説明

定着部材およびその製造方法

【課題】基材外周面に有機マイクロバルーン空隙部が相互に連結されたゴム層および離型性樹脂層を順に有する定着部材であって、製造効率に優れ、かつ、ゴム層と離型性樹脂層間で剥離の生ずることのない定着部材、および、そのような定着部材を製造する方法を提供する。
【解決手段】基材121外周に、有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料からなるゴム層124、および、離型性樹脂チューブ122からなる離型性樹脂層125を順に有する定着部材であって、ゴム層124が、離型性樹脂チューブ122を被覆した状態でゴム材料を硬化させることにより形成されたものである定着部材において、離型性樹脂チューブ122の内面に7〜40μm厚さのプライマ層123を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機などの熱定着部で使用される定着部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタなどの複写・印刷機器においては、電子写真、静電記録、磁気記録などの画像形成プロセスにより、加熱溶融性の樹脂などからなるトナーの画像を記録紙上に形成し、これを熱により定着させる熱定着方式が一般に採用されている。
【0003】
このような熱定着方式で使用される定着部材としては、従来、アルミなどの金属芯軸上に、シリコーンゴムなどからなるゴム層を設け、さらに、このゴム層上にトナーとの離型性の良いテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)などのフッ素樹脂層を形成したローラが多用されている。そして、特にゴム層を発泡ゴムで形成したものは、柔軟で、低熱伝導性に優れることから、近年の複写の高速化や画像のフルカラー化に対応可能な定着部材として、また、省電力化を図ることができる定着部材として使用されている。
【0004】
しかしながら、このゴム層を発泡ゴムで形成したローラは、表面に凹凸ができたり、発泡率のバラツキにより硬度や熱伝導率が安定化しないなどの問題があった。
【0005】
そこで、上記ゴム層中に樹脂などの高分子材料からなる中空の球状微粒子(有機マイクロバルーン)を含有させたものが開発されている。このようなローラにおいては、ゴム層を発泡ゴムで形成した場合に匹敵する柔軟性、低熱伝導性が得られ、しかも、発泡ゴムのように、表面に凹凸が生じたり、発泡率のバラツキにより硬度や熱伝導率が安定化しないなどの問題が生ずることもない(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、上記のような有機マイクロバルーンを含有させたゴム層は、従来の発泡ゴムからなるゴム層に比べ空気の透過性が悪く、使用時の昇温によって外径や表面硬度が変化するという問題があった。ローラの表面硬度の変化は定着画像の変化をもたらし、また、外径の変化は紙送りスピードの変化をもたらす。
【0007】
そこで、さらに、ゴム材料に有機マイクロバルーンとともにエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの気化成分(連泡化剤)を配合し、これを気化させることにより、有機マイクロバルーンにより形成された空隙部相互を、気化成分を気化させることにより形成された孔道で連結したものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このような有機マイクロバルーン空隙部が相互に連結されたゴム層は、良好な気体透過性を有しており、ローラ使用時の昇温による外径や表面硬度の変化が抑制される。
【0008】
ところで、このように金属芯軸上にゴム層およびフッ素樹脂層が順に設けられた構造のローラは、一般に次のような方法で製造されている。
(1)金属芯軸上にゴム層を形成した後、その表面に接着剤などを塗付し、その上にフッ素樹脂からなる熱収縮チューブを被せ、加熱により収縮させて被着させる方法。
(2)金属芯軸上にゴム層を形成した後、その表面に接着剤などを塗付し、その上にフッ素樹脂塗料を塗付し、乾燥後焼成してフッ素樹脂層を形成する方法。
(3)円筒状の金型内部にフッ素樹脂チューブを挿通させ固定するとともに、このフッ素樹脂チューブ内に金属芯軸を挿入して同心的に保持し、これらのフッ素樹脂チューブと金属芯軸との間の隙間に、ゴム材料を注入し、加硫する方法。
【0009】
これらの方法のうち、(1)および(2)の方法は、いずれもゴム層形成後、その表面を研削する必要があり、量産化には不適当である。これに対し、(3)の方法は、一般に一体成型法と称する方法で、ゴム層の研削を必要とせず、効率のよい製造が可能で、量産化に適している。しかしながら、この(3)の方法では、ゴム層を有機マイクロバルーン空隙部が相互に連結されたゴム層とする場合、ゴム層がフッ素樹脂層と一体に硬化するため、連泡化剤がゴム層内部に残留し、この残留した連泡化剤がゴム層とフッ素樹脂層間およびゴム層と金属芯軸間にそれぞれ析出する結果、それらの界面における接着性を低下させ、場合により剥離を生じさせることがあった。
【特許文献1】特開2001−265147号公報
【特許文献2】特開2002−70838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題に対処してなされたもので、基材外周面に有機マイクロバルーン空隙部が相互に連結されたゴム層および離型性樹脂層を順に有する定着部材であって、製造効率に優れ、かつ、ゴム層と離型性樹脂層間で剥離の生ずることのない定着部材、および、そのような定着部材を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の定着部材は、基材外周に、有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料からなるゴム層、および、離型性樹脂チューブからなる離型性樹脂層を順に有する定着部材であって、前記ゴム層が、離型性樹脂チューブを被覆した状態で前記ゴム材料を硬化させることにより形成されたものである定着部材において、前記離型性樹脂チューブの内面に7〜40μm厚さのプライマ層が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の定着部材の製造方法は、基材外周にゴム層および離型性樹脂層を順に有する定着部材を製造する方法であって、(a)円筒状金型内に前記基材を同心的に保持する工程、(b)離型性樹脂チューブの内面に7〜40μm厚さのプライマ層を設ける工程、(c)前記プライマ層が設けられた離型性樹脂チューブを、前記円筒状金型の内周面に配置する工程、および、(d)前記離型性樹脂チューブと前記基材との間隙に有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料を注入し、加硫して、前記有機マイクロバルーンにより形成された空隙部が前記連泡化剤により形成された連通孔で相互に連結されたゴム層を形成する工程、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基材外周面に有機マイクロバルーン空隙部が相互に連結されたゴム層および離型性樹脂層を順に有する定着部材であって、製造効率に優れ、かつ、ゴム層と離型性樹脂層間で剥離が生ずることのない定着部材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る離型性樹脂被覆ゴムローラの製造過程を示す断面図である。
【0016】
まず、本実施形態に使用される円筒状金型について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に使用される円筒状金型110は、直立保持された円筒型111と、この円筒型111の上部および下部にそれぞれ嵌合された上部栓体112および下部栓体113とから構成されている。上部栓体112および下部栓体113の各内側には、基材であるアルミ、鉄、ステンレス鋼などからなる金属芯軸121を、円筒型111内に同心的に保持するための芯軸保持孔115、116が設けられている。また、下部栓体113には、材料注入孔118が設けられ、上部栓体112には、材料逃げ孔119が設けられている。
【0018】
本実施形態では、このように構成された円筒状金型110の円筒型111を直立保持し、その内側に、外径が円筒型111の内径の約90〜100%で、厚さが約10〜100μmの離型性樹脂チューブ122を挿通させ、その両端を折り曲げて固定する。
【0019】
上記離型性樹脂チューブ122を構成する離型性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられるが、一般には、フッ素樹脂からなるチューブが使用される。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。
【0020】
この離型性樹脂チューブ122には、その内面に予め化学エッチングによる表面処理を施し、さらに、その表面処理面にプライマを塗付し、乾燥後、焼付けてプライマ層123を形成しておく。プライマは、離型性樹脂チューブ122や、これと接着させるゴム層の種類により適宜選択され、例えば、離型性樹脂チューブ122としてフッ素樹脂チューブを使用し、ゴム層の材料として、シリコーンゴムをベースとするものを使用する場合は、シリコーン系プライマが適している。その場合、なかでも、シロキサン成分60重量%以上、および、チタン酸系触媒2重量%以上を含有するものがより好ましい。チタン酸系触媒の好ましい例としては、テトラブチルチタネート、テトイソプロピルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、ビス(アセチルアセトニル)ジイソプロピルチタニウム、2,5−ジイソプロポキシ−ビス−エチルアセトアセテートチタニウムなどのβ−ジカルボニルチタニウム化合物などが挙げられる。
【0021】
本発明の目的のためには、プライマ層123の厚さを、少なくとも7μmとする必要がある。ただし、あまり厚いと、プライマが垂れて塗り斑となりやすいため、7〜40μmの範囲とすることが好ましい。
【0022】
次いで、この離型性樹脂チューブ122内に、アルミ、鉄、ステンレス鋼などからなる金属芯軸121を挿入し、円筒型111の上部および下部に上部栓体112および下部栓体113を嵌合させて同心的に保持する。金属芯軸121の表面にも、予めプライマを塗布乾燥する処理を施しておいてもよい。プライマとしては、従来より知られるいわゆる芯軸用プライマが使用される。
【0023】
なお、離型性樹脂チューブ122および金属芯軸121は、離型性樹脂チューブ122を予め金属芯軸121に被嵌させておき、これを円筒型111の内部に挿入し、固定するようにしてもよい。
【0024】
続いて、金属芯軸121と、内面にプライマ層123が設けられた離型性樹脂チューブ122との間隙に、有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料124Aを注入し、加硫して、有機マイクロバルーンにより形成された空隙部が連泡化剤により形成された連通孔で相互に連結されたゴム層を形成する。
【0025】
有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料124Aのベースとして使用されるゴム材料は、常温にて液状を呈し、熱により硬化してゴム状弾性体となるものであればよく、その種類などは特に限定されるものではない。本発明においては、ゴム材料として、100〜200℃程度の温度で硬化する付加反応型液状シリコーンゴム(LTVシリコーンゴム)が特に好適である。
【0026】
有機マイクロバルーンとしては、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メタアクリロニトリル・アクリロニトリル共重合体などの熱可塑性樹脂、ゴムなどの有機高分子材料からなるものが挙げられる。これらの有機マイクロバルーンの平均粒径は、10〜40μm程度であることが好ましく、10〜30μm程度であることがより好ましい。有機マイクロバルーンの平均粒径が、10μm未満では柔軟性が低下し、逆に40μmを超えると層特性が不均一になりやすい。
【0027】
連泡化剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、グリセリン−α−モノクロロヒドリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリンなどの多価アルコールや、それらの誘導体、例えばエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどの部分エーテル化物、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、エチレングリコールモノアセテートなどの部分エステル化物などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明においては、なかでも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンが好ましく使用される。この連泡化剤のゴム材料中の含有量は、ベースのゴム材料100重量部あたり6〜15重量部が好ましく、8〜12重量部がより好ましい。連泡化剤の含有量があまり少ないと、ゴム層の連泡化が不十分となり、逆に、あまり多いと、ゴム層の硬化性や接着性などが低下するおそれがある。
【0028】
なお、上記のような有機マイクロバルーンを含有するゴム材料が種々市販されており、これらの市販の有機マイクロバルーン含有ゴム材料に上記連泡化剤を配合して使用することも可能である。好ましい市販品としては、例えば有機マイクロバルーンを含有するLTVシリコーンゴムである信越化学工業社製のX34−2061−28L A/B(商品名)などが挙げられる。
【0029】
加硫温度は、使用するゴム材料の種類によって適宜設定されるが、有機マイクロバルーン空隙部の形成および有機マイクロバルーン空隙部の連泡化剤による連結を促進する観点からは、有機マイクロバルーンが連泡化剤により溶融する温度以上で選択することが好ましい。例えばベースのゴム材料としてLTVシリコーンゴムを使用し、連泡化剤としてトリエチレングリコールを使用した場合、150〜200℃の範囲で選択することが好ましく、160〜180℃の範囲がより好ましい。
【0030】
ゴム材料の加硫後、必要ならば常温にまで冷却し、上部栓体112および下部栓体113を取り外し、離型性樹脂チューブ122およびゴム層124とともに金属芯軸121を円筒型111から引き抜き、必要ならばさらに後加硫を行う。この後加硫の際の温度も、使用するゴム材料の種類によって適宜設定される。具体的には、例えばベースのゴム材料としてLTVシリコーンゴムを使用し、連泡化剤としてトリエチレングリコールを使用した場合、210〜250℃の範囲が好ましく、220〜240℃の範囲がより好ましい。
【0031】
この結果、例えば図2に示すような、金属芯軸121上に、有機マイクロバルーンにより形成された空隙部が相互に連結されたゴム層124および離型性樹脂チューブ122からなる離型性樹脂層125が順に被覆された3層構造のローラを得ることができる。
【0032】
このようにして得られる離型性樹脂被覆ゴムローラは、ゴム層124と離型性樹脂層125との接着性が良好で、これらの界面において剥離が生じることもない。しかも、上記のように、ゴム層124を離型性樹脂チューブ122とともに硬化させるため、効率の良い製造が可能である。
【0033】
なお、ゴム層124と離型性樹脂層125間の良好な接着性が得られるのは、離型性樹脂チューブ122の内面に設けられたプライマ層123が連泡化剤のバリア層として機能するからと考えられる。すなわち、上記の方法のように、ゴム層124を離型性樹脂チューブ122を被覆した状態で硬化させると、連泡化剤がゴム層124内に残留し、表面へと移行してくるが、ゴム層124表面にはプライマ層123が設けられているため、連泡化剤はプライマ層123内に留まり、その表面に析出することはない。この結果、連泡化剤による離型性樹脂チューブ122の接着性の低下が防止されると考えられる。
【0034】
以上説明した実施形態では、基材として金属芯軸121を用いているが、基材は耐熱性樹脂や金属からなるスリーブであってもよい。その場合には、スリーブ基材内に上記金属芯軸121のような硬質の支持体を挿入して、成型を行うことが好ましい。以下、スリーブ基材を用いた場合の本発明の第2の実施形態について、図3を参照しながら、既に説明した第1の実施形態からの変更点を中心に説明する。
【0035】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る離型性樹脂・ゴム被覆スリーブの製造過程を示す断面図であり、図1に共通する部分には同一符号を付してある。
【0036】
図3に示すように、本実施形態においては、耐熱性樹脂または金属からなるスリーブ基材126内に、支持体としてプライマ処理が施されていない金属芯軸121を挿入し、これを、円筒型111内に挿通させ、円筒型111の上部および下部に上部栓体112および下部栓体113を嵌合させて同心的に保持する。次いで、前述した第1の実施形態と同様に、スリーブ基材126と内面にプライマ層123が設けられた離型性樹脂チューブ122との間隙に、有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料124Aを注入し、加硫して、有機マイクロバルーンにより形成された空隙部が連泡化剤により形成された連通孔で相互に連結されたゴム層を形成する。その後、必要ならば常温にまで冷却し、上部栓体112および下部栓体113を取り外し、離型性樹脂チューブ122およびゴム層124とともに金属芯軸121を円筒型111から引き抜いた後、必要ならば後加硫を行う。
【0037】
この結果、例えば図4に示すような、スリーブ基材126上に、有機マイクロバルーンにより形成された空隙部が相互に連結されたゴム層124および離型性樹脂チューブ122からなる離型性樹脂層124が順に被覆された3層構造のスリーブを得ることができる。
【0038】
このようにして得られる離型性樹脂被覆ゴムローラにおいても、プライマ層123が連泡化剤のバリア層として機能するため、ゴム層124と離型性樹脂層125との接着性は良好で、これらの界面において剥離が生じることはない。また、ゴム層124を離型性樹脂層125とともに硬化させるため、効率の良い製造が可能である。
【0039】
なお、スリーブ基材126を構成する耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられ、なかでも、ポリイミド樹脂が好ましい。ポリイミド樹脂からなるスリーブ基材を使用する場合、円筒状また円柱状の芯体上に、ポリイミド前駆体溶液を塗布し、加熱して溶媒を除去するとともにポリイミド前駆体をイミド化して成形されるシームレスポリイミドスリーブ基材が、特に好ましい。また、スリーブ基材126を構成する金属材料としては、鉄、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。スリーブ基材126としては、この他、耐熱性樹脂からなるスリーブの外周面に、めっき、溶射、塗布などの方法によりニッケルなどの金属層を被覆したものも用いることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0041】
実施例1、2、比較例1〜4
外径21.5mm、長さ330mm、厚さ30μmのPFAチューブ122の内面に化学エッチングによる表面処理を施した後、その処理面にプライマをスプレー塗付し、乾燥後、200℃で6分間焼付けて表1に示す厚さのプライマ層を形成した。プライマには、DY39067(東レダウコーニング社製 商品名、含有成分:アリルトリメトキシシラン、テトラブチルチタネート、ヘプタン)100重量部に、X32−2352およびCX32−2352(以上、いずれも信越化学工業社製 商品名)の混合ゴム(重量比10:1)を15部添加し、均一に攪拌して調製した溶液を使用した。
【0042】
次いで、図1に示すように、上記各PFAチューブ122を、内径22mmの鉄製パイプからなる円筒型111内に挿通し、両端を円筒型111上に折り曲げて固定した。
【0043】
さらに、このPFAチューブ122を固定した円筒型111内に、外径16mmのアルミからなる金属芯軸121を挿入し、円筒型111の上部および下部にそれぞれ上部栓体112および下部栓体113を嵌合させて同心的に保持した。金属芯軸121の外周面には、プライマNo.101Aおよび同No.101A(信越化学工業社製 商品名)の混合液(重量比1:1)を予め塗布しておいた。
【0044】
この後、金属芯軸121とPFAチューブ122との間隙に、有機マイクロバルーンを含有するLTVシリコーンゴム(信越化学工業社製 商品名 X34−2061−28L A/B)100重量部に対し、トリエチレングリコール(TEG)10重量部を配合し、室温下で十分に混合して得たゴム材料124Aを注入した。
【0045】
注入後、140℃まで昇温させ30分間加熱して、シリコーンゴムを硬化させた後、室温にまで冷却して脱型し、さらに、220℃で5時間加熱して後硬化させ、外径22mm、ゴム層厚3.0mmのPFAチューブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0046】
実施例3〜5
ゴム材料124Aに配合する連泡化剤として、トリエチレングリコール(TEG)に代えて、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)およびグリセリンをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてPFAチューブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0047】
得られた各PFAチューブ被覆シリコーンゴムローラについて、PFAチューブとゴム層間の接着性を評価するため、各例毎に30本のローラを試作し、これらの各ローラについて、剥離が生じた面積の全表面積に対する割合を求め、その割合が50%以上、10%以上50%未満、10%未満、0%(剥離なし)にあるローラの数を調べた。結果を表1の下欄に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、本発明に係るPFAチューブ被覆シリコーンゴムローラは、PFAチューブとゴム層間での剥離が全く認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る定着部材の製造過程を示す断面図である。
【図2】図1に示す方法で製造される定着部材の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る定着部材の製造過程を示す断面図である。
【図4】図3に示す方法で製造される定着部材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
110…円筒状金型、111…円筒型、121…金属芯軸、122…離型性樹脂チューブ、123…プライマ層、124A…有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料、124…ゴム層、125……離型性樹脂層、126…スリーブ基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材外周に、有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料からなるゴム層、および、離型性樹脂チューブからなる離型性樹脂層を順に有する定着部材であって、前記ゴム層が、離型性樹脂チューブを被覆した状態で前記ゴム材料を硬化させることにより形成されたものである定着部材において、
前記離型性樹脂チューブの内面に7〜40μm厚さのプライマ層が設けられていることを特徴とする定着部材。
【請求項2】
前記プライマ層が、シリコーン系プライマを含むことを特徴とする請求項1記載の定着部材。
【請求項3】
前記離型性樹脂チューブは、内面にエッチング処理が施されており、このエッチング処理面に前記プライマ層が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の定着部材。
【請求項4】
連泡化剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の定着部材の製造方法。
【請求項5】
前記ゴム材料が、付加反応型液状シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の定着部材。
【請求項6】
前記基材が、金属芯軸、耐熱性樹脂スリーブまたは金属スリーブであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着部材。
【請求項7】
基材外周にゴム層および離型性樹脂層を順に有する定着部材を製造する方法であって、
(a)円筒状金型内に前記基材を同心的に保持する工程、
(b)離型性樹脂チューブの内面に7〜40μm厚さのプライマ層を設ける工程、
(c)前記プライマ層が設けられた離型性樹脂チューブを、前記円筒状金型の内周面に配置する工程、および
(d)前記離型性樹脂チューブと前記基材との間隙に有機マイクロバルーンおよび連泡化剤を含有するゴム材料を注入し、加硫して、前記有機マイクロバルーンにより形成された空隙部が前記連泡化剤により形成された連通孔で相互に連結されたゴム層を形成する工程、
を含むことを特徴とする定着部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−158332(P2008−158332A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348083(P2006−348083)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】