説明

導体部の短絡防止構造

【課題】溶接の際に発生する溶接スパッタによる導体部の短絡を防止することができる導体部の短絡防止構造を提供する。
【解決手段】モールド本体3には、複数の導体2の一部分を露出させるとともに、複数の導体2の露出部分と溶接される複数の接続導体4aを有する搭載部品4の少なくとも一部を収容するための部品収容部3aが形成されている。溶接の際に飛散する溶接スパッタを落下させる開口部3cが部品収容部3aに貫通して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接する際に発生する溶接スパッタによる導体部の短絡を防止するための導体部の短絡防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体圧力センサのモールドパッケージにおいては、インサート成形により外装樹脂ケースに一体に埋め込み固定された複数のターミナルと、外装樹脂ケース内に接着剤を介して固定された圧力センサセルの複数のリード端子とが重なり合った箇所をレーザ溶接などにより電気的に接続する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−315188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターミナルとリード端子とが重なり合った箇所をレーザ溶接などによって溶接すると、溶融したターミナルやリード端子の一部が溶接スパッタとなって溶接部周辺に飛散する。この溶接スパッタが隣接するターミナル間や隣接するリード端子間に跨って付着すると、隣接するターミナル間や隣接するリード端子間で短絡してしまうので、ターミナルやリード端子のピッチ間隔を溶接スパッタの大きさ以上の寸法に設定する必要がある。
【0005】
しかしながら、この溶接スパッタが、隣接するターミナル間の隙間や隣接するリード端子間の隙間から外装樹脂ケース内に入り込むことで外装樹脂ケースの底面に次第に溜まると、隣接するターミナル間や隣接するリード端子間が、溜まった溶接スパッタで短絡する可能性がある。上記特許文献1記載の従来の半導体圧力センサには、溶接スパッタによるターミナルや端子の短絡を防止する対策については講じられていない。
【0006】
本発明の目的は、溶接の際に発生する溶接スパッタによる導体部の短絡を防止することができる導体部の短絡防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、複数の導体を有するモールド本体に形成され、前記複数の導体の一部分を露出させるとともに、前記複数の導体の露出部分と溶接される複数の接続導体を有する搭載部品の少なくとも一部を収容するための部品収容部を備えており、前記部品収容部には、溶接の際に飛散する溶接スパッタを落下させる開口部が貫通して形成されていることを特徴とする導体部の短絡防止構造にある。
【0008】
[2]上記[1]記載の前記部品収容部を形成する側壁部には、前記複数の導体が前記開口部にわたって連続して形成されていることが好適である。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]記載の前記開口部は、前記部品収容部と同一の形状に貫通して形成されていることが好適である。
【0010】
[4]上記[1]又は[2]記載の前記開口部は、前記モールド本体の前記複数の導体の露出部分と対応する以外の前記部品収容部に貫通して形成されていることが好適である。
【0011】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の前記開口部は、前記部品収容部の成形と同時に貫通して形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接の際に発生する溶接スパッタによる導体部の短絡を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモールドパッケージの一例を示す部分断面分解斜視図である。
【図2】搭載部品の溶接後における図1のII−II線の矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III線の矢視断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るモールドパッケージの一例を示す部分断面分解斜視図である。
【図5】搭載部品の溶接後における図4のV−V線の矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線の矢視断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るモールドパッケージの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、添付図面においては、導体部の短絡防止構造を説明し易くするため、各部材の縦横比等を誇張して示している。
【0015】
(モールドパッケージの構成)
図1において、全体を示す符号1は、この第1の実施の形態に係る典型的なモールドパッケージを例示している。このモールドパッケージ1は、導体である2本のリードフレーム2,2の長手方向両側部をモールド樹脂によってモールドした矩形枠状のモールド本体3を備えている。このモールド本体3は、モールド樹脂によって4つの側壁部に囲まれた矩形枠部に形成されている。
【0016】
ここで、導体とは、電気信号又は電力を伝える導電性の部材であり、例えば基板上の配線、端子や電極などを含む。モールド樹脂としては、例えば絶縁性及び耐湿性に優れるポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等が用いられる。
【0017】
このリードフレーム2は、図1に示すように、導電性金属板を打ち抜いて形成された細長い板材からなる。2本のリードフレーム2,2は、同一面上に並列に配されている。リードフレーム2のインナーリード2aは、モールド本体3の枠部開口に沿って連続的に配されるとともに、モールド本体3の2つの対向側壁部に埋め込まれている。リードフレーム2のアウターリード2bは、モールド本体3の2つの対向側壁部の外面から延出されている。
【0018】
このモールド本体3の矩形枠部内には、図1に示すように、2本のインナーリード2a,2aの露出面上に電子部品4を搭載収容する部品収容部3aが形成されている。この部品収容部3aは、図示例に限定されるものではないが、上面が開放されたリードフレーム方向に長い長方形状を有しており、電子部品4を収容するのに必要な深さに設定されている。
【0019】
一方、電子部品4のインナーリード2aと対応する箇所には、図1に示すように、クランク形状に折曲された導体である端子4aが形成されている。この電子部品4の一例としては、例えば車室内の湿度を検出する湿度センサが挙げられる。この湿度センサは2つの端子4a,4aを備えている。この端子4aの材質としては、例えばアルミニウムや銅等の導電性を有する金属材料などが用いられる。端子4aの表面には、例えば錫、ニッケル、金や銀等の金属材料によりメッキ処理が施されてもよい。
【0020】
このモールドパッケージ1は、図1及び図2に示すように、電子部品4の端子4aとリードフレーム2のインナーリード2aとが重なり合った溶接部位5をレーザ溶接により接合した状態で、電子部品4がモールド本体3の部品収容部3a内に収容される。これにより、電子部品4とリードフレーム2とが電気的に接続される。
【0021】
この端子4aとインナーリード2aとをレーザ溶接した後、モールド本体3の内部には図示しない非導電性材料からなる熱硬化性樹脂材料からなる封止剤が充填されることで、電子部品4は封止剤によりモールド本体3内に封止されてもよい。なお、封止剤に代えて、図示しない蓋体によりモールド本体3の部品収容部3aが閉塞される構成でも構わない。
【0022】
(導体部の短絡防止構造)
ところで、端子4aとインナーリード2aとが重なり合った溶接部位5をレーザ溶接により溶接すると、その溶接部位5から発生する溶接スパッタがモールド本体3の部品収容部3a内に飛散する。この溶接スパッタが、隣接する端子4a間やインナーリード2a間に跨って付着すると、端子4aやインナーリード2aが短絡してしまう。
【0023】
一方、レーザを照射した際の溶接スパッタが、モールド本体3の部品収容部3a内に飛散して入り込んで、その部品収容部3aの底面に残留すると、隣接する端子4a間やインナーリード部2a間が、溜まった溶接スパッタで短絡してしまう。
【0024】
そこで、この第1の実施の形態にあっては、図3に示すように、モールド本体3の部品収容部3aにおけるリードフレーム2の配置位置が所定のピッチ(間隔)Pに設定されることを1つの主要な構成としている。
【0025】
図示例によれば、部品収容部3aを形成する対向側壁部には、リードフレーム2のインナーリード2aが開口部3cに連続的に形成されている。そのインナーリード2aは、0.3mm以上のピッチPをもって同一面上に並列に配されている。溶接の際に発生する溶接スパッタの大きさとしては、直径が0.2mm〜0.8mm程度の範囲内であるのが一般的である。従って、インナーリード2aのピッチPは、溶接スパッタの大きさよりも大きく設定されている。
【0026】
この第1の実施の形態のもう一つの主要な構成は、モールド本体3の内部に溶接スパッタを落下させる落下空間を形成する貫通部3bが部品収容部3aに貫通して形成されていることにある。この貫通部3bの出口には、外部へ開口する開口部3cが形成されている。
【0027】
図示例によれば、部品収容部3a及び貫通部3bとは同一の形状及び同一の大きさを有しており、開口部3cは、貫通部3bの落下空間の周面に一致している。この貫通部3b及び開口部3cは、モールド樹脂によってリードフレーム2をモールドする際に、モールド本体3と同時に貫通して形成される。
【0028】
従って、レーザを照射した際の溶接スパッタが部品収容部3aの内部に飛散しても、溶接スパッタを貫通部3bの開口部3cから外部へ落下させることが可能となる。
【0029】
(第1の実施の形態の効果)
この第1の実施の形態に係る導体部の短絡防止構造によれば、上記効果に加えて、以下の効果が得られる。
(1)溶接スパッタが部品収容部3aの内部に残留することを防止することができる。溶接スパッタの堆積により、インナーリード2aや端子4aには短絡が生じない。
(2)リードフレーム2に対して電子部品4を溶接により電気的に接続する構成となっているので、これらの熱膨張差は、はんだを用いて取り付ける場合と比べて小さくなる。その結果、電子部品4の耐熱性を向上させることができるようになり、熱膨張の差に起因する熱歪により、電子部品4が故障することを防止することができる。
(3)レーザ溶接を用いて、重なり合う導体部を電気的に接続する構成となっており、欧州のRoHS指令により指定された鉛等の有害物質が含まれないので、製品の使用を制限されることはない。
【0030】
[第2の実施の形態]
図4〜図6を参照すると、図4〜図6には第2の実施の形態における導体部の短絡防止構造の要部が例示されている。なお、これらの図において上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。従って、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0031】
この第2の実施の形態において上記第1の実施の形態と異なるところは、溶接スパッタ落下用の貫通部3bと開口部3cとを、部品収容部3aの内部に延在するインナーリード2aと対応する部位以外の部品収容部3aに貫通形成した点にある。
【0032】
図4〜図6において、モールド本体3の内部に連続的に配されたインナーリード2aと対応する部位には底壁3dが形成されている。図示例では、この底壁3dは、2本のインナーリード2a,2aのそれぞれと対応する部位にあって、モールド本体3の対向側壁部にわたって連続的に配されている。この底壁3dの存在により、モールド本体3の内部に溶接スパッタを落下させるための落下空間が3つに区画されている。
【0033】
インナーリード2aと対応する部位以外の部品収容部3aの内部には、図4〜図6に示すように、3つに区画された貫通部3bが設けられており、その貫通部3bの出口が開口部3cを介して開放されている。この貫通部3bと開口部3cとは、モールド樹脂によってリードフレーム2の長手方向両側部をモールドする際に、モールド本体3と同時に貫通形成される。
【0034】
(第2の実施の形態の効果)
この第2の実施の形態にあっても、上記第1の実施の形態と同様に、溶接スパッタがモールド本体3の部品収容部3a内に飛散し、端子4aやインナーリード2aと接触して短絡したり、あるいは溶接スパッタが部品収容部3aの底面に堆積することで短絡したりすることを確実に防止することができる。
【0035】
[第3の実施の形態]
図7を参照すると、同図には第3の実施の形態における導体部の短絡防止構造の要部が例示されている。この導体部の短絡防止構造においては、電子部品4の少なくとも一部をモールド本体3の部品収容部3aの内部に収容した点が上記第1及び第2の実施の形態とは異なっている。なお、同図において上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付しており、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0036】
モールド本体3の部品収容部3aは、図7に示すように、電子部品4の端子4aを収容するための導体収容部として形成されている。その導体収容部内には、クランク状に折曲形成された端子4aの先端部分が収容されている。図示例によると、端子4aとインナーリード2aとが重なり合った溶接部位5をレーザ溶接により接合した状態で、電子部品4の一部がモールド本体3の上面から浮いた状態で配されている。
【0037】
この端子4aが、導体収容部として形成された部品収容部3a内にインナーリード2aと溶接可能に収容される構成となっているならば、部品収容部3aの形状、大きさや深さなどについては、特に制限されるものではない。なお、モールド本体3の貫通部3bと開口部3cとは、上記第2の実施の形態と同様に、部品収容部3a内に延在するインナーリード2aと対応する部位以外の部品収容部3aに貫通形成した構成であってもよいことは勿論である。
【0038】
(第3の実施の形態の効果)
この第3の実施の形態にあっても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。それに加えて、モールド本体3の部品収容部3aが、電子部品4の少なくとも端子4aを収容するための導体収容部として形成された構成であっても、本発明の導体部の短絡防止構造を適用することができる。
【0039】
[変形例]
本発明における導体部の短絡防止構造の代表的な構成例を上記実施の形態、及び図示例を挙げて説明したが、上記実施の形態、及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本発明の技術思想の範囲内において種々の構成が可能であり、次に示すような変形例も可能である。
【0040】
(1)上記実施の形態、及び図示例では、2本のリードフレーム2を備えており、単一の電子部品4を収容可能なモールドパッケージ1として例示したが、これに限定されるものではないことは勿論である。本発明に係る導体部の短絡防止構造によれば、搭載する電子部品4の種類に応じて、電子部品4の収容個数やリードフレーム2の本数などは任意に変更可能である。モールドパッケージ1としては、例えばSOPタイプ、QFPタイプやQFJタイプ等の各種のパッケージ形態であってもよい。
(2)上記実施の形態、及び図示例では、1本のリードフレーム2のインナーリード2aを同一線上に連続的に配していたが、これに限定されるものではなく、例えば電子部品4の種類に応じてインナーリード2aを同一線上に対向配置することで1本のリードフレーム2を2つに分離してもよい。搭載する電子部品4の機能に応じて相手方のリードフレーム2の本数、配置位置や配置形状などを適宜に選択すればよく、特に限定されるものではない。
(3)上記実施の形態、及び図示例では、電子部品4として湿度センサを例示したが、これに限定されるものではなく、様々なセンサ素子に適用可能であることは勿論である。電子部品4の使用目的に応じて、例えばチップトランジスタ、チップダイオード、チップ抵抗、チップコンデンサ、コネクタや回路基板等の各種の搭載部品にも適用可能である。
(4)上記第3の実施の形態では、モールド本体3の上面に電子部品4を横に配置した状態を例示したが、例えばモールド本体3の上面あるいは部品収容部(導体収容部)3aの上側に電子部品4を縦に配置してもよく、電子部品4の配置位置は任意に変更可能である。端子4aの形状にあっても、電子部品4の配置位置に応じて任意に変更可能であり、例えばL字状に折曲形成された端子であっても構わない。従って、溶接方法により実装することが可能なものであれば、搭載部品や実装基板などの各種の導体部接続構造にも適用可能であり、これらの材質、形状、機能や構造などは特に限定されるものではない。
(5)上記導体部の短絡防止構造は、レーザ溶接以外に、アーク溶接又は抵抗溶接など各種の溶接方法にも適用可能である。
【0041】
以上の説明からも明らかなように、上記実施の形態、変形例、及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが本発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0042】
1…モールドパッケージ、2…リードフレーム、2a…インナーリード、2b…アウターリード、3…モールド本体、3a…部品収容部、3b…貫通部、3c…開口部、3d…底壁、4…電子部品、4a…端子、5…溶接部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体を有するモールド本体に形成され、前記複数の導体の一部分を露出させるとともに、前記複数の導体の露出部分と溶接される複数の接続導体を有する搭載部品の少なくとも一部を収容するための部品収容部を備えており、
前記部品収容部には、溶接の際に飛散する溶接スパッタを落下させる開口部が貫通して形成されていることを特徴とする導体部の短絡防止構造。
【請求項2】
前記部品収容部を形成する側壁部には、前記複数の導体が前記開口部にわたって連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載の導体部の短絡防止構造。
【請求項3】
前記開口部は、前記部品収容部と同一の形状に貫通して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の導体部の短絡防止構造。
【請求項4】
前記開口部は、前記モールド本体の前記複数の導体の露出部分と対応する以外の前記部品収容部に貫通して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の導体部の短絡防止構造。
【請求項5】
前記開口部は、前記部品収容部の成形と同時に貫通して形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導体部の短絡防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−27897(P2013−27897A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165057(P2011−165057)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】