説明

導電性金属部形成方法、光透過性導電膜及び電磁波遮蔽材料

【課題】透過率の高い光透過性導電膜及び電磁波遮蔽材料を提供する。
【解決手段】支持体上にハロゲン化銀粒子を含む少なくとも1層の乳剤層を有する感光材料をパターン露光後、連続して現像処理工程、定着処理工程、物理現像処理工程を施すことによる導電性金属部形成方法において、更に、銀溶解処理工程を施すことを特徴とする導電性金属部形成方法及び光透過性導電膜、並びに光透過性が高い電磁波遮蔽材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性金属部形成方法、光透過性導電膜及び電磁波遮蔽材料に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、光透過性電磁波遮蔽膜を作製する場合、印刷やフォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工や、最近ではインクジェットとメッキの組み合わせ等が知られている。
【0003】
しかしながら、昨今では、光透過性電磁波遮蔽膜が微細化しており、より微細なメッシュにより、電磁波遮蔽能と透明性の両立が望まれている。このため、インクジェットや印刷ではパターン精度が不足し、フォトリソエッチングでは、工程が煩雑かつ複雑で、生産コストが高いという間題があった。
【0004】
そこで、ハロゲン化銀感光材料をパターン露光後、現像処理を行って金属銀部による導電性パターンを作製する方法が提案されているが、銀粒子間にバインダーが存在しており、現像では高度な導電性は望めない。また、導電性を補助するために、現像後のメッキが提案されているが無電解メッキではメッキの選択性が不足しており、触媒等の付着処理が必要であり、触媒等の付着処理を行っても、なかなか選択性が得られない。電解メッキでは、電気を通すための事前の導電性が必要となるため、現像では困難であり、乳剤を厚くつける必要がある。そのため、光透過性が犠牲になる。
【0005】
また、特許文献1には、ハロゲン化銀感光材料をパターン露光後、現像処理を行った後、物理現像して導電性を上げる方法が提案されている。しかし、液中で還元され粗大化した浮遊銀がフィルム上のメッシュおよび透過部に付着して汚れとなることがある。また化学現像時にフィルムに付着した銀スラッジ等の異物が核となり物理現像されて銀汚れとなる場合もある。透過部に付着した銀汚れは次工程の電解めっき処理で溶解するが、メッシュ上の銀汚れは通電によりめっきされ、そのまま汚れが残って故障となる懸念がある。
【特許文献1】国際公開第06/98333号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透過率の高い光透過性導電膜及び電磁波遮蔽材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.支持体上にハロゲン化銀粒子を含む少なくとも1層の乳剤層を有する感光材料をパターン露光後、連続して現像処理工程、定着処理工程、物理現像処理工程を施すことによる導電性金属部形成方法において、更に、銀溶解処理工程を施すことを特徴とする導電性金属部形成方法。
【0009】
2.前記銀溶解処理工程を前記物理現像処理工程の前に行うことを特徴とする前記1記載の導電性金属部形成方法。
【0010】
3.前記銀溶解処理工程を前記物理現像処理工程の後に行うことを特徴とする前記1記載の導電性金属部形成方法。
【0011】
4.前記物理現像処理工程が2〜4回あり、かつ、前記銀溶解処理工程を該物理現像処理工程の間で行うことを特徴とする前記1記載の導電性金属部形成方法。
【0012】
5.前記銀溶解処理工程が少なくとも2回以上行われることを特徴とする前記4記載の導電性金属部形成方法。
【0013】
6.前記物理現像処理工程の後に、更にメッキを施すことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載記載の導電性金属部形成方法。
【0014】
7.前記1〜6のいずれか1項記載の導電性金属部形成方法により製造されたことを特徴とする光透過性導電膜。
【0015】
8.前記7記載の光透過性導電膜を有することを特徴とする電磁波遮蔽材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、物理現像処理工程の前、間及び後の少なくとも何れかの時点で銀溶解処理工程を組み入れ、フィルム上に付着した銀汚れを除去することにより透過率の高い光透過性導電膜及び電磁波遮蔽材料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を更に詳しく説明する。本発明は、物理現像処理工程の前、間及び後の少なくとも何れかの時点で銀溶解処理工程を組み入れ、フィルム上に付着した銀汚れを除去することにより透過率の高い光透過性導電膜を提供することが出来る。
【0018】
(銀溶解処理工程)
本発明の銀溶解処理工程は物理現像処理の前、間及び後の少なくとも何れかの時点で行われる。銀溶解処理工程で用いる処理液は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理で広く用いられる有機酸の第二鉄錯塩(酸化剤)およびチオ硫酸塩(定着剤)を含有する公知の漂白定着液を使用することが出来る。漂白定着液において、好ましいpH領域は、4.5〜6.2であり、更には5〜6が好ましい。漂白定着液の処理温度は20〜50℃であり、好ましくは30〜45℃である。処理時間は25秒〜3分である。好ましくは25秒〜90秒、より好ましくは35〜75秒、更に好ましくは45〜65秒である。漂白定着液への補充量は感光材料1m2当たり、50〜2000ミリリットルが好ましい。特に好ましくは100〜1000ミリリットルである。
【0019】
その他の銀溶解処理液としては、硝酸もしくは硝酸銀などの酸化性水溶液であっても良い。
【0020】
《金属銀パターンの作製方法》
本発明の金属銀パターンの作製方法は、透明支持体を有するハロゲン化銀感光材料をパターン露光後、化学現像を行い、さらに前記物理現像液を用いて物理現像を行って金属銀パターンを作製することを特徴とする。
【0021】
《ハロゲン化銀感光材料》
以下、本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料について説明する。
【0022】
(透明支持体)
本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は、支持体としてプラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス等を用いることができる。プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0023】
透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、上記プラスチックフィルムはPET、PEN、TACであることが好ましい。
【0024】
ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は好ましくは70〜100%であり、より好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。また、本発明では、色気調節剤として前記プラスチックフィルム及びプラスチック板を本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0025】
(感光層)
本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は、光センサーとして感光性銀塩粒子を含有する感光層が支持体上に設けられる。感光層は、感光性銀塩粒子のほか、バインダー、溶媒等を含有することができる。
【0026】
〈感光性銀塩粒子〉
本発明に用いられる感光性銀塩粒子としては、ハロゲン化銀粒子等の無機銀塩粒子及び酢酸銀等の有機銀塩粒子が挙げられるが、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀粒子を用いる。本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀粒子についてさらに説明する。
【0027】
本発明では、ハロゲン化銀粒子を用いる種々のハロゲン化銀感光材料において従来使用されている技術は、本発明においてもそのまま用いることもできる。
【0028】
ハロゲン化銀粒子に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。
【0029】
ハロゲン化銀粒子については、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0030】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状等)、八面体状、十四面体状等様々な形状であることができる。
【0031】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、ハロゲン化銀粒子写真乳剤において、硬調な階調を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特にロジウムイオンやイリジウムイオン等の遷移金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。
【0032】
本発明では、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、ハロゲン化銀粒子写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金増感、パラジウム等の貴金属増感、イオウ、セレン、テルル等のカルコゲン増感、還元増感等を利用することができる。
【0033】
〈バインダー〉
本発明に係る感光層において、バインダーは、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ銀塩含有層と支持体との密着を補助する目的で用いることができる。本発明においては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0034】
バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0035】
本発明に係る感光層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。感光層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/4〜100であることが好ましく、1/2〜2であることがさらに好ましい。感光層中にバインダーをAg/バインダー体積比で1/4以上含有すれば、物理現像及び/またはめっき処理工程において金属粒子同士が互いに接触しやすく、高い導電性を得ることが可能であるため好ましい。
【0036】
〈溶媒〉
本発明に係る感光層の塗布液等の調製において用いることができる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0037】
《露光》
本発明では、支持体上に設けられた感光層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0038】
感光層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。
【0039】
《化学現像》
本発明では、感光層を露光した後、化学現像する。化学現像は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の化学現像を主体とする現像処理の技術を用いることができる。現像液については化学現像を主体とする現像液であれば、特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、また、D−85等のリス現像液を用いることができる。
【0040】
ここで、「化学現像」とは、潜像銀を触媒として現像されてできる画像の金属銀が、個々のハロゲン化銀粒子を構成する銀イオンが還元されて形成される現像過程をいう。
【0041】
《定着》
本発明では、未露光部分の銀塩(ハロゲン化銀粒子)を除去して安定化させる定着が行われる。本発明における定着は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着の技術を用いることができる。
【0042】
本発明に使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。定着剤の保恒剤としては、現像組成物で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0043】
《物理現像》
本発明では、前記露光及び化学現像により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、下記物理現像液を用いて金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像を行う。
【0044】
(物理現像液)
本発明の物理現像では、酸性下で、硝酸銀(銀化合物)とハイドロキノン(還元剤)の還元反応を現像銀存在下で行う(物理現像処理)と、現像銀付近で反応速度が選択的に速くなり、反応で発生した銀粒子が現像銀に早く付着するため、パターン露光後、白黒の化学現像により現像銀パターンを作製した場合、物理現像処理により導電性パターンを作製することが可能である。銀を付着させて導電性を確保するため、少ない付着量で高い導電性を得ることができる。銀は、非常に導電性、延性が高い金属であり、少ない付着量で高い導電性を確保できると共に、屈曲等にも強い。また、白黒現像でパターンを作製できるため、非常に微細なパターンが作製可能である。
【0045】
(緩衝剤)
また、本発明の物理現像液を用いた還元反応は、非常に短時間で反応が進むため、液の寿命が短いことが問題となるが、物理現像時の還元反応では硝酸が発生し、さらに酸性側に動くため、安定な反応を達成するため、クエン酸塩、リン酸水素塩、アンモニウム塩等の緩衝剤の存在下に行うことが好ましい。
【0046】
(還元剤)
本発明の物理現像液の還元剤としては、メトール、ハイドロキノン、クロロハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルホン酸塩、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、エリソルビン酸等が挙げられるが、メトール、ハイドロキノン、フェニドン、アスコルビン酸が好ましい。
【0047】
(銀化合物)
本発明の物理現像液の還元剤としては、硝酸銀が好ましい。
【0048】
(還元剤/銀化合物)
本発明の物理現像液の還元剤/銀化合物比率は5.1/5〜1/20当量とすることで、飛躍的に物理現像液寿命が延長する。また、ハイドロキノンが非常に過剰な反応系であるため、硝酸銀をさらに添加することで、さらに反応寿命を延長することができる。
【0049】
(物理現像温度)
還元反応は不可逆反応であるため、比較的低温で行うことで、選択的な反応が達成でき、物理現像液寿命を延ばすことができる。具体的な物理現像温度は、0〜40℃で行うことが好ましく、0〜30℃がより好ましく、15〜30℃がさらに好ましい。
【0050】
(ランニング補充条件)
物理現像液に、銀化合物、還元剤、緩衝剤を補充し、前記物理現像液中の銀化合物と還元剤の比率を1:5〜1:20の範囲に保持することで、物理現像を安定化させることができる。
【0051】
(定着後の物理現像)
物理現像は、化学現像後、定着を行う前後に行うことができるが、化学現像後、定着を行った後に、物理現像を行うことが好ましい。
【0052】
(めっき処理)
本発明では物理現像のみで導電性金属粒子を金属性部に担持させることが可能であるが、物理現像後、さらにめっき処理を行い、導電性金属粒子を金属銀部に担持させ高い導電率を得ることができる。
【0053】
本発明において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、または無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができる。
【0054】
無電解銅めっき液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅めっき浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0055】
本発明におけるめっき処理時のめっき速度は、緩やかな条件で行うことができ、さらに5μm/hr以上の高速めっきも可能である。めっき処理において、めっき液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTA等の配位子等種々の添加剤を用いることができる。
【0056】
《電磁波遮蔽材料》
本発明の金属銀パターン形成方法によって、微細パターンが可能で、導電性と光透過性が高い電磁波遮蔽材料が安価に得られる。
【0057】
(導電性金属部)
本発明の導電性金属部は、前述したパターン露光及び現像処理により形成された金属銀部を物理現像及びめっき処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成される。
【0058】
本発明の透光性の電磁波遮蔽材料(導電性金属部)の表面抵抗値は、10Ω/□以下であることが好ましく、2Ω/□以下であることがより好ましく、0.2Ω/□以下であることが最も好ましい。
【0059】
本発明における導電性金属部は、目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は30μm未満であることが好ましく、20μm未満であることがより好ましく、15μm未満であることが最も好ましい。
【0060】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。開口率とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は90%である。
【0061】
(光透過性部)
本発明における光透過性部とは、導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。
【0062】
光透過性部における透過率は、支持体の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される。
【0063】
本発明の透過率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0064】
《電磁波遮蔽以外の機能性材料》
本発明では、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波遮蔽材料用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレアー層(共にぎらつき防止機能を有する)、近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋等の汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層等を設けることができる。これらの機能層は、銀塩含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
【0065】
これらの機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイ用パネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板等の透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルター(または単にフィルター)と呼び、プラズマディスプレイ用であれば、プラズマディスプレイ用フィルターと呼びぶ。
【0066】
反射防止機能を付与した反射防止層は、外光の反射を抑えてコントラストの低下を抑えるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。また、必要であればノングレアー層またはアンチグレアー層を設けることもできる。ノングレアー層やアンチグレアー層は、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は熱硬化あるいは光硬化等を用いることができる。また、ノングレア処理またはアンチグレア処理をしたフィルムを該フィルター上に張り付けることもできる。更に必要で有ればハードコート層を設けることもできる。
【0067】
近赤外線吸収層は、金属錯体化合物等の近赤外線吸収色素を含有する層、または、銀スパッタ層等である。ここで銀スパッタ層とは、誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで、近赤外線、遠赤外線から電磁波まで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層よりはじまり3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。
【0068】
特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層は、PDPが青色を発光する蛍光体が青色以外に僅かであるが赤色を発光する特性を有しているため、青色に表示されるべき部分が紫がかった色で表示されるという問題があり、この対策として発色光の補正を行う層であり、595nm付近の光を吸収する色素を含有する。
【0069】
本発明の導電性パターンの作製方法で得られる電磁波遮蔽材料は、良好な電磁波遮蔽性及び透過性を有するため、透過性の電磁波遮蔽材料として用いることができる。さらに、回路配線等の各種の導電性配線材料として用いることができる。特に本発明の透光性の電磁波遮蔽材料は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)等のディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板等、特にプラズマディスプレイパネルで用いられる透光性の電磁波遮蔽材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施態様における各種条件は、本発明の特徴や趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0071】
実施例1
〔感光材料の作製〕
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
反応容器内で下記溶液Aを34℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて高速に撹拌しながら、硝酸(濃度6%)を用いてpHを2.95に調整した。引き続き、ダブルジェット法を用いて下記溶液Bと下記溶液Cを一定の流量で8分6秒間かけて添加した。添加終了後に、炭酸ナトリウム(濃度5%)を用いてpHを5.90に調整し、続いて下記溶液Dと溶液Eを添加した。
【0072】
(溶液A)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 18.7g
塩化ナトリウム 0.31g
下記溶液I 1.59ml
純水 1246ml
(溶液B)
硝酸銀 169.9g
硝酸(濃度6%) 5.89ml
純水にて317.1mlに仕上げる
(溶液C)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 5.66g
塩化ナトリウム 58.8g
臭化カリウム 13.3g
下記溶液I 0.85ml
下記溶液II 2.72ml
純水にて317.1mlに仕上げる。
【0073】
(溶液D)
2−メチル−4ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラアザインデン 0.56g
純水 112.1ml
(溶液E)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 3.96g
下記溶液I 0.40ml
純水 128.5ml
(溶液I)
界面活性剤:ポリイソプロピレンポリエチレンオキシジコハク酸エステルナトリウム塩の10%メタノール溶液
(溶液II)
六塩化ロジウム錯体の10%水溶液
上記操作終了後に、常法に従い40℃にてフロキュレーション法を用いて脱塩及び水洗処理を施し、溶液Fと防バイ剤を加えて60℃でよく分散し、40℃にてpHを5.90に調整して、最終的に臭化銀を10モル%含む平均粒子径0.09μm、変動係数10%の塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。
【0074】
(溶液F)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 16.5g
純水 139.8ml
次に上記のハロゲン化銀乳剤を60℃にした後に、分光増感色素の所定量を、固体微粒子状の分散物として添加した後に、アデニン、チオシアン酸アンモニウム、塩化金酸及びチオ硫酸ナトリウムの混合水溶液及びトリフェニルフォスフィンセレナイドの分散液を加え、さらに60分後に沃化銀微粒子乳剤を加え、総計2時間の熟成を施した。熟成終了時に安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)の所定量を添加した。
【0075】
なお、上記の添加剤とその添加量(AgX1モル当たり)を下記に示す。
【0076】
5,5′−ジクロロ−9−エチル−3,3′−ジ−(スルホプロピル)
−オキサカルボシアニンナトリウム塩無水物 2.0mg
5,5′−ジ−(ブトキシカルボニル)−3,3′−ジ−(4−スルホブチル)
−ベンゾイミダゾロカルボシアニンナトリウム塩無水和物 120mg
アデニン 15mg
チオシアン酸カリウム 95mg
塩化金酸 2.5mg
チオ硫酸ナトリウム 2.0mg
トリフェニルフォスフィンセレナイド 0.4mg
沃化銀微粒子 280mg
4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)
500mg
分光増感色素の固体微粒子状分散物は以下の方法によって調製した。即ち、分光増感色素の所定量を予め27℃に調温した水に加え高速撹拌機(ディゾルバー)で3.500rpmにて30〜120分間にわたって撹拌することによって得た。
【0077】
上記のセレン増感剤の分散液は次のように調製した。即ち、トリフェニルフォスフィンセレナイド120gを50℃の酢酸エチル30kg中に添加、撹拌し、完全に溶解した。他方で写真用ゼラチン3.8kgを純水38kgに溶解し、これにドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム25%水溶液93gを添加した。次いでこれらの2液を混合して直径10cmのディゾルバーを有する高速撹拌型分散機により50℃下において分散翼周速40m/秒で30分間分散を行った。その後速やかに減圧下で、酢酸エチルの残留濃度が0.3質量%以下になるまで撹拌を行いつつ、酢酸エチルを除去した。その後、この分散液を純水で希釈して80kgに仕上げた。このようにして得られた分散液の一部を分取して上記実験に使用した。
【0078】
なお、上記の沃化銀微粒子の添加によりハロゲン化銀粒子乳剤中に含有されるハロゲン化銀粒子の最表面の平均ヨード含有率は約4モル%であった。
【0079】
次に、このようにして増感を施した乳剤に下記添加剤を加え感光層塗布液とした。また同時に保護層塗布液も調製した。
【0080】
次に、下引き処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚みが175μm)の片面に、感光層塗布液と保護層塗布液を下記の所定の塗布量になるように同時重層塗布、乾燥し、感光材料を得た。
【0081】
(感光層塗布液)
上記で得た乳剤に下記の各種添加剤を加えた。
【0082】
2,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−4−ジエチルアミノ−1,3,5−トリアジン
5mg/m2
t−ブチル−カテコール 130mg/m2
ポリビニルピロリドン(分子量10,000) 35mg/m2
スチレン−無水マレイン酸共重合体 80mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 80mg/m2
トリメチロールプロパン 350mg/m2
ジエチレングリコール 50mg/m2
ニトロフェニル−トリフェニル−ホスホニウムクロリド 20mg/m2
1,3−ジヒドロキシベンゼン−4−スルホン酸アンモニウム 500mg/m2
2−メルカプトベンツイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム 5mg/m2
n−C49OCH2CH(OH)CH2N(CH2COOH)2 350mg/m2
コロイダルシリカ 0.5g/m2
デキストリン(平均分子量1000) 0.2g/m2
ただし、ゼラチンとしては1.0g/m2になるように調整した。
【0083】
(保護層塗布液)
ゼラチン 0.8g/m2
ポリメチルメタクリレートからなるマット剤(面積平均粒径7.0μm)
50mg/m2
ホルムアルデヒド 20mg/m2
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩
10mg/m2
ビス−ビニルスルホニルメチルエーテル 36mg/m2
ポリアクリルアミド(平均分子量10,000) 0.1g/m2
ポリアクリル酸ナトリウム 30mg/m2
ポリシロキサン 20mg/m2
919−O−(CH2CH2O)11−H 3mg/m2
817SO2N(C37)−(CH2CH2O)15−H 2mg/m2
817SO2N(C37)−(CH2CH2O)4−(CH24SO3Na
1mg/m2
〔露光〕
得られた感光材料にメッシュ状のフォトマスク(ピッチ/線幅=300μm/5μm)を介してUV露光器で露光した。
【0084】
〔化学現像〕
露光した感光材料を、下記現像液を用いて20±0.3℃で10分現像し、次に下記定着液を用いて20±1.0℃で10分定着し、純水でリンスした。
【0085】
(現像液)
水 750ml
メトール 2g
無水亜硫酸ナトリウム 100g
ハイドロキノン 5g
ほう砂 2g
水を加えて総量を1000mlに仕上げる
(定着液)
水 600ml
チオ硫酸ナトリウム 240g
亜硫酸ナトリウム 15g
酢酸(28%) 48ml
ほう酸 7.5g
粉末カリミョウバン 15g
水を加えて総量を1000mlに仕上げ、アンモニア水または氷酢酸を用いてpH4.3に調整する。
【0086】
露光、現像、定着の終了した試料を、以下に示す順序で下記の物理現像処理と銀溶解処理を行った後後述するメッキ処理を行い試料No.1〜5を得た。
【0087】
試料No.1 →銀溶解処理→物理現像処理→物理現像処理→
試料No.2 →物理現像処理→物理現像処理→銀溶解処理→
試料No.3 →物理現像処理→銀溶解処理→物理現像処理→
試料No.4 →銀溶解処理→物理現像処理→銀溶解処理→物理現像処理→銀溶解処理 →
試料No.5 →物理現像処理→物理現像処理→
〔物理現像〕
次に、下記物理現像液を調製し、これを用いて30±0.3℃で物理現像の合計処理時間が10分となるように物理現像した。
【0088】
(物理現像液)
水 900ml
クエン酸 10g
クエン酸三ナトリウム二水和物 1g
アンモニア水(28%) 1.5g
ハイドロキノン 2.3g
硝酸銀 0.23g
水を加えて総量を1000mlに仕上げる。
【0089】
(銀溶解処理)
下記銀溶解処理液を調製し、これを用いて30±0.3℃で銀溶解処理の合計処理時間が1分となるように銀溶解処理した。
【0090】
エチレンジアミン四酢酸第2鉄アンモニウム 0.15mol
チオ硫酸アンモニウム(75質量%水溶液) 0.55mol
亜硫酸アンモニウム(40質量/体積%水溶液) 0.12mol
コハク酸 20.0g
pH 6.0
水を加えて1000mlとし、pHはアンモニア水溶液または50%硫酸を用いて調整した。
【0091】
(電解銅メッキ)
その後、下記電解メッキ液を用いて、25℃で電解銅メッキ処理を行った。電解銅メッキにおける電流制御は3Aで1分間、次いで1Aで9分間、計10分間かけて実施して、導電性パターンを有する電磁波遮蔽材料である試料1〜5を得た。
【0092】
(電解メッキ液)
硫酸銅(五水和物) 200g
硫酸 50g
塩化ナトリウム 0.1g
水を加えて総量を1000mlに仕上げる。
【0093】
〔測定及び評価〕
下記方法で、試料の表面比抵抗と透過率測定、および試料表面汚れについて評価した。
【0094】
(表面比抵抗)
表面比抵抗は、ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて4点法で測定し、下記基準で評価した。
【0095】
○:表面比抵抗が10Ω/□未満
△:表面比抵抗が10Ω/□〜100Ω/□未満
×:表面比抵抗が100Ω/□以上。
【0096】
透過率は、東京電色社製AUTOMATIC HAZE METER(MODEL TC−HIIIDP)を用いて、全光線透過率を測定した。
【0097】
○:全光線透過率が80%以上
△:全光線透過率が70%〜80%未満
×:全光線透過率が70%未満
(試料表面汚れ)
電解メッキ後の各試料について、試料表面汚れを目視観察により下記基準で評価した。
【0098】
◎:表面汚れが全く認められない
○:表面汚れがほとんど認められない
△:一部表面に汚れが見える
×:表面に多数の汚れが見える
測定及び評価の結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1から明らかなように、本発明の物理現像処理装置を用いた導電性金属部形成方法では、高い透過率と高い導電性(電磁波遮蔽能)を同時に満たした電磁波遮蔽材料を工程を増やすことなく得ることができる。その結果、電磁波遮蔽材料を低コストで多量に生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にハロゲン化銀粒子を含む少なくとも1層の乳剤層を有する感光材料をパターン露光後、連続して現像処理工程、定着処理工程、物理現像処理工程を施すことによる導電性金属部形成方法において、更に、銀溶解処理工程を施すことを特徴とする導電性金属部形成方法。
【請求項2】
前記銀溶解処理工程を前記物理現像処理工程の前に行うことを特徴とする請求項1記載の導電性金属部形成方法。
【請求項3】
前記銀溶解処理工程を前記物理現像処理工程の後に行うことを特徴とする請求項1記載の導電性金属部形成方法。
【請求項4】
前記物理現像処理工程が2〜4回あり、かつ、前記銀溶解処理工程を該物理現像処理工程の間で行うことを特徴とする請求項1記載の導電性金属部形成方法。
【請求項5】
前記銀溶解処理工程が少なくとも2回以上行われることを特徴とする請求項4記載の導電性金属部形成方法。
【請求項6】
前記物理現像処理工程の後に、更にメッキを施すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載記載の導電性金属部形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の導電性金属部形成方法により製造されたことを特徴とする光透過性導電膜。
【請求項8】
請求項7記載の光透過性導電膜を有することを特徴とする電磁波遮蔽材料。

【公開番号】特開2009−59769(P2009−59769A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223840(P2007−223840)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】