説明

容器内のサンプル量を決定するためのシステムおよび方法

サンプル内の病原体を検出するためのシステムおよび方法が提供される。システムは、種々の測定技術の使用を通じて、容器内のサンプルの量を測定することが可能である。これにより、量が仕様に合っていないことをユーザに気付かせること、および/または、仕様から外れたサンプルを考慮した結果の補正が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液の培養を通じて病原体検出を行うためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの医学的診断では、血液サンプルなどの体液サンプルを患者から採取し、増殖培地(growth medium)内で培養し、そして患者の病気を引き起こしていると考えられる病原体の存在を検査することが必要である。増殖培地が栄養を与えることで、バクテリア、ウィルス、ミコバクテリア、哺乳類細胞などの病原体が十分な数に増殖し、それらの存在の検出が可能となる。
【0003】
いくつかの場合には、病原体は視覚で検出可能なほどの数に増殖できる。例えば、培養物の一部を顕微鏡用スライドに置き、視覚的に検査することで、対象とする病原体の存在を検出することができる。
【0004】
あるいは、増殖(growth)の過程で微生物が出す副生成物の存在を検出することにより、病原体または他の有機体の存在を間接的に検出することも可能である。例えば、哺乳類細胞、昆虫細胞、バクテリア、ウィルス、ミコバクテリア、菌類など、ある微生物はその増殖過程およびライフサイクルで酸素を消費する。サンプル培地内で微生物の数が多くなるほど、それらは自然により多くの酸素を消費する。さらに、これらの酸素消費生物は一般に、代謝の副生成物として二酸化炭素を放出する。従って、存在している生物の数が増せば、同様にそれらが集団で放出する二酸化炭素の量も増える。
【0005】
サンプル内の二酸化炭素の増加を測定することでサンプル内に生物が存在しているかを決定するいくつかの方法がある。例えば、Becton Dickinson and Company製のBactec(登録商標)として知られる機器は、インディケータの色変化を検出することで、サンプル内に二酸化炭素が存在しているかを決定する。すなわち、各サンプルは、二酸化炭素の存在によって色が変化する化学物質を有するインディケータ培地を収納したサンプルビンにそれぞれ集められる。次に、サンプルビンを機器内に装填し、光センサによってサンプルビン内のインディケータ培地の色を検出する。増殖および/または代謝活性の作用として二酸化炭素を放出する生物をサンプルが含んでいた場合、インディケータ培地の反射または蛍光の強さは、二酸化炭素の存在に応じて変化することになる。よって光センサはこの強度変化を検出することになり、機器はオペレータに対し、サンプルビンに収納されたサンプル内に生物が存在していることを示すことになる。サンプル内の二酸化炭素の変化を測定することによってサンプル内に生物が存在していことを検出するための機器の他の例は、特許文献1〜4に記載されており、それらの参照によってこれら文献の内容のすべてをここに包含するものとする。
【0006】
あるいは、酸素を消費する微生物の存在を検出するべく二酸化炭素の存在を測定する代わりに、対象とするサンプル内の酸素濃度の減少を測定することも可能である。かかるシステムでは、サンプルビンは、ビン内の酸素濃度が変化すると色または蛍光が変化するインディケータを含んだものとなる。この色または蛍光の変化を機器によって検出し、サンプル内の酸素消費生物によってサンプル内の酸素が減少していることを技術者に示すことができる。かかる酸素検出技術を用いた機器は特許文献5に記載されており、その参照によってこの文献の内容のすべてをここに包含するものとする。
【0007】
酸素消費生物の存在は、対象とするサンプルを収納している密閉サンプルビン内の圧力変化を測定することによっても検出可能である。すなわち、閉塞されたサンプルビン内の酸素が酸素消費生物によって減少すると、密閉サンプルビン内の圧力が変化することになる。生物が二酸化炭素を放出すれば、サンプルビン内の圧力はさらに変化することになる。よって、閉塞されたサンプルビン内の圧力変化をモニタすることで、そのような生物の存在を検出することができる。かかる圧力変化を検出可能な機器は特許文献5〜9に記載されており、それらの参照によってこれら文献の内容のすべてをここに包含するものとする。
【0008】
【特許文献1】米国特許4,945,060号明細書
【特許文献2】米国特許5,164,796号明細書
【特許文献3】米国特許5,094,955号明細書
【特許文献4】米国特許5,217,876号明細書
【特許文献5】米国特許5,567,598号明細書
【特許文献6】米国特許4,152,213号明細書
【特許文献7】米国特許号5,310,658明細書
【特許文献8】米国特許5,856,175号明細書
【特許文献9】米国特許5,863,752号明細書
【特許文献10】国際公開第99/67606号公報
【特許文献11】米国特許6,709,857号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既存の技術は効果的ではあるものの、改良は常に要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、本発明はサンプル内の病原体を検出する方法に関連し、該方法は、サンプルおよび増殖培地を含んだサンプル容器内のサンプルの量(volume)を決定するステップと、続いて前記サンプルを培養するステップと、培養されたサンプル内の病原体の増殖を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、を含んでいる。
【0011】
他の実施形態では、本発明はサンプル内の病原体を検出する方法に関連し、該方法は、サンプルおよび増殖培地を含んだサンプル容器内の体液サンプルの量を決定するステップと、当該サンプル量をサンプル量規格と比較するステップと、前記サンプル量が前記サンプル量の規格(specification)から外れていた場合には、対応するメッセージを提供するステップと、前記サンプルに関連した何らかのユーザ入力に応答するステップと、続いて前記サンプルを培養するステップと、培養されたサンプル内の病原体の増殖を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、を含んでいる。
【0012】
他の実施形態では、本発明はサンプル内の病原体を検出するシステムに関連し、該システムは、体液サンプルおよび増殖培地を含んだ1以上のサンプル容器を受容するのに適合した培養および測定モジュールと、該培養および測定モジュールとは別体またはその一部をなし、前記サンプル容器内の前記サンプルの量を測定するのに適合したサンプル量センサと、1以上のインターフェースであって、前記サンプル容器が所定のサンプル量規格内にない場合のユーザへの報知と、所定のサンプル量規格内にない前記サンプル容器の続く取り扱いの指示の受容とを含む群から選択された1以上のタスクを実行するのに適合した当該1以上のインターフェースと、を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
全図面を通じ、同じ参照番号は同様の部分、要素および構造を参照するものと理解されたい。
【0014】
図1は、サンプル培地内の微生物の増殖を検出するためのシステム100を示し、本発明の一実施形態に係るサンプル量センサが適用可能なものである。システム100は、それぞれ赤外線レーザ分光および/または二波長変調の技術を使用したものとすることができる複数の測定機器と、サンプルビン内の酸素や二酸化炭素などの気体の濃度をモニタして、あるいはサンプルビン内の圧力をモニタして、ビン内の微生物の増殖を検出するためのインディケータ培地と、の少なくとも一方を含んでいる。
【0015】
図1に示すように、システム100は、中央コンピュータ104に接続された培養および測定モジュール102を複数具えている。中央コンピュータ104は培養の温度および時間や、モジュール102によって実施される測定のタイミングなどのファクタを制御可能であり、さらに、モジュール102によって得られたデータ読取り値の収集および分類を行うことができる。システム100はまた、プリンタ106等の出力装置を具えることが可能である。プリンタ106は中央コンピュータ104により制御され、培養および測定モジュール102により得られたデータ読取り値を印刷することが可能である。
【0016】
図2、図3および図14〜図17は培養および測定モジュール102の一実施形態を示す。本実施形態における各培養および測定モジュール102は、ハウジング108と、その内外へ摺動可能な2つの棚110と、を具える。各棚110は複数の開口112を具え、その各々がサンプルビンを受容するのに適したものとなっている。開口112は図示のように複数の行および列に配置されており、棚110は任意の数の開口を有したものとすることができる。例えば、開口112を9行・9列に配置することで、1つの棚110が合計81個の開口112を有するものとすることができる。
【0017】
サンプル培地が培養および測定モジュール102によって分析されるべきものであれば、そのサンプル培地はサンプルビン114内に配置される。そしてサンプルビン114を培養および測定モジュール102内の各開口112に装填する。ここに示す実施形態では、ビン114は閉塞されたサンプルビンであり、どのような形状および寸法を有したものでもよい。
【0018】
培養および測定モジュール102はさらに、キーボード、バーコードリーダまたはその他の適切なインターフェースを具えることができる。これにより技術者は、培養および測定モジュール102、または中央コンピュータ104、またはその双方にあるメモリ内のデータベースに、サンプルに関係のある情報を入力することが可能となる。当該情報には、例えば、患者の情報、サンプルの種類、サンプルビン114が装填されている開口の行および列その他を含めることができる。
【0019】
本発明では、サンプルビン114内のサンプルの量は、例えばサンプルを培養および測定モジュール102に配置する前に決定される。例えば、特定タイプの診断学的検査のために、病院または臨床検査機関は多くの患者サンプルを取り扱い得る。これらのサンプルはサンプル量の要件に準拠(compliant)し、正確な初期条件が、診断方法またはシステムが製造者の規格に合う有効な検査条件を生み出すようにされていなければならない。多くの患者サンプルの中には、サンプル内に存在している検査対象の濃度が比較的低いものが含まれている可能性もあり、また生のサンプルの所要量を得るのがかなり難しいこともしばしばあるので、上記準拠は必要である。患者が貧血症であったり、非常に若かったり、非常に年老いていたり、あるいは重病であったりすれば、要求されているものに対して十分な量のサンプル(例えば血液)を提供することができないことがあり得る。不十分な生のサンプルしか得られなければ、対象を統計的にリカバリまたは検出する機会が減ることになる。生のサンプルの量が過剰であれば、対象の増殖が抑制され、それによって検出が妨げられることがある。
【0020】
一般的な適用例では、看護士、医師または技術者は患者から直接、生のサンプルを得る。そして生のサンプルは検査容器に入れられて研究所に移送され、目視により手動で、または機器により自動的に、病原体の存在についての分析が行われる。この点で、本発明は、生のサンプルの量が信頼性のある結果を生むのに十分であるかを決定することができるようにするものである。あるいは、検査中に特別な測定または分析技術(すなわちアルゴリズム)が適用されるべきものであるかを決定するためにサンプル量が使用されてもよい。サンプル量についての他の応用も可能である。
【0021】
例えば、実際上、研究員は図4の装置を用いて検査容器をスキャンし、サンプルが検査すべきものであるか否か、あるいはサンプルが信頼できる結果を生む見込みのないものであるかを決定することができる。その後研究員は、サンプルを提供した病院の部局にフィードバックし、他のサンプルが必要であること、および、準拠(compliance)を保証するためには注意が必要であることの要求を行う。
【0022】
図4はシステムの一実施形態を示す模式図であり、ビン114内のサンプル高さを検出することによってサンプル量を決定するためのものである。具体的には、図4のシステムは、培養ビン114または他のサンプル容器内の液体高さを、超音波反射測定装置(すなわち超音波インパルスソナー)を用いて測定し、これによりユーザが導入または接種(inoculate)したサンプルの量を計算するものである。
【0023】
上述した測定を実現するために、オペレータはまず、予め接種した容器、ビンまたはボトルを、例えばモジュール102の適切な受容部内、またはモジュール102に結合可能な別体の測定装置内に配置する。ビン114は、ホルダチューブにスライドする際、垂直に直立した状態とされる。ガラス、ポリマーまたは他の材料でなるビン114の底面は、当該底部に面する柔軟な(mildly compliant)音響カプラ164に接触する。これは、1MHz超音波トランシーバなどのトランシーバ166から、高周波数の音をビン114に伝えるための導波部を備えている。
【0024】
音響すなわち超音波インパルスは、ビン114の外面を通って、ビン114内の液体培地165に伝えられる。液体培地165は増殖培地と血液との組み合わせを含んだものとすることができる。そして、この音波Aはビン114内の液体培地165を進んでゆくが、液体とその上の気体との界面は鏡のようにその一部を反射する。そして、音波の当初のエネルギの一部はビン114の内部および外壁を通り、柔軟なカプラ164に戻り、さらにトランシーバ166に戻ることになる。
【0025】
そして、トランシーバ166に接続された信号ドライバ、増幅器および処理回路は、各時点間の時間長を測定できる。すなわち、当初音波を発した時点から、反射信号が戻ってこれが感知された時点までの時間長である。
【0026】
時間長はビン114内の液体培地165の高さに比例する。具体的には、信号ドライバ、増幅器および処理回路はトランシーバ166に結合した超音波パルス発生器/受信器を具えることができ、これはさらに、増幅されたトランシーバ出力波形をモニタするオシロスコープ163と、パルスエコーを分析してビンのサンプル量の決定およびメッセージまたはレポートの生成を行うコンピュータに接続される。そして、かかるレポートを、メッセージ170として例示するようにユーザに提供することができる。出力パルスが気液界面から戻ったときの反射音波を示す検出波形信号169を明示するためにオシロスコープを用いることができるが、オシロスコープを信号解析回路および/または信号処理ソフトウェアに置き換えてもよい。容器内に収納されている液体の違い、正常なサンプル量、温度変動、容器材料などを考慮し、信号処理演算の過程で適切な較正および正規化が行われてもよいことは勿論であり、これによって一貫したサンプル量決定が実現される。
【0027】
従って本発明によれば、培養ビンまたはサンプル容器に加えられているサンプルの量を決定することができる。このサンプル量測定データは、収集の準拠性に関して研究所職員に情報を提示したり、サンプル量が最適でない場合に予測される効果の予見を通じてシステム性能を改善したりすることなど、いかなる目的にも使用することができる。
【0028】
図4の実施形態においては、超音波インパルスソナーを用いてサンプル量を測定するものとした。しかし本発明の他の実施形態として、レーザ変位検知、透過ビーム型(through-beam)光検知、超音波反射計およびその他のいくつかの方法が測定技術に含まれていてもよく、以下に詳述する。
【0029】
他の実施形態では、図4の超音波インパルスソナー測定装置を、図5Aおよび図5Bに示すようなレーザ変位検知装置200に置き換えている。図5Aおよび図5Bは、図2に示した機器に使用可能なレーザ変位センサの概念図である。本実施形態では、容器すなわち血液培養ビン206内の液体204の表面に対し、所定の角度をもってダイオードレーザ202などのレーザが向けられている。レーザビームは、リニアアレイレーザ変位センサ208などのリニア検出器に戻って検知される。リニア検出器は、三角法により戻り角を計算する。図5Aはレーザスポットビーム角が大きい場合を示している。図5Bでは、レーザスポットビーム角が小さい。この戻り角は容器内の液面高さに対応しており(図5Aに示すようにサンプルの高さが低い場合、図5Bに示すようにサンプルの高さが高い場合、あるいはそれらの間の位置など)、従って、容器206の寸法および形状が既知の定数として与えられていれば、量を決定することができる。
【0030】
他の実施形態では、図6Aおよび図6Bに示すように、透過ビーム型光センサ装置220を用いてサンプル量を決定する。図6Aおよび図6Bは、図2に示した機器に使用可能な透過ビーム型光センサの概念図である。リニア発光ダイオードアレイ222などの光源が、透明または半透明の容器すなわち血液培養ビン224の一側に面している。リニアフォトダイオードアレイあるいはリニア撮像装置の光結合デバイス(CCD)などのリニア検出器226が容器224の反対側に配置されて、メニスカスないし気液境界での光強度の差を検出する。薄く影をつけた領域228は、内容物が光を吸収することによってリニアフォトダイオードアレイないしCCD226に当たる光の強度が小さくなっていることを示している。そして、検出された界面は流体高さを示し(図6Aに示すように流体の高さが低い場合、図6Bに示すように流体の高さが高い場合、あるいはそれらの間の位置など)、従って、サンプル容器内の流体量を正確に計算可能となる。
【0031】
本発明の他の実施形態では、図7Aおよび図7Bに示すように、レーザ走査型(laser scanning)フォトダイオードアレイ240を用いてサンプル量を決定する。図7Aおよび図7Bは、図2に示した機器に使用可能なレーザラスタ走査型フォトダイオードアレイの概念図である。サンプル容器または血液培養ビン244の透明または半透明の外壁に対してリニアフォトダイオードアレイまたはCCD242が配置され、サンプル容器244内の可能性のある全サンプル量と交差するよう、一端から他端まで延在している。感光性エレメントの個数および密度は、高レベルの解像度に対しては高くなるように増加させ、低レベルの解像度に対しては低減させることができる。操作時に、レーザ246はサンプル容器244に対して回転可能に配置され、サンプル容器244を通して走査光を発する。レーザ246は、矢印248で示すように回転しつつサンプル容器244を垂直に走査する。薄く影をつけた領域245は、内容物が光を吸収することによってリニアフォトダイオードアレイないしCCD242に当たる光の強度が小さくなっていることを示している。この結果フォトダイオードのアレイ242に当たる光の強さは、内容物が光を吸収することによって小さくなる。そしてこれにより、アレイ242で検出された強度測定値を、流体高さ(図6Aに示すように流体の高さが低い場合、図6Bに示すように流体の高さが高い場合、あるいはそれらの間の位置など)を決定するために用いることができ、従って、サンプル容器内の流体量を正確に計算可能となる。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態では、図8に示すように、容量型近接検出装置(capacitive proximity detection apparatus)260を用いてサンプル量を決定する。図8は、図2に示した機器に使用可能な容量センサの概念図である。この装置は、多くの水性液体の容器として用いられ、サンプル容器の内容物よりもかなり低い誘電率のプラスチック、ガラスおよび空気の誘電率に依存する電子機器を含む。水または水性液体が容量型センサの誘電空間内を多く占めているほど、次式(1)で示すように静電容量は増大する。
C=εS/d (1)
式(1)において、静電容量は、比誘電率εにキャパシタの表面積Sを乗じたものを、キャパシタプレート間の距離で除した値に等しい。
【0033】
本実施形態では、容量型センサのプレートはマイラー(mylar)またはケブラー(kevlar)などの基体262上に配置されたフレキシブル回路として作製されたものとすることができる。基体262によって、サンプル容器の外装のまわりにフレキシブル回路を配置し、ジェネレータ(不図示)を介した正弦波により励起することができるようになる。終端がコンタクトタブ264および266となっている複数の回路トレース270を有する基体262上に、フレキシブル回路を設けることができる。この例では、コンタクトタブ264はフレキシブル回路に対するグランド電極として構成することができ、コンタクトタブ266はフレキシブル回路に対する検知電極として構成することができる。回路トレース270はさらに、容量型センサを形成している導体間にギャップ268すなわち誘電空間を備えている。そして、まわりにフレキシブル回路が配置されたサンプル容器の液体内容物は、サンプル容器の寸法(壁厚など)がフレキシブル回路寸法によって制限される所要の範囲内にあれば、誘電空間内で測定可能なファクタとなる。
【0034】
サンプル容器内容物の誘電率が局所的に高くなれば静電容量の値が増加するので、導電性回路トレース270間の容量リアクタンスは減少し、従って容量装置260に与えられるACの電流測定値は増大する。測定されたこのACの増大は、RF電源内の直列のドロップ抵抗器などの回路要素によって検知され、サンプル容器内の液面変化の量を計算するのに用いることができる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、図9に示すように、屈折率・内部反射検出装置(refractive index, internal reflection detection apparatus)280を用いてサンプル量を決定する。LEDなどの一般的な光源またはレーザなどのコヒーレント光源282からの集束ビームが透明なサンプル容器284に向けられ、サンプル容器壁のガラスに対する空気界面、またはプラスチックに対する空気界面を伝わるときに屈折する。サンプル容器284の壁は、水晶、シリコン、ホウ酸塩およびその他などの材料で作製されていてもよく、光の波長はその材料による拡散または吸収の制限下で伝わることができるものであればよい。
【0036】
光のビームが気体に対するガラスまたはプラスチック界面と合ったときに、2回目の屈折がおこる。屈折光の角度は、次の(2)式に示すスネルの法則によって記述される、界面の両側の物質の屈折率に従う。
sinφ/sinφ’=n1*/n2*=一定 (2)
φは屈折率n1*の第1媒質を介する波の入射角、φ’は屈折率n2*の第2媒質を介する波の屈折角であり、2つの屈折率の比は定数に等しい。
【0037】
そしてフォト検出器アレイ286がサンプル容器内容物を通過する前後の双方で屈折ビーム288の位置変化を検知することで、サンプル容器内容物の流体レベルの位置、もしくは、サンプル容器284内の液体と上部空間の気体との界面の位置を決定することが可能となる。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、重量変化検出装置(不図示)を用いてサンプル量を決定する。互いに比較的一様性のある重量をもつサンプル容器が測定され、評価される。具体的には、サンプルを加える前のサンプル容器の重量(平均的な重量を持つものとして既知である)が決定され、定数としてメモリにストアされるか、またはバーコードラベルの記号からロードされる。この重量は、サンプルを入れたことで決まる容器重量から減じられる。重量変化の概算は、容器に加えられたサンプルの量に比例する。
【0039】
例えば、血液培養ビンの場合、サンプルを入れる前のビンの平均的な重量は、キャップおよび壁を持つ容器の重量と、液体培地の内容物と、(存在していれば)攪拌エレメントと、(存在していれば)抗菌薬吸収樹脂との合計である。製造工程を通じ、この重量はビン毎に1グラム以内に保持される。従って、サンプル収集過程でビンに加えられる血液サンプルは、1サンプル基準あたりミリリットル以内で計算することができる。これは、細菌性の細胞のリカバリの成功を保証し、かつシステム性能を保証する上で適切である。
【0040】
以上の実施形態の一実施例では、オペレータはバーコード読み取りプロセスを通じてビンの重量を測定することになる。バーコード読み取りは研究所ベースの診断機器の通常的ワークフローであるので、オペレータは付加的な努力を必要とせずに、同時にサンプル量データを取得可能である。
【0041】
本発明のさらなる実施形態では、図10に示すように、逆反射光検出装置300(retro-reflective optical detection apparatus)300を用いてサンプル量を決定する。ビーム透過型光センサ装置に関して上述したようにサンプル容器の空間を通るよう光のビームを向ける代わりに、光ビームをサンプル容器302側に送出し、液体−上部空間界面での光レベルの逆反射変化を検知することができる。具体的には、透明または半透明のサンプル容器または血液培養ビン302の一側を通る光の、リニアLEDアレイ304などの光源が示されている。リニアフォトダイオードアレイまたはCCD302などのリニア検出器がサンプル容器302の同じ側にあり、メニスカスまたは気液境界での反射率の差を検出する。ビームが向けられているサンプル容器302内の物質によって、光は異なる反射率のレベルを持つことになる。
【0042】
本発明のさらなる実施形態では、図11に示すように、マシンビジョン装置320(machine vision apparatus)300を用いてサンプル量を決定する。自動的マシンビジョンシステムは、カメラ322および画像処理プログラムを含むものとして備えられる。これは、ビンすなわちサンプル容器324が基準ポイントをもつレジスタ内に配置されて撮像されたときに、サンプル容器324内の液体と上部空間の気体との強さの差によってサンプルのレベルを視覚的に決定可能である。
【0043】
本発明のさらなる実施形態では、初期液面インディケータを用いてサンプル量を決定する。具体的には、視覚的、磁気的または他のタイプのマークが、製造過程でサンプル容器の側部の気液界面のポイントに設けられる。そして、「工場」でのマーク位置と現在の液面との差が、加えられたサンプルの量として決定される。本実施形態の利点は、充填からラベル付け、その後の梱包までの行程を通じ、サンプル容器の各々およびすべてについて精密に元のレベルが測定されたものとすることによって、精度を改善可能なことである。
【0044】
本発明のさらなる実施形態では、蛍光性の体積排除物質(fluorescent volume exclusion substance)を用いてサンプル量を決定する。サンプル容器液体内容物の作製時に、蛍光性、発光性、燐光性またはその他の種類の染料を特定の濃度で添加する。収集プロセスでサンプルが加えられると、染料はその初期濃度から希釈される。初期の公称の蛍光性と、後充填によって減少した蛍光性との差を検出および計算することで、容器内に導入されたサンプルの量が決定される。
【0045】
本発明のさらなる実施形態では、赤血球(RBC)内のヘモグロビンにより引き起こされる光散乱パターン(optical scattering pattern)を用いてサンプル量を決定する。本実施形態では、血液を加えた血液培養容器の一側に特定の角度でレーザビームを入射すると、コマ(coma)形の光散乱パターンが形成され、元のエネルギの一部が反射される。この散乱光パターンの状態および形態は、自動車のヘッドライトが霧の中で反射されるときに作る白い円(orb)のものと同様である。
【0046】
この散乱光源すなわち円の強度、幅、長さおよびその他のパラメータを光学的に測定し、サンプル容器に導入されている血液の量に直接関連づけることが可能である。本実施形態には、測定結果における患者ごとの血球容積率の違いに起因した影響に対して望ましい感度をもつという利点がある。
【0047】
同様の実施形態では、光吸収を利用した方法により、血液を加えた液体培地を貫いてサンプル容器の他側に到達させるのに使用可能な光の波長をユーザが選択できるようにする。ここで、サンプル容器を通る比較的強い光を光検出器で測定し、その情報を用いてサンプル量を計算する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、核磁気共鳴(NMR)装置を用いてサンプル量を決定する。NMR装置を用い、磁気的インパルスによって生じる水素原子のスピンダウンの強さを検出することができる。この信号の強さは、存在している水素原子の数および濃度に比例する。ここに記載するような研究所での診断の場合、水素原子は、容器の液体容積に含まれる水分子および他の有機物質の一部となる。そこで、サンプルを充填する前後で得たNMR信号について減算を行い、サンプル量を計算することができる。NMR装置に関するさらなる情報は特許文献10に議論されており、その参照によってその内容のすべてをここに包含するものとする。
【0049】
上述した列挙は、すべてを網羅することを企図したものではなく、所要の診断情報を得るために適用可能な多くの技術を例示すべく行ったものである。上述した技術、装置および応用例には多くの利点がある。例えば、サンプル量が規格の範囲にある、もしくはない場合に、即時のフィードバックが自動的に得られて研究員または機器のオペレータなどに提供される。規格の範囲にない場合には、研究所は例えば直ちに他のサンプルを要求することができ、これによって患者の検査結果を出すのが遅れたり、あるいは不適切なものとなったりすることがなく、次善の治療を行うことで疾病率あるいは死亡率を改善することができる。加えて、サンプル量が規格に合っていない(noncompliance)という要約データを自動的にコンパイルおよびレポートでき、研究員はこれを利用して発生率の高い病院の部局にサンプルを戻すことができる。これにより改善行動をとることで、患者のケアの質を向上することが可能となる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、システム100によって取得され、実際上、使用されている自動検出アルゴリズムを最適化するための他の検査データの解釈に、サンプル量の知識を適用することも可能である。例えば、血液培養の場合、公称値より高いサンプル量は過剰な血液細胞を含んでおり、それ自身の代謝活性を細菌性細胞からの代謝活性に加えることになる。現在の血液培養機器は概して、培地内で成長する細胞による酸素または二酸化炭素の生成量を直接または間接的に測定するものである。患者の血液がそれ自身の代謝割合を加えてしまうと、存在している細菌性細胞により生成される割合が不明瞭となり、検査の遅延やエラーを生じることになる。あるいは、サンプルとして加えられる血液量が低ければ、生きている細菌性細胞の数もまた少なくなる。生物量が不十分なことから、この培養は通常より非常に緩慢となるので、検出感度を増すために、アルゴリズムを適切に調節することができる。
【0051】
サンプル量の検知および計算はまた、付加された生物化学的微粒子、細胞およびその他の初期濃度を決定する助けとしても適用可能である。例えば、上述した血液培養ビンで実施される免疫検査すなわち分子プローブ検査は、最初に加えられたサンプル(この場合は患者の血液)の成分を定量化し、培養増大がないこと、最終的な培養増大、または、全身性炎症反応症候群(SIRS)などの病状に一致していることなどの可能性を予測することができる。
【0052】
上述した本発明の各実施形態は患者のサンプルに関する付加的な情報を自動的に取得して、診断結果の有用性を増進するためにその情報を適用することができる。本発明方法の一実施形態が図12に示されている。図12は、図1〜図3に示したような測定機器とともに使用されるサンプル量センサを示す詳細図である。研究員は充填したサンプル容器402をサンプル量センサ404または406のいずれかに配置することができる。図12において、サンプル量センサ404はデバイス408内に配置された内部センサとして構成され、サンプル量センサ406は外部センサとして構成されている。そして外部センサ406は、ケーブル、IRリンク、無線通信などを介して、サンプル量および/またはバーコード情報をデバイス408と通信可能である。そしてビン402のサンプル量が決定され、サンプルと関連付けられる。
【0053】
サンプル培地が培養および測定モジュールによって分析される場合、サンプル培地はサンプルビン内に入れられ、次にそのサンプルビンは培養および測定モジュールの各開口に装填される。培養および測定モジュールはさらにキーボード、バーコードリーダまたはその他の適切なインターフェースを含むことができ、これによって技術者は、サンプルに関する情報を、培養および測定モジュール、または中央コンピュータ、またはその双方にあるメモリにストアされたデータベースに入力することができる。当該情報は、例えば、患者情報、サンプル種類、サンプルビンが装填される開口の行および列などを含み得る。図13は本実施形態に関連したワークフローを示す信号処理の流れ図である。
【0054】
図13の第1ステップでは、技術者はシステムソフトウェアに対し「ビンエントリ(Vial Entry)」モードを入力する。そして技術者は、ステップ452にて、サンプル量またはビンの「充填レベル」の測定と、組み合わされたバーコードの読み取りとを指示する。そして技術者は、ステップ454にて、サンプル量センサおよびバーコードリーダ内に培養ビンを配置する。そこでシステムは、ステップ456にて、バーコードのデータを読み取り、予測されるサンプル量範囲を定めるのに用いられる容器の培地種類を決定する。次にステップ458では、培養ビンのサンプル量リーダにより測定される。そしてステップ460にて、サンプル量の値をストアし、準拠性レポートのためのデータを提供することができる。
【0055】
次いで、ステップ462および466にて、サンプル量が判定される。サンプル量が規格の値を超えていた場合には(ステップ462)、ステップ464にて別のバックグラウンドフィルタを適用する。別のバックグラウンドフィルタとは、信号処理アルゴリズムに微生物増殖の徴候の検出を遅らせ得るものである。これにより、過剰な血液充填と、これが培養ビン内の化学的環境に及ぼす影響とが安定化される機会を与え、陽性(偽陽性)の培養物が本当に微生物増殖がないものと考察されてしまう可能性を少なくすることができる。サンプル量が規格の値を超えていない場合には(ステップ462)、ステップ466にて、サンプル量が規格の値未満であるかを判定する。
【0056】
サンプル量が規格の値未満である場合には(ステップ466)、ステップ470にて、システムはユーザに対し、より血液量の高い複製サンプルによってリカバリ(すなわち微生物検出の可能性)を改善できる旨を報知し、現在のサンプルを保持しておくか、あるいは取り出すかをユーザに問い合わせる。もし現在のサンプルが検査に使用されるのであれば、システムは積極的検知促進アルゴリズム(positivity sense boost algorithm)を適用する。積極的検知促進アルゴリズムとは、微生物増殖の徴候の検出する信号処理アルゴリズムの感度を増進させ得るものである。これにより、最適な血液充填量より低く、従って初期微生物濃度が低い場合でも、より微妙な信号変化からこれを検出することができる。
【0057】
サンプル量が規格の値未満でない場合には(ステップ466)、ステップ472にて、ユーザは培養および測定モジュールの検査ラック内に培養ビンを入れることを指示する。ステップ474では次の培養ビンについて処理を再スタートし、ステップ452に復帰する。
【0058】
研究所の検査列(testing queue)にサンプルを導入する前にサンプル量を評価しておくことによって、いくつかの利点が生まれる。まず、研究所は、送られてきたサンプルが培養ビン製造者の添付文書に準拠しているかに、速やかに気づくことになる。第2に、サンプルの準拠性を特定の病院部局または介護提供者(care-giver)に通知することで、改善訓練を開始させることが可能となる。第3に、検査結果を決定するのに用いられる培養物分析方法およびアルゴリズムを変更および強化して、よりよい性能、効果およびリカバリを提供できるようになる。第4に、加えた量および検査される検体の濃度を知ることにより、患者サンプルの共存特性を検知および定量化し、より信頼性のある検査結果を得、さらなる、ないしはより多くの特定の検査を行うことすらも可能となる。
【0059】
加えて、本発明は、直接的には血液培養サンプルを取り扱うのに有用なものであるが、いかなるサンプル容器にいかなるサンプルを収集する場合にも、変形および適用が可能である。ある場合には、異なる培地種類によって減衰(attenuation)などのファクタが生じるので、培地種類を予め知っておくことが必要となり得る。これにより、正しい解釈を行うアルゴリズムが適用される。
【0060】
上述した技術のいずれにおいても、結果は一般に、目視でサンプル量の判定を行う場合よりも良好であった。例えば、超音波インパルスソナー測定装置は1.0ml以内の精度でサンプル量を測定し、形状、材質、元のサンプル量、サンプル種類、培地の成分およびその他が異なるサンプル容器に対して補正が可能である。この技術はまた、液体の高さを測定し、サンプル量を数秒間で精度高く計算する。この技術はさらに、計量などのいくつかの自動化された方法よりも高性能である。内部の寸法が公称の制限に維持されている限り、容器自体の質量のばらつきの可能性を排除できるからである。容器底面が完全に平坦である必要もなく、添付の図面に示したように湾入した形状であってもよいことに注意されたい。いくつかの適用例では、量の測定精度は、容器の均一性の極端なばらつきに比例して悪影響を受け得る。上述したところから分かるように、本発明の実施形態は、培地の充填密度のばらつき、ビンの幾何学的なばらつき、容器材料の透明度、容器内容物の固体、液体および半固体成分の混合、および、容器材料の違い(プラスチックであるかガラスであるか)に関連した問題を解決するものである。
【0061】
上述したように、正確さおよび再現性が異なっている容器内のサンプル量を決定するのに、本発明の実施形態には様々な技術を使用でき、目視によるもの、計量によるもの、光の反射角によるもの、光吸収によるもの、音響測定(sonic ranging)によるもの、散乱した光子の移動(scattered photon migration)によるもの、化学反応(chemical response)によるものなどが含まれる。これらの方法を各別に、またはいくつかを組み合わせて適用することで、上述した利点を得ることが可能である。
【0062】
図14〜図16は、図3に示した培養および測定モジュールの実施形態をより詳細に示している。培養および測定モジュール102は複数のモニタアセンブリ116を具える。これらは、培養および測定モジュール102内に配置されて、サンプルビン114から読み取りを行う。図14および図15に示した実施形態において、各モニタアセンブリ116は、2行の開口112に挿入されたサンプルビン114から測定値を取得するように構成されている。しかし所望に応じ、モニタアセンブリ116は何行分の開口にあるサンプルビン114から読み取りを行うように構成できるものである。
【0063】
モニタアセンブリ116は可動アセンブリ118を含み、本例では、これは棚110の頂部に固定して結合したレールアセンブリ120に摺動可能に連結されている。モータおよびプーリアセンブリ121は、DCモータなどのモータ122と、これに駆動されるプーリアレンジメント123とを含み、レールアセンブリ120および可動アセンブリ118に連結されている。モータ122は、例えば、中央コンピュータ104または培養および測定モジュール102のコンピュータ(不図示)により制御されてプーリアレンジメント123を駆動し、これに応じて可動部材118は、図14において矢印Bで示すサンプルビン読み取り方向に、レールアセンブリ120に沿って駆動される。
【0064】
本例の可動部材118はさらにセンサ124を含み、これは例えばレールアセンブリ120のレール127の対向側部に位置づけられた発光デバイス125と光検知デバイス126とを具えることができる。モータおよびプーリアセンブリ121がレールアセンブリ124に沿って可動アセンブリ118を駆動すると、センサ124はレール126内の開口128を検出し、当該検出を示す信号を中央コンピュータ104または培養および測定モジュール102のコンピュータに提供する。中央コンピュータ104または培養および測定モジュール102のコンピュータは、この検出信号を用いてレールアセンブリ120に沿った可動アセンブリ118の位置をモニタする。また、各開口128は棚110におけるそれぞれの列に対応しているので、コンピュータはどのサンプルビン114がモニタアセンブリ116の可動アセンブリ118内の検出器によって読み取られているかを決定することができる。これについては以下により詳細に説明する。
【0065】
可動部材118は複数の検出器ユニット130を含むことができ、その数は、モニタアセンブリ116が読み取りを行うよう構成されているサンプルビン114の行の数に対応している。すなわち、モニタアセンブリ116が2行のサンプルビン114の読み取りを行うように構成されていれば、可動アセンブリ118は2つの検出器ユニット130を含むことになる。図14および図15では、説明のために1つの検出器ユニット130のみを示している。
【0066】
他の構成例として、x−y方向にスキャンされてサンプルビン114から読み取りを行うように可動アセンブリ118が構成されていてもよい。すなわち、サンプルビン114の全行に沿って前進および後退するように可動アセンブリ118を構成し、これによりサンプルビン114の配列全体にわたって読み取りを行うようにしてもよい。
【0067】
図14および図15に示すように、各検出器ユニット130は、サンプルビン内の気体濃度または圧力をモニタするために少なくとも1つのレーザ132を含み、これは、本例では赤外線ダイオードレーザである。レーザ132はレーザアセンブリ134に連結されている。これは冷却および加熱デバイス136を含み、レーザ132を冷却または加熱することで、レーザ132により放射される光の周波数を調節可能である。レーザ132が単一周波数をもつ光を放射するとき、コントローラ(例えば図7に示したコントローラ154であり、以下に詳述する)は冷却および加熱デバイス136が制御しいて周波数を変化させることで、レーザ132は様々な周波数でスキャンを行なうことが可能となる。レーザアセンブリ134はさらにヒートシンク138を含む。これは冷却および加熱デバイス136からの熱を放散可能なものであり、これによりレーザ132の温度制御が補助される。
【0068】
さらに図15に示すように、各検出器ユニット130はまた、レーザ132により放射される光を受容するべく取り付けられた検出器140を含んでいる。本例では、検出器140はレーザ132により放射される赤外光の波長を持つ赤外光を検出可能な赤外光検出器である。
【0069】
レーザ132、レーザアセンブリ134および検出器140は、レーザおよび検出器取り付け用のブラケット142に結合し、これはさらに可動の取り付け用ブラケット144に連結されている。可動の取り付け用ブラケット144は、スライドレール146を介し、固定の取り付け用ブラケット148に連結されている。固定の取り付け用ブラケット148はレールアセンブリ120に結合し、モータおよびプーリアセンブリ121によりレールアセンブリ120に沿って移動する。
【0070】
モータ150は可動の取り付け用ブラケット144に連結され、中央コンピュータ104または培養および測定モジュール102のコンピュータにより制御されて、図15に示す矢印Cの方向に可動の取り付け用ブラケット144を移動させる。よってモータ150はサンプルビン114の頸部に沿った適切な位置にレーザ132および検出器140を位置決めし、以下に詳述するように最も正確に読み取り値を取得することが可能となる。また、上述した説明から分るように、レールアセンブリ120に沿って固定の取り付け用ブラケット148を移動させることによって、モータおよびプーリアセンブリ121は、レーザ132および検出器140をを含め、可動アセンブリ118の全体を図14の矢印Bの方向に移送する。この移動によって、サンプルビン114の全行において、サンプルビン114の頸部にレーザ132および検出器140が位置決めされる。
【0071】
加えて、図14および図15においては、説明のために単一のレーザ132および単一の検出器140のみが示されている。しかしながら、図6に概念的に示したように、レーザおよび取り付け用ブラケット142は、複数のレーザ132と、それらに対して取り付けられる複数の検出器140とを有することができる。図16においては、3つのレーザ132と、対応する3つの検出器140とが示されている。以下に詳述するように、各レーザ132は、検出すべきサンプルビン114内の気体の種類に基いた特定の波長を持つ赤外光を放射する。例えば、位置のレーザ132は二酸化炭素を検出するのに適切な波長の赤外光を放射するもの、他のレーザ132は酸素を検出するのに適切な波長の赤外光を放射するもの、第3のレーザ132は他の種類の気体を検出するのに適切な波長の赤外光を放射するもの、とすることができる。また、各検出器140は、図示のように各レーザ132からの光を検出するべく対向位置に配置されている。
【0072】
図17は、本発明の一実施形態に係り、サンプルビン114の読み取りを行うべく設けられた構成要素を示す模式的な説明図である。図17に示すように、レーザ132および対応する検出器140が読み取りを行うべきサンプルビン114に対して位置づけられると、コンピュータ152(中央コンピュータ104または培養および測定モジュール102のコンピュータに含まれるものとすることができる)はレーザコントローラ154を制御し、レーザ132がサンプルビン114の頸部に向けて赤外光を放射するよう制御する。サンプルビン114を通過したレーザ光は検出器140によって検出され、当該検出されたレーザ光は電気信号に変換されて、ACプリアンプ156に提供される。当業者であれば分るように、ACプリアンプ156は電気信号のAC増幅を行い、当該増幅信号はDCプリアンプ158およびロックイン増幅器160に提供される。DCプリアンプ158およびロックイン増幅器160はさらに電気信号を増幅して、当該さらに増幅された電気信号がコンピュータ152に提供される。
【0073】
コンピュータ152はこの増幅信号を受容および解釈して、レーザ132により放射された赤外線レーザ光のどれが検出器140によって検出されなかったかを判定し、レーザ光の一部がサンプルビン114内の気体に吸収されたことを知らせる。そしてコンピュータ152は、気体の種類および濃度を決定し、また所望であれば、特許文献11に詳細に記載された適切なアルゴリズムを用い、増幅電気信号に基いてサンプルビン114内の圧力を決定する。
【0074】
本発明を明らかにするために様々な実施形態を選んだが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変形および付加が可能であることを理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る複数の培養および測定機器を用いたシステムのブロック図である。
【図2】図1に示したシステムに用いられる本発明の一実施形態に係る測定機器の詳細図である。
【図3】図2に示した測定機器の上面図である。
【図4】図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係るサンプル量センサの概念図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係るレーザ変位センサの概念図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係る透過ビーム型光センサの概念図である。
【図7】図7Aおよび図7Bは、図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係るレーザラスタ走査型光ダイオードアレイの概念図である。
【図8】図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係る容量センサの概念図である。
【図9】図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係る屈折率・内部反射検出装置の概念図である。
【図10】図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係る逆反射光検出装置の概念図である。
【図11】図2に示した機器に使用可能な本発明の一実施形態に係るマシンビジョン装置の概念図である。
【図12】図1〜図3に示した測定機器とともに用いられるサンプル量センサを示す詳細図である。
【図13】図1〜図3に示した測定機器とともに用いられるサンプル量センサの使用例を示す信号処理の流れ図である。
【図14】図1〜図3に示した測定機器に使用される本発明の一実施形態に係る検出器アセンブリの一例を示す詳細図であり、赤外線レーザ分光および/または二波長変調の技術を用いたものを示している。
【図15】図14におけるモニタアセンブリの側面図である。
【図16】図14および図15に示したモニタアセンブリに使用される本発明の一実施形態に係る多重レーザおよび多重検出器の構成を示す概念図である。
【図17】モニタアセンブリによって使用され、サンプルビン内の1以上の気体濃度または圧力をモニタするための本発明の一実施形態に係る電子的構成要素の一例を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液のサンプル内の病原体を検出するための方法であって、
前記サンプルおよび増殖培地を含むサンプル容器内の前記サンプルの量を決定するステップと、
前記サンプルを培養するステップと、
当該培養されたサンプル内の前記病原体の増殖を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記培養ステップは、
培養および測定モジュール内に前記容器を配置するステップ
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルの量を決定するステップは、
前記培養および測定モジュールとは別体のサンプル量センサ内に前記容器を配置するステップ
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルの量を決定するステップは、
前記培養および測定モジュール内またはその上に設けられたサンプル量センサ内に前記容器を配置するステップ
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルの量を決定するステップは、
前記容器内の前記サンプルの高さを測定するステップと、
当該サンプル高さの測定値から前記サンプル量を計算するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル高さは、超音波反射率測定により測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル高さは、レーザ変位センサにより測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル高さは、透過ビーム型光センサにより測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプル高さは、レーザ走査型フォトダイオードアレイにより測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプル高さは、屈折率・内部反射装置により測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプル高さは、逆反射光検出装置により測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプル高さは、マシンビジョン装置により測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル量は、容量型近接検出装置により決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプル量は、サンプル重量の測定により決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルの量を決定するステップは、前記体液のサンプルを導入する前に、前記サンプル容器内に蛍光性、発光性または燐光性の染料を所定濃度で提供するステップと、
前記染料およびサンプルの前記蛍光性、発光性または燐光性を測定するステップと、
初期およびその後の前記蛍光性、発光性または燐光性の差から、前記サンプル量を計算するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル量は、光の散乱によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル量は、核磁気共鳴によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
体液のサンプル内の病原体を検出するための方法であって、
前記サンプルおよび増殖培地を含むサンプル容器内の前記サンプルの量を決定するステップと、
前記サンプルの量の規格に対して前記サンプル量を比較するステップと、
前記サンプル量が前記サンプル量規格から外れていた場合には、対応するメッセージをユーザに提供するステップと、
該メッセージに関連したユーザ入力に応答するステップと、
前記サンプルを培養するステップと、
当該培養されたサンプル内の前記病原体の増殖を示す1以上のパラメータをモニタするステップと、
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記サンプル量が前記サンプル量規格内にある場合には、培養および測定モジュールの検査ラックに前記サンプル容器を配置するようユーザに指示するステップ
をさらに具えたことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプル量が前記サンプル量規格を超えていた場合には、他のバックグラウンドフィルタを適用するステップ
をさらに具えたことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプル量が前記サンプル量規格未満である場合には、検出感度を増すために適したアルゴリズムを適用するステップ
をさらに具えたことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記アルゴリズムは積極的検知促進アルゴリズムであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
サンプル量規格に対する準拠性をレポートするために前記決定したサンプル量をストアするステップ
をさらに具えたことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記ユーザに対応するメッセージを提供するステップは、アルゴリズムの適用または前記サンプル量に対する分析を前記ユーザに問い合わせるステップを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記決定されたサンプル量を用いて前記サンプル内の前記病原体の初期濃度を計算するステップ
をさらに具えたことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項26】
サンプル内の病原体を検出するためのシステムであって、
体液のサンプルおよび増殖培地を含む1以上のサンプル容器を受容するのに適した培養および測定モジュールと、
該培養および測定モジュールと別体の、またはその一部であるサンプル量センサであって、前記サンプル容器内の前記サンプル量を測定するのに適した当該サンプル量センサと、
(a)前記サンプル容器が所定のサンプル量規格内にない場合のユーザへの報知、(b)所定のサンプル量規格内にない前記サンプル容器の続く取り扱いの指示の受容、および(c)前記サンプル量が前記サンプル量規格内にある場合の、前記ユーザに対する前記培養および測定モジュールの検査ラックへの前記サンプル容器の配置の指示、を含む群から選択された1以上のタスクを実行するのに適した1以上のインターフェースと、
を具えたことを特徴とするシステム。
【請求項27】
前記サンプル量センサは前記培養および測定モジュールの一部であることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記サンプル量センサは前記培養および測定モジュールとは別体であることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記サンプル容器が所定のサンプル量規格内にない場合の前記ユーザへの報知と、対応のための前記ユーザへの指示とを行うコンピュータをさらに具えたことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記サンプル量が前記サンプル量規格未満である場合には、検出感度を増すためのアルゴリズムを適用するコンピュータをさらに具えたことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記アルゴリズムは積極的検知促進アルゴリズムであることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記サンプル量が前記サンプル量規格より大きい場合には、他のバックグラウンドフィルタを適用するコンピュータをさらに具えたことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記インターフェースは、キーボードおよびバーコードリーダを含む群から選択された少なくとも1つの要素であることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項34】
前記サンプル量センサは超音波反射率測定装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記サンプル量センサはレーザ変位センサを含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記サンプル量センサは透過ビーム型光センサを含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項37】
前記サンプル量センサはレーザ走査型フォトダイオードアレイを含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項38】
前記サンプル量センサは屈折率・内部反射装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項39】
前記サンプル量センサは重量変動検出装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項40】
前記サンプル量センサは逆反射光検出装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項41】
前記サンプル量センサはマシンビジョン装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項42】
前記サンプル量センサは容量型近接検出装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記サンプル量センサは蛍光、発光または燐光検出装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項44】
前記サンプル量センサは光散乱装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
前記サンプル量センサは核磁気共鳴装置を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−519604(P2008−519604A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541344(P2007−541344)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040911
【国際公開番号】WO2006/053208
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】