説明

対象物の三次元座標を決定する方法および装置

【課題】対象物の三次元座標決定のための、改善された方法および装置を提供する。
【解決手段】対象物の三次元座標を決めるための方法において、プロジェクタ(3)によりパターン(6)が前記対象物(1)上に投影され、前記対象物(1)により反射された光がカメラ(4)により記録され、前記カメラ(4)によって記録された画像が測定される。前記対象物(1)の上および/または傍側にある基準点マーク(8)が、リファレンスカメラ(5)によって記録される。前記リファレンスカメラ(5)の視野(9)は、カメラ(4)の視野よりも広い。この方法を改善するために、前記リファレンスカメラ(5)は、前記カメラ(4)と、または前記プロジェクタ(3)および前記カメラ(4)を備える三次元センサ(2)と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の三次元座標を決定する方法、およびその方法を実施する装置に関する。
【0002】
上記の方法においては、対象物上にパターンが投影され、該対象物により反射された光が記録され、測定される。このような方法を実施する装置は、パターンを対象物上に投影するためのプロジェクタと、該対象物を記録するためのカメラと、記録された画像を測定するための測定手段とを備える。
【背景技術】
【0003】
この種の方法および装置は、例えば特許文献1および特許文献2により、すでに公知である。これらの方法においては、ストライプ・パターンが対象物に投影され得る。通常、上記ストライプ・パターンは、白色光ストライプ投影法によって、すなわち、白色光を使用して、対象物上に投影される。
【0004】
対象物の三次元座標の決定については、一般に、1つの画像では測定の要件を満たすには、および/または、対象物を完全にカバーするには不十分である。よって、パターン投影装置を当該空間内の様々な記録位置に配置し、そこで記録された画像を共通の上位座標系に転送する必要がある。上位座標系は、絶対座標系とも呼ばれる。この、しばしば「グローバル・レジストレーション(global registration)」と呼ばれるプロセスには、高い精度が要求される。
【0005】
従来周知のこの種の方法では、部分的に重なった画像が生成される。これらの画像は、重複箇所を最適化することにより、互いに位置調整され得る。しかしながら、小さい表面構造を有する、より大きな対象物の場合、この方法では精度が十分ではない可能性がある。
【0006】
さらには、基準点マークが使用される方法が知られている。基準点マークは、対象物の上および/または傍側、および/または、対象物の周囲の装備の上および/または傍側に取り付けられる。基準点マークは最初に較正される。このプロセスは、好ましくは写真測量法によって行われる。パターン投影システム、特にストライプ・パターン投影システムを使用して検知される上記基準点マークを使用して、対象物の様々な画像が較正された位置に変換され得、グローバル・レジストレーションが可能となる。
【0007】
特許文献3により、対象物の三次元座標を決定するために、プロジェクタによってストライプ・パターンを投影する方法が知られている。該対象物によって反射されたストライプ・パターンは、光学装置およびエリア・センサ、特にCCDセンサまたはCMOSセンサを備えたカメラによって記録される。上記のプロジェクタとカメラがストライプ投影システムを構成する。上記対象物の近傍には、複数の基準点装置が配置され、各基準点装置は複数の基準点マークを備える。上記基準点装置は最初に測量される。次いで、上記ストライプ投影システムにより、対象物の三次元座標が決定される。
【0008】
特許文献4により、本願の請求項8の包括的部分に記載の装置が知られている。上記文献に開示されている装置は、対象物にパターンを投影するためのプロジェクタと、対象物を記録するためのカメラと、対象物の画像を測定するための測定手段とを備える。上記装置はさらに、基準点マークを対象物上に投影するための投影手段と、該基準点マークを記録するための別のカメラを備える。
【0009】
特許文献5により、対象物の三次元測量のための光学三次元センサの幾何学的較正方法が知られている。同方法では、パターンが対象物上に投影され、対象物により反射された光がカメラにより記録・測定される。該カメラの画像域には、較正手段が配置される。該較正手段は、少なくとも4つの較正された信号マークまたは基準点マーク、および、さらに複数の信号マークまたは基準点マークを有し、これら信号マークすなわち基準点マークがカメラにより記録される。
【0010】
特許文献6により、物体の三次元デジタル化方法が知られている。同方法では、デジタル化の対象となる物体の周りをカメラが周回する。デジタル化の対象となる物体は、写真測量により測定可能な複数のマークに取り囲まれている。上記物体の周囲には、さらに、複数の光パターン・プロジェクタが固定され、順に電源が投入される。
【0011】
特許文献7は、対象物の三次元形状を決定する方法を開示する。同方法では、パターンが対象物に投影され、該対象物によって反射された光がカメラにより記録・測定される。該カメラはさらに、対象物の傍側の基準点マークを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2006 048 234号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2007 042 963号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2 273 229号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/011876号
【特許文献5】独国特許出願公開第195 36 297号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 2005 051 020号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/0092041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記されたような方法および装置であって、改善された方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような方法において、この目的は請求項1に記載の事項により達成される。対象物の上および/または傍側の基準点マークが、リファレンスカメラによって記録される。該リファレンスカメラの視野は、カメラの視野よりも広い。上記リファレンスカメラは、上記カメラと、または、上記プロジェクタおよび上記カメラを備える三次元センサと接続されている。上記基準点マークは、上記対象物上にすでに存在してもよい。特に、上記対象物の特徴的な領域が基準点マークとして使用できる。その代わりに、または、それに加えて、基準点マークが上記対象物上に取り付けられてもよく、および/または上記対象物の傍側に配置されてもよい。特に、ここで明確に参照する独国特許出願公開第10 2009 032 262号明細書に記載の基準点マークを使用することができる。すなわち、固有的にコード化された基準点マークおよび/または、固有的にコード化されていない基準点マークであって、互いに空間的に配置され、その空間的配置がコード化を含む基準点マークを使用できる。基準点マークの数個は、1つ以上の基準点装置と組み合わせられてもよい。
【0015】
上記カメラで数個の画像を撮影することが可能である。数個の画像、または、すべての画像が一部重なっていてもよい。個別の画像を上位座標系にまとめることは、写真測量によって実施され得る。この目的で、基準点マークはリファレンスカメラによって測量される。
【0016】
上記のような装置において、この発明の目的は請求項8に記載の事項により達成される。該請求項の装置は、対象物の上および/または傍側にある基準点マークを記録するためのリファレンスカメラを備える。該リファレンスカメラの視野は、上記カメラの視野よりも広い。上記リファレンスカメラは、上記カメラと、または上記プロジェクタおよび上記カメラを備える三次元センサと接続されている。
【0017】
好ましくは、ストライプ・パターンが上記対象物上に投影される。該パターン、特にストライプ・パターンは、画像作成素子、特に、トランスペアレンシーまたはデジタル・パターン生成装置、特に、DLPディスプレイ、LCDディスプレイ、および/またはLCOSディスプレイのような液晶ディスプレイによって上記対象物上に投影され得る。さらに、1以上のレーザーラインからなるパターンを投影することも可能である。上記のレーザーラインは、互いに平行であってもよいし、および/または互いに角度をなしていてもよい。
【0018】
上記カメラは、光学装置および二次元センサ、特に、CCDセンサおよび/またはCMOSセンサを備えていてもよい。上記測定手段は、コンピュータ、特にパーソナル・コンピュータ(PC)を備えていてもよい。
【0019】
記録された画像のデータは、カメラのメモリに一時的に保存され得る。データは一時保存の前または後に送信されてよく、一時保存されずに送信されてもよい。
【0020】
上記プロジェクタおよび上記カメラは、一体的に構成され、いわゆる三次元センサを構成し得る。この三次元センサは、上記プロジェクタおよびカメラを含む。
【0021】
本願の請求項8の包括的部分によると、本発明はまた、対象物の三次元座標を決定するための、既存の装置への補助にも簡単に適用でき、これにより、カメラの視野より大きい対象物の三次元座標を、既存の装置で決定することが可能となる。さらには、数台のカメラを装備することも可能である。たとえば、いわゆるステレオカメラ、すなわち、2台のカメラを組み合わせたものを使用することが可能である。さらには、3台以上のカメラを装備することも可能である。複数台のカメラを使用することで、カメラによって記録された画像ポイントの、投影されたラインへの割り当てが向上する。
【0022】
本願の有利な展開は、従属請求項に記載されている。
【0023】
有利なことには、上記基準点マークは、上記対象物上に投影される。
【0024】
さらなる有利な展開の特徴として、上記カメラの画像および上記リファレンスカメラの画像が時間的なずれをもって記録される。その代わりに、または、それに加えて、上記カメラの画像および上記リファレンスカメラの画像は同時に記録され得る。
【0025】
有利なことには、上記カメラの数個の画像はまとめられる。画像をまとめるために、整合方法が追加して使用され得る。
【0026】
さらなる有利な展開は、最初の測定運転において、上記基準点マークの位置が検知され保存されることである。最初の測定運転は、対象物を測量しないで(対象物の三次元座標を決定しないで)行われ得る。しかしながら、この最初の測定運転において、対象物を測量することも可能である。検知された上記基準点マークの位置は上記の上位座標系に変換され得る。検知された位置および/または変換された位置は保存され得る。
【0027】
対象物の三次元座標が、基準点マークの保存された位置に基づいて決定されれば有利な場合がある。これは、特に、最初の測定運転で基準点マークが検知され、変換・保存され得るときに有利である。しかしながら、すでに保存された基準点マークの位置に基づき、対象物の三次元座標を決定することも可能である。基準点マークのすでに保存された位置を使用することによって、測定時間が短縮できる。しかしながら、対象物の三次元座標の決定の間、または決定時ごとに、基準点マークの位置を新たに決定することも有利であり得る。
【0028】
本発明の装置の有利な展開は、上記基準点マークを対象物上に投影するプロジェクタによって特徴づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、プロジェクタ、カメラおよびリファレンスカメラを備えた、対象物の三次元座標を決定するための装置を示す。
【図2】図2は、図1の装置の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の例示的実施形態を、添付の図面を参照し、以下詳細に説明する。
【0031】
図1は、対象物1、具体的には自動車のフェンダーの三次元座標を決定するための装置を示す。該装置は、三次元センサ2を備え、該三次元センサ2はプロジェクタ3とカメラ4を備える。上記装置はさらに、上記三次元センサ2に接続されたリファレンスカメラ5を備える。この例示的実施形態においては、リファレンスカメラ5はプロジェクタ3とカメラ4の間に位置する。
【0032】
プロジェクタ3により、パターン、具体的には、ストライプ・パターン6が対象物1上に投影される。ストライプ・パターン6領域内の対象物1によって反射された光は、カメラ4により記録される。
【0033】
カメラ4の画像は測定手段(図示せず)に送られ、測定される。上記の画像から、対象物1の三次元座標をカメラ4の視野7において決定できる。ストライプ・パターン6の外枠7´はカメラ4の視野7よりも広い。外枠7´は、視野7のすべての辺を囲んでいる。カメラ4は、好ましくはカメラ4の視野7の全体にわたり、対象物1をとらえるエリア・センサを備える。
【0034】
対象物1および対象物1の周囲には、基準点マーク8が、別のプロジェクタ(図示せず)により投影される。リファレンスカメラ5の視野9内に位置する基準点マークは、リファレンスカメラ5により記録される。
【0035】
リファレンスカメラ5の視野9は、カメラ4の視野7よりも広い。さらに、リファレンスカメラ5の視野9は、カメラ4の視野7のすべての辺を囲んでいる。視野9内の基準点マーク8は、リファレンスカメラ5によりとらえられる。リファレンスカメラ5の位置および方向は、基準点マーク8により決定できる。
【0036】
上記対象物1の、カメラ4の視野7内に位置する部分がカメラ4により記録されると、プロジェクタ3、カメラ4およびリファレンスカメラ5を備える上記装置は別の位置に配置される。この位置決めは、カメラ4の視野7が対象物1の別の部分、好ましくは元の視野7の隣の部分に位置するように行われる。カメラ4が新しい位置からカバーする視野は、元のカメラ4の視野7と一部重なってもよい。リファレンスカメラ5の視野9がカメラ4の視野7よりも広いことにより、リファレンスカメラ5は元の位置および新しい位置において十分な数の基準点マーク8を確実に検知できる。基準点マーク8の数と位置は、リファレンスカメラ5が上記の両方の位置において検知できる基準点マーク8が十分な数存在するように選択される。このようにして、カメラ4の画像のグローバル・レジストレーション、したがって、対象物1の三次元座標のグローバル・レジストレーションが確実になされる。
【0037】
対象物1上にパターン6を投影するプロジェクタ3がカメラ4およびリファレンスカメラ5に接続されているので、プロジェクタ3、カメラ4およびリファレンスカメラ5を備える上記装置の移動にともない、ストライプ・パターン6が移動する。
【0038】
図2は、対象物1に複数のレーザーライン10を投影するプロジェクタ3´を備える装置を示す。レーザーライン10のうちの何本かは、カメラ4の視野7の長辺に平行に延びる。別のレーザーライン10は、カメラ4の視野7の短辺に平行に延びる。さらに別のレーザーライン10は、カメラ4の視野7の縁に対し傾斜して延びる。
【0039】
上記カメラ4および/または上記リファレンスカメラ5の視野の大きさは、関係する光学部品の焦点距離によって決定できる。その代わりに、あるいは、それに加えて、上記視野はセンサの大きさによって決定することもできる。リファレンスカメラ5の画像は測定手段、特にパーソナル・コンピュータ(PC)に送信することができる。基準点マーク8の三次元座標は、そこから数学的に割り出すことができる。このようにして、写真測量点が得られる。次いで、これらの写真測量点、写真測量によって算出されたリファレンスカメラ5およびカメラ4の位置が、データ、すなわち三次元座標を正確に整合し位置決めするために使用され得る。
【0040】
対象物1の三次元座標を決定するために、最初の測定運転によって、基準点マーク8の位置が検知され保存され得る。次の測定運転では、これらの位置が対象物1の三次元座標を決定するために使用され得る。さらなる別の測定運転において、これらの位置は対象物1の三次元座標または他の対象物の三次元座標を決定するために使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(1)の三次元座標を決定するための方法であって、
プロジェクタ(3)によりパターン(6)が前記対象物1上に投影され、前記対象物(1)により反射された光がカメラ(4)により記録され、前記カメラ(4)によって記録された画像が測定され、
前記対象物(1)の上および/または傍側にある基準点マーク(8)が、前記カメラ(4)の視野よりも広い視野を有するリファレンスカメラ(5)によって記録され、
前記リファレンスカメラ(5)は、前記カメラ4と、または前記プロジェクタ(3)および前記カメラ(4)を備える三次元センサ(2)と接続されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記基準点マーク(8)が対象物(1)上に投影されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記カメラ(4)の画像および前記リファレンスカメラ(5)の画像が時間的なずれをもって記録されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記カメラ(4)の画像および前記リファレンスカメラ(5)の画像が同時に記録されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、前記カメラ(4)の数個の画像がまとめられることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、最初の測定運転において、前記基準点マーク(8)の位置が検知され保存されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法であって、前記対象物(1)の三次元座標が、前記基準点マーク(8)の保存された位置に基づいて決定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
対象物(1)の三次元座標を決定するための装置、特に請求項1〜7のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、
前記対象物(1)上にパターン(6)を投影するためのプロジェクタ(3)と、
前記対象物(1)を記録するためのカメラ(4)と、
前記対象物(1)の画像を測定するための測定手段と、
前記対象物(1)の上および/または傍側にある基準点マーク(8)を記録するためのリファレンスカメラ(5)であって、前記カメラ(4)の視野よりも広い視野を有するリファレンスカメラ(5)とを備え、
前記リファレンスカメラ(5)は、前記カメラ(4)と、または前記プロジェクタ(3)および前記カメラ(4)を備える三次元センサ(2)と接続されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、前記対象物(1)上に前記基準点マーク(8)を投影するためのプロジェクタを備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79960(P2013−79960A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219763(P2012−219763)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(501461966)シュタインビフラー オプトテヒニク ゲーエムベーハー (17)
【Fターム(参考)】