説明

導電接合構造、実装構造体及び導電接合方法

【課題】より多くの導電粒子を電極間に捕捉可能な導電接合構造と、導電接合構造によって実装基板に実装部品を接合した実装構造体、及び、この導電接合構造によって2つの被接合部材を接合するための導電接合方法を得る。
【解決手段】基板側電極18には接合用凹部24が形成され、部品側電極20には接合用凸部26が形成される。接合用凹部24と、接合用凸部26の間に、異方性導電接合材22の導電粒子22Pを捕捉する捕捉間隙30が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの被接合部材を、それぞれに設けられた電極間の導電性を確保しつつ接合する導電接合構造と、この導電接合構造によって実装基板に実装部品を接合した実装構造体、及び、この導電接合構造によって2つの被接合部材を接合するための導電接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板に複数の実装部品を実装する場合、たとえば、導電粒子が分散された熱硬化型の接着材料を用いて電極どうしの電気的接続を確保しつつ、実装基板に実装部品を実装することがある。ところが、導電粒子が分散された接着材料は、実装時に所定温度に加熱された場合などに流動性を有することがあり、実装基板に対し実装部品を加圧すると、接合面(電極の対向面)から接着材料が流れ出てしまうことがある。
【0003】
これに対し、たとえば特許文献1には、少なくとも一方の接続端子部に、深さが異方性導電接着剤中に含まれる導電粒子の粒径よりも浅い凹溝を形成し、接続端子部間から押し出された導電粒子の流出が凹溝によって阻止される構造が記載されている。また、特許文献2には、プリント配線基板の電極の近傍にレジストを形成して電極付近を凹部とし、バンフと電極の間から流れ出る導電粒子を抑制するようにした構造が記載されている。
【0004】
これら特許文献に記載の構造では、単に接合材の流出を抑制しているのみであるが、実際の接合構造にあっては、特に電極サイズが小型の場合等に、より多くの導電粒子が電極間の電気的接続に寄与するようにして、接続の信頼性を高めることが求められる。この対策として、接合部材中の導電粒子密度を上げる方法も考えられるが、接合材として用いることか可能な導電粒子密度には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−29386号公報
【特許文献2】特開平11−16949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、より多くの導電粒子を電極間に捕捉可能な導電接合構造と、導電接合構造によって実装基板に実装部品を接合した実装構造体、及び、この導電接合構造によって2つの被接合部材を接合するための導電接合方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、接合対象としての2つの被接合部材と、前記被接合部材が互いに対向する対向部にそれぞれ設けられた電極と、接合材料に導電粒子が分散され、前記被接合部材の前記電極の間に介在されて少なくとも電極どうしを接合する接合材と、一方の前記電極において他方の前記電極との対向面に設けられた接合用凹部と、を有し、他方の前記電極が、前記接合用凹部に入り込み、接合用凹部との間に前記導電粒子の粒径以下の間隔をあけて導電粒子を捕捉するための捕捉間隙を構成する。
【0008】
この導電接合構造では、被接合部材の対向部の電極の一方に接合用凹部が設けられている。したがって、接合材によって電極どうしを接合するとき、接合材が流動性を有していても、電極の間の部分からの接合材(導電粒子)の流出が、接続用凹部によって抑制される。
【0009】
他方の電極が接合用凹部に入り込んだ状態では、他方の電極と接合用凹部との間に捕捉間隙が構成される。捕捉間隙の間隔は導電粒子の粒径以下となっている。したがって、電極の間に接合材が介在されて、接合材により電極どうしが接合された状態では、捕捉間隙に導電粒子が捕捉されており、電極どうしの電気的接続が確保される。特に、接続用凹部に他方の電極が入り込んでいるので、他方の電極の先端部と接続用凹部の底部だけでなく、他方の電極の外周面と接続用凹部の内周面との間にも捕捉間隙が構成されることになり、捕捉面積(導電粒子を捕捉することが可能な部分の面積)が広くなる。すなわち、接続用凹部のみが設けられた構造等と比較して、より広い捕捉面積でより多くの導電粒子を捕捉することが可能となる。たとえば、小型の電極であっても、捕捉面積を広く確保できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記捕捉間隙が、前記接合用凹部の内表面の全面にわたって構成されている。
【0011】
すなわち、捕捉間隙は、接続用凹部の内表面の一部でのみ構成されていてもよいが、接続用凹部の内表面の全面にわたって構成されていると、導電粒子の捕捉面積をより広く確保できる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、他方の前記電極において一方の前記電極との対向面に設けられ前記接合用凹部に入り込む接合用凸部を備え、一方の前記電極の前記対向面と他方の前記電極の前記対向面との間隔が前記導電粒子の粒径以下とされている。
【0013】
したがって、接合用凸部が接合用凹部に入り込むことで、接合用凹部と接合用凸部との間に捕捉間隙を構成して、導電粒子を捕捉できる。
【0014】
しかも、一方の電極の対向面と他方の電極の対向面との間隔が導電粒子の粒径以下とされているので、これらの対向面の間にも導電粒子を捕捉でき、実質的な捕捉面積が広くなる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記接合用凸部の先端部と、該先端面と対向する前記接合用凹部の底部と、がいずれも平面状に形成された平面部とされている。
【0016】
このように、接合用凸部の先端部、及び、接合用凹部の底部の双方を平面部とすれば、簡単な構造で、接合用凸部及び接合用凹部を形成できる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記接合用凸部の先端部と、該先端面と対向する前記接合用凹部の底部と、がいずれも非平面状に形成された非平面部とされている。
【0018】
したがって、接合用凸部の先端部、及び、接合用凹部の底部の双方を非平面部とし、これら非平面部の間に捕捉間隙を構成すれば、接合用凸部の先端部、及び、接合用凹部の底部の双方を平面部とした構成と比較して、捕捉面積がより広くなる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、前記被接合部材の一方が実装基板とされ、前記被接合用部材の他方が前記実装基板に実装される実装部品とされ、前記実装基板の前記電極と前記実装部品の前記電極とが請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電接合構造により接合されている。
【0020】
この実装構造体では、実装基板の電極と実装部品の電極とが、これらの間に介在された接合材により接合される。一方の電極には接合用凹部が設けられ、他方の電極には接合用凸部が設けられているので、導電粒子を捕捉することが可能な捕捉面積が広くなり、より多くの導電粒子を捕捉することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の発明において、前記実装基板に設けられた前記電極に前記接合用凹部が形成されている。
【0022】
実装基板の電極と実装部品の電極とを接合する場合、少なくとも実装基板の電極に接合材を塗布することが多い。したがって、実装部品の電極に接合用凹部が形成されていると、接合用凹部の内部の接合材に対しては、接合用凹部によってその流出を抑制できる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、請求項6又は請求項7に記載の発明において、前記接合材が、前記実装基板と前記実装部品との、前記電極が設けられていない絶縁部分にも介在されて実装基板と実装部品とを接合している。
【0024】
絶縁部分にも接合材が介在されるので、より確実に実装基板と実装部品とを接合できる。
【0025】
請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電接合構造によって2つの前記被接合部材を接合する導電接合方法であって、2つの前記被接合部材の前記電極の間に前記接合材を配置する接合材配置工程と、前記電極どうしを接近させて前記前記捕捉間隙に前記導電粒子を捕捉させるともに電極どうしを接合する接合工程と、を有する。
【0026】
この導電接合方法では、まず、接合材配置工程において、2つの被接合部材の電極の間に接合材を配置する。次に、接合工程では、電極どうしを接近させて捕捉間隙を構成し、この捕捉間隙に導電粒子を捕捉させる。また、電極どうしを、接合部材により接合する。捕捉間隙は、他方の電極(接続用凸部)の先端部と接続用凹部の底部だけでなく、他方の電極(接続用凸部)の外周面と接続用凹部の内周面との間にも構成されるので、導電粒子を捕捉することが可能な捕捉面積が広くなる。
【0027】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の発明において、前記接合材配置工程において、前記接合用凹部が設けられた前記電極に前記接合材を配置する。
【0028】
接合用凹部が設けられた電極に接合材を配置すると、接合用凹部の内部の接合材に対しては、接合用凹部によってその流出を抑制できる。
【0029】
請求項11に記載の発明では、請求項9または請求項10に記載の発明において、前記接合工程において、前記電極どうしが互いに接近する方向へと2つの被接合部材を加圧する。
【0030】
加圧により、2つの被接合部材をより確実に接合できる。また、加圧時には、電極の間から接合材が流出しやすくなるが、電極の一方には接合用凹部が設けられているので、その流出を抑制できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は上記構成としたので、より多くの導電粒子を電極間に捕捉可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の導電接合構体が適用された実装構造体を概略的に示す断面図であり、(B)は部品側電極の底面図、(C)は部品側電極の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の実装構造体を構成する工程の一部を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の実装構造体を構成する工程の一部を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の実装構造体を構成する工程の一部を概略的に示す断面図である。
【図5】(A)は第1比較例の導電接合構体が適用された実装構造体を示す断面図であり、(B)は部品側電極の底面図、(C)は部品側電極の正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の導電接合構体が適用された実装構造体を概略的に示す断面図である。
【図7】第1比較例の導電接合構体が適用された実装構造体を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の導電接合構体が適用された実装構造体を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態の導電接合構体が適用された実装構造体を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態の導電接合構体が適用された実装構造体を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明の第6実施形態の導電接合構体が適用された実装構造体を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明の適用対象の一例であるインクジェット用基板の基板本体及び集積回路を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の第1実施形態の導電接合構造12が適用された実装構造体10について説明する。この実装構造体10は一例として、本発明の被接合部材の一方としての実装基板14に対し、被接合部材の他方としての実装部品16が実装されている。すなわち、実装基板14に実装部品16を実装する(電気的に接続して取り付ける)ために、導電接合構造12が適用されている。
【0034】
実装基板14としては、たとえば、プリント配線基板、樹脂基板、ガラス基板、シリコン基板、フレキシブル基板等が本発明の適用対象である。実装基板14の形状も特に限定されるものではないが、たとえば、平面視して(矢印A方向に見て)長方形状に形成されたものを挙げることができる。
【0035】
また、実装部品16としては、例えば、電子部品、半導体素子、集積回路(IC)、センサ等が本発明の適用対象であるが、本実施形態では、平面視して略長方形状に形成されたものを挙げている。なお、このような実装部品16がすでに実装された実装基板14をあらためて、被接合部材の他方として用い、この実装基板をさらに実装基板14に実装する場合にも、本発明の導電接合構造12を適用することができる。
【0036】
実装基板14の一方の面は実装面14Aとされている。実装面14Aには、導電性材料(たとえば銅等の金属)で構成された基板側電極18が設けられている。これに対し、実装部品16の、実装基板14との対向面16Aには、基板側電極18に対応する位置に、導電性材料(たとえば基板側電極18と同様の材料でもよいが、異なる材料でもよい)で構成された部品側電極20が設けられている。
【0037】
実装基板14と実装部品16の間、特に、基板側電極18と部品側電極20の間には、異方性導電接合材22が介在されており、この異方性導電接合材22によって、少なくとも基板側電極18と部品側電極20(本実施形態では実装基板14と実装部品16)とが接合されている。
【0038】
異方性導電接合材22は、たとえばエポキシ等の接着性を有する樹脂で構成された熱硬化性の接合部材22Gと、金属粒子あるいは表面に金属皮膜が形成された樹脂粒子等で構成された導電粒子22Pとを有する混合物であり、接合部材22G中に導電粒子22Pが所定の密度で分散されている。異方性導電接合材22の形態としては、通常状態で液状、ペースト状、ゲル状あるいはフィルム状とされている。そして、異方性導電接合材22は後述する接合工程においてたとえば所定温度に加熱された状態では、流動性を有するものである。
【0039】
基板側電極18には、平面視した(矢印A方向に見た)ときの略中央に、部品側電極との対向面32を部分的に凹ませた接合用凹部24が形成されている。これに対し、部品側電極20には、平面視したときの対向面34の略中央に、実装状態で接合用凹部24に入り込む(部分的に収容される)形状の接合用凸部26が形成されている。図1(A)から分かるように、本実施形態では、接合用凹部24の底部24B及び接合用凸部26の先端部26Tはいずれも平坦状の平坦部28(本発明に係る「平面部」、図2参照)とされており、これら平坦部28の間に、導電粒子22Pの粒径D1よりも狭い間隔D2を有する捕捉間隙30が構成されている。
【0040】
さらに、接合用凹部24の内側面24Sと、接合用凸部26の外側面26Sとの間にも、導電粒子22Pの粒径D1よりも狭い間隔D2を有する捕捉間隙30が構成されている。すなわち、本実施形態では、接合用凹部24の内表面24H(底部24B及び内側面24S、図2参照)と、接合用凸部26の外表面26H(先端部26T及び外側面26S、図2参照)の全面にわたって、捕捉間隙30が構成されている。
【0041】
図1(A)から分かるように、実装基板14に実装部品16が実装された状態(実装状態)では、基板側電極18と部品側電極20との間に異方性導電接合材22が入り込んで、基板側電極18と部品側電極20とを接合している。このとき、捕捉間隙30には、導電粒子22Pが捕捉されており、基板側電極18と部品側電極20との電気的接続がとられている。
【0042】
基板側電極18の対向面32のうち、接合用凹部24が形成されていない部分(接合用凹部24の周囲の部分)は、平坦状とされている。同様に、部品側電極20対向面34のうち、接合用凸部26が形成されていない部分(接合用凸部26の周囲の部分)も、平坦状とされている。本実施形態では、これら平坦状の対向面32と対向面34との間にも、導電粒子22Pの粒径D1よりも狭い間隔D2を有する捕捉間隙36が構成されている。したがって、実装状態では、捕捉間隙36にも導電粒子22Pが捕捉され、基板側電極18と部品側電極20との電気的接続がとられている。
【0043】
なお、捕捉間隙30、36の間隔D2は導電粒子22Pの粒径D1よりも小さいため、捕捉間隙30、36の導電粒子22Pは、基板側電極18と部品側電極20とに押し挟まれるようにして扁平状に変形しており、これによって、捕捉状態が確実に維持されると共に、導通が良好に維持されるようになっている。
【0044】
さらに本実施形態では、実装基板14において基板側電極18が形成されていない基板側非電極部38と、実装部品16において部品側電極20が形成されていない部品側非電極部40の間にも異方性導電接合材22が介在されており、より強固に実装基板14と実装部品16とが接合されている。ただし、基板側非電極部38と部品側非電極部40との間隔D3は、導電粒子22Pの粒径D1よりも十分に広いため、基板側非電極部38と部品側非電極部40とが不用意に短絡される(電気的に接続されてしまう)ことはない。
【0045】
さらに本実施形態では、実装基板14の基板側非電極部38と基板側電極18の側面に絶縁層42が形成されており、上記した短絡をより確実に防止できるようになっている。
【0046】
次に、実装基板14に実装部品16を実装して本実施形態の導電接合構造12を構成するための導電接合方法と、この導電接合構造12(さらには、導電接合構造12が適用された実装構造体10)の作用を説明する。
【0047】
実装構造体10を得るには、まず、図2に示すように、実装基板14及び実装部品16を用意する。実装基板14には、接合用凹部24が形成された基板側電極18が設けられ、実装部品16には、接合用凸部26が形成された部品側電極20が設けられている。なお、これらの形状の基板側電極18及び部品側電極20の形成方法としては、たとえば、これらの電極を作る工程において、事前に段差(接合用凹部24あるいは接合用凸部26)を設けた状態で形成する方法(2段階で形成する方法)や、最初は平坦状の電極を形成しておき、特定のパターンを備えた型を且つしてこのパターンを電極に転写する方法等により形成可能である。
【0048】
次に、図3に示すように、実装基板14と実装部品16とのそれぞれの対向面の少なくとも一方であって、実装部品16が実装される箇所を含む部分に、異方性導電接合材22を塗布(異方性導電接合材22が液状、ペースト状、ゲル状の場合)又は貼着(異方性導電接合材22がシート状の場合)により配置する(接合材配置工程)。なお、異方性導電接合材22の粘度やその他の物性に合わせて、上記とは異なる各種の方法により実装面14Aに塗布あるいは貼着してもよい。
【0049】
また、実装基板14と実装部品16とのそれぞれの対向面の少なくとも一方に異方性導電接合材22を配置すればよいが、本実施形態では特に、実装基板14の実装面14Aに異方性導電接合材22を塗布している。このとき、実装基板14から不用意に異方性導電接合材22が剥がれないようにするために、接合部材22Gの硬化温度よりも低温で加熱して半硬化させることが好ましい。このように半硬化状態となるように加熱するときに、加圧部材を用いて異方性導電接合材22を加圧してもよい。また、異方性導電接合材22の半硬化後は冷却してもよい。
【0050】
そして、図4に示すように、基板保持部材44で実装基板14を保持させると共に、部品保持部材46で、実装部品16を保持させる。保持の機構としては、実装部品16や実装基板14を確実に保持できれば、その構成は特に限定されず、吸盤や噛合機構等を用いることができる。なお、これらの基板保持部材44及び部品保持部材46には、実装基板14に対する実装部品16の位置合わせを容易且つ正確にするために、所定のアライメントマーク(図示省略)が設けられている。
【0051】
次に、部品保持部材46を駆動して、実装部品16を、対応する実装位置へ移動させ、
【0052】
部品保持部材46に設けられたアライメントマークと、基板保持部材44に設けられたアライメントマークとを、図示しない画像認識装置等を用いて認識することで、実装部品16と実装基板14の位置合わせを行う。そして、実装部品16を矢印A方向へ降下させる。これにより、実装部品16が、対応する実装位置に配置される。なお、部品保持部材46に代えて基板保持部材44を移動させてもよいし、部品保持部材46と基板保持部材44の双方を移動させてもよい。
【0053】
ついで、実装基板14に対し実装部品16を仮接着する(仮接着工程)。すなわち、異方性導電接合材22を硬化温度以下の温度に加熱し、異方性導電接合材22が半硬化した状態で、実装部品16を実装基板14に実装する。これにより、実装部品16が実装基板14に仮接着され、不用意に位置ズレしなくなる。ただし、この状態では異方性導電接合材22は完全には硬化していないので、実装部品16の位置を微調整することも可能である。なお、仮接着の際には、異方性導電接合材22を介して、実装部品16を部品保持部材により加圧してもよい。また、仮接着後は、異方性導電接合材22を冷却してもよい。
【0054】
このようにして、実装基板14に対する実装部品16の位置合わせ及び仮接着が行われるが、これらの位置合わせ工程及び仮接着工程を行うことなく、以下の本接着(接合工程)を行うことで、実装基板14に実装部品16を実装することも可能である。
【0055】
その後、実装基板14に対し実装部品16を本接着する(接合工程)。すなわち、異方性導電接合材22を硬化温度以上の温度に加熱する。これにより、異方性導電接合材22が硬化されて基板側電極18と部品側電極20とが接合されて、実装部品16が所定の実装位置に本接着されて実装される。特に本実施形態では、基板側非電極部38と部品側非電極部40の間にも異方性導電接合材22が介在され、より強固に実装基板14と実装部品16とが接合されている。
【0056】
なお、仮接着の場合と同様に、異方性導電接合材22を介して、実装部品16を部品保持部材により加圧して接着性を高め、より確実にこれらが接合できるようにしてもよい。また、仮接着後は、異方性導電接合材22を冷却してもよい。
【0057】
ここで、本実施形態では、基板側電極18の接合用凹部24が形成されており、異方性導電接合材22が実装基板14に塗布又は貼着されてから硬化されるまでの段階で流動性を有していても、接合用凹部24内に位置している異方性導電接合材22については、その流動が制限される(換言すれば、接合用凹部24の内側面24Sが、流出しようとする異方性導電接合材22に対する壁として作用する)。これにより、異方性導電接合材22が、基板側電極18と部品側電極20との接合部分から不用意に流出することが抑制される。特に、実装部品16を実装基板14に向かって加圧した場合には、異方性導電接合材22が基板側電極18と部品側電極20との接合部分から流出しやすくなるが。本実施形態ではこのように実装基板14を加圧した場合でも、異方性導電接合材22の流出を抑制できる。
【0058】
また、本実施形態では、図1(A)から分かるように、接合用凸部26が接合用凹部24の所定位置に入り込んで接合(本接着)が行われた状態では、接合用凹部24と接合用凸部26との間に捕捉間隙30が構成されている。そして、捕捉間隙30に捕捉された導電粒子22Pにより、基板側電極18と部品側電極20とが電気的に接続されている。また、基板側の対向面32と部品側の対向面34との間(接合用凹部24及び接合用凸部26の周囲に部分)にも捕捉間隙36が構成されており、この捕捉間隙36にも導電粒子22Pが捕捉され、基板側電極18と部品側電極20とが電気的に接続されている。
【0059】
ここで、図5(A)には、本実施形態のような接合用凹部24や接合用凸部26が形成されず、電極どうしのそれぞれの対向部分が互いに全面にわたって平坦面72F、74Fとされた比較例の基板側電極72及び部品側電極74を有する実装構造体70が第1比較例として示されている。
【0060】
第1比較例の実装構造体70では、基板側電極72と部品側電極74との間において導電粒子22Pを捕捉できる面積が第1実施形態の実装構造体10よりも狭いため、基板側電極18と部品側電極20との間に捕捉される導電粒子22Pの数が、第1実施形態の実装構造体10よりも少なくなっている。換言すれば、第1実施形態では、接合用凹部24の内側面24Sと接合用凸部26の外側面26Sの間の捕捉間隙30が構成されている分だけ、第1比較例と比較して、より多くの導電粒子22Pが捕捉されることとなり、接続信頼性が向上している。
【0061】
特に、基板側電極や部品側電極が小型化されて対向部分の面積が小さくなると、捕捉できる導電粒子の数も少なくなる。すなわち、第1比較例の構造では電気的な接続の信頼性を確保することが困難な微小な電極サイズであっても、第1実施形態では、基板側電極18と部品側電極20との対向部分だけでなく、接合用凹部24の内側面24Sと接合用凸部26の外側面26Sでも電気的に接続することが可能となるため、実質的な電気的接続面積が広くなり、接続信頼性を向上させることが可能である。
【0062】
以下の表1には、第1比較例の実装構造体70と、第1実施形態の実装構造体10のそれぞれにおいて、異方性導電接合材22を用いて基板側電極18と部品側電極20とを接合した状態における、捕捉粒子数を見積もった結果が示されている。
【0063】
なお、第1比較例の部品側電極74の寸法は、図5(B)及び(C)に示すように、幅W1=18μm、奥行きK1=60μm、高さH1=25μmとした。実質的に、導電粒子22Pを捕捉可能な面積Sは1080μmとなる。
【0064】
また、第1実施形態の部品側電極20の寸法は、幅W1、奥行きK1及び高さH1が第1比較例と同一とされた形状に対し、さらに、図1(B)及び(C)に示すように、幅W2=12μm、奥行きK2=54μm、高さH2=5μmの接合用凸部26を形成した形状とした。実質的に、導電粒子を捕捉可能な面積は、接合用凸部26の外側面26Sの面積S2=660μmの分だけ第1比較例よりも増加しているため、合計で1720μmとなっている。
【0065】
【表1】

【0066】
この表1における捕捉粒子数の平均値(μ)及び標準偏差(σ)は、基板側電極と部品側電極との組み合わせの50組について計算したものである。なお、この計算にあたって、異方性導電接合材22の粒径D1は3μm、粒子密度は1.0×10mmの物を使用した。この表1の数値は、実際に捕捉される導電粒子22Pの数である。したがって、数値が1未満の場合には、導電粒子22Pが全く捕捉されない場合があることを示している。
【0067】
表1から分かるように、比較例の実装構造体70では、1.0×10−6のオーダーの確率(4.5σ)において、導電粒子22Pが全く捕捉されない可能性があるが、第1実施形態では、同様の条件においても、導電粒子22Pが確実に捕捉されていることが分かる。
【0068】
なお、このように電気的に接続することが困難な電極のサイズとしては、対向部分の面積が2000μm以下のものを挙げることができ、特に、この面積が1000μm以下では、さらに電気的な接続が困難となるため、本発明を適用することが好ましい。
【0069】
捕捉間隙30、36の間隔D2としては、導電粒子22Pの粒径D1にもよるが、導電粒子22Pを確実に捕捉すると共に、捕捉された導電粒子22Pが(その構造等によっては扁平状に変形されて)基板側電極18と部品側電極20の双方に確実に接触すればよい。実際には、この間隔D2としては、導電粒子22Pの粒径D1以下、好ましくは粒径D1の60%以下である。
【0070】
本発明における電極(基板側電極18及び部品側電極20)の形状も、要するに、いずれか一方の電極に接合用凹部が設けられると共に、他方の電極がこの接合用凹部に入り込んで捕捉間隙が構成されていればよい。すなわち、このような接合用凹部が形成されていない電極を用いた構造と比較して、捕捉できる導電粒子22Pの数が多くなるような形状であればよい。たとえば、接合用凹部24の隅部及び接合用凸部26の角部を湾曲させていわゆるアール形状することで、接合用凹部24の隅部及び接合用凸部26の強度を高めてもよい。このアール形状の曲率半径を大きくして、接合用凹部24の底部24B及び接合用凸部26の先端部26Tに平坦な部分が存在しない形状(断面視で半円状)としてもよい。
【0071】
さらには、以下に挙げる各実施形態の形状を例として挙げることができる。なお、以下の各実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。なお、以下の各実施形態は、接合用凹部24の底部24B及び接合用凸部26の先端部26Tが、いずれも非平坦状とされており、本発明に係る「非平面部」となっている例である。
【0072】
図6には、本発明の第2実施形態の実装構造体110が示されている。第2実施形態では、部品側電極112が第1実施形態の部品側電極20よりも幅狭とされており、第1実施形態の捕捉間隙36(図1(A)参照)は構成されない形状とされている。ただし、起案側電極18の接合用凹部24と、部品側電極20の接合用凸部26とは設けられており、これらの間に捕捉間隙30が構成されている。
【0073】
これに対し、図7には、第2比較例の実装構造体90が示されている。第2比較例では、基板側電極92と部品側電極94の対向部分が平坦面とされている。すなわち、第2比較例と比較すると、第2実施形態では、接合用凹部24の内側面24Sと接合用凸部26の外側面26Sの間の捕捉間隙30が構成されている分だけ、第1比較例と比較して、より多くの導電粒子22Pが捕捉されることとなり、接続信頼性が向上している。
【0074】
図8には、本発明の第3実施形態の実装構造体120が示されている。第3実施形態では、接合用凹部24の底部24Bの略中央に、断面略三角形の楔形凸部122が形成されている。また、接合用凸部26の先端部26Tの略中央に、断面略三角形の楔形凹部124が形成されている。そして、楔形凸部122と楔形凹部124との間にも、捕捉間隙30が構成されている。これにより、第3実施形態では第1実施形態よりも、捕捉間隙30の実質的な面積(捕捉面積)が広くなっている。このため、さらに多くの導電粒子22Pが捕捉されることとなり、接続信頼性が向上している。
【0075】
図9には、本発明の第4実施形態の実装構造体130が示されている。第4実施形態では、第3実施形態と同様に楔形凸部122及び楔形凹部124が形成されてこれらの間に捕捉間隙30が構成されている点は第4実施形態と同様である。但し、接合用凹部24の内側面24S及び接合用凸部26の外側面26Sが断面視して斜めに傾斜されている。このような構造の第4実施形態においても、第1比較例と比較すると、捕捉間隙30が構成されていることで、より多くの導電粒子22Pが捕捉されることとなり、接続信頼性が向上している。しかも、接合用凸部26の外側面26Sに、実質的にテーパーが形成されていることになるので、接合用凸部26の強度をより高めることが可能になる。
【0076】
図10には、本発明の第5実施形態の実装構造体140が示されている。第5実施形態では、接合用凹部24の底部24Bの略中央に、断面略四角形の矩形凸部142が形成されている。また、接合用凸部26の先端部26Tの略中央に、断面略四角形の矩形凹部144が形成されている。そして、矩形凸部142と矩形凹部144との間にも、捕捉間隙30が構成されている。これにより、第4実施形態では第1実施形態よりも、捕捉間隙30の実質的な面積(捕捉面積)が広くなっている。このため、さらに多くの導電粒子22Pが捕捉されることとなり、接続信頼性が向上している。
【0077】
図11には、本発明の第6実施形態の実装構造体150が示されている。第5実施形態では、接合用凹部24の底部24Bの略中央に、断面略波型の波型凸部152が形成されている。また、接合用凸部26の先端部26Tの略中央に、断面略波型の波型凹部154が形成されている。そして、波型凸部152と波型凹部154との間にも、捕捉間隙30が構成されている。これにより、第5実施形態では第1実施形態よりも、捕捉間隙30の実質的な面積(捕捉面積)が広くなっている。このため、さらに多くの導電粒子22Pが捕捉されることとなり、接続信頼性が向上している。
【0078】
このように、接合用凹部24及び接合用凸部26の形状は、捕捉可能な導電粒子数や基板側電極16及び部品側電極18の強度、成形の容易さ等を勘案して、適切な形状を選択すればよい。
【0079】
そして、第2〜第6のいずれの実施形態においても、接合用凹部24が形成されているので、接合用凹部24内に位置している異方性導電接合材22の流動が制限される。すなわち、異方性導電接合材22が、基板側電極18と部品側電極20との接合部分から不用意に流出することが抑制される。
【0080】
本発明において、適用対象となる実装基板14の具体的構成は特に限定されないが、たとえば図12に示すような、インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を構成するインクジェット用基板52に、好ましく適用できる。このインクジェット用基板52は、実装基板14に相当する基板本体54に、インク吐出口あるいはインク流路の一部を構成する複数の開口部58が高密度で形成されている。また、基板本体54には、実装部品16の一例である複数の集積回路56が、互いに接近した位置で実装されている。このインクジェット用基板52において、開口部58がインク吐出口として用いられる場合、インクの吐出エネルギーを付与するための駆動素子(ピエゾ素子や発熱素子等)を備えた駆動部が、集積回路56によって駆動制御される。
【0081】
このようなインクジェット用基板52では、基板側電極18や部品側電極20が小型化されているため、これらの電極の間での電気的な接続をより確実に得るという観点から、本発明を適用することが好ましい。
【0082】
上記では、基板側電極18に接合用凹部24が形成され、部品側電極20に接合用凸部26が形成された例を挙げたが、これらの関係が逆になっている構成、すなわち、基板側電極18に接合用凸部26が形成され、部品側電極20に接合用凹部24が形成された構成であってもよい。ただし、実際の導電接続方法(実装基板14に実装部品16を実装する方法)では、実装基板14側に異方性導電接合材22が配置されることが多い。したがって、基板側電極18に接合用凹部24を形成すれば、異方性導電接合材22が基板側電極18と部品側電極20との接合部分から不用意に流出することをより確実に抑制可能となり、好ましい。
【符号の説明】
【0083】
10 実装構造体
12 導電接合構造
14 実装基板(被接合部材)
14A 実装面
16 実装部品(被接合部材)
16A 対向面
18 基板側電極
20 部品側電極
22 異方性導電接合材
22G 接合部材
22P 導電粒子
24 接合用凹部
24H 内表面
24B 底部
24S 内側面
26 接合用凸部
26H 外表面
26T 先端部
26S 外側面
28 平坦部
30 捕捉間隙
32 対向面
34 対向面
36 捕捉間隙
38 基板側非電極部
40 部品側非電極部
42 絶縁層
44 基板保持部材
46 部品保持部材
52 インクジェット用基板
54 基板本体
56 集積回路
58 開口部
70 実装構造体
72 基板側電極
74 部品側電極
110 実装構造体
120 実装構造体
122 楔形凸部
124 楔形凹部
130 実装構造体
140 実装構造体
142 矩形凸部
144 矩形凹部
150 実装構造体
152 波型凸部
154 波型凹部
D1 粒径
D2 間隔
D3 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合対象としての2つの被接合部材と、
前記被接合部材が互いに対向する対向部にそれぞれ設けられた電極と、
接合材料に導電粒子が分散され、前記被接合部材の前記電極の間に介在されて少なくとも電極どうしを接合する接合材と、
一方の前記電極において他方の前記電極との対向面に設けられた接合用凹部と、
を有し、
他方の前記電極が、前記接合用凹部に入り込み、接合用凹部との間に前記導電粒子の粒径以下の間隔をあけて導電粒子を捕捉するための捕捉間隙を構成する導電接合構造。
【請求項2】
前記捕捉間隙が、前記接合用凹部の内表面の全面にわたって構成されている請求項1に記載の導電接合構造。
【請求項3】
他方の前記電極において一方の前記電極との対向面に設けられ前記接合用凹部に入り込む接合用凸部を備え、
一方の前記電極の前記対向面と他方の前記電極の前記対向面との間隔が前記導電粒子の粒径以下とされている請求項1又は請求項2に記載の導電接合構造。
【請求項4】
前記接合用凸部の先端部と、該先端面と対向する前記接合用凹部の底部と、がいずれも平面状に形成された平面部とされている請求項3に記載の導電接合構造。
【請求項5】
前記接合用凸部の先端部と、該先端面と対向する前記接合用凹部の底部と、がいずれも非平面状に形成された非平面部とされている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電接合構造。
【請求項6】
前記被接合部材の一方が実装基板とされ、
前記被接合用部材の他方が前記実装基板に実装される実装部品とされ、
前記実装基板の前記電極と前記実装部品の前記電極とが請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電接合構造により接合されている実装構造体。
【請求項7】
前記実装基板に設けられた前記電極に前記接合用凹部が形成されている請求項6に記載の実装構造体。
【請求項8】
前記接合材が、前記実装基板と前記実装部品との、前記電極が設けられていない絶縁部分にも介在されて実装基板と実装部品とを接合している請求項6又は請求項7に記載の実装構造体。
【請求項9】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電接合構造によって2つの前記被接合部材を接合する導電接合方法であって、
2つの前記被接合部材の前記電極の間に前記接合材を配置する接合材配置工程と、
前記電極どうしを接近させて前記前記捕捉間隙に前記導電粒子を捕捉させるともに電極どうしを接合する接合工程と、
を有する導電接合方法。
【請求項10】
前記接合材配置工程において、前記接合用凹部が設けられた前記電極に前記接合材を配置する請求項9に記載の導電接合方法。
【請求項11】
前記接合工程において、前記電極どうしが互いに接近する方向へと2つの被接合部材を加圧する請求項9または請求項10に記載の導電接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−49398(P2012−49398A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191275(P2010−191275)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】