説明

導電性ゴムローラ

【課題】芯金上に少なくともエピクロルヒドリンゴムを含有する加硫ゴムからなる弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、感光体汚染や外観品質に悪影響を与えること無しに、分散性や製造工程での環境面を向上させた導電性ゴムローラを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、芯金上に少なくともエピクロルヒドリンゴムを含有する加硫ゴムからなる弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、
該加硫ゴムは、加硫に必要な薬品を、次に示した(1)を40質量%以上含有し、(2)を含むマスターバッチ基材に(3)を分散させたことによるマスターバッチを、少なくともエピクロルヒドリンゴムを含むベースポリマーと混合して得られえる組成物を加硫して得られることを特徴とする導電性ゴムローラ。
(1)エピクロルヒドリンゴム
(2)液状アクリロニトリルブタジエンゴム、分子量2000以上のポリエステル系可塑剤の少なくとも一つ
(3)加硫剤または加硫促進剤の少なくとも一つの加硫に必要な薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザープリンター等の画像形成装置に組み込まれる帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンター等に組み込まれる帯電ローラ等の導電性ローラには、芯金上にゴム弾性層を形成し、ゴム弾性層上に表面層を設けた様な、複数構成によるものが一般的である。これらの導電性ローラは、低抵抗且つむらの無い均一な導電性が求められるため、導電性を持ったゴムからなるゴム弾性層が用いられることが多い。導電性を持つゴムは、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム等の極性ゴムが挙げられる。この中でも、特に、エピクロルヒドリンゴムが低抵抗であり、また、組成により抵抗の調整が可能である為、好ましく用いられる。また、これらの導電性ローラは、均一な表面性が求められている。表面に異物や分散不良等による凹凸があった場合、表層形成後にも影響し、画像不良となってしまう。そのため、ゴムに配合される薬品は、異物が無く、均一に分散されていることが必要である。
【0003】
ゴムに添加される薬品の中で、加硫剤、加硫促進剤といった加硫系薬品については、分散性向上や粉の飛散といった環境面から、薬品を予めベースポリマーに予備分散されたもの(以下マスターバッチ)が用いられることが多い。(例えば特開平08-334939) 通常マスターバッチは、70%〜80%といった高濃度に薬品を予備分散する為、粘度が高くなってしまう。そうしたマスターバッチは、特に低粘度のゴムには逆に分散し難くなってしまったり、分散に時間がかかってしまったりといった不具合があるため、軟化材や可塑剤等を使用し、適度な粘度調整を行っている。こうしたマスターバッチを使用することにより、分散等の品質が向上することが知られているが、導電性ローラ用途に使用した場合、導電性ローラに使用するゴムと相溶性の悪いベースポリマーとの組合せでは、ベースポリマーが異物になって表面性に影響するという不具合があった。また、低分子量の可塑剤を添加した場合、感光体を汚染してしまう可能性があった。こうした問題は、薬品を粉末にすることで品質の問題はある程度解消できるが、薬品を分散する際に薬品が飛散してしまい製造工程の環境面で悪影響を及ぼしてしまい好ましくない。
【特許文献1】特開特開平08-334939
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、芯金上に少なくともエピクロルヒドリンゴムを含有する加硫ゴムからなる弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、汚染や外観品質に悪影響を与えること無しに、分散性や製造工程での環境面を向上させた導電性ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下により達成される。
第一に、芯金上に少なくともエピクロルヒドリンゴムを含有する加硫ゴムからなる弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、
該加硫ゴムは、加硫に必要な薬品を、次に示した(1)を40質量%以上含有し、(2)を含むマスターバッチ基材に(3)を分散させたことによるマスターバッチを、少なくともエピクロルヒドリンゴムを含むベースポリマーと混合して得られえる組成物を加硫して得られることを特徴とする導電性ゴムローラである。
(1)エピクロルヒドリンゴム
(2)液状アクリロニトリルブタジエンゴム、分子量2000以上のポリエステル系可塑剤の少なくとも一つ
(3)加硫剤または加硫促進剤の少なくとも一つの加硫に必要な薬品。
【0006】
第二に、前記エピクロルヒドリンゴムに対して、液状アクリロニトリルゴム若しくは分子量2000以上のポリエステル系可塑剤の合計、若しくは少なくとも一方の割合が質量比で9:1から5:5であることを特徴とする前記に記載の導電性ゴムローラである。
【0007】
第三に、前記ベースポリマーがエピクロルヒドリンゴムにさらにアクリロニトリルブタジエンゴムを含むブレンド物であることを特徴とする前記の導電性ゴムローラである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、芯金上に少なくともエピクロルヒドリンゴムを含有する加硫ゴムからなる弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、分散不良等の外観品質が良好で、感光体汚染も無い導電性ゴムローラを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明の内容は、例示する範囲にとどまらない。
【0010】
本発明の導電性ゴムに使用するゴム組成物のゴム成分は、エピクロルヒドリンゴムを主成分とする。エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体があるが、その種類は特に限定されない。その中でも、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体は、エチレンオキサイドの組成を調整することにより、低抵抗化が可能であり、好ましい。更には、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体は、硫黄加硫が可能で、加硫時に加工の幅が広がることから、更に好ましく利用できる。エピクロルヒドリンゴムに加え、加工性向上等を目的として、他のポリマーをブレンドすることも差支えない。
【0011】
本発明のゴム組成物は、前記ポリマーにフィラーや加工助剤等の薬品をミキサー等で分散させた後、加硫剤や加硫促進剤等の加硫系薬品を混練り分散することで得られる。この加硫系薬品は、エピクロルヒドリンゴムを主成分とし、分子量2000以上のポリエステル系可塑剤若しくは液状アクリロニトリルゴムの少なくとも一つのバインダーに加硫剤や加硫促進剤を予備分散させたマスターバッチを用いる。
【0012】
マスターバッチは、エピクロルヒドリンゴムを主成分としたものであるが、使用するエピクロルヒドリンゴムは特に限定されない。これにより、ベースとなるゴム組成物と同等の相溶性を得ることが出来る為、分散が容易になる。また、製品の外観や分散性に影響を及ぼさない範囲で必要に応じて他のポリマーもブレンド可能である。その中でもアクリロニトリルブタジエンゴムは、ムーニー粘度違い等グレードが多様で、エピクロルヒドリンゴムとの相溶性も良く、加工性等の改良に好ましく利用できる。
【0013】
マスターバッチは50%から80%といった高濃度に薬品を分散させる為、粘度が高くなってしまう。粘度の低いゴム組成物に対し、粘度の高いマスターバッチを使用した場合、粘度の差が大きすぎる為に分散しにくくなるといった危険性がある。本発明による、分子量2000以上のポリエステル系可塑剤若しくは液状アクリロニトリルゴムのバインダーの少なくとも一方を添加することにより、適度な粘度に調整し、良好な分散状態にすることが可能となる。分子量2000より低い可塑剤を添加した場合、添加量によってはブリードアウトしてしまい、感光体汚染の原因となる可能性があり、好ましくない。
【0014】
本発明のエピクロルヒドリンゴム(A)と分子量2000以上のポリエステル系可塑剤若しくは液状アクリロニトリルゴムの少なくとも一方(B)の割合も特に限定されない。エピクロルヒドリンゴムが多すぎると硬くなり、少なすぎると粘度が下がり、保管時に変形やマスターバッチ同士の粘着が起こり、作業性が悪くなる為、(A):(B)は9:1から5:5の間で調整するとより好ましく利用できる。
【0015】
本発明に使用される加硫剤、加硫促進剤といった加硫系の薬品は、公知の物が用いられ特に限定されない。目的とする特性に応じた薬品のマスターバッチが使用可能である。
【0016】
マスターバッチの形状についても特に限定されない。スラブ状やペレット状等、加工方法や計量方法に合わせることが可能である。
【0017】
マスターバッチを混練り分散する方法も特に限定されない。オープンロールによる混練りが一般的であるが、密閉し機の混練り機を用いても差支えない。
【0018】
本発明の導電性ゴムローラの加工方法は特に限定されない。チューブ状に押出した後、加硫を行い、芯金を圧入して成形する他、クロスヘッドを装着した押出し機を用いて芯金上にゴムを被覆した後、加硫成形する方法が一般的である。
【実施例】
【0019】
以下、具体的に本発明の実施例を説明するが、例示する範囲にとどまらない。
【0020】
マスターバッチの作製
表1に示すとおり、加硫系薬品のマスターバッチ用を調整した。
【0021】
ヒドリンゴムとしてエピクロマーCG-102(商品名:ダイソー株式会社製)、アクリロニトリルブタジエンゴムとしてニポールDN401L(商品名:日本ゼオン株式会社製)、可塑剤としてアデカサイザーP200(分子量:2000、商品名:旭電化工業株式会社製)及びアデカサイザーRS735(分子量850、商品名:旭電化工業株式会社製)、液状NBRとしてニポール1312(商品名:日本ゼオン株式会社製)を使用した。
【0022】
加硫系薬品は、加硫剤はサルファックス200S(商品名:鶴見化学工業株式会社製)、加硫促進剤はノクセラーDM(商品名:大内新興化学工業株式会社製)及びノクセラーTS(商品名:大内新興化学工業株式会社製)を使用した。
【0023】
実施例1は、エピクロルヒドリンゴムと分子量2000以上の可塑剤としてアデカサイザーP200を質量比8:2で調整した。
【0024】
実施例2は、実施例1の比を5:5に調整した。
【0025】
実施例3は、エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリルブタジエンゴムを質量比8:2で調整した。
【0026】
実施例4は、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アデカサイザーP200を質量比で6:2:2で調整した。ポリマーと可塑剤の比は8:2である。
【0027】
比較例1は、エピクロルヒドリンゴムのみを用いた。
【0028】
比較例2は、エピクロルヒドリンと分子量2000より低い可塑剤としてアデカサイザーRS735を質量比3:7で調整した。
【0029】
実施例1〜4、比較例1,2は、調整した各ポリマー及び可塑剤、液状アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対し、加硫剤もしくは加硫促進剤233質量部を密閉式ニーダーで混練りし、濃度70%のスラブ状マスターバッチを作製した。
ローラ用ゴム組成物の作製
表2に示すとおりの内容を密閉式ニーダーで混練りした。マスターバッチに関してはオープンロールで混練りした。
【0030】
ローラの作製
70mmL/D20ベント式押出し機を使用し、ゴム材料は、10kg/時間の速度で9.8mmのダイスから押出したゴムを芯金に被覆することで、直径9.5mm、長さ250mmのゴムローラを作製した。分散不良に付いては、得られた9.5mmのローラの端部10mmを除去した後、8.5mmまで研磨し、33本、表面積にして、0.2平方メートル分の拡大観察を行い、分散不良をカウントした。
【0031】
感光体への汚染に関しては、水中に分散させたポリウレタン溶液に、pH5.5に調整した水中にその界面の電気的反発力で分散させた導電性酸化錫スラリーを固形分比で40質量%相当分散して塗料を調製した。そして、得られた塗料を分散不良の確認で得られたのと同様のローラ上にディッピングによってコーティングして、膜厚40μmの表面被覆層を形成した。これを電気炉にて120℃で30分間加熱乾燥し得られたローラをヒューレットパッカード製のレーザープリンターレーザージェット4000Nに使用されるカートリッジの感光体に接触させ、両端に1000gの荷重を加え、40℃,95%RHの環境下に一ヶ月放置した。放置後、荷重を外し、感光体を拡大観察し、割れ等の異常が認められなかったものを○、認められたものを×で示した。
【0032】
マスターバッチをロールで分散させる際の加工性として、マスターバッチがゴム組成物に分散されていく経過を観察した。マスターバッチの色は加硫薬品の色が反映されており、対してゴム組成物はカーボンによって黒い為、ゴム組成物に添加した後、マスターバッチの色がなくなるまでの経過を観察した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
実施例1,2、比較例1より、エピクロルヒドリンゴムに分子量2000以上の可塑剤を添加することで、分散、貼り付き共に問題ない製品が出来ることがわかる。可塑剤を添加していない比較例1は、加硫系薬品による分散不良物が確認でき、分散性に劣ることがわかる。また、ロールでの加工性もやや劣っている。
【0036】
実施例3より、分子量2000以上の可塑剤の替わりに、液状NBRを添加することでも効果は変わらないことがわかる。
【0037】
実施例4より、エピクロルヒドリンゴムにアクリロニトリルゴムをブレンドしても効果は変わらないことがわかる。これにより、ゴム組成物の組成に対応した調整が可能となる。
【0038】
比較例2より、分子量が2000より低い可塑剤を使用した場合、感光体汚染が認められ、好ましくないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金上に少なくともエピクロルヒドリンゴムを含有する加硫ゴムからなる弾性層を有する導電性ゴムローラにおいて、
該加硫ゴムは、加硫に必要な薬品を、次に示した(1)を40質量%以上含有し、(2)を含むマスターバッチ基材に(3)を分散させたことによるマスターバッチを、少なくともエピクロルヒドリンゴムを含むベースポリマーと混合して得られえる組成物を加硫して得られることを特徴とする導電性ゴムローラ。
(1)エピクロルヒドリンゴム
(2)液状アクリロニトリルブタジエンゴム、分子量2000以上のポリエステル系可塑剤の少なくとも一つ
(3)加硫剤または加硫促進剤の少なくとも一つの加硫に必要な薬品。
【請求項2】
前記エピクロルヒドリンゴムに対して、液状アクリロニトリルゴム若しくは分子量2000以上のポリエステル系可塑剤の合計、若しくは少なくとも一方の割合が質量比で9:1から5:5であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記ベースポリマーがエピクロルヒドリンゴムにさらにアクリロニトリルブタジエンゴムを含むブレンド物であることを特徴とする請求項1ないし請求項2に記載の導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2006−307893(P2006−307893A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128154(P2005−128154)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】