説明

導電性物質偏在ポリマー層を有する導電部材

【課題】作製の際に環境負荷のある揮発性成分を必要とすることはなく、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との密着性に優れている導電部材を提供する。
【解決手段】導電部材は、ポリマー層と、そのポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、該ポリマー層が、モノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態で導電性物質を含む導電性物質偏在ポリマー層であることを特徴とする。モノマー吸収層とは反対側の界面近傍が、モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性物質偏在ポリマー層を有する導電部材、及び該導電部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂などのポリマー部材は、静電気が容易に発生し帯電する。例えば精密機械や電子部品の技術分野では、この静電気による物品への悪影響が懸念され、トレーやシートなどのポリマー部材に導電性を付与する各種手段が採られている。そのような手段として、ポリマー部材に導電性物質を添加混合する方法やポリマー部材の表面に導電性物質の層を設けて静電気の帯電を防止する方法が広く利用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、ポリマー中に導電性物質を添加する場合、静電気を防ぐためには多量の導電性物質の添加が必要となり、ポリマー部材の弾性率、応力緩和性、引張り破壊強度といった機械的物性が著しく変化して好ましくない場合がある。また、多量の導電性物質の添加は経済的でない。
【0004】
一方、シートやフィルムなどのポリマー部材表面に、例えば導電性物質を有する層を形成させたい場合、例えばポリマー成分をバインダーとして有機溶剤に溶かした溶液中に導電性物質を分散させて、これを基材にコーティングしてさらに溶剤を熱乾燥で揮発させることで、基材表面に導電性物質層(導電性物質を含む層)を得ることができる。この方法は、基材が溶剤などで溶けてしまう場合や、あるいは基材の耐熱性が低く熱乾燥で溶融、変形しやすい場合には困難であり、また表面が粘着剤層のように粘着性に富む場合も、基材表面へコーティングすることは困難となる。さらには、溶剤や水などの溶媒を乾燥しなければならず、環境や省エネルギーの観点からは好ましくない。
【0005】
加えて、離型処理したフィルムに導電性物質層を形成して、これを母材シートに転写することでも基材シート表面に導電性物質層を形成できるが、この場合導電性物質層表面は離型シート表面と接触していた面が露出することになるため、平滑になりやすく粒子を利用して表面を凹凸化する目的には適さない。また、基材と導電性物質層との親和性、相溶性が低い場合には、基材層と導電性物質層との接着性がとぼしく、層間で剥がれるなどの問題が生じやすい。さらに、基材と導電性物質層の双方に接着性がほとんどない場合には、両者を貼り合わせることが困難であり、どちらか一方、あるいは両方に接着剤などを塗布してから貼り合わせる必要が出てくる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−193377号公報
【特許文献2】特開平9−76423号公報
【特許文献3】特開平3−87097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、部材の作製の際に有機溶剤等の環境負荷のある揮発性成分を必要とすることはなく、導電性物質偏在ポリマー層において導電性物質の分布を制御でき、さらに導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との密着性に優れている、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する導電部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、機械的物性に優れている導電部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収層の少なくとも一方の面に、重合性モノマー及び導電性物質を少なくとも含有する導電性物質含有重合性組成物からなる導電性物質含有重合性組成物層を設ければ、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質が移動し、導電性物質偏在重合性組成物層が得られ、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させることにより、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造が得られ、さらに該積層構造の導電性物質偏在ポリマー層におけるモノマー吸収層とは反対側の層表面で導電性が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリマー層と、そのポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、該ポリマー層が、モノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態で導電性物質を含む導電性物質偏在ポリマー層であることを特徴とする導電部材を提供する。
【0010】
前記導電部材において、モノマー吸収層とは反対側の界面近傍は、モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域であることが好ましい。
【0011】
前記導電部材において、モノマー吸収層は、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層であることが好ましい。また、該モノマー吸収ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分は、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分の少なくとも1つと共通することが好ましい。
【0012】
前記導電部材において、導電性物質は、無機物であってもよく、導電性ポリマーであってもよい。また、導電性物質は、導電性粒子であることが好ましい。
【0013】
前記導電部材において、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーは、アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0014】
前記導電部材は、テープ状又はシート状の形態を有することができる。
【0015】
前記導電部材では、導電性物質偏在ポリマー層におけるモノマー吸収層とは反対側の層表面において、表面抵抗率が、1×1012Ω/□以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収層の少なくとも一方の面に、重合性モノマー及び導電性物質を少なくとも含有する導電性物質含有重合性組成物からなる導電性物質含有重合性組成物層を設けることにより、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させて、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在重合性組成物層を得た後、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させて、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する部材を得ることを特徴とする導電部材の製造方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマー及び導電性物質を少なくとも含有する導電性物質含有重合性組成物からなる導電性物質含有重合性組成物層が積層され、さらに導電性物質含有重合性組成物層上にカバーフィルムが積層された構成を有している積層体を作製し、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させて、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在重合性組成物層を得た後、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させ、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する部材を得ることを特徴とする導電部材の製造方法を提供する。該導電部材の製造方法において、カバーフィルムは、剥離性を有することが好ましい。
【0018】
前記導電部材の製造方法において、モノマー吸収層は、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層であることが好ましい。モノマー吸収ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分は、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分の少なくとも1つと共通することが好ましい。
【0019】
前記導電部材の製造方法では、導電性物質含有重合性組成物層の重合の際に光照射を用いることが好ましい。
【0020】
前記導電部材の製造方法において、導電性物質は、無機物であってもよく、導電性ポリマーであってもよい。また導電性物質は、導電性粒子であることが好ましい。
【0021】
前記導電部材の製造方法では、重合性モノマーとして、アクリル系モノマーを用いることが好ましい。
【0022】
前記導電部材の製造方法では、テープ状又はシート状の形態を有する導電部材を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の導電部材によれば、前記構成を有しているので、部材の作製の際に有機溶剤等の環境負荷のある揮発性成分を必要とすることはなく、導電性物質偏在ポリマー層において導電性物質の分布を制御でき、さらに導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との密着性に優れている。さらにまた、機械的物性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の導電部材は、ポリマー層と、そのポリマー層を構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であり、ポリマー層が、ポリマーに対して導電性物質をモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態で含有している導電性物質偏在ポリマー層である導電部材である。このような導電性物質が偏って分布する部分の形態は、通常層状の形態である。
【0025】
導電部材は、導電性物質偏在ポリマー層における、導電性物質のモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する部分(「導電性物質偏在部」や「導電性物質偏析層」と称する場合がある)で、特に導電性を発現する。つまり、導電部材は、導電性物質偏在ポリマー層におけるモノマー吸収層とは反対側の層表面(導電性物質偏在ポリマー層による面)で導電性を発現する。これは、導電性物質偏在部で導電性物質が集合していることによる。
【0026】
なお、界面は、2つの異なる物質同士が、境界面を介して接する場合の境界面のことであり、例えば、導電部材において、導電性物質偏在ポリマー層表面が大気中で存在する場合、当然に空気と接しているので、該導電性物質偏在ポリマー層表面は、界面である。また、部材の導電性物質偏在ポリマー層において、モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍を、「層表面又は層表面近傍」や「表面又は表面近傍」と称する場合がある。導電性物質偏在ポリマー層が最外層となる場合、モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍は、導電部材の表面又は表面近傍となる。
【0027】
導電性物質偏在ポリマー層が最外層である導電部材は、部材の表面又は表面近傍で特に導電性を発現するので、表面導電部材として用いることができる。ゆえに、本発明の導電部材は、ポリマーに導電性物質が層表面又は層表面近傍に偏って分布している導電性物質偏在ポリマー層と、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有しており、該積層構造中の導電性物質偏在ポリマー層表面を、導電性を発現する利用面として用いる表面導電部材であってもよい。
【0028】
導電部材の形状は、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する限り特に制限されず必要に応じて適宜選択されるが、通常テープ状やシート状の形状を有する。なお、導電部材は、導電部材の表面(導電性物質偏在ポリマー層やモノマー吸収層の表面)が粘着性を有する場合、導電性を発揮する導電性粘着テープ又はシートとして用いてもよい。また、導電部材に公知の粘着剤(感圧接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)による粘着剤層(感圧接着剤層)を設けることにより、導電性粘着テープ又はシートとしてもよい。
【0029】
また、導電部材の形状は、フィルム状であってもよい。すなわち、導電部材は、フィルム状の形状を有する導電性フィルムであってもよい。さらに、導電部材は、ロール状に巻回された形態を有していてもよく、また、シートが積層された形態を有していてもよい。
【0030】
導電部材において、導電性物質偏在ポリマー層やモノマー吸収層の表面は、カバーフィルムで保護されていてもよい。なお、カバーフィルムは、剥離性を有していてもよいし、あるいは剥離性を有さなくてもよい。
【0031】
導電部材を使用する際、カバーフィルムは、剥がされてもよいし、あるいは剥がされることなくそのままの状態を維持し、部材の一部を構成していてもよい。
【0032】
なお、モノマー吸収層として、モノマー吸収層を有するシートであるモノマー吸収性シートのモノマー吸収層を用いてもよい。また、導電部材は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0033】
[導電性物質含有重合性組成物層]
導電性物質含有重合性組成物層は、光や熱により重合可能な重合性モノマー、及び導電性物質を少なくとも含む導電性物質含有重合性組成物により形成される層である。導電性物質含有重合性組成物層は、導電性物質として導電性粒子を用いた粒子配合重合性組成物により形成される層である粒子配合重合性組成物層であってもよい。また、導電性物質含有重合性組成物層は、導電性物質として導電性粒子を用い、さらに重合開始剤として光重合開始剤を用いた粒子配合光重合性組成物により形成される粒子配合光重合性組成物層であってもよい。なお、導電性物質含有重合性組成物は、取り扱い性、塗工性等の点から、一部分が重合した部分重合組成物であってもよい。
【0034】
導電性物質含有重合性組成物は、光や熱により重合可能な重合性モノマー、導電性物質を少なくとも含有する。また、必要に応じて、重合開始剤(例えば光重合開始剤や熱重合開始剤など)を含有していてもよい。特に、導電部材において、導電性物質として導電性粒子を用いた導電性物質含有重合性組成物である粒子配合重合性組成物により形成される導電性物質偏在ポリマー層は、導電性物質含有重合性組成物による層(導電性物質含有重合性組成物層)としての粒子配合重合性組成物層を重合・硬化させた粒子配合重合硬化層であり、粒子を層中に偏在する形態で有する。
【0035】
(i)導電性物質含有重合性組成物層は、活性エネルギー線の照射や熱により重合が生じて、硬化し、ポリマー層(硬化層)を形成する。また、(ii)導電性物質含有重合性組成物層は、モノマー吸収層と接する形態で設けられると、導電性物質含有重合性組成物層の重合性モノマーがモノマー吸収層で吸収される。(iii)導電性物質が導電性物質含有重合性組成物層中で移動して、導電性物質がモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(層表面又は層表面近傍)に偏って分布している導電性物質偏在重合性組成物層になる。これらのことより、導電性物質含有重合性組成物層から導電性物質偏在ポリマー層が得られる。
【0036】
重合性モノマーは、ラジカル重合やカチオン重合などの反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能な化合物であることが重要である。このような重合性モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー等のラジカル重合性モノマー;エポキシ系樹脂を形成するエポキシ系モノマー、オキセタン系樹脂を形成するオキセタン系モノマー、ビニルエーテル系樹脂を形成するビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性モノマー;ウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールとの組み合わせ;ポリエステル系樹脂を形成するポリカルボン酸、ポリオールとの組み合わせ等が挙げられる。中でも、アクリル系モノマーが好適に用いられる。また、重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、前記アクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、オキセタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂は、それぞれアクリル系感圧接着剤(粘着剤)のベースポリマー、エポキシ系感圧接着剤のベースポリマー、オキセタン系感圧接着剤のベースポリマー、ビニルエーテル系感圧接着剤のベースポリマー、ウレタン系感圧接着剤のベースポリマー、ポリエステル系感圧接着剤のベースポリマー等として機能する。このため、導電性物質含有重合性組成物は、導電性物質を含有する粘着剤組成物(「導電性物質含有粘着剤組成物」と称する場合がある)であってもよい。従って、導電性物質含有重合性組成物が硬化することにより形成される導電性物質偏在ポリマー層は、導電性物質含有粘着剤組成物を重合させることにより形成される導電性物質偏在粘着剤層であってもよい。なお、本発明では重合性モノマーとしてアクリル系モノマーが好適に用いられるため、導電性物質含有粘着剤組成物としては、導電性物質含有アクリル系粘着剤組成物が好適に用いられる。本発明では、導電部材を構成する導電性物質偏在ポリマー層におけるポリマーは、アクリル系ポリマーであること好ましい。
【0038】
このようなアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルを好適に用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わされて用いられていてもよい。
【0039】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステル]などが挙げられる。
【0040】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。
【0041】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
このような(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルが導電性物質含有重合性組成物を構成するモノマー主成分として用いられている場合、(メタ)アクリル酸エステル[特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び酸素原子含有複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル]の割合は、例えば、導電性物質含有重合性組成物を構成するモノマー成分全量に対して60重量%以上(好ましくは80重量%以上)であることが重要である。
【0043】
また、導電性物質含有重合性組成物には、モノマー成分として、共重合性モノマーが用いられていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルが導電性物質含有重合性組成物を構成するモノマー主成分として用いられている導電性物質含有アクリル系重合性組成物では、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種の共重合性モノマーが用いられていてもよい。モノマー成分として共重合性モノマーを用いることにより、例えば、導電性物質偏在ポリマー層の粘弾性能の向上させることができ、また導電性物質偏在ポリマー層のポリマーの凝集力を高めることができる。なお、共重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有モノマー;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマーなどが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物が好適である。
【0045】
極性基含有モノマーの使用量としては、得られる導電部材の目的、用途によって適宜調整することができる。例えば導電部材を導電性物質偏在ポリマー層での密着性(例えば、ガラスやプラスチック容器などへの密着性)が求められる用途で用いる場合、モノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば、1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有モノマーの使用量が、モノマー成分全量に対して30重量%を超えると、例えば、導電性物質偏在ポリマー層が硬くなりすぎ、密着性が低下するおそれがある。なお、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、モノマー成分全量に対して1重量%未満であると)、例えば、導電性物質偏在ポリマー層の凝集力が低下して、高いせん断力が得られないおそれや、表面のベタツキが強くなりすぎて導電部材として取り扱いづらくなるおそれがある。
【0046】
また、導電部材を導電性物質偏在ポリマー層での硬い物性が求められる用途(例えば、ハードコート用途など)で用いる場合、極性基含有モノマーの使用量としては、モノマー成分全量に対して95重量%以下(例えば、0.01〜95重量%)であり、好ましくは1〜70重量%である。極性基含有モノマーの使用量が95重量%を超えると、例えば耐水性などが十分でなくなり、導電部材として使用環境(湿気、水分など)に対する品質変化が大きくなるおそれがある。また、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%以下)、硬い物性を得るためにガラス転移温度(Tg)の高い(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニルアクリレートなど)や多官能性モノマーの添加量が多くなり、得られた導電部材が脆くなりすぎるおそれがある。
【0047】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0048】
多官能性モノマーの使用量としては、得られる導電部材の目的、用途によって適宜調整することができるが、例えば導電部材を導電性物質偏在ポリマー層での密着性(例えば、ガラスやプラスチック容器などへの密着性や粘着性)が求められる用途で用いる場合、モノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であり、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性モノマーの使用量が、モノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えば、凝集力が高くなりすぎて、導電性物質偏在ポリマー層が硬くなりすぎ、密着性が低下するおそれがある。なお、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、モノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、例えば、導電性物質偏在ポリマー層の凝集力が低下して表面のベタツキが強くなりすぎて導電部材として取り扱いづらくなるおそれがある。
【0049】
また、導電部材を導電性物質偏在ポリマー層での硬い物性が求められる用途(例えば、ハードコート用途など)で用いる場合、多官能性モノマーの使用量としては、モノマー成分全量に対して95重量%以下(例えば、0.01〜95重量%)であり、好ましくは、1〜70重量%である。多官能性モノマーの使用量がモノマー成分全量に対して95重量%を超えると、重合時の硬化収縮が大きくなり均一なフィルム状あるいはシート状の導電部材を得られなくなるおそれや、得られた導電部材が脆くなりすぎるおそれがある。また、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%以下であると)、十分な耐溶媒性や耐熱性を有する導電部材を得られなくなるおそれがある。
【0050】
また、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
重合開始剤は、必要に応じて用いてもよく、例えば熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)のいずれを用いてもよい。本発明では、導電性物質偏在ポリマー層の形成に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することができる。このため、導電性物質偏在重合性組成物層を、導電性物質が層中で偏在する構造を維持して硬化させることができ、導電性物質がモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(層表面又は層表面近傍)に偏って分布している導電性物質偏在ポリマー層を容易に形成することができる。
【0052】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えばベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。光重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0054】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、導電性物質含有重合性組成物の全モノマー成分100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0055】
本発明では、導電性物質偏在重合性組成物層を硬化させて、導電性物質偏在ポリマー層を形成する際に、活性エネルギー線による硬化反応を利用してもよい。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。なお、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは、導電性物質偏在重合性組成物層を硬化させて、導電性物質偏在ポリマー層を形成することができる限り、特に制限されることはない。
【0056】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。
【0057】
導電性物質含有重合性組成物には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などが挙げられる。
【0058】
例えば、導電性物質偏在ポリマー層を着色させるために、光重合反応等の重合反応を阻害しない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。導電性物質偏在ポリマー層の着色として、黒色が望まれる場合には、着色顔料として、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの使用量としては、着色度合いや上記光重合反応を阻害しない観点から、例えば、導電性物質含有重合性組成物の全モノマー成分100重量部に対して0.15重量部以下(例えば、0.001〜0.15重量部)、好ましくは0.02〜0.1重量部の範囲から選択することが望ましい。
【0059】
導電性物質としては、集合することにより導電性を発現する物質である限り特に制限されないが、導電率が1.0×10-9(S/cm)以上、好ましくは1.0×10-6(S/cm)以上、さらに好ましくは1.0×10-3(S/cm)以上の物質である。導電率が1.0×10-9(S/cm)未満となると、表面抵抗率を低くすることが困難となる場合がある。
【0060】
このような導電性物質としては、特に制限されず、無機物であってもよく、有機物であってもよい。なお、導電性物質は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、導電性物質を2種以上組み合わせて使用する場合、無機物あるいは有機物のみを2種以上組み合わせて使用してもよいし、有機物と無機物とを組み合わせて使用してもよい。
【0061】
導電性物質としての無機物としては、例えば、ヨウ化銅;カーボンブラック、カーボンナノチューブなどのカーボン;マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ゲルマニウム、モリブテン、ロジウム、銀、インジウム、スズ、タングステン、イリジウム、白金、鉄、金などの金属;鉄酸化物、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物などが挙げられる。
【0062】
導電性物質としての有機物としては、例えば、ポリビニルベンゼンピリジウムクロリド、スルホン化ポリビニルトルエン類、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリピロール類などの導電性ポリマーが挙げられる。また金属イオン(好ましくはアルカリ金属イオン、特に好ましくはリチウムイオン)が配位したポリアルキレンオキシ単位含むポリマーを導電性ポリマーとして用いてもよい。
【0063】
このような導電性物質の形状としては、無機物を用いる場合、取扱性や、導電性物質偏在ポリマー層中で緻密な構造を有する導電性物質偏在部を得る観点からは、粒子状が好ましい。また、有機物を用いる場合、特に制限されず、粒子状や不定形状(流動状)のいずれであってもよい。すなわち、導電性物質は、導電性粒子であってもよい。
【0064】
なお、導電性物質として有機物としての導電性ポリマーを用いる場合、導線性物質偏在ポリマー層を形成する導電性物質含有重合性組成物に添加する際に粒子(導電性ポリマー粒子)として添加しても、作製された導電部材の導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質偏在部で、粒子形状を維持していてもよいし、維持しなくてもよい。従って、導電性ポリマーは、導電性物質含有重合性組成物に添加される際に粒子として添加されても、部材作製中に流動性を有するようになって、作製された導電部材の導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質偏在部で、見た目上、粒子形状を維持せず、導電性ポリマーの層状形状(コート層形状)を形成してもよい。
【0065】
導電性粒子の平均粒子径(粒径)としては、特に制限されないが、良好な導電性特性を得る観点から、導電部材の導電性物質偏在ポリマー層における導電性物質が分布する部分(導電性物質偏在部)では、なるべく粒子が緻密に詰まっている方が好ましく、例えば、0.005〜500μm(好ましくは0.01〜300μm、さらに好ましくは0.01〜100μm)の範囲から選択することができる。平均粒径は、光散乱法(動的光散乱法)により測定できる。なお、粒子は、粒径の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
粒子の形状は、真球状や楕円球状などの球状、不定形状、針状、棒状、平板状などのいずれの形状であってもよい。また、粒子は、その表面に、孔や突起などを有していてもよい。粒子の形状としては、導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質偏在部側の面(モノマー吸収層とは反対側の面)でそれぞれの粒子が互いに接触した連続的な構造を得る観点から球状以外の形状が好ましく、中でも平板状、針状が好ましい。
【0067】
なお、粒子は、1種の形状のみを選択して用いてもよいし、形状の異なる粒子を2種以上組み合わせて使用してもよい。例えば、平板状の形状を有する粒子と球状の形状を有する粒子とを組み合わせて使用してもよい。
【0068】
導電性物質偏在ポリマー層における導電性物質の使用量としては、特に制限されず、例えば導電性物質偏在ポリマー層を形成する導電性物質含有重合性組成物のモノマー成分100重量部に対して、0.001〜100重量部、好ましくは0.01〜80重量部、さらに好ましくは0.1〜80重量部となるような範囲から選択することができる。100重量部を超えるような使用量であると、導電部材の作製が困難となる場合や作製後の導電部材で強度の問題が生じることがある。なお、0.001重量部未満であると、導電性物質偏在ポリマー層の表面又は表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に平均的に分散して導電性物質を分布させることが困難となる場合がある。
【0069】
導電性物質含有重合性組成物は、上記各成分均一に混合・分散させることにより調製することができる。この導電性物質含有重合性組成物は、通常、基材上に塗布するなどしてシート状に成形するので、塗布作業に適した適度な粘度を持たせておくのがよい。導電性物質含有重合性組成物の粘度は、例えば、アクリルゴム、ポリウレタン、増粘性添加剤などの各種ポリマーを配合することや、導電性物質含有重合性組成物中の重合性モノマーを光の照射や加熱などにより一部重合させることにより調整することができる。なお、望ましい粘度は、BH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数10rpm、測定温度:30℃の条件で設定された粘度として、5〜50Pa・s、より好ましくは10〜40Pa・sである。粘度が5Pa・s未満であると、基材上に塗布したときに液が流れてしまい、50Pa・sを超えていると、粘度が高すぎて塗布が困難となる。
【0070】
なお、 導電性物質含有重合性組成物の塗布に際しては、例えば、慣用のコーター(例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0071】
導電性物質含有重合性組成物層は、例えば、モノマー吸収層により提供される面、モノマー吸収性シートのモノマー吸収面、カバーフィルムの離型処理された面などの適宜な支持体の所定の面上に、上記慣用のコーターで塗布することにより形成される。
【0072】
[モノマー吸収性シート]
本発明の導電部材は、モノマー吸収層の片面又は両面に、導電性物質含有重合性組成物による導電性物質含有重合性組成物層を形成し、該導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させ、導電性物質がモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に存在する導電性物質偏在重合性組成物層を得てから、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させ、導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を得ることにより作製する。
【0073】
従って、モノマー吸収性シートは、導電性物質含有重合性組成物中の少なくとも一つのモノマー成分を吸収することできるモノマー吸収面を提供するモノマー吸収層を少なくとも有する限り、その形態等は特に制限されない。
【0074】
モノマー吸収性シートとしては、例えば、モノマー吸収層のみで構成されたモノマー吸収性シート(「基材レスモノマー吸収性シート」と称する場合がある)、基材上にモノマー吸収層を設けたモノマー吸収性シート(「基材付きモノマー吸収性シート」と称する場合がある)が挙げられる。なお、モノマー吸収性シートが基材レスモノマー吸収性シートの場合、モノマー吸収面としてはどちらの面を用いてもよく、一方、基材付きモノマー吸収性シートの場合、モノマー吸収層表面がモノマー吸収面となる。
【0075】
(モノマー吸収層)
モノマー吸収層は、モノマー吸収性シートにおいてモノマー吸収面を提供する層であり、モノマー吸収面上に設けられた導電性物質含有重合性組成物層から少なくとも重合性モノマーを吸収することができればよい。このようなモノマー吸収層を形成するものとしては、例えば紙製シート(例えば、クラフト紙やクレープ紙、和紙など);繊維系シート(例えば、布、不織布、ネットなど);多孔質フィルム;ポリマー(アクリル系ポリマー、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂);天然ゴム;合成ゴムなどが挙げられる。なお、モノマー吸収層は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
本発明では、モノマー吸収層を形成するものとしてはポリマーを好適に用いることができる。つまり、モノマー吸収層は、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層を好適に用いることができ、また、モノマー吸収性シートとしては、ポリマー層を有するシートを好適に用いることができる。このようなポリマーとしては、特に制限されないが、モノマー成分として導電性物質含有重合性組成物中の重合性モノマーを少なくとも1種有するポリマーが好ましい。例えば、導電性物質含有重合性組成物として導電性物質含有アクリル系重合性組成物が用いられている場合、モノマー吸収層を形成するポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。導電性物質含有アクリル系重合性組成物の重合性モノマーであるアクリル系モノマーとモノマー吸収層を形成するアクリル系ポリマーの構成単位が共通するため、重合性モノマーであるアクリル系モノマーが移行しやすくなるためである。
【0077】
また、モノマー吸収層は、導電性物質含有重合性組成物から導電性物質を除いた以外は同様の組成を有する重合性組成物を重合して得られるポリマー層で構成されていてもよい。
【0078】
さらに、モノマー吸収層は、アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、オキセタン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などの粘着剤(感圧接着剤)からなる粘着剤層(感圧接着剤層)であってもよい。例えば、重合性モノマーとしてアクリル系モノマーが用いられている場合、より重合性モノマーをモノマー吸収層に吸収させる観点から、構成単位が共通するアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0079】
モノマー吸収層の体積は、重合性モノマーの吸収前と後とで比較して、一定であってもよいし、変化していてもよい。例えば、モノマー吸収層が高分子物質[例えば、上記のポリマー(アクリル系ポリマー、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂)や導電性物質含有重合性組成物から導電性物質を除いた以外は同様の組成を有する重合性組成物を重合することにより形成されるポリマーなど]により形成される層である場合、モノマー吸収層である高分子物質の層の体積は、導電性物質含有重合性組成物層から重合性モノマーを吸収することで、通常増加する。つまり、モノマー吸収層を形成する前記高分子物質は、重合性モノマーを吸収することにより膨潤する。従って、モノマー吸収層は、重合性モノマーを吸収することで体積が増加するモノマー膨潤層であってもよい。
【0080】
モノマー吸収層が例えば前記高分子物質の層である場合、モノマー吸収層は、例えば下記の基材やカバーフィルムの離型処理された面などの適宜な支持体の所定の面上に、上記慣用のコーターで前記高分子物質を塗布することにより形成される。また、支持体上に設けられたモノマー吸収層としての前記高分子物質の層は、必要に応じて乾燥及び/又は硬化(例えば、光による硬化)されていてもよい。なお、前記高分子物質は、適宜な支持体の所定の面上に塗布される際、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマーを配合することや、重合性モノマーを加熱や光照射などにより一部重合させることにより塗布に適した粘度に調整されていてもよい。
【0081】
重合性モノマーを吸収する前のモノマー吸収層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、1〜2000μm(好ましくは2〜1000μm、さらに好ましくは5〜500μm)の範囲から選択することができる。また、モノマー吸収層は、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0082】
(基材)
モノマー吸収性シートが基材付きモノマー吸収性シートである場合に用いられる基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[例えば、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、モノマー吸収層が活性エネルギー線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0084】
基材の表面は、モノマー吸収層との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤(例えば、シリコン系剥離剤)等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0085】
基材の表面が剥離剤で剥離処理(離型処理)されている場合、導電部材を使用する際、モノマー吸収層から容易に基材を剥がして、モノマー吸収層表面を露出させることができる。このように、導電部材は、モノマー吸収層表面が露出する状態で使用されてもよい。
【0086】
基材の厚みは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0087】
[カバーフィルム]
本発明では、モノマー吸収層の少なくとも一方の面に、導電性物質含有重合性組成物を用いて導電性物質含有重合性組成物層を設け、導電性物質偏在重合性組成物層を得てから、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させ、導電性物質偏在ポリマー層を形成するが、導電性物質偏在重合性組成物層を重合する際、空気中の酸素等により反応が阻害されるため、カバーフィルムで導電性物質偏在重合性組成物層表面を覆うことが好ましい。また、導電部材を利用する際には、カバーフィルムを剥がして用いてもよいし、カバーフィルムを剥がさずに用いてもよい。なお、導電部材を利用する際にカバーフィルムを剥がさずに用いる場合、カバーフィルムは、導電部材の一部として用いられる。
【0088】
カバーフィルムとしては、酸素を透過し難い薄葉体であれば特に制限されないが、光重合反応を用いる場合は透明なものが好ましい。このようなカバーフィルムとしては、例えば慣用の剥離紙などを使用することができる。具体的には、カバーフィルムとしては、例えば離型処理剤(剥離処理剤)による離型処理層(剥離処理層)を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、低接着性基材では、両面が離型面と利用することができ、一方、離型処理層を有する基材では、離型処理層表面を離型面(離型処理面)として利用することができる。
【0089】
カバーフィルムとしては、例えば、カバーフィルム用基材の少なくとも一方の面に離型処理層が形成されているカバーフィルム(離型処理層を有する基材)を用いてもよいし、カバーフィルム用基材をそのまま用いてもよい。
【0090】
このようなカバーフィルム用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。カバーフィルム用基材としては、透明性の高いプラスチック系基材フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)が用いられたカバーフィルム用基材を好適に用いることができる。
【0091】
離型処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などを用いることができる。離型処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、離型処理剤により離型処理が施されたカバーフィルムは、例えば、公知の形成方法により、形成される。
【0092】
カバーフィルムの厚みは、特に制限されないが、取り扱い易さと経済性の点から、例えば、12〜250μm(好ましくは、20〜200μm)の範囲から選択することができる。なお、カバーフィルムは単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0093】
[導電部材]
本発明の導電部材は、少なくともポリマー層と、該ポリマー層を構成するモノマー成分のうち少なくともひとつのモノマーを吸収できるモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、該ポリマー層が導電性物質をモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏在する形態(偏析する形態)で含有する導電性物質含有偏在ポリマー層(導電性物質含有偏析ポリマー層)である部材である。
【0094】
導電部材は、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏在する形態で分布している導電性物質含有偏在ポリマー層、すなわち導電性物質が層状分布している導電性物質含有偏在ポリマー層を有しているので、導電部材では、導電性を発現する物質である導電性物質が前記層状領域内で集合して存在している。このことにより、導電部材は、導電性物質が集合して存在する層状の部分(導電性物質偏在部)で良好な導電性を発揮する。
【0095】
特に、導電性物質含有偏在ポリマー層が最外層である導電部材は、最外層としての導電性物質含有偏在ポリマー層はモノマー吸収層上に設けられているので、部材表面は導電性物質含有偏在ポリマー層の導電性物質偏在部で覆われている。このため、導電性物質含有偏在ポリマー層が最外層である導電部材は、部材表面で良好な導電性を発揮する。
【0096】
このような導電部材は、モノマー吸収層の少なくとも一方の面に、少なくとも重合性モノマー及び導電性物質を含有する導電性物質含有重合性組成物を用いて、導電性物質含有重合性組成物層を設けることにより、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させて、モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(層表面又は層表面近傍)に偏って分布する形態で導電性物質を含有する導電性物質偏在重合性組成物層を得てから、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させ、導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を得ることにより作製することができる。
【0097】
また、導電部材は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面(モノマー吸収性シートのモノマー吸収層表面)に、少なくとも重合性モノマー及び導電性物質を含有する導電性物質含有重合性組成物からなる導電性物質含有重合性組成物層が積層され、さらに導電性物質含有重合性組成物層上にカバーフィルムが積層された構成を有している積層体を作製し、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させて、カバーフィルム側の層表面又は層表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に偏って分布する形態で導電性物質を含有する導電性物質偏在重合性組成物層を得た後、光照射や加熱等することにより、導電性物質偏在重合性組成物層を重合させ、カバーフィルム側の層表面又は層表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に偏って分布する形態で導電性物質を含有する導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する部材を得ることにより作製する方法を用いても作製することができる。
【0098】
従って、導電部材は、例えば、(i)特定の積層体を作製し、(ii)その後、該特定の積層体を光照射することにより製造されてもよい。
【0099】
前記特定の積層体は、例えば、少なくとも一方の面が離型処理されたカバーフィルムの離型処理された面上に、導電性物質を含有する光重合性の重合性組成物(「導電性物質含有光重合性組成物」と称する場合がある)を塗布することにより導電性物質含有光重合性組成物層を形成させたものを、モノマー吸収層を有するモノマー吸収性シートに、導電性物質含有光重合組成物層とモノマー吸収層が接触する形態で、貼り合わせることにより作製してもよい。
【0100】
導電性物質偏在重合性組成物層の重合は、導電性物質偏在重合性組成物層が重合・硬化され、導電性物質偏在ポリマー層が得られる限り、光源や熱源、照射エネルギーや熱エネルギー、照射方法や加熱方法、照射時間や加熱時間、照射や加熱の開始時期、照射や加熱の終了時期等について、特に制限されることはない。
【0101】
光照射としては、例えばブラックライトランプ、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどによる紫外線の照射が挙げられる。また、加熱としては、例えば公知の加熱方法(例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線等の電磁波を用いた加熱方法など)が挙げられる。
【0102】
例えば、本発明の導電部材は、重合性モノマーを用いた前記特定の積層体(剥離性を有するカバーフィルム、導電性物質含有光重合性組成物層、モノマー吸収性シートから構成され、且つモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に設けられた導電性物質含有光重合性組成物層の表面が剥離性を有するカバーフィルムにより保護された形態を有する特定の積層体)に紫外線などの活性エネルギー線を用いて光照射を行うことにより製造されてもよい。
【0103】
なお、モノマー吸収層における重合性モノマーの吸収は、モノマー吸収面に導電性物質含有重合性組成物層が形成された時点で生じる。また、導電性物質含有重合性組成物層を形成後重合するまでの間(例えば特定の積層体を作製してから光照射するまでの間)に生じていてもよいし、導電性物質含有光重合組成物層が重合している間(例えば光照射により導電性物質含有光重合性組成物層が硬化している間)に生じていてもよい。
【0104】
従って、導電性物質含有重合性組成物層がモノマー吸収層と接触してから重合を終えるまでの時間は長いほど好ましい。特に光照射にて重合開始が容易にコントロールできる場合は、接触後1秒以上、好ましくは5秒以上、さらに好ましくは10秒以上(通常24時間以内)経過後に光照射することが好ましい。
【0105】
導電部材における導電性物質偏在ポリマー層において、導電性物質は、表面又は表面近傍(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍)に分布する。つまり、導電性物質は、表面(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面)又は層表面(モノマー吸収層との界面とは反対側の界面)から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域(好ましくは30%以内の領域、より好ましくは20%以内の領域、さらにより好ましくは10%以内の領域)に分布する。つまり、導電部材におけるモノマー吸収層及び導電性物質偏在ポリマー層からなる積層構造(全体の厚さ)に占める導電性物質偏在部の割合(「占有率」と称する場合がある)は、50%以下(好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは10%以下)である。これは、導電性物質偏在ポリマー層を形成する導電性物質含有重合性組成物層をモノマー吸収層と接する形態で設けると、導電性物質含有重合性組成物層中の少なくとも1つのモノマー成分がモノマー吸収層に吸収され、導電性物質が導電性物質含有光重合性組成物層中を移動することによると推測される。
【0106】
なお、占有率が、50%を超えると、導電部材において、強度や部材の取扱性(特にテープ状又はシート状の形態を有する場合の取扱性)、コストの点で問題を生じる場合がある。
【0107】
また、導電性物質偏在ポリマー層における導電性物質が分布する部分(導電性物質偏在部、導電性物質偏析部)の厚み(層表面から厚み方向の全厚みに対する、導電性物質が分布する内部領域の層表面からの厚み方向への高さ;モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対する、導電性物質が分布する内部領域のモノマー吸収層とは反対側の界面からの厚み方向への高さ)は、導電性物質偏在ポリマー層に含ませる導電性物質の量を調整することにより制御することができる。従って、導電性物質の使用量を調整することにより、導電部材の導電性を制御することができる。
【0108】
導電部材の厚さとしては、特に制限されないが、取扱性、コスト面などの観点から、通常10〜2000μm(好ましくは20〜1000μm、より好ましくは30〜500μm)である。
【0109】
また、導電部材において、モノマー吸収層と導電性物質偏在ポリマー層とを合わせた厚さ(モノマー吸収層及び導電性物質偏在ポリマー層からなる積層構造の厚さ、「全体の厚さ」と称する場合がある)は、特に制限されないが、通常10〜2000μm(好ましくは20〜1000μm、より好ましくは30〜500μm)である。該全体の厚さが、10μm未満であると、導電部材において、コーティングによる膜厚の制御や部材の取扱性(特にテープ状又はシート状の形態を有する場合の取扱性)の点で問題を生じる場合がある。一方2000μmを超えると部材の製造(特にテープ状又はシート状の形態を有する部材の製造)が困難となる場合がある。
【0110】
導電部材の導電性物質偏在ポリマー層において、導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質が分布する部分である導電性物質偏在部では、導電性物質と導電性物質偏在ポリマー層のポリマー成分とが混在している。また、導電部材の導電性物質偏在ポリマー層において、導電性物質が分布する部分(導電性物質偏在部)と導電性物質が分布しない部分(「導電性物質非存在部」と称する場合がある)とは、導電性物質偏在部が層状の形態を有するので区別できる(図1〜12)。
【0111】
なお、導電部材において、使用するモノマー吸収層と重合性モノマーとの組み合わせによっては、導電性物質が導電性物質非存在部に微量分散する場合がある。しかし、このような導電性物質非存在部に微量分散している導電性物質は、導電部材の導電性に影響を与えることはない。本発明の導電部材は、導電性物質が導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質偏在部に集合して密に存在することによって、導電性を発揮するためである。
【0112】
また、導電部材の導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質非存在部の割合(「偏析率」と称する場合がある)は、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは75%以上である。偏析率が30%未満であると、導電性物質偏在部において、導電性物質が密に集合せず、導電部材の導電性が悪化する場合があるためである。
【0113】
なお、導電部材における導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質偏在部の平均の厚さは、特に制限されないが、導電部材において上記の占有率を有するような厚さが好ましい。具体的な厚さとしては、例えば、0.1〜200μm(好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μm)である。
【0114】
本発明の導電部材の導電性は、導電性物質の種類、形状、大きさ、含有量等、モノマー吸収層の組成、導電性物質偏在ポリマー層のポリマー成分の組成等、導電部材における導電性物質偏在ポリマー層及びモノマー吸収層の厚さ(全体の厚さ)などを制御することにより、所望の導電性に制御することができる。
【0115】
例えば、導電部材において、導電性物質偏在ポリマー層による面の表面抵抗率を、1.0×1012Ω/□以下(好ましくは1.0×109Ω/□以下)に制御することができる。このような表面抵抗率を有する導電部材は、静電気による物品の悪影響が懸念される分野で好適に用いることができる。例えば、精密機械分野や電子部品分野において、保管、輸送、装着の際に汚染から保護できる包装部材として用いることができる。
【0116】
厚さと導電性物質の種類及び含有量とモノマー成分とが共通する、導電性物質偏在ポリマー層と導電性物質分散ポリマー層(導電性物質が厚み方向に分散して存在するポリマー層)とを比較すると、導電性物質偏在ポリマー層は、導電性物質分散ポリマー層に比べて良好な導電性を発揮する。さらに、厚さと導電性物質の種類とモノマー成分とが共通する、導電性物質偏在ポリマー層と導電性物質分散ポリマー層とを比較すると、導電性物質偏在ポリマー層は、導電性物質分散ポリマー層では導電性が生じない少ない量の導電性物質含有量で導電性を発揮する。これは、導電性物質偏在ポリマー層は、導電性物質が集合している層状形状の導電物質偏在部を有していることによる。
【0117】
本発明の導電部材は、導電性物質偏在ポリマー層を有しているので、少ない導電性物質含有量で所望の導電性を得ることができ、良好な機械的物性を有することができる。
【0118】
なお、導電性物質偏在ポリマー層の導電性物質偏在部では導電性物質と導電性物質偏在ポリマー層のポリマー成分とが混在しているため、導電性物質が分布する導電性物質偏在ポリマー層のモノマー吸収層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍(表面又は表面近傍)では、導電性物質偏在ポリマー層のポリマー成分に基づく特性、導電性物質が元来有する特性、導電性物質が導電性物質偏在ポリマー層内で偏在することに基づく特性を発揮することができる。
【0119】
導電性物質偏在ポリマー層のポリマー成分に基づく特性としては、例えばポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の粘着性(感圧接着性)などが挙げられる。導電性物質が元来有する特性としては、導電性が挙げられる。導電性物質が導電性物質偏在ポリマー層内で偏在することに基づく特性とは、例えばポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の導電性物質の含有量を調整することによる粘着性(感圧接着性)の制御、着色などの意匠性などが挙げられる。
【0120】
従って、本発明によれば、導電部材を製造する際、導電性物質含有重合性組成物を用いても、導電性物質含有重合性組成物に含まれる揮発性成分(例えば、溶剤や有機化合物などの環境に悪影響を及ぼす成分)の蒸発除去をせずに、導電性物質偏在ポリマー層を有する導電部材を製造することができる。
【0121】
また、本発明では、モノマー吸収層としては導電性物質含有重合性組成物で用いられている重合性モノマーのうち少なくとも一つを吸収することができる限り特に制限されないため、モノマー吸収層の弾性率は特に制限されない。つまり、導電性物質含有重合性組成物で用いられている重合性モノマーのうち少なくとも一つを吸収することができる限り、粘着剤層、ポリマー層などの弾性率の低いものや、プラスチックシート、ハードコート層、着色塗膜層などの弾性率の高いもののいずれも用いることができる。このため、本発明によれば、シートの弾性率に制限されることなく、粘着剤層、ポリマー層などの弾性率の低いものや、プラスチックシート、ハードコート層、着色塗膜層などの弾性率の高いものの表面に、導電性物質による導電性を付与して、導電部材を製造することができる。
【0122】
さらに、本発明では、モノマー吸収層としてポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層を用いる場合、導電性物質含有重合性組成物で用いられている重合性モノマーのうち少なくとも一つを吸収することができる限り、そのゲル分率は特に制限されない。このため、モノマー吸収ポリマー層において、ゲル分率を98%程度まで架橋していても、あるいは、ほとんど架橋していなくても(ゲル分率:10%以下)、導電部材を得ることができる。
【0123】
このため、高い架橋度(例えば、ゲル分率が90%以上)を有しているポリマー層をモノマー吸収層として用いている導電部材では、該モノマー吸収層としてのポリマー層において、耐熱性や耐溶媒性を発揮することができる。
【0124】
また、低い架橋度(例えば、ゲル分率が10%以下)を有しているポリマー層をモノマー吸収層として用いている導電部材では、導電性を変化させることができる。例えば、熱や圧力を加えることにより、表面の導電性の大きさを小さくすることができる。
【0125】
さらにまた、本発明では、モノマー吸収層が、硬い層であれ、軟らかい層であれ、導電部材を得ることができる。
【0126】
このように本発明の導電部材は、導電性物質の種類やその量、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーの種類やその厚さ等を制御することにより、様々な特性を発揮するため、広範な分野で用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0128】
(光重合性シロップの調製例1)
モノマー成分として、シクロヘキシルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(A)」と称する場合がある)を調製した。
【0129】
(光重合性シロップの調製例2)
モノマー成分として、テトラヒドロフルフリルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(B)」と称する場合がある)を調製した。
【0130】
(光重合性シロップの調製例3)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート:90重量部、アクリル酸:10重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.05重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.05重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、高圧水銀灯により紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した組成物(シロップ)(「光重合性シロップ(C)」と称する場合がある)を調製した。
【0131】
(導電性物質含有重合性組成物の調製例1〜11)
下記表1に記載された組成のモノマー混合物に、下記表1により対応する導電性物質を所定の量加えて、小型ディスパー(商品名「T.K.ロボミックス」プライミックス社製)にて1000rpmで5分間攪拌し、導電性物質分散モノマー混合物を得た。
該導電性物質分散モノマー混合物に、下記表1により対応する追加の光重合性シロップを所定の量加えて、小型ディスパー(商品名「T.K.ロボミックス」プライミックス社製)にて1000rpmで5分間攪拌して、それぞれの導電性物質含有重合性組成物(導電性物質配合光重合性組成物)(「導電性物質含有重合性組成物(A)〜(K)」と称する場合がある)を得た。
【0132】
(導電性物質含有重合性組成物の調製例12)
光重合性シロップ(C):100重量部に、導電性ポリマー(商品名「U−201PA−60」新中村化学社製、リチウムイオンが配位したポリアルキレンオキシ単位含むポリマー):50重量部を加えて、小型ディスパー(商品名「T.K.ロボミックス」プライミックス社製)にて1000rpmで5分間攪拌し、導電性物質分散モノマー混合物を得た。
該導電性物質分散モノマー混合物に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):0.1重量部を加えて、小型ディスパー(商品名「T.K.ロボミックス」プライミックス社製)にて1000rpmで5分間攪拌して、導電性物質含有重合性組成物(「導電性物質含有重合性組成物(L)」と称する場合がある)を得た。
【0133】
【表1】

【0134】
表1のモノマー混合物の組成において、「CHA」はシクロヘキシルアクリレートを意味し、「THFA」はテトラヒドロフルフリルアクリレートを意味し、「AA」はアクリル酸を意味し、「Irg651」は光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を意味し、「Irg184」は光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を意味し、「HDDA」は1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを意味し、「C」は、前記光重合性シロップ(C)を意味する。
また、表1の導電性物質において、「FT−3000」は酸化第二スズ及びアンチモン導電層被覆ルチル型針状酸化チタン(商品名「FT−3000」石原産業社製、平均短軸粒径:0.27μm、平均長軸粒径:5.15μm)を意味し、「FS−10Pはアンチモン導電層被覆針状酸化第二スズ(商品名「FS−10P」石原産業製、平均短軸粒径:0.01〜0.02μm、平均長軸粒径:0.2〜20μm)を意味し、「SN−100P」はアンチモン導電層被覆針状酸化第二スズ(商品名「SN−100P」石原産業製、平均粒径:0.01〜0.03μm)を意味し、「SC−1」は銀微粒子(商品名「SC−1」三井金属鉱業社製、平均粒径:10.3μm)を意味し、「U−201PA−60」は、リチウムイオンが配位したポリアルキレンオキシ単位含むポリマー(商品名「U−201PA−60」新中村化学社製)を意味する。
さらに、表1の追加の光重合性シロップにおいて、「A」は前記光重合性シロップ(A)を意味し、「B」は前記光重合性シロップ(B)を意味する。
【0135】
(カバーフィルム)
カバーフィルムは、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRN38」三菱化学ポリエステルフィルム社製)を用いた。
【0136】
(基材フィルム)
基材フィルムは、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRF38」三菱化学ポリエステルフィルム製)を用いた。
【0137】
(基材付きモノマー吸収性シートの作製例1)
光重合性シロップ(A):100重量部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を均一に混合した光重合性シロップ組成物(「光重合性シロップ組成物(A)」と称する場合がある)を、前記基材フィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態で上記カバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を両面から同時に5分間照射し、該層を硬化させてモノマー吸収層を形成させることにより、モノマー吸収層表面が上記カバーフィルムで保護されている基材付きモノマー吸収性シート(「基材付きモノマー吸収性シート(A)」と称する場合がある)を作製した。
【0138】
(基材付きモノマー吸収性シートの作製例2)
光重合性シロップ(B):100重量部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を均一に混合した光重合性シロップ組成物(「光重合性シロップ組成物(B)」と称する場合がある)を、前記基材フィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが85μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態で上記カバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を両面から同時に5分間照射し、該層を硬化させてモノマー吸収層を形成させることにより、モノマー吸収層表面が上記カバーフィルムで保護されている基材付きモノマー吸収性シート(「基材付きモノマー吸収性シート(B)」と称する場合がある)を作製した。
【0139】
(基材付きモノマー吸収性シートの作製例3)
光重合性シロップ(C):100重量部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を均一に混合した光重合性シロップ組成物(「光重合性シロップ組成物(B)」と称する場合がある)を、前記基材フィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが30μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態で上記カバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を両面から同時に5分間照射し、該層を硬化させてモノマー吸収層を形成させることにより、モノマー吸収層表面が上記カバーフィルムで保護されている基材付きモノマー吸収性シート(「基材付きモノマー吸収性シート(C)」と称する場合がある)を作製した。
【0140】
(実施例1〜12)
上記カバーフィルムの離型処理された面に、実施例1〜7については部材作製後のモノマー吸収層及び導電性物質含有光重合硬化層の合わせた厚さが140μmとなるように、また実施例8〜12については部材作製後のモノマー吸収層及び導電性物質含有光重合硬化層の合わせた厚さが130μmとなるように、表2の各実施例に対応する前記導電性物質含有重合性組成物を塗布し、カバーフィルム上に導電性物質含有重合性組成物層を有するシートを作製した。
該カバーフィルム上に導電性物質含有重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルムを剥がしてモノマー吸収層を露出させた、表2の各実施例に対応する前記基材付きモノマー吸収性シートに、モノマー吸収層と導電性物質含有重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、該積層体を、積層体形成後から1分後に、光源としてブラックライトランプを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を両面から同時に5分間照射し、導電性物質含有重合性組成物層を硬化させて導電性物質含有光重合硬化層(導電性物質配合光重合硬化層)を形成させることにより、それぞれの実施例の部材を作製した。
【0141】
【表2】

【0142】
(比較例1)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、部材を作製した。
【0143】
(比較例2)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、部材を作製した。
【0144】
(比較例3)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、部材を作製した。
【0145】
(比較例4)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、部材を作製した。
【0146】
(比較例5)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、部材を作製した。
【0147】
(比較例6)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、部材を作製した。
【0148】
(比較例7)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例7と同様にして、部材を作製した。
【0149】
(比較例8)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例8と同様にして、部材を作製した。
【0150】
(比較例9)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例9と同様にして、部材を作製した。
【0151】
(比較例10)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが40μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例10と同様にして、部材を作製した。
【0152】
(比較例11)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが40μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例11と同様にして、部材を作製した。
【0153】
(比較例12)
導電性物質含有重合性組成物を部材作製後の導電性物質含有光重合硬化層の厚さが50μmとなるように塗布したこと、及び基材付きモノマー吸収性シート(A)の代わりに前記基材フィルムを用いたこと以外は、実施例12と同様にして、部材を作製した。
【0154】
(比較例13)
部材として、基材付きモノマー吸収性シート(A)を使用した。
【0155】
(比較例14)
部材として、基材付きモノマー吸収性シート(B)を使用した。
【0156】
(評価1)
実施例及び比較例について、下記の(表面抵抗率の測定方法)により、表面抵抗率を測定した。その測定結果を表3に示した。
【0157】
(表面抵抗率の測定方法)
部材のカバーフィルムを剥がし、それぞれの部材の利用面(実施例1〜12及び比較例1〜12:導電性物質含有光重合硬化層表面、比較例13及び14:モノマー吸収層表面)を露出させた。
次に、ハイレスター抵抗測定機(三菱化学社製)を用いて、部材の表面抵抗率を測定した。
【0158】
【表3】

【0159】
実施例1〜12は、それぞれの対応する比較例1〜12と比較して、いずれも表面抵抗率の値が小さかった。
【0160】
(評価2)
走査型電子顕微鏡(SEM)で、カバーフィルムを剥がしたそれぞれの部材の部材断面を観察した。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−3400Nを使用した。それぞれの部材の部材断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を、図1〜図17に示した。なお、部材を示す図において、各図におけるaの走査型電子顕微鏡写真に相当する部材断面の走査型電子顕微鏡写真の倍率は、300倍である。また、各図におけるbの走査型電子顕微鏡写真に相当する部材断面の走査型電子顕微鏡写真[部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部付近(導電性物質含有光重合硬化層におけるモノマー吸収層とは反対側の層表面近傍)を拡大したもの、あるいは部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の基材層とは反対側の層表面近傍を拡大したもの]の倍率は、2000倍である。
【0161】
部材を示す図において、各図におけるA層は導電性物質含有光重合硬化層、B層はモノマー吸収層、C層は導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部を示す。
【0162】
(評価3)
前記走査型電子顕微鏡(SEM)で部材の断面を観察することや、基材付きモノマー吸収性シート及び部材の厚さの1/1000ダイヤルゲージを用いた測定により、導電性物質含有光重合硬化層の厚さ(厚さ:A)、モノマー吸収層の厚さ(厚さ:B)、導電性物質含有光重合硬化層における導電性物質が偏在している部分(導電性物質偏在部、導電性物質偏析部)の厚さ(厚さ:C)を求めた。これらの厚さについては、表4及び表5のそれぞれの厚さの欄に示した。また、下記の(偏析率の算出方法)により偏析率を求め、さらに下記の(占有率の算出方法)により占有率を求め、これらの値を表4及び表5のそれぞれの偏析率あるいは占有率の欄に示した。
【0163】
モノマー吸収層の厚さ(厚さ:B)については、基材付きモノマー吸収性シートの厚さ(基材フィルム、モノマー吸収層及びカバーフィルムの厚さ)を測定し、該基材付きモノマー吸収性シートの厚さから、基材フィルムの厚さ及びカバーフィルムの厚さを除くことにより求めた。
【0164】
モノマー吸収層と導電性物質含有光重合硬化層との積層構造の厚さ(厚さ:A+B、全体の厚さ)については、部材の厚さを測定し、該部材の厚さ(基材付きモノマー吸収性シート、導電性物質含有光重合硬化層及びカバーフィルムの厚さ)から、基材付きモノマー吸収性シートの基材フィルムの厚さ及びカバーフィルムの厚さを除くことにより求めた。
【0165】
導電性物質含有光重合硬化層の厚さ(厚さ:A)は、前記全体の厚さ(厚さ:A+B)から前記モノマー吸収層の厚さ(厚さ:B)を除くことにより求めた。
なお、導電性物質含有光重合硬化層の厚さ(厚さ:A)は、測定値ではなく、理論値である。
【0166】
導電性物質含有光重合硬化層中の導電性物質が分布する部分(導電性物質偏在部、導電性物質偏析部)の導電性物質含有光重合硬化層表面からの厚み方向への高さ(厚さ)(厚さ:C)は、走査型電子顕微鏡による部材断面の走査型電子顕微鏡写真から求めた。
なお、導電性物質含有光重合硬化層中の導電性物質偏在部の厚さは、走査型電子顕微鏡による部材断面の走査型電子顕微鏡写真から測定した平均の値である。
【0167】
(偏析率の算出方法)
導電性物質含有光重合硬化層の偏析率は、下記式より算出した。
偏析率(%)=(1−C/A)×100
【0168】
(占有率の算出方法)
導電性物質偏在部がモノマー吸収層と導電性物質含有光重合硬化層との積層構造の厚さ(厚さ:A+B、全体の厚さ)における導電性物質含有光重合硬化層表面から深さ方向(厚さ方向)に占める割合(占有率)は、下記式より算出した。
占有率(%)=C/(A+B)×100
【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
評価1及び評価2から、実施例の部材は、表面導電性を有することが確認できた。また、溶剤等の揮発性成分の蒸発除去を行わずに、部材を得ることができた。
【0172】
部材断面の走査型顕微鏡写真(図1〜図17)から、導電性物質含有光重合硬化層中の導電性物質は、層表面やその近傍に偏って分布していることが確認できた。一方、比較例では、導電性物質含有光重合硬化層中の導電性物質は、偏って分布することはなく、層中に分散して分布することが確認できた。
【0173】
また、表4からも、実施例では導電性物質含有光重合硬化層の厚さに対して導電性物質偏在部の厚さが薄くなっていることから、導電性物質は導電性物質含有光重合硬化層中で偏って分布していることが確認できた。一方、表5からも、比較例では、導電性物質含有光重合硬化層の厚さと導電性物質偏在部の厚さとが同一であり、層中に分散して分布することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1は、実施例1の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、実施例2の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例3の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例4の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例5の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例6の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例7の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、実施例8の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、実施例9の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、実施例10の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、実施例11の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】図12は、実施例12の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、比較例2の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、比較例5の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】図15は、比較例8の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】図16は、比較例9の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】図17は、比較例10の部材の部材断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0175】
1a 実施例1の部材の部材断面
1b 実施例1の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
2a 実施例2の部材の部材断面
2b 実施例2の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
3a 実施例3の部材の部材断面
3b 実施例3の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
4a 実施例4の部材の部材断面
4b 実施例4の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
5a 実施例5の部材の部材断面
5b 実施例5の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
6a 実施例6の部材の部材断面
6b 実施例6の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
7a 実施例7の部材の部材断面
7b 実施例7の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
8a 実施例8の部材の部材断面
8b 実施例8の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
9a 実施例9の部材の部材断面
9b 実施例9の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
10a 実施例10の部材の部材断面
10b 実施例10の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
11a 実施例11の部材の部材断面
11b 実施例11の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の導電性物質偏在部
12a 実施例12の部材の部材断面
13a 比較例2の部材の部材断面
13b 比較例2の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の基材層とは反対側の層表面近傍
14a 比較例5の部材の部材断面
14b 比較例5の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の基材層とは反対側の層表面近傍
15a 比較例8の部材の部材断面
15b 比較例8の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の基材層とは反対側の層表面近傍
16a 比較例9の部材の部材断面
16b 比較例9の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の基材層とは反対側の層表面近傍
17a 比較例10の部材の部材断面
17b 比較例10の部材の部材断面における導電性物質含有光重合硬化層の基材層とは反対側の層表面近傍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー層と、そのポリマーを構成する少なくとも1種のモノマー成分を吸収可能なモノマー吸収層との積層構造を有する部材であって、該ポリマー層が、モノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する形態で導電性物質を含む導電性物質偏在ポリマー層であることを特徴とする導電部材。
【請求項2】
モノマー吸収層とは反対側の界面近傍が、モノマー吸収層とは反対側の界面から厚み方向の全厚みに対して50%以内の領域である請求項1記載の導電部材。
【請求項3】
モノマー吸収層が、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層である請求項1又は2記載の導電部材。
【請求項4】
モノマー吸収ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分が、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分の少なくとも1つと共通する請求項3記載の導電部材。
【請求項5】
導電性物質が、無機物である請求項1〜4の何れかの項に記載の導電部材。
【請求項6】
導電性物質が、導電性ポリマーである請求項1〜4の何れかの項に記載の導電部材。
【請求項7】
導電性物質が、導電性粒子である請求項1〜6の何れかの項に記載の導電部材。
【請求項8】
導電性物質偏在ポリマー層のポリマーがアクリル系ポリマーである請求項1〜7の何れかの項に記載の導電部材。
【請求項9】
テープ状又はシート状の形態を有する請求項1〜8の何れかの項に記載の導電部材。
【請求項10】
導電性物質偏在ポリマー層におけるモノマー吸収層とは反対側の層表面において、表面抵抗率が、1×1012Ω/□以下である請求項1〜9の何れかの項に記載の導電部材。
【請求項11】
重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収層の少なくとも一方の面に、重合性モノマー及び導電性物質を少なくとも含有する導電性物質含有重合性組成物からなる導電性物質含有重合性組成物層を設けることにより、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させて、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在重合性組成物層を得た後、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させて、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する部材を得ることを特徴とする導電部材の製造方法。
【請求項12】
重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマー及び導電性物質を少なくとも含有する導電性物質含有重合性組成物からなる導電性物質含有重合性組成物層が積層され、さらに導電性物質含有重合性組成物層上にカバーフィルムが積層された構成を有している積層体を作製し、導電性物質含有重合性組成物層内で導電性物質を移動させて、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在重合性組成物層を得た後、該導電性物質偏在重合性組成物層を重合させ、導電性物質がモノマー吸収層とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布している導電性物質偏在ポリマー層を形成し、導電性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有する部材を得ることを特徴とする導電部材の製造方法。
【請求項13】
カバーフィルムが、剥離性を有する請求項12記載の導電部材の製造方法。
【請求項14】
モノマー吸収層が、ポリマーからなるモノマー吸収ポリマー層である請求項11〜13の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。
【請求項15】
モノマー吸収ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分が、導電性物質偏在ポリマー層のポリマーを構成するモノマー成分の少なくとも1つと共通する請求項14記載の導電部材の製造方法。
【請求項16】
導電性物質含有重合性組成物層の重合の際に光照射を用いる請求項11〜15の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。
【請求項17】
導電性物質が、無機物である請求項11〜16の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。
【請求項18】
導電性物質が、導電性ポリマーである請求項11〜16の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。
【請求項19】
導電性物質が、導電性粒子である請求項11〜18の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。
【請求項20】
重合性モノマーとして、アクリル系モノマーを用いる請求項11〜19の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。
【請求項21】
テープ状又はシート状の形態を有する導電部材を得る請求項11〜20の何れかの項に記載の導電部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−132033(P2009−132033A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309932(P2007−309932)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】