説明

嵌合保証機能付コネクタ及びこれを備えた電子ユニット並びにその接続装置

【課題】相手方コネクタとの嵌合操作や嵌合状態の直接的な視認ができなくても当該嵌合を簡単な操作で確実に維持することが可能なコネクタ16を提供する。
【解決手段】コネクタ16は、コネクタ端子47を保持するコネクタハウジング50を備える。コネクタハウジング50は、コネクタ端子47を保持して相手方コネクタを受け入れる相手方コネクタ受入部52と、嵌合保証部材挿入部54とを有し、かつ、嵌合ロック部材60を保持する。嵌合ロック部材60は、相手方コネクタの受入れを許容する許容位置と、コネクタ端子と相手方端子との嵌合を維持するように相手方コネクタを拘束するロック位置とを有し、嵌合保証部材挿入部54への嵌合保証部材の挿入に伴って許容位置からロック位置まで移動するように当該嵌合保証部材と係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子ユニット等に用いられるコネクタ、及びこれを備えた電子ユニット並びにその接続装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電気回路同士の接続にはコネクタが多用される。例えば、特許文献1には、コネクタを用いて電子ユニットを車載側回路に接続するための接続装置が開示されている。この装置は、前記電子ユニットに設けられるユニットコネクタと、当該電子ユニットが挿入可能なユニットケースと、このユニットケースに設けられる設置側コネクタ(いわゆる待ち受けコネクタ)とを備える。この設置側コネクタは、前記ユニットケース内への前記電子ユニットの挿入に伴って前記ユニットコネクタと当該挿入方向に沿って結合され、これにより、当該電子ユニットと前記ユニットケースへ配索されたワイヤハーネスとの電気的接続を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−140749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のようなコネクタ同士の結合及び電気的導通は、各コネクタに含まれる端子同士の嵌合によって達成されるが、当該接続状態を確実に維持するためには、当該端子同士の嵌合が例えば車の振動により徐々に解除されないようにロックをする必要がある。このロックは、例えば各コネクタのコネクタハウジングに形成された係合部同士を係合することにより行われる。
【0005】
しかし、例えば前記のようなユニットケースに設置された設置側コネクタ、すなわちユニットケースの奥側に配置されてその嵌合作業やロック状態の確認を直接行うことが困難であるコネクタについては、その嵌合を長期にわたって保証することが難しい。このような嵌合保証を可能にすることが、接続信頼性向上のために重要な課題となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、相手方コネクタとの嵌合操作や嵌合状態の直接的な視認ができなくても当該嵌合を簡単な操作で確実に維持することが可能なコネクタ及びこれを備えた電子ユニット並びにその接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、相手方コネクタに含まれる相手方端子と嵌合することにより当該相手方端子と電気的に導通するコネクタ端子を含むコネクタであって、前記コネクタ端子を保持するとともに前記相手方コネクタをその相手方端子が前記コネクタ端子と嵌合可能となるように受け入れる相手方コネクタ受入部と、この相手方コネクタ受入部と別の位置に設けられた嵌合保証部材挿入部とを有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの嵌合保証部材挿入部に挿入可能な嵌合保証部材と、前記相手方コネクタ受入部への前記相手方コネクタの受入れを許容する許容位置と、前記コネクタ端子と前記相手方端子との嵌合を維持するように前記相手方コネクタを拘束するロック位置との間で移動可能となるように前記コネクタハウジングに設けられ、前記嵌合保証部材挿入部に前記嵌合保証部材が挿入されるのに伴って前記許容位置から前記ロック位置まで移動するように当該嵌合保証部材と係合する嵌合ロック部材とを備える嵌合保証機能付コネクタである。
【0008】
この嵌合保証機能付コネクタでは、そのコネクタハウジングに保持されたコネクタ端子が、当該コネクタハウジングの相手方コネクタ受入部に受け入れられる相手方コネクタの相手方端子と嵌合されるとともに、その嵌合状態が嵌合保証部材を用いて保証される。具体的には、前記嵌合ロック部材が許容位置にある状態で前記相手方コネクタ受入部におけるコネクタ端子と前記相手方端子とが嵌合可能であり、かつ、その嵌合状態で前記相手方コネクタ受入部と別の位置にある嵌合保証部材挿入部に嵌合保証部材が挿入されるのに伴い、前記嵌合ロック部材が前記許容位置からロック位置へ移動して前記コネクタ端子と前記相手方端子との嵌合を維持するように前記相手方コネクタを拘束する。従って、前記コネクタ端子と前記相手方端子との嵌合作業やその嵌合状態の視認を直接行うことが困難であるとしても、その嵌合箇所から離れた前記嵌合保証部材挿入部への前記嵌合保証部材の挿入によって端子同士の確実な嵌合を保証することができる。
【0009】
前記嵌合ロック部材には、リンク機構やカム機構その他の種々の機構を適用することが可能である。例としては、前記相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合方向と、前記嵌合保証部材挿入部への前記嵌合保証部材の挿入方向とが互いに平行であるものにおいて、前記嵌合ロック部材は、前記両方向と平行な方向の軸回りに回転可能となるように前記コネクタハウジングに設けられ、その回転により前記許容位置と前記ロック位置とに切換えられる回転体を含み、この回転体は、前記嵌合保証部材の挿入に伴って当該回転体を前記許容位置から前記嵌合ロック位置へ回転させるように当該嵌合保証部材と係合するカム部と、前記許容位置から前記嵌合ロック位置への回転に伴って前記相手方コネクタの相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合を維持する向きに当該相手方コネクタを拘束するように当該相手方コネクタと係合するロック部とを含むものが、好適である。
【0010】
この嵌合保証機能付コネクタでは、前記相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合方向、前記嵌合保証部材挿入部への前記嵌合保証部材の挿入方向、さらには前記回転体の回転軸の方向が全て平行であるため、相手方コネクタ受入部と嵌合保証部材挿入部との間に嵌合ロック部材である回転体をコンパクトに配置することが可能である。
【0011】
あるいは、前記コネクタハウジングにおける相手方コネクタ受入部及び嵌合保証部材挿入部が特定方向に並び、前記嵌合ロック部材は、前記相手方コネクタ受入部及び前記嵌合保証部材挿入部に対してこれらの並び方向と直交する方向に隣接しかつ当該並び方向と平行な方向にスライド可能となるように前記コネクタハウジングに設けられ、そのスライドにより前記許容位置と前記ロック位置とに切換えられるスライド体を含み、このスライド体は、前記嵌合保証部材の挿入に伴って当該スライド体を前記許容位置から前記嵌合ロック位置へスライドさせるように当該嵌合保証部材と係合するカム部と、前記許容位置から前記嵌合ロック位置へのスライド体に伴って前記相手方コネクタの相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合を維持する向きに当該相手方コネクタを拘束するように当該相手方コネクタと係合するロック部とを含むものも、好適である。
【0012】
この嵌合保証機能付コネクタにおいても、前記相手方コネクタ受入部及び前記嵌合保証部材挿入部に対してその並び方向と平行な方向にスライド体が配置され、かつ、その並び方向と平行な方向への当該スライド体のスライドを利用してその位置切換が行われるため、相手方コネクタ受入部と嵌合保証部材挿入部との間に嵌合ロック部材であるスライド体を設けるスペースを確保することなく当該スライド体をコネクタハウジング内にコンパクトに配置することが可能である。
【0013】
前記嵌合保証部材は前記嵌合保証に専用の部材であってもよいが、前記相手方コネクタとは別のコネクタを嵌合保証コネクタとして前記嵌合保証部材に利用することが可能である。その場合、前記コネクタ端子に加え、前記嵌合保証部材挿入部への前記嵌合保証コネクタの挿入に伴ってこの嵌合保証コネクタに含まれる端子と嵌合することが可能な位置に嵌合保証側端子を保持するものであればよい。
【0014】
また本発明は、前記の嵌合保証機能付コネクタを有効に利用した電子ユニット及びその接続装置を提供する。具体的に、本発明に係る電子ユニットは、前記電子回路体を格納し、かつ、専用のユニットケースに挿入可能な外形を有するユニットハウジングと、前記ユニットハウジングに設けられ、このユニットハウジング内に格納される電子回路体を外部回路に接続するためのユニットコネクタとを備え、このユニットコネクタが前記嵌合保証機能付コネクタにより構成される。このユニットコネクタに含まれるコネクタ端子は、当該嵌合保証機能付コネクタの嵌合ロック部材が許容位置にある状態で前記ユニットケース内に前記ユニットハウジングが挿入されるのに伴い、前記ユニットケースに保持された待ち受けコネクタに含まれる待ち受け端子に対して前記ユニットハウジングの挿入方向と平行な方向に嵌合される端子であり、前記ユニットコネクタに含まれる嵌合保証側端子は、前記ユニットケースを経由せずに前記嵌合保証コネクタの端子と直接嵌合される端子であり、前記嵌合ロック部材は、前記コネクタハウジングの嵌合保証部材挿入部に前記嵌合保証コネクタが挿入されるのに伴って前記許容位置から前記ロック位置へ移動して前記コネクタ端子と前記待ち受け端子との嵌合を維持する向きに前記相手方コネクタを拘束する。また、本発明に係る電子ユニット接続装置は、前記の電子ユニットと、そのユニットハウジングが挿入可能な形状を有するユニットケースと、前記ユニットケースに設けられ、このユニットケースへの前記電子ユニットの挿入に伴って当該電子ユニットのユニットコネクタに含まれるコネクタ端子に対し前記挿入の方向と平行な方向に嵌合可能な待ち受け端子を含む待ち受けコネクタとを備え、前記ユニットケースは、このユニットケース内に挿入された前記電子ユニットにおける前記ユニットコネクタの嵌合保証部材挿入部を当該ユニットケースの外部に開放して当該ユニットケースの外部から前記嵌合保証部材挿入部への嵌合保証コネクタの嵌合を許容する形状を有し、前記ユニットコネクタに含まれる嵌合ロック部材は、前記ユニットケース内に前記電子ユニットのユニットハウジングが挿入された状態で前記嵌合保証部材挿入部に前記嵌合保証コネクタが挿入されるのに伴い、前記相手方コネクタ受入部に受け入れられた待ち受けコネクタの待ち受け端子と前記コネクタ端子との嵌合を許容する位置から当該嵌合を維持するように前記相手方コネクタを拘束するロック位置へ移動する。
【0015】
以上の電子ユニット及び電子ユニット接続装置では、そのユニットコネクタすなわち前記嵌合保証機能付コネクタの嵌合ロック部材が許容位置にある状態で前記ユニットハウジングが前記ユニットケース内に挿入されることにより、当該ユニットコネクタのコネクタ端子が相手方コネクタの相手方端子に嵌合可能である。その挿入後、さらに、そのユニットコネクタのコネクタハウジングに設けられた嵌合保証部材挿入部に嵌合保証コネクタが挿入されることにより、当該嵌合保証コネクタに含まれる端子と前記コネクタハウジングに保持される嵌合保証側端子とが嵌合されるとともに、前記コネクタハウジングに設けられる嵌合ロック部材が前記許容位置からロック位置へ移動して前記嵌合保証機能付コネクタのコネクタ端子と前記ユニットケース側の待ち受けコネクタの待ち受け端子との嵌合を維持するように前記待ち受けコネクタを拘束する。従って、前記待ち受けコネクタとは別の位置で嵌合保証コネクタとユニットコネクタとを嵌合するだけで、当該待ち受けコネクタの待ち受け端子と前記コネクタ端子との嵌合を保証することができる。
【0016】
前記電子ユニット接続装置において、前記ユニットケースは、複数の電子ユニットがそれぞれ挿入可能な形状を有する一方、前記各電子ユニットに接続するための回路を含む回路体を内蔵し、この回路体に接続された複数の待ち受けコネクタをそれぞれ対応する電子ユニットのユニットコネクタのコネクタ端子に嵌合可能となる位置に保持するものが、好適である。
【0017】
この装置では、複数の待ち受けコネクタの経由により、ユニットケースに内蔵された回路体と各電子ユニットとの接続が可能であり、かつ、その待ち受けコネクタの待ち受け端子とユニットコネクタのコネクタ端子との嵌合を、前記各電子ユニットのユニットコネクタへの嵌合保証コネクタの嵌合を利用して行うことができる。
【0018】
例えば、前記回路体は、外部から供給される電源を各電子ユニットに分配するための配電回路を含み、前記嵌合保証コネクタは、前記電子ユニットの電子回路体と外部回路との間で通信を行わせるための端子を含む通信用コネクタであり、前記ユニットコネクタのコネクタ端子には、前記待ち受けコネクタの待ち受け端子との嵌合により前記電子回路体を前記配電回路体に接続する電源用端子が含まれ、前記ユニットコネクタの嵌合保証側端子には、前記通信用コネクタの端子と嵌合することにより前記電子回路体と外部回路とを接続する通信用端子が含まれるものでは、前記回路体を利用して前記各電子ユニットに効率よく電源を供給することができるとともに、その回路体と各電子ユニットとの待ち受けコネクタを介しての接続を、通信用コネクタを利用して保証することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、コネクタハウジングに保持されるコネクタ端子と相手方コネクタの相手方端子との嵌合作業や嵌合状態の確認を直接行うことが困難である場合にも、当該嵌合部位とは別の位置に設けられた嵌合保証部材挿入部に嵌合保証部材を挿入することにより、前記これらの端子同士の嵌合を確実に維持して保証することができ、これにより接続信頼性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子ユニット接続装置の全体構成を示す断面斜視図である。
【図2】前記電子ユニット接続装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】前記電子ユニット接続装置のユニットケースとこれに内蔵される回路基板およびそのカバーとを示す分解斜視図である。
【図4】前記電子ユニット接続装置のユニットケース等を示す側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】前記回路基板とこれに接続される待ち受けコネクタを示す斜視図である。
【図7】前記待ち受けコネクタの支持構造を上から見た断面斜視図である。
【図8】前記ユニットコネクタの斜視図である。
【図9】図10のIX−IX線断面図である。
【図10】前記電子ユニット接続装置における電子ユニットに設けられたユニットコネクタを示す側面図である。
【図11】(a)は前記ユニットコネクタのコネクタハウジングに保持されるカム軸をカム溝側から見た斜視図、(b)は同カム軸をロック溝側から見た斜視図である。
【図12】前記ユニットケースのユニット格納部に電子ユニットが挿入された状態を示す側面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】前記ユニットケースに挿入された電子ユニットのユニットコネクタへの通信用コネクタの嵌合初期の状態を示す側面図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【図16】前記ユニットコネクタへの前記通信用コネクタの嵌合が完了した状態を示す断面正面図である。
【図17】(a)は前記コネクタハウジング内において前記カム軸が許容位置にある状態を示す断面正面図、(b)は当該カム軸がロック位置にある状態を示す断面正面図である。
【図18】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る嵌合保証機能付コネクタのコネクタ端子、コネクタハウジング及びスライド板を示す正面図、(b)は(a)の18B−18B線断面図、(c)は(b)の18C−18C線断面図である。
【図19】図18に示される嵌合保証機能付コネクタに対する相手方コネクタの斜視図である。
【図20】図20に示される嵌合保証機能付コネクタの嵌合保証部材に用いられる嵌合保証コネクタの斜視図である。
【図21】(a)は図18に示されるコネクタハウジングに前記相手方コネクタ及び前記嵌合保証コネクタが嵌合された状態を示す正面図、(b)は(a)の21B−21B線断面図、(c)は(b)の21C−21C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施の形態を、図1〜図17を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、この実施の形態に係る電子ユニット接続装置を示すものである。この装置は、複数の電子ユニット10と、これらの電子ユニット10が挿入可能なユニットケース12とを備える。
【0023】
前記各電子ユニット10は、図略の電子回路体と、ユニットハウジング14とを備える。前記電子回路体は、外部からの給電を受けて外部回路と通信を行う。この実施の形態では、当該電子回路体はプリント回路基板等から構成され、車両内に設けられた車載電源から電力の供給を受けることにより、当該車両内の電子機器やその他の回路(以下「外部回路」と称する。)との間で信号のやり取りを行う。ユニットハウジング14は、この実施の形態では小幅の略直方体状をなし、その内部に前記電子回路体を格納する(図1及び後述の図13,図15,図16では便宜上、前記電子回路体と前記ユニットハウジング14とに共通のハッチングが付されている。)。
【0024】
さらに、各電子ユニット10は、前記電子回路体と前記車載電源及び前記外部回路とを接続するためのユニットコネクタ16を備える。このユニットコネクタ16は、前記ユニットハウジング14の一側面(この実施の形態では図1の右側面である背面)に設けられる。このユニットコネクタ16は、本発明に係る嵌合保証機能付コネクタにより構成されるもので、その詳細については後述する。
【0025】
前記ユニットケース12は、この実施の形態では自動車等の車両内の適当な箇所に設置され、当該箇所で前記各電子ユニット10を格納するとともに、当該車両内に配索されたワイヤハーネスを通じて前記各電子ユニット10への給電を行う役割を担う。具体的に、このユニットケース12は、ユニット格納部18と、回路基板内蔵部20とを備え、当該回路基板内蔵部20内に給電用の回路基板22を内蔵するとともに、前記各電子ユニット10に対応して装備された複数の給電用の待ち受けコネクタ24を保持する。
【0026】
前記ユニット格納部18は、図2〜図5にも示されるように、特定の方向(図1及び図5では左方向)に開口し、その開口側から前記各電子ユニット10が挿入可能な形状を有する。詳しくは、各電子ユニット10のユニットコネクタ16がユニットケース12側を向く立直姿勢で、かつこれらの電子ユニット10がその幅方向と平行な方向に並ぶ配列で、各電子ユニット10が前記ユニット格納部18内に挿入される。このユニット格納部18は、複数のユニット係止爪26を含む底壁25を有し、これらのユニット係止爪26は、前記各電子ユニット10のユニットハウジング14が前記ユニット格納部18内に完全に挿入された状態でそのユニットハウジング14の底面に突設された被係止突起28をそれぞれ係止する。
【0027】
前記回路基板内蔵部20は、前記ユニット格納部18の底壁25の下方から当該ユニット格納部18の背壁30(前記ユニットハウジング挿入方向の奥側の立直壁)の下部の後方にまで至る内蔵空間を形成し、その空間内に前記回路基板22を格納する。具体的に、この回路基板内蔵部20は、前記底壁25をさらにその下方から覆う底壁31と、前記背壁30の後ろ側で前記ユニット格納部18の開口と反対の向きに開口する筒状壁32とを有し、この筒状壁32の開口から前記回路基板22が当該回路基板内蔵部20内に挿入される。
【0028】
この回路基板22には、前記車載電源から供給される電力を、適当な電圧まで降下させた状態で前記各電子ユニット10に分配する機能をもつ配電回路が組み込まれる。この回路基板22上には、前記配電回路が給電を受けるための基板用コネクタ34が実装され、この基板用コネクタ34には車両側の図略のワイヤハーネスから導出される給電用コネクタ36(図2)が結合される。一方、当該配電回路は、図3および図6に示すような複数の配電線38を介して前記各待ち受けコネクタ24に接続される。
【0029】
前記各待ち受けコネクタ24は、前記ユニット格納部18に挿入される電子ユニット10のユニットコネクタ16に対してその挿入方向と平行な方向に嵌合するように前記背壁30に保持され、その嵌合によって前記配電回路と前記電子ユニット10の電子回路体とを電気的に接続する。具体的に、この待ち受けコネクタ24は、複数の待ち受け端子(ここでは図略の雌端子)と、これらを保持するハウジング24aと、このハウジング24aの軸方向の一方の端部に形成された鍔部24bとを有する。そして、前記ハウジング24aが前記背壁30を貫通し、かつ、その背壁30の背面(回路基板内蔵部20内に臨む面)に形成された凹部37に前記鍔部24bが嵌り込む位置に、セットされる。
【0030】
前記回路基板内蔵部20の筒状壁32には、当該筒状壁32の開口を塞ぐようにカバー40が装着される。このカバー40には、前記基板用コネクタ34を外部に開放するための窓42と、複数の係止穴44とが形成されている。各係止穴44は、前記筒状壁32に前記カバー40が被せられた状態で、当該筒状壁32の外周面から突出する係止突起33と係合する位置に設けられる。
【0031】
さらに、このカバー40には、前記装着状態において前記各待ち受けコネクタ24を後ろ側(電子ユニット10と反対の側)から支持するためのコネクタ支持脚46が設けられる。このコネクタ支持脚46は、カバー40の裏面から待ち受けコネクタ24に向かって延び、かつ、当該カバー40の装着状態において前記待ち受けコネクタ24の鍔部24bを後ろ側から拘束する形状を有する。このコネクタ支持脚46の先端と前記鍔部24bとの間には、製作誤差に起因するカバー40の組付不良を回避するために若干のクリアランスが与えられており、このクリアランスの分だけ各待ち受けコネクタ24が僅かに変位可能となっている。
【0032】
次に、前記各ユニットコネクタ16について図8〜図17を併せて参照しながら説明する。
【0033】
前記各ユニットコネクタ16は、本発明に係る嵌合保証機能付コネクタに相当するもので、複数本の電源用端子(コネクタ端子)47と、複数本の通信用端子(嵌合保証側端子)48と、これらの端子47,48を保持するコネクタハウジング50と、嵌合ロック部材であるカム軸(回転体)60と、通信用コネクタ70とを備える。各通信用コネクタ70は、図略のワイヤハーネスから導出される信号線74の端末に設けられ、これらの信号線74にそれぞれ接続される複数の図略の端子(雌端子)と、これらの端子を保持するハウジングとを含む。
【0034】
前記各電源用端子47は、前記待ち受けコネクタ24の各待ち受け端子と嵌合することにより、電子ユニット10の電子回路体を前記回路基板20の配電用回路に接続するものであり、この実施の形態では雄端子により構成される。
【0035】
前記各通信用端子48は、前記通信用コネクタ70に含まれる図略の端子(雌端子)と嵌合することにより、前記電子回路体と外部回路とを(ユニットケース12を経由せずに)直接接続して両者間の通信を可能にするものであり、前記電源用端子47と同様に雄端子により構成される。すなわち、前記通信用コネクタ70の雌端子は、前記信号線74を介して前記外部回路と接続されており、前記通信用端子48との嵌合によって当該通信用端子48と前記外部回路とを電気的接続を接続する。
【0036】
前記コネクタハウジング50は、絶縁材料により成形され、この実施の形態では前記ユニットハウジング14の背面に沿う縦長の形状を有する。このコネクタハウジング50は、待ち受けコネクタ受入部52と、通信用コネクタ受入部54と、前記カム軸60を保持するカム軸保持部56とにより構成される。
【0037】
前記待ち受けコネクタ受入部52は、本発明に係る相手方コネクタ受入部に相当するもので、前記コネクタハウジング50の下端部により構成され、後方に開口する中空状をなす。具体的には、前記ユニット格納部18内に前記電子ユニット10が挿入される際に前記待ち受けコネクタ24のハウジング24aを受け入れることが可能な形状(すなわち当該ハウジング24aと嵌合可能な形状)を有する。この待ち受けコネクタ受入部52は、前記各電源用端子47を保持し、これらの保持位置は、前記電子ユニット10の挿入の際にその挿入方向に沿って前記各電源用端子の端部である電気接触部が前記待ち受け端子と嵌合することが可能な位置に設定されている。
【0038】
すなわち、この電子ユニット接続装置では、前記ユニット格納部18に前記各電子ユニット10が挿入されるのと同時に、その挿入方向に沿って前記電源用端子47と前記待ち受けコネクタ24の待ち受け端子とが嵌合されるように、当該電源用端子47の位置が設定されている。
【0039】
前記通信用コネクタ受入部54は、本発明に係る嵌合保証部材挿入部を兼ねるもので、前記コネクタハウジング50のうち前記待ち受けコネクタ受入部52よりも上側の部分により構成され、当該受入部52と同様に後方に開口して前記通信用コネクタ70を受け入れることが可能な中空状をなす。この通信用コネクタ受入部54は、前記各通信用端子48を保持し、これらの保持位置は、当該通信用コネクタ受入部54に受け入れられた通信用コネクタ70の図略の端子と嵌合することが可能な位置に設定されている。
【0040】
この嵌合を可能にするため、前記ユニットケース12の背壁30にはこれを貫通する複数の窓35が設けられている(図1等)。これらの窓35は、前記各通信用コネクタ受入部54を当該背壁30の後方に開放し、当該背壁30の後方から前記通信用コネクタ受入部54内への前記通信用コネクタ70の挿入を許容する。
【0041】
前記カム軸保持部56は、前記待ち受けコネクタ受入部52と、前記通信用コネクタ受入部54との間に設けられ、前記カム軸60を回転可能に保持する。このカム軸60は、前記通信用コネクタ70と協働して、前記電源用端子47と前記待ち受け端子との嵌合を保証する嵌合保証機能を発揮する。
【0042】
この嵌合保証機能とは、前記電源用端子47と前記待ち受け端子との嵌合後、使用時の車の振動等に起因して両端子間の嵌合が徐々に外れるのを防ぐ機能を意味する。上述のように、前記待ち受けコネクタ24は前記ユニットケース12の背壁30に対してその軸方向に微小変位することが可能であり、同様に前記電子ユニット10も前記ユニット格納部18内でその挿入方向に微小変位することが可能であることから、これらの微小変位の重ね合わせにより、前記待ち受けコネクタ24と前記電子ユニット10のユニットコネクタ16とが互いに離れる向きに相対変位して前記端子間の嵌合が十分でなくなるおそれがある。このような嵌合不良を防ぐことが、接続信頼性を高める上で重要となる。
【0043】
このような嵌合保証は、従来のコネクタでは、コネクタハウジング同士の係合による嵌合ロックにて行われているが、この実施の形態に係る待ち受けコネクタ24のように、ユニットケース12に内蔵されるなどしてその嵌合作業や嵌合状態の視認を直接行うことが困難な状況では、当該嵌合保証の確実性が低下するおそれがある。
【0044】
この実施の形態に係る電子ユニット接続装置は、前記の直接的な嵌合作業や嵌合状態の視認が困難であっても、ユニットケース12の外部に開放された前記通信用コネクタ受入部54への通信用コネクタ70の挿入を利用して前記嵌合保証を実現することを可能にするものである。そてし、前記カム軸60はその通信用コネクタ70の挿入に連動して前記待ち受けコネクタ24をロックする(前記嵌合を維持する向きに当該待ち受けコネクタ24を拘束する)嵌合ロック部材としての役割を担う。
【0045】
具体的に、この実施の形態に係るカム軸60は、次のような特徴を有する。
【0046】
a)前後方向(すなわち前記電源用端子47と前記待ち受け端子との嵌合方向と平行な方向であって、前記通信用コネクタ受入部54内への前記通信用コネクタの挿入方向と平行な方向)の軸回りに回転可能となるように前記カム軸保持部56に保持される。
【0047】
b)前記回転により、前記電源用端子47と前記待ち受け端子との嵌合を許容する許容位置と、両端子の嵌合を維持する向きに待ち受けコネクタ24を拘束するロック位置とに切換えられる。
【0048】
c)前記許容位置から前記ロック位置への回転は、前記通信用コネクタ受入部54内への前記通信用コネクタ70の挿入に連動する。
【0049】
これらの特徴は以下の具体的構造により実現される。
【0050】
a)カム軸60の保持について
前記カム軸60は、円筒状の外周面を有する略円柱状をなし、その中心軸上に、後方(図9及び図17では右方)に開口する芯出し穴62が設けられている。一方、前記コネクタハウジング50のカム軸保持部56は、当該ハウジング50の後端面側から前方に突出する芯出し凸部57と、当該ハウジング50の前端面側に設けられた複数の係止爪55とを有する。前記芯出し凸部57は、前記芯出し穴62内に挿入されることにより、その中心軸回りに回転可能となるように前記カム軸60を保持する。前記各係止爪55は、前記カム軸60の外周縁部に対して前方から当接することにより、その前方へのカム軸60の離脱を阻止する。
【0051】
b)カム軸60の許容位置及びロック位置について
前記待ち受けコネクタ24のハウジング24aの前端部(図5,図13,図15〜図17では左側端部)の上面から上向きに被ロック突起24cが突出する一方、前記カム軸60の下面側に、図11(b)に示すようなロック溝64が凹設される。このロック溝64は、当該ロック溝64内に前記被ロック突起24cがほぼ隙間なく進入することが可能な幅を有し、カム軸60の後端(図9及び図17(a)(b)では右端、図11(b)では左端)から当該カム軸60の軸方向と平行に延びる嵌合許容部64aと、この嵌合許容部64aの終端から周方向(前記芯出し穴62側から見て反時計回り方向)に延びるロック部64bとを連続して有する。
【0052】
前記カム軸60の回転位置が、前記ロック溝64の嵌合許容部64aが真下を向く位置であるとき、前記待ち受けコネクタ24は、その被ロック突起24cの前記嵌合許容部64a内への進入を伴いながら前記待ち受けコネクタ受入部52内に受け入れられることが可能である(図17(b))。すなわち、この回転位置が、前記待ち受けコネクタ24の待ち受け端子と前記電源用端子47との嵌合を許容する許容位置に相当する。また、この嵌合が完了した時点で前記被ロック突起24cが前記嵌合許容部64aの終端またはその近傍にまで至るように、当該嵌合許容部64aの長さが設定されている。
【0053】
前記嵌合完了後、前記カム軸60がその芯出し穴62側からみて反時計回り方向に回転すると、前記被ロック突起24cが前記ロック部64b内へ周方向に入り込んで軸方向に実質的に動けなくなる(図17(c))。従って、この回転後の位置が、前記待ち受けコネクタ受入部52から離脱する方向への待ち受けコネクタ24の動きを拘束する(つまり電源用端子47と待ち受け端子との嵌合を維持する向きに待ち受けコネクタ24を拘束する)ロック位置に相当する。
【0054】
なお、前記ロック溝64における前記嵌合許容部64aと前記ロック部64bとの境界部分は、当該ロック部64bに向かうに従って前記嵌合許容部64aの幅が増大する形状を有している。この形状は、前記被ロック突起24cが前記嵌合許容部64aの終端に完全に至っていない状態でも、その状態からカム軸60が回転することにより当該被ロック突起24cを前記ロック部64bに導いて両端子の嵌合を完全化することを実現する。
【0055】
c)カム軸60と通信用コネクタ70の挿入との連動について
前記通信用コネクタ70のハウジングの前端部(図15〜図17では左側端部)の下面から下向きに回転操作突起72が突出する一方、前記カム軸60の上面側に、図11(a)に示すようなカム溝66が凹設される。このカム溝66は、当該カム溝66内に前記回転操作突起72がほぼ隙間なく進入することが可能な幅を有し、カム軸60の後端から前方に向かうに従って当該後端から見て(すなわち前記芯出し穴62側から見て)反時計回り方向)に進行する螺旋状をなす。
【0056】
このカム溝66の後端66aは、前記ロック溝64の嵌合許容部64aからカム軸60の周方向に180°離れた位置にある。従って、当該カム軸60が前記許容位置にあるときに前記カム溝66の後端66aは最上位置にあり、この後端66aからカム溝66内に前記回転操作突起72が進入可能である。そして、この進入(つまり通信用コネクタ受入部54内への通信用コネクタ70の挿入)に伴って前記回転操作突起72が前記カム溝66内を摺動することにより、前記カム軸60が前記反時計回り方向に回転操作される。
【0057】
なお、前記カム軸保持部56には、前記ロック溝64および前記カム溝66をそれぞれ下方および上方に開放するための溝56a,56bがそれぞれ設けられている。これらの溝56a,56bは、前後方向に延び、同方向に沿う前記被ロック突起24c及び前記回転操作突起72の進入、及びこれらの突起24c,72と前記各溝64,66との係合を可能にする。
【0058】
前記カム軸60及び前記カム軸保持部56には、電子ユニット10がユニットケース12に挿入される前の初期状態において前記カム軸60を前記許容位置に仮係止するための構造が与えられている。具体的には、前記カム軸60の後端面から後方に左右一対の被仮係止突起68が突出する一方、前記カム軸保持部56の後端側壁に、当該カム軸60が許容位置にある状態で前記被仮係止突起68が嵌り込む仮係止穴58が設けられている。
【0059】
次に、この電子ユニット接続装置の作用および使用要領を説明する。
【0060】
1)初期状態
図4及び図5は、ユニットケース12のユニット格納部18内に電子ユニット10が挿入される前の状態を示す。この状態では、背壁30に保持された待ち受けコネクタ24のハウジング24aが当該背壁30から前記ユニット格納部18内の空間に突出している。
【0061】
その一方、前記各電子ユニット10のユニットコネクタ16においては、コネクタハウジング50のカム軸保持部56に設けられた仮係止穴58にカム軸60の被仮係止突起68が嵌り込むことにより、当該カム軸60が許容位置に仮係止されている。すなわち、当該カム軸60は、そのカム溝66の後端66a及びロック溝64の嵌合許容部64aの後端がそれぞれ上下に位置する姿勢に保たれている。
【0062】
2)電子ユニット10の挿入
前記初期状態から、図12及び図13に示されるように前記ユニット格納部18内に各電子ユニット10が挿入され、当該電子ユニット10の被係止突起28がユニットケース12のユニット係止爪26に係止される。このとき、当該電子ユニット10におけるユニットコネクタ16のカム軸60は許容位置に仮係止されているので、当該カム軸60におけるロック溝64の嵌合許容部64aに待ち受けコネクタ24の被ロック突起24cが進入可能である。この進入を伴って、前記ユニットコネクタ16におけるコネクタハウジング50の待ち受けコネクタ受入部54内に前記待ち受けコネクタ24が進入することができ、その待ち受け端子と前記ユニットコネクタ16の電源用端子47との嵌合が許容される。この嵌合により、前記電子ユニット10の電子回路体が回路基板22の配電回路及びコネクタ34,36を介して車載電源に接続可能となる。
【0063】
この嵌合状態は、その嵌合操作後も両端子同士の嵌合力によって、ある程度維持される。しかし、前記電子ユニット10及び前記待ち受けコネクタ24はいずれもユニットケース12に対して当該嵌合方向と平行な方向に微小変位可能であることから、前記嵌合力のみでは必ずしも良好な嵌合状態を維持することができず、車の振動等による前記各微小変位に起因して前記嵌合状態が徐々に解除されていくおそれがある。
【0064】
しかし、この嵌合不良は次の通信用コネクタ70の嵌合(挿入)操作により防がれる。
【0065】
3)通信用コネクタ70の嵌合(挿入)
前記電子ユニット10の挿入の際、そのユニットコネクタ16におけるコネクタハウジング50の通信用コネクタ受入部54は、ユニットケース12の背壁30に設けられた窓35を通じて後方に開放される。この開放された通信用コネクタ受入部54に、図14〜図16に示されるように通信用コネクタ70が挿入され、この挿入により前記電源側端子47と待ち受けコネクタ24における待ち受け端子との嵌合が保証される。
【0066】
具体的には、前記挿入に伴い、当該通信用コネクタ70の端子が前記ユニットコネクタ16の通信用端子(すなわち嵌合保証用端子)54に嵌合されると同時に、当該通信用コネクタ70に設けられた回転操作突起72が許容状態にあるカム溝66に進入する。このカム溝66は、その後端(前記回転操作突起72の入口端)から前方に向かうに従って反時計回り方向に進行する螺旋状をなすので、このカム溝66内への前記回転操作突起72の進入は、前記カム軸60の被仮係止突起68を仮係止穴58から離脱させながら当該カム軸60を前記反時計回り方向とは逆の時計回り方向に回転させる。この回転は、前記ロック溝64における嵌合許容部64aの終端またはその近傍に位置する前記被ロック突起24cを当該ロック溝64のロック部64bに入り込ませる(図16及び図17)。これにより、当該被ロック突起24cを含む待ち受けコネクタ24は軸方向に実質上動けなくなり、かかる待ち受けコネクタ24の拘束が、当該コネクタ24の待ち受け端子と前記電源用端子47との長期にわたる良好な嵌合を保証する。
【0067】
すなわち、このユニットコネクタ16によれば、その電源用端子47と待ち受けコネクタ24の待ち受け端子との嵌合状態を、その嵌合位置から離れた通信用コネクタ受入部54への通信用コネクタ70の挿入(嵌合)によって確実に維持することができる。従って、当該ユニットコネクタ16と待ち受けコネクタ24との嵌合作業やその嵌合状態の視認を直接行うことが困難であるにもかかわらず、その長期にわたる良好な嵌合を簡単な操作で保証することができる。
【0068】
なお、本発明に係る嵌合保証機能付コネクタの用途は、前記のような電子ユニット10のユニットコネクタ16に限られない。例えば、前記電子ユニット接続装置の待ち受けコネクタ24に適用されてもよい。
【0069】
また、ユニットケース12に内蔵される回路体は前記のような配電用の回路基板22に限らず、例えば、外部回路と各電子ユニット10との間で通信を行わせるための回路を含むものや、各電子ユニット10に内蔵される回路同士の間で通信を行わせる回路を含むものであってもよい。その一方、嵌合保証コネクタは通信用コネクタに限られず、各電子ユニットに別の電源(例えば特殊な電圧をもつ電源)を接続するものであってもよい。
【0070】
さらに、当該嵌合保証機能付コネクタの嵌合保証部材は、前記通信用コネクタ70をはじめとするコネクタ(嵌合保証コネクタ)に限られず、当該嵌合保証専用で嵌合保証部材挿入部に挿入される部材であってもよい。
【0071】
また、前記嵌合保証を実現するための嵌合ロック部材の具体的な構成は、前記カム軸60に限られない。例えば、図18〜図21に第2の実施の形態として示される嵌合保証機能付コネクタのように、スライド移動によって許容位置とロック位置とに切換えられる嵌合ロック部材を備えたものであってもよい。
【0072】
この嵌合保証機能付コネクタは、図18(a)及び(c)に示される複数のコネクタ端子77及び複数の嵌合保証側端子78と、同図(a)〜(c)に示されるコネクタハウジング80と、同図(b)及び(c)に示される嵌合ロック部材としてのスライド板90と、図19に示される嵌合保証コネクタ100とを備え、図20に示される相手方コネクタ94と嵌合される。
【0073】
前記コネクタ端子77は、第1の実施の形態の電源用端子47に対応するもので、前記相手方コネクタ94に含まれる複数の相手方端子とそれぞれ嵌合可能なものである。一方、前記嵌合保証側端子78は、第1の実施の形態の通信用端子48に対応するもので、前記嵌合保証コネクタ100に含まれる複数の端子とそれぞれ嵌合可能なものである。
【0074】
前記コネクタハウジング80は、第1の実施の形態におけるコネクタハウジング50の待ち受けコネクタ受入部52と同様の相手方コネクタ受入部82と、同実施の形態の通信用コネクタ受入部54と同様に嵌合保証部材挿入部を兼ねる嵌合保証コネクタ受入部84とを右側及び左側にそれぞれ有し、さらに、その上側で両受入部82,84に跨るスライド板収容部86を有する。
【0075】
前記相手方コネクタ受入部82は、前記相手方コネクタ94を受入可能な形状を有するとともに、その受け入れた相手方コネクタ94の相手方端子とそれぞれ嵌合可能となる位置に前記コネクタ端子77を保持する。同様に、前記嵌合保証コネクタ受入部84は、前記嵌合保証コネクタ100を受入可能な形状を有するとともに、その受け入れた嵌合保証コネクタ100の端子とそれぞれ嵌合可能となる位置に前記嵌合保証側端子78を保持する。前記各受入部82,84のコネクタ受入空間はそれぞれ連通溝83,85を含み、これらの連通溝83,85は、当該受入方向(コネクタ挿入方向)に沿って延びるとともに、それぞれ前記スライド板収容部86と連通する。
【0076】
前記スライド板90は、図18(b)及び(c)に示されるように前記連通溝85よりも前記嵌合保証コネクタ受入部84側に寄った許容位置と、図21(b)及び(c)に示されるように前記連通溝85を跨ぐロック位置との間でスライド可能となるように、前記スライド板収容部86内に収容されている。このスライド板90の下面には、その前端(図18(b)及び図21(b)では下端)から嵌合保証コネクタ受入部84側へ斜め後方に延びるカム溝92が凹設されている。このカム溝92の位置は、前記スライド板90が前記許容位置にある状態で当該カム溝92の前端が前記連通溝83の直上方に位置するように、設定されている。
【0077】
このスライド板90は、未使用状態において前記許容位置に仮係止される。具体的に、前記スライド板90の適所には、図18(c)に示される被係止穴93が設けられる一方、スライド板収容部86の内面適所には、前記スライド板90が前記許容位置にあるときに前記被係止穴93に嵌り込む仮係止突起87が設けられている。
【0078】
前記相手方コネクタ94は、第1の実施の形態の待ち受けコネクタ24に対応するもので、前記相手方コネクタ受入部82内に受け入れられる。この相手方コネクタ94のハウジングの上面には、前記連通溝83に進入可能な被ロック突起95が上向きに突設されている。これに対して前記スライド板90の相手方コネクタ受入部側(右側)後端部には、切欠91が形成され、この切欠91は、当該切欠91に前記被ロック突起95が嵌り込むことにより当該被ロック突起95をスライド板90が前側(図21(c)では下側)から拘束するような形状を有している。
【0079】
前記嵌合保証コネクタ100は、第1の実施の形態の通信用コネクタ70に相当するもので、嵌合保証部材として前記嵌合保証コネクタ受入部84内に受け入れられる。この嵌合保証コネクタ100のハウジングの上面には、前記連通溝83さらには前記許容位置において当該連通溝83の直上方に位置する前記カム溝92の前端に進入可能なスライド操作突起102が上向きに突設され、このスライド操作突起102は、前記カム溝92内への進入により、前記スライド板90を許容位置からロック位置までスライドさせる。
【0080】
この嵌合保証機能付コネクタにおいて、初期状態ではスライド板90が図18(b)及び(c)に示される許容位置に仮係止されていてその相手方コネクタ受入部側端部(図18(b)及び(c)では右側の端部)が当該相手方コネクタ受入部側の連通溝85よりも嵌合保証コネクタ受入部側(同図では左側)の位置にあるため、当該連通溝85への被ロック突起95の進入を伴いながら相手方コネクタ94が相手方コネクタ受入部84内に挿入されてその相手方端子が前記相手方コネクタ受入部84におけるコネクタ端子77に嵌合することができる。
【0081】
この嵌合は、前記第1の実施の形態と同様、嵌合保証コネクタ受入部84への嵌合保証コネクタ100の挿入により、保証されることができる。具体的には、当該挿入の際に、当該嵌合保証コネクタ100のスライド操作突起102が連通溝83さらにはその直上方のスライド板90のカム溝92内に進入し、当該連通溝83に沿って前記挿入方向と平行な方向に直線的に進行する。これにより、当該スライド操作突起102と係合する前記スライド板90がその前記カム溝92の形状に起因して前記許容位置から図21(b)及び(c)に示されるロック位置へスライドする。すなわち、前記許容位置に仮係止されていたスライド板90は、前記仮係止突起87からの離脱を伴いながら図18(b)(c)及び図21(b)(c)の右側へスライドさせられ、当該スライド板90の切欠91への前記被ロック突起95の嵌り込みを伴いながらロック位置へ至る。このロック位置では、当該スライド板90が当該被ロック突起95の前側(図21(b)では下側、同図(c)では手前側)に位置することにより、当該被ロック突起95を含む相手方コネクタ94がコネクタ端子77から離脱する側(図21(b)では下側、同図(c)では手前側)に変位することが規制され、これにより、当該コネクタ端子77と相手方コネクタ94の相手方端子との嵌合が保証される。
【0082】
以上示した実施の形態の他、当該嵌合ロック部材は、複数の部材で構成されてもよい。例えば、相手方コネクタ(前記実施の形態では待ち受けコネクタ24)を拘束するための部分を嵌合保証部材挿入部への嵌合保証部材の挿入に連動して許容位置からロック位置に移動させるような歯車列を含んでいてもよい。
【0083】
ただし、前記第1の実施の形態に係るカム軸60のように、コネクタ端子(当該実施の形態では電源用端子47)とその相手方端子(当該実施の形態では待ち受け端子)との嵌合方向と、嵌合保証部材挿入部(当該実施の形態では通信用コネクタ受入部54)への嵌合保証部材(当該実施の形態では通信用コネクタ70)の挿入方向との双方に平行な方向の軸回りに回転可能な回転体を含み、その回転により前記許容位置と前記ロック位置とに切換えられるものや、前記第2の実施の形態に係るスライド板90のように、相手方コネクタ受入部82及び嵌合保証部材挿入部(同実施形態では嵌合保証コネクタ受入部84)に対してこれらの並び方向と直交する方向(図18(c)及び図21(c)では上下方向に)隣接する位置で当該並び方向と平行な方向にスライドすることにより前記許容位置と前記ロック位置とに切換えられるものであれば、当該嵌合ロック部材を前記コネクタ端子と前記嵌合保証部材挿入部との間にコンパクトに配置することができる利点がある。
【符号の説明】
【0084】
10 電子ユニット
12 ユニットケース
14 ユニットハウジング
16 ユニットコネクタ
18 ユニット格納部
20 回路基板内蔵部
22 回路基板(配電回路体)
24 待ち受けコネクタ(相手方コネクタ)
24c 被ロック突起
35 窓
47 電源用端子(コネクタ端子)
48 通信用端子(嵌合保証側端子)
50 コネクタハウジング
52 待ち受けコネクタ受入部(相手方コネクタ受入部)
54 通信用コネクタ受入部(嵌合保証部材挿入部)
56 カム軸保持部
60 カム軸(回転体)
64 ロック溝(ロック部)
66 カム溝(カム部)
70 通信用コネクタ(嵌合保証部材)
72 回転操作突起
77 コネクタ端子
78 嵌合保証側端子
80 コネクタハウジング
82 相手方コネクタ受入部
84 嵌合保証コネクタ受入部(嵌合保証部材挿入部)
86 スライド板収容部
90 スライド板(スライド体)
91 切欠(ロック部を形成)
92 カム溝(カム部)
94 相手方コネクタ
95 被ロック突起
100 嵌合保証コネクタ
102 スライド操作突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方コネクタに含まれる相手方端子と嵌合することにより当該相手方端子と電気的に導通するコネクタ端子を含むコネクタであって、
前記コネクタ端子を保持するとともに前記相手方コネクタをその相手方端子が前記コネクタ端子と嵌合可能となるように受け入れる相手方コネクタ受入部と、この相手方コネクタ受入部と別の位置に設けられた嵌合保証部材挿入部とを有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの嵌合保証部材挿入部に挿入可能な嵌合保証部材と、
前記相手方コネクタ受入部への前記相手方コネクタの受入れを許容する許容位置と、前記コネクタ端子と前記相手方端子との嵌合を維持するように前記相手方コネクタを拘束するロック位置との間で移動可能となるように前記コネクタハウジングに設けられ、前記嵌合保証部材挿入部に前記嵌合保証部材が挿入されるのに伴って前記許容位置から前記ロック位置まで移動するように当該嵌合保証部材と係合する嵌合ロック部材とを備えたことを特徴とする嵌合保証機能付コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の嵌合保証機能付コネクタにおいて、
前記相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合方向と、前記嵌合保証部材挿入部への前記嵌合保証部材の挿入方向とが互いに平行であり、
前記嵌合ロック部材は、前記両方向と平行な方向の軸回りに回転可能となるように前記コネクタハウジングに設けられ、その回転により前記許容位置と前記ロック位置とに切換えられる回転体を含み、この回転体は、前記嵌合保証部材の挿入に伴って当該回転体を前記許容位置から前記嵌合ロック位置へ回転させるように当該嵌合保証部材と係合するカム部と、前記許容位置から前記嵌合ロック位置への回転に伴って前記相手方コネクタの相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合を維持する向きに当該相手方コネクタを拘束するように当該相手方コネクタと係合するロック部とを含むことを特徴とする嵌合保証機能付コネクタ。
【請求項3】
請求項1記載の嵌合保証機能付コネクタにおいて、
前記コネクタハウジングにおける相手方コネクタ受入部及び嵌合保証部材挿入部が特定方向に並び、
前記嵌合ロック部材は、前記相手方コネクタ受入部及び前記嵌合保証部材挿入部に対してこれらの並び方向と直交する方向に隣接しかつ当該並び方向と平行な方向にスライド可能となるように前記コネクタハウジングに設けられ、そのスライドにより前記許容位置と前記ロック位置とに切換えられるスライド体を含み、このスライド体は、前記嵌合保証部材の挿入に伴って当該スライド体を前記許容位置から前記嵌合ロック位置へスライドさせるように当該嵌合保証部材と係合するカム部と、前記許容位置から前記嵌合ロック位置へのスライド体に伴って前記相手方コネクタの相手方端子と前記コネクタ端子との嵌合を維持する向きに当該相手方コネクタを拘束するように当該相手方コネクタと係合するロック部とを含むことを特徴とする嵌合保証機能付コネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の嵌合保証機能付コネクタにおいて、
前記嵌合保証部材は、前記相手方コネクタとは別の嵌合保証コネクタであって、
前記コネクタハウジングは、前記コネクタ端子に加え、前記嵌合保証部材挿入部への前記嵌合保証コネクタの挿入に伴ってこの嵌合保証コネクタに含まれる端子と嵌合することが可能となる位置に嵌合保証側端子を保持することを特徴とする嵌合保証機能付コネクタ。
【請求項5】
電源の投入を受けて外部と通信を行う電子回路体を含む電子ユニットであって、
前記電子回路体を格納し、かつ、専用のユニットケースに挿入可能な外形を有するユニットハウジングと、
前記ユニットハウジングに設けられ、このユニットハウジング内に格納される電子回路体を外部回路に接続するためのユニットコネクタとを備え、
前記ユニットコネクタが請求項4記載の嵌合保証機能付コネクタにより構成され、
このユニットコネクタに含まれるコネクタ端子は、当該嵌合保証機能付コネクタの嵌合ロック部材が許容位置にある状態で前記ユニットケース内に前記ユニットハウジングが挿入されるのに伴い、前記ユニットケースに保持された待ち受けコネクタに含まれる待ち受け端子に対して前記ユニットハウジングの挿入方向と平行な方向に嵌合される端子であり、
前記ユニットコネクタに含まれる嵌合保証側端子は、前記ユニットケースを経由せずに前記嵌合保証コネクタの端子と直接嵌合される端子であり、
前記嵌合ロック部材は、前記コネクタハウジングの嵌合保証部材挿入部に前記嵌合保証コネクタが挿入されるのに伴って前記許容位置から前記ロック位置へ移動して前記コネクタ端子と前記待ち受け端子との嵌合を維持する向きに前記相手方コネクタを拘束することを特徴とする電子ユニット。
【請求項6】
請求項5記載の電子ユニットと、
前記電子ユニットのユニットハウジングが挿入可能な形状を有するユニットケースと、
前記ユニットケースに設けられ、このユニットケースへの前記電子ユニットの挿入に伴って当該電子ユニットのユニットコネクタに含まれるコネクタ端子に対し前記挿入の方向と平行な方向に嵌合可能な待ち受け端子を含む待ち受けコネクタとを備えた電子ユニット接続装置であって、
前記ユニットケースは、このユニットケース内に挿入された前記電子ユニットにおける前記ユニットコネクタの嵌合保証部材挿入部を当該ユニットケースの外部に開放して当該ユニットケースの外部から前記嵌合保証部材挿入部への嵌合保証コネクタの嵌合を許容する形状を有し、
前記ユニットコネクタに含まれる嵌合ロック部材は、前記ユニットケース内に前記電子ユニットのユニットハウジングが挿入された状態で前記嵌合保証部材挿入部に前記嵌合保証コネクタが嵌合されるのに伴い、前記相手方コネクタ受入部に受入られた待ち受けコネクタの待ち受け端子と前記コネクタ端子との嵌合を許容する位置から当該嵌合を維持するように前記相手方コネクタを拘束するロック位置へ移動することを特徴とする電子ユニット接続装置。
【請求項7】
請求項6記載の電子ユニット接続装置において、
前記ユニットケースは、複数の電子ユニットがそれぞれ挿入可能な形状を有する一方、前記各電子ユニットに接続するための回路を含む回路体を内蔵し、この回路体に接続された複数の待ち受けコネクタをそれぞれ対応する電子ユニットのユニットコネクタのコネクタ端子に嵌合可能となる位置に保持するものであることを特徴とする電子ユニット接続装置。
【請求項8】
請求項7記載の電子ユニット接続装置において、
前記回路体は、外部から供給される電源を各電子ユニットに分配するための配電回路を含み、
前記嵌合保証コネクタは、前記電子ユニットの電子回路体と外部回路との間で通信を行わせるための端子を含む通信用コネクタであり、
前記ユニットコネクタのコネクタ端子には、前記待ち受けコネクタの待ち受け端子との嵌合により前記電子回路体を前記配電回路体に接続する電源用端子が含まれ、前記ユニットコネクタの嵌合保証側端子には、前記通信用コネクタの端子と嵌合することにより前記電子回路体と外部回路とを接続する通信用端子が含まれることを特徴とする電子ユニット接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−176871(P2010−176871A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15242(P2009−15242)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】