説明

導電性を有する吸熱性塗装鋼板およびその製造方法

【課題】 塗布作業性の良い、吸熱性と導電性を有する塗膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 1層には少なくとも吸熱性顔料を混入させ、別のもう1層には少なくとも導電性顔料を混入させた少なくとも2層を含んでなる導電性を有する吸熱性塗膜層を金属板上に塗布し、その後同時硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸熱性塗装金属板の製造方法に関する。具体的には、本発明は導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法に関する。また、本発明の製造方法を用いて製造された、モーター、電子部品、ヒーター、バッテリーなど熱を発生する部品を内部に有する、導電性を要する、金属製カバーの材料となる表面処理金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの普及、家電製品などの電子化に伴い、これらコンピューターや家電製品の内部で、モーターや電子部品など熱源となる部品が数多く使われるようになり、これら熱源の発熱量も増加してきている。
【0003】
特に、電子機器は熱に弱く、温度上昇すると誤動作を起こしたり、性能低下を起こすので、放熱及び冷却が重要である。最近では高集積化、微細配線化が進んでいるので、温度上昇による誤動作、動作速度が遅くなるなどの性能低下に対する対策はより重要度を増している。
【0004】
これらの家電製品や電子機器の外板や内部部品のカバー材料には塗装金属板が用いられることが多い。これら塗装金属板には、内部で発生する熱を抑制する特性、もしくは、該熱を効率よく放熱する特性が要求される一方で、家電製品などの発熱体カバーには、アースを取るための導電性も要求される。
【0005】
塗装金属板を吸熱性にし、且つ電気導電性とするためには、通常、吸熱性顔料に加えて導電性顔料を加えた塗布液を金属板に塗布する必要がある。先行技術に見られる導電性の熱吸収被膜は、吸熱性顔料と導電性顔料とを含んでなる単一被膜である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一般的に金属板に塗膜を付与する方法としては、例えば、ロール塗工、ローラーカーテン塗工、カーテンフロー塗工、エアースプレー塗工、エアーレススプレー塗工、刷毛塗り塗工、ダイコータ−塗工などが挙げられる。また浸漬塗工、インクジェット塗工等も用いることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
塗膜を吸熱性とするためには、より粒径の小さい吸熱性顔料を多量に添加する必要があるが、粒径の小さな吸熱性顔料を多量に添加した場合、バインダー固形分と吸熱性顔料を含む塗布液の粘度が上昇して塗布作業性が低下する。
【0008】
導電性顔料は、吸収性顔料よりも相対的に粒径が大きく、この粒径は大きい方が導電性効果が高まり、また塗装が厚くなるほど粒径の大きな導電性顔料を用いる。しかし、吸熱性顔料を多量に含む塗布液にさらに相対的に大きな粒径の導電性顔料を加えることは、さらに塗布作業性の低下を招く。この塗布作業性の低下はロールコーターでは著しい。
【0009】
【特許文献1】国際公開WO03/087432号パンフレット(請求項4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れた吸熱性と導電性とを有する塗装金属板を提供することである。
本発明の目的は、塗布作業性の良い、吸熱性と導電性とを有する塗装金属板の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、吸熱性顔料を多量に含む塗布液に、相対的に大きな粒径の導電性顔料を加えることによる塗布作業性低下を改善することである。
本発明の目的は、導電性顔料粒径が大きい場合の塗工困難性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、1層には少なくとも吸熱性顔料を混入させ、別のもう1層には少なくとも導電性顔料を混入させた少なくとも2層を含んでなる導電性を有する吸熱性塗膜層を金属板上に塗布し、その後同時硬化させることにより、従来技術の吸熱性顔料と導電性顔料とを含んだ単一塗膜の塗布作業性の低下を改善する。
【0013】
即ち、本発明によれば下記が提供される。
(1)金属板上に、順に、バインダー樹脂および熱吸収性顔料を含有する第一層と、バインダー樹脂および前記第一層よりも高い濃度の熱吸収性顔料を含有する第二層とを含んでなる塗膜を有し、そして前記塗膜が、前記第一層膜厚、前記第二層膜厚のいずれに対しても大きい粒径の導電性顔料をさらに含有している、導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0014】
(2)塗布前に、前記第一層がバインダー樹脂100質量部に対し、熱吸収性顔料を10〜50質量部および導電性顔料を10〜100質量部含有し、前記第二層がバインダー樹脂100質量部に対し熱吸収性顔料を10〜150質量部含有している(1)記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0015】
(3)前記第一層の上に前記第二層がウェットオンウェット塗布されていることを特徴とする(1)または(2)記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0016】
(4)前記第一層および前記第二層が別々にカーテンコーターで塗布されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0017】
(5)下式:
T/R=0.6〜1.0
(式中、Rは導電性顔料の粒径であり、Tは硬化後皮膜厚である)
を満たす、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0018】
(6)硬化後の、前記第一層と前記第二層との界面のRaが0.4〜0.6μmである、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0019】
(7)前記導電性顔料がFeSiである、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0020】
(8)前記導電性顔料の粒径が15〜100μmである、(1)〜(7)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0021】
(9)前記第二層の上に、さらに1μm以下のクリヤー層を有する(1)〜(8)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【0022】
(10)金属板上に、バインダー樹脂、熱吸収性顔料および導電性顔料を含有する第一層と、バインダー樹脂および熱吸収性顔料を含有する第二層とを塗布し、その後前記各層を同時に硬化させることを含む、導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0023】
(11)前記第一層がバインダー樹脂100質量部に対し、熱吸収性顔料を10〜50質量部および導電性顔料を10〜100質量部含有し、前記第二層がバインダー樹脂100質量部に対し熱吸収性顔料を10〜150質量部含有する(10)記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0024】
(12)前記第一層の上に前記第二層をウェットオンウェットで塗布することを特徴とする(10)または(11)記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0025】
(13)前記第一層および前記第二層を別々にカーテンコーターで塗布することを特徴とする(10)〜(12)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0026】
(14) 下式:
T/R=0.6〜1.0
(式中、Rは導電性顔料の粒径であり、Tは乾燥後皮膜厚である)
を満たす、(10)〜(13)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0027】
(15)硬化後の、前記第一層と前記第二層との界面のRaが0.4〜0.6μmである、(10)〜(14)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0028】
(16)前記導電性顔料がFeSiである、(10)〜(15)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0029】
(17)前記導電性顔料の粒径が15〜100μmである、(10)〜(16)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【0030】
(18)前記第二層の上に、さらに1μm以下のクリヤー層を有する(10)〜(17)のいずれか一つに記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の金属板は、加工して金属製発熱体カバーを製造することができる金属板であればいずれの金属板であってもよい。したがって、一般的に種々の公知の金属材料を用いることができる。金属材料が合金材料であってもよい。例えば、鋼、アルミ、チタン、銅、マグネシウム合金などが挙げられる。
【0032】
また、金属材料の表面にはめっきが施されていてもよい。めっきの種類としては、亜鉛めっき、アルミめっき、銅めっき、ニッケルめっき等が挙げられる。合金めっきであってもよい。鋼板の場合は、冷延鋼板、熱延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融合金化亜鉛めっき鋼板、アルミめっき鋼板、アルミ−亜鉛合金化めっき鋼板、ステンレス鋼板など、一般に公知の鋼板およびめっき鋼板を適用できる。
【0033】
また、溶融合金化亜鉛めっき鋼板のように、鉄と亜鉛の合金めっき鋼板は、これ自身が高い熱吸収性を有しているため、これに熱吸収塗膜を被覆すると熱吸収性がより向上し、好適である。さらに、アルミや銅など熱伝導率の高い金属をめっきした鋼板に熱吸収塗膜を被覆すると、吸収した熱が金属表面のめっき層を通して均一分散するため、局部的に金属が熱くなることを避けられるため、より好適である。これらアルミや銅など熱伝導率の高い金属をめっきした鋼板は、熱伝導性が向上するだけでなく、鋼板の有する強度、成形性も兼ね備えている上、アルミや銅など熱伝導率の高い金属を単体で用いるより安価であるため、製造コストが削減でき、より好適である。
【0034】
本発明の製造方法における第一層および第二層に用いることができるバインダーは、樹脂、ゾルゲル法によって形成される無機塗膜、およびゾルゲル法によって形成される無機有機複合塗膜など、一般に公知の塗膜用バインダーを使用することができる。樹脂を塗料のような形態で用いることは、取り扱い、塗膜形成方法の容易さなどから好適である。
【0035】
樹脂としては、一般に公知のもの、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂などを用いることができ、熱可塑タイプ、熱硬化タイプのいずれのタイプであってもよい。
【0036】
これらの樹脂は、必要に応じて数種のものを併用してもよい。これらの樹脂は、種類、樹脂の分子量、樹脂のガラス転移温度Tgによっても、塗膜の性能、例えば、加工性、加工密着性、塗膜硬度などが異なるため、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定する必要がある。
【0037】
また、架橋剤を用いて硬化させるタイプの樹脂は、架橋剤の種類や添加量、架橋反応時の触媒の種類や触媒添加量によっても、塗膜の性能、例えば、加工性、加工密着性、塗膜硬度などが異なるため、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定する必要がある。
【0038】
これらの樹脂は固体のものを熱溶融したり、有機溶剤に溶解して用いたり、粉砕して粉体にして用いることができる。また、水溶性のものや、水分散したエマルジョンタイプのものでもよい。さらには、紫外線(UV)硬化タイプや電子線(EB)硬化タイプのものでもよい。これらは、いずれも市販のタイプのものを使用することができる。
【0039】
本発明者らがこれまでに得た知見によれば、溶剤系のメラミン硬化型ポリエステル系、溶剤系のイソシアネート硬化型ポリエステル系、水分散型アクリルエマルジョンなどが好適であり、特に、次のものが好適である。しかし、これらは一例であり、これに限定されるものではない。
【0040】
溶剤系のメラミン硬化型ポリエスエル系の場合、ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量で2000〜30000が好適であり、ポリエステル樹脂のTgは−10〜70℃が好適であり、メラミン樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して5〜70質量部が好適である。
【0041】
ポリエステル樹脂の分子量が2000未満では塗膜の加工性が低下し、30000超では、樹脂が溶剤に溶解したときに粘度が高すぎるため不適である。ポリエステル樹脂のTgが−10℃未満では塗膜が成膜しないため不適であり、70℃超では塗膜が硬すぎるため、加工性が低下し不適である。メラミン樹脂の添加量がポリエステル100質量部に対して5質量部未満であると、塗膜が未硬化となり不適であり、70質量部超では、塗膜が硬くなりすぎて加工性が低下するため、不適である。
【0042】
使用するポリエステル樹脂は、一般に市販されているもの、例えば、東洋紡績社製の「バイロン」や、住化バイエルウレタン社製「デスモフェン」などを使用することができる。使用するメラミン樹脂も、一般に市販されているもの、例えば、三井サイテック社製「サイメル」、「マイコート」、大日本インキ化学工業社製「ベッカミン」、「スーパーベッカミン」などを使用することができる。
【0043】
溶剤系のイソシアネート硬化型ポリエスエル系の場合、ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量で2000〜30000が好適であり、ポリエステル樹脂のTgは−10〜70℃が好適であり、イソシアネートの添加量は、[イソシアネートのNCO基当量]/[ポリエステル樹脂のOH基当量]=0.8〜1.2であると好適である。
【0044】
[イソシアネートのNCO基当量]/[ポリエステル樹脂のOH基当量]の値が0.8未満もしくは1.2超では、塗膜生成時に塗膜が未硬化となりやすい。ポリエステル樹脂の分子量が2000未満では塗膜の加工性が低下し、30000超では、樹脂が溶剤に溶解したときに粘度が高すぎるため不適である。ポリエステル樹脂のTgが−10℃未満では、塗膜が成膜しないため不適であり、70℃超では塗膜が硬すぎるため、加工性が低下し不適である。
【0045】
使用するポリエステル樹脂は、一般に市販されているもの、例えば、東洋紡績社製の「バイロン」、住化バイエルウレタン社製「デスモフェン」などを使用することができる。
【0046】
使用するイソシアネートも、一般に市販されているもの、例えば、住化バイエル社製「スミジュール」、「デスモジュール」、三井武田ケミカル社製「タケネート」などを使用することができる。
【0047】
また、水分散型アクリルエマルジョンタイプのものも一般に公知のものを使用でき、市販のものでもよい。水分散型アクリルエマルジョンタイプのものは、一般に公知のエポキシ樹脂など、密着性の良い樹脂を添加して使用してもよい。
【0048】
エポキシ樹脂の種類及び添加量は、塗膜性能の影響するので、必要に応じて適宜選定することができる。水分散系アクリル樹脂のように水系樹脂の場合、塗膜の塗布作業性が高い上に、揮発性有機溶剤の大気放出問題が発生しないので、塗布設備における排気ダクトの強化や揮発性有機溶剤の燃焼設備などが不要となり、より好適である。
【0049】
本発明の方法における熱吸収性顔料としては、カーボンと、例えば、カーボンラック、炭、黒鉛など一般に公知のカーボンを使用することができ、市販のものを用いることもできる。上記熱吸収性顔料の中でもカーボンブラックは粒径が非常に小さくて、塗膜中に広く分散するので好適な顔料であり、特に、粒径が1〜100nmのものが好適である。熱吸収性を向上させるためには熱吸収性顔料で金属板を隠蔽すると好適である。カーボンで金属板又は非金属材料を隠蔽するためには、より粒径の小さいカーボンを多量に添加する必要がある。
【0050】
導電性顔料としては、Ni粉、Al粉、およびステンレス粉など公知のものを使用できる。これらは、市販のものを用いてもよい。金属顔料は一般的に熱を反射し易く、熱吸収性顔料の熱吸収を阻害する傾向がある。
【0051】
フェロシリコン(FeSi)も導電性顔料として用いることができる。フェロシリコンは、塗膜に導電性を付与するだけでなく、塗膜層の放射率が向上し、且つ、金属板の耐食性も向上するため、導電性顔料としてより好適である。
【0052】
本発明の製造方法は、従来単一塗膜として形成されている導電性熱吸収性塗膜を、少なくとも2層に分けて塗布する。具体的には、金属板上に、バインダー樹脂、熱吸収性顔料および導電性顔料含有する第一層と、バインダー樹脂および熱吸収性顔料を含有する第二層とを塗布する。第一の層が導電性顔料を含み、塗布作業性のためには第二の層は導電性顔料を含まないのが好ましいが、含んでいてもよい。
【0053】
熱吸収性顔料で金属板を隠蔽するためには、より粒径の小さい熱吸収性顔料を多量に添加する必要がある。粒径の小さい熱吸収性顔料を少量添加しても隠蔽効果は小さい。しかし、粒径の小さな熱吸収性顔料を多量に添加した場合、バインダー固形分とカーボンを含む塗液の粘度が上昇して塗布作業性が低下する、塗液中に分散している微粒子カーボンが経時で凝集して塗液がゲル状になる等の問題が発生する。これらの問題を解決するために、国際公開WO03/087432号パンフレットでは、0.1μm未満の小さな粒径のカーボンと0.1μm以上50μm以下の大粒径のカーボンを併用することを記載する。塗膜中に分散した大粒径カーボンの隙間に微粒系カーボンが分散するため、微粒子カーボンを多量に添加しなくても、カーボンによる金属板及び非金属材料の隠蔽性は向上し熱吸収性効果が発揮され前記問題が解決されると記載する。
【0054】
熱吸収性を高めるためには、本来、より粒径の小さい熱吸収性顔料を多量に添加することが好ましいが、多量の熱吸収性顔料に加えて導電性顔料を添加すると、粘度上昇に加えて塗膜層が脆くなりさらに塗布作業性が低下する。そこで、本願製造方法では、塗膜層を第一の層と第二の層に分けて塗布することにより、この問題を解決する。即ち、第一層には、第二層よりも少ない量の熱吸収性顔料と、導電性顔料とを含有せしめ、第二層には、第一層よりも多くの熱吸収性顔料を含有せしめる。この第一層と第二層とを塗布後、同時硬化させることにより、一緒になって有効な熱吸収性と導電性の両特性を提供することができる。後述するように、第一層と第二層とを同時硬化させ、両層間の界面の粗さ(Ra)を、約0.4〜0.6μmの範囲内にコントロールすると、第一層と第二層との密着性が確保される。
【0055】
第一層は、バインダー樹脂100質量部に対し、熱吸収性顔料を、10〜50質量部含有する。導電性顔料は、バインダー樹脂100質量部に対し、10〜100質量部含有する。特に、第一層中の熱吸収性顔料の量は、前述したように導電性顔料添加による塗布作業性の低下を考慮して、第二層よりも少なく、10〜50質量部とするのが好ましい。第一層における熱吸収性顔料添加量が10質量部未満であると第一層と第二層を併せた層の熱吸収性はかなり劣るであろう。導電性顔料10〜100質量部は、第一層と第二層が合さった塗膜層において有効な導電性を提供する量である。
【0056】
導電性顔料の粒径が膜厚に対して一定以上の場合に効果が大きくなるので、有効な導電性を担保するためには、乾燥後の塗膜の厚み(T)と導電性顔料の粒径(R)の関係が次式:
T/R=0.6〜1.0
を満たすことが好ましい。T/Rが、0.6未満であると、導電性顔料が塗膜上に頭を出し過ぎているため、プレス成形時に金型を傷つける等の不具合が生じるため好ましくない。また、1.0を超えると、導電性が低くなり好ましくない。本発明の方法では、乾燥後の塗膜圧に応じて15〜100μmの平均粒径を有する導電性顔料を用いて塗膜を形成することができる。
【0057】
第二層は、バインダー樹脂100質量部に対し、熱吸収性顔料を10〜150質量部含有する。第二層は導電性顔料を含んでもよいが、含まないのが好ましいので、熱吸収性顔料を第二層の塗布可能な粘度上限まで含有せしめることができる。熱吸収性顔料の添加量が10質量部未満であると熱吸収性効果が期待できず、150質量部を超えると、塗布液が増粘して塗布作業性が劣り、硬化後の塗膜も脆くなり加工性が悪くなるため好ましくない。
【0058】
塗工する前に、第一層成分および第二層成分を、一般に公知の塗料形態にする。例えば、塗料形態としては、樹脂を溶剤に溶解した溶剤系塗料、エマルジョン化した樹脂を水などに分散した水系塗料、樹脂を粉砕してパウダー化した粉体塗料、粉砕しパウダー化した樹脂を水などに分散させたスラリー粉体塗料、紫外線(UV)硬化型塗料、電子線(EB)硬化型塗料、樹脂を溶融させてから塗布する形態などがある。
【0059】
本発明の方法では、第一層と第二層の塗布に、いわゆるウェットオンウェット方式を用いる。第一層の上に第二層をウェットオンウェットで塗布する方法としては、第一層をロールコーター、ローラーカーテンまたはカーテン塗工機等を用いて形成し、引き続きその上に、ローラーカーテン塗工、スリット式カーテン塗工またはスプレー塗工等を用いて第二層を形成する塗布工程が考えられる。しかし、通常、第一層は層圧に比べて導電性顔料の粒径が大きくなるので、ロールコーターによって塗工することは困難である。また膜厚が厚くなるとロールコーターでは難しい。本発明では、第一層、第二層の塗布にカーテンコーターを用いるのが好ましい。カーテンコーターは、厚い塗膜も塗布することができ、塗布液の粘度上昇にも対応することができる。特に、第一層と第二層とを2層に重ね合せてダイから吐出して、金属板上に2層を同時塗布するスライドホッパー型カーテン塗工を用いることができる。本発明の塗工方法としてはスライドホッパー型カーテン塗工を用いるのが好ましい。
【0060】
本発明で複数層の塗膜を塗工する塗工機として、写真感光材料に使用されている特公昭49−24133号公報に開示されたスライドホッパー型カーテン塗工装置が使用できる。このスライドホッパー型カーテン塗工機の概略図を図3に示す。スライドホッパー31には3層の塗料がギアポンプ等により定量的に送り出される塗料供給孔38およびスリット36が設置されている。スライド面37の唇部37Aの両端部に接するようにチェーン状のカーテンガイド33が設けられている。該唇部37Aの下方には塗料パン35が設置され、カーテンガイド33は塗料パン35の底部まで垂らしている。塗料Pはスライドホッパー31の各々の塗料供給孔38からスリット36を通してスライド面37に幅方向均一に供給され、スライド面37上で積層される。積層された塗料はスライド面37の先端部(唇部37A)で塗料パン35に落下する際にカーテンガイド33により拡げられるため、塗料のカーテン34として幅方向に均一な液膜として流れる。この液膜に帯状の金属板、例えば鋼帯32を通板することにより、鋼帯32の面上に複数層の塗料を同時に塗布することができる。
【0061】
金属板上に第一層および第二層を塗布した後、2層を同時に乾燥硬化させる。乾燥の方法は公知の方法が適用でき、例えば自然乾燥や、熱風加熱、誘導加熱、赤外線による加熱など塗膜に熱を与えて乾燥硬化させる方法や、紫外線や電子線などの放射線を塗膜に照射して乾燥硬化させる方法や、触媒を充満させたブースを通過させることによって塗膜を乾燥硬化させる方法、あるいはこれらを組み合わせる方法などがあり、塗装された塗料の種類に応じて選択することができる。
【0062】
金属板上に第一層および第二層を塗布し、2層を同時に乾燥した後の、本発明の一つの態様(T/R=1.0の場合)を示す導電性を有する吸熱性塗装金属板の断面概略図を図2に表す。乾燥後の塗膜層では導電性顔料は第一層と第二層とにわたっている。ウェットオンウェットで塗布した第一層と第二層との間の界面(導電性顔料以外の界面部分)は明瞭とはならないことがある。これは、第一層成分と第二層のバインダー成分が同じであり、同時硬化によるためである。
【0063】
第一層と前記第二層との界面の粗さ(Ra)は、0.4〜0.6μmの範囲内であることが好ましい。第一層を塗布した後乾燥硬化し、その後に第二層を塗布して乾燥硬化した塗膜の第一層と第二層との間の界面は通常0.3μm未満である。本発明の塗膜の前記界面粗さを0.4〜0.6μmと大きくできるのは、ウェットオンウェット方式で塗布し、その後同時乾燥することで実現される。
【0064】
金属板に第一層を塗布する前に、種々の塗装前処理を施すこともできる。例えば、水や溶剤等による洗浄、脱脂など被塗物表面を清浄にする処理、コロナ放電処理、火炎処理など表面に極性基を生成させて密着性を向上する処理、リン酸亜鉛処理、クロメート処理、複合酸化塗膜処理など主に金属に適用される処理、ブラシかけ、研削など凹凸を付与したり表面の密着性を阻害する成分を除去する処理、酸洗、アルカリ洗浄などの薬品処理、あるいはこれらを組み合わせた処理を施すことができる。
【0065】
本発明の導電性を有する吸熱性塗装金属板は、前記した第一層と第二層以外にも種々の追加の層を有することができる。例えば、第一層の下層としてポリエステル系のプライマー層を有することができる。また、第二層の上に高分子ポリエステル系のトップコート層を有することができ、さらに最上層に高分子ポリエステル系のクリヤー層を有することができる。このクリヤー層を第二層の上に直接設けることもできる。クリヤー層を設けることは、傷つき防止保護層となることができ、さらに光沢の向上をはかることができるので好ましい。また、クリヤー層にさらに別の機能を付与することもできる。
【0066】
本発明の導電性を有する吸熱性塗装金属板が、第一層、第二層およびクリヤー層を有する場合、これら3つの層を、本発明の方法を用いてウェットオンウェット方式で塗布し、その後同時硬化させることができる。これにより、製造効率を大きく改善することができる。カーテン塗工により3層を同時塗布する場合、クリヤー層を非常に薄く形成することができる。例えば、クリヤー層の厚みを1μm未満とすることができる。
【実施例】
【0067】
金属板の調製
付着量が片面当たり20g/m2 で両面がめっきされた厚み0.6mmの電気亜鉛めっき鋼板を、市販のアルカリ脱脂剤である日本パーカライジング社製の「FC−364S」を20質量%濃度に希釈した60℃温度の水溶液中に10秒間浸漬することで脱脂し、水洗後、乾燥した。
次いで、脱脂した電気亜鉛めっき鋼板上にロールコーターにて前処理液を塗布し、到達板温が60℃となるような条件で熱風乾燥させた。
本実験では、前処理に市販のクロメート処理である日本パーカライジング社製の「ZM1300AN」(以下クロメート処理)と、市販のノンクロメート前処理である日本パーカライジング社製の「CT−E300」(以下ノンクロメート処理)を使用した。
クロメート処理の付着量は、Cr付着量で50mg/m2、ノンクロメート処理の付着量は、全塗膜量として200mg/m2とした。
【0068】
そして、化成処理皮膜上にスライドホッパー型カーテン塗工方式によって、第一層塗膜と第二層塗膜とを同時に塗布した。なお、同時塗布の際は、第一層塗膜が下塗り、第二層塗膜が上層塗膜となるように塗布した。同時塗布の後、熱風を吹きかけた誘導加熱炉にて到達温度が230℃となる条件で焼付け硬化した。なお、塗工時の各層の膜厚はポンプ圧を調整することで所定の膜厚となるように制御した。
【0069】
また、別の例では、化成処理皮膜上にロール塗工方式によって、第一層塗膜と第二層塗膜を塗布した。ロール塗工方式の場合は、ロールコーターで化成処理皮膜上に第一層塗膜を塗布した後、熱風を吹きかけた誘導加熱炉において到達板温度が210℃になる条件で焼付け硬化し、更にその上に第二層塗膜を塗布し、その後熱風を吹きかけた誘導加熱炉において到達板温度が230℃に成る条件で焼付け硬化した。
【0070】
[実施例1]
第一層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:Ni系、粒子径10μm、バインダー樹脂固形分100質量部に対して25質量部
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して15質量部
層の厚み:5μm
第二層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:なし
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して20質量部
層の厚み:5μm
塗工方法:スライドホッパー型カーテン塗工
【0071】
[実施例2]
実施例2は、以下に示すように各層の成分変えた以外は実施例1と同様に行なった。
第一層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:FeSi系、粒子径20μm、バインダー樹脂固形分100質量部に対して40質量部
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して15質量部
層の厚み:10μm
第二層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:なし
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して20質量部
層の厚み:5μm
塗工方法:スライドホッパー型カーテン塗工の後、同時乾燥硬化させた。
【0072】
[実施例3]
実施例3は、塗工方法としてロール塗工を用いた以外は、実施例2と同様に行なった。
【0073】
[実施例4]
実施例4は、塗工方法としてロール塗工を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0074】
[実施例5]
実施例5は、塗工方法としてロール塗工を用い、以下に示すように導電性顔料を第一層と第二層の両方に入れた以外は、実施例5と同様に行なった。
第一層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:FeSi系、粒子径20μm、バインダー樹脂固形分100質量部に対して20質量部
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して15質量部
層の厚み:10μm
第二層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:FeSi系、バインダー樹脂固形分100質量部に対して5質量部
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して20質量部
層の厚み:5μm
塗工方法:ロール塗工
【0075】
[実施例6]
第一層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:Ni系、粒子径10μm、バインダー樹脂固形分100質量部に対して25質量部
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して15質量部
層の厚み:5μm
第二層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:なし
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して20質量部
層の厚み:5μm
クリヤー層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:なし
吸熱性顔料:なし
層の厚み:3μm
塗工方法:スライドホッパー型カーテン塗工
【0076】
[実施例7]
第一層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:Ni系、粒子径80μm、バインダー樹脂固形分100質量部に対して25質量部
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して15質量部
層の厚み:25μm
第二層の成分
バインダー:ポリエステル/メラミン樹脂
導電性顔料:なし
吸熱性顔料:カーボンブラック、バインダー樹脂固形分100質量部に対して20質量部
層の厚み:25μm
塗工方法:スライドホッパー型カーテン塗工
【0077】
上記各例の導電性を有する吸熱性塗装金属板を以下の試験により評価した。
成形性試験
作成した導電性を有する吸熱性塗装金属板について、油圧式エリクセンタイプのプレス加工試験機にて円筒絞り試験を行った。円筒絞り試験は、ポンチ径:50mm、ポンチ肩R:5mm、ダイス肩R:5mm、絞り比:2.3、BHF:1tの条件で行い、金属板が金型から絞り抜けるまで加工を行った。
さらに、加工部の塗膜損傷状態をルーペにて観察し、下記の基準で評価した。
塗膜に全くの損傷が無い場合:○
塗膜が部分的に損傷している場合:△
塗膜が加工部全面で激しく損傷している場合:×
【0078】
熱吸収性測定
図4に示す測定箱を作成して試験を行った。測定箱44は上面が開放されており、この開放された面を、作成した表面塗装板45で覆い、この状態で、熱源46の温度が100℃となるように、温度コントローラー47にて熱源の温度を制御して、測定箱44内に設置した熱電対48の温度Aと表面塗装板外面に貼り付けた熱電対49の温度Bを、それぞれ、デジタル温度計50で測定した。
さらに、評価する表面塗装板と同じ板厚の未処理の電気亜鉛めっき鋼板についても、同様の測定を行い、作成した表面塗装板と未処理の電気亜鉛めっき鋼板との測定値を比較して、以下の基準で評価した。
【0079】
温度Aの評価基準は以下のとおりである。
[{(電気亜鉛めっき鋼板の測定値)−(評価する表面塗装板での測定値)}≧4℃]のとき:○
[4℃>{(電気亜鉛めっき鋼板の測定値)−(評価する表面塗装板での測定値)}≧2℃]のとき:△
[2℃>{(電気亜鉛めっき鋼板の測定値)−(評価する表面塗装板での測定値)}]のとき:×
また、温度Bの評価基準は以下のとおりである。
[20℃≧{(評価する表面塗装板での測定値)−(電気亜鉛めっき鋼板の測定値)}]のとき:○
[30℃≧{(評価する表面塗装板での測定値)−(電気亜鉛めっき鋼板の測定値)}>20℃]のとき:△
[{(評価する表面塗装板での測定値)−(電気亜鉛めっき鋼板の測定値)}>30℃]のとき:×
【0080】
導電性試験
作成した表面塗装板の熱吸収性塗膜層の導電性を測定した。測定方法は、三井化学社製の抵抗率計「Loresta−EP/MCP−T360」の四端子法にて表面塗装板の表面の抵抗率を測定し、以下の基準で評価した。
抵抗率が0.1×10-2Ω未満の場合:○
抵抗率が0.1×10-2以上1.0×10-1Ω未満の場合:△
抵抗率が1.0×10-1Ω以上の場合:×
【0081】
第一層と第二層の間の界面の粗さ測定
界面の粗さは、各実施例の塗装金属板を切断して、樹脂に埋め込んだ後に研磨することで、塗膜の表面に垂直な断面を平滑にして、3500倍の走査型顕微鏡で写真を撮影した後に、その界面の粗さ(Ra)を評価した。
界面のRaは、写真の上から、OHPに用いられる透明シートをかぶせて、界面の凹凸を精密にトレースした後に、図5に示すように、縦線の部分の面積を画像処理装置で測定して、その平均値として以下の式から求めることができる。
【0082】
【数1】

【0083】
さらに、簡便に界面のRaを測定するには、写真の上から、OHPに用いられる透明シートをかぶせて、界面の凹凸を精密にトレースした後に、平均値を引いて、凹凸に沿って透明シートを切り取り、平均値の上下の凹凸部分の重量を測定して、その重量を平均長さに換算してRaを求めてもよい。
【0084】
以下、作成した塗装金属板の評価結果を下記表に記載する。
【表1】

【0085】
実施例1〜4の結果から分かるように、第二層に導電性顔料を含まない場合であっても全て良好な導電性が得られた。これは、従来技術の単一の電導性吸熱性塗膜を、本発明の方法に従って2層に分けて塗装しても良好な導電性が得られることを示している。
【0086】
スライドホッパー型カーテン塗工を用いた実施例1および2は、塗布性および成形性の両方で良好な結果が得られた。ロールコーターを用いた実施例3では、同じ条件でスライドホッパー塗工を用いた実施例2より塗布性が悪くなっているが、これは第一層での導電性顔料の粒径が20μmであり、膜厚に比較して大きく、含有量も30%となっているためであり、導電性顔料を多く添加すると塗布性が悪いことを表している。同じロールコーターを用いた実施例4では、実施例3と比較して導電性顔料の粒径も、含有量も低くなっているので塗布性はスライドホッパー型カーテン塗工と同様に良好である。しかし、成形性はロールコーターを用いた実施例3、4、共に実施例1および2のスライド塗工法よりは劣っている。
【0087】
ロールコーターを用いた場合、第一層を塗布して焼き付けて、第一層を硬化させた後に、第二層を塗布して焼き付けるため、両層間の密着性に劣る。さらに、このような塗工法の場合、両層間の粗度(Ra)が小さくなるため、界面での密着性がさらに劣る。そのため、ロールコーターで塗布した塗膜は、成形加工時に剥離しやすく、成形性に劣る。
【0088】
上層にも導電性顔料を入れ、ロールコーターを用いた実施例5の場合、塗布性、成形性共に悪くなっている。これは、ロールコーター塗工により、2コート2ベークを行っているため、第一層と第二層との界面の密着性が劣り、成形性が劣ること、また、第二層である上層のカーボン量が多く、さらに同層にFeSiを添加したため、第二層中の粒子が大いに増加して塗布性が悪くなったものであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により、熱を放出するのに適し、且つ、家電製品のアースを取るための導電性に優れた表面処理材を製造効率良く提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第一層と、第二層を表す概略図。
【図2】乾燥硬化後の本発明の導電性を有する熱吸収性塗装金属板の断面図。
【図3】本発明で使用されるスライドホッパー型塗装機の概略図。
【図4】熱吸収性測定に用いた測定箱を表す図。
【図5】塗膜界面のRa評価方法について説明する図。
【符号の説明】
【0091】
1 第一層
2 第二層
3 金属板
4 吸熱性顔料
5 導電性顔料
6 導電性を有する吸熱性塗装金属板
31 ダイ
32 鋼帯
33 カーテンガイド
34 カーテン
35 塗料パン
36 スリット
37 スライド面
38 塗料供給孔
44 測定箱
45 表面塗装板
46 熱源
47 温度コントローラー
48 熱電対
50 デジタル温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板上に、順に、バインダー樹脂および熱吸収性顔料を含有する第一層と、バインダー樹脂および前記第一層よりも高い濃度の熱吸収性顔料を含有する第二層とを含んでなる塗膜を有し、そして前記塗膜が、前記第一層膜厚、前記第二層膜厚のいずれに対しても大きい粒径の導電性顔料をさらに含有している、導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項2】
塗布前に、前記第一層がバインダー樹脂100質量部に対し、熱吸収性顔料を10〜50質量部および導電性顔料を10〜100質量部含有し、前記第二層がバインダー樹脂100質量部に対し熱吸収性顔料を10〜150質量部含有している請求項1記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項3】
前記第一層の上に前記第二層がウェットオンウェット塗布されていることを特徴とする請求項1または2記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項4】
前記第一層および前記第二層が別々にカーテンコーターで塗布されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項5】
下式:
T/R=0.6〜1.0
(式中、Rは導電性顔料の粒径であり、Tは硬化後皮膜厚である)
を満たす、請求項1〜4のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項6】
硬化後の、前記第一層と前記第二層との界面のRaが0.4〜0.6μmである、請求項1〜5のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項7】
前記導電性顔料がFeSiである、請求項1〜6のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項8】
前記導電性顔料の粒径が15〜100μmである、請求項1〜7のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項9】
前記第二層の上に、さらに1μm以下のクリヤー層を有する請求項1〜8のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板。
【請求項10】
金属板上に、バインダー樹脂、熱吸収性顔料および導電性顔料を含有する第一層と、バインダー樹脂および熱吸収性顔料を含有する第二層とを塗布し、その後前記各層を同時に硬化させることを含む、導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項11】
前記第一層がバインダー樹脂100質量部に対し、熱吸収性顔料を10〜50質量部および導電性顔料を10〜100質量部含有し、前記第二層がバインダー樹脂100質量部に対し熱吸収性顔料を10〜150質量部含有する請求項10記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項12】
前記第一層の上に前記第二層をウェットオンウェットで塗布することを特徴とする請求項10または11記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項13】
前記第一層および前記第二層を別々にカーテンコーターで塗布することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項14】
下式:
T/R=0.6〜1.0
(式中、Rは導電性顔料の粒径であり、Tは乾燥後皮膜厚である)
を満たす、請求項10〜13のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項15】
硬化後の、前記第一層と前記第二層との界面のRaが0.4〜0.6μmである、請求項10〜14のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項16】
前記導電性顔料がFeSiである、請求項10〜15のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項17】
前記導電性顔料の粒径が15〜100μmである、請求項10〜16のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。
【請求項18】
前記第二層の上に、さらに1μm以下のクリヤー層を有する請求項10〜17のいずれか一項記載の導電性を有する吸熱性塗装金属板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−175804(P2006−175804A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373518(P2004−373518)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】