説明

定量測定装置、定量評価装置及び画像処理プログラム

【課題】パーシャルボリューム効果がある場合においても、所望の組織を高い精度で再現性高く抽出し、かつ定量評価することができる。
【解決手段】第1の組織を定義する第1の画素値範囲と第1の組織に隣接する第2の組織を定義する第2の画素値範囲との間の画素値範囲に基づいて、第1の組織と第2の組織とが1画素に含まれている中間画素を医用画像から抽出する。1画素に含まれる第1の組織の割合を示す分配係数と、中間画素の画素値とに基づいて、医用画像中全中間画素に含まれる第1の組織を分離する。医用画像から第1の画素値範囲に基づいて分離された第1の組織の量と、中間画素から分離された第1の組織の量とを加算して、医用画像に含まれる全ての第1の組織の量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮像装置で撮影された画像を精度よく組織毎に分離して定量評価を行う定量測定装置、定量評価装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置やMRl装置などの画像撮影装置を用いることにより、被写体の断層像を積み重ねた3次元ボクセルデータを取得できる。取得された画像は、観察や解析などの目的に応じた画像処理が施されて、操作者に提示される。
【0003】
例えば、観察用の画像処理としては、読影が容易なように対象とする組織だけを抽出する機能(セグメンテーション)、病巣部とその他の組織の位置関係を把握しやすくするようにボリュームレンダリングなどの3次元表示機能などがある。また、解析用の画像処理としては、セグメンテーション機能を用いて抽出した領域の面積や体積を求める機能などがある。これらの機能は、閾値処理が含まれている場合が多く、画素値の安定性が抽出精度に影響を及ぼす。
【0004】
また、単純な閾値処理ではなく、領域拡張法などの高度なセグメンテーション技術を用いた場合でも、近傍の画素との連結性は画素値で判定する場合が多いので、やはり抽出精度が低下する。
【0005】
これに対応するために、特許文献1には、X線CT装置で取得された画像データをボケ分布に基づいて補正することにより、位置関係及び面積が未知数の計測物の異なる物質の境界を正確に抽出する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11-56841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、パーシャルボリューム効果によって、筋肉と脂肪等の加重平均的なCT値が計測される場合には、筋肉と脂肪等の加重平均的なCT値を示す画素が孤立して抽出された場合に対応ができないという未解決の課題が残っている。
【0007】
また、肺癌病巣などの体積を期間をおいて複数回測定することで、体積が2倍になるのに要する時間(ダブリングタイム)を推定し、悪性度などの判定に用いる場合がある。しかし、ここで対象とする結節は、充実性のもの、GGO(すりガラス状陰影)と呼ばれる淡い陰影のもの、充実性と淡い陰影のハイブリッドタイプなどが存在するため、肺癌病巣などの体積を求める手法は確立されていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パーシャルボリューム効果がある場合においても、所望の組織を高い精度で再現性高く抽出し、かつ定量評価することができる定量測定装置、定量評価装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の定量測定装置は、医用画像を取得する画像取得手段と、前記医用画像に含まれる第1の組織を定義する第1の画素値範囲に基づいて前記医用画像から第1の組織を分離する第1の分離手段と、前記第1の画素値範囲と前記第1の組織に隣接する第2の組織を定義する第2の画素値範囲との間の画素値範囲に基づいて前記第1の組織と第2の組織とが1画素に含まれている中間画素を前記医用画像から抽出する中間画素抽出手段と、前記第1の画素値範囲と第2の画素値範囲との間の画素値を変数として前記中間画素に含まれる第1の組織の割合を示す分配係数を設定する分配係数設定手段と、前記医用画像中の中間画素に含まれる第1の組織を各中間画素の画素値と前記分配係数とに基づいて分離する第2の分離手段と、前記第1の分離手段で分離した第1の組織の量と第2の分離手段で分離した第1の組織の量とを加算する加算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の定量測定装置によれば、第1の組織を定義する第1の画素値範囲と第1の組織に隣接する第2の組織を定義する第2の画素値範囲との間の画素値範囲に基づいて、第1の組織と第2の組織とが1画素に含まれている中間画素を医用画像から抽出する。次に、分配係数と、中間画素の画素値とに基づいて、医用画像中の中間画素に含まれる第1の組織を分離する。そして、医用画像から第1の画素値範囲に基づいて第1の組織を分離し、その分離された第1の組織の量と、中間画素から分離された第1の組織の量とを加算して、医用画像に含まれる全ての第1の組織の量を算出する。ここで、分配係数とは、第1の画素値範囲と第2の画素値範囲との間の画素値を変数として中間画素に含まれる第1の組織の割合を示すものである。
【0011】
これにより、パーシャルボリューム効果がある場合でも、所望の解析組織を高い精度で再現性高く抽出することができる。すなわち、解析組織の画素値でない画素値を有する中間画素をも解析対象とし、また分配係数を用いることで中間画素に含まれる解析組織の量を過大評価することなく求めることができる。また、体積の算出に用いる閾値を操作者が設定する必要がないため、操作者による差をなくし、再現性を良くすることができる。
【0012】
なお、請求項1に記載の定量測定装置は、加算手段で加算された第1の組織の量などを出力する出力手段を設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パーシャルボリューム効果がある場合においても、所望の組織を高い精度で再現性高く抽出し、かつ定量評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の定量評価装置10全体の構成を示すハードウェア構成図である。
【0016】
定量評価装置10は、取得された医用画像に含まれる所望の組織の量を測定し、評価する装置であり、被検体の画像を撮影する医用画像撮影装置1、医用画像撮影装置1で撮影された画像等が保存されている画像データベース2とLAN等のネットワーク3によって接続される。医用画像撮影装置1は、X線CT装置、MR装置、超音波撮影装置等の被検体の画像(好ましくは3次元画像)を撮影可能な装置により構成される。
【0017】
定量評価装置10は、主として、中央処理装置(CPU)11と、主メモリ12と、データ記録装置13と、表示メモリ14と、ディスプレイ15と、コントローラ16と、ポインティングデバイス17と、外部入力装置18と、共通バス19とから構成される。
【0018】
CPU11は、上記各構成要素と共通バス19によって接続されており、各構成要素の動作を制御するものである。
【0019】
主メモリ12は、装置の制御プログラムが格納されており、プログラム実行時の作業領域となるものである。
【0020】
データ記録装置13は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブを含む各種アプリケーションソフト等が格納されているものである。データ記録装置13に記憶されているこれらのプログラムは、CPU11によってデータ記録装置13から読み出されて主メモリ12にロードされ、実行される。
【0021】
表示メモリ14は、作製された表示用のデータを一時的に記憶するものである。
【0022】
ディスプレイ15は、CRTモニタ、液晶モニタ等の表示装置であり、表示メモリ14から出力されるデータに基づいて画像を表示するものである。
【0023】
コントローラ16は、ポインティングデバイス17の状態を検出してディスプレイ15上のマウスポインタの位置やポインティングデバイス17の状態等の信号をCPU11に出力するものである。
【0024】
ポインティングデバイス17は、マウス、トラックボール、タッチパネル等の入力機器であり、ディスプレイ15上のソフトスイッチを操作するためのものである。
【0025】
外部入力装置18は、キーボード等の、操作者がCPU11へ指示を入力するためのものである。
【0026】
なお、本実施例では、主メモリ12以外の記憶装置としてデータ記録装置13が接続されているが、データ記録装置13は、定量評価装置10に内蔵又は外付けされたメモリ、磁気ディスク等の記憶装置、取り出し可能な外部メディアに対してデータの書き込みや読み出しを行う装置、外部記憶装置とネットワークを介してデータを送受信する装置等を適用してもよい。
【0027】
次に、上記のように構成された定量評価装置10において、取得された画像から所望の組織の定量評価を行う方法について説明する。
【0028】
取得された画像から所望の組織の定量評価を行うにあたり、所望の組織を高い精度で再現性高く抽出する必要がある。以下、所望の組織を高い精度で再現性高く抽出する必要性について説明する。
【0029】
医療用のX線CT装置では、CT値の精度に影響を及ぼす要因として、ビームハードニングなどの非線形因子、検出器のエネルギー特性、スライス厚などが考えられる。これらの要因のうち、ビームハードニングは、専用の補正が備わっているため、基本的に問題とならない。また、検出器の特性も、キャリブレーション処理が備わっているため、基本的に問題とならない。
【0030】
これに対し、スライス厚は、パーシャルボリューム効果として知られる精度低下をもたらす。パーシャルボリューム効果は、図2に示すように、計測スライス開口内で被写体の組織がスライス方向に変化している場合に発生する。以下、パーシャルボリューム効果が精度低下をもたらす原因について説明する。
【0031】
図3に示すように、あるスライス断面内を2つの組織の境界が斜めに横切っている場合を考える。画素J−1では第1の組織が100%を占め、画素J+4では第2の組織が100%を占めている。従って、これらの画素は正しい画素値が得られる。これに対し、画素J〜J+3では、第1の組織と第2の組織とが含まれるため、第1の組織の画素値と第2の組織の画素値との中間的な画素値となって計測される。
【0032】
図4は、下肢のCT画像で、閾値処理により筋肉、脂肪を抽出した結果を示している。図4(a)の矢印で示した画素は、図4(a)に示すように、筋肉としては抽出されず、図4(b)に示すように、脂肪としても抽出されていない。このような画素は、パーシャルボリューム効果によって本来の組織が持つCT値と異なる中間的な値を持つ、非解析対象画素である。
【0033】
非解析対象画素を少なくして不足なく筋肉領域を抽出するために、閾値を小さくして閾値処理を行うと、脂肪まで筋肉領域として抽出されてしまう。逆に、脂肪を含まないようにするには、閾値をかなり高くしなければならず、この場合には、筋肉と思われる領域がすべて対象外となってしまう。そのために、従来はファントム実験によって最適閾値を検討したりしていた。しかし、臨床データはより複雑で最適化が困難であり、面積や体積を異なる施設で測定した場合、用いた閾値によって結果が変化し厳密な比較は出来ない場合があった。
【0034】
なお、パーシャルボリューム効果は、特に、骨と軟部組織など、第1の組織と第2の組織との密度や画素値が大きく異なる部位が含まれている場合に問題となる。
【0035】
そのため、筋肉の体積など所望の組織の定量評価を行うためには、パーシャルボリューム効果がある場合等においても、所望の組織を高い精度で再現性高く抽出する必要がある。
【0036】
図5は、所望の組織の定量評価を行う処理の流れを示すフローチャートである。以下の処理は、医用画像撮影装置1又は画像データベース2から被写体の断層像が取得された後に、CPU11によって行われる。以下、筋肉と脂肪とが混在した断層像がX線CT装置で取得された場合に、筋肉と脂肪とを分離し、筋肉の体積を求める場合について説明する。
【0037】
まず、ポインティングデバイス17、外部入力装置18などにより、2個の対象組織が定義される(ステップS10)。例えば、筋肉と脂肪、骨と骨髄液、肺胞と充実性結節(又はGGO)などである。本実施の形態では、筋肉と脂肪とが2つの対象組織として定義される。また、2つの対象組織のうち、筋肉が解析組織として設定される。
【0038】
次に、閾値処理などの公知の手法により、2個の対象組織が断層像から抽出される(ステップS20)。2個の対象組織を抽出する閾値は、ステップS10で定義された2つの組織の種類によって決定される。その結果、図6に示すように、第1の組織(筋肉、画素P)と第2の組織(脂肪、画素R)を含む領域とが、筋肉内に含まれる筋肉と脂肪との中間的な画素値を有する画素(中間画素、画素Q)とが抽出される。
【0039】
次に、中間画素を分配係数で重み付けすることにより、中間画素を各組織(筋肉と脂肪)へ分配する処理(組織分配処理)が行われる(ステップS30)。
【0040】
以下、組織分配処理(ステップS30、すなわちステップS31〜S34)について説明する。
【0041】
まず、閾値処理によって抽出された領域のうち、解析組織である筋肉が含まれる画素(解析対象画素)が抽出される(ステップS31)。図7に示すように筋肉のCT値をα±A(CT値1〜CT値1’)とし、脂肪のCT値をβ±B(CT値2〜CT値2’)とした場合には、この時に用いる筋肉抽出の閾値はβ+B(CT値2)となる(α>β)。これにより、図4(a)で非解析対象となった画素等の、明らかに脂肪と判断できる画素以外の画素を解析対象画素とすることが出来る。ここで、筋肉のCT値及び脂肪のCT値が範囲をもって示されているのは個人差によるものと考えられ、そのために閾値を固定できない可能性が考えられる。しかし、閾値をβ−B(CT値2’)とすることにより、個人差を吸収し、全ての脂肪組織を解析対象とすることが出来る。
【0042】
次に、所定のCT値を有する1画素(単位体積)を脂肪と筋肉とに分配するときの分割の割合を定める分配係数が決定される(ステップS32〜S33)。
【0043】
まず、分配係数を割り当てる画素値が決定される(ステップS32)。ここでは、図7の点線に示すように、前述した筋肉のCT値(CT値1、CT値1’)、脂肪のCT値(CT値2、CT値2’)が分配係数を割り当てる画素値となる。
【0044】
その後、画素値に対応した分配係数が決定される(ステップS33)。まず、CT値2’〜CT値2までの分配係数を1.0とする、すなわち完全な脂肪として扱う。同様に、CT値1’〜CT値1までの分配係数を1.0とする、すなわち完全な筋肉として扱う。そして、CT値2とCT値1との間を線で結ぶ。これにより、CT値が脂肪のCT値に近いほど脂肪への分配係数が大きくなり、筋肉のCT値に近いほど筋肉への分配係数が大きくなるような分配係数テーブル又は関数(関数化でき、演算時間が問題なければテーブル化は不要)を決定することができる。
【0045】
なお、CT値2とCT値1との間は、図8に示したような線形でも、非線形(Partial)でも良く、目的や対象臓器によってアルゴリズムを選択するようにすればよい。実際には、比率と投影値との間にはわずかに非線形な関係(図8、Partial)で計測されるが、線形(図8、Linear)と扱っても実用上問題ない場合が多いためである。
【0046】
ステップS32〜S33において、図7に示すような分配係数テーブルが決定されたら、各画素ごとに決定された分配係数Wiと、画素体積ΔVを乗算し、対象画素分の総和をとることで、脂肪と筋肉とに分配された対象画素のうちの筋肉の体積(ΣWi・ΔV)が算出される(ステップS34)。ステップS34で算出された体積は、パーシャルボリューム効果によってCT値が低くなった画素も寄与しているので、より精度の高い解析値となっている。
【0047】
これにより、組織分配処理(ステップS30、すなわちステップS31〜S34)が終了される。
【0048】
組織分配処理(ステップS30)が終了したら、最終的にユーザーが必要とする解析値を算出する解析値算出処理が行われる(ステップS40)。解析値として、ステップS10で抽出された筋肉の画素Pの数にボクセルサイズの単位体積を乗じたものに、ステップS34で算出された対象画素の筋肉の体積(ΣWi・ΔV)を加えることにより算出された、最終的な筋肉の体積を用いることができる。
【0049】
解析値の他の例としては、撮影時期の異なる複数の断層像に対して処理を行うことで算出された、体積が2倍になるのに要する時間(ダブリングタイム)や、所定の時間経過後、例えば1ヵ月後の腫瘍の体積を解析値としてもよい。なお、ダブリングタイム等は、以下のようにして算出することができる。
【0050】
細胞は、1個が2個、2個が4個というように倍々に増殖していくことから、ある時点の腫瘍等の体積(d1)及びある時点から所望の時間経過後の時点の腫瘍等の体積(d2)が分かれば、そこから腫瘍等の体積が2倍になるために要する時間(ダブリングタイム:DT)を計算できる。そして、ダブリングタイムが分かれば、さらに別の時点の腫瘍等の体積(d3)を計算上推定することができる。下式において、tは、d1からd2までの時間であり、t’は、d3からd2までの時間である。
【0051】
[数1]
DT=t×1/10(logd2−logd1)
=t’×1/10(logd3−logd2)
更に別の例として、図9に示すようなGGO(すりガラス状陰影)がある場合である場合には、充実性陰影(結節影)とすりガラス状陰影の体積の比を解析値としてもよい。
【0052】
そして、解析値の数値やグラフ等の情報がネットワーク3等を介して要求元に出力され、提示される(ステップS50)。
【0053】
本実施の形態によれば、パーシャルボリューム効果がある場合でも、所望の解析組織を高い精度で再現性高く抽出することができる。すなわち、解析組織の画素値の範囲にない画素値を有する中間画素をも解析対象とし、また分配係数を用いることで中間画素に含まれる解析組織の量を高い精度で分配し、過大評価することなく求めることができる。
【0054】
また、解析組織の体積の算出に用いる閾値を操作者が設定する必要がないため、操作者による差をなくし、再現性を良くすることができる。また、閾値に左右されないため、より真値に近い組織量を算出することができる。これにより、所望の臓器(肝臓など)の体積などの移植時に有用な情報を得ることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、スライス厚を厚くしても精度が落ちないため、検診等においてスライス厚を厚くして効率と精度を上げることができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、解析組織の総和を真値に近い値で高い精度でから算出することができるため、解析組織の面積、体積、ダブリングタイム(ダブリングタイム)、解析組織とそれ以外の組織との比などの操作者が望む情報を出力することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、脂肪と筋肉とが2個の対象組織として定義された場合について説明したが、筋肉と脂肪、骨と骨髄液、肺胞と充実性結節などにも適用できる。すなわち、肺(すなわち空気)と骨、髄液(すなわち水)と骨など、あらかじめ2個の材質が混在していることが分かっている部位であれば、どこにでも適用することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、パーシャルボリュームが筋肉と脂肪との2個の組織で構成された場合について説明したが、パーシャルボリュームが3つ以上の組織で構成される場合についても適用できる。例えば、図6の第2の組織の外側に別の組織が含まれている場合には、上記の処理を行う回数を増やすことによって対応できる。また、複数の軟部組織を同一とみなすことで、骨と軟部組織のように2個の材質に分類して、この2個の材質に対して上記方法を適用することによっても対応できる。
【0059】
また、本実施の形態では、2個の対象組織が断層像から抽出される処理(ステップS20)において、閾値処理を用いた例について説明したが、領域分割処理で領域拡張法や膨張・収縮処理などの公知の手法で組織を抽出してもよいし、GUIを用いて関心領域を指定する手段を備えていてもよい。例えば、図10に示すように、断層像にAB筋、CD筋、EF筋が含まれている場合において、CD筋のみを対象として定量評価を行う場合には、2個の対象組織が定義されるステップ(ステップS10)において、C筋とD筋とを対象組織、C筋を解析組織として設定し、断層像からCD筋が領域抽出法等により抽出された画像に対して上記処理を行うことにより、C筋の定量評価を行うことができる。また、肺野領域を対象とした場合に体外の空気まで解析対象となることを避けることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、第1の組織である筋肉の堆積を求めるために図6の点線に示すような分配係数としたが、分配係数は、図6の実線と破線のように、第1の組織を解析組織とする場合と第2の組織を解析組織とする場合との2種類を用意しても良い。すなわち、第1の組織と第2の組織の和が算術的に1.0になるようにすれば良い。
【0061】
また、本実施の形態では、1枚のスライスの単位体積(ボクセル)に含まれる筋肉と脂肪とを分配したが、複数のスライスに対して同様の処理を行った結果を加算することにより、複数のスライスに含まれる筋肉と脂肪とを分配する場合にも適用できる。
【0062】
また、本実施の形態では、被写体の断面像として、断層像が取得された場合について説明したが、断層像に限らず、軸位像、サジタル像、コロナル像、MPR像など、取得された画像データから再構成された2次元の画像であればどのような画像にでも適用できる。
【0063】
また、本実施の形態では、解析値を算出して出力したが、分配された結果に基づいて画素の濃度を変えた画像などを表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る定量評価装置10の全体の構成を示すハードウェア構成図である。
【図2】パーシャルボリューム効果について説明する説明図である。
【図3】パーシャルボリューム効果について説明する説明図である。
【図4】中間画素が抽出されていない画像例である。
【図5】上記定量評価装置10の処理の流れについての説明図である。
【図6】上記定量評価装置10の解析対象が抽出された一例である。
【図7】上記定量評価装置10の分配係数ついての説明図である。
【図8】上記定量評価装置10の分配係数を決定する基となる投影値と2つの組織の混合比を示すグラフである。
【図9】本発明の対象となる一例である。
【図10】本発明の対象となる一例である。
【符号の説明】
【0065】
1:医用画像撮影装置、2:画像データベース、3:ネットワーク、10:定量評価装置、11:中央処理装置(CPU)、12:主メモリ、13磁気ディスク:、14:表示メモリ、15:ディスプレイ、16:コントローラ、17:ポインティングデバイス、18:外部入力装置、19:共通バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像を取得する画像取得手段と、
前記医用画像に含まれる第1の組織を定義する第1の画素値範囲に基づいて前記医用画像から第1の組織を分離する第1の分離手段と、
前記第1の画素値範囲と前記第1の組織に隣接する第2の組織を定義する第2の画素値範囲との間の画素値範囲に基づいて前記第1の組織と第2の組織とが1画素に含まれている中間画素を前記医用画像から抽出する中間画素抽出手段と、
前記第1の画素値範囲と第2の画素値範囲との間の画素値を変数として前記中間画素に含まれる第1の組織の割合を示す分配係数を設定する分配係数設定手段と、
前記医用画像中の中間画素に含まれる第1の組織を各中間画素の画素値と前記分配係数とに基づいて分離する第2の分離手段と、
前記第1の分離手段で分離した第1の組織の量と第2の分離手段で分離した第1の組織の量とを加算する加算手段と、
を備えたことを特徴とする定量測定装置。
【請求項2】
前記医用画像は、被検体の断層像又は前記断層像から抽出された所定の領域の画像であることを特徴とする請求項1に記載の定量測定装置。
【請求項3】
前記加算手段で加算された第1の組織の量を出力する第1の出力手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の定量測定装置。
【請求項4】
前記医用画像に含まれる所定の2つの組織を設定する組織設定手段と、
前記設定された2つの組織をそれぞれ前記第1の組織とした場合に請求項1又は2に記載の定量測定装置で測定された各組織の量の比を出力する第2の出力手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の定量測定装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の定量測定装置で測定された、ある時点における第1の組織の量を取得する第1の組織量取得手段と、
請求項1又は2に記載の定量測定装置で測定された、ある時点から所望の時間経過後の時点における第1の組織の量を取得する第2の組織量取得手段と、
前記第1の組織量取得手段で取得された第1の組織の量と、前記第2の組織量取得手段で取得された第1の組織の量とから、第1の組織の量が2倍になるために要する時間(ダブリングタイム)を算出するダブリングタイム算出手段と、
前記ダブリングタイム算出手段で算出されたダブリングタイムを出力する第3の出力手段と、
を備えたことを特徴とする定量評価装置。
【請求項6】
医用画像を取得するステップと、
前記医用画像に含まれる第1の組織を定義する第1の画素値範囲に基づいて前記医用画像から第1の組織を分離するステップと、
前記第1の画素値範囲と前記第1の組織に隣接する第2の組織を定義する第2の画素値範囲との間の画素値範囲に基づいて前記第1の組織と第2の組織とが1画素に含まれている中間画素を前記医用画像から抽出するステップと、
前記第1の画素値範囲と第2の画素値範囲との間の画素値を変数として前記中間画素に含まれる第1の組織の割合を示す分配係数を設定するステップと、
前記医用画像中の中間画素に含まれる第1の組織を各中間画素の画素値と前記分配係数とに基づいて分離するステップと、
前記第1の分離手段で分離した第1の組織の量と第2の分離手段で分離した第1の組織の量とを加算するステップと、
を演算装置に実行させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−272014(P2008−272014A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115812(P2007−115812)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】