対象物検出装置
【課題】反射強度のピークが3つ以上存在する場合において、対象物が車両であるか否かを精度良く判定することができる対象物検出装置を提供する。
【解決手段】制御回路11は、窪みの強度の所定倍(例えば0.5倍)となる基準強度を算出し、左右端ピークから物体端部(左右端ピークの左脇および右脇)に向かって、この基準強度に相当する走査方向(左側基準方向および右側基準方向)を求め、これらの基準方向間の幅(広がり幅Ws)が車両と判定できる所定幅(例えばWs_max=5.0[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定する。
【解決手段】制御回路11は、窪みの強度の所定倍(例えば0.5倍)となる基準強度を算出し、左右端ピークから物体端部(左右端ピークの左脇および右脇)に向かって、この基準強度に相当する走査方向(左側基準方向および右側基準方向)を求め、これらの基準方向間の幅(広がり幅Ws)が車両と判定できる所定幅(例えばWs_max=5.0[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光等の電磁波を探査波として走査し、対象物が車両であるか否かを判定する対象物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方をレーザ光やミリ波等の電磁波で照射して、物体が車両であるかどうか、および物体までの距離を測定する装置がある。この装置を用いて、先行車との距離を測定し、車間距離を一定に保つ定車間距離追従走行(ACC:Adaptive Cruise Control)が行われている。また、この車間距離が安全な距離以下になると運転者に警告音を発する、シートベルトを締める、制動を行う、といった安全制御が行われている。
【0003】
上記のような制御を行う先行車とは、移動しているか、または移動状態から停止した場合に限られているが、検出した時点で既に停止している車両を制御対象とすることも試みられている。検出した時点で既に停止している物体を車両であるとして制動等の制御を行う場合、誤作動を防ぐため、路側の構造物(ガードレールの反射板等)や路面に埋め込まれた反射物(白線、歩道等)と車両とを区別することが必要となる。
【0004】
ここで、物体の検出手法について説明する。レーザレーダ装置は、レーザ光を走査して、所定の走査方向毎に、レーザ光が対象物に照射されたことによる反射波の反射強度を検出する。そして、反射波の反射強度の水平方向分布を作成し、反射強度が極大となる点(ピーク)を抽出する。
【0005】
例えば、特許文献1には、反射強度の水平方向分布に基づいて、対象物が車両であるか否かを判定する装置が提案されている。特許文献1の装置では、反射強度の水平方向分布のうち、ピークが2つ存在した場合、その対象物が車両であると判定している。
【0006】
また、特許文献2では、反射強度のパターンに基づいて、対象物が四輪車であるか二輪車であるかを判定することが示されている。特許文献2の装置では、ピークの数により四輪車であるか二輪車であるかの判定を行っている。
【0007】
また、複数のピークに基づいて、対象物の中心位置を検出するものが特許文献3に示されている。特許文献3の装置は、ピークの形状に基づいて物体の中心位置を検出するものである。例えば、反射強度のピークが1つである場合、そのピークの角度を物体の中心位置として検出する。ピークが複数であり、これら複数のピークで形成される山の数が1つである場合、複数のピークのうち最も高い強度のピークとその両側のピークとをあわせた3つのピーク高さが均衡する角度を物体の中心位置をして検出する。さらに、ピークが複数であり、これら複数のピークで形成される山の数が複数である場合、両端のピークの角度の中心を物体の中心位置として検出する。
【特許文献1】特開2006−38698号公報
【特許文献2】特開2006−38697号公報
【特許文献3】特開2000−180532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、反射強度のピークが2つ以上存在する場合において、対象物が車両であるか否かを精度良く判定することができる対象物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、探査波を照射する照射手段と、前記探査波を水平方向に走査する走査手段と、前記探査波が対象物に照射されたことによる反射波の反射強度を検出する反射波検出手段と、前記走査手段の走査方向を検出する走査方向検出手段と、前記探査波を照射してから、その反射波を検出するまでの所要時間を計測する所要時間計測手段と、前記反射強度、前記走査方向、および前記所要時間に基づいて、前記対象物までの距離、前記対象物の方向、および前記対象物の幅を検出する対象物検出手段と、を備えた対象物検出装置において、前記対象物の反射強度の水平方向分布において、左端ピークおよび右端ピークを検出するピーク検出手段と、前記左端ピークおよび前記右端ピークの間の窪みのうち、最低強度に基づいて基準強度を算出する基準強度算出手段と、前記対象物の反射強度の水平方向分布において、前記左端ピークの左脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である左側基準方向を求めるとともに、前記右端ピークの右脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である右側基準方向を求める基準方向算出手段と、前記左側基準方向と右側基準方向の間の幅が所定幅より小さい場合に、当該対象物が車両であると判定する車両判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明によれば、窪みの強度の所定倍(例えば0.5倍)となる基準強度を算出し、左右端ピークから物体端部(左右端ピークの左脇および右脇)に向かって、この基準強度に相当する走査方向(左側基準方向および右側基準方向)を求め、これらの基準方向間の幅(広がり幅)が車両と判定できる所定幅(例えば5.0[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0011】
車両である場合、車両幅の外側(リフレクタの外側)は、反射物がないため、反射強度の落ち込みが大きく、広がり幅は小さくなる。一方でガードレールや路面の白線等の場合、反射物の外側にもガードレールや白線が長く続くため、窪みの強度と同程度の反射強度が得られ、反射強度の落ち込みが小さく、広がり幅は大きくなる。したがって、広がり幅が車両幅よりも極端に大きい場合(例えば5m以上である場合)、車両ではないと判定するものである。よって、ガードレール等にリフレクタが取り付けられていたり、路面の白線から反射が得られる場合であっても、停止車両であるか否かを精度良く判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象物が車両であるか否かを精度良く判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態であるレーザレーダ装置のブロック図である。
本実施形態のレーザレーダ装置は、LD(Laser Diode)駆動回路10、制御回路11、LD12、走査装置13、垂直走査位置検出装置14、水平走査位置検出装置15、PD(Photo Diode)16、受光回路17、メモリ18、車速センサ19、およびヨーレートセンサ20を備えている。
【0014】
LD駆動回路10は、制御回路11で生成された駆動信号に基づいて、LD12の発光を制御する。走査装置13は、制御回路11の制御に基づいて、LD12により発生されたレーザ光を所定の走査範囲で走査させる。走査装置13より照射されたレーザ光は、投光レンズを介して自車の走行方向(前方)に照射される。レーザ光が検出対象としての前方の物体(例えば、車両や路面)に反射して戻ってきた反射光は、受光レンズにより集光され、PD16によって受光される。
【0015】
図2は、走査装置13の投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を示す図である。投光レンズ33は、LD12の前面に設けられ、受光レンズ34は、PD16の前面に設けられている。
【0016】
投光レンズ33と受光レンズ34は、支持部材36に一体的に支持される。支持部材36は、水平方向に移動自在に板バネ32で支持されている。支持部材36にはコイル31が取り付けられている。走査装置13は、このコイル31に発生する磁界と永久磁石35との引力(または反発力)と板バネ32に発生する反力によりLD12の投光レンズ33およびPD16の受光レンズ34を移動させ、レーザ光を走査させる。
【0017】
図3は、投光レンズ33と受光レンズ34の光路を示す図である。LD12から照射されたレーザ光は、投光レンズ33で集光される。投光レンズ33の位置が走査の中立位置にある場合は、図3の実線で示されるような投光レンズ33からの光路で、レーザ光は正面に照射される。照射されたレーザ光は、対象物で反射され、図3の実線で示されるような光路で受光レンズ34に入射し、PD16によって受光される。
【0018】
また、走査装置13によって、図中、上方向に投光レンズ33が移動した場合、レーザ光は、図3の点線で示されるような光路で、図中、上方向に照射される。そして、照射されたレーザ光は、図中、上方向の物体で反射され、図3の点線で示されるような光路で、受光レンズ34に入射し、PD16によって受光される。
【0019】
このように、走査装置13は、投光レンズ33と受光レンズ34を一体的に所定の位置に移動させることで、レーザ光を走査する。なお、上記説明では水平方向の走査について説明したが、垂直方向についても同様の態様でレーザ光を走査することができる。
【0020】
図1において、垂直走査位置検出装置14と水平走査位置検出装置15は、走査装置13におけるレーザ光の水平方向と垂直方向の走査方向をそれぞれ検出して、制御回路11に出力する。なお、垂直方向に関しては、本発明の構成要素として必須ではなく、水平方向にのみ走査し、水平方向の走査方向だけ検出するようにしてもよい。
【0021】
受光回路17には、PD16によって受光された反射光の反射強度に対応する信号が入力される。受光回路17は、反射強度を数値化して、制御回路11に出力する。制御回路11は、入力された数値を、垂直走査位置検出装置14と水平走査位置検出装置15から入力された走査方向に対応してメモリ18に記億する。このような反射強度の測定は、走査装置が、所定の走査方向に走査する度に行われる。このとき、レーザ光は、所定角度だけ走査される。レーザレーダ装置がレーザ光を所定角度に照射し、対象物を検出する領域を「所定領域」と呼ぶ。
【0022】
制御回路11には、車速センサ19、ヨーレートセンサ20が接続されている。車速センサ19は、自車の車速を検出する。ヨーレートセンサ20は、自車のヨーレート(水平方向への旋回時の回頭速度)を検出する。
【0023】
制御回路11は、レーザ光を照射してからその反射光を受光するまでの所用時間に基づいて対象物と自車との距離を測定する。距離の測定は、所定領域毎に行われる。制御回路11は、距離および走査方向が近い対象物の集合をまとめ、同一の物体とする。制御回路11は、反射強度、走査方向、および所要時間(距離)に基づいて、対象物の集合が車両であるか否かの判定を行う。
【0024】
以下、車両であるか否かの判定について、具体的な手順を説明する。
図4は、全体手順を示すフローチャートである。
制御回路11は、上述のように反射強度を所定領域毎に測定する(s1)。全走査範囲を測定すると(s2)、距離および走査方向が近い対象物の集合体をまとめる(s3)。次に、各物体の距離、方向、幅を算出する(s4)。
【0025】
図5は、物体および幅の検出の手法を示した図である。同図上欄のグラフは、全走査範囲における対象物との距離を示した水平方向分布である。制御回路11は、同図上欄のグラフに示すように、距離および走査方向が近い対象物の集合をまとめ、同一の物体とする(同図の物体M1、M2)。また、制御回路11は、同図下欄のグラフに示すように、それぞれの物体の反射強度の水平方向分布を作成し、反射強度が極大となる点(ピーク)を抽出する。制御回路11は、抽出した各ピークにおける距離、方向を読み出し、これらの平均値を物体の距離、方向とする。また、両端のピーク(同図ではピーク1とピーク2)に対して反射強度が所定倍(例えば0.5倍)となる領域を抽出し、これらの領域を物体の端として、物体の幅を検出する。
【0026】
図4において、制御回路11は、物体の距離、方向、幅を検出した後、検出した対象物が停止車両であるか否かの判定を行う(s5)。図6は、停止車両判定処理の手順を示すフローチャートである。この処理は検出した物体毎に行われる。
【0027】
制御回路11は、まず物体を構成する各領域の反射強度を調査する(s11)。すなわち、図5下欄のグラフで示した各物体の反射強度の水平方向分布を作成する。また、各領域における距離の時間軸変化を参照し、相対速度の算出を行う。時間軸変化は、同じ領域で今回の走査で測定した距離と前回走査時に測定した距離との差で求められる。制御回路11は、相対速度に基づいて停止物であるか否かを判断する(s12)。その物体が自車の車速と同じ相対速度で近づいてくる場合、停止物であると判断する。それ以外の場合(移動物体の場合)、停止車両判定フラグをFALSEとする。
【0028】
停止物であれば、反射強度の水平方向分布において、ピークがあるか否かを判断する(s13)。ピークがあればその領域と反射強度をピークリストに記録する(s14)。ピークリストは図7に示すように、各ピークの領域番号(例えば水平方向左端から順にA1,A2,A3・・・An)と反射強度を列記したものである。
【0029】
その後、全領域の調査が終了するまで処理を繰り返し、全領域の調査が終了した場合(s15)、ピークリストの格納個数(ピークの数)が2以上であるか否かを判断する(s16)。ピークがない、あるいはピークの数が1である場合、停止車両判定フラグをFALSEにする(s28)。
【0030】
ピークの数が2以上である場合、さらにピークの数が3以上であるか否かを判断する(s17)。ピークの数が2つであると判断した場合、左端ピーク、右端ピークを決定する(s18)。すなわち、左側に存在するピークを左端ピーク、右側に存在するピークを右端ピークとする。そして、左端ピークと右端ピークの間の窪みの強度に基づいて、検出した物体が、停車車両であるか否かを判定する(S19)。
【0031】
一方、ピークの数が3つ以上であると判断した場合、反射強度の高い順に、上位3個のピークを抽出する(s20)。そして、上位3個のうち左側のピークを左端ピーク、右側のピークを右端ピークとする(s21)。
【0032】
さらに、制御回路11は、左端ピーク、右端ピークを決定した後、これらピーク間のうち、最低強度となる窪みを調査する(s22)。制御回路11は、これらの左端ピーク、右端ピーク、および窪みの強度に基づいて、検出した物体が停止車両であるか否かを判定する。
【0033】
図9および図10を参照して、ピークの数が2つの場合と3つの場合について説明する。図9はピークの数が2つの場合、図10はピークの数が3つの場合についての反射強度を示す図である。図9の下欄に示すように、前方車両が遠方に存在する場合、主にリフレクタから高い反射強度が得られる。リフレクタは車両の左右端に2つ設けられているため、同図上欄のグラフに示すように、反射強度のピークの数が2つとなる。一方、図10の下欄に示すように、前方車両が近距離に存在する場合、リフレクタのみならず、車両中央部に設けられたナンバープレートからも高い反射強度が得られる。結果、同図上欄のグラフに示すように、反射強度のピークの数が3つとなる。
【0034】
本実施形態では、図10に示したように、ピークの数が3つ存在する場合であっても、左端ピーク、右端ピークを決定して物体幅等を算出し、車両判定を行うため、リフレクタが車両中央に取り付けられていたり、ナンバープレートから高い反射強度が得られたりしても、物体が車両であるか否かを判定することができる。また、ピークの数が4つ以上存在する場合であっても、反射強度の高い上位3つのピークを抽出して左端ピーク、右端ピークを決定し、物体幅等を算出して車両判定を行うため、さらに多数のリフレクタが取り付けられている車両であっても、物体が車両であるか否かを判定することができる。
【0035】
制御回路11は、これらの調査結果に基づいて、以下のような車両判定処理を行う。すなわち、図6のs23〜s26の処理において、以下の全ての条件を満たした場合にのみ停止車両であると判定し、停止車両判定フラグをTRUEとする(s27)。一方、いずれか1つでも条件を満たしていなければ、停止車両判定フラグをFALSEとする(s28)。
(s23)Wmin<物体幅W<Wmax
(s24)広がり幅Ws<Ws_max
(s25)Wp_min<左右端ピーク間幅Wp<Wp_max
(s26)窪み反射強度A_HOL<A_P1×αph
ここで図8を参照して各種値について説明する。図8は、物体幅など、各種値の定義を示す図である。
物体幅Wは、左端ピークおよび右端ピークの反射強度の所定倍(A_P1×αpおよびA_P2×αp、ただしαp=0.5)となる領域間の幅から求められる。本実施形態は、この物体幅が車両と判定できる範囲(例えばWmin=1.0[m]、Wmax=3.5[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0036】
広がり幅Wsは、窪み反射強度A_HOLの所定倍(A_HOL×αh、ただしαh=0.5)となる基準強度を算出し、左右端ピークから物体端部(左右端ピークの左脇および右脇)に向かって、この基準強度に相当する領域(左側基準方向および右側基準方向)を求め、これらの基準方向の間の幅から求められる。この広がり幅Wsが車両と判定できる所定幅Ws_max(例えば5.0[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0037】
図9および図11を参照して広がり幅について説明する。図11は、前方にガードレールが存在する場合の反射強度を示す図である。同図下欄に示すように、ガードレールには、リフレクタが設けられており、図9に示す前方車両と同様の距離で2つのピークが検出される。
【0038】
図9に示すように、検出した物体が車両である場合、車両幅の外側(リフレクタの外側)は、反射物がないため、反射強度の落ち込みが大きく、広がり幅Wsは小さくなる。一方で図11に示すように、検出した物体がガードレールである場合、リフレクタの外側にもガードレールが続くため、窪み反射強度と同程度の反射強度が幅広く検出され、反射強度の落ち込みが小さく、広がり幅Wsは大きくなる。したがって、広がり幅Wsが物体幅Wよりも極端に大きい場合(例えば5m以上である場合)、車両ではないとして判定するものである。
【0039】
次に、左右端ピーク間幅Wpは、上述したように、左端ピークおよび右端ピークの幅から求められる。この左右端ピーク間幅Wpが車両のリフレクタの幅と判定できる範囲(例えばW_pmin=0.5[m]、Wp_max=3.5[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0040】
次に、窪み反射強度A_HOLは、左端ピーク、右端ピークの間のうち、最低強度となる領域(窪み)の反射強度である。この窪み反射強度A_HOLが、最大強度となるピークに対してある程度落ち込んでいるか(例えばA_HOL<A_P1×αph、ただしαph=0.5)を調べ、落ち込みが大きければ車両らしいとして判定する。
【0041】
図10および図12を参照して、窪み反射強度について説明する。図12は、前方に車両と同程度の幅を有する看板が設置されている場合の反射強度を示す図である。同図下欄に示すように、看板には高い反射強度を示す図柄が3つ並んでおり、図10に示す前方車両のリフレクタおよびナンバープレートと同様の距離で3つのピークが存在する。
【0042】
図10に示すように、検出した物体が車両である場合、リフレクタやナンバープレートの間には高い反射強度を示すものがなく、窪みの反射強度は、最大強度となるピークから大きく落ち込む(A_HOL<A_P1×αph)となる。しかし、図12に示すように、検出した物体が看板である場合、反射強度の高い図柄の間でも、ある程度の反射強度が得られるため、窪みの反射強度の落ち込みが小さい(A_HOL≧A_P1×αph)。よって、車両であるか否かを精度良く判定することができる。
【0043】
なお、図13に示すように、白線や歩道なども、車両より大きい幅を有していたり、窪みの反射強度と同程度の反射強度が幅広く得られたり、リフレクタの間にある程度の反射強度が存在したりするため、図11や図12に示した様な反射強度を示し、停止車両と区別することができる。
【0044】
以上のような停止車両判定処理を行い、判定結果を車両制御部等の他の装置へ出力する(図4のs6)。車両制御部では、この判定結果を用いて運転者に警告音を発する、シートベルトを締める、制動を行う、といった安全制御を行う。
【0045】
なお、本実施形態はレーザレーダ装置について説明したが、本発明はミリ波レーダ等、種々の電磁波を用いる装置に適用することが可能である。ミリ波レーダは、電磁波(ミリ波)を機械的に走査して所定角度毎の反射強度を検出する。また、複数の受信機で検出した反射波の位相差に基づいて所定角度毎の反射強度を検出するミリ波レーダもある。いずれにしても、ミリ波を送信してから反射波を受信するまでの所要時間に基づいて物体との距離を算出し、反射強度、走査角度(走査方向)に基づいて物体の方向を算出するものである。また、反射波のドップラー効果を利用して相対速度を検出するものである。よって、所要時間、反射強度、走査方向に基づいて物体の幅を検出し、反射強度の水平方向分布(ピークや窪み)に基づいて物体が車両であるか否かを判定する本発明の停止車両判定処理を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態であるレーザレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スキャナの投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を示す図である。
【図3】スキャナによって駆動された投光レンズと受光レンズの光路を示す図である。
【図4】全体手順を示すフローチャートである。
【図5】物体の検出と幅の検出の手法を示した図である。
【図6】車両判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ピークリストを示す図である。
【図8】種々の値の定義を示す図である。
【図9】ピークの数が2つの場合についての反射強度を示す図である。
【図10】ピークの数が3つの場合についての反射強度を示す図である。
【図11】前方にガードレールが存在する場合の反射強度を示す図である。
【図12】前方に車両と同程度の幅を有する看板が設置されている場合の反射強度を示す図である。
【図13】白線や歩道などが存在する場合を示す図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光等の電磁波を探査波として走査し、対象物が車両であるか否かを判定する対象物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方をレーザ光やミリ波等の電磁波で照射して、物体が車両であるかどうか、および物体までの距離を測定する装置がある。この装置を用いて、先行車との距離を測定し、車間距離を一定に保つ定車間距離追従走行(ACC:Adaptive Cruise Control)が行われている。また、この車間距離が安全な距離以下になると運転者に警告音を発する、シートベルトを締める、制動を行う、といった安全制御が行われている。
【0003】
上記のような制御を行う先行車とは、移動しているか、または移動状態から停止した場合に限られているが、検出した時点で既に停止している車両を制御対象とすることも試みられている。検出した時点で既に停止している物体を車両であるとして制動等の制御を行う場合、誤作動を防ぐため、路側の構造物(ガードレールの反射板等)や路面に埋め込まれた反射物(白線、歩道等)と車両とを区別することが必要となる。
【0004】
ここで、物体の検出手法について説明する。レーザレーダ装置は、レーザ光を走査して、所定の走査方向毎に、レーザ光が対象物に照射されたことによる反射波の反射強度を検出する。そして、反射波の反射強度の水平方向分布を作成し、反射強度が極大となる点(ピーク)を抽出する。
【0005】
例えば、特許文献1には、反射強度の水平方向分布に基づいて、対象物が車両であるか否かを判定する装置が提案されている。特許文献1の装置では、反射強度の水平方向分布のうち、ピークが2つ存在した場合、その対象物が車両であると判定している。
【0006】
また、特許文献2では、反射強度のパターンに基づいて、対象物が四輪車であるか二輪車であるかを判定することが示されている。特許文献2の装置では、ピークの数により四輪車であるか二輪車であるかの判定を行っている。
【0007】
また、複数のピークに基づいて、対象物の中心位置を検出するものが特許文献3に示されている。特許文献3の装置は、ピークの形状に基づいて物体の中心位置を検出するものである。例えば、反射強度のピークが1つである場合、そのピークの角度を物体の中心位置として検出する。ピークが複数であり、これら複数のピークで形成される山の数が1つである場合、複数のピークのうち最も高い強度のピークとその両側のピークとをあわせた3つのピーク高さが均衡する角度を物体の中心位置をして検出する。さらに、ピークが複数であり、これら複数のピークで形成される山の数が複数である場合、両端のピークの角度の中心を物体の中心位置として検出する。
【特許文献1】特開2006−38698号公報
【特許文献2】特開2006−38697号公報
【特許文献3】特開2000−180532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、反射強度のピークが2つ以上存在する場合において、対象物が車両であるか否かを精度良く判定することができる対象物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、探査波を照射する照射手段と、前記探査波を水平方向に走査する走査手段と、前記探査波が対象物に照射されたことによる反射波の反射強度を検出する反射波検出手段と、前記走査手段の走査方向を検出する走査方向検出手段と、前記探査波を照射してから、その反射波を検出するまでの所要時間を計測する所要時間計測手段と、前記反射強度、前記走査方向、および前記所要時間に基づいて、前記対象物までの距離、前記対象物の方向、および前記対象物の幅を検出する対象物検出手段と、を備えた対象物検出装置において、前記対象物の反射強度の水平方向分布において、左端ピークおよび右端ピークを検出するピーク検出手段と、前記左端ピークおよび前記右端ピークの間の窪みのうち、最低強度に基づいて基準強度を算出する基準強度算出手段と、前記対象物の反射強度の水平方向分布において、前記左端ピークの左脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である左側基準方向を求めるとともに、前記右端ピークの右脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である右側基準方向を求める基準方向算出手段と、前記左側基準方向と右側基準方向の間の幅が所定幅より小さい場合に、当該対象物が車両であると判定する車両判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明によれば、窪みの強度の所定倍(例えば0.5倍)となる基準強度を算出し、左右端ピークから物体端部(左右端ピークの左脇および右脇)に向かって、この基準強度に相当する走査方向(左側基準方向および右側基準方向)を求め、これらの基準方向間の幅(広がり幅)が車両と判定できる所定幅(例えば5.0[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0011】
車両である場合、車両幅の外側(リフレクタの外側)は、反射物がないため、反射強度の落ち込みが大きく、広がり幅は小さくなる。一方でガードレールや路面の白線等の場合、反射物の外側にもガードレールや白線が長く続くため、窪みの強度と同程度の反射強度が得られ、反射強度の落ち込みが小さく、広がり幅は大きくなる。したがって、広がり幅が車両幅よりも極端に大きい場合(例えば5m以上である場合)、車両ではないと判定するものである。よって、ガードレール等にリフレクタが取り付けられていたり、路面の白線から反射が得られる場合であっても、停止車両であるか否かを精度良く判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象物が車両であるか否かを精度良く判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態であるレーザレーダ装置のブロック図である。
本実施形態のレーザレーダ装置は、LD(Laser Diode)駆動回路10、制御回路11、LD12、走査装置13、垂直走査位置検出装置14、水平走査位置検出装置15、PD(Photo Diode)16、受光回路17、メモリ18、車速センサ19、およびヨーレートセンサ20を備えている。
【0014】
LD駆動回路10は、制御回路11で生成された駆動信号に基づいて、LD12の発光を制御する。走査装置13は、制御回路11の制御に基づいて、LD12により発生されたレーザ光を所定の走査範囲で走査させる。走査装置13より照射されたレーザ光は、投光レンズを介して自車の走行方向(前方)に照射される。レーザ光が検出対象としての前方の物体(例えば、車両や路面)に反射して戻ってきた反射光は、受光レンズにより集光され、PD16によって受光される。
【0015】
図2は、走査装置13の投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を示す図である。投光レンズ33は、LD12の前面に設けられ、受光レンズ34は、PD16の前面に設けられている。
【0016】
投光レンズ33と受光レンズ34は、支持部材36に一体的に支持される。支持部材36は、水平方向に移動自在に板バネ32で支持されている。支持部材36にはコイル31が取り付けられている。走査装置13は、このコイル31に発生する磁界と永久磁石35との引力(または反発力)と板バネ32に発生する反力によりLD12の投光レンズ33およびPD16の受光レンズ34を移動させ、レーザ光を走査させる。
【0017】
図3は、投光レンズ33と受光レンズ34の光路を示す図である。LD12から照射されたレーザ光は、投光レンズ33で集光される。投光レンズ33の位置が走査の中立位置にある場合は、図3の実線で示されるような投光レンズ33からの光路で、レーザ光は正面に照射される。照射されたレーザ光は、対象物で反射され、図3の実線で示されるような光路で受光レンズ34に入射し、PD16によって受光される。
【0018】
また、走査装置13によって、図中、上方向に投光レンズ33が移動した場合、レーザ光は、図3の点線で示されるような光路で、図中、上方向に照射される。そして、照射されたレーザ光は、図中、上方向の物体で反射され、図3の点線で示されるような光路で、受光レンズ34に入射し、PD16によって受光される。
【0019】
このように、走査装置13は、投光レンズ33と受光レンズ34を一体的に所定の位置に移動させることで、レーザ光を走査する。なお、上記説明では水平方向の走査について説明したが、垂直方向についても同様の態様でレーザ光を走査することができる。
【0020】
図1において、垂直走査位置検出装置14と水平走査位置検出装置15は、走査装置13におけるレーザ光の水平方向と垂直方向の走査方向をそれぞれ検出して、制御回路11に出力する。なお、垂直方向に関しては、本発明の構成要素として必須ではなく、水平方向にのみ走査し、水平方向の走査方向だけ検出するようにしてもよい。
【0021】
受光回路17には、PD16によって受光された反射光の反射強度に対応する信号が入力される。受光回路17は、反射強度を数値化して、制御回路11に出力する。制御回路11は、入力された数値を、垂直走査位置検出装置14と水平走査位置検出装置15から入力された走査方向に対応してメモリ18に記億する。このような反射強度の測定は、走査装置が、所定の走査方向に走査する度に行われる。このとき、レーザ光は、所定角度だけ走査される。レーザレーダ装置がレーザ光を所定角度に照射し、対象物を検出する領域を「所定領域」と呼ぶ。
【0022】
制御回路11には、車速センサ19、ヨーレートセンサ20が接続されている。車速センサ19は、自車の車速を検出する。ヨーレートセンサ20は、自車のヨーレート(水平方向への旋回時の回頭速度)を検出する。
【0023】
制御回路11は、レーザ光を照射してからその反射光を受光するまでの所用時間に基づいて対象物と自車との距離を測定する。距離の測定は、所定領域毎に行われる。制御回路11は、距離および走査方向が近い対象物の集合をまとめ、同一の物体とする。制御回路11は、反射強度、走査方向、および所要時間(距離)に基づいて、対象物の集合が車両であるか否かの判定を行う。
【0024】
以下、車両であるか否かの判定について、具体的な手順を説明する。
図4は、全体手順を示すフローチャートである。
制御回路11は、上述のように反射強度を所定領域毎に測定する(s1)。全走査範囲を測定すると(s2)、距離および走査方向が近い対象物の集合体をまとめる(s3)。次に、各物体の距離、方向、幅を算出する(s4)。
【0025】
図5は、物体および幅の検出の手法を示した図である。同図上欄のグラフは、全走査範囲における対象物との距離を示した水平方向分布である。制御回路11は、同図上欄のグラフに示すように、距離および走査方向が近い対象物の集合をまとめ、同一の物体とする(同図の物体M1、M2)。また、制御回路11は、同図下欄のグラフに示すように、それぞれの物体の反射強度の水平方向分布を作成し、反射強度が極大となる点(ピーク)を抽出する。制御回路11は、抽出した各ピークにおける距離、方向を読み出し、これらの平均値を物体の距離、方向とする。また、両端のピーク(同図ではピーク1とピーク2)に対して反射強度が所定倍(例えば0.5倍)となる領域を抽出し、これらの領域を物体の端として、物体の幅を検出する。
【0026】
図4において、制御回路11は、物体の距離、方向、幅を検出した後、検出した対象物が停止車両であるか否かの判定を行う(s5)。図6は、停止車両判定処理の手順を示すフローチャートである。この処理は検出した物体毎に行われる。
【0027】
制御回路11は、まず物体を構成する各領域の反射強度を調査する(s11)。すなわち、図5下欄のグラフで示した各物体の反射強度の水平方向分布を作成する。また、各領域における距離の時間軸変化を参照し、相対速度の算出を行う。時間軸変化は、同じ領域で今回の走査で測定した距離と前回走査時に測定した距離との差で求められる。制御回路11は、相対速度に基づいて停止物であるか否かを判断する(s12)。その物体が自車の車速と同じ相対速度で近づいてくる場合、停止物であると判断する。それ以外の場合(移動物体の場合)、停止車両判定フラグをFALSEとする。
【0028】
停止物であれば、反射強度の水平方向分布において、ピークがあるか否かを判断する(s13)。ピークがあればその領域と反射強度をピークリストに記録する(s14)。ピークリストは図7に示すように、各ピークの領域番号(例えば水平方向左端から順にA1,A2,A3・・・An)と反射強度を列記したものである。
【0029】
その後、全領域の調査が終了するまで処理を繰り返し、全領域の調査が終了した場合(s15)、ピークリストの格納個数(ピークの数)が2以上であるか否かを判断する(s16)。ピークがない、あるいはピークの数が1である場合、停止車両判定フラグをFALSEにする(s28)。
【0030】
ピークの数が2以上である場合、さらにピークの数が3以上であるか否かを判断する(s17)。ピークの数が2つであると判断した場合、左端ピーク、右端ピークを決定する(s18)。すなわち、左側に存在するピークを左端ピーク、右側に存在するピークを右端ピークとする。そして、左端ピークと右端ピークの間の窪みの強度に基づいて、検出した物体が、停車車両であるか否かを判定する(S19)。
【0031】
一方、ピークの数が3つ以上であると判断した場合、反射強度の高い順に、上位3個のピークを抽出する(s20)。そして、上位3個のうち左側のピークを左端ピーク、右側のピークを右端ピークとする(s21)。
【0032】
さらに、制御回路11は、左端ピーク、右端ピークを決定した後、これらピーク間のうち、最低強度となる窪みを調査する(s22)。制御回路11は、これらの左端ピーク、右端ピーク、および窪みの強度に基づいて、検出した物体が停止車両であるか否かを判定する。
【0033】
図9および図10を参照して、ピークの数が2つの場合と3つの場合について説明する。図9はピークの数が2つの場合、図10はピークの数が3つの場合についての反射強度を示す図である。図9の下欄に示すように、前方車両が遠方に存在する場合、主にリフレクタから高い反射強度が得られる。リフレクタは車両の左右端に2つ設けられているため、同図上欄のグラフに示すように、反射強度のピークの数が2つとなる。一方、図10の下欄に示すように、前方車両が近距離に存在する場合、リフレクタのみならず、車両中央部に設けられたナンバープレートからも高い反射強度が得られる。結果、同図上欄のグラフに示すように、反射強度のピークの数が3つとなる。
【0034】
本実施形態では、図10に示したように、ピークの数が3つ存在する場合であっても、左端ピーク、右端ピークを決定して物体幅等を算出し、車両判定を行うため、リフレクタが車両中央に取り付けられていたり、ナンバープレートから高い反射強度が得られたりしても、物体が車両であるか否かを判定することができる。また、ピークの数が4つ以上存在する場合であっても、反射強度の高い上位3つのピークを抽出して左端ピーク、右端ピークを決定し、物体幅等を算出して車両判定を行うため、さらに多数のリフレクタが取り付けられている車両であっても、物体が車両であるか否かを判定することができる。
【0035】
制御回路11は、これらの調査結果に基づいて、以下のような車両判定処理を行う。すなわち、図6のs23〜s26の処理において、以下の全ての条件を満たした場合にのみ停止車両であると判定し、停止車両判定フラグをTRUEとする(s27)。一方、いずれか1つでも条件を満たしていなければ、停止車両判定フラグをFALSEとする(s28)。
(s23)Wmin<物体幅W<Wmax
(s24)広がり幅Ws<Ws_max
(s25)Wp_min<左右端ピーク間幅Wp<Wp_max
(s26)窪み反射強度A_HOL<A_P1×αph
ここで図8を参照して各種値について説明する。図8は、物体幅など、各種値の定義を示す図である。
物体幅Wは、左端ピークおよび右端ピークの反射強度の所定倍(A_P1×αpおよびA_P2×αp、ただしαp=0.5)となる領域間の幅から求められる。本実施形態は、この物体幅が車両と判定できる範囲(例えばWmin=1.0[m]、Wmax=3.5[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0036】
広がり幅Wsは、窪み反射強度A_HOLの所定倍(A_HOL×αh、ただしαh=0.5)となる基準強度を算出し、左右端ピークから物体端部(左右端ピークの左脇および右脇)に向かって、この基準強度に相当する領域(左側基準方向および右側基準方向)を求め、これらの基準方向の間の幅から求められる。この広がり幅Wsが車両と判定できる所定幅Ws_max(例えば5.0[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0037】
図9および図11を参照して広がり幅について説明する。図11は、前方にガードレールが存在する場合の反射強度を示す図である。同図下欄に示すように、ガードレールには、リフレクタが設けられており、図9に示す前方車両と同様の距離で2つのピークが検出される。
【0038】
図9に示すように、検出した物体が車両である場合、車両幅の外側(リフレクタの外側)は、反射物がないため、反射強度の落ち込みが大きく、広がり幅Wsは小さくなる。一方で図11に示すように、検出した物体がガードレールである場合、リフレクタの外側にもガードレールが続くため、窪み反射強度と同程度の反射強度が幅広く検出され、反射強度の落ち込みが小さく、広がり幅Wsは大きくなる。したがって、広がり幅Wsが物体幅Wよりも極端に大きい場合(例えば5m以上である場合)、車両ではないとして判定するものである。
【0039】
次に、左右端ピーク間幅Wpは、上述したように、左端ピークおよび右端ピークの幅から求められる。この左右端ピーク間幅Wpが車両のリフレクタの幅と判定できる範囲(例えばW_pmin=0.5[m]、Wp_max=3.5[m])に収まっている場合、車両らしいとして判定するものである。
【0040】
次に、窪み反射強度A_HOLは、左端ピーク、右端ピークの間のうち、最低強度となる領域(窪み)の反射強度である。この窪み反射強度A_HOLが、最大強度となるピークに対してある程度落ち込んでいるか(例えばA_HOL<A_P1×αph、ただしαph=0.5)を調べ、落ち込みが大きければ車両らしいとして判定する。
【0041】
図10および図12を参照して、窪み反射強度について説明する。図12は、前方に車両と同程度の幅を有する看板が設置されている場合の反射強度を示す図である。同図下欄に示すように、看板には高い反射強度を示す図柄が3つ並んでおり、図10に示す前方車両のリフレクタおよびナンバープレートと同様の距離で3つのピークが存在する。
【0042】
図10に示すように、検出した物体が車両である場合、リフレクタやナンバープレートの間には高い反射強度を示すものがなく、窪みの反射強度は、最大強度となるピークから大きく落ち込む(A_HOL<A_P1×αph)となる。しかし、図12に示すように、検出した物体が看板である場合、反射強度の高い図柄の間でも、ある程度の反射強度が得られるため、窪みの反射強度の落ち込みが小さい(A_HOL≧A_P1×αph)。よって、車両であるか否かを精度良く判定することができる。
【0043】
なお、図13に示すように、白線や歩道なども、車両より大きい幅を有していたり、窪みの反射強度と同程度の反射強度が幅広く得られたり、リフレクタの間にある程度の反射強度が存在したりするため、図11や図12に示した様な反射強度を示し、停止車両と区別することができる。
【0044】
以上のような停止車両判定処理を行い、判定結果を車両制御部等の他の装置へ出力する(図4のs6)。車両制御部では、この判定結果を用いて運転者に警告音を発する、シートベルトを締める、制動を行う、といった安全制御を行う。
【0045】
なお、本実施形態はレーザレーダ装置について説明したが、本発明はミリ波レーダ等、種々の電磁波を用いる装置に適用することが可能である。ミリ波レーダは、電磁波(ミリ波)を機械的に走査して所定角度毎の反射強度を検出する。また、複数の受信機で検出した反射波の位相差に基づいて所定角度毎の反射強度を検出するミリ波レーダもある。いずれにしても、ミリ波を送信してから反射波を受信するまでの所要時間に基づいて物体との距離を算出し、反射強度、走査角度(走査方向)に基づいて物体の方向を算出するものである。また、反射波のドップラー効果を利用して相対速度を検出するものである。よって、所要時間、反射強度、走査方向に基づいて物体の幅を検出し、反射強度の水平方向分布(ピークや窪み)に基づいて物体が車両であるか否かを判定する本発明の停止車両判定処理を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態であるレーザレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スキャナの投光レンズと受光レンズを支持する部分の構成を示す図である。
【図3】スキャナによって駆動された投光レンズと受光レンズの光路を示す図である。
【図4】全体手順を示すフローチャートである。
【図5】物体の検出と幅の検出の手法を示した図である。
【図6】車両判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ピークリストを示す図である。
【図8】種々の値の定義を示す図である。
【図9】ピークの数が2つの場合についての反射強度を示す図である。
【図10】ピークの数が3つの場合についての反射強度を示す図である。
【図11】前方にガードレールが存在する場合の反射強度を示す図である。
【図12】前方に車両と同程度の幅を有する看板が設置されている場合の反射強度を示す図である。
【図13】白線や歩道などが存在する場合を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査波を照射する照射手段と、
前記探査波を水平方向に走査する走査手段と、
前記探査波が対象物に照射されたことによる反射波の反射強度を検出する反射波検出手段と、
前記走査手段の走査方向を検出する走査方向検出手段と、
前記探査波を照射してから、その反射波を検出するまでの所要時間を計測する所要時間計測手段と、
前記反射強度、前記走査方向、および前記所要時間に基づいて、前記対象物までの距離、前記対象物の方向、および前記対象物の幅を検出する対象物検出手段と、
を備えた対象物検出装置において、
前記対象物の反射強度の水平方向分布において、左端ピークおよび右端ピークを検出するピーク検出手段と、
前記左端ピークおよび前記右端ピークの間の窪みのうち、最低強度に基づいて基準強度を算出する基準強度算出手段と、
前記対象物の反射強度の水平方向分布において、前記左端ピークの左脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である左側基準方向を求めるとともに、前記右端ピークの右脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である右側基準方向を求める基準方向算出手段と、
前記左側基準方向と右側基準方向の間の幅が所定幅より小さい場合に、当該対象物が車両であると判定する車両判定手段と、
を備えたことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項1】
探査波を照射する照射手段と、
前記探査波を水平方向に走査する走査手段と、
前記探査波が対象物に照射されたことによる反射波の反射強度を検出する反射波検出手段と、
前記走査手段の走査方向を検出する走査方向検出手段と、
前記探査波を照射してから、その反射波を検出するまでの所要時間を計測する所要時間計測手段と、
前記反射強度、前記走査方向、および前記所要時間に基づいて、前記対象物までの距離、前記対象物の方向、および前記対象物の幅を検出する対象物検出手段と、
を備えた対象物検出装置において、
前記対象物の反射強度の水平方向分布において、左端ピークおよび右端ピークを検出するピーク検出手段と、
前記左端ピークおよび前記右端ピークの間の窪みのうち、最低強度に基づいて基準強度を算出する基準強度算出手段と、
前記対象物の反射強度の水平方向分布において、前記左端ピークの左脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である左側基準方向を求めるとともに、前記右端ピークの右脇に向かって、前記基準強度に相当する走査方向である右側基準方向を求める基準方向算出手段と、
前記左側基準方向と右側基準方向の間の幅が所定幅より小さい場合に、当該対象物が車両であると判定する車両判定手段と、
を備えたことを特徴とする対象物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−288099(P2009−288099A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141406(P2008−141406)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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