Mo、Ni、V、Mn、Sn、Co、Cu等が金属として先行技術に記載される。ほとんどの個々の金属は、ナノチューブを形成する傾向を有するが、高収率および非晶質炭素の低含有量が先行技術に従って、上記金属の組合せを含有する金属触媒を用いて有利に達成される。好ましくは、混合触媒を用いて得られるCNTを用いる。
【0046】
CNTの合成のための特に有利な触媒系は、系列Fe、Co、Mn、MoおよびNiからの2以上の元素を含有する金属または金属化合物の組み合わせに基づく。
【0047】
カーボンナノチューブの形成および形成されたチューブの特性は、触媒として用いる金属成分または複数の金属成分の組合せ、用いる担体材料、および触媒と担体との間の相互作用、出発物質ガスおよび分圧、水素またはさらなるガスの添加、反応温度および滞留時間または用いる反応器について複雑な様式により依存性を有する。
【0048】
本発明の好ましい実施態様は、WO2006/050903A2に従う方法により製造されるカーボンナノチューブの使用である。
【0049】
異なった触媒を用いる上記の全ての異なった方法では、異なった構造のカーボンナノチューブが製造され、これは、該方法から、通常、カーボンナノチューブ凝集体の形態で得られる。
【0050】
本発明にとって、好適なカーボンナノチューブは、以下の文献に記載されている方法により得られる:
【0051】
100nm未満の直径を有するカーボンナノチューブの製造は、EP205556B1に初めて記載された。この場合、該製造は、軽質(すなわち、短鎖および中鎖脂肪族または単核または二核芳香族)炭化水素および鉄系触媒が用いて行われ、これによって炭素担体化合物は、800℃超〜900℃の温度にて分解される。
【0052】
WO86/03455A1には、3.5〜70nmの一定直径、100を越えるアスペクト比(長さと直径の比)およびコア領域を有する円筒構造を有するカーボンフィラメントの製造が記載されている。これらのフィブリルは、多くの配向炭素原子の連続層からなり、これらはフィブリルの円筒軸の周りに同心円上に配置されている。これらの円筒状ナノチューブは、CVD法によって炭素含有化合物から金属含有粒子を用いて850℃〜1200℃の温度で製造された。
【0053】
また、円筒構造を有する従来法によるカーボンナノチューブの製造に適している触媒の製造のための方法が、WO2007/093337A2から知られ始めている。この触媒を固定床において用いる場合、5〜30nmの範囲での直径を有する円筒形カーボンナノチューブの比較的高い収率が得られる。
【0054】
円筒カーボンナノチューブの完全に異なった製造方法は、Oberlin、EndoおよびKoyamによって記載されている(Carbon 14、1976年、第133頁)。これにより、芳香族炭化水素、例えばベンゼン等を、金属触媒上で反応させる。得られるカーボンチューブは、グラファイト的にほとんど配向していない炭素がさらに存在する、ほぼ触媒粒子の直径を有する特定のグラファイト中空コアを呈する。該グラファイトコアが、急速触媒成長によりまず形成され、次いでさらなる炭素が熱分解により堆積すると推定されている。チューブ全体は、高温(2500℃〜3000℃)での処理によってグラファイト化することができる。
【0055】
現在、上記方法(アーク放電、噴霧熱分解またはCVD)のほとんどは、カーボンナノチューブの製造に用いられる。しかしながら、単壁円筒形カーボンナノチューブの製造は、装置について極めて高価であり、既知の方法により、極めて遅い形成速度で、しばしば多くの二次反応をも伴って進行し、これは、高い割合の望ましくない不純物を生じさせ、すなわち、このような方法の収率は比較的低い。このため、このようなカーボンナノチューブの製造は今日でも未だ極めて費用がかかり、これらは主に、少量で高度に専門化された用途にのみ用いられる。しかしながら、その使用はまた、本発明について考えられるが、円筒またはスクロール型の多壁カーボンナノチューブの使用より好ましくない。
【0056】
現在、多壁カーボンナノチューブの製造は、入れ子になった途切れのない円筒形チューブの形態またはスクロールまたはオニオン型構造の形態で、商業的に大量に触媒法を用いて行われている。これらの方法は、通常、アーク放電法または他の既知の方法より高い生産性をもたらし、典型的には、キログラム範囲で、すなわち1日あたり数kgの製造で行われている。このような方法から得られるカーボンナノチューブは、通常、単壁カーボンナノチューブより費用効率が高く、従って、種々の物質中で生成物特性の強化のための添加剤として用いられる。
【0057】
本発明では、CNTは、オゾン処理により、水蒸気の存在下、CNT−エポキシ相溶性およびCNTの分散の向上のために表面変性する。CNTは、オゾン処理してその表面、後端キャップおよび側壁に結合した化学部分を生じさせる。オゾン変性CNTは、その表面、後端キャップおよび側壁に結合した酸素含有基、すなわちカルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基等を含有する。
【0058】
本発明では、適当なエポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルエポキシ(DGEBA)、ノボラックエポキシ、脂環式エポキシ、臭素化エポキシおよびこれらの組み合わせが挙げられる。適当な硬化剤としては、これらに限定されないが、脂環式アミン、脂肪族アミン、例えばジエチレントリアミン(DETA)およびテトラエチレンペンタミン(TEPA)等、芳香族アミン、例えばジアミノジフェニルスルホン(DDS)およびメタフェニレンジアミン(MPDA)等、無水物、例えば無水トリメリット酸(TMA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)およびその組み合わせ等が挙げられる。さらにエポキシおよび硬化剤系は、幾つかの添加剤、例えば、これらに限定されないが、可塑剤、抗分解剤、希釈剤、強化剤およびこれらの組み合わせ等を更に含み得る。
【0059】
以下の図を参照すれば、本発明の方法は、以下の工程:1)オゾン処理CNTをエポキシ樹脂中へ機械的に混合して混合物を形成する工程;2)前記混合物を高剪断混合系により分散して均質なCNT/エポキシマスターバッチを形成する工程;3)硬化剤および更なるエポキシ樹脂を前記マスターバッチに必要に応じて添加して分散体を形成する工程;4)前記分散体を機械的に更に混合して均質な混合物を形成する工程;5)該混合物を脱気および硬化してCNT/エポキシ複合材料を形成する工程を含み、前記CNTを、エポキシマトリックス中へ分散しおよび組み込む。

【0060】
第1工程では、CNTの比較的多い充填量(約2重量%以上)をエポキシマトリックスへ添加し、次いで、機械的に混合して比較的高い粘度を有するCNT/エポキシブレンドを形成する。
【0061】
第2工程では、前記ブレンドを、ロール間のギャップと圧力を正確に制御することができる3本ロールミル系を用いて機械的にさらに混合する。高剪断力は、互いに逆方向かつ異なった速度で回転する3本の水平に配置されたロールにより生じる。ロール間の適切なロールの速度、ギャップおよび圧力ならびに操作時間により、CNTの実質的に良好および均質な分布がマトリックス中で得られる。該方法の第2工程後のブレンドは、以下の章においてマスターバッチと称される。
【0062】
第3工程では、硬化剤の化学両論量をマスターバッチに添加する。該マスターバッチはまた、純エポキシ樹脂により希釈して種々のCNT充填を含有する分散体を得る。ある実施態様では、約175/185の硬化剤とエポキシ樹脂の重量割合を用い得る。他の実施態様では、硬化剤とエポキシ樹脂の割合を必要に応じて増加または減少させてナノ複合材料を硬化させ得る。
【0063】
第4工程では、前記分散体を、撹拌速度、撹拌時間、温度および真空条件を制御することができる高剪断ミキサーにより機械的に更に混合する。
【0064】
第5工程では、前記分散体を脱気し、次いでスチール製金型中へ注ぎ、オーブンで硬化させる。脱気工程を、熱、真空または不活性ガスの流れにより強化することができ、 スチール製金型を、ほぼ脱気温度にて予備加熱する。ある実施態様では、硬化工程は、供給業者により推奨され、硬化試料を、オーブン中で室温にゆっくり冷却させた。他の実施態様では、硬化時間および温度を増加または減少させ得る。
【0065】
本発明の幾つかの実施態様では、オゾン変性CNTで強化されたエポキシ系複合材料は、天然エポキシと比較して向上した機械特性を示す。元のCNTと比べて、オゾン処理CNTは、エポキシ樹脂に機械特性の向上を与える。
【0066】
以下の実施例を、特にこのような実施例が上記の典型的な研究に基づく場合、本発明の特定の実施態様を示すために記載する。実施例に開示される方法が本発明の典型的な実施態様を示すことが、当業者に認められる。しかしながら、当業者は、本発明の開示の観点から、多くの変更を記載された特定の実施態様において行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果をなお得ることができることを理解する。
【実施例】
【0067】
実施例1
この実施例は、本発明の幾つかの実施態様に従って、どのようにしてCNT/エポキシナノ複合材料を製造することができるかを例示する役割をする。
【0068】
本発明に用いるCNTはまず、化学蒸着に基づく高収率触媒法により製造されたMWCNT(Baytubes(登録商標))であった。Baytubes(登録商標)は、小さい外径、狭い直径分布および超高アスペクト比を有する多壁カーボンナノチューブの凝集体であった。また、Baytubes(登録商標)は、ガスオゾン分解により、水蒸気の存在下でエポキシ樹脂中への組み込み前に官能化した。以下の節では、任意の表面変性を伴わないBaytubes(登録商標)を、初期MWCNT(p−MWCNT)と称し、オゾン分解により変性したBaytubes(登録商標)を、オゾン処理または官能化MWCNT(f−MWCNT)と称する。
【0069】
MWCNT充填エポキシナノ複合材料は、図1に示す手順により製造した。p−またはf−MWCNTをエポキシ樹脂中へ機械的に混合し、次いで、3本ロールミルを用いて分散してMWCNTの〜2.0重量%充填を有するMWCNT/エポキシマスターバッチを得た。次いで、該マスターバッチを、適切な量の純エポキシおよび化学両論的割合の無水物硬化剤で60℃にて希釈した。該混合物を90分間機械的に更に撹拌した。脱気後、該混合物を予備加熱したスチール製金型中へ注いだ。該混合物を、次の硬化工程によりオーブン中で硬化した:90℃にて30分間、次いで120℃で60分間、次いで140℃で30分間、最後に160℃で120分間。次いで、該硬化樹脂をオーブン中で室温にゆっくり冷却した。
【0070】
実施例2
この実施例は、本発明の幾つかの実施態様に従う、SEMおよびTEMにより特徴付けられる、MWCNTのエポキシ樹脂中での分散状態およびMWCNT−エポキシ界面接着を例示する働きをする。
【0071】
MWCNTの硬化エポキシナノ複合材料中での分散状態を、透過型電子顕微鏡(FEI、Tecnai G 20)により観察した。TEM試料を、ダイヤモンドナイフを有するウルトラミクロトーム(LKB Nova)を用いて複合材料ブロックから切り取った。最初の幾つかの超薄片は、60〜90nmの厚みの範囲であり、調査のために用いた。薄片を、200メッシュ銅格子上に集め、200kVで操作するTEMを用いて観察した。大きな凝集体は、p−MWCNTで充填されたエポキシ複合材料およびf−MWCNTで充填されたエポキシ複合材料のいずれにおいても見出されない。後者(オゾン処理)は、前者(初期)より均質にエポキシ樹脂中へ分散するように見える。
【0072】
引張試験から得られた粉砕表面のSEM像は、MWCNTおよびエポキシ間の界面接着を更に例示する(SEM HITAHI S−4800 microscopeを用いる)。多くのp−MWCNTが複合材料試料の粉砕表面上で曝され、p−MWCNTおよびエポキシ間の低い界面接着を示す、幾つかのボイドがカーボンナノチューブの剥離後に明らかに観察することができる。比較により、f−MWCNT充填エポキシ複合材料について、少量のf−MWCNTを粉砕表面上で観測し、僅かなボイドを見出すことができる。この減少は、オゾン分解が、相溶性およびf−MWCNTおよびエポキシ間の界面接着を明らかに向上させることを示す。
【0073】
実施例3
この実施例は、本発明の実施態様に従って、エポキシ樹脂の機械特性について、MWCNTの作用を例示する。
【0074】
引張試験をASTM D638手順に従ってInstron 5848 microTesterを用いて1.0mm/分のクロスヘッド速度により室温にて行った。各資料につき少なくとも5個の試料を、調査試料のヤングの弾性率、引張強度および破断点伸びを得るように行った。準静的破壊靱性試験をASTM D5045手順に従って行った。予備クラックを、鋭い新しいカミソリの刃を試料(7×36×36mm)の下部と軽く接触させることにより作った。この方法により、クラックが材料中に数ミリメートルにわたって生じ、自然なクラックを生じさせることができる。コンパクトテンション試料の引張荷重は、Instron 5848 microTester上で1.0mm/分のクロスヘッド速度にて得られた。実際のクラック長さは、粉砕試験後にマイクロメーター目盛りを有する光学顕微鏡により計測した。平面歪み臨界応力度(KIC)および平面歪み臨界歪みエネルギー解放率(GIC)は、関連標準により計算することができる。各サンプルにつき少なくとも5個の試料にて試験した。
【0075】
図2は、エポキシマトリックスおよびナノ複合材料についての典型的な引張応力−歪み曲線を示す。純エポキシ樹脂およびp−MWCNT充填エポキシ複合材料はいずれも、脆性な状態で破壊され、明らかな歪みは検出されないが、f−MWCNT充填エポキシ複合材料は、やや延性挙動を示す。MWCNTの強化作用をより理解するために、ヤングの弾性率、引張強度および破断点伸びにおける相対的向上(規格化値)を図3に示す。概して、f−MWCNTは、p−MWCNTと比べて強化エポキシ樹脂中ではるかにより効率的である。破断点伸びの約82%の増加が、1重量%のf−MWCNT充填にて得られる。図3は、調査試料のKICおよびGICにおける相対的向上(規格化値)を示す。p−MWCNTおよびf−MWCNTはいずれも顕著にエポキシ樹脂を強化する。f−MWCNTは、p−MWCNTに比べてはるかにより効率的にエポキシ樹脂を強化する。GICの約110%の増加が1重量%のf−MWCNTの組み込みにより得られる。これは、エポキシおよびf−MWCNT間の良好な界面接着によるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシポリマー、カーボンナノチューブおよび必要に応じて硬化剤を含んでなり、
該カーボンナノチューブが、以下の工程:
a)カーボンナノチューブを反応ゾーン中へ設置する工程、
b)オゾン、酸素および水の混合物を前記カーボンナノチューブへ通過させる工程
を含む酸素/オゾンによる気相中での同時処理により酸化されていることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
オゾン、酸素および水の混合物は、カーボンナノチューブ凝集体へ連続的に通過することを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
反応ゾーンにおける温度は、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは10〜60℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
カーボンナノチューブのオゾン分解の反応時間は、120分まで、好ましくは60分まで、より好ましくは30分までであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
カーボンナノチューブの暴露は、1体積%〜約11体積%のオゾンの割合を含むオゾン/酸素混合物を用いて行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
オゾン、酸素および水の混合物の流速は、カーボンナノチューブ1g当たり約100L/時〜約1000L/時、好ましくは約100L/時〜約200L/時であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の材料。
【請求項7】
水蒸気の相対湿度は、反応ゾーンにおいて、100%まで、好ましくは少なくとも10%〜100%まで、特に好ましくは10%〜90%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の材料。
【請求項8】
カーボンナノチューブの量は、複合材料の0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の材料。
【請求項9】
エポキシポリマーは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルエポキシ(DGEBA)、ノボラックエポキシ、臭素化エポキシポリマーおよびこれらの組み合わせの群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
【請求項10】
硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)等を含む芳香族アミン硬化剤の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の材料の製造方法であって、以下の工程:1)オゾン処理CNTをエポキシ樹脂中へ機械的に混合して混合物を形成する工程;2)前記混合物を高剪断混合系により分散して均質なCNT/エポキシマスターバッチを形成する工程;3)硬化剤および更なるエポキシ樹脂を前記マスターバッチに必要に応じて添加して分散体を形成する工程;4)前記分散体を機械的に更に混合して均質な混合物を形成する工程;5)該混合物を脱気および硬化してCNT/エポキシ複合材料を形成する工程を含み、前記CNTを、エポキシマトリックス中へ分散および組み込む、方法。
【請求項12】
風力タービン、車両および架橋建築部品およびスポーツ用品の製造のための、請求項1〜10のいずれかに記載の複合材料の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−520351(P2012−520351A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553319(P2011−553319)
【出願日】平成22年2月27日(2010.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001226
【国際公開番号】WO2010/102732
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】