説明

少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化方法

反応室に新規に設置した固定触媒床にわたって有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化を行う方法であって、動作時間が長くなるにつれて、新規に設置したばかりの交換した部分固定触媒床の体積比活性よりも体積比活性が低い交換部分固定触媒床で固定触媒床の一部を交換することにより、固定触媒床の品質低下を回復させる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応室に新規に設置した固定触媒床にわたって、分子酸素により少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化を行う方法であって、部分酸化のために、前記少なくとも1つの有機出発化合物および前記分子酸素を含む反応ガス混合物を前記固定触媒床に通し、前記反応室の外側に通した液体熱媒による間接的な熱交換により反応熱を除去し、動作時間が長くなるにつれて前記固定触媒床の品質低下が進んだら、前記固定触媒床の全体ではなく一部のみを交換用固定触媒床部分で交換することにより、前記固定触媒床の前記品質を回復させる、方法に関する。
【0002】
有機化合物を分子酸素により完全に酸化することとは、有機化合物に含まれるすべての炭素が炭素酸化物に変換され、かつ有機化合物に含まれるすべての水素が水素酸化物に変換されるように、分子酸素の反応作用下で有機化合物が変換されることを意味すると、本書では理解される。分子酸素の反応作用下における有機化合物の種々の変換はすべて、本書では有機化合物の部分酸化として概説する。
【0003】
具体的に、部分酸化とは、部分酸化させる有機化合物が、反応の終了後に、部分酸化前よりも化学的に結合した形態で少なくとも1つの酸素分子を含む、分子酸素の反応作用下における有機化合物の変換を意味すると、本書では理解されるものとする。
【0004】
不均一触媒気相部分酸化の条件下でほぼ不活性に作用する希釈ガスとは、不均一触媒気相部分酸化の条件下でも、成分がそれぞれ単独で、95mol%を超える程度、好ましくは99mol%を超える程度変化することがない、希釈ガスを意味すると理解される。
【0005】
反応手順に触媒作用を及ぼす固定触媒床への反応ガス混合物の負荷量とは、固定触媒床の体積に基づいて固定触媒床に1時間当たりに供給される、標準的なリットル(=NL;対応する量の反応ガス混合物が標準条件(すなわち25℃、1atm)下で占める、リットルで表した体積)で表した出発反応ガス混合物の量(純粋な不活性材料のセクションは数えない)(→単位=NLL・時)を意味すると理解される。この充填量はまた、反応ガス混合物の1つの成分にのみ基づく場合もある。その場合は、固定触媒床の体積に基づき、固定触媒床に1時間当たりに供給されるこの成分の体積となる。
【0006】
固定触媒床の気相において広範な有機出発化合物を分子酸素により部分的かつ不均一に触媒酸化することにより、多くの汎用化学物質(標的産物)が得られることは、周知の事柄である。例としては、プロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への変換(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 23 51 151号を参照)、tert−ブタノール、イソブテン、イソブタン、イソブチルアルデヒド、またはtert−ブタノールメチルエーテルからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への変換(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 25 26 238号、欧州特許出願第EP−A 092 097号、欧州特許出願第EP−A 058 927号、ドイツ特許出願第DE−A 41 32 263号、ドイツ特許出願第DE−A 41 32 684号、およびドイツ特許出願第DE−A 40 22 212号を参照)、アクロレインからアクリル酸への変換、メタクロレインからメタクリル酸への変換(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 25 26 238号を参照)、o−キシレン、p−キシレンまたはナフタレンから無水フタル酸(例えば、欧州特許出願第EP−A 522 871号を参照)または対応する酸への変換、ならびにブタジエンから無水マレイン酸への変換(例えば、英国特許出願第GB−A 1 464 198号および第GB−A 1 291 354号を参照)、インダンから例えばアントラキノンへの変換(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 20 25 430号を参照)、エチレンから酸化エチレンまたはプロピレンから酸化プロピレンへの変換(例えば、ドイツ特許公報第DE−B 12 54 137号、ドイツ特許出願第DE−A 21 59 346号、欧州特許出願第EP−A 372 972号、国際公開第WO 89/07101号、ドイツ特許出願第DE−A 43 11 608号、およびBeyer, Lehrbuch der organischen Chemie [Textbook of organic chemistry], 17th edition (1973), Hirzel Verlag Stuttgart, page 261を参照)、プロピレンおよび/またはアクロレインからアクリロニトリルへの変換(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 23 51 151号を参照)、イソブテンおよび/またはメタクロレインからメタクロニトリルへの変換(すなわち、本書において、部分酸化という用語は、部分アンモ酸化、すなわち、アンモニアの存在下における部分酸化を含むものとしても意図される)、炭化水素の酸化的脱水素化(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 23 51 151号を参照)、プロパンからアクリロニトリルまたはアクロレインおよび/またはアクリル酸への変換(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 101 31 297号、欧州特許出願第EP−A 1 090 684号、欧州特許出願第EP−A 608 838号、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 672号、欧州特許出願第EP−A 529 853号、国際公開第WO 01/96270、およびドイツ特許出願第DE−A 100 28 582号を参照)、イソブタンからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への変換、エタンから酢酸を得る反応、エチレンから酸化エチレンを得る反応、ベンゼンからフェノールを得る反応、および1−ブテンまたは2−ブテンから対応するブタンジオールを得る反応などが含まれる。
【0007】
固定触媒床は、所望の気相部分酸化を完全酸化よりも優先して行うように誘導する役割を有する。
【0008】
化学反応は、固定触媒床における反応ガス混合物の滞留時間中に反応ガス混合物が固定触媒床に流れる時に起こる。
【0009】
固体の触媒は、酸化物組成物または貴金属(例えば、銀)である場合が多い。酸素のほかに、触媒活性酸化物組成物は、唯一の他の元素または複数の他の元素を含む場合がある(いわゆる多元素酸化物組成物の場合)。
【0010】
多くの場合、使用する触媒活性酸化物組成物は、複数の金属元素、特に遷移金属を含む組成物である。この場合は、多金属酸化物組成物について言及している。通常、これらは、その元素成分の酸化物を単に物理的に混ぜ合わせた物ではなく、これらの元素の複雑な重化合物の混合物である。実際、上述の触媒作用活性固体組成物は、一般的に、広範な種々の形状(リング、中実シリンダー、球など)に成形されて使用される。(成形体への)成形は、触媒作用活性組成物がそのように成形されるように(例えば、押出機またはタブレット化装置にて)、いわゆる無担持触媒が得られるように、あるいは予備成形した担持体に活性組成物を適用することによって、実施することができる(例えば、国際公開第WO 2004/009525号および第WO 2005/113127号を参照)。
【0011】
本発明による少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒固定床気相部分酸化に適切な触媒の例については、例えば、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 957号、欧州特許出願第EP−A 1 097 745号、ドイツ特許出願第DE−A 44 31 957号、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 928号、ドイツ特許出願第DE−A 199 10 506号、ドイツ特許出願第DE−A 196 22 331号、ドイツ特許出願第DE−A 101 21 592号、欧州特許出願第EP−A 700 714号、ドイツ特許出願第DE−A 199 10 508号、欧州特許出願第EP−A 415 347号、欧州特許出願第EP−A 471 853号、および欧州特許出願第EP−A 700 893号に記載されている。
【0012】
通常、不均一触媒気相部分酸化は、大量の発熱を伴って生じる。多くの並行反応および/または後続反応が可能であるため、触媒を使用する唯一の措置では、通常、部分酸化させる少なくとも1つの有機出発化合物から所望の標的産物への高度に選択的な変換に対して不十分である。代わりに、反応ガス混合物の流れ方向において反応温度のプロフィールまたは固定触媒床の温度プロフィールをある程度制御することが、固定触媒床における不均一触媒気相部分酸化の高度に選択的な実施にさらに必要となる。したがって、熱除去のために、このような部分酸化は、一般的に、「等温の」固定床反応器で実施される。この反応器では、反応室に固定触媒床を配設し、反応室の周りに、反応室の材料シェル(反応室の壁)と接触する(接触している)液体熱媒(熱交換媒体)を、間接的な熱交換のために反応室の外側へ通す。例えば、固定触媒床を管束反応器の触媒管に配置し、その触媒管の周りに塩溶融物または金属溶融物を熱除去のために通す場合がある。
【0013】
さらに、通常、反応物質は、不均一触媒気相部分酸化の条件下においてほぼ不活性であり、かつ放出された反応熱をその熱容量で吸収することができるガスで希釈される。
【0014】
したがって、少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化の反応ガス混合物は、少なくとも1つの有機出発化合物および分子酸素のほかに、一般的に、少なくとも1つの希釈ガスもさらに含む。
【0015】
最も頻繁に使用される不活性希釈ガスの1つは、不均一触媒気相部分酸化に使用される酸素供給源が空気である場合に必ず自動的に使用される分子窒素である。
【0016】
使用されることが多い別の不活性希釈ガスは、その汎用性ゆえに蒸気である。
【0017】
他の通常使用される不活性希釈ガスは、希ガス(例えば、He、Ar、Ne)、あるいは炭素酸化物CO2および/またはCOである。
【0018】
最大モル熱容量を有する希釈ガスを使用するのは、通常、特に有利である(例えば、欧州特許出願第EP−A 253 409号を参照)。例えば、不飽和有機出発化合物を部分酸化する場合、これらは、飽和炭化水素、例えば、プロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への部分酸化の場合はプロパンを含むことが多い。
【0019】
多くの場合、サイクルガスも不活性希釈ガスとして使用される(例えば、欧州特許出願第EP−A 1 180 508号を参照)。サイクルガスは、標的産物を産物ガス混合物からある程度選択的に除去した(例えば、適切な溶媒に吸収することによって、または分別凝縮によって)時に、少なくとも1つの有機化合物の1段階または多段階の不均一触媒気相部分酸化後に残留する残留ガスを指す(少なくとも1つの有機出発化合物の多段階不均一触媒気相部分酸化では、1段階の不均一触媒気相部分酸化とは対照的に、1つの反応セクションではなく、直列に接続した少なくとも2つの反応器セクション(反応室)(共通ケースにおいて互いに継ぎ目なく融合することができるか、あるいは直列に接続した2つの空間的に離れた反応器に収容することができるセクション)で、気相部分酸化を実施し、この場合、適宜、不活性ガスおよび/または酸化剤を、連続する反応器セクション間または反応器間に補足する;多段階は、連続する手順で部分酸化が生じる場合に特に使用される;これらの場合、固定触媒床および他の反応条件の両方を特定の反応手順に最適化し、専用の反応器セクションでまたは専用の反応器で、すなわち、別の反応段階として、または別の反応段階において、反応手順を実施するのが適切である場合が多い;しかし、熱除去またはその他のために(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 199 02 562号を参照)、直列に接続した複数の反応セクションまたは反応器にわたって変換が分散している場合に使用することもできる;2段階で行われることが多い不均一触媒気相部分酸化の例には、プロピレンからアクリル酸への部分酸化がある;第1の反応段階において、プロピレンをアクロレインに部分酸化し、第2の反応段階において、アクロレインをアクリル酸に部分酸化する;通常はイソブテンから始まるメタクリル酸の調製も、対応する方法で2段階で実施されることが多い;しかし、上述の部分酸化はいずれも、例えばプロピレンからアクリル酸への部分酸化についてドイツ特許出願第DE−A 101 21 592号に記載の通り、適切な触媒充填物を使用する場合に、1段階で実施される場合もある(両手順とも、両手順に触媒作用を及ぼす触媒を有する固定触媒床にわたって1つの反応器セクションで実施される)。一般的に、サイクルガスは、部分酸化に使用される不活性希釈ガスで主に構成されているほか、部分酸化において副産物として通常形成されるか、あるいは希釈ガスとして添加される蒸気、ならびに望ましくない完全酸化により形成される炭素酸化物でも構成されている。場合により、サイクルガスは、部分酸化において消費されなかった少量の分子酸素(残留酸素)および/または未変換の有機出発化合物も含む。
【0020】
しかし、使用する不活性希釈ガスは、反応熱を吸収するのに有用なだけでなく、一般的には、反応ガス混合物を爆発範囲の外に、または爆発範囲内でありながら安全に管理可能な領域内に維持することによって、少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化の安全な動作も同時に保証する。
【0021】
反応温度または固定触媒床の温度を制御(調整)する外部および内部措置は記載されているが、「固定触媒床の温度」と「固定触媒床の有効温度」とを区別することが必要となる。なぜなら、これらの措置があっても、通常は両温度の間に差が出てしまうためである。
【0022】
固定触媒床の温度とは、部分酸化方法が行われる時の固定触媒床の温度であるが、理論的には化学反応が行われない(すなわち、反応熱の影響がない)(すなわち、部分酸化方法が行われる時と同じように、反応室の外側に通した液体熱媒の影響が含まれる)状態での温度を意味すると理解される。対照的に、固定触媒床の有効温度とは、部分酸化をさらに含んだ状態での固定触媒床の実際の温度を意味すると理解される。固定触媒床の温度が固定触媒床に沿って一定でない場合(例えば、複数の温度ゾーンが存在する場合)、本書における固定触媒床の温度という用語は、固定触媒床に沿った温度の(数値)平均を意味する。しかし、本発明による方法は、固定触媒床の温度が反応ガス混合物の流れ方向において固定触媒床に沿って一定である場合に、特に適切である。
【0023】
上述の状況においては、反応ガス混合物が特定の反応段階において固定触媒床を反応ガス混合物の流れ方向に通過する際に、反応ガス混合物の温度(したがってやはり固定触媒床の有効温度)が、通常、最大値(いわゆるホットスポット値)を通過することが重要である。ホットスポット値と、ホットスポット値の位置における固定触媒床の温度との差は、ホットスポット膨張(Heisspunktausdehnung)ΔTHBと呼ばれる。これは、とりわけ、反応ガス混合物の反応物質の濃度が、固定触媒床への反応ガス混合物の入口で最大であり、それによりこの入口における反応率が特に高く、それとともに単位時間当たりの反応熱の発生も特に多いことに起因する(固定触媒床に流入する際、反応ガス混合物は一般的に、固定触媒床の温度をほぼ有する)。
【0024】
通常、不均一触媒気相部分酸化では、反応ガス混合物が固定触媒床を1回通過する毎の部分酸化において経済的に実現可能な反応物質変換を行うために、高い固定触媒床の温度が必要となる。一般的に、これらの温度は、数百℃、通常は100〜600℃、多くの場合は150〜500℃、大抵は200または250〜450℃である。
【0025】
固定触媒床にわたる不均一触媒気相部分酸化の動作圧力は、1atm未満、または1atm超である場合がある。一般的には、1atm以上〜20atmまたは10atmの範囲にある。反応室に新規に設置した固定触媒床にわたる少なくとも1つの有機化合物の不均一触媒気相部分酸化は、1つの同じ固定触媒床にわたって長時間にわたりほぼ連続して行えることは、周知の事柄である。この場合、反応条件は一般的に、ほぼ一定のレベルに維持することができる。
【0026】
しかし、固定触媒床は、通常、動作時間の過程において品質が低下する。一般的に、固定触媒床の体積比活性は、特に低下する(反応ガス混合物が固定触媒床を1回通過する毎の特定の反応物質の変換に必要となる固定触媒床の温度が、それ以外不変の反応条件下で高くなるにつれて、固定触媒床の体積比活性は低くなる)通常、標的産物形成の選択性も悪影響を受ける。
【0027】
固定触媒床の体積比活性の低下は不利であるが、その理由は特に、これによって、反応ガス混合物が固定触媒床を1回通過する毎の反応物質の変換が、それ以外不変の動作条件下において低下するとともに、固定触媒床の動作時間が長くなり、それにより、生産プラントの意図する標的産物の空間−時間収率が低下するためである。
【0028】
欧州特許出願第EP−A 990 636号および第EP−A 1 106 598号では、反応ガス混合物が固定触媒床を1回通過した際の反応物質の変換を実質的に維持するため、それ以外不変の動作条件下で動作時間の過程において固定触媒床の温度を徐々に上昇させることにより、1つの同じ固定触媒床にわたる少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化の長期動作における上述の開発を考察することを試みている。
【0029】
本書において、固定触媒床の失活率は、1年間(365日)の動作時間に拡大した、反応ガス混合物が固定触媒床を1回通過した際の反応物質の変換を(それ以外不変の処理条件下で)維持するのに必要となる固定触媒床の温度の上昇を指している。
【0030】
しかし、欧州特許出願第EP−A 990 636号および第EP−A 1 106 598号で推奨される手順の欠点は、固定触媒床の温度上昇とともに、その経年劣化プロセスが一般的に加速することであり、このために、固定触媒床の温度が最大値に達すると、固定触媒床は通常すべてを交換し、全く使用していない固定触媒床を反応室に新規に設置しなければならないことである(固定触媒床の温度上昇により失活は均衡させることができない)。
【0031】
ドイツ特許出願第DE−A 103 51 269号、ドイツ特許出願第DE−A 103 50 812号、ドイツ特許出願第DE−A 103 50 822号、欧州特許出願第EP−A 614 872号、およびドイツ特許出願第DE−A 103 50 822号は、固定触媒床を時々再生することによって、固定触媒床を完全に交換する必要性を遅らせる(すなわち、不均一触媒固定床気相部分酸化方法を時々中断し、例えば、分子酸素および不活性ガスの高温混合物を固定触媒床に通す)ことを推奨している。しかし、この手順の欠点は、全体の動作時間が長くなるにつれてその有効性がなくなる点である。
【0032】
固定触媒床を完全に交換する必要性を遅らせる他の措置として、ドイツ特許出願第DE−A 10 2004 025 445号では、気相における動作圧力を増大させることを推奨している。しかし、この措置の欠点は、全体の動作時間が長くなるにつれてその有効性が同様になくなり、同時に、圧縮出力の増大を必要とする点である。
【0033】
固定触媒床を完全に交換する必要性を遅らせる他の措置として、ドイツ特許出願第DE−A 102 32 748号および国際公開第WO 2004/009525号では、反応室に新規に設置したばかりの交換した固定触媒床部分と体積比活性が同等でなければならない交換用の固定触媒床で、固定触媒床の一部のみを交換することを推奨している。
【0034】
このようにして、(反応室に当初新規に設置した固定触媒床による同じ反応物質の変換に必要な固定触媒床の温度に比べると)固定触媒床の温度の上昇を比較的限定し、それ以外不変の処理条件下で、(反応ガス混合物を固定触媒床に1回通過する毎に)必要な反応物質の変換を再び取り戻すことが可能となる。
【0035】
しかし、ドイツ特許出願第DE−A 102 32 748号および国際公開第WO 2004/009525号に記載された手順の欠点は、固定触媒床の部分交換後に、部分交換後に得られる固定触媒床の失活率が、必要な反応物質の変換を保証する温度での動作の過程において(同じ反応物質変換を目的としたそれ以外には対応する動作モードで反応室に新規に設置した固定触媒床の失活率に比べて)上昇することであり、このことが、固定触媒床の完全な交換が必要になるまで部分交換後に利用可能な時間スパンが比較的制限される理由である。
【0036】
したがって、本発明の目的は、ドイツ特許出願第DE−A 102 32 748号および国際公開第WO 2004/009525号による部分交換の場合に比べると、同じ反応物質変換を目的とし、それ以外は対応する動作モードにて部分交換後に得られる固定触媒床の失活率がより低い、使用済み固定触媒床の部分交換の改良された実施形態を提供することであった。
【0037】
したがって、反応室に新規に設置した固定触媒床にわたって、分子酸素により少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化を行う方法であって、部分酸化のために、前記少なくとも1つの有機出発化合物および前記分子酸素を含む反応ガス混合物を前記固定触媒床に通し、前記反応室の外側に通した液体熱媒による間接的な熱交換により反応熱を除去し、動作時間が長くなるにつれて前記固定触媒床の品質低下が進んだら、前記固定触媒床の全体ではなく一部のみを交換用固定触媒床部分(一般的に新規に調製した触媒を有する)で交換することにより、前記固定触媒床の前記品質を回復させ、前記交換用固定触媒床部分の体積比活性が、新規に設置したばかりの交換した固定触媒床部分の体積比活性よりも低い、方法を発見した。
【0038】
既述の通り、床体積が同一の固定触媒床充填物(またはこのようなセクション)の体積比活性に使用される指標は、反応ガス混合物が固定触媒床充填物を1回通過する毎にそれ以外同一の処理条件(同一の反応ガス混合物の組成、固定触媒床への反応ガス混合物の同一の充填)下で、所望の反応物質の変換を(産業規模の生産にて)達成するのに必要な固定触媒床充填物の温度である。必要な温度が高くなるほど、体積比活性は低くなる。あるいは、固定触媒床充填物の同一の温度およびその他同一の処理条件または動作条件(同一の反応ガス混合物の組成、固定触媒床への反応ガス混合物の同一の充填)下で、固定触媒床を1回通過する毎に得られる反応物質変換を使用することが可能である。達成される反応物質の変換が高くなるほど、体積比活性は高くなる。
【0039】
体積固有(すなわち、床体積の単位に正規化される)活性は、例えば、基本量の一様に生成した成形触媒体を不活性成形希釈体によって均一に希釈することによって、簡単に低下させることができる。不活性成形希釈体の選択された割合が高くなるほど、特定体積の床に含まれる活性組成物量および触媒活性が低くなる。不活性成形希釈体とは、不均一触媒部分気相酸化に関してほぼ不活性に作用する材料、すなわち可能な限り反応物質の変換を実質的に生じない材料の成形体を意味すると理解される。有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化の大部分に有用なこのような材料は、例えば、多孔質または無孔質のアルミニウム酸化物、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、あるいはケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩、あるいはステアタイトである。
【0040】
このような不活性成形希釈体の形状は、基本的に、所望通りである場合がある。すなわち、このような希釈体は、例えば、球体、多角形、中実シリンダー、またはリングである場合がある。好ましくは、本発明によれば、選択された不活性成形希釈体は、形状が、それらで希釈する成形触媒体の形状に対応するものである。しかし、例えば、一様な形状および活性組成物タイプのコーティングされた成形触媒体で、担持体に適用された活性組成物層の厚さを薄くすることによって、あるいは形状は同じであるが、活性組成物の質量割合は異なるコーティングされた触媒の混合物で、活性組成物の質量割合がより低い成形触媒体の割合を上昇させることによって、体積比活性を低下させることも可能である。また、例えば、無担持触媒とコーティングされた触媒の混合物において(同一の活性組成物との)混合率を適切に変更することによって、同様の効果を達成することもできる。当然ながら、記載した変形形態は組み合わせて使用することもできる。しかし、体積比活性は、同じ活性組成物の元素組成物および同じ成形方法で、活性組成物の比表面積を縮小することによって、例えば、高温にておよび/または長期間にわたり活性組成物を熱処理することによって、低下させることもできる。
【0041】
また、例えば、同一の成形で、活性組成物の元素組成物を変更し、および例えば、活性増大に特に有益な元素成分の割合を低減することによって、体積比活性に影響を与えることもできることが理解されるであろう。あるいは、また、活性組成物の調製において、例えば、熱処理する出発化合物の乾燥混合物に難燃性の二酸化ケイ素などの不活性希釈材料を組み込むことによって、活性組成物自体を希釈することも可能である。異なる量の希釈材料をすれば、異なる活性が自動的にもたらされる。追加する希釈材料が多くなるほど、得られる活性が低くなる。上述のすべての措置は、それぞれ単独でまたは任意の組み合わせで、本発明の意味において交換用固定触媒床部分の体積比活性を制御するのに有用である。これは、とりわけ、同じ形状のコーティングされた触媒で、および同じコーティング厚で、および同じ活性組成物のコーティングで、担持体の最長寸法(例えば、担持球の直径)を増大させる可能性も含む。
【0042】
本発明の教示内容の背景には、反応室に新規に設置した固定触媒床が、固定触媒床にわたって行った少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化の動作時間の過程において、不均一で一様でない態様で固定触媒床にわたり品質が低下するという事実がある(例えば、国際公開第WO 2004/009525号を参照)。この原因としては、例えば、ホットスポットの形成および/または反応ガス混合物に含まれる触媒毒の不均質な濃縮(産業規模の反応ガス混合物は高純度でない材料から開始されること)が挙げられる場合がある。しかし、特定の原因に関係なく、対象の固定触媒床セクションの固定触媒床の有効温度が高くなるほど、特定の固定触媒床セクションの失活はより急速に進行する。
【0043】
長い動作時間の後、次いで、固定触媒床のこのような不均衡に失活したセクションが、新規に設置したばかりの交換した固定触媒床セクションの体積比活性に体積比活性が対応する交換用固定触媒床部分に交換した場合、固定触媒床全体は2つのサブセクションから構成される。一方は、新規の当初の状態にあり、他方は、以前の動作によって不均衡に失活した状態にある。反応ガス混合物が1回通過した際に、反応室に新規に設置した完全な固定触媒床の場合と同じ反応物質の変換を、それ以外不変の動作条件下にてこのような固定触媒床で達成するには、より高い固定触媒床温度が、後者の場合よりも前者の場合に必要となる。しかし、これにより、新規の交換用固定触媒床部分において固定触媒床の有効温度が不均衡に上昇するが、その理由は、新規の触媒床充填物の活性が、動作温度の上昇範囲内において線形よりも大きく増大するためである(欧州特許出願第EP−A 099 636号および第EP−A 1 106 598号を参照)。部分触媒床の変更前よりもさらに低い割合の変換は、未交換の固定触媒床セクションによって相殺される。同時に、これにより、反応室に完全に新規に設置した固定触媒床が動作する場合よりも失活率は高くなる。
【0044】
対照的に、交換用固定触媒床部分が、新規に設置したばかりの交換した固定触媒床セクションよりも低い体積比活性を有する場合には、所望の反応物質変換を得るためにさらにより高い固定触媒床の温度が必要となるが、この場合、未交換の固定触媒床セクションは、比較的高い割合の変換に寄与しなければならない(当然ながら、上記の考察は、反応ガス混合物の組成および固定触媒床への反応ガス混合物の負荷を維持することを常に前提とする)。これには、一般的に、ホットスポット膨張ΔTHBの低下が伴い、最終的には、通常、当初新規に設置した状態の体積比活性に対応する体積比活性を有する交換用固定触媒床部分の場合よりも、失活率が低くなる。しかし、失活率がこのように比較的低下することにより、通常は、固定触媒床の完全な交換が必要になるまでの全体の動作時間が長くなる。すなわち、本発明による方法の魅力は、固定触媒床の未交換の以前に十分使用されていないセクションの触媒能を極めて大幅に活性化させてから、それを使用する点である。この手順は、明らかかつ驚くべきことに、交換用固定触媒床部分の体積比活性が、交換した固定触媒床の交換時における体積比活性よりも低くなるような、部分固定触媒床の変更を含む。しかし、交換用固定触媒床部分の成形触媒体は、通常、新規に調製した成形触媒体であるか、またはそれを含む。本発明の手順が従来技術の手順よりもさらに経済的に有利である理由は、交換用固定触媒床部分の体積比活性がより低いために、例えば、不活性成形希釈体の割合が増大し、それによって交換用固定触媒床部分の経済的支出を削減できる点である。あるいは、当然ながら、より低い失活率の経済的な利点を行使する代わりに、固定触媒床への反応ガス混合物の負荷を増大させることで、例えば、以前の失活率を維持しながら、標的産物の空間−時間収率を向上させることも可能である。
【0045】
本発明によれば、交換用固定触媒床部分の体積比活性は、反応ガス混合物が固定触媒床を1回通過した際の同じ反応物質の変換のほか、同じ反応ガス混合物の組成ならびに固定触媒床への反応ガス混合物の同じ充填に基づき、固定触媒床の部分変更後のホットスポット膨張ΔTHBnと、固定触媒床の部分変更(直)前のホットスポット膨張ΔTHBvとの差dΔT(dΔT=ΔTHBn−ΔTHBv)が、30℃以下になるのが有利である。交換用固定触媒床部分の体積比活性は、好ましくはdΔTが25℃以下、または20℃以下、または15℃以下、より良好には10℃以下、または5℃以下、より有利には0℃以下、または−5℃以下、または−10℃以下、多くの場合は−15℃以下、または−20℃以下になるような体積比活性である。一般的に、dΔTは−20℃未満である。dΔTが−15〜+10℃である本発明による方法が好ましい。dΔTが−10〜0℃である本発明による方法が、特に好ましい。また、−5〜0℃のdΔTも好適である。
【0046】
例として、本発明による方法の反応室は、固定触媒床を設置し、液体熱媒を外側に通した(触媒または反応)管の内部である場合がある。これは、基本的に、反応管に通した反応ガス混合物に対して並流、対向流、または交差流にて通すことができる。触媒管は管束反応器に配置させるのが適切である。
【0047】
すなわち、本発明によれば、少なくとも1つの有機出発化合物の本発明の不均一触媒気相部分酸化は、多重触媒管固定床反応器(管束反応器)において産業規模で行われる。このような反応器は、シェルアンドチューブ熱交換器に対応するタイプである(しかし、基本的には、その他いずれのタイプの既知の間接熱交換器も、本発明による方法の固定触媒床を収容するのに有用である)。すなわち、典型的な設計は、シェルアンドチューブ熱交換器の冷却管に対応する多くの(通常は同一の)(反応)管が通常は垂直の構成で収容される、一般的にシリンダー型の容器で構成される。使用する固定触媒床の(通常は極めて実質的に同一の)床(対応する触媒充填物の固定床構成)をそれぞれが含むこれらの触媒管は、通常は端部が管プレートにシーリングで固定され、上端部および下端部の容器に結合したフードに適切に開放されている。これらのフードを介して、触媒管を流れる反応ガス混合物は供給および除去され、それにより、各触媒管の内部は、縦方向に延びる本発明の(極めて実質的に一様な)反応室に対応する。
【0048】
液体熱媒(液体熱交換媒体)は、反応熱(処理熱)を除去(管理)するために、触媒管を囲む空間通される。容器を出た加熱された液体熱媒は、反応容器に再び供給される前に、再び元の温度に戻される(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 30 42 468号を参照)。
【0049】
熱媒(熱交換媒体)が、触媒管(反応管)に沿って異なる(いくつかの)高さで反応器に流入する場合、本書では、複数の熱交換媒体回路の使用、あるいは複数の温度ゾーンを有するマルチゾーン反応器(反応室)の使用に触れている(個々の回路は一般的に、適切な分離シートによって互いから実質的に分離される)。熱媒(熱交換媒体)が1つの高さにてのみ流入する場合には(これらの場合、本発明による方法が好ましい)、この回路が1つのポンプではなく、便宜上複数のポンプで動作する時でさえも、本書では1つの熱交換媒体回路あるいは1ゾーン反応器に触れている。
【0050】
すなわち、本発明による方法は、一実施形態として、具体的には、複数の触媒管固定床反応器の反応室(触媒管)に新規に設置した固定触媒床にわたって酸素分子により少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化を行う方法であって、部分酸化のために、前記少なくとも1つの有機出発化合物および前記分子酸素を含む反応ガス混合物を前記固定触媒床に通し、前記反応室(触媒管)の外側に通した液体熱媒による間接的な熱交換により反応熱を除去し、動作時間が長くなるにつれて前記固定触媒床の品質低下が進んだら、前記固定触媒床の全体ではなく一部のみを交換用固定触媒床部分で交換することにより、前記固定触媒床の前記品質を回復させ、前記交換用固定触媒床部分の体積比活性が、新規に設置したばかりの交換した固定触媒床部分の体積比活性よりも低い、方法を含む。これは、熱媒を触媒管に沿って1つの高さにてのみ反応器の中に通し、したがって1ゾーン反応器である場合に、特に当てはまる。本発明による方法について行われる本書のすべての説明は、特にこれらの2つの実施形態、具体的にはdΔTの定量化に関する。
【0051】
本発明に基づき使用可能な1ゾーンおよびマルチゾーン式多重触媒管固定床反応器の例については、例えば、ドイツ特許出願第DE−A 100 24 348号、ドイツ特許出願第DE−A 198 36 792号、ドイツ特許出願第DE−A 100 32 304号、国際公開第WO 01/87476号、ドイツ特許出願第DE−A 199 10 508号、ドイツ特許出願第DE−A 199 10 506号、ドイツ特許出願第DE−A 199 27 624号、ドイツ特許出願第DE−A 199 48 241号、ドイツ特許出願第DE−A 199 48 248号、ドイツ特許出願第DE−A 199 48 523号、ドイツ特許出願第DE−A 199 55 168号、ドイツ特許出願第DE−A 101 34 026号、ドイツ特許出願第DE−A 101 34 026号、ドイツ特許出願第DE−A 101 01 695号、米国特許出願第US−A 5,442,108号、欧州特許出願第EP−A 911 313号、欧州特許出願第EP−A 1 097 745号、ドイツ特許出願第DE−A 101 37 768号、ドイツ特許出願第DE−A 101 35 498号、およびドイツ特許出願第DE−A 100 40 781号に記載されている。
【0052】
通常、触媒管はフェライト鋼から製造され、しばしば1〜3mmの壁厚を有する。内径は、多くの場合20〜30mm、しばしば21〜26mmである。通常、管の長さは、数メートルに及ぶ(通常の触媒管の長さは、2〜4m、しばしば2.5〜3.5mの範囲である)。この中の、一般的には少なくとも60%、しばしば少なくとも75%を、固定床触媒床が占める。本発明によれば、容器に収容される触媒管の数は、少なくとも5000、好ましくは少なくとも10000になるのが適切である。しばしば、反応容器に収容される触媒管の数は、15000〜30000または40000である。約50000の触媒管を有する管束反応器は、通常、例外である。容器内の触媒管は、通常、均一に分布させ、その分布は、互いに隣接する触媒管の中央内部軸の離隔距離(いわゆる触媒管ピッチ)が、30〜50mm、しばしば35〜45mmとなるように選択されるのが適切である(例えば、欧州特許公報第EP−B 468 290号を参照)。
【0053】
本発明による方法に有用な液体熱媒は、極めて一般的であるが、特に多重触媒管固定床反応器の場合は、塩溶融物、例えば、硝酸カリウム塩、亜硝酸カリウム塩、硝酸ナトリウム塩、および/または亜硝酸ナトリウム塩である。場合により、融点に応じて、ナトリウム、水銀、および異なる金属の合金など、融点の低い金属の溶融物を使用することも可能である。
【0054】
熱交換媒体である熱媒は、触媒管に対して縦方向に(反応ガス混合物に対して並流または対向流で)ほぼ直線に簡単に通すことが可能である。しかし、反応器全体を確認しながらこの縦方向の流れ(反応ガス混合物に対して並流または対向流で)を実施し、触媒管に沿って連続して、通路の断面を自由にする偏向ディスクの構成によって反応器内においてこの縦方向の流れに交差流れを重ね合わせ、それにより管束を通る縦方向のセクションの熱交換媒体の蛇行流プロファイルを得ることも可能である。一般的に、熱交換媒体は、入口温度(しばしば0℃以上〜10℃、しばしば2℃以上〜8℃、多くの場合は3℃以上〜6℃)よりも高い(発熱反応によって生じる)温度で容器(反応器)を出る。
【0055】
本発明の方法に関する本書の上述の説明およびその他すべての説明は、特に、プロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸、イソブテンからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸、(メタ)アクロレインから(メタ)アクリル酸、プロパンからアクロレインおよび/またはアクリル酸、ならびにイソブテンからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への不均一触媒固定床気相部分酸化に有効である。当然ながら、本書の冒頭に挙げたその他すべての部分酸化にも有効である。
【0056】
本発明によれば、体積比活性が反応ガス混合物の流れ方向において変化するように、本発明による方法において反応室に新規に設置した固定触媒床を、本発明による有利な方法で構成する場合に好適である。反応ガス混合物の流れ方向の体積比活性が、急激に少なくとも1回、あるいは段階的にまたは連続的に増大するように構成するのが、特に有利である。
【0057】
反応室に新規に設置した固定触媒床は、反応ガス混合物の流れ方向における体積比活性の減少を含まないのが、特に有利である。また、本発明によれば、反応室に新規に設置した固定触媒床が、この固定触媒床で使用される単一の成形体形状に成形されるのが特に有利である唯一の活性組成物を有する場合にも好適である。さらに、本発明によれば、新規に調製した形態のこの上述の触媒タイプは、交換用固定触媒床部分の唯一の触媒としても使用されるのが好適である。
【0058】
また、本発明によれば、唯一のタイプの不活性成形希釈体が、反応室に新規に設置した固定触媒床内で追加的に使用されるのも好適である。次いで、この成形希釈体は、交換用固定触媒床部分にも適切に使用する必要がある。したがって、本発明の手順は、交換用固定触媒床部分と、反応室に新規に設置したばかりの交換用固定触媒床部分で交換した固定触媒床のセクションとが、交換用固定触媒床部分における成形希釈体の割合が増大している点のみ異なる場合に、特に有利である。
【0059】
本発明の手順は、その全般的な有効性を何ら制限することなく、かつプロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への不均一触媒固定床気相部分酸化の方法を単に一例として使用して、以下に詳述する(しかし、これらの見解は、他の有機出発化合物および標的産物の不均一触媒固定床気相部分酸化に関する本発明による他の可能な方法に対応して適用される)。本書において行われるすべての説明は、特に、これらの2つの方法に関する。これに関して必要なプロピレン原料は、一般的に、ポリマー等級または化学品等級のプロピレンの成分として使用する反応ガス混合物に供給される(国際公開第WO 2004/009525号を参照)。但し、プロパンの不均一触媒部分脱水素化またはオキシ脱酸素化も、例えば国際公開第WO 01/96270号およびドイツ特許出願第DE−A 103 16 039号、国際公開第WO 01/95271号、ドイツ特許出願第DE−A 33 13 573号、国際公開第WO 03/011804号、ドイツ特許出願第DE−A 102 45 585号、ドイツ特許出願第DE−A 10 2004 032 129号、ならびにドイツ特許出願第DE−A 10 2005 013 039に記載の通り、プロピレンの供給源として機能する場合もあることが理解されるであろう。
【0060】
プロピレンからアクリル酸への不均一触媒固定床気相部分酸化は、中間化合物としてアクロレインを介し、2段階で時間的に連続して行われることから、既述の通り、1段階または2段階で実施することができる。
【0061】
本発明の固定触媒床の部分変更とは別に、プロピレンからアクリル酸への本発明の2段階不均一触媒部分酸化は、例えば、欧州特許出願第EP−A 700 714号(第1の反応段階;本出願に記載の通りに実施するが、管束反応器における塩浴および出発反応ガス混合物の対応する対向流様式でも実施)、欧州特許出願第EP−A 70 08 93号(第2の反応段階:本出願に記載の通りに実施するが、対応する対向流様式でも実施)、国際公開第WO 04/085 369号(特に本出願は、本書の一構成要素であるとされる)(2段階方法として)、国際公開第WO 04/085363号、ドイツ特許出願第DE−A 103 13 212号(第1の反応段階)、欧州特許出願第EP−A 1 159 248号(2段階方法として)、欧州特許出願第EP−A 1 159 246号(第2の反応段階)、欧州特許出願第EP−A 1 159 247号(2段階方法として)、ドイツ特許出願第DE−A 199 48 248号(2段階方法として)、ドイツ特許出願第DE−A 101 01 695号(2段階)、国際公開第WO 04/085368号(2段階方法として)、ドイツ特許出願第DE−A 103 51 269号(2段階)、ドイツ特許出願第DE−A 10 2004 021 764号(2段階)、国際公開第WO 04/085362号(第1の反応段階)、国際公開第WO 04/085370号(第2の反応段階)、国際公開第WO 04/085365号(第2の反応段階)、国際公開第WO 04/085367号(2段階)、国際公開第WO 2004/009525号(2段階)、欧州特許出願第EP−A 990 636号、欧州特許出願第EP−A 1 007 007号、および欧州特許出願第EP−A 1 106 598号に記載の通り、プロピレンを含む出発ガス混合物を使用して実施することができる。
【0062】
このことは、これらの文献に含まれるすべての実施例に特に当てはまる。分子2次酸素が、2段階方法において2つの反応段階間に供給される場合、これは空気の形態で実施されるのが好ましい。しかし、純粋な分子酸素の形態で、あるいは分子酸素と不活性ガスの別の混合物として実施することもできる。2次酸素は、第2の反応段階(アクロレイン→アクリル酸)の産物ガス混合物が、未変換の分子酸素を依然として含むような量で供給されるのが有利である。しかし、プロセス全体に必要な分子酸素の量は、第1の反応段階(プロピレン→アクロレイン)の出発反応ガス混合物にすでに追加されている場合もある。一般的に、第1の反応段階の固定触媒床に供給された反応ガス混合物に含まれる分子酸素と、この混合物に含まれるプロピレンのモル比は、1以上3以下となる。
【0063】
2つの内の特定の反応段階に適切な多金属酸化物触媒は、以前に何度も記載されており、当業者に周知である。例えば、欧州特許出願第EP−A 253 409号は、5ページにおいて、適切な米国特許を参照している。特定の酸化段階(反応段階)に適切な触媒については、ドイツ特許出願第DE−A 44 31 957号、第DE−A 10 2004 025 445号、および第DE−A 44 31 949号にも開示されている。これは、上述の2つの従来技術の文献の一般化学式Iに記載のものにも当てはまる。特定の酸化段階(反応段階)に有用な触媒については、ドイツ特許出願第DE−A 103 25 488号、第DE−A 103 25 487号、第DE−A 103 53 954号、第DE−A 103 44 149号、第DE−A 103 51 269号、第DE−A 103 50 812号、および第DE−A 103 50 822号にも開示されている。
【0064】
したがって、第1の反応段階(プロピレン→アクロレイン)に有用な触媒とは、具体的に、その活性組成物が、モリブデンおよび/またはタングステン、ならびにビスマス、テルリウム、アンチモン、錫、および銅の少なくとも1つの元素を含む少なくとも1つの多金属酸化物である、触媒である。これらの中では、活性組成物がMo、BiおよびFeを含む多金属酸化物であるものが好ましい。
【0065】
Mo、BiおよびFeを含み、かつ第1の反応段階で可能である多金属酸化物組成物は、例えば、ドイツ特許出願第DE−A 199 55 176号の一般化学式Iの多金属酸化物活性組成物、ドイツ特許出願第DE−A 199 48 523号の一般化学式Iの多金属酸化物活性組成物、ドイツ特許出願第DE−A 101 01 695号の一般化学式I、IIおよびIIIの多金属酸化物活性組成物、ドイツ特許出願第DE−A 199 48 248号の一般化学式I、IIおよびIIIの多金属酸化物活性組成物、およびドイツ特許出願第DE−A 199 55 168号の一般化学式I、IIおよびIIIの多金属酸化物活性組成物、ならびに欧州特許出願第EP−A 700 714に記載の多金属酸化物活性組成物である。しかし、Mo、BiおよびFeを含み、かつ第1の反応段階について国際公開第WO 2004/009525号に記載されているすべての多金属酸化物組成物も有用である。
【0066】
2005年8月29日付のResearch Disclosure No. 497012、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 957号、ドイツ特許出願第DE−A 100 63 162号、ドイツ登録特許第DE−C 3 338 380号、ドイツ特許出願第DE−A 199 02 562号、欧州特許出願第EP−A 15 565号、ドイツ登録特許第DE−C 2 380 765号、欧州特許出願第EP−A 8 074 65号、欧州特許出願第EP−A 279 374号、ドイツ特許出願第DE−A 330 00 44号、欧州特許出願第EP−A 575 897号、米国特許出願第US−A 4 438 217号、ドイツ特許出願第DE−A 19855913号、国際公開第WO 98/24746号、ドイツ特許出願第DE−A 197 46 210号(一般化学式IIのもの)、日本特許出願第JP−A 91/294 239号、欧州特許出願第EP−A 293 224号、および欧州特許出願第EP−A 700 714号に開示された、Mo、BiおよびFeを含む多金属酸化物触媒も、本発明による方法の第1の反応段階に適切である。このことは、これらの文献の例示的実施形態に特に当てはまり、これらの中でも、欧州特許出願第EP−A 15 565号、欧州特許出願第EP−A 575 897号、ドイツ特許出願第DE−A 197 46 210号、およびドイツ特許出願第DE−A 198 55 913号のものが特に好ましい。この意味では、欧州特許出願第EP−A 15 565号の実施例1cによる触媒のほか、対応する方法で調製されるが、活性組成物が組成物Mo12Ni6.5Zn2Fe2Bi10.00650.06x・10SiO2を有する触媒に、特に重点が置かれている。また、形状5mm×3mm×2mm(外径×高さ×内径)の無担持中空シリンダー触媒として、ドイツ特許出願第DE−A 198 55 913号(化学量論:Mo12Co7Fe3Bi0.60.08Si1.6x)の通し番号3を有する実施例、ならびにドイツ特許出願第DE−A 197 46 210号の実施例1に記載の無担持多金属酸化物II触媒にも重点が置かれている。また、米国特許出願第US−A 4 438 217号の多金属酸化物触媒も取り上げる必要がある。後者は、これらの中空シリンダーが、5.5mm×3mm×3.5mm、または5mm×2mm×2mm、または5mm×3mm×2mm、または6mm3mm×3mm、または7mm×3mm×4mm(それぞれ、外径×高さ×内径)の形状を有する場合に、特に当てはまる。この意味での更なる可能な触媒の形状には、押出物がある(例えば、長さ7.7mmおよび直径7mm、または長さ6.4mmおよび直径5.7mm)。
【0067】
Mo、FeおよびBiを含み、これらの存在下にて、第1の反応段階のシクロプロパンが望ましくない副反応の影響を特に受けやすく、そのためこれらを使用する場合に、本発明の手順が特に適切である、多くの多金属酸化物活性組成物は、以下の一般化学式IVにより包含することができる:
式(IV)
Mo12BiaFeb1c2d3e4fn (IV)
[式中、変数はそれぞれ以下のように定義される:
1=ニッケルおよび/またはコバルト、
2=タリウム、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属、
3=亜鉛、リン、ヒ素、ホウ素、アンチモン、錫、セリウム、鉛、および/またはタングステン、
4=ケイ素、アルミニウム、チタニウン、および/またはジルコニウム、
a=0.5〜5、
b=0.01〜5、好ましくは2〜4、
c=0〜10、好ましくは3〜10、
d=0〜2、好ましくは0.02〜2、
e=0〜8、好ましくは0〜5、
f=0〜10、ならびに、
n=式IV中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値]。
【0068】
上記は、これらの触媒が本質的に既知の方法で得られ(例えば、ドイツ特許出願第DE−A 4 023 239号を参照)、かつ本発明に基づき使用される、例えば、球、環または円筒になるように実質的に成形される、あるいはコーティングされた触媒、すなわち、活性組成物でコーティングされた予備成形の不活性担持体の形態で使用されるを与えるように場合に、特に当てはまる。但し、この説明は、これらの触媒が第1の反応段階の触媒として粉末の形態で使用される(プロピレン→アクロレイン)場合にも当てはまることが理解されるであろう。
【0069】
基本的に、一般化学式IVの活性組成物は一般的に、その元素成分の適切な供給源から、化学量論的に対応する組成物を有する極めて均質な、好ましくは微粒子化した乾燥混合物を得て、これを350〜650℃の温度にてか焼することにより、簡単に調製される。か焼は、不活性ガス下において、または空気(不活性ガスと酸素の混合物)などの酸化大気下において、および還元大気(例えば、不活性ガス、NH3、CO、および/またはH2の混合物)下において、行われる場合がある。か焼時間は、数分から数時間であってよく、通常は温度とともに減少する。多金属酸化物活性組成物IVの元素成分の有用な供給源は、すでに酸化物である化合物、および/または少なくとも酸素の存在下において加熱により酸化物に変換することができる化合物である。
【0070】
酸化物のほかに、このような有用な出発混合物には、特に、ハロゲン化物、窒化物、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アミン錯体、アンモニウム塩、および/または水酸化物が含まれる(気体として放出される化合物が得られるように分解するか、または遅くとも後のか焼時に分解することができる、NH4OH、(NH42CO3、NH4NO3、NH4CHO2、CH3COOH、NH4CH3CO2、および/またはシュウ酸アンモニウムなどの化合物は、均質乾燥混合物にさらに組み込むことができる)。
【0071】
多金属酸化物活性組成物IVを調製するための出発混合物は、乾燥形態または湿潤形態で均質混合することができる。これらを乾燥形態で混合する場合、出発混合物は、微粉として適切に使用され、混合および場合により圧縮後にか焼される。しかし、湿潤形態での均質混合が好ましい。通常、出発混合物は、水溶液および/または懸濁液の形態で互いに混合される。特に均質な乾燥混合物は、出発材料が主に溶解形態の元素成分の供給源である場合に、記載した混合プロセスで得られる。使用する溶媒は水であるのが好ましい。その後、得られた水性組成物は乾燥させ、乾燥プロセスは、100〜150℃の出口温度にて水性混合物を噴霧乾燥させることにより行うのが好ましい。
【0072】
一般化学式IVの多金属酸化物活性組成物は、粉末形態であるか、あるいは特定の触媒形状に成形されて、本発明によるプロピレンからアクリル酸への部分参加の第1の反応段階に使用される場合があり、成形は、最後のか焼の前または後に行われる場合がある。例えば、無担持触媒は、補助剤(例えば潤滑剤および/または成形補助剤としてのグラファイトまたはステアリン酸)ならびに強化剤(ガラスのマイクロファイバー、アスベスト、炭化ケイ素、またはチタン酸カリウムなど)を適宜追加して、所望の触媒形状に圧縮(例えば、タブレット化または押出加工)することにより、活性組成物あるいはその未か焼および/または部分か焼先駆物質組成物から調製することができる。グラファイトの代わりに、ドイツ特許出願第DE−A 10 2005 037 678号で推奨されるように、成形の補助剤として六方窒化ホウ素を使用することも可能である。適切な無担持触媒の形状の例には、2〜10mmの外径および長さを有する中実シリンダーまたは中空シリンダーが含まれる。中空シリンダーの場合は、1〜3mmの壁厚が有利である。無担持触媒は、当然ながら、球体の形状を有してもよく、球体の直径は2〜10mmであってよい。
【0073】
特に好適な中空シリンダーの形状は、特に無支持触媒の場合、5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)である。
【0074】
本発明に基づき適切な粉状活性組成物、あるいは未か焼および/または部分か焼の粉状先駆物質組成物は、当然ながら、予備成形された不活性触媒担持体に適用することによって成形される場合もある。コーティングされた触媒を生成するための担持体のコーティングは一般的に、例えばドイツ特許出願第DE−A 2 909 671号、欧州特許出願第EP−A 293 859号、または欧州特許出願第EP−A 714 700号に開示される通り、適切な回転式容器で実施される。担持体をコーティングするために、適用する粉末組成物は、適切に湿潤させ、例えば高温の空気により適用後に再び乾燥させる。担持体に適用する粉末組成物のコーティング厚は、多くの場合、10〜1000μmの範囲内、好ましくは50〜500μmの範囲内、より好ましくは150〜250μmの範囲内において選択される。
【0075】
有用な担持体材料には、典型的な多孔質または無孔質のアルミニウム酸化物、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、あるいはケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩がある。これらは、プロピレンの部分参加に対してほぼ不活性に作用する。担持体は、規則的なまたは不規則な形状を有することができるが、球または中空シリンダーなど、明確な表面粗さを有する規則的に成形された担持体が好ましい。本発明によれば、直径が1〜10mmまたは8mm、好ましくは4〜5mmである、ステアタイト製のほぼ無孔質の、表面の粗い球状担持体を使用するのが適切である。しかし、本発明によれば、長さが2〜10mmで、外径が4〜10mmであるシリンダーを使用するのも適切である。また、環状の担持体である場合、壁厚は、通常1〜4mmである。本発明に基づき使用する環状担持体は、2〜6mmの長さ、4〜8mmの外径、および1〜2mmの壁厚を有する。また、7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)の形状のリングも、本発明に基づき適切な担持体である。担持体の表面に適用する触媒活性酸化物組成物の粉末度は、当然ながら、所望のコーティング厚に調節される(欧州特許出願第EP−A 714 700号を参照)。
【0076】
本発明に基づきプロピレンからアクロレインへの手順に適切な多金属酸化物組成物はまた、以下の一般化学式Vの組成物であって:
式(V)
[Y1a'2b'x'p[Y3c'4d'5e'6f'7g'2h'y'p (V)
[式中、変数はそれぞれ以下のように定義される:
1=ビスマスのみ、あるいはビスマスおよびテリウム、アンチモン、錫および銅の元素の少なくとも1つ、
2=モリブデン、またはタングステン、またはモリブデンおよびタングステン、
3=アルカリ金属、タリウム、および/またはサマリウム、
4=アルカリ土類金属、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、錫、カドミウム、および/または水銀、
5=鉄、あるいは鉄ならびにクロミウムおよびセリウムの元素の少なくとも1つ、
6=リン、ヒ素、ホウ素、および/またはアンチモン、
7=希土類金属、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、レニウム、ルーテニウム、ロジウム、銀、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、トリウム、および/またはウラニウム、
=0.01〜8、
=0.1〜30、
=0〜4、
=0〜20、
>0〜20、
=0〜6、
=0〜15、
=8〜16、
,y=式V中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値、
p,q=p/q比が0.1〜10である数値]、
局所的環境とは異なる組成物のために局所的環境から分界される化学組成物Y1a'・Y2b'・Ox'の3次元領域を含み、その最大直径(領域の中心を通り、かつ領域の表面(境界)上の2つの点を結ぶ最長の直線)が、1nm〜100μm、多くの場合は10nm〜500nm、または1μm〜50μmもしくは25μmである、
組成物でもある。
【0077】
本発明に基づき特に有利な多金属酸化物組成物Vは、Y1がビスマスのみであるものである。
【0078】
これらの中では、結果として以下の一般化学式VIのものが好ましく:
式(VI)
[Bia"Z2b"Ox"]p"[Z2123c"Z4d"Fee"Z5f"Z6g"Z7h"Oy"]q" (VI)
[式中、変数はそれぞれ以下のように定義される:
2=モリブデン、またはタングステン、またはモリブデンおよびタングステン、
3=ニッケルおよび/またはコバルト、
4=タリウム、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属、
5=リン、ヒ素、ホウ素、アンチモン、錫、セリウム、および/または鉛、
6=ケイ素、アルミニウム、チタン、および/またはジルコニウム、
7=銅、銀、および/または金、
’’=0.1〜1、
’’=0.2〜2、
’’=3〜10、
’’=0.02〜2、
’’=0.01〜5、好ましくは0.1〜3、
’’=0〜5、
’’=0〜10、
’’=0〜1、
’’,y’’=式VI中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値、
’’,q’’=p’’/q’’比が0.1〜5、好ましくは0.5〜2である数値]、
特に、以下の通りである組成物VIが好ましい:
2b''=(タングステン)b''およびZ212=(モリブデン)12
【0079】
本発明によれば、本発明に基づき適切である多金属酸化物組成物V(多金属酸化物組成物VI)において本発明に基づき適切である多金属酸化物組成物V(多金属酸化物組成物VI)の[Y1a'2b'x'p([Bia''/Z2b''/Ox''p'')の全割合の少なくとも25mol%(好ましくは少なくとも50mol%、より好ましくは少なくとも100mol%)が、局所的環境とは異なる化学組成物のために局所的環境から分界され、かつ最大直径が1nm〜100μmの範囲にある化学組成物[Y1a'2b'x'[Bia''2b''x'']の3次元領域の形態である場合に、やはり重要である。
【0080】
成形に関して、多金属組成物IV触媒についてなされた説明は、多金属組成物V触媒に当てはまる。
【0081】
多金属酸化物活性組成物Vの調製は、例えば、欧州特許出願第EP−A 575 897号およびドイツ特許出願第DE−A 198 55 913号に記載されている。
【0082】
上で推奨した不活性担持体材料はまた、とりわけ、適切な固定触媒床の希釈および/または分界の不活性材料として、あるいはそれらを保護し、および/または供給した反応ガス混合物を加熱する予備床としても有用である。
【0083】
アクロレインからアクリル酸への不均一触媒気相部分酸化である第2の手順(第2の反応段階)の場合、触媒に必要とされる有用な活性組成物は、本発明によれば、基本的に、MoおよびVを含むすべての多金属酸化物組成物であり、例えば、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 928号および第DE−A 198 15 281号のものである。
【0084】
本発明に基づきシクロプロパンの望ましくない反応に特に適切である多くのものは、以下の一般化学式VIIにより包含することができる:
式(VII)
Mo12a1b2c3d4e5f6gn (VII)
[式中、変数はそれぞれ以下のように定義される:
1=W、Nb、Ta、Cr、および/またはCe、
2=Cu、Ni、Co、Fe、Mn、および/またはZn、
3=Sbおよび/またはBi、
4=1つ以上のアルカリ金属、
5=1つ以上のアルカリ土類金属、
6=Si、Al、Tiおよび/またはZr、
a=1〜6、
b=0.2〜4、
c=0.5〜18、
d=0〜40、
e=0〜2、
f=0〜4、
g=0〜40、および
n=式VII中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値]。
【0085】
活性多金属酸化物VIIの中で本発明に基づき特に適切である実施形態は、一般化学式VIIの変数の以下の定義によって包含される:
1=W、Nb、Ta、および/またはCr、
2=Cu、Ni、Co、および/またはFe、
3=Sb、
4=Naおよび/またはK、
5==Ca、Sr、および/またはBa、
6=Si、Al、および/またはTi、
a=1〜5、
b=0.5〜2、
c=0.5〜3、
d=0〜2、
e=0〜0.2、
f=0〜1、
n=式VII中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値。
【0086】
しかし、本発明に基づき特に適切である多金属酸化物VIIは、以下の一般化学式VIIIのものである:
式(VIII)
Mo12a'1b'2c'5f'6g'n' (VIII)
[式中、
1=Wおよび/またはNb、
2=Cuおよび/またはNi、
5=Caおよび/またはSr、
6=Siおよび/またはAl、
=2〜4、
=1〜1.5、
=1〜3、
f=0〜0.5、
=0〜8、
n=式VIII中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値]。
【0087】
本発明に基づき適切である多金属酸化物活性組成物(VII)は、例えばドイツ特許出願第DE−A 43 35 973号または欧州特許出願第EP−A 714 700号に開示される通り、本質的に既知の方法で得られる。
【0088】
一般的に、本発明に基づき「アクロレイン→アクリル酸」の手順に適切な多金属酸化物活性組成物、特に一般化学式VIIのものは、その元素成分の適切な供給源から、化学量論的に対応する組成物を有する極めて均質な、好ましくは微粒子化した乾燥混合物を得て、これを350℃〜600℃の温度にてか焼することにより、簡単に調製することができる。か焼は、不活性ガス下において、または空気(不活性ガスと酸素の混合物)などの酸化大気下において、および還元大気(例えば、不活性ガスとH2、NH3、CO、メタン、および/またはアクロレインなどの還元ガスとの混合物、あるいは記載した還元ガスそれ自体)下において、行われる場合がある。か焼時間は、数分から数時間であってよく、通常は温度とともに減少する。多金属酸化物活性組成物VIIの元素成分の有用な供給源は、すでに酸化物である化合物、および/または少なくとも酸素の存在下において加熱により酸化物に変換することができる化合物である。
【0089】
多金属酸化物活性組成物VIIを調製するための出発混合物は、乾燥形態または湿潤形態で均質混合することができる。これらを乾燥形態で混合する場合、出発混合物は、微粉として適切に使用され、混合および適宜圧縮後にか焼される。しかし、湿潤形態での均質混合が好ましい。
【0090】
これは、通常、水溶液および/または懸濁液の形態で出発混合物を互いに混合することにより行われる。特に出発材料は、出発材料が主に溶解形態の元素成分の供給源である場合に、記載した混合プロセスで得られる。使用する溶媒は水であるのが好ましい。その後、得られた水性組成物は乾燥させ、乾燥プロセスは、100℃〜150℃の出口温度にて水性混合物を噴霧乾燥させることにより行うのが好ましい。
【0091】
得られた多金属酸化物組成物、具体的には一般化学式VIIのものは、粉末形態であるか、あるいは特定の触媒形状に成形されて、本発明のアクロレインの酸化に使用される場合があり、成形は、最後のか焼の前または後に行われる場合がある。例えば、無担持触媒は、補助剤(例えば潤滑剤および/または成形補助剤としてのグラファイトまたはステアリン酸)ならびに強化剤(ガラスのマイクロファイバー、アスベスト、炭化ケイ素、またはチタン酸カリウムなど)を適宜追加して、所望の触媒形状に圧縮(例えば、タブレット化または押出加工)することにより、活性組成物あるいはその未か焼および/または部分か焼先駆物質組成物から調製することができる。適切な無担持触媒の形状の例には、2〜10mmの外径および長さを有する中実シリンダーまたは中空シリンダーがある。中空シリンダーの場合は、1〜3mmの壁厚が適切である。無担持触媒は、当然ながら、球体の形状も有する場合もあり、球体の直径は2〜10mm(例えば、8.2mmまたは5.1mm)である場合がある。
【0092】
粉状活性組成物、あるいはその未か焼の粉状先駆物質組成物も、当然ながら、予備成形された不活性触媒担持体に適用することによって成形することができる。コーティングされた触媒を生成するための担持体のコーティングは一般的に、例えばドイツ特許出願第DE−A 2 909 671号、欧州特許出願第EP−A 293 859号、または欧州特許出願第EP−A 714 700号に開示される通り、適切な回転式容器で実施される。
【0093】
担持体をコーティングするために、適用する粉末組成物は、適切に湿潤させ、例えば高温の空気により適用後に再び乾燥させる。担持体に適用する粉末組成物のコーティング厚は、本発明に基づき適切な方法では、多くの場合10μm〜1000μmの範囲内、好ましくは50μm〜500μmの範囲内、より好ましくは150μm〜250μmの範囲内において選択される。
【0094】
有用な担持体材料には、典型的な多孔質または無孔質のアルミニウム酸化物、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、あるいはケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩がある。担持体は、規則的な形状または不規則な形状を有する場合があるが、グリット層を有する球または中空シリンダーなど、明確な表面粗さを有する規則的な形状の担持体が好ましい。適切な担持体には、直径が1〜10mmまたは8mm、好ましくは4〜5mmである、ステアタイト製のほぼ無孔質の、表面の粗い球状担持体が含まれる。すなわち、適切な球体形状は、8.2mmまたは5.1mmの直径を有する場合がある。しかし、適切な担持体にはまた、長さが2〜10mmで、外径が4〜10mmであるシリンダーも含まれる。また、環状の担持体である場合、壁厚は、通常1〜4mmである。使用する環状担持体は、好ましくは2〜6mmの長さ、4〜8mmの外径、および1〜2mmの壁厚を有する。また、適切な担持体にはまた、具体的には7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)の形状のリングでもある。担持体の表面に適用する触媒活性酸化物組成物の粉末度は、当然ながら、所望のコーティング厚に適合される(欧州特許出願第EP−A 714 700号を参照)。
【0095】
「アクロレイン→アクリル酸」の部分酸化手順に適切な多金属酸化物活性組成物はまた、以下の一般化学式IXの組成物であって:
式(IX)
[D]p[E]q (IX)
[式中、
D=Mo12a''1b''2c''3d''4e''5f''6g''x
E=Z712Cuh''i''y''
1=W、Nb、Ta、Cr、および/またはCe、
2=Cu、Ni、Co、Fe、Mn、および/またはZn、
3=Sbおよび/またはBi、
4=Li、Na、K、Rb、Cs、および/またはH、
5=Mg、Ca、Sr、および/またはBa、
6=Si、Al、Ti、および/またはZr、
7=Mo、W、V、Nb、および/またはTa、好ましくはMoおよび/またはW、
’’=1〜8、
’’=0.2〜5、
’’=0〜23、
’’=0〜50、
’’=0〜2、
’’=0〜5、
’’=0〜50、
’’=4〜30、
’’=0〜20、および
’’,y’’=式IX中の酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数値、ならびに
p,q=p/q比が160:1〜1:1であるゼロ以外の数値]、
微粒子形態(出発組成物1)で以下の多金属酸化物組成物Eを個別に予備成形した後:
712Cuh"Hi"Oy" (E)
予備形成された固体出発組成物1を、所望のp:q比で以下の化学量論D(出発組成物2)の上述の元素を含む元素Mo、V、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6の供給源の水溶液、水性懸濁液、または微粒子化した乾燥混合物に組み込み:
Mo12a"Z1b"Z2c"Z3d"Z4e"Z5f"Z6g" (D)
結果として得られる場合がある水性混合物を乾燥させ、250℃〜600℃の温度にて乾燥させて所望の触媒形状を得る前または後に、得られた乾燥先駆物質組成物をか焼することにより、得ることができる、
組成物でもある。
【0096】
特に適切なものには、事前に形成された固体出発組成物1が70℃未満の温度にて水性出発組成物2に組み込まれる、多金属酸化物組成物IXがある。多金属組成物VI触媒を調製する詳細な説明は、例えば、欧州特許出願第EP−A 668 104号、ドイツ特許出願第DE−A 197 36 105号、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 928号、ドイツ特許出願第DE−A 197 40 493号、およびドイツ特許出願第DE−A 195 28 646号に包含されている。
【0097】
成形に関しては、多金属酸化物組成物IX触媒に関して行った説明が当てはまる。本発明に基づき「アクロレイン→アクリル酸」手順に特に適切な多金属酸化物触媒にはまた、ドイツ特許出願第DE−A 198 15 281号に記載のもの、具体的にはドイツ特許出願第DE−A 198 15 281号の一般化学式の多金属酸化物活性組成物を有するものもある。
【0098】
無担持触媒リングは、プロピレンからアクロレインへの手順に使用され、コーティングされた触媒リングは、アクロレインからアクリル酸への手順に使用するのが有利である。
【0099】
第1の反応段階(プロピレン→アクロレイン)の固定触媒床の温度は、適切には270〜450℃、または280〜420℃、好ましくは300〜380℃である。第2の反応段階(アクロレイン→アクリル酸)の固定触媒床の温度は、適切には200〜370℃、または200〜320℃、好ましくは220〜380℃である。本発明による方法が1ゾーン式多重触媒管固定床反応器にて実施される場合、上述の温度は、触媒管を囲む容器内への熱媒の(塩溶融物の)入口温度に対応する。
【0100】
基本的に、本発明による方法において、反応ガス混合物の流れ方向の体積比活性は、反応室に新規に設置した第1の反応段階の固定触媒床内において流路長にわたって一定である場合もあれば、あるいは有利には少なくとも1回(連続的にまたは急激にまたは段階的に)増大する場合もある。上述のすべての場合において、活性組成物が流路長にわたって(すなわち、固定触媒床内において)変化しない場合にも有利である。第1の反応段階に関する説明は、プロピレンからアクリル酸への不均一触媒固定床気相酸化の第2の反応段階にも同様に当てはまる。
【0101】
第1の反応段階の反応室に新規に設置した固定触媒床を調製するためには、多金属酸化物活性組成物を有する成形触媒体のみ、あるいは多金属酸化物活性組成物を有する成形触媒体と、多金属酸化物活性組成物を有さず、かつ不均一触媒部分気相酸化に対してほぼ不活性に作用する成形体(成形希釈体)とのほぼ均一な混合物を使用することが可能である。このような不活性成形体に有用な材料には、基本的に、本発明に基づき適切なコーティング触媒の担持体材料としても適切なものすべてが挙げられる。このような有用な材料には、例えば、多孔質または無孔質のアルミニウム酸化物、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、あるいはケイ酸マグネシウムまたはケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩、あるいは既述のステアタイトがある。
【0102】
このような不活性成形希釈体の形状は、基本的に、所望通りである場合がある。すなわち、形状は、例えば、球体、多角形、中実シリンダー、あるいは活性組成物を有する成形触媒体のようにリングである場合がある。本発明によれば、選択する不活性成形希釈体は、形状が、それらで希釈する成形触媒体の形状に対応するものであるのが好ましい(上述の説明は、多金属酸化物活性組成物を有する成形触媒体と、第2の反応段階の固定触媒床を提供するのに有用な成形希釈体とのほぼ均一な混合物にも当てはまる)。
【0103】
使用する活性組成物の化学組成物が、反応室に新規に設置した第1の反応段階の固定触媒床(固定床触媒充填物1)にわたって変化しない場合に有利である。すなわち、個々の成形触媒体に使用される活性組成物は、異なる多金属酸化物の混合物である場合があるが、その場合、好ましくは同じ混合物が、固定床触媒充填物1のすべての成形触媒体に使用されなければならない。
【0104】
体積固有(すなわち、体積の単位に正規化される)活性は、既述の通り、基本量の一様な方法で作成した成形触媒体を成形希釈体によって均一に希釈することによって、簡単に低下させることができる。選択する成形希釈体の割合が高くなるほど、特定体積の床に含まれる活性組成物または触媒活性の量が少なくなる。
【0105】
したがって、固定床触媒充填1にわたって反応ガス混合物の流れ方向において少なくとも1回増大する体積比活性は、例えば、1つのタイプの成形触媒体に基づいて高い割合の不活性成形希釈体を有する床で開始した後、流れ方向における成形希釈体のこの割合を連続的に、あるいは少なくとも1回または複数回急激に(例えば段階的に)低減することによって、本発明による方法のために簡単に達成することができる。成形希釈体の含有量が一定のままであるか、あるいは成形希釈体が固定床触媒充填物1において全く追加的に使用されない場合には、固定床触媒充填物1にわたって反応ガス混合物の流れ方向において一定の体積比活性が得られる。しかしまた、例えば、一定の形状および活性組成物タイプのコーティングされた成形触媒体で、担持体に適用された活性組成物相の厚さを厚くすることによって、あるいは形状は同じであるが、活性組成物の質量割合は異なるコーティングされた触媒の混合物で、活性組成物の質量割合がより高い成形触媒体の割合を上昇させることによって、体積比活性を増大させることも可能である。例えば、無担持触媒とコーティングされた触媒との(同一の組成物を有する)混合物では、混合比を適切な方法で変更することにより、同様の効果を達成することができる。但し、記載した変形形態は組み合わせて使用することもできることが理解されるであろう。
【0106】
通常、プロピレンからアクリル酸への本発明の2段階部分酸化において、体積比活性は、反応ガス混合物の流れ方向において、固定床触媒充填物1内でも固定床触媒充填物2(これは、反応室に新規に設置した第2の反応段階の固定触媒床である)内でも一度も減少しない。
【0107】
固定床触媒充填物1の上流および/または下流には、主に不活性材料(例えば、成形希釈体のみ)から構成される床が配置される場合がある(専門用語においては、本書において、これらは固定床触媒充填物1に含まれないが、その理由は、多金属酸化物活性組成物を含む成形体を含まないためである)。不活性床に使用される成形希釈体は、固定床触媒充填物1において使用される成形触媒体と同じ形状を有する場合がある。しかし、不活性床に使用される成形希釈体は、成形触媒体の上述の形状とは異なる場合がある(例えば、環状ではなく球体)。
【0108】
本発明によれば、本発明による方法において、固定床触媒充填物1は、以下のように反応ガス混合物の流れ方向において構成されるのが好ましい。
【0109】
第一に、成形触媒体のみ、または成形触媒体と成形希釈体の1つの均一な混合物(あるいは希釈が減少する2つの連続する均一混合物)である固定床触媒充填物1の全長のいずれの場合においても、10〜60%、好ましくは10〜50%、より好ましくは20〜40%、最も好ましくは25〜35%の長さまで(すなわち、例えば、0.70〜1.50m、好ましくは0.90〜1.20mの長さまで)、成形希釈体の割合質量(成形触媒体と成形希釈体の質量密度は、一般的にごくわずか異なる)は、通常、5〜40質量%、または10〜40質量%、または20〜40質量%、または25〜35質量%である。次いで、固定床触媒充填物1のこの第1のゾーンの下流には、本発明によれば、固定床触媒充填物の長さの端部まで(すなわち、例えば、2.00〜3.00m、好ましくは2.50〜3.00mの長さまで)、(第1のゾーンよりも)わずかに少ない程度に希釈した成形触媒体の床、または最も好ましくは、第1のゾーンにおいても使用した同じ成形触媒体の単独の(希釈されていない)床を配置するのが有利である。
【0110】
上記は、固定床触媒充填物1において使用する成形触媒体が、無担持触媒リングまたはコーティングされた触媒リング(特に、本書において好ましいと記載したもの)である場合に、特に当てはまる。上記の構成の目的においては、本発明による方法の成形触媒体および成形希釈体はいずれも、5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)の実質的なリング形状を有するのが有利である。
【0111】
固定床触媒充填物1の体積比活性を変更することができる方法に対応して、固定床触媒充填2の体積比活性も変更することができる。そのため、実際の固定床触媒充填物2の上流および/または下流には、適切な不活性床を配置する場合がある(専門用語においては、本書において、これは固定床触媒充填物2に含まれないが、その理由は、多金属酸化物活性組成物を有する成形体を含まないためである)。
【0112】
本発明によれば、本発明による方法において、固定床触媒充填物2は、以下のように反応ガス混合物の流れ方向において構成されるのが好ましい。
【0113】
第一に、成形触媒体のみ、または成形触媒体と成形希釈体(両方ともほぼ同じ形状を有するのが好ましい)の1つの均一な混合物(あるいは希釈を少なくした2つの連続する均一な混合物)である固定床触媒充填物2の全長のいずれの場合においても、10〜60%、好ましくは10〜50%、より好ましくは20〜40%、最も好ましくは25〜35%の長さまで(すなわち、例えば、0.70〜1.50m、好ましくは0.90〜1.20mの長さまで)、成形希釈体の割合質量(成形触媒体と成形希釈体の質量密度は、一般的にごくわずか異なる)は、通常、10〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、より好ましくは25〜35質量%である。次いで、固定床触媒充填物2のこの第1のゾーンの下流には、本発明によれば、固定床触媒充填物の長さの端部まで(すなわち、例えば、2.00〜3.00m、好ましくは2.50〜3.00mの長さまで)、(第1のゾーンよりも)わずかに少ない程度に希釈した成形触媒体の床、または最も好ましくは、第1のゾーンにおいても使用した同じ成形触媒体の単独の床を配置するのが有利である。
【0114】
上記は、固定床触媒充填物2において使用する成形触媒体が、コーティングされた触媒リング(特に、本書において好ましいと記載したもの)である場合に、特に当てはまる。上記の構成の目的においては、本発明による方法の成形触媒体またはその担持体リングおよび成形希釈体はいずれも、7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)の実質的なリング形状を有するのが有利である。
【0115】
一般的に、反応室に新規に設置した固定触媒床および両反応段階の残りの境界条件は、欧州特許出願第EP−A 990 636号および第EP−A 1 106 598号に記載の通り、ホットスポットの形成およびその熱選択性がいずれも最小限になるように構成される(ΔTHBは、一般的に80℃以下、通常は70℃以下、しばしば20〜70℃である;ΔTHBは低いのが好ましい;ピークから塩の温度感受性は、通常、9℃以下、または7℃以下、または5℃以下、または3℃以下である)。
【0116】
本発明の固定触媒床の部分変更の前に、本発明の部分変更の必要性を遅らせるのに適切である、従来技術に記載のすべての手順を、それぞれ単独でまたは組み合わせて使用できることが理解されるであろう。
【0117】
適用の観点から、第1の反応段階および第2の反応段階はいずれも、上で適切であると記載され、かつそれぞれを反応室に新規に設置する固定触媒床を使用し、本書においてこの目的に適切であると記載した1ゾーン式多触媒管固定床反応器にて実施する(使用する)のが適切である。これに関して好ましい適切な1ゾーン式多重触媒管固定床反応器については、欧州特許出願第EP−A 700 714号および第EP−A 700 893号に記載されている。基本的には、例えばドイツ特許出願第DE−A 103 13 213号、ドイツ特許出願第DE−A 10 2005 062 026号、国際公開第WO 2004/009525号、およびドイツ特許出願第DE−A 103 51269号に記載の通り、マルチゾーン式多重触媒管固定床反応器の動作モードを両反応段階に使用することも可能である。
【0118】
第1のおよび第2の両反応段階において、動作圧力は、標準圧力よりも低い(例えば、最高0.5バール;反応ガス混合物は固定触媒床に吸い込まれる)か、または標準圧力よりも高い場合がある。通常、両反応段階の動作圧力は、1〜5バール、しばしば1.5〜3.5バールの値である。通常、2つの反応段階における動作圧力は、100バールを超えない。
【0119】
固定床触媒充填物1のプロピレン充填量は、80Nl/l・時以上、または100Nl/l・時以上、または120Nl/l・時以上、または140Nl/l・時以上、または165Nl/l・時以上、または170Nl/l・時以上、または175Nl/l・時以上、または180Nl/l・時以上、または185Nl/l・時以上、または190Nl/l・時以上、または200Nl/l・時以上、または210Nl/l・時以上、または220Nl/l・時以上、または230Nl/l・時以上、または240Nl/l・時以上、または250Nl/l・時以上である場合がある。通常、固定床触媒充填物1のプロピレン充填量は、600Nl/l・時を超えない。通常、固定床触媒充填物1のプロピレン充填量は、300Nl/l・時以下、しばしば250Nl/l・時の値である。
【0120】
2つの反応段階における全空間速度は、例えば、1000〜3000Nl/l・時である場合がある。上記は、固定床触媒充填物2のアクロレイン充填量にも同様に当てはまる。
【0121】
両反応段階において必要となる分子酸素の有用な供給源は、空気および分子窒素が枯渇した空気の両方、または純粋な分子酸素である。第1の反応段階の反応ガス混合物におけるO2:プロピレンのモル比は、一般的に1以上である。第2の反応段階の反応ガス混合物におけるO2:プロピレンのモル比は、一般的に0.5以上である。いずれの段階でも、モル比は通常3以下である。
【0122】
固定床触媒充填物1に充填する反応ガス混合物(本書では反応ガス混合物1とも呼ばれる)は、一般的に、以下の成分体積比(Nl/l・時)を有する:プロピレン:酸素:不活性ガス(蒸気を含む)=1:(1.0〜3.0):(5〜25)、好ましくは1:(1.7〜2.3):(10〜15)。
【0123】
固定床触媒充填物2に充填する反応ガス混合物(本書では反応ガス混合物2とも呼ばれる)は、一般的に、以下の成分体積比(Nl/l・時)を有する:アクロレイン:酸素:蒸気:不活性ガス(蒸気を除く)=1:(0.5〜3):(0〜20):(3〜30)、好ましくは1:(1〜3):(0.5〜19):(7〜18)である。
【0124】
基本的には、いずれの反応段階とも、互いに独立して行われる場合がある。しかし、しばしば、第1段階の産物ガス混合物は、第2の反応段階に充填するために使用される。第1の反応段階に形成されたアクロレインの一部が事後燃焼することを抑制するために、第1の反応段階を終えた産物ガス混合物を第2の反応段階に入る前に冷却するのが適切であることが見出されている。このために、最終冷却器が、通常は2つの反応段階の間に接続される。最も簡単な場合には、これが間接管束伝熱器である場合がある。また、2つの反応段階の間に、2次ガス(分子酸素および/または不活性ガス)が計量供給される場合がある。しばしば、第2の反応段階への充填に使用される前に、第1の反応段階の産物ガス混合物に空気が計量供給される。適用の観点から、反応ガス混合物は、第1の反応段階の固定触媒床の温度に事前に加熱されて固定床触媒充填物1に供給されるのが適切である。
【0125】
上記の最終冷却器では、第1の反応段階の産物ガス混合物が、一般的に、210〜290℃、しばしば230〜280℃、または250〜270℃の温度に冷却される。冷却は、第2の反応段階の固定触媒床の温度よりも低い温度への冷却が可能である。第1の反応段階の産物ガス混合物および第2の反応段階の産物ガス混合物の両方が、それでもやはり最高5体積%、しばしば最高3体積%の過剰な分子酸素を含む場合に、好適である。
【0126】
しかし、記載された最終冷却は決して必須なわけではなく、具体的には、第1の反応段階から第2の反応段階への産物ガス混合物の経路を短く維持する場合に、一般的に不要にすることができる。同様に、2つの反応段階の間に2次ガスを追加することも、必須ではない。通常は、例えば、ドイツ登録特許第DE−C 28 30 765号、欧州特許出願第EP−A 911 313号、および欧州特許出願第EP−A 383 224号に記載の通り、具体的には、2つの反応段階の2つの1ゾーン式多重触媒管固定床反応器を組み合わせて、2ゾーン式多重触媒管固定床反応器(単一反応器としても知られる)であるものを得る場合に、不要にされる。この場合、第1の反応段階は、2ゾーン式多重触媒管固定床反応器の第1の温度ゾーンで実現され、第2の反応段階は、2ゾーン式多重触媒管固定床反応器の第2の温度ゾーンで実現され、第1の反応段階の反応ガス混合物は、追加された分子酸素要件全体を含む。2ゾーンの熱媒は、一般的に、適切な分離金属シートによって互いに実質的に分離される。組み合わせた場合、反応管の長さは、対応する組み合わせていない管束反応器における長さに対応する場合が多い。
【0127】
一般的に、第1の反応段階は、反応ガス混合物が1回通過した際のプロピレン変換率CPが90mol%以上であり、アクロレインの形成とアクリル酸副産物の形成を合わせた選択性(SAC)が(変換されたプロピレンに基づいて)80mol%以上となるように行われる。好ましくは、CPは、93mol%以上であり、SACは85mol%以上、または90mol%以上、または95mol%以上であるのが有利である。
【0128】
これに対応して、第2の反応段階は、一般的に、反応ガス混合物が1回通過した際のアクロレイン変換率CAが90mol%以上、しばしば93mol%以上、多くの場合は95mol%以上、または97mol%以上、または99mol%以上となるように行われる。
【0129】
(変換されたアクロレインに基づく)アクリル酸形成の選択性は、通常90mol%以上、しばしば93mol%以上、および大抵は96mol%以上となる。
【0130】
この段階の産物ガス混合物のプロピレン変換率が10000質量ppm、好ましくは6000質量ppm、より好ましくは4000または2000質量ppmの値を超えないように、第1の反応段階を行うのが好適である。
【0131】
また、この段階の産物ガス混合物のアクロレイン変換率が1500質量ppm、好ましくは600質量ppm、より好ましくは350質量ppmの値を超えないように、第2の反応段階を行うのが好適である。
【0132】
一般的に、本発明による方法における第1の反応段階の反応ガス混合物(本書では出発反応ガス混合物1としても知られる)は、3〜25体積%、多くの場合は5〜20体積%、大抵は6〜13体積%のプロピレンを含む。
【0133】
反応ガス混合物2は一般的に、第2の反応段階に供給するための対応するアクロレイン含有量を含む。
【0134】
本発明によれば、反応ガス混合物1の分子酸素の含有量は、通常、出発反応ガス混合物1に含まれるO2と出発反応ガス混合物1に含まれるC36のモル比V1が1以上であるような含有量である(既述の通り)。通常、本発明による方法において、V1は1以上3以下であり、大抵は1.3以上2.5以下であり、しばしば1.5以上2.3以下である。出発反応ガス混合物2における分子酸素(第2の反応段階の固定触媒床に充填する反応ガス混合物)の量は、既述の通り、通常は、出発反応ガス混合物2に含まれるO2と出発反応ガス混合物1に含まれるアクロレインのモル比が0.5以上3以下、または2以下、しばしば0.75以上1.5以下であるような量である。
【0135】
また、出発反応ガス混合物1は、0.01体積%以上、または0.1体積%以上、または0.5体積%以上、または2体積%以上のCO2を含むことも可能である。大抵の場合、上述のCO2含有量は25体積%以下である場合がある。
【0136】
具体的に、本発明による方法において分子酸素に使用される供給源が空気である場合、出発反応ガス混合物1は、他の不活性希釈ガスとして分子窒素を含む。基本的に、本発明による方法において出発反応ガス混合物1は、1体積%以上、または5体積%以上、または10体積%以上、または20体積%以上、または30体積%以上、または40体積%以上の分子窒素を含む場合がある。しかし、分子窒素の出発反応ガス混合物1における含有量は、一般的に、80mol%以下、または70mol%以下、または60mol%以下の値である。
【0137】
出発反応ガス混合物1はまた、不活性希釈ガスとしてプロパンを含む場合もある。出発反応ガス混合物1のこのプロパン含有量は、最高70体積%(例えば5〜70体積%)、または最高60体積%、または最高50体積%、または最高40体積%、または最高30体積%、または最高20体積%、または最高10体積%である場合がある。しばしば、このプロパン含有量は、0.5体積%以上または1体積%以上となる。しかし、0.01体積%以上、または0.02体積%以上、または0.03体積%以上の値である場合もある。一般的に、出発反応ガス混合物1は、10体積%以下、多くの場合は5体積%以下のプロパンを含む。
【0138】
本発明による方法において、このプロパンは、例えば、出発反応ガス混合物1に個別に供給する不活性希釈ガスとして、慎重に追加される場合がある。
【0139】
しかし、プロパンは、プロピレンの供給源として機能するプロパンの部分脱水素化またはオキシ脱水素化(一般的に、これらは不均一触媒の下で行われる)によって、出発反応ガス混合物1の一部である場合もあることが理解されるであろう。すなわち、出発反応ガス混合物1に含まれるプロピレンは、(例えば、分子酸素の存在下および/または排除下において、均一および/または不均一に触媒)部分脱水素化から未変換のプロパンが少なくとも部分的に付随する状態で、出発反応ガス混合物1の供給される場合がある。
【0140】
本発明による方法は、具体的に、出発反応ガス混合物1が0体積%超〜35体積%、しばしば1〜25体積%、または5〜15体積%もしくは10体積%のH2Oを含む実施形態も含む。
【0141】
通常の出発反応ガス混合物1は、例えば、以下を含むものである:
5体積%または6〜11体積%のプロペン、
2体積%または6〜12体積%の水、
0体積%超、しばしば0.5体積%以上または1体積%以上〜10体積%のプロパン、
プロペン、プロパン、水、酸素、および窒素以外の0体積%以上〜5体積%の成分、
1が1〜3である十分な分子酸素、ならびに、
残りとして全量の最高100体積%の分子窒素。
【0142】
本発明の出発反応ガス混合物1はまた、以下も含む場合がある:
6〜9体積%のプロピレン、
8〜18体積%の分子酸素、
6〜30体積%または35体積%のプロパン、および、
32〜72体積%の分子窒素。
【0143】
本発明の出発反応ガス混合物2は、例えば、以下を含む場合がある:
4.5〜8体積%のアクロレイン、
2.25〜9体積%の分子酸素、
6〜30体積%または35体積%のプロパン、
32〜72体積%の分子窒素、および、
5〜30体積%の蒸気。
【0144】
本発明の出発反応ガス混合物1はまた、最高20体積%のH2を含む場合もある。
【0145】
すなわち、本発明による方法の出発反応ガス混合物1は、以下を含む場合もある:
4〜25体積%のプロピレン、
6〜70体積%のプロパン、
5〜60体積%のH2O、
8〜65体積%のO2、および、
0.3〜20体積%のH2
【0146】
しかし、本発明による方法は、出発反応ガス混合物1が0.1〜30体積%のCO2を含む場合にも好適である。
【0147】
本発明よれば可能である出発反応ガス混合物2は、以下を含む場合もある:
3〜25体積%のアクロレイン、
5〜65体積%の分子酸素、
6〜70体積%のプロパン、
0.3〜20体積%の分子水素、および、
8〜65体積%の蒸気。
【0148】
上記のすべての場合において、本発明による方法は、2つの段階が互いに独立して行われる場合、および上に詳述する通り直列接続で行われる場合に、いずれの場合でも両段階に使用できることが、本発明に不可欠である。しかし、ドイツ特許出願第DE−A 101 21 592号に記載の通り、両手順が1つの充填物にわたり1つの反応器において行われる場合にも上首尾である。
【0149】
固定触媒床の部分変更(本書の本発明による方法ではごく一般的なように)は、いずれの場合にも(反応ガス混合物の)流れ方向において、特定の固定触媒床の床長さの最高80%、またはわずか最高70%、またはわずか最高60%、またはわずか最高50%、またはわずか最高40%、またはわずか最高30%、あるいは好ましくは最高25%、より好ましくは30〜50%、最も好ましくは35〜45%に及ぶ場合がある(100%の程度の不活性材料からなる上部充填物(流れの観点から第1の充填物)は、固定触媒床に属すると見なされない。しかし、便宜上、この上部充填物も交換した。これに対応するように、100%の程度の不活性材料からなる最終充填物(流れの観点から端部充填物)は、固定触媒床に属すると見なさなかった。しかし、100%の程度の不活性材料からなる中間充填物は、固定触媒床に属すると見なした)。適切には、触媒の部分変更に関する上述の割合は、しばしば10%または20%未満である。
【0150】
最後に、第1の段階(「プロピレン→アクロレイン」)の充填物ガス混合物の一部はサイクルガスである場合があることを、再び述べておく必要がある。これは、第2の段階の産物ガス混合物から産物を除去した(アクリル酸を除去した)後に残留するガスであり、2つの段階が直列接続される場合、一般的に、不活性希釈ガスとして第1の反応段階および/または第2の反応段階に充填するために部分的に再利用される。
【0151】
通常のサイクルガス組成物は、以下の通りである:
0〜0.1体積%のその他の物質、例えばジフェニル、ジフェニルエーテル、および/またはジフェニルフタレート、
0〜0.1体積%のアクリル酸、
0〜0.1体積%のアクロレイン、
3〜5体積%の酸素、
1〜5体積%の蒸気、
0〜3体積%の一酸化炭素、
0〜8体積%の二酸化炭素、
0〜2体積%のプロパン、
0.1〜0.5体積%のプロピレン、ならびに、
85〜95体積%の窒素。
【0152】
アクリル酸の除去は、例えば、欧州特許出願第EP−A 982 287号、欧州特許出願第EP−A 982 289号、ドイツ特許出願第DE−A 199 24 532号、ドイツ特許出願第DE−A 101 15 277号、ドイツ特許出願第DE−A 196 06 877号、ドイツ特許出願第DE−A 197 40 252号、ドイツ特許出願第DE−A 196 27 847号、ドイツ特許出願第DE−A 100 53 086号、欧州特許出願第EP−A 982 288号、およびドイツ特許出願第DE−A 196 27 847号に記載の通り、行うことができる。
【0153】
基本的に、固定触媒床の部分変更は、随時、すなわち、例えば1年、2年、3年、またはそれを超える年数の動作時間後に行うことができる。一般的には、経済的な考慮事項に従って実施される。
【0154】
最後に、本発明の固定触媒床の部分変更は、一般的に、反応ガス混合物が触媒充填物を通過する際に、圧力低下に対して有利な影響も及ぼすことを述べておく必要がある。
【0155】
また、熱交換媒体(熱媒、塩溶融物)は、入口温度と出口温度の差が5℃以下であるような量で、適切な多重触媒管固定床反応器に通すのが好ましいことも、再度述べておく必要がある。
【0156】
実施例および比較例
I. 第1の反応段階の概要
使用する熱媒:
60質量%の硝酸カリウムおよび40質量%の亜硝酸ナトリウムの塩溶融物を、反応ガス混合物に対して対向流で通す。触媒管に固定触媒床を新規に充填して、320℃の温度で供給し、322℃の温度で除去した。
【0157】
多重触媒管固定床反応器に配置した触媒管の材料:
フェライト鋼
触媒管の組成:
長さ3200mm
内径26mm
外径31mm
(壁厚2.5mm)
出発反応ガス混合物1の組成物:
5.4体積%のプロピレン、
10.5体積%の分子酸素、
1.2体積%のCOx、
81.3体積%のN2、および、
1.6体積%のH2O。
【0158】
触媒充填物のプロピンレン充填:
110Nl/l・時
触媒管の新規の充填物(反応ガス混合物の流れ方向における):
ゾーンA:50cm
7mm×7mm×4mm(外径×長さ×内径)の形状のステアタイトリングの予備床
ゾーンB:100cm
5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)の形状の30質量%のステアタイトリング(CeramTec製のステアタイトC 220)とゾーンCの70質量%の無担持触媒との均一混合物を有する触媒充填物
ゾーンC:170cm
ドイツ特許出願第DE−A100 46 957号の実施例1に記載の環状の(5mm×3mm×2mm=外径×長さ×内径)無担持触媒を有する触媒充填物
II. 中間冷却および2次ガスの追加
アクロレインの喪失が実質的にない状態で管束熱交換器において60質量%の硝酸カリウムおよび40質量%の亜硝酸ナトリウムの塩溶融物と間接的に熱交換することによって、第1の反応段階の産物ガス混合物を250℃に冷却した。その後、得られる混合物におけるO2:アクロレインのモル比が約1.28になるような量で、140℃の温度を有する圧縮空気を追加した。この混合物を220℃の温度で第2の反応段階に供給した。
【0159】
III. 第2の反応段階の概要
触媒管は、第1の反応段階の触媒管に対応していた。塩溶融物(第1の反応段階と同じ組成物)および反応ガス混合物を対向流で通した。触媒管に固定触媒床を新規に充填して、塩溶融物を260℃の温度で供給し、262℃の温度で除去した。
【0160】
触媒管の新規の充填物(反応ガス混合物の流れ方向における)は、以下の通りであった。
【0161】
ゾーンA:
7mm×7mm×4mm(外径×長さ×内径)の形状のステアタイトリング(CeramTec製のステアタイトC 220)の20cmの予備床
ゾーンB:
7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)の形状の30質量%(あるいは35質量%)のステアタイトリング(CeramTec製のステアタイトC220)と、ゾーンCの70質量%(あるいは65質量%)のコーティングされた触媒との均一混合物を有する、100cm(あるいは120cm)の触媒充填物
ゾーンC:
ドイツ特許出願第DE−A 100 46 928号の調製例5に記載の環状の(約7mm×3mm×4mm=外径×長さ×内径)コーティングされた触媒を有する200cm(あるいは180cm)の触媒充填物
IV. 結果(アクリル酸形成の選択性はほぼ一定のままであった)
A) 実施例
第2の反応段階の産物ガス混合物の分析により、以下の結果が得られた。
【0162】
固定触媒床を第2の反応段階に新規に設置した状態で第1の反応段階に形成されたアクロレインの変換率は(条件の完了時)、第2の反応段階への塩溶融物の入口温度Tein 260℃にて、88.9mol%のアクリル酸形成の選択性において99.3mol%であった(以下のデータと全く同じように、これらのデータは1回の通過に基づいている)。
【0163】
動作時間が長くなるにつれて、第2の反応段階のアクロレイン変換率は低下した。第2の反応段階への塩溶融物の入口温度を徐々に上昇させることにより、この活性の喪失を均衡させることができた(失活率は8℃/年にて安定していた)。
【0164】
238℃のTeinが達成された時のΔTHBvは33℃であった。次いで、プロセスを中断し、第2の反応段階のゾーンA全体およびゾーンB全体を吸い出し、新規のゾーンAおよび新規のゾーンBと交換したが、但し、新規のゾーンBは、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 928号の調製例5に記載の通り、7mm×3mm×4mmの形状を有する、わずか50質量%のステアタイトリングおよびわずか50質量%の新規のコーティングされた触媒を有していた。
【0165】
275℃のTeinでは、その後、12℃/年の失活率および32℃のΔTHBでのアクロレイン変換率99.3mol%において、それ以外不変のプロセスを続行することが可能であった。
【0166】
B)比較例
実施例の手順を繰り返したが、但し、ゾーンBを吸い出し、新規のゾーンBと交換した点が異なる。この新規のゾーンBは、元のゾーンBと同様に、ドイツ特許出願第DE−A 100 46 928号の実施例5に記載の通り、7mm×3mm×4mmの形状を有する、わずか30質量%のステアタイトリングおよび70質量%の新規のコーティングされた触媒を有していた。
【0167】
その後、わずか270℃のTeinにて99.3mol%のアクロレイン変換率でプロセスを続行することが可能であったが、ΔTHBnは48℃であり、失活率は20℃/年であった。
【0168】
2006年1月5日出願の米国仮特許出願第60/756207号は、参考として本特許出願で援用される。
【0169】
上述の教示内容に関しては、本発明からの変更および逸脱が数多く可能である。
【0170】
したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の適用範囲内において、本明細書に具体的に記載した方法とは異なる方法で実施できることを想定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室に新規に設置した固定触媒床上で、分子酸素により少なくとも1つの有機出発化合物の不均一触媒気相部分酸化を行う方法であって、部分酸化のために、前記少なくとも1つの有機出発化合物および前記分子酸素を含む反応ガス混合物を前記固定触媒床に通し、前記反応室の外側に通される液体熱媒との間接的な熱交換により反応熱を除去し、動作時間が長くなるにつれて前記固定触媒床の品質低下が進んだら、前記固定触媒床の全体ではなく一部のみを交換用固定触媒床部分で交換して、前記固定触媒床の前記品質を回復させる方法において、前記交換用固定触媒床部分の体積比活性が、交換した固定触媒床部分の新規に設置したばかりの体積比活性よりも低いことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記気相部分酸化が、プロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への気相部分酸化、あるいはイソブテンからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への気相部分酸化、あるいはアクロレインからアクリル酸への気相部分酸化、メタクロレインからメタクリル酸への気相部分酸化、あるいはプロパンからアクリル酸への気相部分酸化、あるいはイソブタンからメタクリル酸への気相部分酸化であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機出発化合物が、プロピレン、アクロレイン、1−ブテン、2−ブテン、エタン、ベンゼン、m−キシレン、p−キシレン、イソブタン、イソブテン、tert−ブタノール、イソブチルアルデヒド、tert−ブタノールメチルエーテル、o−キシレン、ナフタレン、ブタジエン、エチレン、プロパン、またはメタクロレインからなる群の少なくとも1つの有機出発化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記気相部分酸化が、2段階気相部分酸化の第2の段階であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記気相部分酸化が、プロピレンからアクリル酸への2段階気相部分酸化におけるアクロレインからアクリル酸への部分酸化であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記固定触媒床に前記反応ガス混合物を1回通過した際の前記出発化合物の変換、および前記反応混合物の組成、および前記触媒床への反応ガス混合物の負荷量が同じである条件で、前記交換用固定触媒床部分との交換後の前記固定触媒床のホットスポット膨張ΔTHBnと、前記交換用固定触媒床部分との交換前のホットスポット膨張ΔTHBvとの差(dΔT=ΔTHBn−ΔTHBvとして表わす)が、30℃以下であるように、前記交換用固定触媒床部分の前記体積比活性を決めることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
dΔTが−15〜+10℃であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
dΔTが−10〜0℃であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記反応室が反応管の内部であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応管が管束反応器に存在することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記交換用固定触媒床部分と交換した前記固定触媒床の前記部分が、前記反応ガス混合物の流れ方向において、前記固定触媒床の床長さの80%までに及ぶことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−522320(P2009−522320A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548971(P2008−548971)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070069
【国際公開番号】WO2007/077145
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】