説明

導電性ローラおよびその製造方法

【課題】 弾性層などに影響せずに、軸芯体の露出部分に凸傷のない導電性ローラを得ることを可能とする。
【解決手段】 金属製の軸芯体と、該軸芯体の外周に配された弾性層を有し、長手方向両端は該軸芯体が露出する軸芯体露出部分を有する導電性ローラの製造方法において、軸芯体の軸芯体露出部分以外の外周面上に弾性層を設ける工程;および、軸芯体露出部分をバニッシング処理する工程を有する。金属製の軸芯体と、該軸芯体の外周に配された弾性層を有し、長手方向両端は該軸芯体が露出する軸芯体露出部分を有する導電性ローラにおいて、該軸芯体露出部分が、バニッシング処理されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置等に用いられる導電性ローラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンター等のOA機器は高画質化が進んでおり、それに伴い感光体上の静電潜像をトナーにより可視化する現像プロセスにおいては、現像剤担持ローラとして弾性層を有する現像剤担持ローラを用い、感光体に均一に圧接して現像を行う接触現像方式が提案されている。この接触現像方式においては、現像剤担持ローラは、感光体への均一な圧接幅を確保するために、弾性材料により構成される弾性層を有すると共に、電圧を印加してトナー像を感光体上に形成するために、均一な導電性や耐リーク性が求められる。
【0003】
そこで、例えば軸芯体上に、電子導電剤やイオン導電剤を分散して所望の抵抗値に調節した弾性層を形成し、その外周に、耐摩耗性やトナー帯電性、トナー搬送性を得るために、ナイロン、ウレタン等の樹脂と、適宣表面粗さを確保するための粗し粒子や、導電性を確保するための導電剤を添加した被覆材料からなる被覆層を設ける場合が多い。
【0004】
さてこれらの現像剤担持ローラは、例えば装置本体、あるいはカードリッジ本体の軸受け部分に固定して回転させるため、通常、両端に軸芯体を露出させた部分を設けて使用される。現像剤担持ローラの製造過程においては、両端に露出した軸芯体に傷が付かないよう種々の工夫が成されているが、誤って傷を付けてしまうと不良品として取り扱わざる負えない。何故なら、両端に露出した軸芯体に傷のある現像剤担持ローラを装置本体、あるいはカードリッジ本体に組み込むと軸芯体の傷による回転ムラでの画像不良や装置本体、あるいはカードリッジ本体の軸受け部分を削ってしまい、削り屑が発生し、感光体等を痛める等のトラブルが発生するためである。
【0005】
軸芯体に傷を付けない従来技術としては、不必要なゴムを除去する際、超高圧水を吹きつけ、軸芯体にキズが付かない様に不必要なゴムを除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
この方法は、不必要な軸体端部のゴム部分を除去する際、必要な部分のゴムと軸体の接着面を痛める事が多く、完成されたゴムロールは、ゴムの端部側が軸体から剥離し、端部のゴム径が太くなる所謂ラッパ状となってしまう。また、水に対し、ローラの物性が速い可逆性を持つ場合のみしか利用できない。
【0007】
また別の方法としては、ゴムロールを回転させながら、ワイヤー(金属製)をゴムロールのゴム部分の両端面に接触させてバリを除去し、さらに、ワイヤーによるゴムロールのバリ除去後にラッピングテープを軸芯体に接触させて仕上げるというものである(例えば、特許文献2)。
【0008】
この方法では、効率的に不要なゴム部分を除去することは可能であるが、金属製ワイヤーを利用するため、軸芯体の材質によっては、軸芯体に傷を付ける可能性が大きい。
【特許文献1】特開平8−174500号公報
【特許文献2】特許第3386591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、弾性層などの軸芯体上に形成される層に影響を及ぼすことなく、またこれらに影響されることなく、軸芯体の露出部分に傷、特には凸傷のない導電性ローラを得ることのできる導電性ローラの製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、軸芯体の露出部分に傷、特には凸傷のない導電性ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、金属製の軸芯体と、該軸芯体の外周に配された弾性層を有し、長手方向両端は該軸芯体が露出する軸芯体露出部分を有する導電性ローラの製造方法において、
軸芯体の軸芯体露出部分以外の外周面上に弾性層を設ける工程;および
軸芯体露出部分をバニッシング処理する工程
を有することを特徴とする導電性ローラの製造方法が提供される。
【0012】
前記バニッシング処理に、バニッシング処理部の表面粗さRzjisが2μm以下であるバニッシングローラを用いることが好ましい。
【0013】
前記バニッシング処理に、バニッシング処理部が前記軸芯体露出部分より長くかつバニッシング処理部に継ぎ目のないバニッシングローラを用いることが好ましい。
【0014】
本発明により、金属製の軸芯体と、該軸芯体の外周に配された弾性層を有し、長手方向両端は該軸芯体が露出する軸芯体露出部分を有する導電性ローラにおいて、
該軸芯体露出部分が、バニッシング処理されたことを特徴とする導電性ローラが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、弾性層などの軸芯体上に形成される層に影響を及ぼすことなく、またこれらに影響されることなく、軸芯体の露出部分に傷、特には凸傷のない導電性ローラを得ることのできる導電性ローラの製造方法が提供される。
【0016】
また本発明により、軸芯体の露出部分に傷、特には凸傷のない導電性ローラが提供される。
【0017】
導電性ローラ長手方向両端に露出する軸芯体部分に凸傷があると、画像形成装置にて回転不良による画像欠陥が生じてしまう等の不具合を発生することがあるため、不良品として取り扱われる。本発明では、導電性ローラの長手方向両端に露出する軸芯体部分をバニッシング処理することにより、軸芯体露出部分に凸傷のない導電性ローラが得られる。また、軸身体上に形成される層とは関わりなくバニッシング処理することができ、傷をなくすためにこれらの層の剥離や形状変化を引き起こすことがなく、またこれらの層の材料に係わらず、よらずに傷をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の導電性ローラとして、現像剤担持ローラ(現像ローラ)を例にとって詳述するが、現像剤担持ローラ以外の、帯電部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電性ローラにも、本発明を適用することができる。
【0019】
図1は本発明の一形態である現像剤担持ローラの概略を示すもので、(a)は現像剤担持ローラの軸線に沿った概略断面図、(b)は現像剤担持ローラを軸方向からみた図である。
【0020】
この図に示す形態の現像剤担持ローラは軸芯体1a上に弾性層1bを形成し、その外周に被覆層1cを設けたものである。軸芯体露出部分1a−1上には弾性層などの層は有しない。軸芯体露出部分には弾性層などの層を一度も形成しないでこのような現像材担持部材を得てもよく、軸芯体露出部分にも何らかの層を一旦形成した後に軸芯体露出部分上の層を取り除くことによりこのような現像材担持部材を得てもよい。
【0021】
軸芯体露出部分の長さに関しては特に限定されず、現像剤担持ローラをプロセスカードリッジに組み込んだ際、回転精度を維持した上で、ギヤを取り付け十分な駆動を与えられること、また電極からの電荷付与が成される十分な導通が得られることなどを勘案して適宜決めることができる。
【0022】
図2は現像剤担持ローラ1の長手方向両端に存在する軸芯体露出部分1a−1を、バニッシングローラ3および軸芯体露出部分を支持する支持ローラ(バックアップローラ)4にて挟み、バニッシング処理する状態を現像剤担持ローラの軸方向からみた概略図である。
【0023】
図3は上記状態を現像剤担持ローラの軸の直角方向からみた概略図である。
【0024】
〔バニッシング処理〕
現像剤担持ローラ1は、軸芯体1a上に弾性層1bおよび表面被覆層1cをこの順に設けてなるが、その製造課程において、軸芯体露出部分1a−1の表面上に傷が付いたものが発生することがあり、このようなものは画像形成装置にて回転不良による画像欠陥が生じるため、不良品として廃棄されていた。
【0025】
本発明においては、現像剤担持ローラの軸芯体露出部分の表面上に傷が付いた現像剤担持ローラについて、軸芯体露出部分のみをバニッシングローラにてバニッシング処理し、画像不良を引き起こす原因となる軸芯体表面上に出来た凸傷を押し潰すことで、良品として取り扱うことが出来る。また現像剤担持ローラの製造最終仕上げ工程にて、全ての現像剤担持ローラについて、軸芯体露出部分のみをバニッシング処理することで、軸芯体の表面上に出来た傷が原因の画像不良を無くすことも出来る。すなわち、軸芯体露出部分に傷のある現像材担持部材を選んでバニッシング処理してもよいし、このような選別は行わずに製造する全ての現像材担持部材についてバニッシング処理してもよい。
【0026】
一般に軸芯体は鋼材上にメッキを施して用いられる事が多いが、本発明では、メッキを施す芯金面上の脱脂および界面活性剤の除去を十分に行ったうえでメッキ処理してある芯金を用い、またバニッシング時のバニッシングローラの押し圧をメッキの剥離等を引き起こさない程度に設定することで、メッキの剥離等を引き起こすことなくバニッシング処理を施すことが出来る。
【0027】
バニッシング処理方法としては、公知の機械加工などで用いられるバニッシングローラを用いる処理方法を利用することができる。軸芯体上の凸傷を押し潰し平滑にして回転不良等を優れて回避する観点から、バニッシングローラのバニッシング処理部の表面粗さRzjis(JIS B0601に規定される十点平均粗さ)は、2μm以下であることが好ましく、更には0.5μm以下が好ましい。
【0028】
またバニッシング処理部の表面粗さRzjisの下限については、バニッシング処理して求められる芯金の表面の平滑性から考慮すると、特に限定はされないが、バニッシングローラの表面の平滑性の維持管理の観点から0.05μm以上が好ましい。
【0029】
軸芯体露出部分の表面の平滑性の観点から、バニッシングローラのバニッシング処理部が、軸芯体露出部分の軸長さより長く、かつバニッシングローラの処理部分に継ぎ目のないことが好ましい。
【0030】
弾性層などの軸芯体上に設けられた層に影響を与えないようにする観点から、軸芯体露出部分1a−1と弾性層および表面被覆層1c端部の境界部分については、図3に示すようにバニッシングローラ3およびバックアップローラ4が弾性層および表面被覆層の端部と接触しないようにすることが好ましい。この場合、弾性層および表面被覆層端部側の僅かな一部の軸芯体をバニッシング処理出来なくなるが、現像剤担持ローラをプロセスカードリッジ内に組み込み用いる場合、この部分については、周動面としてプロセスカードリッジ筐体や駆動ギヤとして用いられることはないので特に問題とならない。
【0031】
またバニッシング処理は、図2および3に示されるように、バニッシングローラと軸芯体露出部分を支持する支持ローラとを少なくとも用いる(少なくとも合計2本のローラを用いる)ことが好ましい。なお、支持ローラとしてバニッシングローラを用いること、すなわち2本以上のバニッシングローラを用いてバニッシング処理することもできる。
【0032】
また必要に応じ、バニッシングローラを3本以上にすることも可能であるが、この場合、3本以上のバニッシングローラ直径が同じであることが好ましく、また配置されるバニッシングローラと処理する芯金の位置関係は、芯金を回転中心としたとき、バニッシングローラの回転中心が等間隔の角度になるように配置されてることが好ましい。
【0033】
また支持ローラについては、そのものがバニッシング処理を施す機能を有することも可能であるが、単なる支持ローラとする場合には、支持ローラが変形することなく、芯金を押すことが出きる材質である支持ローラを用いることができる。
【0034】
バニッシングローラの材質としては、軸芯体の硬度より高い材質のものが用いられることが好ましく、具体的には炭素工具鋼、高速度鋼、合金工具鋼、高炭素クロム軸受鋼等の超硬合金類が好ましい。
【0035】
バニッシング処理時のバニッシングローラの押し圧(処理圧)については、処理する軸芯体の材質によっても異なり、バニッシング処理により表面粗度の変化を測定しながら設定することができる。
【0036】
一般的にはバニッシング処理時は、切削油等で被加工物を浸して処理をスムーズに行うが、本発明においては現像剤担持ローラの弾性層および表面被覆層などを汚染することを防止する観点から、バニッシング処理時に、芯金の回転数をバニッシングローラの回転に従動させることで、芯金上に滑り等で発生する傷を抑制できるため、油や溶剤、水などの液体を用いないで、処理することができる。あるいは、現像剤担持ローラの弾性層および表面被覆層などをマスキングすることにより、油や溶剤、水などの液体を用いることも可能となる。また、現像剤担持ローラの弾性層および表面被覆層などを侵さず、かつ現像剤担持ローラの物性に影響を与えない溶剤であれば、マスキングする必要もなく容易にバニッシング処理を施すことが出来る。このような溶剤としては、例えばアルコール系溶剤や水などが挙げられ、バニッシング処理後、現像剤担持ローラに付着した溶剤等をエアーブロー等で速やかに除去することが好ましい。
【0037】
軸芯体露出部分に付いた凸傷は、以上に記載したバニッシング処理にて消去するかもしくはRzjisが2μm以下になることが好ましい。また一方、凹傷については、軸芯体露出部分に凹傷の付いたものをプロセスカードリッジ内に組み込み画出ししても、特に回転不良等を引き起こさないため、問題とならない。
【0038】
〔導電性ローラ〕
本発明に用いられる軸芯体1aとしては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属製丸棒を用いることができる。切削加工の容易さおよび切削後の寸法形状の維持の観点から特に鉄を主成分とする快削鋼が好ましい。更に、これらの金属製丸棒の表面に防錆や耐傷性付与を目的として導電性を損なわない範囲でメッキ処理を施しても構わない。
【0039】
弾性層1bは、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム材料に、必要に応じて電子導電性を有する導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)或いはイオン導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩)を添加したものや、導電性ゴム等を適宜用いることができる。この場合、導電剤は2種以上併用してもよい。導電剤の添加量は、ゴム材料100質量部に対し、通常、2〜20質量部とすればよい。現像剤担持ローラの場合においては、硬さ、圧縮永久歪みを考慮した場合、付加反応型導電性シリコーンゴムが好ましく、また弾性層の厚みは通常、1〜6mmとするのが好ましい。また弾性層の導電性は105〜107Ω・cmの範囲が好ましく、その弾性率は通常のゴム材で得られる範囲であれば特に限定されない。
【0040】
被覆層はあってもなくても構わない。被覆層を1層とする場合には、この被覆層の厚みは、ブリードアウトを防止するため、通常、8μm以上とするのが好ましく、また弾性層の柔軟性を損なうことなく、また耐摩耗性を考慮すると、100μm以下とするのが好ましい。また、被覆層を多層とする場合には、各層の合計厚みが上記範囲となるようにすることが好ましい。
【0041】
被覆層1cは樹脂材料を用いて形成することができる。その樹脂材料としては、例えば、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーおよび塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらの樹脂材料は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、これらの樹脂材料は単独で、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
被覆層1cは、接触現像方式においては現像剤担持ローラ(現像ローラ)の感光体への均一な圧接が望まれ、また現像剤担持ローラ(現像ローラ)上のトナーの層厚を規制する規制ブレードとも接触していることがあるため、変形した跡が残ると、それが画像不良として現れてしまう。その様なことから、現像剤担持ローラに用いられる被覆層は、複写機やプリンタ等に用いられる環境温度に対し、高い圧縮永久歪みが要求されることからポリウレタン樹脂を用いて形成されることが好ましい。
【0043】
被覆層1cに使われるポリウレタン樹脂に用いられるポリオール化合物としては、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコールポリエチレンジアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリプロピレングリコール等の公知のポリウレタン用ポリオールが挙げられる。
【0044】
また、イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、およびそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等を好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、HDIおよびそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等である。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほど、より高い柔軟性を有するポリウレタン被覆層を生成する。
【0045】
また被覆層1cは、十分なトナー搬送性を確保するため、樹脂材料に対し絶縁性粒子を適当量添加することができる。絶縁性粒子の大きさとしては、3μmから100μmの平均粒径を有するものが望ましく、更には5μmから30μmの平均粒径のものがより好ましい。
【0046】
絶縁性粒子の材質としては、例えば、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコーン粒子等を用いることが出来る。形状としては球形が好ましい。
【0047】
絶縁性粒子の添加量については、被覆層を形成する被覆材料中の樹脂材料を100質量部としたとき、絶縁性粒子は、通常、2〜50質量部とするのが好ましい。絶縁性粒子の添加量をこの範囲とすると、現像ローラとして適度のトナー搬送性を持つ、被覆層表面が得られる。
【0048】
本発明において、被覆層は、現像剤担持ローラ全体の電気抵抗を調整する目的のため、感光体を汚染しない範囲で導電性微粒子を含むことができる。導電性微粒子としては、各種電子伝導機構を有する導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)或いはイオン導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩)の微粒子を用いることができる。上記導電剤の2種以上を併用してもよい。また導電性微粒子を樹脂材料100質量部に対し、通常、5〜100質量部添加するのが好ましい。導電性微粒子の添加量を5部以上とすると、被覆層に良好な導電性を付与することができ、100質量部までの所望量の導電性微粒子を加えることにより、プロセスカードリッジとして求められる導電性範囲を殆どコントロールすることが可能となる。導電性微粒子を樹脂材料100質量部に対し、15〜30質量部を添加するのがより好ましい。
【0049】
被覆層1cは、前述の樹脂材料を有機溶剤や水等の溶剤中に添加して適宜溶解もしくは希釈し、導電性微粒子や絶縁性微粒子を適宜分散し、塗工液を作製し、この塗工液を弾性層の周面上に塗工し、乾燥して形成することができる。
【0050】
被覆層1cの形成に用いることのできる有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンのケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。また樹脂等が溶解する場合は、水等も溶剤として用いることが出来る。
【0051】
塗工前の弾性層の表面清浄化は、公知の方法が利用でき、塗工液を弾性層の材料を注入した端部の長手方向反対側から塗工して被覆層を形成する方法と組み合わせることで、更に高い効果が期待出来る。その具体的な方法としては、例えば、圧縮空気の吹き付け、粘着テープとの接触、弾性層材料を侵さない有機溶剤での洗浄、高圧水での洗浄、水での洗浄等である。
【0052】
塗工方法としては、縦ディップ塗工、リング塗工、ロール塗工等から選択的に塗工液を塗布する方法を適宜採用できる。
【0053】
塗工液の作製において粉砕工程を加える場合は、ボールミル、サンドミル又は振動ミル等を用いることができる。
【0054】
次に、上記のような塗工方法で作製した膜を乾燥するが、乾燥の方法としては、熱を加えない風乾、加熱乾燥、熱硬化性樹脂の場合は反応温度までの加熱処理等、用いる材料によって適宜選択することが出来る。
【0055】
〔プロセスカートリッジ〕
次に本発明の一形態である現像剤担持ローラを用いたプロセスカートリッジの一例について、図を用いて説明する。図4は、このプロセスカートリッジを用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0056】
このプロセスカートリッジは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して当接または圧接した状態で現像剤を担持する現像剤担持ローラを備え、この現像剤担持ローラが感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像を現像剤像として可視化するプロセスカートリッジであり、潜像担持体としての感光ドラム21、帯電装置22、現像剤担持ローラ25、現像ブレード27、現像容器34、クリーニングブレード30を備えており、現像剤担持ローラ25として本発明の導電性ローラを用いたものである。感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジに保持される現像装置24によって現像剤たるトナー28を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0057】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ29によって記録媒体である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0058】
一方、転写されずに感光ドラム21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行う。
【0059】
現像装置24は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像剤担持ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0060】
尚、現像剤担持ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置24においては、供給ローラ26が、現像容器34内で、現像ブレード27の現像剤担持ローラ25表面との当接部に対し現像剤担持ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0061】
供給ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像剤担持ローラ25へのトナー28供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
<軸芯体>
直径8mmの丸棒状の鉄鋼製軸芯体に無電解ニッケル−リンメッキを施し、メッキ厚6μmの軸芯体を得た。
【0064】
<弾性層の作製>
次に導電性シリコーンゴムからなる弾性層を上記軸芯体上に形成した。上記軸芯体を内径16mmの円筒状金型内に金型キャビティと同心となるように設置し、両側にコマ金型、コマの間に円筒状金型を配置した金型を成型機にセットし、射出注入装置により金型内に液状ゴムを注入した。注入条件は、注入時間10秒、金型内に注入する液状ゴムの量は40mlで4ml/秒の一定速さで注入した。ここで用いた液状ゴムは、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、体積固有抵抗1×106Ωcm品)を用い片液に微量に配合された白金触媒、さらにもう片側に硬化剤を配合した2液混合の付加反応タイプのものとした。
【0065】
金型に注入された液状ゴムを成形装置内の熱盤にて加熱硬化し、脱型後、200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、軸芯体の周囲に厚み4mmの円筒状弾性層を有する現像剤担持ローラ前駆体を得た。なお、軸芯体の両端からそれぞれ15mmまでには弾性層を設けなかった。
【0066】
<被覆層の作製>
次に弾性層の周囲に被覆層を形成した。ウレタン塗料(商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10質量%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、導電剤としてカーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製)を上記ウレタン塗料の固形分100質量部に対し70質量部、絶縁性粒子として平均粒径14μmのウレタン粒子(商品名:アートパールC400、根上工業社製)を上記ウレタン塗料の固形分100質量部に対し12質量部添加した後、これらを十分に分散したものに、硬化剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)を上記ウレタン塗料の固形分100質量部に対し10質量部添加し撹拌し、塗工液を調製した。
【0067】
次にこの塗工液を縦ディップ塗工装置の循環機中に投入し、液温度23±1℃、液粘度14.0mPa・sに調整し、上記方法で得られた現像剤担持ローラ前駆体を塗工パレットに把持し、塗工液を縦ディップ塗布し、30分間室温にて風乾後、80℃のオーブンで15分乾燥し、さらに140℃のオーブンで4時間硬化し、被覆層(厚さ20μm)を形成し、現像剤担持ローラ(軸芯体の両端からそれぞれ15mmまでは軸芯体露出部分)を得た。
【0068】
<中間評価>
次に、以上の様にして得られた現像剤担持ローラ両端の軸芯体露出部分を目視にて観察し、軸芯体表面上に傷のあるものを選び出し、プロセスカードリッジに組み込み、通常環境下で画出しを行い、画像上の不具合を目視で観察した結果、軸芯体露出部分の傷が原因である画像欠陥が認められた。尚、軸芯体上の傷は、軸芯体表面を基準にしたとき凸側に10μmであった。
【0069】
<バニッシング処理>
次に、プロセスカードリッジに組み込み現像剤担持ローラ両端の軸芯体露出部分の傷が原因で画像不良が認められたものについて、プロセスカードリッジから現像剤担持ローラを取り出し、両側の軸芯体露出部分に対してバニッシング処理を実施した。
【0070】
直径150mm、長さ100mm、表面粗度Rzjis0.2μmのバニッシング処理部を有するバニッシングローラを2本用い、この2本のバニッシングローラの処理部の間に現像剤担持ローラの軸芯体露出部分を挟み込み、バニッシングローラの回転数を50rpmに回転させ10秒間バニッシング処理した。この際、バニッシングローラは弾性層および被覆層から1.0mm離した。
【0071】
バニッシング処理を終えた現像剤担持ローラを再度、プロセスカードリッジに組み込み、通常環境下(20℃、相対湿度65%)で画出しを行い、画像上の不具合を目視で観察した結果、画像欠陥は特に認められなかった。尚、軸芯体上の傷は、バニッシング処理により軸芯体表面を基準にしたとき凸側に0.36μmであった。
【0072】
以上の様に、バニッシング処理することで、画像不良が発生していた現像剤担持ローラを画像欠陥が発生しないものとすることが出来た。
【0073】
(実施例2)
実施例1と同様にしてローラ状の現像剤担持ローラを100本作成し、中間評価を行わずに全ての現像剤担持ローラについて実施例1と同様にしてバニッシング処理を行った。
【0074】
次に、以上の様にして得られた現像剤担持ローラ100本について、プロセスカードリッジに組み込み、通常環境下で画出しを行い、画像上の不具合を目視で観察したが、軸芯体露出部分の傷が原因である画像欠陥は認められなかった。
【0075】
以上の様に、現像剤担持ローラの製造工程の最後に、バニッシング処理工程を付与することで、軸芯体露出部分の傷が原因で発生する画像欠陥を引き起こす現像剤担持ローラを無くすことが出来た。
【0076】
(実施例3)
用いた2本のバニッシングローラの表面粗度Rzjisをいずれも2.0μmとした以外は実施例1と同様の試験を行った。
【0077】
実施例1と同様に、バニッシング処理を終えた現像剤担持ローラを再度、プロセスカードリッジに組み込み、通常環境下で画出しを行い、画像上の不具合を目視で観察した結果、画像上の不具合を目視で観察したが、軸芯体露出部分の傷が原因である画像欠陥は認められなかった。
【0078】
尚、軸芯体上の傷は、バニッシング処理により軸芯体表面を基準にしたとき凸側に2.0μmであった。
【0079】
(実施例4)
用いた2本のバニッシングローラの表面粗度Rzjisをいずれも2.3μmとした以外は実施例1と同様の試験を行った。
【0080】
実施例1と同様に、バニッシング処理を終えた現像剤担持ローラを再度、プロセスカードリッジに組み込み、通常環境下で画出しを行い、画像上の不具合を目視で観察した結果、傷に対応する位置に現像剤担持ローラの周長と同じピッチで僅かな濃度ムラが発生したが、許容範囲内であった。
【0081】
尚、軸芯体上の傷は、バニッシング処理により軸芯体表面を基準にしたとき凸側に2.4μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明による導電性ローラは、電子写真方式を採用した画像形成装置等に用いられる導電性ローラとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の導電性ローラの一形態である現像剤担持ローラの例を示す概略断面図である。
【図2】バニッシング処理する状態を現像剤担持ローラの軸方向からみた概略図である。
【図3】バニッシング処理する状態を現像剤担持ローラの軸の直角方向からみた概略図である。
【図4】現像剤担持ローラを有するプロセスカートリッジを用いた画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1 現像剤担持ローラ
1a 軸芯体
1a−1 軸芯体露出部分
1b 弾性層
1c 被覆層
3 バニッシングローラ
4 バックアップローラ
21 潜像担持体(感光ドラム)
22 帯電装置
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像剤担持ローラ
26 供給ローラ
27 現像ブレード
28 現像剤(トナー)
29 転写ローラ
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 定着装置
33 紙
34 現像容器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の軸芯体と、該軸芯体の外周に配された弾性層を有し、長手方向両端は該軸芯体が露出する軸芯体露出部分を有する導電性ローラの製造方法において、
軸芯体の軸芯体露出部分以外の外周面上に弾性層を設ける工程;および
軸芯体露出部分をバニッシング処理する工程
を有することを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記バニッシング処理に、バニッシング処理部の表面粗さRzjisが2μm以下であるバニッシングローラを用いる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バニッシング処理に、バニッシング処理部が前記軸芯体露出部分より長くかつバニッシング処理部に継ぎ目のないバニッシングローラを用いる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
金属製の軸芯体と、該軸芯体の外周に配された弾性層を有し、長手方向両端は該軸芯体が露出する軸芯体露出部分を有する導電性ローラにおいて、
該軸芯体露出部分が、バニッシング処理されたことを特徴とする導電性ローラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−284835(P2006−284835A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103595(P2005−103595)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】