説明

小切手読取装置及びその制御方法

【課題】搬送路の短い小型の小切手読取装置であっても、磁気インク文字、画像の読取結果に基づき、読取後の小切手を仕分け可能にすること。
【解決手段】小切手読取装置1では、磁気ヘッド54の読取位置54Aから裏書き用の印刷機構56の印刷位置56Aまでの距離が小切手4の長さとほぼ同一とされ、読取後の小切手4の先頭が印刷位置56Aまで定速で搬送された後に、当該小切手4の搬送を一時的に停止し、読取の良否の判定結果が出た後に搬送を再開して、正常に読取が行われた小切手については裏書き用の印刷を行って第1小切手排出部7に振り分ける。読取不能、読取不良の小切手については印刷を行わず、切り替え板66を切り替えて、第2小切手排出部8に振り分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気インク文字および画像が印刷されている小切手、手形などの記録媒体から、これら磁気インク文字、画像を読み取るために用いる小切手読取装置に関するものである。更に詳しくは、搬送経路の短い小型の小切手読取装置を実現するために有効な小切手読取装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行などの金融機関においては、持ち込まれた小切手、手形などの小切手類を小切手読取装置に掛けて、それらの両面画像および磁気インク文字を読み取り、読取結果に応じて小切手類の仕分け作業などを行っている。また、近年においては電子決済の普及に伴って、読み取った画像データ、磁気インク文字をコンピュータ処理して、小切手類をコンピュータにより管理することも行われている。
【0003】
特許文献1にはこのような小切手類読取装置が開示されている。ここに開示の小切手類読取装置では、磁気インク文字の読取結果に基づき、フラッパで用紙搬送路を切り替えて、2つの排紙トレイのいずれかに選択的に排出するようになっている。また、磁気インク文字を読み取るための磁気ヘッドによる読取が終わった後の小切手を、異なる搬送速度で、画像読取センサによる読取位置を経由させて搬送して、その画像を読み取るようになっている。
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、銀行の窓口などにおいて使用される小型の小切手読取装置では設置面積が限られるため、搬送経路を長くすることができないことが多く、この場合には、小切手の後端が磁気ヘッドによる読取位置を通過した後には、その先端が、2つの排紙トレイへの仕分け用のフラッパの近傍位置に至ることになる。このような小型の小切手読取装置では、磁気ヘッドによる磁気インク文字の読取結果を判定し、これに基づきフラッパを切り替えるために必要な時間を確保することができない。換言すると、読取結果の判定が出る前、あるいは、判定結果に基づきフラッパが切り替わる前に、小切手がフラッパによる切り替え位置を通り過ぎていずれかの排紙トレイ内に送り込まれてしまう。
【0005】
このため、従来における小型の小切手読取装置では、磁気ヘッド、画像読取センサによる読取結果に基づき小切手を仕分けすることができないという解決すべき課題がある。また、このために、従来の小型の小切手読取装置は、特許文献1に開示されているような仕分け用の2つの排紙トレイを備えたものが無く、単一の排紙トレイに排出されている。したがって、手作業によって、排紙トレイに排出された小切手を仕分けする作業が必要であり、小切手の取り扱い作業の効率が悪いという解決すべき課題がある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、搬送経路の短い小切手読取装置であっても磁気インク文字、画像の読取結果に基づき、読取後の小切手を複数の排出部に振り分けることのできる小切手読取装置の制御方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の小切手読取装置の制御方法は、
磁気インク文字および画像が印刷されている小切手などの記録媒体を、磁気インク文字の読取手段および画像の読取手段が配置されている搬送路に沿って搬送し、
これらの読取手段によって、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字および前記画像を読み取り、
これらの読取手段よりも下流側の前記搬送路の部位に配置されている処理部における前記記録媒体に対する処理内容を、これらの読取手段による読取結果に基づき決定し、
前記処理内容が決定された後の時点で前記記録媒体が前記処理部に到達するように、下流側に配置されている前記読取手段による読取位置を通過した後の前記記録媒体の搬送を一時的に停止させ、あるいは、前記記録媒体の搬送速度を一時的に遅くすることを特徴としている。
【0008】
本発明では、磁気インク文字あるいは画像の読取手段によって読み取られた後の小切手の搬送を一時的に停止し、あるいは、その搬送速度を一時的に遅くして、読取結果に基づく決定のための時間を確保している。したがって、搬送路が非常に短い小型の小切手読取装置であっても、読取結果に基づき、読取後の小切手の処理内容を変更、あるいは切り替えることができる。
【0009】
ここで、読取結果に基づく決定を、操作者の判断により行わせることも可能である。この場合には、前記読取位置を通過した後の前記記録媒体を一時停止させた後に、前記処理内容の決定を、手動操作による指示入力を優先させ、前記記録媒体の搬送の再開を、手動操作によって行わせるようにすればよい。
【0010】
また、前記処理部として、前記記録媒体に裏書きを行う印刷機構が配置されている場合には、次のように処理内容を切り替えることができる。すなわち、各読取手段による前記磁気インク文字および前記画像の読取結果が適正である場合には、前記印刷機構により前記記録媒体に裏書きを行い、各読取手段による前記磁気インク文字あるいは前記画像の読取不能、あるいは、読取不良が発生した場合には、前記印刷機構による前記記録媒体への裏書きを行わないようにすることができる。
【0011】
さらに、前記処理部として、前記印刷機構の下流側に、第1排出部および第2排出部を備えた記録紙排出部が配置されている場合には、次のように処理内容を切り替えることができる。すなわち、前記裏書きが行われた前記記録媒体を前記第1排出部に回収し、前記裏書きが行われなかった前記記録媒体を前記第2排出部に回収することができる。
【0012】
なお、前記処理部として、第1排出部および第2排出部を備えた記録紙排出部が配置されている場合には、各読取手段により前記磁気インク文字および前記画像が適正に読み取られた場合には、前記記録媒体を前記第1排出部に回収し、各読取手段により前記磁気インク文字あるいは前記画像の読取不能、あるいは、読取不良が発生した場合には、前記記録媒体を前記第2排出部に回収することができる。
【0013】
この場合において、切り替え部材を移動させることにより、記録媒体を前記第1および第2排出部に選択的に振り分けるためには、前記処理内容の決定に基づき前記切り替え部材が移動した後に、前記記録媒体が当該切り替え部材の切り替え位置に到達するように、前記搬送路上における下流側に配置されている前記読取手段による読取位置を通過した後の前記記録媒体の搬送を一時停止させ、あるいは、前記記録媒体の搬送速度を一時的に遅くすればよい。
【0014】
次に、前記搬送路に沿って搬送される記録媒体の搬送状態、例えば重送状態を検出し、搬送状態の検出結果に基づき前記処理部における処理内容を決定し、当該決定を、各読取手段による読取結果に基づく決定に優先させることが望ましい。
【0015】
一方、本発明の小切手読取装置は、上記の制御方法を用いて小切手の読取動作を行うものであり、
読取対象の記録媒体を供給するための記録紙供給部と、
読取後の記録媒体を仕分けして回収するための記録紙排出部と、
前記記録紙供給部から送り出された記録媒体を前記記録紙排出部まで案内するための搬送路と、
この搬送路に沿って、その搬送方向の上流側から順に配置された、重送検出器、画像読取用のスキャナ、磁気インク文字読取用の磁気ヘッド、および、裏書き用の印刷機構とを有し、
前記記録紙排出部は、第1排出部、第2排出部、および、記録媒体をこれらの排出部のいずれに回収するのかを振り分けるための切り替え部材とを備えており、
前記搬送路は、全体としてU状に湾曲した搬送路であり、当該搬送路における前記磁気ヘッドによる読取位置から前記印刷機構による印刷位置までの搬送路長は、読取対象の記録媒体の搬送方向の長さとほぼ同一であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の小切手読取装置の制御方法では、小切手の磁気インク文字、画像の読取結果に基づく処理内容を決定するための時間を確保するために、読取後の小切手の搬送を一時的に止め、あるいは、その搬送速度を一時的に遅くしている。したがって、一時停止時間あるいは搬送速度を適切に設定しておくことにより、長い搬送路を確保できない小型の小切手読取装置であっても、読取結果に基づき、読取後の小切手に対して処理内容を変更あるいは切り替えることができる。例えば、上下逆の状態、表裏逆の状態で搬送されて読取不能あるいは読取不良となった小切手を、適切な読取が行われた小切手とは別の排出部に振り分けて回収することができる。
【0017】
よって、本発明によれば、搬送路に短い小型の小切手読取装置において、読取結果に基づき、読取後の小切手に対する処理内容の変更あるいは切り替えを行うことが可能になり、この結果、読取不能、読取不良の小切手を手作業により仕分けして再度、小切手読取装置に掛ける作業が不要になり、小切手の取り扱い作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した小切手読取装置の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。小切手読取装置1は、本体ケース2と、この上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、この搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1および第2小切手排出部7、8に繋がっている。
【0020】
小切手4は、その表面4aの下端部分に磁気インク文字4cが印刷されている。また、表面4aには、所定の模様の背景に、金額、振出人、番号などが記載されており、裏面4bには裏書き欄などが設けられている。小切手供給部6に縦置き状態で収納された読取前の小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、その表面4aに印刷されている磁気インク文字4c、その表面画像および裏面画像が読み取られる。これらに情報が正常に読み取られた小切手については、裏書き印刷が行われた後に、第1小切手排出部7に振り分けられて、そこに排出され、読取不能、読取異常などが発生した小切手については、裏書き印刷が行われることなく、第2小切手排出部8に振り分けられて、そこに排出されるようになっている。
【0021】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す説明図である。小切手供給部6には、ここから小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラ11、送り出しローラ12、この送り出しローラ12に押し付けられているリタードローラ13、送り出し用モータ14、および小切手押し付け用のホッパ15を備えている。送り出し用モータ14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパ15によって繰り出しローラ11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラ11および送り出しローラ12が同期回転する。繰り出しローラ11によって小切手4は送り出しローラ12とリタードローラ13の間に送り込まれる。リタードローラ13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラ12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手から分離されて搬送路5に送り出される。
【0022】
搬送路5は、小切手供給部6に繋がっている上流側搬送路部分21と、第1、第2小切手排出部7、8に繋がっている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分23とを備えたU状の通路となっている。
【0023】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する搬送機構30は、第1〜第6搬送ローラ31〜36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1〜第6押圧ローラ41〜46と、第1〜第6搬送ローラ31〜36を回転駆動するための搬送用モータ37とを備えている。第1〜第6搬送ローラ31〜36は同期して回転するようになっている。また、搬送用モータ37としてはステッピングモータが用いられている。
【0024】
第1〜第3搬送ローラ31〜33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、および湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラ34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5および第6搬送ローラ35、36は、下流側搬送路部分23における中程の位置および下流端にそれぞれ配置されている。
【0025】
上流側搬送路部分21における第1および第2搬送ローラ31、32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、表面画像読取手段としての表面側コンタクトイメージスキャナ52、裏面画像読取手段としての裏面側コンタクトイメージスキャナ53が配置されている。また、第2および第3搬送ローラ32、33の間には、磁気インク文字読取用の磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラ55が対峙している。
【0026】
下流側搬送路部分23における第5および第6搬送ローラ35、36の間には、裏書き印刷用の印刷機構56が配置されている。印刷機構56は小切手4に押圧される印刷位置と、この印刷位置から後退した待機位置の間を、駆動用モータ(図示せず)によって移動可能となっている。印刷機構56は、プランジャにより押されて小切手4に印刷するようなスタンプ機構でもよい。
【0027】
次に、搬送路5には、小切手搬送制御のために各種のセンサが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージスキャナ53と第2搬送ローラ32の間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラ34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、この検出器によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。第5搬送ローラ35の手間側の位置には、印刷機構56によって裏書きされる小切手の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラ36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1、第2小切手排出部7、8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0028】
この分岐路9には、不図示の駆動モータによって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1、第2小切手排出部7、8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くためのものである。
【0029】
ここで、本例の搬送路5における磁気ヘッド54による読取位置54Aから印刷機構56による印刷位置56Aまでの長さは、読取対象の小切手4の長辺方向(搬送方向)の長さとほぼ同一である。したがって、小切手4の先頭が印刷位置56Aに達した時点では、その後端が丁度、磁気ヘッド54の読取位置54Aを通過し終わった状態になる。
【0030】
図3は小切手読取装置1の制御系を示す概略ブロック図である。小切手読取装置1の制御系は、ROM、RAMを備え、CPUを中心に構成された制御部71を有している。制御部71は通信ケーブル72を介して上位のコンピュータシステム73に接続される。コンピュータシステム73は表示器73a、キーボード、マウスなどの操作部73bなどの入出力機器を備えており、当該コンピュータシステム73の側から小切手読取動作の開始指令などが制御部71に入力される。
【0031】
制御部71は読取動作の開始指令を受け取ると、小切手送り出し用モータ14、搬送用モータ37を駆動して小切手4を一枚づつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71には、表面側コンタクトイメージスキャナ52、裏面側コンタクトイメージスキャナ53および磁気ヘッド54によって読み取られた小切手4の表面画像情報、裏面画像情報および磁気インク文字情報が入力される。これらの情報は、コンピュータシステム73に供給され、画像処理、文字認識処理などが行われ、読取が正常に行われたか否かが判断され、判断結果が制御部71に供給される。制御部71は判断結果に基づき印刷機構56および切り替え板66の駆動を制御する。
【0032】
制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64および排出検出器65からの検出信号に基づき行われる。なお、制御部71には、本体ケース2に形成された電源スイッチなどの操作スイッチを含む操作部75が接続されている。
【0033】
図4は小切手読取装置1の読み取り動作を示す概略フローチャートである。このフローチャートに従って読み取り動作を説明する。まず、操作者が上位のコンピュータシステム73の操作部73bから読み取り開始指令を入力すると、小切手送り出し機構10および小切手搬送機構30の駆動が開始され、小切手供給部6に入れた小切手4が一枚ずつ送り出されて、搬送路5に沿って搬送される(ステップST1、ST2、ST3)。ここで、搬送される小切手4の先頭位置は、用紙長検出器61によって小切手4の先頭が検出された時点からの搬送用モータ37のステップ数により管理される。
【0034】
搬送される小切手4の表面画像および裏面画像、並びに磁気インク文字が、それぞれ、表面側コンタクトイメージスキャナ52、裏面側コンタクトイメージスキャナ53および磁気ヘッド54によって読み取られる(ステップST4)。
【0035】
読み取られた情報は、通信ケーブル72を介して上位のコンピュータシステム73に送信される(ステップST5)。コンピュータシステム73の側において読み取られた表面画像、裏面画像、および磁気インク文字情報を処理して、読取が正常に行われたか否かを判断する。小切手4が上下逆の状態で搬送された場合には、磁気インク文字を認識できないので、読取不良であると判断される。小切手4が表裏逆の状態で搬送された場合には、磁気インク文字情報が得られないので、読取不能であると判断される。また、小切手4が折れていたり、ちぎれていたり、搬送時にスキューするなどで、磁気インク文字の一部が読取不能の場合にも読取不良であると判断される。さらに、表裏の画像情報から、小切手4が折れていたり、ちぎれていたり、搬送時にスキューするなどで、金額情報などの所定の情報が認識できない場合などにおいても読取不良であると判断される。
【0036】
ここで、小切手処理装置1の側では、搬送される小切手4の先頭が裏書印刷用の印刷機構56による印刷位置56Aに到った時点で、搬送機構30による当該小切手4の搬送を一時的に止める(ステップST6)。小切手4の搬送を止めた状態で、読取の良否の判断結果をコンピュータシステム73の側から受信するのを待つ(ステップST7)。
【0037】
判断結果を受信した後は、それが正常な読取であると判断されている場合には、小切手4の搬送を再開し、同時に、印刷機構56を印刷位置に移動する(ステップST8、ST9)。小切手4は印刷機構56によって裏書き用の印刷が行われながら搬送され、切り替え板66によって第1小切手排出部7の側に排出される(ステップST10)。排出検出器65によって小切手4の後端が検出された後は、搬送機構30の駆動を止める(ステップST11、ST12)。しかる後に、次の小切手の送り出し、および搬送を開始する。
【0038】
これに対して、読取不良、読取不能などの判断結果が出た場合には(ステップST8)、小切手4の搬送を再開し(ステップST13)、同時に、切り替え板66の切り替え動作を行う。印刷機構56は待機位置に保持し、小切手4への裏書きは行わない。小切手4は切り替え板66によって第2小切手排出部8に振り分けられ、そこに排出される(ステップST14)。排出検出器65によって小切手4の後端が検出された後は搬送機構30の駆動を止め(ステップST11、ST12)、次の小切手の読取のための動作を開始する。
【0039】
なお、重送検出器62によって小切手の重送状態が検出された場合には、割り込み処理が行われ、搬送を直ちに停止し、例えば、操作部75に配置されている警告ランプなどを介して異常搬送が発生した旨の警告を行い、小切手が搬送路5から取り除かれて初期状態に戻されるのを待つ。同様に、ジャム検出器63によって小切手が搬送路5に詰まった状態に陥ったことが検出された場合にも同様な割り込み処理が発生する。
【0040】
以上説明したように、本例の小切手読取装置1では、小切手4の先頭が印刷機構56の印刷位置56Aに達した時点、すなわち、その後端が下流側に位置している読取手段の磁気ヘッド54の読取位置54Aを通過し終えた時点で、当該小切手4の搬送を一時的に止め、読取状態の良否の判定が出るのを待つようにしている。
【0041】
小切手4を一時的に止め、その停止時間を適切に設定しておくことにより、搬送路5が短い場合であっても、判定結果に基づき、小切手4を第1、第2小切手排出部7、8に振り分けることができる。すなわち、小切手4の裏書用の印刷領域が印刷位置56Aに到達する前に印刷機構56を印刷位置に移動させておくことができ、また、小切手4の先頭が切り替え板66の切り替え位置に到達する前に当該切り替え板66を判定結果に対応する位置に移動させておくことができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記の例では小切手4の搬送を一時的に止めて、読取結果の判定時間、印刷機構56および切り替え板66の移動時間を確保している。搬送を一時的に止める代わりに、小切手の搬送速度を遅くして、このような時間を確保することも可能である。例えば、読取位置54Aから印刷位置56Aまでの搬送路長さを小切手の長さよりも長目に設定しておき、小切手の後端が磁気ヘッド54の読取位置54Aを通過した後の時点から、当該小切手の先頭が印刷機構56の印刷位置56Aに至るまでの間は、小切手を極めて遅い速度で搬送して、その間の搬送時間を、読取結果の判定時間、印刷機構56および切り替え板66の移動時間として利用することもできる。
【0043】
また、印刷位置56Aにおいて搬送を止めた小切手4の搬送の再開を、操作者が手動操作によって行うようにしてもよい。コンピュータシステム73は、小切手処理装置1から小切手4の表面画像および裏面画像、並びに磁気インク文字を受信し、それらの情報を画面に表示することができる。すなわち、操作者は、コンピュータシステム73の画面上において、読み取られた表面画像、裏面画像、磁気インク文字などを確認し、読取が正常であるか否かの判断し、その結果を操作部73bから入力する。入力された判断結果が小切手読取装置1の制御部71に供給され、これに基づき、小切手4の搬送が再開されて、第1、第2小切手排出部7、8のいずれかに小切手4が振り分けられることになる。
【0044】
また、読取の良否の判断を小切手処理装置1の制御部71で行ってもよい。この場合、読取の良否の判断結果をコンピュータシステム73の側から受信するのを待つ(図4のステップST7)ことは不要となり、迅速な処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を適用した小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】図1の小切手読取装置の内部構造の説明図である。
【図3】図1の小切手読取装置の制御系を示す概略ブロック図である。
【図4】図1の小切手読取装置の動作を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 小切手読取装置、2 本体ケース、3 蓋ケース、4 小切手、4a 表面、4b 裏面、4c 磁気インク文字、5 搬送路、6 小切手供給部、7 第1小切手排出部、8 第2小切手排出部、9 分岐路、10 小切手送り出し機構、11 繰り出しローラ、12 送り出しローラ、13 リタードローラ、14 送り出し用モータ、15 ホッパ、21 上流側搬送路部分、22 湾曲搬送路部分、23 下流側搬送路部分、30 搬送機構、31〜36 第1〜第6搬送ローラ、37 搬送用モータ、41〜46 第1〜第6押圧ローラ、51 磁石、52 表面側コンタクトイメージスキャナ、53 裏面側コンタクトイメージスキャナ、54 磁気ヘッド、54A 読取位置、55 押圧ローラ、56 印刷機構、56A 印刷位置、61 用紙長検出器、62 重送検出器、63 ジャム検出器、64 印刷検出器、65 排出検出器、66 切り替え板、71 制御部、72 通信ケーブル、73 コンピュータシステム、73a 表示器、73b 操作部、75 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気インク文字および画像が印刷されている小切手などの記録媒体を、磁気インク文字の読取手段および画像の読取手段が配置されている搬送路に沿って搬送し、
これらの読取手段によって、搬送される前記記録媒体の前記磁気インク文字および前記画像を読み取り、
これらの読取手段よりも下流側の前記搬送路の部位に配置されている処理部における前記記録媒体に対する処理内容を、これらの読取手段による読取結果に基づき決定し、
前記処理内容が決定された後の時点で前記記録媒体が前記処理部に到達するように、下流側に配置されている前記読取手段による読取位置を通過した後の前記記録媒体の搬送を一時的に停止させ、あるいは、前記記録媒体の搬送速度を一時的に遅くすることを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記読取位置を通過した後の前記記録媒体を一時停止させ、
前記処理内容の決定を、手動操作による指示入力を優先させ、
前記記録媒体の搬送の再開を、手動操作によって行わせることを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記処理部として、前記記録媒体に裏書きを行う印刷機構を配置し、
各読取手段による前記磁気インク文字および前記画像の読取結果が適正である場合には、前記印刷機構により前記記録媒体に裏書きを行い、
各読取手段による前記磁気インク文字あるいは前記画像の読取不能、あるいは、読取不良が発生した場合には、前記印刷機構による前記記録媒体への裏書きを行わないことを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記処理部として、前記印刷機構の下流側に、第1排出部および第2排出部を備えた記録紙排出部を配置し、
前記裏書きが行われた前記記録媒体を前記第1排出部に回収し、
前記裏書きが行われなかった前記記録媒体を前記第2排出部部に回収することを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記処理部として、第1排出部および第2排出部を備えた記録紙排出部を配置し、
各読取手段により前記磁気インク文字および前記画像が適正に読み取られた場合には、前記記録媒体を前記第1排出部に回収し、
各読取手段により前記磁気インク文字あるいは前記画像の読取不能、あるいは、読取不良が発生した場合には、前記記録媒体を前記第2排出部に回収することを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5において、
切り替え部材を移動させることにより、記録媒体を前記第1および第2排出部に選択的に振り分け、
前記処理内容の決定に基づき前記切り替え部材が移動した後に、前記記録媒体が当該切り替え部材による切り替え位置に到達するように、前記搬送路上における下流側に配置されている前記読取手段による読取位置を通過した後の前記記録媒体の搬送を一時停止させ、あるいは、前記記録媒体の搬送速度を一時的に遅くすることを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記搬送路に沿って搬送される記録媒体の搬送状態を検出し、
搬送状態の検出結果に基づき前記処理部における処理内容を決定し、
当該決定を、各読取手段による読取結果に基づく決定に優先させることを特徴とする小切手読取装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載の制御方法を用いた小切手読取装置であって、
読取対象の記録媒体を供給するための記録紙供給部と、
読取後の記録媒体を仕分けして回収するための記録紙排出部と、
前記記録紙供給部から送り出された記録媒体を前記記録紙排出部まで案内するための搬送路と、
この搬送路に沿って、その搬送方向の上流側から順に配置された、重送検出器、画像読取用のスキャナ、磁気インク文字読取用の磁気ヘッド、および、裏書き用の印刷機構とを有し、
前記記録紙排出部は、第1排出部、第2排出部、および、記録媒体をこれらの排出部のいずれに回収するのかを振り分けるための切り替え部材とを備えており、
前記搬送路は、全体としてU状に湾曲した搬送路であり、当該搬送路における前記磁気ヘッドによる読取位置から前記印刷機構による印刷位置までの搬送路長は、読取対象の記録媒体の搬送方向の長さとほぼ同一であることを特徴とする小切手読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−102661(P2008−102661A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283482(P2006−283482)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】