説明

射出装置

【課題】ホッパ内に貯留された射出成形用の原料樹脂を乾燥させる場合、従来では射出成形機とは別な独立した乾燥機を用いているため、設備全体が大型化する上にエネルギー効率が悪い。
【解決手段】射出成形機にて発生した熱を回収するための熱交換部51を持った熱回収手段15と、原料樹脂11を収容してこれを射出成形機の射出シリンダ部13へと供給するためのホッパ40とを有する本発明による射出装置は、一端側に熱交換部51が取り付けられると共に他端がホッパ40内に連通する熱風ダクト52と、熱交換部51にて回収された熱を熱風として熱風ダクト52からホッパ40内に導くための排気ファン53と、ホッパ40に形成された排気口56に連通する排気ダクト54とを熱回収手段15が具え、排気ファン53が排気ダクト54に組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機にて発生した熱を回収するための熱交換部を持った熱回収手段と、原料樹脂を収容してこれを射出成形機の射出シリンダ部へと供給するためのホッパとを有する射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品を射出成形機にて射出成形する場合、射出成形に使用する原料樹脂に水分が過剰に含まれていると、成形後の製品の表面に銀条痕が発生したり、気泡などの混入が起こる結果、成形品の品質が損なわれたり、成形品の劣化が早まる可能性がある。このため、原料樹脂を保管する場合には、所定の乾燥状態に保って防湿に留意しておく必要がある。特許文献1には、このような射出成形機における原料樹脂の乾燥方法が開示されている。これによると、ホッパ内に貯留された原料樹脂を予備乾燥機にて予備乾燥させた後、この予備乾燥機からホッパを取り外して射出成形機に取り付け、この射出成形機とは別な設備から供給される乾燥空気により、ホッパ内の乾燥状態を維持するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−168083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術の場合、射出成形機とは別の独立した乾燥機を用意する必要があり、そのための配管類を別途設けなければならず、設備全体が大型化すると共にエネルギー効率が余りよくないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、このような従来の設備における不具合に鑑みてなされたものであり、射出成形機からの排熱を有効に利用することで設備全体をコンパクト化し得ると同時にエネルギー効率の改善を図った射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原料樹脂を収容してこれを射出成形機の射出シリンダ部へと供給するためのホッパを有する射出装置であって、前記射出成形機にて発生した熱を熱風として前記ホッパ内に導く熱回収手段を具えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、熱回収手段が射出成形機にて発生した熱を熱風としてホッパ内へ導く。ホッパ内に介在する樹脂原料中に含まれる水分は、この熱風によって蒸発し、ホッパ外に排出される。この結果、ホッパ内の樹脂原料の乾燥状態が良好に維持される。
【0008】
本発明による射出装置において、熱回収手段は、射出成形機にて発生した熱を回収するための熱交換部と、この熱交換部が一端側に取り付けられると共に他端がホッパ内に連通する熱風ダクトと、熱交換部にて回収された熱を熱風として熱風ダクトからホッパ内に導くための送風機とを有するものであってよい。この場合、ホッパに形成された排気口に連通する排気ダクトと、この排気ダクトを送風機に連動して開閉し得るシャッタとをさらに具え、送風機を排気ダクトに組み込むことができ、特に、送風機をシャッタとして機能させるようにしてもよい。熱風ダクト内の温度を検出する第1の温度センサと、ホッパ内または排気ダクト内の温度を検出する第2の温度センサと、これら第1および第2のセンサによって検出される温度に基づいて送風機の作動を制御する制御手段とをさらに具えることができる。あるいは、ホッパ内または排気ダクト内の湿度を検出するセンサと、このセンサによって検出される湿度に基づいて送風機の作動を制御する制御手段とをさらに具えることも可能である。
【0009】
原料樹脂を収容するチャンバが画成され、かつこのチャンバ内に押し込まれる原料樹脂を加熱するためのヒータが配された射出シリンダ部と、この射出シリンダ部のチャンバに連通する樹脂供給通路が画成された通路形成部材を有し、かつこの通路形成部材の樹脂供給通路に供給される原料樹脂を射出シリンダ部のチャンバへと押し込むための材料供給ユニットとを射出成形機が含み、さらに大気側に面する発熱部と、材料供給ユニットの通路形成部材に接合される吸熱部とを有し、かつ樹脂供給通路内に介在する原料樹脂のブリッジ現象を阻止するためのペルチェユニットを熱回収手段が含むものであってよい。この場合、材料供給ユニットの通路形成部材の温度を検知するための温度センサをさらに含み、制御手段は、この温度センサによる検出温度に基づいてペルチェユニットに対する通電を制御するものであってよい。また、通路形成部材の樹脂供給通路を挟んでペルチェユニットの吸熱部の反対側に温度センサを配することが好ましい。さらに、熱回収手段の熱交換部をペルチェユニットの発熱部に組み付け、この熱交換部にて発熱部の周囲の大気を加熱させて熱回収を行うものであってよい。熱回収手段は、大気を熱交換部へと導くための熱風ダクトの他端を覆ってこの大気中に含まれる塵埃を捕捉するフィルタをさらに具えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射出装置によると、専用の乾燥機などの設備を設けることなく、ホッパ内に貯留された原料樹脂を良好な乾燥状態に保持することができる。
【0011】
射出成形機にて発生した熱を回収するための熱交換部と、この熱交換部が一端側に取り付けられると共に他端がホッパ内に連通する熱風ダクトと、熱交換部にて回収された熱を熱風として熱風ダクトからホッパ内に導くための送風機とを熱回収手段が有する場合、効率のよい熱回収を行ってエネルギーの無駄を避けることができ、ホッパ内に貯留された原料樹脂の乾燥状態を確実に保持することが可能である。
【0012】
ホッパに形成された排気口に連通する排気ダクトと、この排気ダクトを送風機に連動して開閉し得るシャッタとをさらに具え、排気ダクトに送風機を組み込むようにした場合、熱風ダクトおよびホッパ内を大気に対して負圧状態にすることができる。このため、これらの接続部分のシール性をそれほど留意する必要がなくなり、製造および組み立てに要するコストを削減することが可能である。
【0013】
送風機をシャッタとしても機能させた場合、独立したシャッタが不要となり、部品コストなどを抑えることができる。
【0014】
熱風ダクト内の温度と、ホッパ内または排気ダクト内の温度とに基づいて送風機の作動を制御する制御手段を具えた場合、送風機の運転などの無駄なエネルギーの消費を抑えることができる上、ホッパ内の原料樹脂の過乾燥を回避することもできる。ホッパ内または排気ダクト内の湿度に基づいて送風機の作動を制御する制御手段を具えた場合も同様に、送風機の運転などの無駄なエネルギーの消費を抑えることができる上、ホッパ内の原料樹脂の過乾燥を回避することが可能である。
【0015】
原料樹脂を収容するチャンバが画成され、かつこのチャンバ内に押し込まれる原料樹脂を加熱するためのヒータが配された射出シリンダ部と、この射出シリンダ部のチャンバに連通する樹脂供給通路が画成された通路形成部材を有し、かつこの通路形成部材の樹脂供給通路に供給される原料樹脂を射出シリンダ部のチャンバへと押し込むための材料供給ユニットとを射出成形機が含み、また、大気側に面する発熱部と、材料供給ユニットの通路形成部材に接合される吸熱部とを有し、かつ樹脂供給通路内に介在する原料樹脂のブリッジ現象を阻止するためのペルチェユニットを熱回収手段が含む場合、ペルチェユニットへの通電に伴う通路形成部材の冷却と同時に発熱部にて発生する熱を効率よく回収することができる。
【0016】
材料供給ユニットの通路形成部材の温度を検知するための温度センサをさらに含み、この温度センサによる検出温度に基づいてペルチェユニットに対する通電を制御手段が制御する場合、通路形成部材が必要以上に冷却されるような不具合を回避することができる。
【0017】
通路形成部材の樹脂供給通路を挟んでペルチェユニットの吸熱部の反対側に温度センサを配した場合、この温度センサによって検出される温度よりもペルチェユニットの吸熱部が接合された通路形成部材の部分の温度を確実に低温に保つことができる。
【0018】
熱回収手段の熱交換部をペルチェユニットの発熱部に組み付け、この熱交換部にて発熱部の周囲の大気を加熱させて熱回収を行うようにした場合、ペルチェユニットへの通電によって消費されるエネルギーを有効に回収することができる。
【0019】
熱回収手段が大気を熱交換部へと導くための熱風ダクトの他端を覆ってこの大気中に含まれる塵埃を捕捉するフィルタを具えた場合、ホッパ内に大気中の塵埃などが混入せず、射出成形品の品質を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による射出装置を竪型の射出成形機に応用した一実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、必要に応じて本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも応用することができることは言うまでもない。
【0021】
本実施形態における射出装置の概略構造を図1に模式的に表し、およびその右側面形状を図2に示し、その制御ブロックを図3に示し、この射出装置に付設された熱回収手段の構成を模式的に図4に示す。すなわち、この射出成形機は、射出装置10と、図示しない型締め装置とを具えた一般的なものである。射出装置10は、成形材料である原料樹脂11を可塑化してこれを固定側金型12と図示しない可動側金型との間に画成される図示しない成形キャビティ内へ射出する。型締め装置は、固定側金型12に対して可動側金型をその対向方向に駆動する。
【0022】
本実施形態における射出装置10は、射出シリンダ部13と、材料供給ユニット14と、熱回収手段15とを具えている。射出シリンダ部13は、ペレット状をなす原料樹脂11を可塑化してこれを成形キャビティ内に所定量ずつ射出するためのものであり、材料供給ユニット14は、原料樹脂11をこの射出シリンダ部13へと供給する。
【0023】
射出シリンダ部13は、原料樹脂11が供給されるチャンバ16を画成した射出シリンダ17と、射出プランジャ18と、プランジャ駆動手段19とを具えている。射出プランジャ18は、射出シリンダ17のチャンバ16に対して摺動自在に嵌合され、プランジャ駆動手段19は、この射出プランジャ18を往復駆動する。外周がシリンダヒータ20で囲まれた射出シリンダ17の先端部には、外周をノズルヒータ21で囲まれたノズル22が設けられており、これらヒータ20,21は、チャンバ16内に供給される原料樹脂11を加熱溶融させるためのものである。このため、射出シリンダ17の温度およびノズル22の温度をそれぞれ検出するシリンダ用温度センサ23およびノズル用温度センサ24がこれら射出シリンダ17およびノズル22に付設されている。そして、これらの検出信号がケーブル25,26を介して制御装置27に出力されるようになっている。制御装置27は、これら温度センサ23,24からの検出信号に基づき、射出シリンダ17およびノズル22が所定の温度範囲内に保持されるように、ヒータ20,21に対する通電のオン/オフを制御する。なお、ノズル22のテーパ状をなすその先端面(下端面)は、固定側プラテン28に装着されたノズル受け板29のテーパ状をなす受け面(上端面)に対して緊密に押し当たり、ノズル受け板29に対してノズル22が正確に位置決めされるようになっている。
【0024】
固定側金型12が取り付けられる固定側プラテン28には、複数本の支柱30が植設されており、これらの上端に中間支持板31が連結され、射出シリンダ17を取り囲んだ状態でこれを保持している。この中間支持板31には、さらに複数本の案内シャフト32が上向きに突設され、これらの上端に端板33が一体的に連結されている。この端板33と固定側プラテン28との間にはスライダ34が配され、このスライダ34を貫通する複数本の案内シャフト32により、スライダ34はこれらに沿って摺動可能に保持されている。先の射出プランジャ18は、このスライダ34から射出シリンダ17側に下向きに突設された状態となっている。先のプランジャ駆動手段19は、射出用モータ35と、端板33に対して回転自在に支持されたボールナット36と、スライダ34から射出プランジャ18と反対側、つまり上方に突設されてボールナット36に螺合する図示しないボールねじ軸とを具えている。射出用モータ35には駆動スプロケット37が一体的に連結され、この駆動スプロケット37と、先のボールナット36に対して一体に設けられた従動スプロケット38とには、無端の歯付きベルト39が掛け渡されている。
【0025】
従って、上述した射出用モータ35を正逆転することにより、歯付きベルト39を介してボールナット36が正逆転することとなる。この結果、ボールねじ軸と一体のスライダ34が案内シャフト32に沿って往復動し、射出プランジャ18を射出シリンダ17に対して往復動させことができる。なお、射出装置10としてこのような射出プランジャ18の往復動作を行うことができるものであれば、本実施形態以外の任意の周知の構成のものを適宜採用し得ることは言うまでもない。
【0026】
本実施形態における材料供給ユニット14は、本発明における通路形成部材としての先の中間支持板31と、原料樹脂11を貯溜するホッパ40と、押込みプランジャ41と、プランジャ駆動モータ42とを具えている。中間支持板31には、ほぼ水平方向に延在して一端が射出シリンダ部13のチャンバ16に連通する樹脂供給通路43が画成されている。ホッパ40は、ホッパジョイント44を介して中間支持板31に連結され、樹脂供給通路43の中間部がホッパジョイント44を通ってホッパ40に連通している。押込みプランジャ41は、樹脂供給通路43に対して摺動自在に嵌合され、ホッパ40から樹脂供給通路43内に流下する原料樹脂11を射出シリンダ17内に送出する。プランジャ駆動モータ42には押込みプランジャ41が連結され、この押込みプランジャ41を樹脂供給通路43内で往復駆動させる。この押込みプランジャ41の往復動により、原料樹脂11をホッパ40から樹脂供給通路43を介して射出シリンダ17のチャンバ16内へと所定量ずつ間欠的に送り込むことができる。
【0027】
従って、1回の射出作業毎に先の射出プランジャ18の往復動と、押込みプランジャ41の往復動とを組み合わせ、チャンバ16内に供給される原料樹脂11を可塑化した状態でノズル22から成形キャビティ内へと所定量ずつ順に射出することができる。
【0028】
材料供給ユニット14は、樹脂供給通路43内に介在する原料樹脂11のブリッジを阻止するためのペルチェユニット45をさらに具えている。本実施形態における熱回収手段15は、このペルチェユニット45からの排熱を回収してホッパ40内に収容された原料樹脂11の乾燥を行うためのものである。ペルチェユニット45の特性として、吸熱部46にて吸熱される熱エネルギーよりも発熱部47にて発熱する熱エネルギーの量が多くなる。このため、熱回収手段15にてペルチェユニット45の発熱部47にて発生する熱を回収することはエネルギー効率の点からも有効である。このようなペルチェユニット45を用いた場合、材料供給ユニット14の冷却と同時に原料樹脂11の加熱乾燥とを実現することが可能となるため、設備の複雑化を回避すると共にエネルギー効率を向上させることができる。
【0029】
上述したように、射出シリンダ17にはシリンダヒータ20が組み込まれているため、射出シリンダ17に接続する中間支持板31は射出シリンダ17側からの伝熱によって150℃〜200℃もの高温に達する場合がある。そこで、中間支持板31を冷却して中間支持板31に形成された樹脂供給通路43内に介在する原料樹脂11のブリッジ現象を回避する必要がある。
【0030】
ペルチェユニット45は、中間支持板31の底面に接合される吸熱部46と、大気側に面する発熱部47とを有する。このペルチェユニット45は、周知のようにP型熱電半導体とN型熱電半導体とを交互に接続したものである。そして、これらのPN接合部に電流を流すことにより、N→P接合部、つまり吸熱部46では吸熱現象が発生し、P→N接合部、つまり発熱部47では発熱現象が発生することを利用して中間支持板31の冷却を行うようにしている。
【0031】
ペルチェユニット45に対する通電のオン/オフは、中間支持板31に組み込まれたブリッジ防止用温度センサ48からの検出信号に基づいて上述した制御装置27により行われる。より具体的には、ブリッジ防止用温度センサ48によって検出される温度が50℃〜70℃の範囲に収まるように、ペルチェユニット45に対する通電のオン/オフが制御される。つまり、ブリッジ防止用温度センサ48によって検出される温度が70℃を越えた場合にはペルチェユニット45に対して通電を行い、50℃未満の場合には、非通電状態に保持する。このような制御を行うことにより、ペルチェユニット45が不必要な電力を消費しないようにすることができる。なお、通電方向を逆にすることにより、吸熱部46と発熱部47とを切り換えることも可能であり、50℃未満の場合に中間支持板31を加熱するためにペルチェユニット45に対して逆方向の通電を行うようにしてもよい。
【0032】
なお、本実施形態ではブリッジ防止用温度センサ48を通路形成部材である中間支持板31の樹脂供給通路43を挟んでペルチェユニット45の吸熱部46の反対側に配している。しかしながら、これを射出シリンダ17から最も遠い中間支持板31の端部(図1中、左端部)に配することも可能である。何れにしろ、ブリッジ防止用温度センサ48によって検出される温度が原料樹脂11の軟化温度以下の場合、吸熱部46を接合した領域の温度がそれ以下となることが確実となるような位置にブリッジ防止用温度センサ48を組み込むことが有効である。また、これによってブリッジ防止用温度センサ48がペルチェユニット45の吸熱部46による冷却の影響を直に受けにくくすることも可能となる。
【0033】
本実施形態では、炭素鋼などから作られる中間支持板31の外周面(表面)に熱伝導率の高い銅めっきまたはアルミニウムめっきなどの熱伝導向上処理49を施している。これにより、中間支持板31の熱をその底面に接合されるペルチェユニット45の吸熱部46へと効率よく伝達し、その吸熱効果(冷却効果)を高めるように配慮している。同様な効果を得るために、中間支持板31の表面を銅,銅合金,黄銅,アルミニウム,アルミニウム合金などの板材で被覆し、その表面にペルチェユニット45の吸熱部46を接合することも有効である。また、ペルチェユニット45に関する設置スペースなどに制約がない場合、中間支持板31を取り囲むようにペルチェユニット45の吸熱部46を配することも可能である。また、中間支持板31の底面とペルチェユニット45の吸熱部46との間に隙間が生じて伝熱性を損なうことがないように、伝熱グリースなどをこれらの間に塗布することも有効である。何れの場合であっても、中間支持板31に対するペルチェユニット45の吸熱部46の接合位置は、樹脂供給通路43内で原料樹脂11のブリッジが発生しやすい中間支持板31と射出シリンダ17との接合部分にできるだけ近い位置が好ましいと言えよう。
【0034】
このように、ペルチェユニット45を材料供給ユニット14の冷却のために用いることで、冷却水を用いた従来の冷却装置の如き冷却用配管やポンプなどが不要となり、部品コストを削減することができる上、日常的なメンテナンスもほとんど不要となる。
【0035】
本実施形態における熱回収手段15は、多数の放熱フィン50を持った熱交換部51と、一端がホッパ40内に連通すると共に他端が熱交換部51に連通する熱風ダクト52と、排気ファン53と、排気ダクト54とを具えている。ペルチェユニット45の発熱部47に接合される熱交換部51の放熱フィン50は、熱風ダクト52内に組み込まれてその周囲に介在する空気を加熱する。熱風ダクト52の他端側の開口には防塵フィルタ55が装着され、塵埃などが熱風ダクト52内に吸い込まれないように配慮している。本発明における送風機としての排気ファン53は、熱交換部51にて回収された熱を熱風として熱風ダクト52からホッパ40内に導くためのものである。この排気ファン53は、その作動によって発生するホッパ40内の静圧が大気圧よりも負圧となるように、ホッパ40に形成された排気口56に連通する排気ダクト54に組み込まれている。これにより、熱風ダクト52内を流れる熱風やホッパ40内に貯留された原料樹脂11の粉塵などを外部へ漏洩しにくくすることができる。この結果、熱風ダクト52と熱交換部51との連結部分や、熱風ダクト52とホッパ40との連結部分あるいはホッパ40と排気熱風ダクト54との連結部分などの気密性をそれほど厳密に考慮する必要がなくなり、部品の製造コストなどを抑えることが可能である。本実施形態における排気ファン53は、その停止状態において排気ダクト54を塞ぐシャッタとしての機能を併せ持っているが、この排気ファン53に連動して排気ダクト54を開閉し得るシャッタを排気熱風ダクト54に別途組み込むことも可能である。
【0036】
ところで、熱交換部51を通過して加熱された空気が常時ホッパ40内に導かれると、ホッパ40内に介在する原料樹脂11が過乾燥状態となる可能性がある。原料樹脂11が過乾燥状態になると、射出成形品の寸法安定性や耐熱性,難燃性,剛性などの特性を調整するための原料樹脂11に含まれる添加剤が蒸発したり飛散して成形不良の原因となる可能性がある。このような原料樹脂11の過乾燥を防止するため、本実施形態においては、熱風ダクト52内の温度を検出する熱風ダクト用温度センサ57と、排気ダクト54内の温度を検出する排気ダクト用温度センサ58とを設けている。熱風ダクト用温度センサ57は、熱交換部51よりも下流側の熱風ダクト52に組み込まれ、排気ダクト用温度センサ58は排気ファン53よりも上流側の排気ダクト54に組み込まれている。なお、排気ダクト用温度センサ58をホッパ40の排気口56の近傍に設けてホッパ40内の温度を検出するようにしてもよい。これら2つの温度センサ57,58の検出信号は、制御装置27へと出力され、制御装置27は、これら2つの温度センサ57,58からの検出信号に基づいて排気ファン53のオン/オフを制御する。より具体的には、熱風ダクト用温度センサ57で検知した温度と排気ダクト用温度センサ58で検知した温度との差が℃単位で5度以下の場合、排気ファン53の作動を停止する。これにより、熱風がホッパ40内へは導かれないので、原料樹脂11の過乾燥を防止することができる。また、熱風ダクト用温度センサ57で検知した温度と排気ダクト用温度センサ58で検知した温度との差が10度以上の場合、排気ファン53を作動させる。これにより、熱交換部51からの熱風をホッパ40内へ導き、原料樹脂11の除湿や防湿が可能となる。このように、本実施形態では排気ファン53のオン/オフを切り換えるための2つの温度センサ57,58による検出温度の差に5度および10度のヒステリシスを持たせ、排気ファン53のオン/オフの頻繁な繰り返しを防止している。このように制御することにより、騒音の発生防止や、排気ファン53の駆動源やそのオン/オフを制御するスイッチ部品などの寿命を向上させることができる。
【0037】
上述した実施形態では、2つの温度センサ57,58を用いて排気ファン53の作動を制御するようにしている。これら2つの温度センサ57,58の代わりに、ホッパ40内または排気ダクト54内の湿度を検出する湿度センサを組み込み、この湿度センサによって検出される湿度に基づいて排気ファン53の作動を制御するようにしてもよい。
【0038】
本実施形態のように、熱交換部51にて加熱された空気をホッパ40内に導くことにより、ホッパ40内に介在する原料樹脂11の乾燥状態を適切に維持することが可能となる。この結果、射出成形時に原料樹脂11に含まれる水分による射出成形品の銀条や気泡の発生を防止することができ、射出成形品の品質向上を維持することが可能である。
【0039】
なお、排気ファン53の運転が停止中の場合、ペルチェユニット45の発熱部47からの回収熱をこの射出成形機に付随する金型の加熱保温処理や他の樹脂材料の加熱乾燥処理に利用することもできる。この場合、熱風ダクト52の途中に分岐熱風ダクトを接続し、ペルチェユニット45の発熱部47からの回収熱をホッパ40側かあるいは分岐熱風ダクト側に供給を切り換えるための切り換えダンパをこの接続部分に組み込むことが有効である。あるいは、射出シリンダ17やノズル22の補助加熱源として利用することも可能であり、この場合にはシリンダヒータ20やノズルヒータ21の消費電力量を削減させることができる。
【0040】
本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。例えば、竪型の射出成形機に限らず、横型の射出成形機にも適用することができる。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の射出装置を竪型の射出成形機に応用した一実施形態の内部構造を表す断面図である。
【図2】図1中の右側面図である。
【図3】図1および図2に示した実施形態における制御ブロック図である。
【図4】図1および図2に示した射出装置における熱回収手段の概略構成を表す概念図である。
【符号の説明】
【0042】
10 射出装置
11 原料樹脂
12 固定側金型
13 射出シリンダ部
14 材料供給ユニット
15 熱回収手段
16 チャンバ
17 射出シリンダ
18 射出プランジャ
19 プランジャ駆動手段
20 シリンダヒータ
21 ノズルヒータ
22 ノズル
23 シリンダ用温度センサ
24 ノズル用温度センサ
25,26 ケーブル
27 制御装置
28 固定側プラテン
29 ノズル受け板
30 支柱
31 中間支持板
32 案内シャフト
33 端板
34 スライダ
35 射出用モータ
36 ボールナット
37 駆動スプロケット
38 従動スプロケット
39 歯付きベルト
40 ホッパ
41 押込みプランジャ
42 プランジャ駆動モータ
43 樹脂供給通路
44 ホッパジョイント
45 ペルチェユニット
46 吸熱部
47 発熱部
48 ブリッジ防止用温度センサ
49 熱伝導向上処理
50 放熱フィン
51 熱交換部
52 熱風ダクト
53 排気ファン
54 排気ダクト
55 防塵フィルタ
56 排気口
57 熱風ダクト用温度センサ
58 排気ダクト用温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料樹脂を収容してこれを射出成形機の射出シリンダ部へと供給するためのホッパを有する射出装置であって、
前記射出成形機にて発生した熱を熱風として前記ホッパ内に導く熱回収手段を具えたことを特徴とする射出装置。
【請求項2】
前記熱回収手段は、射出成形機にて発生した熱を回収するための熱交換部と、この熱交換部が一端側に取り付けられると共に他端が前記ホッパ内に連通する熱風ダクトと、前記熱交換部にて回収された熱を熱風として前記熱風ダクトから前記ホッパ内に導くための送風機とを有することを特徴とする請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記ホッパに形成された排気口に連通する排気ダクトと、この排気ダクトを前記送風機に連動して開閉し得るシャッタとをさらに具え、前記送風機が排気ダクトに組み込まれていることを特徴とする請求項2に記載の射出装置。
【請求項4】
前記送風機が前記シャッタとして機能することを特徴とする請求項3に記載の射出装置。
【請求項5】
前記熱風ダクト内の温度を検出する第1の温度センサと、前記ホッパ内または前記排気ダクト内の温度を検出する第2の温度センサと、これら第1および第2のセンサによって検出される温度に基づいて前記送風機の作動を制御する制御手段とをさらに具えたことを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の射出装置。
【請求項6】
前記ホッパ内または前記排気ダクト内の湿度を検出するセンサと、このセンサによって検出される湿度に基づいて前記送風機の作動を制御する制御手段とをさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の射出装置。
【請求項7】
前記射出成形機は、原料樹脂を収容するチャンバが画成され、かつこのチャンバ内に押し込まれる原料樹脂を加熱するためのヒータが配された射出シリンダ部と、この射出シリンダ部の前記チャンバに連通する樹脂供給通路が画成された通路形成部材を有し、かつこの通路形成部材の樹脂供給通路に供給される原料樹脂を前記射出シリンダ部のチャンバへと押し込むための材料供給ユニットとを含み、
前記熱回収手段は、大気側に面する発熱部と、前記材料供給ユニットの前記通路形成部材に接合される吸熱部とを有し、かつ前記樹脂供給通路内に介在する原料樹脂のブリッジ現象を阻止するためのペルチェユニットを含むことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の射出装置。
【請求項8】
前記材料供給ユニットの通路形成部材の温度を検知するための温度センサをさらに含み、前記制御手段は、この温度センサによる検出温度に基づいて前記ペルチェユニットに対する通電を制御することを特徴とする請求項7に記載の射出装置。
【請求項9】
前記温度センサは、前記通路形成部材の樹脂供給通路を挟んで前記ペルチェユニットの吸熱部の反対側に配されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記熱回収手段の熱交換部は、前記ペルチェユニットの発熱部に組み付けられ、この熱交換部にて前記発熱部の周囲の大気を加熱させて熱回収を行うことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の射出装置。
【請求項11】
前記熱回収手段は、大気を前記熱交換部へと導くための前記熱風ダクトの他端を覆ってこの大気中に含まれる塵埃を捕捉するフィルタをさらに具えたことを特徴とする請求項7から請求項10の何れかに記載の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208261(P2009−208261A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51239(P2008−51239)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】