説明

定着装置および画像形成装置

【課題】、定着離型性に優れることのみならず、定着装置の簡易化、小型で高生産性、高画質を維持し得る定着装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】 少なくとも発熱層および離型層で形成された定着ベルト203を介して、定着ローラ202と加圧ローラ204とが圧接してニップNを形成し、該ニップNに未定着トナーを担持した用紙Pを通過させて定着を行うと共に、ニップN以外の領域で該定着ベルトを加熱する誘導加熱源206で構成された定着装置202において、定着ベルト203を低熱容量のものとし、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤からなり、1/2流出温度が115〜145℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Pa以上であるトナーを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置にかかり、特に定着部材と加圧部材とが圧接してニップを形成し、該ニップに未定着トナーを担持した用紙を通過させて定着を行うと共に、ニップ以外の領域で該定着ベルトを加熱する誘導加熱源で構成された定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前述した画像形成装置として、レーザビームプリンタ、デジタル複写機、普通紙ファックス等のOA機器が使用されている。
【0003】
このような画像形成装置として特許文献1のものがある。これは、定着ローラと加熱ローラ間にベルト主体の表面に離型層を有する無端状の定着ベルトを張設し、該定着ベルトを介して下方から該定着ローラを押圧する加圧ローラを設けて該定着ベルトと該加圧ローラ間にニップ部を構成し、該加熱ローラと該ニップ部間における該定着ベルトの下方の近接位置において記録媒体支持体を設けて該定着ベルトとの間に略直線状の加熱通路を形成し、該定着ベルトの1cm当りの熱容量を0.002〜0.025cal/℃として成ることを特徴とする電子写真装置用定着装置であり、ベルトの熱容量を規定して低温オフセットと高温オフセットを防止するものである。
【0004】
また、特許文献2のものは、球形のトナーには定着部材とトナーとを離型する離型剤が内包されており、離型剤の融点が記録材の表面温度よりも低くなるように加熱通路で定着前加熱手段による熱により記録材が熱せられるものであり、ベルト定着装置のニップ手前の加熱通路にて低融点の離型剤を内包する球形トナーを用いて、離型剤の染み出し性をよして分離性の向上を図るものである。
【0005】
さらに、特許文献3では、中間転写体の駆動ローラの内部に熱源を設け、該中間転写体に加圧部材を圧接してニップを形成する方式が提案されている。トナーはニップ手前で加熱され、加熱されたトナーをニップで記録媒体に定着するものである。この方式によれば、中間転写体から記録媒体への2次転写は静電気力ではなく定着の熱によって行われる。また、トナーの加熱時間を長く設定することができる。
【0006】
また、電磁誘導加熱方式の定着装置に用いられるトナーとして、次のもの提案されている。特許文献4には、電磁誘導加熱方式の定着装置に、ガラス転移点45〜65℃で軟化点が80〜140℃の樹脂を用い、強磁性体物質を含有したトナーを用いる技術が提案されている。
【0007】
特許文献5には、電磁誘導加熱方式の定着装置に、ガラス転移点とMI値を規定したスチレンアクリル樹脂と一定のポリオレフィンワックスを用いたトナーを用いる技術が提案されている。
【0008】
特許文献6には、電磁誘導加熱方式の定着装置に、ワックスの吸熱ピークを規定し、さらに動的粘弾性を規定したポリエステル樹脂を用いたトナーを用いる技術が提案されている。
【0009】
また、特許文献7には、特開2001−272818号公報では、電磁誘導加熱方式の定着装置に、分子量分布と吸熱ピーク温度を規定した樹脂を用いたトナーを用いる技術が提案されている。
【0010】
さらに特許文献8には、電磁誘導加熱方式の定着装置には、酸とアルコールの両組成を規定したポリエステル樹脂を用いたトナーを用いる技術が提案されている。
【0011】
そして、特許文献9には、電磁誘導加熱方式の定着装置に、THF不溶分含有量と酸価を規定したポリエステル樹脂を用い、溶融粘度を規定したトナーを用いる技術が提案されている。
【特許文献1】特許第2813287号公報
【特許文献2】特許第3423616号公報
【特許文献3】特開平10−63121号公報
【特許文献4】特開平11−344830号公報
【特許文献5】特開2001―235893号公報
【特許文献6】特開2001−272812号公報
【特許文献7】特開2001−272818号公報
【特許文献8】特開2002−91075号公報
【特許文献9】特開2002−91076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、いずれかの特許文献に開示されている技術では、いずれかのトナーも高速で温度が立ち上がり、温度制御が不十分な場合には、一時的に高温になる場合がある定着装置に対しては、定着離型性が不十分であるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題の解消を図り、定着離型性に優れることのみならず、定着装置の簡易化、小型で高生産性、高画質を維持し得る定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、少なくとも発熱層および離型層で形成された定着ベルトを介して、定着部材と加圧部材とが圧接してニップを形成し、該ニップに未定着トナーを担持した用紙を通過させて定着を行うと共に、該定着ベルトを加熱する加熱源を備えた定着装置において、前記定着ベルトを低熱容量のものとし、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤からなり、1/2流出温度が115〜145℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Pa以上であるトナーを用いたことを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の定着装置において、加熱源が誘導加熱装置または輻射加熱装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または2の定着装置において、前記該低熱容量の定着ベルトの熱容量が0.019J/kcm〜0.077J/kcmであることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの定着装置において、前記定着ベルトが少なくとも厚さが40μm以下の発熱層と10μm以上の離型層で構成された低熱容量の定着ベルトであることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの定着装置において、前記離型層がフッ素樹脂材料であることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの定着装置において、前記トナーの樹脂成分中のTHF不溶分が、10%以上の樹脂を用いたものであることを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明は請求項1ないし6のいずれかのベルト定着装置において、前記トナーのピーク分子量が、8500〜10000であることを特徴とする。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの定着装置において、前記トナーに用いる離型剤として、脱遊離脂肪酸型のカルナウバワックス、モンタンワックス、酸化ライスワックス、エステルワックスの内、いずれかのワックスを用いたものであることを特徴とする。
【0022】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかの定着装置において、前記定着部材と加圧ローラの内、いずれか一方、または両方が断熱構造を有するローラであって、かつ、加圧ローラが剛性を有するローラで、該加圧ローラ硬度は定着ローラ硬度よりも大きく、該加圧ローラからの駆動伝達によって定着ベルトが回転することを特徴とする。
【0023】
請求項10の発明は、トナー像を担持する転写定着部材と、該転写定着部材上のトナーを加熱する加熱手段と、転写定着部材に接触してニップを形成する加圧部材を備え、前記ニップを通過する用紙上に画像を定着させる定着装置において、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤からなり、1/2流出温度が115〜145℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Pa以上であるトナーを用いたことを特徴とする。
【0024】
請求項11の発明は、請求項10の定着装置において、前記トナーの樹脂成分中のTHF不溶分が、10%以上の樹脂を用いたものであることを特徴とする。
【0025】
請求項12の発明は、請求項10または11の定着装置において、前記トナーのピーク分子量が、8500〜10000の範囲にあることを特徴とする。
【0026】
請求項13の発明は、請求項10ないし12のいずれかの定着装置において、前記トナーに用いる離型剤として、脱遊離脂肪酸型のカルナウバワックス、モンタンワックス、酸化ライスワックス、エステルワックスの内、いずれかのワックスを用いたトナーであることを特徴とする。
【0027】
請求項14の発明は、画像形成装置において、請求項1ないし13の定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる定着装置および画像形成装置によれば、定着離型性に優れることのみならず、定着装置の簡易化、小型で高生産性、高画質なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。まず第1の形態について説明する。本例では、低熱容量のベルトを介してニップを形成する定着部材および加圧部材としての加圧ローラより成る定着装置を使用しかつ、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤からなり、1/2流出温度が115〜145℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Pa以上であるトナー、さらに該トナーの樹脂成分中のTHF不溶分が、10%以上の樹脂を用い、離型剤として脱遊離脂肪酸型のカルナウバワックス、モンタンワックス、酸化ライスワックス、エステルワックスの内、いずれかのワックスを用いたトナーを使用する。ここで、本例では、加圧部材として加圧ローラを使用したが、この加圧部材は加圧ローラの他ベルト式の部材を使用することができる(以下同じ)。
【0030】
すなわち、加熱ベルト特有の課題としては、ベルト剛性が大きくなることにより、ニップ出口での膨らみが生じ、ベルト表面とトナーの剥離性(離型性)が低下することがある。特に誘導加熱用ベルトは導電性の金属発熱部材を有しているが、その分、ベルト剛性が他のベルト定着方式に用いるベルトよりも大きく膨らみが大きくなり、ニップ出口の曲率が小さく、分離性が低下する。その結果、トナーと定着部材表面の剥離性が低下する。
【0031】
すなわち、従来の、輻射熱源(例えばハロゲンランプ)用ベルトと比べると、発熱層(金属系導電材料)を必要とする分、ベルトの剛性が大きくなる。そのため、ニップ幅が小さくなって、定着品質(定着性、光沢性、高画質化)が低下することになる。
【0032】
これに対処するため本発明では、誘導加熱のベルト定着において所定のニップ幅を確保するため、剛性が大きく、かつベルト表面硬度の大きいベルトに対して、より大きな定着圧力(面圧)を付与する。即ち、面圧を高くすることによって、定着品質(定着性、光沢性、高画質化)を良好とする共に、離型性を向上させる。
【0033】
また、本発明に用いる定着ベルトはベルト自己冷却効果を備える。定着ベルトは、ニップ領域外にてベルトを加熱してベルトに蓄熱する。そして、未定着トナーを有する用紙がニップを通過するとき、定着ベルトはトナーおよび用紙に熱供給して用紙にトナーを定着させる一方、定着ベルト自体はその分、冷却されて温度が低下することとなる。この状態で一旦溶融したトナーは弾性回復方向に向かい、トナーと定着ベルトとの間の離型性が向上し、ホットオフセットを防止することができる。
【0034】
このような場合、自己冷却効果の大小は、ベルト熱容量の大小で決まる。すなわち、ベルト熱容量が小さければ自己冷却効果が大きく、ホットオフセットの発生温度が上がる。一方、ベルト熱容量が小さ過ぎると、熱供給が不足して定着不良の原因となる。
ここで、自己冷却効果を確認するため、下記イ〜リの9種類定着ベルトを取り上げ検証した
誘導加熱ベルト構成;
基体(Ni,PI)
+発熱層(導電材料として、Ni、Ag,SUS等)
+中間層(弾性層で均一定着を狙う)
+表層(フッ素樹脂材料で、離型効果とオイルレスを狙う)と熱容量との関係;
イ.PI(25μm)+Ni(10μm)+フッ素樹脂(10μm)=0.01 J/kcm
ロ.Ni(40μm)+フッ素樹脂(20μm)=0.019J/kcm
ハ.Ni(40μm)+Siゴム(150μm)=0.038 J/kcm
ニ.Ni(40μm)+Siゴム(150μm)+フッ素樹脂(30μm)=0.045J/kcm
ホ.PI(50μm)+Ni(40μm)+Siゴム(150μm)+フッ素樹脂(20μm)=0.052 J/kcm
へ.PI(50μm)+Ni(40μm)+Siゴム(200μm)+フッ素樹脂(20μm)=0.068J/kcm
ト.PI(75μm)+Ni(40μm)+Siゴム(200μm)+フッ素樹脂(20μm)=0.072J/kcm
チ.PI(100μm)+Ni(40μm)+Siゴム(200μm)+フッ素樹脂(20μm)=0.077 J/kcm
リ.PI(100μm)+Ni(40μm)+Siゴム(300μm)+フッ素樹脂(30μm)=0.087 J/kcm
実験条件;
定着ベルト;前記イ〜チのベルト熱容量
定着ローラ;φ38(Si発泡体、層厚5mm)
加圧ローラ;φ40(鉄芯金1.0mm+Siゴム0.5mm+PFA30μm)
加熱ローラ;φ30(アルミニウム.0.8mm)
定着条件;ニップ時間(100ms)
トナー;後述の本発明トナー1,2または3
前記低熱容量のベルトに予め蓄熱されたベルトがニップを通過する用紙およびトナーへの熱供給のため、ニップ入り口から出口へ移動するとき温度が大きく落ち込む。この自己冷却作用によって、ニップ出口ではベルトおよびそれと接触するトナー界面の温度は従来の熱ローラ方式に比べて十分に低い。本発明の実験例として、図10に示す実験装置を用いて、上記実験条件にて確認した。図10において、100は実験装置としての定着装置であり、誘導加熱源101、定着ベルト102、定着ローラ103、加圧ローラ104および反転ローラ105から構成される。また温度測定を図中のaないしfの個所で行った。この結果を図11に示す。
【0035】
図11に示すように、本例の定着ベルトで102では、定着ベルト102の温度がベルト自己冷却作用領域(c〜d)で20〜30度低下していることが分かる。すなわち、ニップ内で熱供給を受けて溶融したトナーは上述の温度低下効果によって、トナーは弾性回復の方向に状態変化して、ホットオフセットが発生しにくい状態にあることが分かった。
【0036】
すなわち、トナーは冷却するとトナーの粘弾性がトナーとベルトの剥離(離型)作用に有利に作用する方向に状態が変位して、離型効果があることが実証された。
【0037】
本例の定着ベルト102は、少なくとも、厚さが40μm以下の発熱層と10μm以上の離型層で構成された低熱容量ベルトである。ここで、発熱層(金属系導電材料、例えばNi,SUS等)が40μmを超えるとベルト剛性が増大し、ベルト特有の可撓性が損なわれ、ベルトの定着ローラへの巻き付き性、ニップ形成性が悪くなり、分離性や定着性が低下する。また、表面離型層は経時耐磨耗性を確保するために、最低10μmは必要である。
【0038】
また、定着ベルト102は離型性の向上、さらにオイルレス化を実現するため、ベルト表面の離型材はフッ素樹脂が好ましい。なお、オイルを塗布するなら、Siゴムの方が好ましい。
【0039】
本例の実験例として、前記定着装置100を用いて、上記実験条件にて確認した結果を図12に示す。図12から本発明にかかるトナーと、ベルト熱容量の組み合わせにおいて、熱容量が0.019j/kcm以下であると、自己冷却作用によるホットオフセット性には問題ないがニップ内での温度落ち込みが大きく、定着性が低下することが分かる。そのために、定着温度を上げて防止する方法も採りうるが、定着温度が高くなって省エネルギ効果(高速立ち上げ)が得られない。一方、熱容量が0.077j/kcm以上の場合は逆に、自己冷却効果が小さくホットオフセットが発生し易い。一方、定着性はよくなる。
【0040】
すなわち、定着性およびホットオフセット性の両立を図るためには前記定着ベルトの熱容量が0.019〜0.077/cmj/kcmの範囲にあるのが好ましいことが分かった。
【0041】
また、ニップを十分に広くして低温定着となし、さらに低熱容量ベルトを介してニップを形成する定着ローラおよび加圧ローラのいずれか一方、または両方の断熱化(弾性発泡体、剛性発泡体)を図ることによって、定着性および離型性が向上する。すなわち、加熱ベルトの蓄熱エネルギによる定着効率が良くなる。
【0042】
特には加圧ローラが剛性を有する断熱ローラ(ここではAskerC硬度で80度以上と定義する)であって、かつ加圧ローラ硬度を定着ローラ硬度よりも大きくすることによって、ベルト搬送性の安定が図られると共に、定着ニップが、ベルトに用紙が巻き付かない方向に形成されるため、分離性も向上する。その結果、トナーと定着部材表面の剥離性が向上する。断熱構造として、例えばシリコンゴム発泡体、またはシリコン層内に中空糸、中空粒子等を設け、空気含有率を上げ、空気断熱効果を高めることができる。
【0043】
また、かかる構造のもの(シリコン層内に中空糸、中空粒子等を設けた構造)はローラ表面硬度が大きく、圧縮永久歪みが小さく、ベルト駆動ローラとしても使用可能である。
また、定着部材は弾性発泡体(Siゴム)で構成されていてもよい。さらに、加圧ローラは薄肉低熱容量ローラ(芯金肉厚1mm以下)、であってもよい。
【0044】
ここで、誘導加熱と輻射熱源(ハロゲンランプ)との差異について述べる。
誘導加熱方式は輻射加熱(ハロゲンランプ)方式に比べて一般的には以下のような特徴を有する。
・エネルギ変換効率が高い。
(85%が可能で、立ち上げ時間が速い。ハロゲンランプは約10%低い)
・周波数可変により、出力可変が可能である。(ハロゲンランプでは困難)
・加熱物の磁気的性質(キュリー点)を利用した自己温度調節が可能であり、
焼損、発火等の安全性の面に於いても有利である。
・温度リップルが少ない。(被加熱物を直接加熱するため、温度制御に対するタイムラグが小さい等々のメリットを有する)
・安全性が高い(発火のおそれがない)。
【0045】
本発明の定着装置では、必要な定着温度まで温度が上昇する速度が非常に早い反面、一次的に温度が過剰に高まる場合があり、従来のトナーを用いた場合にオフセットが発生し易く、オフセットの発生しないトナーが必要であることが明らかになった。
【0046】
次に本発明に用いるトナーについて、以下に述べる。トナー定着性に関連するトナーの特性は多く知られているが、本発明の定着装置に対しては、特に離型性に関して、1/2流出温度と190℃での貯蔵弾性率(G’)が,それぞれ一定範囲となることで初めて良好な離型性が得られることが明らかになった。
【0047】
すなわち、1/2流出温度が115℃よりも低い場合は、定着時にホットオフセットが発生する場合があり、逆に145℃よりも高い場合は、十分な定着性が得られず、画像が転写紙から剥がれやすくなる場合がある。
【0048】
また、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Paよりも低い場合は、定着時にホットオフセットが発生する場合がある。
【0049】
また、特にトナーの樹脂成分中のTHF不溶分は、10%以上であることにより、本発明の目的をより確実に達成することができるようになる。すなわち、10%より小さい場合には、定着時にホットオフセットが発生する場合がある。
【0050】
また、トナーの分子量は、8500〜10000の範囲にあることにより、定着時のオフセットが防止されると共に、定着性についても良好であることが確認された。8500未満では、ホットオフセットが発生する場合があり、10000より大きい場合には、定着性が不十分になる場合がある。
【0051】
また、離型剤として脱遊離脂肪酸型のカルナウバワックス、モンタンワックス、酸化ライスワックス、エステルワックスの内、いずれかのワックスを用いることで、定着時のオフセットを確実に防止することが可能になる。これらのワックスは、本発明の定着装置に用いるトナーの離型剤として適した各種の特性を持つ。
【0052】
カルナウバワックスとしては、微結晶のものがよく、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散したときの粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸価がこの範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不十分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不十分となる。酸化ライスワックスは、米糠ワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。酸価の効果は同様である。エステルワックスは合成により得られたもので、各種のものが使用できる。これらの離型剤は、トナー中の樹脂100重量部に対して、2〜20重量部、好ましくは3〜15重量部、さらに好ましくは4〜12重量部添加する。
【0053】
離型剤の添加量が上記範囲よりも少ない場合は、十分な定着離型性が得られず、ホットオフセットが発生する場合があり、逆に多い場合は、トナーの表面から離型剤が脱離し、キャリアや現像装置内の部材、感光体などに付着して、これらの本来持つ機能を損ねる場合がある。
【0054】
以下、トナーの1/2流出温度、貯蔵弾性率(G’)、ピーク分子量について説明する
・1/2流出温度
トナーの流出開始温度は、フローテスターを用いて測定することができる。フローテスターとしては、例えば島津製作所製の高架式フローテスターCFT500D型がある。このフローテスターのフローカーブは図15(a)および(b)に示されるものとなり、このグラフから各々の温度を読み取ることができる。図中、Tfbは流出開始温度であり、1/2法における溶融温度とあるのはT1/2温度を示す。
【0055】
測定条件は、 荷重:5kg/cm、昇温速度:3.0℃/min、ダイ口径:1.00mm、ダイ長さ:10.0mmとした。
・貯蔵弾性率(G’)
HAAKE製RheoStress RS50を用いてパラレルプレートにサンプル2gを固定し周波数1Hz、温度80〜210℃、歪み0.1、昇温速度3℃/Minで測定した。190°Cでの貯蔵弾性率(G’)を読み取る。
・ピーク分子量
トナー成分のピーク分子量は以下に示す方法により測定した。トナー約1gを三角フラスコで精評した後、THF(テトラヒドロフラン)10〜20gを加え、バインダー濃度5〜10%のTHF溶液とする。40℃のヒートチャンバー内でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを1ml/minの流速で流し、前記THF試料溶液20μlを注入する。試料の分子量は、単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とリテンションタイムとの関係から算出する。検量線はポリスチレン標準試料を用いて作成される。単分散ポリスチレン標準試料としては、例えば東ソー社製の分子量2.7×10〜6.2×10の範囲のものを使用する。検出器には屈折率(RI)検出器を使用する。カラムとしては、例えば東ソー社製のTSKgel、G1000H、G2000H、G2500H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、GMHを組み合わせて使用する。
【0056】
また、本発明のトナーに用いる結着樹脂としては、本発明のトナーの特性を満足するものであれば、以下の組成のものを使用することができる。
【0057】
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、 スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体が挙げられる。
【0058】
又下記の樹脂を混合して使用することもできる。ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0059】
この中で特に、ポリエステル樹脂が十分な定着性を得るために、好ましい。ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
【0060】
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
【0061】
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
【0062】
また3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0063】
また、本発明のトナーには、定着時の定着ベルト表面でのトナーの離型性を向上する目的で、離型剤を含有させることができる。離型剤として、公知のものがすべて使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックスおよび酸化ライスワックス、エステルワックスを単独または組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものがよく、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散したときの粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米糠ワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。各ワックスの酸価が各々の範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不十分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不十分となる。ワックスの添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で用いられる。1重量部未満では、その離型効果が薄く所望の効果が得られにくい。又15重量部を超えた場合はキャリアへのスペントが顕著になる等の問題が生じた。
【0064】
また、トナーに帯電を付与する目的で、帯電制御剤を含有させることができる。帯電制御剤としては、従来公知のものがすべて使用できる。正帯電制御剤としては、ニグロシン、塩基性染料、塩基性染料のレーキ顔料、四級アンモニウム塩化合物他等が挙げられ、負帯電制御剤としては、モノアゾ染料の金属塩、サリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の金属錯体他等が挙げられる。本極性制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、バインダー樹脂100重量部に対して0.01〜8重量部、好ましくは0.1〜2重量部の範囲で用いられる。0.01重量部未満では、環境変動時における帯電量Q/Mの変動に対しその効果が小さく、7重量部を超えると低温定着性が劣る結果となる。
【0065】
また、使用される含金属モノアゾ染料としては、含クロムモノアゾ染料、含コバルトモノアゾ染料、含鉄モノアゾ染料を単独もしくは組み合わせて使用することができる。これらを添加することにより、現像剤中における帯電量Q/Mの立ち上げ(飽和までの時間)がより優れたものとなる。使用量としては、前記極性制御剤同様にバインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、バインダー樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは1〜7重量部の範囲で用いられる。0.1重量部未満では、その効果が薄く、10重量部を超えると帯電量の飽和レベルが低下する等の欠点が生じる。
【0066】
また、カラートナーには、サリチル酸誘導体の金属塩を用いることが特に好ましいが、必要に応じてカラートナーの色調を損なうことのない透明もしくは白色の物質を添加して、トナーの帯電性を安定的に付与することができる。具体的には、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩類、カリックスアレン系化合物等が用いられるが、これらに限られるものではない。
【0067】
さらに本発明のトナーはさらに磁性材料を含有させ、磁性トナーとしても使用し得る。本発明の磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれら金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金およびその混合物などが挙げられる。
【0068】
これらの強磁性体は平均粒径が0.1〜2 μm程度のものが望ましく、トナー中に含有させる量としては樹脂成分100重量部に対し約20〜200 重量部、特に好ましくは樹脂成分100重量部に対し40〜150 重量部である。
【0069】
着色剤としては、トナー用として公知のものがすべて使用できる。黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等が使用できる。シアンの着色剤としては、例えば、フタロシアニンブルー、メチレンブルー、ビクトリアブルー、メチルバイオレット、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー等が使用できる。マゼンタの着色剤としては、例えば、ローダミン6Gレーキ、ジメチルキナクリドン、ウォッチングレッド、ローズベンガル、ローダミンB、アリザリンレーキ等が使用できる。イエローの着色剤としては、例えば、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、モリブデンオレンジ、キノリンイエロー、タートラジン等が使用できる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な染料および顔料が使用できる。例えば、カーボンブラック、ランプブラック、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローグミン6G、レーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料などの染顔料など、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用できる。
また、外添加剤として、トナーの流動性を向上させる目的で、疎水性のシリカ、酸化チタン、アルミナ、など、さらに必要に応じて脂肪酸金属塩類やポリフッ化ビニリデン等を添加してもよい。
【0070】
さらに本発明のトナーを2成分現像剤として用いる場合に、使用し得るキャリアとしては、公知のものがすべて使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のごとき磁性を有する粉体、ガラスビーズ等およびこれらの表面を樹脂などで処理したものなどが挙げられる。
【0071】
本発明におけるキャリアにコーティングし得る樹脂粉末としては、スチレン−アクリル共重合体、シリコン樹脂、マレイン酸樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂エポキシ樹脂等がある。スチレン−アクリル共重合体の場合は、30〜90重量%のスチレン分を有するものが好ましい。この場合スチレン分が30重量%未満だと現像特性が低く、90重量%を越えるとコーティング膜が硬くなって剥離し易くなり、キャリアの寿命が短くなるからである。
また本発明におけるキャリアの樹脂コーティングは、上記樹脂の他に接着付与剤、硬化剤、潤滑剤、導電材、荷電制御剤等を含有してもよい。
【0072】
本発明においてシリコン樹脂で被覆するキャリア核体粒子としては、従来公知のものでよく例えば鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの合金や化合物;ガラスビーズ等が挙げられる。これら核体粒子の平均粒径は通常10〜1000μm、好ましくは30〜500μmである。なお、シリコン樹脂の使用量としては、通常キャリア核体粒子に対して1〜10重量%である。
【0073】
また本発明で用いられるシリコン樹脂としては従来知られるいずれかのシリコン樹脂であってもよく、例えば市販品として入手できる信越シリコン社製のKR261、KR271、KR271、KR272、KR275、KR280、KR282、KR285、KR251、KR155、KR220、KR201、KR204、KR205、KR206、SA−4、ES1001、ES1001N、ES1002T、KR3093や東レシリコン社製のSR2100、SR2101、SR2107、SR2110、SR2108、SR2109、SR2115、SR2400、SR2410、SR2411、SH805、SH806A、SH840等が用いられる。シリコン樹脂層の形成法としては、従来と同様、キャリア核体粒子の表面に噴霧法、浸漬法等の手段でシリコン樹脂を塗布すればよい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
【0075】
図1に実施例にかかるベルト誘導加熱式の定着装置200を示す。図1に示す定着装置200は、誘導加熱手段206の電磁誘導により加熱される加熱ローラ201と、加熱ローラ201と平行に配置された定着ローラ202と、加熱ローラ201と定着ローラ202とに張け渡され、加熱ローラ201により加熱されるとともに少なくともこれらのいずれかのローラの回転により矢印A方向に回転する無端帯状の定着ベルト(トナー加熱媒体)203と、定着ベルト203を介して定着ローラ202に圧接されるとともに定着ベルト203に対して順方向に回転する加圧ローラ204とから構成されている。
【0076】
加熱ローラ201は例えば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなり、外径を例えば20〜40mm、肉厚を例えば0.3〜1.0mmとして、低熱容量で昇温の速い構成となっている。
【0077】
定着ローラ202は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金202aと、耐熱性を有するシリコンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金202aを被覆した弾性部材202bとからなる。そして、加圧ローラ204からの押圧力でこの加圧ローラ204と定着ローラ202との間に所定幅の接触部を形成するために外径を20〜40mm程度として加熱ローラ201より大きくしている。弾性部材202bはその肉厚を4〜6mm程度、硬度を10°〜50°(AskerC硬度)程度としている。この構成により、加熱ローラ201の熱容量は定着ローラ202の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ201が急速に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0078】
加熱ローラ201と定着ローラ202とに張り渡されたベルト203は、誘導加熱手段206により加熱される加熱ローラ201との接触部位W1で加熱される。そして、ローラ201,2の回転によってベルト203の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
【0079】
離型層203bの厚さとしては、10μmから300μm程度が望ましく、特に200μm程度が望ましい。このようにすれば、記録材P上に形成されたトナー像Tをベルト203の表層部が十分に包み込むため、トナー像Tを均一に加熱溶融することが可能になる。また、離型層203bの厚さ、すなわち表面離型層は経時耐磨耗性を確保するためには最低10μmは必要である。
【0080】
また、離型層203bの厚さが300μmよりも大きい場合には、ベルト203の熱容量が大きくなってウォームアップにかかる時間が長くなる。さらに加えて、トナー定着工程においてベルト表面温度が低下しにくくなって、定着部出口における融解したトナーの凝集効果が得られず、ベルトの離型性が低下してトナーがベルトに付着する、いわゆるホットオフセットが発生する。
【0081】
なお、ベルト203の基材として、上記金属からなる発熱層203aの代わりに、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂層を用いてもよい。
【0082】
加圧ローラ204は、例えば銅またはアルミニウム等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金4aと、この芯金4aの表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材4bとから構成されている。芯金4aには上記金属以外にSUSを使用してもよい。
【0083】
加圧ローラ204はベルト203を介して定着ローラ202を押圧して定着ニップ部Nを形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ204の硬度を定着ローラ202に比べて硬くすることによって、加圧ローラ204が定着ローラ202(およびベルト203)へ食い込む形となり、この食い込みにより、記録材Pは加圧ローラ204表面の円周形状に沿うため、記録材Pがベルト203表面から離れ易くなる効果を持たせている。この加圧ローラ204の外径は定着ローラ202と同じ20〜40mm程度であるが、肉圧は0.5〜2.0mm程度で定着ローラ202より薄く、また硬度は80〜100°(AskerC硬度)程度で前述したとおり定着ローラ202より硬く構成されている。
【0084】
電磁誘導により加熱ローラ201を加熱する誘導加熱手段206は、図1に示すように、磁界発生手段である励磁コイル207と、この励磁コイル207が巻き回されたコイルガイド板208とを有している。コイルガイド板208は加熱ローラ201の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル207は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板208に沿って加熱ローラ201の軸方向に交互に巻き付けたものである。なお励磁コイル207は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続されている。励磁コイル207の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア209が、励磁コイルコア支持部材210に固定されて励磁コイル207に近接配置されている。
【0085】
なお、本実施の形態において、励磁コイルコア209は比透磁率が2500のものを使用している。励磁コイル207には駆動電源から10kHz〜1MHzの高周波交流電流、好ましくは20kHz〜800kHzの高周波交流電流が給電され、これにより交番磁界を発生する。そして、加熱ローラ201と定着ベルト203との接触領域W1およびその近傍部においてこの交番磁界が加熱ローラ201およびベルト203の発熱層203aに作用し、これらの内部では交番磁界の変化を妨げる方向に渦電流Iが流れる。
【0086】
この渦電流Iが加熱ローラ201および発熱層203aの抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として加熱ローラ201とベルト203との接触領域およびその近傍部において加熱ローラ201および発熱層203aを有するベルト203が電磁誘導加熱される。
【0087】
このようにして加熱されたベルト203は、定着ニップ部Nの入口側近傍においてベルト203の内面側に当接して配置されたサーミスタなどの熱応答性の高い感温素子からなる温度検出手段205により、ベルト内面温度が検知される。
次に、トナーの実施例について説明する。
・トナー作成例1
ポリエステル樹脂 (ポリエチレングリコール、ビスフェノールAのPO付加物、テレフタル酸、フマル酸、トリメリット酸を縮合して得られたポリエステル)100重量部
カーボンブラック(三菱カーボン社製#44) 8重量部
カルナウバワックス 5重量部
サリチル酸金属塩化合物 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹搬混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、重量平均粒径6.2μm のトナーを得た。(トナー1)
このトナーの1/2流出温度は122.3℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が500Paであった。また、ピーク分子量は8500であった。このトナー3重量部に対し、シリコン樹脂溶液(KR251 信越シリコン社製)100部、トルエン100部をホモミキサーで分散して被覆層形成液を調製し、この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成したキャリア97重量部とをボールミルで混合し、現像剤を得た。(現像剤1)
・トナー作成例2
ポリエステル樹脂 (ポリエチレングリコール、ビスフェノールAのEO付加物、テレフタル酸、トリメリット酸を縮合して得られたポリエステル) 100重量部
カーボンブラック(三菱カーボン社製#44) 8重量部
エステル系ワックス 5重量部
サリチル酸金属塩化合物 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹搬混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、重量平均粒径5.2μm のトナーを得た。(トナー2)
このトナーの1/2流出温度は119.5℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が1025Paであった。また、ピーク分子量は8800であった。このトナー3重量部に対し、シリコン樹脂溶液(KR251 信越シリコン社製)100部、トルエン100部をホモミキサーで分散して被覆層形成液を調製し、この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成したキャリア97重量部とをボールミルで混合し、現像剤を得た。(現像剤2)
・トナー作成例3
ポリエステル樹脂 (ビスフェノールAのEO、PO付加物、フマル酸、トリメリット酸を縮合して得られたポリエステル) 100重量部
カーボンブラック(三菱カーボン社製#44) 8重量部
カルナウバワックス 5重量部
サリチル酸金属塩化合物 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹搬混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、重量平均粒径6.9μm のトナーを得た。(トナー3)
このトナーの1/2流出温度は138℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が2055Paであった。また、ピーク分子量は9500であった。このトナー3重量部に対し、シリコン樹脂溶液(KR251 信越シリコン社製)100部、トルエン100部をホモミキサーで分散して被覆層形成液を調製し、この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成したキャリア97重量部とをボールミルで混合し、現像剤を得た。(現像剤3)
トナー比較作成例1(1/2流出開始温度下回る例)
ポリエステル樹脂 (ポリエチレングリコール、ビスフェノールAのEO付加物、テレフタル酸、フマル酸を縮合して得られたポリエステル) 100重量部
カーボンブラック(三菱カーボン社製#44) 8重量部
カルナウバワックス 5重量部
サリチル酸金属塩化合物 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹搬混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、重量平均粒径6.0μm のトナーを得た。(比較トナー1)
このトナーの1/2流出開始温度は110.8℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が350Paであった。また、ピーク分子量は4200であった。このトナー3部に対し、シリコン樹脂溶液(KR251 信越シリコン社製)100部、トルエン100部をホモミキサーで分散して被覆層形成液を調製し、この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成したキャリア97部とをボールミルで混合し、現像剤を得た。(比較現像剤1)
・トナー比較作成例2(流出開始温度上回る例)
ポリエステル樹脂 (ビスフェノールAのPO付加物、テレフタル酸、トリメリット酸を縮合して得られたポリエステル) 100重量部
カーボンブラック(三菱カーボン社製#44) 8重量部
カルナウバワックス 5重量部
サリチル酸金属塩化合物 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹搬混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、重量平均粒径6.0μm のトナーを得た。(比較トナー2)
このトナーの1/2流出温度は152.5℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が650Paであった。また、ピーク分子量は10500であった。このトナー3部に対し、シリコン樹脂溶液(KR251 信越シリコン社製)100部、トルエン100部をホモミキサーで分散して被覆層形成液を調製し、この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成したキャリア97部とをボールミルで混合し、現像剤を得た。(比較現像剤2)
トナー比較作成例3 (190℃での貯蔵弾性率G’が下回る例)
ポリエステル樹脂 (ポリエチレングリコール、ビスフェノールAのEO付加物、フマル酸を縮合して得られたポリエステル) 100重量部
カーボンブラック(三菱カーボン社製#44) 8重量部
カルナウバワックス 5重量部
サリチル酸金属塩化合物 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹搬混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、重量平均粒径6.0μmのトナーを得た。(比較トナー3)
このトナーの1/2流出開始温度は125.8℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が120Paであった。また、ピーク分子量は5200であった。このトナー3部に対し、シリコン樹脂溶液(KR251 信越シリコン社製)100部、トルエン100部をホモミキサーで分散して被覆層形成液を調製し、この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成したキャリア97部とをボールミルで混合し、現像剤を得た。(比較現像剤3)
そして、これらのトナー実施例の定着性を判定する。トナーの定着性は、定着下限温度により判断した。定着下限温度は以下のとおりに測定を実施した。図5に示す定着装置100に、リコー製のタイプ6200紙をセットし複写テストを行なった。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。また、定着温度を上昇させた場合に、トナーが溶融しすぎることで、定着ベルト上にすべてのトナーが紙などの転写体に定着されずに残留し、その残留トナーが非画像領域に付着する、いわゆるホットオフセットと呼ばれる現象が発生する。定着温度幅は、定着下限温度から、ホットオフセット現象が発生しない上限の温度までの温度幅のことを示す。
【0088】
定着下限温度は、実使用の面(例えば、装置立ち上げへの影響)から140℃以下であることが好ましく、定着温度幅は60℃以上あることが好ましい。
【0089】
下記実験結果を図14に示す。なおこの測定は、上述した定着装置100(図10に示した)を使用した結果である。
本発明トナー1,2,3との組み合わせにおいて、定着可能温度幅が75°以上あり、十分な相乗効果を得ている。これに対して従来の熱ローラ定着装置では、図12に示すように、本発明のトナーを用いても定着可能温度幅は40°〜50°程度であった。
図2は実施例にかかる定着装置を使用した画像形成装置の一例である、タンデム型のカラー複写機を示している。このカラー複写機1は、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、該画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有している。
【0090】
画像形成部1Aには、水平方向に延びる転写面を有する中間転写体としての中間転写ベルト2が配置されており、該中間転写ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体3Y、3M、3C、3Bが中間転写ベルト2の転写面に沿って並置されている。
【0091】
各感光体3Y、3M、3C、3Bはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置4、光書き込み手段としての書き込み装置5、現像装置6、1次転写装置7、およびクリーニング装置8が配置されている。各符号に付記しているアルファベットは、感光体3と同様、トナーの色別に対応している。各現像装置6には、それぞれのカラートナーが収容されている。
【0092】
中間転写ベルト2は、駆動ローラ9と、従動ローラ10に掛け回されて感光体3Y 、3M 、3C 、3B との対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。従動ローラ10と対向する位置には、中間転写ベルト2の表面をクリーニングするクリーニング装置11が設けられている。
【0093】
感光体3Yの表面が帯電装置4により一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体3Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置6Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置7Yにより中間転写ベルト2上に1次転写される。他の感光体3M、3C、3Bでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が中間転写ベルト2上に順に転写されて重ね合わせられる。
【0094】
転写後感光体3上に残留したトナーはクリーニング装置8により除去され、また、転写後図示しない除電ランプにより感光体3の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
【0095】
駆動ローラ9の近傍には、実施例にかかる定着装置12が設けられている。定着装置12は、中間転写ベルト2上の画像としての未定着トナー像を転写される転写定着部材としての転写定着ベルト13と、該転写定着ベルト13を介して定着ローラ15と加圧ローラによってニップNを形成している。定着ベルト13は少なくとも発熱層と表面には離型層がコーティングされている。また、転写定着ベルト13には転写定着ベルト13上の画像を加熱する加熱手段としての誘導加熱源20が設けられている。加圧ローラ14は、芯金14aとゴム等の弾性層14bを有している。
【0096】
給紙部1Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ16と、該給紙トレイ16内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ17と、給紙された用紙Pを搬送する搬送ローラ対18と、用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後転写定着ベルト13上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングでニップNに向けて送り出されるレジストローラ対19を有している。
【0097】
感光体3Y、3M、3C、3Bから中間転写ベルト2上に1 次転写されたトナー像T(単にトナーともいう)は、図示しないバイアス印加手段により駆動ローラ9に印加されるバイアス(AC 、パルスなどの重畳を含む)により定着ベルト13に静電気力で2次的に転写される。
【0098】
中間転写ベルト2から転写定着ベルト13に転写されたトナー像TはニップNで用紙Pに定着されるまで、転写定着ベルト13上において単独で加熱される。
【0099】
本例では、トナーTのみを予め加熱する過程が十分に得られるので、トナーT と用紙P を同時に加熱する従来方式に比べて加熱温度を低くできる。実験の結果、転写定着ベルト13 の温度は80〜120℃の低温でも十分な画質が得られることが確認された。
【0100】
本実施例によれば、低温定着が可能でウォームアップ時間を短くでき、省エネルギ性を向上させることができる。また、中間転写体への熱移動を抑制できるので耐久性を向上させることができる。また、低温定着により中間転写体の温度を低減でき、中間転写体側の熱劣化を抑制できる。
【0101】
以上のように、本実施形態における定着装置12はそれ自体が未定着トナー像の被転写機能を有するものであり、未定着トナー像を保持した用紙を単に加熱・加圧する従来の定着装置に対し、「転写型定着装置」として位置付けられるものである。
【0102】
次に、本発明の他の実施例にかかる定着装置30を図3に基づいて説明する。本例にかかる定着装置30は、中間転写ベルト2から転写定着ベルト13へのトナーの転写率を向上させることを目的としたものである。本例では、中間転写ベルト2の転写定着ベルト13との対向する部位に配置される駆動ローラ9を、中間転写ベルト2にバイアスを印加するバイアス印加手段であるバイアスローラ21としている。
【0103】
このバイアスローラ21では、転写ニップ内でトナーが転写定着ベルトに静電吸着される電界が生じるように、トナー像Tと同極性のバイアス(本バイアス)が印加され、静電的反発力をトナーに付与する。
【0104】
図4は、実施例にかかる定着装置の変形例である。本例にかかる定着装置40は、図3の定着装置の定着ベルトに替え、転写定着ローラ41を設けたものである。
【0105】
図5は、実施例にかかる定着装置の変形例である。本例にかかる定着装置50は、加熱装置として、前記例の誘電加熱源に替え、転写定着ローラ41の外部に設けたハロゲンヒータ等の輻射加熱源51で転写定着ローラ41を加熱するようにしたものである。本発明では定着装置の加熱源として、誘導加熱装置の他本例のように輻射加熱装置を使用することができる。この場合加熱ベルトの発熱層は、金属材料の他、ポリイミド等の耐熱樹脂材料を使用することができる。
【0106】
図6は、実施例にかかる定着装置の変形例である。本例にかかる定着装置60は、加熱装置として、前記例の誘電加熱源に替え、転写定着ローラ61に設けたハロゲンヒータ等の輻射加熱源62で転写定着ローラ61を加熱するようにしたものである。
【0107】
次に本発明の他の実施例にかかる定着装置について説明する。図7は本発明の実施例にかかる定着装置70を示している。本例にかかる定着装置70は、加熱を誘導加熱源20で行い、転写定着ベルト13内部に設けた定着固定部材71を枠体74と発泡体で構成された弾性部材73で構成した他、加圧ローラ75を芯金75aと硬質発泡体で構成した被覆部材75bとで構成したものである。なお、図中符号72は温度センサ、符号76は加圧ローラ75の駆動手段を示している。
【0108】
図8は、図7に示した定着装置の変形例である。本例にかかる定着装置80は、図2に示した定着装置の定着固定部材を弾性発泡体で構成したローラとしたものである。
【0109】
図9は、図7に示した定着装置の変形例である。本例にかかる定着装置80は、図2に示した定着装置の定着固定部材を弾性発泡体で構成した定着ローラ91と定着ベルト92とで構成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施例にかかる定着装置を示す図である。
【図2】本発明の実施例にかかる画像記録装置を示す図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる定着装置を示す図である。
【図4】図3に示した定着装置の変形例を示す図である。
【図5】図3に示した定着装置の他の変形例を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる定着装置を示す図である。
【図7】図6に示した定着装置の変形例を示す図である。
【図8】図6に示した定着装置の他の変形例を示す図である。
【図9】図6に示した定着装置の他の変形例を示す図である。
【図10】本発明において実験に用いた定着装置を示す図である。
【図11】実験におけるベルトの場所による温度の分布を示すグラフである。
【図12】実験で得られた定着可能温度幅を示すグラフである
【図13】定着ベルトの構成と定着性の判定結果を示す表である。
【図14】トナーの種類による定着性の判定結果を示す表である。
【図15】トナーの1/2流出温度を測定する場合に得られるグラフである。
【符号の説明】
【0111】
1 カラー複写機
1A 画像形成部
1B 給紙部
2 中間転写ベルト
3 感光体
4 帯電装置
4a 芯金
4b 弾性部材
5 書き込み装置
6 現像装置
7 1次転写装置
8 クリーニング装置
9 駆動ローラ
10 従動ローラ
11 クリーニング装置
12 定着装置
13 定着ベルト
14 加圧ローラ
14a 芯金
14b 弾性層
15 定着ローラ
16 給紙トレイ
17 給紙コロ
18 搬送ローラ対
19 レジストローラ対
20 誘導加熱源
21 バイアスローラ
30 定着装置
40 定着装置
41 転写定着ローラ
50 定着装置
51 輻射加熱源
60 定着装置
61 転写定着ローラ
62 輻射加熱源
70 定着装置
71 定着固定部材
73 弾性部材
74 枠体
75 加圧ローラ
75a 芯金
75b 被覆部材
76 駆動手段
80 定着装置
91 定着ローラ
92 定着ベルト
97 キャリア
100 定着装置
101 誘導加熱源
102 定着ベルト
103 定着ローラ
104 加圧ローラ
105 反転ローラ
200 定着装置
201,2 ローラ
201 加熱ローラ
202 定着ローラ
202a 芯金
202b 弾性部材
203 定着ベルト
203a 発熱層
203b 離型層
204 加圧ローラ
205 温度検出手段
206 誘導加熱手段
207 励磁コイル
208 コイルガイド板
209 励磁コイルコア
210 励磁コイルコア支持部材
N ニップ
T トナー
P 用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発熱層および離型層で形成された定着ベルトを介して、定着部材と加圧部材とが圧接してニップを形成し、該ニップに未定着トナーを担持した用紙を通過させて定着を行うと共に、該定着ベルトを加熱する加熱源を備えた定着装置において、
前記定着ベルトを低熱容量のものとし、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤からなり、1/2流出温度が115〜145℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Pa以上であるトナーを用いたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
加熱源が誘導加熱装置または輻射加熱装置であることを特徴とする請求項1の定着装置。
【請求項3】
前記該低熱容量の定着ベルトの熱容量が0.019J/kcm〜0.077J/kcmであることを特徴とする請求項1または2の定着装置。
【請求項4】
前記定着ベルトが少なくとも厚さが40μm以下の発熱層と10μm以上の離型層で構成された低熱容量の定着ベルトであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの定着装置。
【請求項5】
前記離型層がフッ素樹脂材料であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの定着装置。
【請求項6】
前記トナーの樹脂成分中のTHF不溶分が、10%以上の樹脂を用いたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの定着装置。
【請求項7】
前記トナーのピーク分子量が、8500〜10000であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの定着装置。
【請求項8】
前記トナーに用いる離型剤として、脱遊離脂肪酸型のカルナウバワックス、モンタンワックス、酸化ライスワックス、エステルワックスの内、いずれかのワックスを用いたものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの定着装置。
【請求項9】
前記定着部材と加圧ローラの内、いずれか一方、または両方が断熱構造を有するローラであって、かつ、加圧ローラが剛性を有するローラで、該加圧ローラ硬度は定着ローラ硬度よりも大きく、該加圧ローラからの駆動伝達によって定着ベルトが回転することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの定着装置。
【請求項10】
トナー像を担持する転写定着部材と、該転写定着部材上のトナーを加熱する加熱手段と、転写定着部材に接触してニップを形成する加圧部材を備え、前記ニップを通過する用紙上に画像を定着させる定着装置において、
少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤からなり、1/2流出温度が115〜145℃、190℃での貯蔵弾性率(G’)が200Pa以上であるトナーを用いたことを特徴とする定着装置。
【請求項11】
前記トナーの樹脂成分中のTHF不溶分が、10%以上の樹脂を用いたものであることを特徴とする請求項10の定着装置。
【請求項12】
前記トナーのピーク分子量が、8500〜10000の範囲にあることを特徴とする請求項10または11の定着装置。
【請求項13】
前記トナーに用いる離型剤として、脱遊離脂肪酸型のカルナウバワックス、モンタンワックス、酸化ライスワックス、エステルワックスの内、いずれかのワックスを用いたトナーであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかの定着装置。
【請求項14】
請求項1ないし13の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−30249(P2006−30249A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204420(P2004−204420)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】