説明

導電体およびプリント配線板並びにそれらの製造方法

【課題】粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で接合を実現する導電体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1導電材21aおよび第2導電材24aの間に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストを充填する。錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で導体ペーストを加熱し、第1導電材21aから第2導電材24aまで連なる複数の銅錫系金属間化合物相31を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体およびその製造方法、並びに、プリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末は知られる。銅の過飽和固溶にあたってアトマイズ法やメルトスパン法といった急冷プロセスが用いられる。こういった錫粒子の粉末は摂氏230度付近で溶融する。凝固にあたって本来の成分比で錫相および銅錫合金相が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178909号公報
【特許文献2】特開2002−94242号公報
【特許文献3】特開2004−234900号公報
【特許文献4】特開2001−18090号公報
【特許文献5】特開2003−273517号公報
【特許文献6】特許第2603053号公報
【特許文献7】特許第3034238号公報
【特許文献8】特許第3187373号公報
【特許文献9】特許第3634984号公報
【特許文献10】特開2002−256303公報
【特許文献11】特開2005−340687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆるはんだ材として前述の錫粒子の粉末の利用が模索される。しかしながら、プリント配線板やパッケージ基板の絶縁材料は一般に摂氏150度〜摂氏180度付近にガラス転移温度を有する。ガラス転移温度よりも高い温度に融点を有するはんだ材が使用されると、プリント配線板やパッケージ基板は、ガラス転移温度を超える温度に長時間にわたって曝される。こういった温度の印加が回避されれば、製品の信頼性は向上することができる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で接合を実現する導電体の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で接合を実現するプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で溶融する導体ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、導電体の一具体例は、第1導電材と、第2導電材と、前記第2導電材に電気的に前記第1導電材を接合する接合材とを備える。前記接合材は、前記第1導電材から前記第2導電材まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相、および、前記銅錫系金属間化合物相に囲まれる錫ビスマス相を含む金属組織から形成される。
【0007】
一具体例に係る導電体の製造方法は、第1導電材および第2導電材の間に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストを充填する工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電材から前記第2導電材まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備える。
【0008】
その他、プリント配線板の一具体例は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層と、前記第1導電層に裏面で重ね合わせられて、裏面から表面まで突き抜けて部分的に前記第1導電層の表面に接する空間を形成する貫通孔を有する中間絶縁層と、前記中間絶縁層に重ね合わせられて、前記空間に部分的に接する第2導電層と、前記第2導電層に重ね合わせられる第2絶縁層と、前記空間を満たし、前記第2導電層に電気的に前記第1導電層を接合する接合材とを備える。前記接合材は、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる銅錫系金属間化合物相、および、前記銅錫系金属間化合物相に囲まれる錫ビスマス相を含む金属組織から形成される。
【0009】
一具体例に係るプリント配線板の製造方法は、第1絶縁層の表面に重ね合わせられる第2絶縁層に、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層の表面から立ち上がって前記第2絶縁層の表面で開放され、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストで充填される空間を形成する工程と、前記第2絶縁層の表面に第3絶縁層の表面を重ね合わせ、前記第3絶縁層の表面に形成される第2導電層で前記空間の開放端を塞ぐ工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備える。
【0010】
導体ペーストは、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含み、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で加熱されると、少なくとも所定の方向に連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で接合を実現する導電体の製造方法は提供される。同様に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で接合を実現するプリント配線板の製造方法は提供される。同様に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末を利用しつつ比較的に低い温度で溶融する導体ペーストは提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るプリント基板ユニットの構成を概略的に示す垂直断面図である。
【図2】接合材の拡大断面図である。
【図3】プリント配線板の製造にあたって使用される絶縁樹脂シートを概略的に示す垂直断面図である。
【図4】第1配線基板、および、第1配線基板に重ね合わせられる絶縁樹脂シートを概略的に示す垂直断面図である。
【図5】第1配線基板上で絶縁樹脂シートに貫通孔を穿つ工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図6】貫通孔に導体ペーストを充填する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図7】絶縁樹脂シートの表面からPETフィルムを剥離する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図8】第1配線基板上の絶縁樹脂シートに第2配線基板を重ね合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図9】第1配線基板に第2配線基板を張り合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図10】銅錫の平衡状態図である。
【図11】粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図12】急冷されずに製造された錫粒子の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図14】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図15】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図16】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図17】錫ビスマスの平衡状態図である。
【図18】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図19】錫ビスマスの共晶の残存率を示すグラフである。
【図20】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図21】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図22】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図23】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図24】示差熱量分析の結果を示すグラフである。
【図25】絶縁樹脂シートに貫通孔を形成する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図26】第2配線基板の表面に導体ペーストを盛る工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図27】第1配線基板に第2配線基板を重ね合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図28】金属箔に貼り付けられた絶縁樹脂シートを概略的に示す垂直断面図である。
【図29】金属箔を維持しつつ絶縁樹脂シートに貫通孔を形成する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図30】貫通孔に導体ペーストを充填する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図31】第1配線基板に、貫通孔に導体ペーストを保持する絶縁樹脂シートを重ね合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図32】第2配線基板の表面で導体ペーストを固化する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図33】第1配線基板に第2配線基板を重ね合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図34】第2実施形態に係るプリント基板ユニットの構成を概略的に示す垂直断面図である。
【図35】プリント配線板の製造にあたって使用される絶縁樹脂シートを概略的に示す垂直断面図である。
【図36】絶縁樹脂シートに貫通孔および開口を穿つ工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図37】第1配線基板に絶縁樹脂シートを重ね合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図38】第2配線基板上に導体ペーストを供給する工程を概略的に示す垂直断面図である。
【図39】第2配線基板に第1配線基板を重ね合わせる工程を概略的に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は第1実施形態に係るプリント基板ユニットを概略的に示す。このプリント基板ユニット11はプリント配線板12を備える。プリント配線板12には電子部品としてのLSI(大規模集積回路)チップ13が実装される。実装にあたってプリント配線板12の表面には複数の導電ランド14が露出する。個々の導電ランド14ははんだボール15を受け止める。個々のはんだボール15は対応の導電ランド14に金属拡散に基づき固着される。個々のはんだボール15はLSIチップ13の導電端子すなわち導電パッド16を受け止める。個々のはんだボール15は対応の導電パッド16に金属拡散に基づき固着される。個々の導電ランド14と対応の導電パッド16との間で電気信号はやり取りされる。
【0015】
プリント配線板12は第1絶縁層18および第2絶縁層19を備える。第1および第2絶縁層18、19は絶縁性を有する。第1および第2絶縁層18、19は例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂から形成される。第1および第2絶縁層18、19には例えばガラス繊維クロスが埋め込まれる。ガラス繊維クロスの繊維は第1および第2絶縁層18、19の表面に沿って延びる。第1および第2絶縁層18、19の形成にあたってガラス繊維クロスには樹脂が含浸される。ガラス繊維クロスはガラス繊維糸の織布および不織布のいずれかから形成される。
【0016】
第1絶縁層18の表面には第1導電層21が形成される。第1導電層21は1以上の導電ランド21aおよび配線パターン21bを備える。導電ランド21aおよび配線パターン21bは例えば銅といった導電材料から形成される。ただし、導電ランド21aの表面には、金めっき膜などの貴金属めっき膜やニッケルめっき膜、それらの複合めっき膜が形成されてもよい。例えば導電ランド21a同士は配線パターン21bで接続される。配線パターン21bの働きで様々な信号経路が確立される。
【0017】
第1導電層21の表面には中間絶縁層22が重ね合わせられる。中間絶縁層22は絶縁性を有する。中間絶縁層22は例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂から形成される。中間絶縁層22の裏面は第1絶縁層18の表面に密着する。中間絶縁層22は第1導電層21に覆い被さる。中間絶縁層22には、裏面から表面まで突き抜ける1以上の貫通孔23が形成される。個々の貫通孔23は、対応の導電ランド21aに接する空間を区画する。空間は、例えば、導電ランド21aの表面に直交する中心軸を有する円柱形に形成される。その他、中間絶縁層22は例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂といった熱可塑性樹脂から形成されてもよい。
【0018】
中間絶縁層22の表面には第2導電層24が重ね合わせられる。第2導電層24には第2絶縁層19が重ね合わせられる。第2絶縁層19の裏面に第2導電層24の表面は密着する。同時に、第2絶縁層19の裏面は中間絶縁層22の表面に密着する。第2導電層24は1以上の導電ランド24aおよび配線パターン24bを備える。導電ランド24aおよび配線パターン24bは例えば銅といった導電材料から形成される。ただし、導電ランド24aの表面には、金めっき膜などの貴金属めっき膜やニッケルめっき膜、それらの複合めっき膜が形成されてもよい。例えば導電ランド24a同士は配線パターン24bで接続される。配線パターン24bの働きで様々な信号経路が確立される。
【0019】
第2導電層24の導電ランド24aは貫通孔23の空間に接する。円柱形の空間の中心軸は導電ランド24aの表面に直交する。空間は導電性の接合材25で満たされる。その結果、接合材25は第2導電層24の導電ランド24aに電気的に第1導電層21の対応の導電ランド21aを接合する。いわゆるビアが形成される。電気的接続は確立される。導電ランド21a、24a同士の間で電気信号のやり取りは実現される。こうしてプリント配線板12上には様々な信号経路が確立される。こうしたプリント配線板12の働きでLSIチップ13は他の電子部品との間で電気信号をやり取りすることができる。
【0020】
図2は接合材25の拡大断面を示す。接合材25は複数の銅錫系金属間化合物相31を含む金属組織から形成される。個々の銅錫系金属間化合物相31はCuSnで構成される。隣接する銅錫系金属間化合物相31同士は相互に密着する。銅錫系金属間化合物相31は第1導電層21の導電ランド21aから第2導電層24の導電ランド24aまで連なる。こうして連なる銅錫系金属間化合物相31は導電性の電流路を提供する。
【0021】
導電ランド21a、24aの表面には拡散層32が形成される。拡散層32はCuSnで形成される。拡散層32の確立にあたって接合材25中の錫は導電ランド21a、24a内に拡散する。拡散層32の働きで銅錫系金属間化合物相31は導電ランド21a、24aに固着される。その結果、複数の銅錫系金属間化合物相31は導電ランド21aおよび導電ランド24aの間で信号経路を確立する。
【0022】
接合材25は錫ビスマス材33およびマトリクス樹脂材34をさらに含む。錫ビスマス材33は錫ビスマスの二元合金から形成される。マトリクス樹脂材34は例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂材から形成される。錫ビスマス材33は、錫ビスマスに固有の共晶温度に関連する温度(すなわち摂氏139度付近)以下で接合材25の溶融反応を回避する割合で接合材25中に含まれる。その結果、錫ビスマス材33は銅錫系金属間化合物相31同士の間や銅錫系金属間化合物相31および導電ランド21a、24aの間に部分的に存在する。こうして錫ビスマス材33は銅錫系金属間化合物相31で大きく分断されることから、錫ビスマス材33の溶融反応は銅錫系金属間化合物相31同士の隙間に閉じ込められる。その結果、錫ビスマスに固有の共晶温度に関連する温度以下で接合材25の溶融反応は回避される。接合材25の融点はCuSnの融点すなわち摂氏415度程度まで高められる。接合材25の溶融は比較的に高い温度まで回避されることができる。接合材25は比較的に高い温度まで固相状態を維持することができる。こうして接合材25の耐熱性は高められる。LSIチップ13の交換などに起因してプリント配線板12に加熱処理が繰り返されても、接合材25の導通状態は確実に良好に維持されることができる。マトリクス樹脂材34は同様に銅錫系金属間化合物相31同士の間や銅錫系金属間化合物相31および導電ランド21a、24aの間に部分的に存在する。
【0023】
次に第1具体例に従ってプリント配線板12の製造方法を詳述する。まず、図3に示されるように、絶縁樹脂シート35が用意される。絶縁樹脂シート35は例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂から形成される。その他、絶縁樹脂シート35は例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂といった熱可塑性樹脂から形成されてもよい。絶縁樹脂シート35には一般のプリプレグが利用されればよい。絶縁樹脂シート35の両面にはPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルム36a、36bが貼り付けられる。
【0024】
図4に示されるように、第1配線基板37が用意される。第1配線基板37は絶縁層38および導電層39を備える。絶縁層38は前述の第1絶縁層18に相当する。導電層39は前述の第1導電層21に相当する。導電層39は絶縁層38の表面に形成される。導電層39の形成にあたって絶縁層38の表面には例えば銅箔が張り合わせられる。例えばフォトリソグラフィ技術に基づき銅箔から導電ランド21aおよび配線パターン21bは作り出される。
【0025】
第1配線基板37の表面には絶縁樹脂シート35が重ね合わせられる。重ね合わせにあたって絶縁樹脂シート35の裏面からPETフィルム36bは剥がされる。絶縁樹脂シート35の裏面は第1配線基板37の表面に受け止められる。絶縁樹脂シート35の裏面は絶縁層38の表面に密着する。絶縁樹脂シート35は導電ランド21aおよび配線パターン21bに覆い被さる。
【0026】
図5に示されるように、絶縁樹脂シート35には対応の導電ランド21aごとに貫通孔41が穿たれる。貫通孔41は絶縁樹脂シート35を貫通する。貫通孔41は導電ランド21aの表面から立ち上がる空間を規定する。貫通孔41は絶縁樹脂シート35の表面で開放される。貫通孔41は同時にPETフィルム36aを貫通する。貫通孔41の形成にあたって例えば炭酸ガス(COガス)レーザーが利用される。絶縁樹脂シート35およびPETフィルム36aの熱昇華に応じて貫通孔41は形成される。貫通孔41は円柱空間(または逆円錐台空間)を規定する。円柱空間(または逆円錐台空間)の軸心は導電ランド21aの中心で導電ランド21aの表面に直交する。少なくとも貫通孔41の下端の直径は導電ランド21aの直径よりも小さく設定される。その結果、貫通孔41の形成にあたって絶縁層38の損傷は確実に回避されることができる。貫通孔41の形成後、貫通孔41内で導電ランド21aの表面にはプラズマ処理が施されてもよい。こういったプラズマ処理によれば、貫通孔41の形成時に導電ランド21aの界面に残存する樹脂の残渣は除去されることができる。
【0027】
図6に示されるように、貫通孔41の空間には導体ペースト42が充填される。導体ペースト42はPETフィルム36aの表面に印刷される。印刷にあたってPETフィルム36aはステンシル板として機能することができる。PETフィルム36aに代えてメタルマスクがステンシル板に利用されてもよい。この場合には、メタルマスクに貫通孔41に合わせて開口が形成されればよい。こういったメタルマスクによれば、個々の貫通孔41ごとに導体ペースト42の供給量は増やされることができる。その他、導体ペースト42の供給にあたってディスペンサーが利用されてもよい。導体ペースト42の供給方法はこれらに限定されるものではない。
【0028】
導体ペースト42は、錫粒子の粉末、錫ビスマス粉末および樹脂製バインダーを含む。個々の錫粒子中には銅が過飽和固溶する。樹脂製バインダーは例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂材から形成される。導体ペースト42の融点は例えば摂氏170度程度以下に設定される。その他、導体ペースト42の詳細は後述される。
【0029】
その後、図7に示されるように、絶縁樹脂シート35の表面からPETフィルム36aが剥離される。その結果、絶縁樹脂シート35の表面は露出する。このとき、PETフィルム36a内で貫通孔41に充填された導体ペースト42はそのまま残存する。導体ペースト42は、PETフィルム36aの厚みに相当する高さで貫通孔41の開放端から盛り上がる。こういった盛り上がりの確立にあたって導体ペースト42の粘度やチクソトロピック性、貫通孔41の直径は適正化される。開放端の高さはPETフィルム36aの厚みで調整されることができる。
【0030】
導体ペースト42の充填後、図8に示されるように、第1配線基板37には第2配線基板43が重ね合わせられる。第2配線基板43は絶縁層44および導電層45を備える。絶縁層44は前述の第2絶縁層19に相当する。導電層45は前述の第2導電層24に相当する。導電層45は絶縁層44の表面に形成される。導電層45の形成にあたって絶縁層44の表面には例えば銅箔が張り合わせられる。例えばフォトリソグラフィ技術に基づき銅箔から導電ランド24aおよび配線パターン24bは作り出される。第2配線基板43は、裏返された後に第1配線基板37の表面に受け止められる。
【0031】
図9に示されるように、第2配線基板43の表面は絶縁樹脂シート35の表面に重ね合わせられる。絶縁層44の表面は絶縁樹脂シート35の表面に密着する。貫通孔41の開放端は対応の導電ランド24aで塞がれる。このとき、導体ペースト42は前述のように貫通孔41の開放端から盛り上がることから、第1配線基板37に向かって第2配線基板43が押し付けられると、貫通孔41内の空間は確実に導体ペースト42で満たされることができる。導電ランド24aは確実に導体ペースト42に接触することができる。
【0032】
押し付けすなわち加圧が維持されたまま第1および第2配線基板37、43には加熱処理が施される。加熱処理は真空中で実施される。例えば加熱温度は摂氏170度程度に設定される。絶縁樹脂シート35は軟化する。加圧に応じて絶縁樹脂シート35は第1配線基板37の表面の凹凸および第2配線基板43の表面の凹凸に倣う。こうして導電ランド21a、24aおよび配線パターン21b、24bの出っ張り並びに絶縁層38、44そのものの凹凸は吸収される。第1配線基板37の表面と絶縁樹脂シート35との間で隙間は完全に排除される。両者は密着する。同様に、第2配線基板43の表面と絶縁樹脂シート35との間で隙間は完全に排除される。両者は密着する。
【0033】
続いて温度が錫ビスマス合金の共晶温度を超えると、導体ペースト42中で錫ビスマス粉末は溶融する。錫ビスマス粉末の溶融は錫粒子の溶融を誘引する。錫および銅は一体化する。錫および銅は平衡状態図の相比率に従って銅錫系金属間化合物すなわちCuSnを形成する。錫は導電ランド21a、24aに拡散する。導電ランド21a、24aには銅錫系金属間化合物すなわちCuSnの拡散層32が形成される。前述のように加熱と同時に加圧されることから、一部に残留する錫ビスマスの液体は低圧の周辺部に押し出される。その結果、貫通孔41内は銅錫系金属間化合物相31の金属組織で占められる。こうして導体ペースト42は接合材25を提供する。
【0034】
その後、絶縁樹脂シート35および導体ペースト42中の樹脂製バインダーは硬化する。絶縁樹脂シート35は中間絶縁層22に相当する。樹脂製バインダーはマトリクス樹脂材34に相当する。冷却後に固化した錫ビスマスは錫ビスマス材33に相当する。貫通孔41はビアとして機能する。
【0035】
ここで、導体ペースト42の製造方法を詳述する。最初に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末が製造される。粉末の製造にあたって急冷プロセスのガスアトマイズ法が用いられる。ガスアトマイズ法の実施にあたって試料が調製される。試料では試料全体に対して75重量%の錫および25重量%の銅が配合される。製造された合金粉末から10μm以下の粒子が分級される。こういった急冷プロセスの採用によれば、本来ならCuSnの金属間化合物を生成するはずの銅が錫中に強制的に過飽和固溶する。金属間化合物の量は錫および銅の比率から算出される理論値よりも大幅に減少する。その結果、図10(銅錫の平衡状態図)に示されるように、錫粒子すなわち銅錫合金の融点は摂氏227度に設定されることができる。
【0036】
本発明者は、前述のように急冷プロセスで製造された錫粒子の断面構造を観察した。観察にあたって電子顕微鏡が用いられた。図11に示されるように、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子47では銅錫(合金)相中にサブミクロンに微細化したCuSnの金属間化合物が島状に散在することが確認された。図中、錫粒子47中で白色部分(薄色)は銅錫相に相当する。白色部分上に散在する濃い色部分は金属間化合物に相当する。図12に示されるように、急冷されずに製造された錫粒子48では錫相中にCuSnの金属間化合物の塊が連続することが確認された。図中、錫粒子48中で白色部分(薄色)は錫相に相当する。白色部分上に散在する濃い色部分は金属間化合物に相当する。
【0037】
本発明者は、前述のように急冷プロセスで製造された錫粒子の融点を観察した。示差走査熱量分析(DSC分析)が実施された。最初に本発明者はガスアトマイズ法の実施にあたって85重量%の錫および15重量%の銅の配合に基づき試料を調製した。図13に示されるように、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子は摂氏228.7度で吸熱反応のピークを示した。摂氏227度付近で溶融反応が確認された。同様に、本発明者はガスアトマイズ法の実施にあたって75重量%の錫および25重量%の銅の配合に基づき試料を調製した。図14に示されるように、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子は摂氏228.7度で吸熱反応のピークを示した。摂氏227度付近で溶融反応が確認された。同様に、本発明者はガスアトマイズ法の実施にあたって68重量%の錫および32重量%の銅の配合に基づき試料を調製した。図15に示されるように、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子は摂氏227.4度で吸熱反応のピークを示した。摂氏227度付近で溶融反応が確認された。同様に、本発明者はガスアトマイズ法の実施にあたって40重量%の錫および60重量%の銅の配合に基づき試料を調製した。図16に示されるように、吸熱反応は確認されなかった。摂氏170度付近で発熱反応が確認された。銅錫合金の結晶化が確認された。前述の導体ペースト42では、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末は、摂氏227度に銅錫の共晶温度を設定する割合で錫成分および銅成分を含むことが望まれる。銅成分の比率の上昇に応じて銅錫の共晶温度が摂氏227度よりも上昇すると、導体ペースト42の融点の上昇を招いてしまう。こういった融点の上昇は好ましくない。
【0038】
導体ペースト42の製造にあたって前述の錫粒子の粉末には錫ビスマス粉末が配合される。配合にあたって錫ビスマス粉末が製造される。錫ビスマス粉末は錫ビスマスの共晶合金から形成される。すなわち、錫ビスマス粉末では42重量%の錫および58重量%のビスマスの組成比で合金が確立される。製造された錫ビスマス粉末から10μm以下の粒子が分級される。こうした錫ビスマス粉末の配合に基づき導体ペースト42の融点(液相線温度)は引き下げられる。導体ペースト42は絶縁層38、絶縁樹脂シート35および絶縁層44の耐熱温度すなわちガラス転移温度未満で溶融することが望まれる。したがって、錫ビスマス粉末の融点は絶縁層38、絶縁樹脂シート35および絶縁層44のガラス転移温度未満の温度に設定される。こういった融点の設定にあたって、例えば図17(錫ビスマスの平衡状態図)から明らかなように、錫成分およびビスマス成分の組成比は調整される。例えば絶縁層38、44や絶縁樹脂シート35のガラス転移温度が摂氏170度であれば、錫ビスマス全体に対して30重量%〜70重量%の割合で錫は含まれればよい。
【0039】
銅錫系金属間化合物相の形成にあたって錫粒子の粉末および錫ビスマス粉末の配合割合は調整される。粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末で75重量%の錫および25重量%の銅の組成比が確立される際に、導体ペースト42では錫粒子の粉末および錫ビスマス粉末の総量に対して15重量%以下の割合で錫ビスマス粉末が配合される。こうした混合粉末は、錫ビスマス粉末の融点以上であって錫粒子の粉末の融点未満の温度で溶融する。すなわち、混合粉末の融点は絶縁層38、絶縁樹脂シート35および絶縁層44のガラス転移温度未満の温度に設定されることができる。しかも、混合粉末が溶融後に再び固化すると、錫ビスマスに固有の共晶温度に関連する温度(すなわち摂氏139度付近)以下で固化物の溶融反応は回避されることができる。ここで、図17から明らかなように、20重量%〜99重量%の範囲で錫ビスマスにビスマスが含まれると、錫ビスマスの固相線温度は錫ビスマスの共晶温度に一致する。
【0040】
本発明者は、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末と錫ビスマス粉末との混合粉末から形成される固化物で示差走査熱量分析を実施した。錫粒子の粉末では粉末全体に対して75重量%の錫および25重量%の銅の組成比が確立された。錫ビスマス粉末では粉末全体に対して42重量%の錫および58重量%のビスマスの組成比が確立された。混合粉末の溶融にあたって混合粉末には活性剤が加えられた。混合粉末は熱で溶融した。混合材料の再固化後、再び溶融した混合材料に示差走査熱量分析が実施された。試料1では混合粉末全体に対して70重量%の錫粒子の粉末および30重量%の錫ビスマス粉末が配合された。図18に示されるように、試料1に係る混合材料はで吸熱反応すなわち溶融反応が観察された。試料2では混合粉末全体に対して80重量%の錫粒子の粉末および20重量%の錫ビスマス粉末が配合された。図18に示されるように、試料2に係る混合材料はで僅かながら吸熱反応すなわち溶融反応が観察された。ただし、吸熱反応は試料1に比べて著しく弱められた。試料3では混合粉末全体に対して90重量%の錫粒子の粉末および10重量%の錫ビスマス粉末が配合された。図18に示されるように、試料3に係る混合材料ではで吸熱反応は消失した。すなわち、試料3に係る混合材料では錫ビスマスに固有の共晶温度に関連する温度以下で混合材料の溶融反応は回避された。
【0041】
さらに、本発明者は混合材料で錫ビスマスの共晶の残存率を算出した。算出にあたって、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末と錫ビスマス粉末との混合粉末から固化物が形成された。前述と同様に、錫粒子の粉末では錫粒子全体に対して75重量%の錫および25重量%の銅の組成比が確立された。錫ビスマス粉末では粉末全体に対して42重量%の錫および58重量%のビスマスの組成比が確立された。混合粉末の溶融にあたって混合粉末には活性剤が加えられた。混合粉末は熱で溶融した。混合材料の再固化後、錫ビスマスの共晶の残存率が算出された。混合粉末に対して様々な割合で錫ビスマス粉末は配合された。その結果、図19に示されるように、錫ビスマス粉末の混合比率が15重量%を下回ると、錫ビスマスの共晶は消失することが確認された。言い換えれば、混合粉末中で錫ビスマス粉末の混合比率が15重量%未満に設定されると、固化後の混合材料ではで吸熱反応が消失することが容易く想像される。ここで、本発明者は、錫粉末中で銅成分の組成比が減少すると図19中の曲線は図中右側に移動することを確認した。すなわち、錫粉末中で銅成分の組成比が25重量%以下に設定されても、混合粉末中で錫ビスマス粉末の混合比率が15重量%未満に設定されると、固化後の混合材料ではで吸熱反応が確実に消失することが容易く想像される。
【0042】
その他、導体ペースト42の製造にあたって錫粒子の粉末および錫ビスマス粉末の混合粉末には粘性剤が混ぜ合わせられる。粘性剤は混合粉末をペースト化する。粘性剤には、例えば、100重量部のエポキシ樹脂(ビスフェノールA型およびビスフェノールF型)、73重量部の硬化剤すなわちメチルテトラヒドロ無水フタル酸、20重量部の有機酸すなわちアジピン酸、および、10.3重量部のチクソトロピック促進剤すなわちステアリン酸アミドで構成される。ここで、有機酸は活性剤として機能する。粘性剤は導体ペースト42全体の14.5重量%で加えられる。その他、粘性剤には特定の熱硬化性樹脂、硬化剤、有機酸および硬化触媒の組み合わせが用いられてもよい。この場合、熱硬化性樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂および不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。硬化剤には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸および無水ナジック酸といった酸無水物のほか、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンおよびジアミノジフェニルスルフォンといったアミン系硬化剤や、フェノールノボラック系、パラキシリレン変性フェノール系およびジシクロペンタジエン変性フェノール系といったフェノール系硬化剤が挙げられる。有機酸には、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、無水シトラコン酸、無水ヘキサン酸、無水グリコール酸、無水グルタル酸、こはく酸、セバシン酸、アジピン酸、L-グルタミン酸、グルタル酸、ステアリン酸、パルミチン酸およびアビエチン酸が挙げられる。硬化触媒には、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ジアザビシクロウンデンセン、ジアザビシクロウンデンセントルエンスルホン酸塩およびジアザビシクロウンデンセントルエンオクチル酸塩が挙げられる。なお、活性剤として加えられる有機酸のカルボン酸も硬化触媒として機能するものの、硬化触媒が併用される。
【0043】
さらに、発明者は酸無水物硬化剤の硬化反応を観察した。観察にあたって発明者はエポキシ樹脂系接着剤を用意した。エポキシ樹脂(7.4重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂および41.9重量%のビスフェノールF型エポキシ樹脂)、硬化剤(36.0重量%のメチルテトラヒドロ無水フタル酸)、活性剤(9.8重量%のアジピン酸)およびチクソトロピック促進剤(4.9重量%のステアリン酸アミド)が混ぜ合わせられた。反応触媒(例えばイミダゾールアミン系触媒)は混入されなかった。接着剤単独で示差走査熱量が測定された。測定にあたって昇温速度は1分あたり摂氏10度に設定された。図20に示されるように、摂氏230.6度で発熱のピークが観察された。摂氏230.6度の硬化反応温度が特定された。
【0044】
続いて発明者は以上のエポキシ樹脂系接着剤と錫粉末とを混ぜ合わせた。配合割合は接着剤15.5重量%および錫粉末84.5重量%に設定された。錫粉末の粒子径は38[μm]以下に設定された。反応触媒は混入されなかった。こうした混合物で示差走査熱量が測定された。測定にあたって昇温速度は1分あたり摂氏10度に設定された。図21に示されるように、摂氏134.0度で発熱のピークが認められた。摂氏134.0度で硬化反応温度が特定された。錫粉末の混合に応じて硬化反応温度の低下が認められた。
【0045】
続いて発明者は前述のエポキシ樹脂系接着剤と銅錫粉末とを混ぜ合わせた。配合割合は接着剤15.5重量%および銅錫粉末84.5重量%に設定された。銅錫粉末では25重量%の銅および75重量%の錫の組成比で合金が確立された。銅錫粉末の粒子径は10[μm]以下(平均粒径3.0[μm]程度)に設定された。反応触媒は混入されなかった。こうした混合物で示差走査熱量が測定された。測定にあたって昇温速度は1分あたり摂氏10度に設定された。図22に示されるように、摂氏131.8度で発熱のピークが認められた。摂氏131.8度で硬化反応温度が特定された。銅錫粉末の混合に応じて硬化反応温度の低下が認められた。
【0046】
続いて発明者は前述のエポキシ樹脂系接着剤と錫ビスマス粉末とを混ぜ合わせた。配合割合は接着剤15.5重量%および錫ビスマス粉末84.5重量%に設定された。錫ビスマス粉末では43重量%の錫および57重量%のビスマスの組成比で合金が確立された。錫ビスマス粉末の粒子径は10[μm]以下(平均粒径3.0[μm]程度)に設定された。反応触媒は混入されなかった。こうした混合物で示差走査熱量が測定された。測定にあたって昇温速度は1分あたり摂氏10度に設定された。図23に示されるように、摂氏131.1度で発熱のピークが認められた。摂氏131.1度で硬化反応温度が特定された。錫粉末の混合に応じて硬化反応温度の低下が認められた。
【0047】
続いて発明者は前述のエポキシ樹脂系接着剤と銀めっき銅粉末とを混ぜ合わせた。配合割合は接着剤15.5重量%および銀めっき銅粉末84.5重量%に設定された。銀めっき銅粉末では銅の粉末母材の表面は膜厚0.5[μm]程度のめっき膜で覆われた。銀めっき銅粉末の粒子径は10[μm]以下(平均粒径4.0[μm]程度)に設定された。こうした混合物で示差走査熱量が測定された。測定にあたって昇温速度は1分あたり摂氏10度に設定された。図24に示されるように、摂氏194.1度で発熱のピークが認められた。摂氏194.1度で硬化反応温度が特定された。錫粉末、銅錫粉末および錫ビスマス粉末ほどには硬化反応温度の低下は認められなかった。
【0048】
次に第2具体例に従ってプリント配線板12の製造方法を簡単に説明する。第1具体例と同様に絶縁樹脂シート35が用意される。絶縁樹脂シート35の両面にはPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルム36a、36bが貼り付けられる。図25に示されるように、絶縁樹脂シート35およびPETフィルム36a、36bには貫通孔51が穿たれる。貫通孔51の形成にあたって、前述と同様に、例えば炭酸ガス(COガス)レーザーが用いられればよい。貫通孔51の配置は第1配線基板37上の導電ランド21aの配置を反映する。その後、絶縁樹脂シート35は第1配線基板37の表面に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって絶縁樹脂シート35の裏面からPETフィルム36bは剥がされる。その結果、図5に示されるように、絶縁樹脂シート35の裏面は第1配線基板37の表面に受け止められる。絶縁樹脂シート35の裏面は絶縁層38の表面に密着する。絶縁樹脂シート35は導電ランド21aおよび配線パターン21bに覆い被さる。導電ランド21a上に貫通孔41が形成される。貫通孔41の空間は導電ランド21aに接する。その後、前述の第1具体例と同様に、貫通孔41が導体ペースト42で充填された後に、後続する処理は続行される。前述の第1具体例と均等な構成や構造には同一の符号が付される。
【0049】
次に第3具体例に従ってプリント配線板12の製造方法を簡単に説明する。この第3具体例では、前述と同様に、第1配線基板37の表面で導電ランド21a上に貫通孔41の空間が形成される。その後、図26に示されるように、第2配線基板43の表面に導体ペースト42が供給される。供給にあたって例えば印刷が利用されればよい。その他、導体ペースト42の供給にあたってディスペンサーが用いられてもよい。印刷にあたって例えばメタルマスクが第2配線基板43の表面に重ね合わせられる。メタルマスクには導電ランド24aに合わせて開口が形成される。こういったメタルマスクがステンシル板として機能する結果、導体ペースト42は導電ランド24a上に盛られる。導電ランド24aの表面から直交する方向に測定される導体ペースト42の高さはメタルマスクの厚みに基づき設定されることができる。その後、第2配線基板43は第1配線基板37に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって、図27に示されるように、第2配線基板43は裏返される。第2配線基板43の表面は絶縁樹脂シート35の表面に重ね合わせられる。重ね合わせに先立って絶縁樹脂シート35上からPETフィルム36aは剥がされる。こうして絶縁樹脂シート35の表面に第2配線基板43が重ね合わせられると、貫通孔41は導体ペースト42で充填される。貫通孔41の開放端は対応の導電ランド24aで塞がれる。その後、前述の第1具体例と同様に、第1配線基板37に向かって第2配線基板43が押し付けられる。押し付けすなわち加圧が維持されたまま第1および第2配線基板37、43には加熱処理が施される。前述の第1および第2具体例と均等な構成や構造には同一の符号が付される。
【0050】
次に第4具体例に従ってプリント配線板12の製造方法を簡単に説明する。この第4具体例では、図28に示されるように、PETフィルム36bに代えて絶縁樹脂シート35の裏面には金属箔52が貼られる。金属箔52には例えば銅箔やニッケル箔が用いられる。金属箔52の膜厚は12μm〜35μm程度に設定される。図29に示されるように、絶縁樹脂シート35およびPETフィルム36aには貫通孔51が穿たれる。貫通孔51の形成にあたって金属箔52は維持される。その後、図30に示されるように、貫通孔51には導体ペースト42が充填される。例えば、図31に示されるように、金属箔52が剥がされた後に絶縁樹脂シート35は第1配線基板37の表面に重ね合わせられる。絶縁樹脂シート35の裏面は第1配線基板37の表面に密着する。導電ランド21a上に貫通孔41は形成される。貫通孔41に導体ペースト42は維持される。続いて絶縁樹脂シート35の表面からPETフィルム36aが剥がされる。第1具体例と同様に、絶縁樹脂シート35の表面には第2配線基板43が重ね合わせられる。その後、後続する処理は続行される。
【0051】
次に第5具体例に従ってプリント配線板12の製造方法を簡単に説明する。この第5具体例では、前述の第1具体例と同様に、第1配線基板37の表面に絶縁樹脂シート35が重ね合わせられる。絶縁樹脂シート35の裏面は第1配線基板37の表面に密着する。続いて、前述の第3具体例と同様に、第2配線基板43の導電ランド24a上に導体ペーストが供給される。このとき、導体ペーストは前述の錫粒子の粉末および錫ビスマス粉末の混合粉末で構成される。樹脂製バインダーといった接着剤成分は含まれない。ただし、錫粒子の粉末および錫ビスマス粉末の混合粉末には活性剤を含む粘性剤が添加される。こういった粘性剤にはいわゆるはんだフラックスやフラックスビヒクルといった材料と同等な機能を有する材料が用いられる。こういった粘性剤は、加熱時に昇華する、もしくは、加熱後に洗浄されて容易に除去されることができる。その他、適度な粘性および融点を示す材料として、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム塩といったイオン液体が用いられてもよい。こういったイオン液体によれば、塩化物が錫粒子の粉末および錫ビスマス粉末の混合粉末の酸化膜に対して還元効果を発揮することができる。その結果、良好な接合が得られる。
【0052】
導体ペーストには加熱処理が施される。加熱処理が窒素雰囲気下で実施されれば、導体ペースト中の金属粉末の酸化は防止されることができる。温度が錫ビスマス合金の共晶温度を超えると、前述と同様に、導体ペースト中で錫ビスマス粉末は溶融する。錫ビスマス粉末の溶融は錫粒子の溶融を誘引する。錫および銅は不完全に一体化する。導体ペーストは導電ランド24a上で固化する。その結果、図32に示されるように、導電ランド24a上には固体の突起53が形成される。加熱後、第2配線基板43は洗浄される。洗浄にあたって有機溶剤や炭素水素系の溶剤が用いられる。炭化水素系の溶剤にはいわゆるフラックス洗浄剤が含まれる。溶剤の働きで第2配線基板43の表面に付着する塩化物は除去される。
【0053】
図33に示されるように、第2配線基板43は第1配線基板37に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって第2配線基板43は裏返される。第2配線基板43の表面は絶縁樹脂シート35の表面に重ね合わせられる。重ね合わせに先立って絶縁樹脂シート35上からPETフィルム36aは剥がされる。加熱に応じて絶縁樹脂シート35は軟化する。第2配線基板43が第1配線基板37の表面に向かって押し付けられると、突起53は絶縁樹脂シート35に食い込んでいく。その結果、突起53の先端は第1配線基板37上の導電ランド21aに接触する。その後、温度が錫ビスマス合金の共晶温度を超えると、一部に残存する錫ビスマス相は溶融する。錫粒子の粉末は完全に固溶する。突起53は導電ランド21a、24aに拡散層32を形成する。錫および銅は前述と同様に銅錫系金属間化合物すなわちCuSnを形成する。
【0054】
図34は第2実施形態に係るプリント基板ユニットを概略的に示す。このプリント基板ユニット11aはプリント配線板61を備える。プリント配線板61内には1以上の電子部品62が組み込まれる。電子部品62は例えば抵抗チップといった受動素子であってもよくLSIチップといった能動素子であってもよい。
【0055】
プリント配線板61は第1絶縁層63および第2絶縁層64を備える。第1および第2絶縁層63、64は絶縁性を有する。第1および第2絶縁層63、64は、前述の第1および第2絶縁層18、19と同様に、例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂から形成される。第1および第2絶縁層63、64には同様に例えばガラス繊維クロスが埋め込まれる。
【0056】
第1絶縁層63の表面には第1導電層65が形成される。第1導電層65は1以上の導電ランド65aおよび配線パターン65bを備える。導電ランド65aおよび配線パターン65bは前述の導電ランド21aおよび配線パターン21bと同様に構成される。例えば導電ランド65a同士は配線パターン65bで接続される。配線パターン65bの働きで様々な信号経路が確立される。導電ランド65a上に電子部品62は例えばはんだ付けされる。電子部品62は第1導電層65に電気的に接続される。はんだ付けに代えて導電性接着剤が用いられてもよい。
【0057】
第1導電層65の表面は中間絶縁層66に重ね合わせられる。中間絶縁層66は絶縁性を有する。中間絶縁層66は例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂から形成される。中間絶縁層66の裏面は第1絶縁層63の表面に密着する。中間絶縁層66は第1導電層65に覆い被さる。
【0058】
中間絶縁層66は第2導電層67の表面に重ね合わせられる。第2導電層67は1以上の導電ランド67aおよび配線パターン(図示されず)を備える。導電ランド67aおよび配線パターンは前述の導電ランド24aおよび配線パターン24bと同様に構成される。例えば導電ランド67a同士は配線パターンで接続される。配線パターンの働きで様々な信号経路が確立される。
【0059】
第2導電層67は第2絶縁層64の表面に重ね合わせられる。中間絶縁層66は第2絶縁層64の表面に密着する。中間絶縁層66は第2導電層67に覆い被さる。第2絶縁層64の表面には窪み69が形成される。窪み69の輪郭に合わせて第2導電層67には抜き71が形成される。抜き71および窪み69は中間絶縁層66で充填される。抜き71および窪み69内の空間に電子部品62は配置される。
【0060】
中間絶縁層66には、裏面から表面まで突き抜ける1以上の貫通孔72が形成される。個々の貫通孔72は、導電ランド65aと対応の導電ランド67aとに接する空間を区画する。空間は、例えば、導電ランド65aおよび導電ランド67aの表面に直交する中心軸を有する円柱形に形成される。空間は導電性の接合材73で満たされる。接合材73は前述の接合材25と同様に構成される。接合材73は第2導電層67の導電ランド67aに電気的に第1導電層65の対応の導電ランド65aを接合する。いわゆるビアが形成される。電気的接続は確立される。導電ランド65a、67a同士の間で電気信号のやり取りは実現される。こうしてプリント配線板61上には様々な信号経路が確立される。こうしたプリント配線板61の働きで電子部品62同士や電子部品62と他の電子部品との間で電気信号はやり取りされることができる。
【0061】
次に一具体例に従ってプリント配線板61の製造方法を詳述する。まず、図35に示されるように、第1配線基板75が用意される。第1配線基板75は絶縁層76および導電層77を備える。絶縁層76は前述の第1絶縁層63に相当する。導電層77は前述の第1導電層65に相当する。導電層77は絶縁層76の表面に形成される。導電層77の形成にあたって絶縁層76の表面には例えば銅箔が張り合わせられる。例えばフォトリソグラフィ技術に基づき銅箔から導電ランド65aおよび配線パターン65bは作り出される。
【0062】
第1配線基板75上には電子部品62が実装される。実装にあたって例えばはんだ78が利用される。はんだ78は特定の導電ランド65aに電子部品62の電極を接合する。
【0063】
図36に示されるように、絶縁樹脂シート81が用意される。絶縁樹脂シート81の両面にはPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)フィルム82a、82bが貼り付けられる。絶縁樹脂シート81およびPETフィルム82a、82bは前述の絶縁樹脂シート35およびPETフィルム36a、36bと同様に構成される。絶縁樹脂シート81およびPETフィルム82a、82bには貫通孔83が穿たれる。貫通孔83の形成にあたって、前述と同様に、例えば炭酸ガス(COガス)レーザーが用いられればよい。貫通孔83の配置は第1配線基板75上の導電ランド65aの配置を反映する。同様に、絶縁樹脂シート81およびPETフィルム82a、82bには開口84が穿たれる。開口84の配置は第1配線基板75上の電子部品62の配置を反映する。
【0064】
図37に示されるように、絶縁樹脂シート81は第1配線基板75の表面に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって絶縁樹脂シート81の裏面からPETフィルム82bは剥がされる。その結果、絶縁樹脂シート81の裏面は第1配線基板75の表面に受け止められる。絶縁樹脂シート81の裏面は絶縁層76の表面に密着する。絶縁樹脂シート81は導電ランド65aおよび配線パターン65bに覆い被さる。導電ランド65a上に貫通孔83が形成される。貫通孔83の空間は導電ランド65aに接する。電子部品62は開口84に収容される。
【0065】
図38に示されるように、第2配線基板85が用意される。第2配線基板85は絶縁層86および導電層87を備える。絶縁層86は前述の第2絶縁層64に相当する。導電層87は前述の第2導電層67に相当する。導電層87は絶縁層86の表面に形成される。導電層87の形成にあたって絶縁層86の表面には例えば銅箔が張り合わせられる。例えばフォトリソグラフィ技術に基づき銅箔から導電ランド67aおよび配線パターン(図示されず)は作り出される。絶縁層86の表面には窪み69が形成される。窪み69の輪郭に合わせて導電層87には抜き71が形成される。
【0066】
その後、図38に示されるように、第2配線基板85の表面に導体ペースト42が供給される。前述と同様に、供給にあたって例えば印刷が利用されればよい。その他、導体ペースト42の供給にあたってディスペンサーが用いられてもよい。印刷にあたって例えばメタルマスクが第2配線基板85の表面に重ね合わせられる。メタルマスクには導電ランド67aに合わせて開口が形成される。こういったメタルマスクがステンシル板として機能する結果、導体ペースト42は導電ランド67a上に盛られる。導電ランド67aの表面から直交する方向に測定される導体ペースト42の高さはメタルマスクの厚みに基づき設定されることができる。
【0067】
図39に示されるように、第1配線基板75は第2配線基板85に重ね合わせられる。重ね合わせにあたって第1配線基板75は裏返される。絶縁樹脂シート81の表面は第2配線基板85の表面に重ね合わせられる。重ね合わせに先立って絶縁樹脂シート81上からPETフィルム82aは剥がされる。こうして第2配線基板85の表面に絶縁樹脂シート81が重ね合わせられると、貫通孔83は導体ペースト42で充填される。貫通孔83の開放端は対応の導電ランド67aで塞がれる。窪み69および抜き71は絶縁樹脂シート81の材料で満たされる。その後、前述と同様に、第2配線基板85に向かって第1配線基板75が押し付けられる。押し付けすなわち加圧が維持されたまま第1および第2配線基板75、85には加熱処理が施される。前述の第1および第2具体例と均等な構成や構造には同一の符号が付される。
【0068】
なお、プリント配線板61の製造にあたって個々の工程または複数の工程は前述のプリント配線板12の製造方法と同様に様々な工程で置き換えられることができる。プリント配線板12、61の製造方法は開示の方法に限定されるものではない。
【0069】
以上の実施形態に関し出願人はさらに以下の付記を開示する。
【0070】
(付記1) 第1導電材と、第2導電材と、前記第2導電材に電気的に前記第1導電材を接合する接合材とを備え、前記接合材は、前記第1導電材から前記第2導電材まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相、および、前記銅錫系金属間化合物相に囲まれる錫ビスマス相を含む金属組織から形成されることを特徴とする導電体。
【0071】
(付記2) 付記1に記載の導電体において、前記錫ビスマス相は、錫ビスマス合金に固有の共晶温度に関連する温度以下で前記接合材の溶融反応を回避する割合で前記接合材に含まれることを特徴とする導電体。
【0072】
(付記3) 付記2に記載の導電体において、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とする導電体。
【0073】
(付記4) 第1絶縁層と、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層と、前記第1導電層に裏面で重ね合わせられて、裏面から表面まで突き抜けて部分的に前記第1導電層の表面に接する空間を形成する貫通孔を有する中間絶縁層と、前記中間絶縁層に重ね合わせられて、前記空間に部分的に接する第2導電層と、前記第2導電層に重ね合わせられる第2絶縁層と、前記空間を満たし、前記第2導電層に電気的に前記第1導電層を接合する接合材とを備え、前記接合材は、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相、および、前記銅錫系金属間化合物相に囲まれる錫ビスマス相を含む金属組織から形成されることを特徴とするプリント配線板。
【0074】
(付記5) 付記4に記載のプリント配線板において、前記錫ビスマス相は、錫ビスマス合金に固有の共晶温度に関連する温度以下で前記接合材の溶融反応を回避する割合で前記接合材に含まれることを特徴とするプリント配線板。
【0075】
(付記6) 付記5に記載のプリント配線板において、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とするプリント配線板。
【0076】
(付記7) 第1導電材および第2導電材の間に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストを充填する工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電材から前記第2導電材まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とする導電体の製造方法。
【0077】
(付記8) 付記7に記載の導電体の製造方法において、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とする導電体の製造方法。
【0078】
(付記9) 付記7または8に記載の導電体の製造方法において、前記錫粒子の粉末は、摂氏227度に銅錫の共晶温度を設定する配合割合で錫成分および銅成分を含むことを特徴とする導電体の製造方法。
【0079】
(付記10) 導電層の表面に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストを盛る工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記導電層から立ち上がりつつ連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0080】
(付記11) 第1絶縁層の表面に重ね合わせられる第2絶縁層に、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層の表面から立ち上がって前記第2絶縁層の表面で開放され、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストで充填される空間を形成する工程と、前記第2絶縁層の表面に第3絶縁層の表面を重ね合わせ、前記第3絶縁層の表面に形成される第2導電層で前記空間の開放端を塞ぐ工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0081】
(付記12) 付記11に記載のプリント配線板の製造方法において、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0082】
(付記13) 付記11または12に記載のプリント配線板の製造方法において、前記錫粒子の粉末は、摂氏227度に銅錫の共晶温度を設定する配合割合で錫成分および銅成分を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0083】
(付記14) 付記13に記載のプリント配線板の製造方法において、前記錫ビスマス粉末は、前記第1〜第3絶縁層のガラス転移温度未満の温度に固相線温度を設定する配合割合で錫成分およびビスマス成分を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0084】
(付記15) 付記14に記載のプリント配線板の製造方法において、前記導体ペーストでは前記錫粒子の粉末および前記錫ビスマス粉末の総量に対して20重量%以下の割合で錫ビスマス粉末が配合されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0085】
(付記16) 第1絶縁層の表面に重ね合わせられる第2絶縁層に、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層の表面から立ち上がって前記第2絶縁層の表面で開放される空間を形成する工程と、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストで前記空間を充填しつつ、前記第2絶縁層の表面に第3絶縁層の表面を重ね合わせ、前記第3絶縁層の表面に形成される第2導電層で前記空間の開放端を塞ぐ工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0086】
(付記17) 付記16に記載のプリント配線板の製造方法において、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0087】
(付記18) 付記16または17に記載のプリント配線板の製造方法において、前記錫粒子の粉末は、摂氏227度に銅錫の共晶温度を設定する配合割合で錫成分および銅成分を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0088】
(付記19) 付記18に記載のプリント配線板の製造方法において、前記錫ビスマス粉末は、前記第1〜第3絶縁層のガラス転移温度未満の温度に固相線温度を設定する配合割合で錫成分およびビスマス成分を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0089】
(付記20) 付記19に記載のプリント配線板の製造方法において、前記導体ペーストでは前記錫粒子の粉末および前記錫ビスマス粉末の総量に対して20重量%以下の割合で錫ビスマス粉末が配合されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【0090】
(付記21) 粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含み、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で加熱されると、少なくとも所定の方向に連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成することを特徴とする導体ペースト。
【0091】
(付記22) 付記21に記載の導体ペーストにおいて、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とする導体ペースト。
【0092】
(付記23) 付記21または22に記載の導体ペーストにおいて、前記錫粒子の粉末は、摂氏227度に銅錫の共晶温度を設定する配合割合で錫成分および銅成分を含むことを特徴とする導体ペースト。
【符号の説明】
【0093】
12 プリント配線板(導電体)、18 第1絶縁層、19 第2絶縁層、21 第1導電層(第1導電材)、21a 導電層(導電ランド)、24a 導電層(導電ランド)、22 中間絶縁層、23 貫通孔、24 第2導電層(第2導電材)、25 接合材、31 銅錫系金属間化合物相、33 錫ビスマス材、35 第2絶縁層(絶縁樹脂シート)、38 第1絶縁層(絶縁層)、39 第1導電層(導電層)、41 貫通孔(空間)、42 導体ペースト、44 第3絶縁層(絶縁層)、47 錫粒子、51 空間(貫通孔)63 第1絶縁層、64 第2絶縁層、65 第1導電層(第1導電材)、66 中間絶縁層、67 第2導電層(第2導電材)、67a 導電層(導電ランド)、73 接合材、82 貫通孔(空間)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電材と、第2導電材と、前記第2導電材に電気的に前記第1導電材を接合する接合材とを備え、前記接合材は、前記第1導電材から前記第2導電材まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相、および、前記銅錫系金属間化合物相に囲まれる錫ビスマス相を含む金属組織から形成されることを特徴とする導電体。
【請求項2】
請求項1に記載の導電体において、前記錫ビスマス相は、錫ビスマス合金に固有の共晶温度に関連する温度以下で前記接合材の溶融反応を回避する割合で前記接合材に含まれることを特徴とする導電体。
【請求項3】
第1絶縁層と、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層と、前記第1導電層に裏面で重ね合わせられて、裏面から表面まで突き抜けて部分的に前記第1導電層の表面に接する空間を形成する貫通孔を有する中間絶縁層と、前記中間絶縁層に重ね合わせられて、前記空間に部分的に接する第2導電層と、前記第2導電層に重ね合わせられる第2絶縁層と、前記空間を満たし、前記第2導電層に電気的に前記第1導電層を接合する接合材とを備え、前記接合材は、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相、および、前記銅錫系金属間化合物相に囲まれる錫ビスマス相を含む金属組織から形成されることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
第1導電材および第2導電材の間に、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストを充填する工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電材から前記第2導電材まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とする導電体の製造方法。
【請求項5】
第1絶縁層の表面に重ね合わせられる第2絶縁層に、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層の表面から立ち上がって前記第2絶縁層の表面で開放され、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストで充填される空間を形成する工程と、前記第2絶縁層の表面に第3絶縁層の表面を重ね合わせ、前記第3絶縁層の表面に形成される第2導電層で前記空間の開放端を塞ぐ工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント配線板の製造方法において、前記銅錫系金属間化合物相はCuSnから形成されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプリント配線板の製造方法において、前記錫粒子の粉末は、摂氏227度に銅錫の共晶温度を設定する配合割合で錫成分および銅成分を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板の製造方法において、前記錫ビスマス粉末は、前記第1〜第3絶縁層のガラス転移温度未満の温度に固相線温度を設定する配合割合で錫成分およびビスマス成分を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板の製造方法において、前記導体ペーストでは前記錫粒子の粉末および前記錫ビスマス粉末の総量に対して20重量%以下の割合で錫ビスマス粉末が配合されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
第1絶縁層の表面に重ね合わせられる第2絶縁層に、前記第1絶縁層の表面に形成される第1導電層の表面から立ち上がって前記第2絶縁層の表面で開放される空間を形成する工程と、粒子中に過飽和固溶した銅を含む錫粒子の粉末、および、錫ビスマス粉末を含む導体ペーストで前記空間を充填しつつ、前記第2絶縁層の表面に第3絶縁層の表面を重ね合わせ、前記第3絶縁層の表面に形成される第2導電層で前記空間の開放端を塞ぐ工程と、錫ビスマス合金の共晶温度以上であって銅錫合金の固相線温度未満の温度で前記導体ペーストを加熱し、前記第1導電層から前記第2導電層まで連なる複数の銅錫系金属間化合物相を形成する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2011−96900(P2011−96900A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250510(P2009−250510)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】