工作機械の制御システム
【課題】事前に工作機械の最適な切削送り速度を算出して、工具経路と算出した最適な切削送り速度とを工作機械の駆動部に直接出力し、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させる。
【解決手段】形状データに基づいて、工具経路を含むCLデータを生成するCLデータ生成部32と、CLデータを記憶するCLデータ記憶部33と、工作機械4の駆動部6の駆動能力に関する駆動能力データを予め記憶している駆動能力データ記憶部34と、CLデータと駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成する切削送り速度データ生成部35と、切削送り速度データを記憶する切削送り速度データ記憶部36と、CLデータと切削送り速度データとを駆動部6に出力する制御部42とを備える。
【解決手段】形状データに基づいて、工具経路を含むCLデータを生成するCLデータ生成部32と、CLデータを記憶するCLデータ記憶部33と、工作機械4の駆動部6の駆動能力に関する駆動能力データを予め記憶している駆動能力データ記憶部34と、CLデータと駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成する切削送り速度データ生成部35と、切削送り速度データを記憶する切削送り速度データ記憶部36と、CLデータと切削送り速度データとを駆動部6に出力する制御部42とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前に工作機械の最適な切削送り速度を算出して、工具経路と算出した最適な切削送り速度とを工作機械の駆動部に直接出力し、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させる工作機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械は、「Gコード」と呼ばれるNCプログラム等からなるNCデータに基づいて、駆動モータの駆動を制御するCNC制御部を有している。このような従来の工作機械は、例えば自由曲面の切削加工を行う場合、特許文献1に示すように、微小線分による指令がなされ、切削送り速度を一定にするように、CNC制御部に対して、NCデータによって指示がなされる。そして、従来の工作機械のCNC制御部は、NCデータが入力されると、入力されたNCデータに従って、モータアンプを介して駆動モータを駆動させる。
【0003】
しかしながら、従来の工作機械のCNC制御部では、加工動作時に、Gコードを先読みし、各駆動軸に分配された加速度及び速度が限界を超えないように適当に切削送り速度を指令値よりも落として加工が行われている。これは、従来の工作機械のCNC制御部では、入力されたNCプログラムを逐次解析しながら実行するインタープリタ方式を用いていることや、各駆動軸を駆動する駆動部の加速度及び速度の限界は予め分かるが、加工時のワーク等の移動物の質量や慣性力などのデータを持っていないために、加速度に伴う発生トルクの限界を事前に算出することができないためである。
【0004】
したがって、従来の工作機械では、切削送り速度を指令値よりも必要以上に落として加工が行われている。
【0005】
また、被加工物であるワークの角部などを加工する場合には、停止しないと理論上加速度が無限大になってしまう。このため、従来の工作機械のCNC制御部では、ワークの角部で停止する前に次の駆動軸の動作を開始する切削モード(G64)が設けられており、ワークの角部を適当に丸めることにより高速化が図られている。
【0006】
しかしながら、このような切削モードでは、ワークの角部にCNC制御部によって適当に設定された本来図面上には存在していないR部を形成して加工の高速化を図るために、加工後のワークが設計者の意図する形状と異なるおそれがある。更に、このワークの角部に形成されたR部は、CNC制御部によって適当に設定されるので、実際にワークを加工してみないとどのような形状になるのか分からないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−11808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、工具経路と工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データとに基づいて、事前に工作機械の最適な切削送り速度を算出して、工具経路と算出した最適な切削送り速度とを工作機械の駆動部に直接出力し、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させて、従来よりも、加工時間を短縮し、加工精度の向上を図る工作機械の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために本発明に係る工作機械の制御システムは、ワークと工具とを相対的に移動させる工作機械の駆動部を駆動するデータを生成し、データを駆動部に出力して、工作機械を制御するものである。更に、本発明に係る工作機械の制御システムは、ワークの加工後の形状に関する形状データに基づいて、ワーク座標系における工具経路を含むCLデータを生成するCLデータ生成部と、CLデータ生成部によって生成されたCLデータを記憶するCLデータ記憶部と、工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データを予め記憶している駆動能力データ記憶部と、CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと駆動能力データ記憶部に記憶されている駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成する切削送り速度データ生成部と、切削送り速度データ生成部によって生成された切削送り速度データを記憶する切削送り速度データ記憶部と、CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと切削送り速度データ記憶部に記憶されている切削送り速度データとを工作機械の駆動部に出力して、ワークと工具とを、CLデータの工具経路に沿って工具経路の各部における切削送り速度で相対的に移動させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の工作機械の制御システムによれば、CLデータ生成部によって、ワークの加工後の形状に関する形状データに基づいて、工具経路を含むCLデータを生成し、次いで、切削送り速度データ生成部によって、CLデータと工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成し、次いで、制御部によって、CLデータと切削送り速度データとを工作機械の駆動部に直接出力することで、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させることができる。
【0011】
したがって、本発明の工作機械の制御システムによれば、従来よりも、高速化を図り、加工時間を短縮することができる。更に、本発明の工作機械の制御システムによれば、加工後のワーク、例えばワークの角部を、設計者の意図する形状に加工することができ、工作機械の加工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した工作機械の制御システムを備える工作システムのブロック図である。
【図2】工具経路を示した図である。
【図3】(1)式のpj(s)のX座標値xj(S)と媒介変数sとの関係を示した図である。
【図4】(1)式のpj(s)のY座標値yj(S)と媒介変数sとの関係を示した図である。
【図5】(2)式のtj(s)とsとの関係を示した図である。
【図6】dt/dsの値を示した図である。
【図7】切削送り速度を求めるための手順を示したフローチャートである。
【図8】X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、X軸方向及びY軸方向の加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示した図である。
【図9】従来の一定の切削送り速度Vで工具が工具経路を移動する場合の、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、X軸方向及びY軸方向の加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示した図である。
【図10】工具経路の曲率半径を変更して、減速具合を減らした場合の、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、X軸方向及びY軸方向の加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示した図である。
【図11】本発明を適用した工作機械の制御システムを備える工作システムの変形例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した工作機械の制御システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した工作機械の制御システムを備える工作システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、工作システム1は、被加工物であるワーク2と工具3とを相対的に移動させて、工具3によってワーク2を所望の形状に加工する工作機械4と、工作機械4を制御する制御システム5とを備える。
【0015】
工作機械4は、図1に示すように、例えば、X軸,Y軸,Z軸の互いに直交する3つの直動駆動軸を有する立型のマシニングセンタである。具体的に、工作機械4は、基台としてのベッド10上に水平面内にて互いに直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)へ移動自在に支持された加工テーブル11と、ベッド10の一端側に立設されたコラム12に加工テーブル11の上方に面して鉛直方向(Z軸方向)へ移動自在に支持された加工ヘッド13と、加工ヘッド13から垂下された主軸14とを有する。更に、主軸14には、エンドミル等の工具3が着脱可能に取り付けられている。
【0016】
加工テーブル11は、テーブル送りモータ15x,15yによって駆動される送りねじ軸(図示せず)の回転に応じて、X軸方向及びY軸方向に移動される。また、加工ヘッド13は、工具送りモータ15zによって駆動される送りねじ軸(図示せず)の回転に応じて、Z軸方向に移動される。更に、主軸14は、主軸モータ15sに連結されており、主軸モータ15sの回転に応じて下端に取り付けられた工具3とともにZ軸回りに回転駆動される。テーブル送りモータ15x,15y、工具送りモータ15z及び主軸モータ15sは、例えばサーボモータである。なお、テーブル送りモータ15x,15y、工具送りモータ15z及び主軸モータ15sを、単に、駆動モータ15ともいう。
【0017】
更に、工作機械4は、駆動モータ15を駆動するモータアンプ16を有している。このモータアンプ16には、制御システム5から入出力インターフェイス(図示せず)を介して駆動指令が直接入力される。モータアンプ16は、駆動指令が入力されると、例えば後述する加減速度データを駆動電流に変換及び増幅して、駆動モータ15を駆動する。なお、駆動モータ15及びモータアンプ16を、単に、駆動部6ともいう。
【0018】
以上のような構成を有する工作機械4は、制御システム5からモータアンプ16に入力された駆動指令に応じて、工具3を主軸モータ15sによって回転駆動させながら、加工テーブル11をテーブル送りモータ15x,15yによってX軸方向及び/又はY軸方向に移動させるとともに、加工ヘッド13を工具送りモータ15zによってZ軸方向に移動させる。かくして、工作機械4は、加工テーブル11に装着されたワーク2と工具3とを相対的に移動させて、工具3によってワーク2を所望の形状に加工する。
【0019】
制御システム5は、図1に示すように、CPU20、ROM21、RAM22等で構成された工作機械4とは別体の例えば汎用のコンピュータからなり、形状データ記憶部30と、工具/加工データ記憶部31と、CLデータ生成部32と、CLデータ記憶部33と、駆動能力データ記憶部34と、切削送り速度データ生成部35と、切削送り速度データ記憶部36と、加減速度データ生成部37と、加減速度データ記憶部38と、加工シミュレーション部39と、表示部40と、入力操作部41と、制御部42とを備えている。
【0020】
CLデータ生成部32、切削送り速度データ生成部35、加減速度データ生成部37、加工シミュレーション部39及び制御部42は、汎用のコンピュータのCPU20で実現される。更に、形状データ記憶部30、工具/加工データ記憶部31、CLデータ記憶部33、駆動能力データ記憶部34、切削送り速度データ記憶部36及び加減速度データ記憶部38は、汎用のコンピュータのメモリ及び外部記憶装置で構成される。
【0021】
形状データ記憶部30は、工作機械4及び制御システム5とは別体のコンピュータ支援設計装置、所謂CAD装置として機能する外部装置50から形状データが入力されると、入力された形状データを一旦記憶する。この形状データは、外部装置50で生成されたものであり、例えば、加工後のワーク2の最終的な形状、寸法及び仕上面精度、ワーク2の材質、加工前のワーク2の形状、ワーク2の質量などに関するデータである。このような形状データは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどの記録媒体や、外部装置50からネットワーク等を介して入力される。
【0022】
工具/加工データ記憶部31は、上述した形状データ記憶部30と同様にして、各種記憶媒体及びネットワークを介して、予め、加工条件データが記憶されている。この加工条件データは、例えば、加工モード(等高線加工、走査線加工、直線補間、円弧補間、エアーカットの回避処理など)、工具の種類(型式,材質など)、工具径、ワーク2の材質に応じて工具種類ごとに設定された切削速度、回転当りの切削量、取り代などに関するデータである。
【0023】
CLデータ生成部32は、形状データ記憶部30に記憶されている形状データと、工具/加工データ記憶部31に記憶されている加工条件データとを読み出して、ワーク2上の工具3の移動経路を含むCL(Cutter Location)データを生成する。そして、CLデータ生成部32は、生成したCLデータを、CLデータ記憶部33に出力し、CLデータ記憶部33に一旦記憶する。
【0024】
駆動能力データ記憶部34は、上述した形状データ記憶部30及び工具/加工データ記憶部31と同様にして、各種記憶媒体及びネットワークを介して、予め、駆動部6の駆動モータ15の駆動能力に関する駆動能力データが記憶されている。この駆動能力データは、例えば、テーブル送りモータ15x,15y、工具送りモータ15z及び主軸モータ15sのそれぞれの、始動トルク、停動トルク(最大トルク)、定格トルク等の駆動モータ15のトルクに関するデータである。
【0025】
切削送り速度データ生成部35は、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータと、形状データ記憶部30に記憶されている加工テーブル11に装着された現在のワーク2の質量と、駆動能力データ記憶部34に記憶されている駆動能力データとを読み出して、CLデータの工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度データを生成する。そして、切削送り速度データ生成部35は、生成した切削送り速度データを、切削送り速度データ記憶部36に出力し、切削送り速度データ記憶部36に一旦記憶する。なお、切削送り速度データ生成部35が、CLデータの工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度データを生成する手順については、後述する。
【0026】
加減速度データ生成部37は、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータと、切削送り速度データ記憶部36に記憶されている切削送り速度データとを読み出して、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、ワーク2と工具3との相対的な加速度又は減速度を表す加減速度データを生成する。そして、加減速度データ生成部37は、生成した加減速度データを、加減速度データ記憶部38に出力し、加減速度データ記憶部38に一旦記憶する。
【0027】
加工シミュレーション部39は、例えば、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータと、切削送り速度データ記憶部36に記憶されている切削送り速度データとを、又は、加減速度データ記憶部38に記憶されている加減速度データを読み出して、ワーク2と工具3とを仮想的に移動させる加工シミュレーションを行う。更に、加工シミュレーション部39は、工具3によってワーク2を所望の形状に加工するのにかかる加工時間を算出する。そして、加工シミュレーション部39は、加工シミュレーションの結果及び加工時間を表示部40に出力する。
【0028】
表示部40は、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等で構成されており、加工シミュレーション部39によって行われた加工シミュレーションの結果、加工時間、上述した切削送り速度データ、加減速度データ等を表示する。
【0029】
入力操作部41は、工作機械4のオペレータに操作される、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成されている。入力操作部41は、オペレータによって、例えば、各記憶部に記憶されているデータの中から所望のデータを選択したり、各生成部にデータの生成を開始させたり、工作機械4に加工を開始させたり、記憶されている又は生成されたデータを編集したりするなどの操作が行われる。
【0030】
制御部42は、例えば、表示部40に表示された加工シミュレーションの結果及び加工時間等が設計者が意図するものとなり、入力操作部41がオペレータによって加工を開始させる操作が行われると、加減速度データ記憶部38に記憶されている加減速度データを読み出し、この加減速度データと駆動指令とを、駆動部6のモータアンプ16に直接出力する。
【0031】
以上のような構成を有する制御システム5は、上述したように、CLデータ生成部32によって、形状データと加工条件データとに基づいて、CLデータを生成し、切削送り速度データ生成部35によって、CLデータと、加工テーブル11に装着された現在のワーク2の質量と、駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度データを生成し、加減速度データ生成部37によって、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、加減速度データを生成し、制御部によって、加減速度データと駆動指令とを、駆動部6のモータアンプ16に直接出力する。かくして、制御システム5は、工作機械4のワーク2と工具3とを、工具経路に沿って工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度で相対的に移動させて、工具3によってワーク2を所望の形状に加工させる。
【0032】
次に、制御システム5の切削送り速度データ生成部35が、切削送り速度がCLデータの工具経路の各部において最大速度となるように切削送り速度データを生成する手順について、図2乃至図7を用いて説明する。
【0033】
ここでは、例えば、図2に示すように、加工テーブル11に装着されたワーク2の角部において、X軸方向及びY軸方向のうちの一方の駆動軸が停止する前に他方の駆動軸の加工動作を開始する切削モード(G64)で加工する場合を例に説明する。なお、工作機械4は、X軸,Y軸,Z軸の3つの直動駆動軸を有するが、以下、X軸方向及びY軸方向の2次元で説明する。
【0034】
図2には、CLデータ生成部32によって生成された工具経路が曲線で示されている。なお、曲線上の点は制御点である。この曲線は、例えば、3次スプライン曲線であり、2階微分可能である。なお、曲線は、Nurbs曲線、Bスプライン曲線等であってもよい。
【0035】
このような3次スプライン曲線pj(s)は、媒介変数をsとすると、下記(1)式のように表される。
【0036】
【数1】
【0037】
また、axj,ayjは、初期値S0における定数であり、bxj,byjは、1階微分における定数であり、すなわち、xとyとでそれぞれ偏微分した定数であり、cxj,cyjは、2階微分における定数であり、dxj,dyjは、2階微分における定数である。
【0038】
したがって、制御点のうちのj番目の制御点とj+1番目の制御点の間の曲線は、pj(s)で表され、これらの曲線は、図3に示すX座標値xj(S)と、図4に示すY座標値yj(S)とによって示すことができる。
【0039】
ここで、前提条件として
(1) xj(sj)=xj, yj(sj)=yj : 制御点を通過する
(2) xj(sj+1)=xj+1(sj+1)=xj+1,
yj(sj+1)=yj+1(sj+1)=yj+1 : 連続
(3) xj’(sj+1)=xj+1’(sj+1),
yj’(sj+1)=yj+1’(sj+1) : 1階微分値が連続
(4) xj’’(sj+1)=xj+1’’(sj+1),
yj’’(sj+1)=yj+1’’(sj+1) : 2階微分値が連続
(5) x0’’(0)=xn−1’’(sn)=0,
y0’’(0)=yn−1’’(sn)=0 : 始点終点の2階微分値が0
とすると、各区間における定数axj,bxj,cxj,dxj,ayj,byj,cyj,dyjを求めることができる。
【0040】
ここで、移動速度は、媒介変数sの時間変化によって表現されるので、その逆関数t(s)を、上記(1)式と同じく、下記(2)式に示すように、2階微分以上可能な曲線で定義することができる。
【0041】
【数2】
【0042】
したがって、ワーク2と工具3との相対的な移動速度、例えば、上述した工作機械4では加工テーブル11がX軸方向及びY軸方向に駆動するので、加工テーブル11のX軸方向の移動速度Vxは、下記(3)式のように表され、加工テーブル11のY軸方向の移動速度Vyは、下記(4)式のように表される。
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
したがって、切削送り速度Vは、下記(5)式のように表される。
【0046】
【数5】
【0047】
更に、加工テーブル11のX軸方向の加速度Axは、下記(6)式のように表され、加工テーブル11のY軸方向の加速度Ayは、下記(7)式のように表される。
【0048】
【数6】
【0049】
【数7】
【0050】
そして、工作機械4においては、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ayで、加工テーブル11をX軸方向及び/又はY軸方向に駆動する際に、加工テーブル11をX軸方向に駆動するテーブル送りモータ15xとY軸方向に駆動するテーブル送りモータ15yとが、例えば、テーブル送りモータ15x,15yの故障、加熱の観点から、定格トルク以下であることが必要である。
【0051】
図2に示すようなPj(s)からなる工具経路を変更することができない、すなわち、加工後のワーク2の形状を変更できない場合には、(2)式のtj(s)の形状を変更、すなわち、制御点の位置を変えることにより、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとを制御することができる。
【0052】
ここでは、tは時間であるので、図5に示すように、(2)式のtj(s)を、単調増加関数となる範囲内でその形状を変更する。そのためには、(2)式のtj(s)そのものを変更するよりも、図6に示すようなdt/dsを、正の値の範囲内で変化させるほうが容易である。
【0053】
以上のような考えをもとに、加速度Ax,Ayがテーブル送りモータ15x,15yの定格トルク以下であって、移動速度Vx,Vyが最大速度となるような切削送り速度Vを求める。
【0054】
次に、この切削送り速度Vを求めるための手順を、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
図7に示すように、ステップS1において、切削送り速度データ生成部35は、形状データ記憶部30に記憶されている現在のワーク2の質量と、駆動能力データ記憶部34に記憶されているテーブル送りモータ15x,15yの定格トルクとを読み出して、図8に示す、テーブル送りモータ15x,15yが現在のワーク2を最大限に移動させることができる限界速度Lv,−Lv及び限界加速度La,−Laを算出する。以下、テーブル送りモータ15x,15yの限界速度Lv,−Lvと、限界加速度La,−Laとを、単に、限界値ともいう。
【0056】
次いで、ステップS2において、切削送り速度データ生成部35は、上述したdt/dsが適当な大きさの一定値(以下、初期一定値ともいう)となるように、(2)式のtj(s)の初期値を設定する。このとき、dt/dsは、速度の逆数に相当するものであるので、dt/dsの初期一定値は、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとがテーブル送りモータ15x,15yの限界値に達しないように設定される。すなわち、dt/dsの初期一定値は、移動速度Vx,Vyが限界速度Lvと限界速度−Lvとの範囲内に設定され、加速度Ax,Ayが限界加速度Laと限界加速度−Laとの範囲内に設定される。
【0057】
次いで、ステップS3において、切削送り速度データ生成部35は、現在のdt/dsの値を、全体的に所定の値だけ小さくなるように、(2)式のtj(s)の制御点の位置を修正する。すなわち、(2)式のtj(s)についてt(縦軸)とs(横軸)との関係を示す図5中の直線の傾きをゆるくすることであり、速度を上げるようにする。
【0058】
次いで、ステップS4において、切削送り速度データ生成部35は、移動速度Vx,Vy、切削送り速度V、加速度Ax,Ayを算出する。次いで、ステップS5において、切削送り速度データ生成部35は、算出した移動速度Vx,Vy及び加速度Ax,Ayと、テーブル送りモータ15x,15yの限界値とを比較し、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとが限界値を超えていないか否かを判定する。
【0059】
そして、ステップS5において、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとが限界値を超えていないときには、ステップS3に戻り、dt/dsの値を、更に、所定の値だけ小さくなるように、(2)式のtj(s)の制御点の位置を修正する。
【0060】
一方、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとが限界値を超えているときには、ステップS6において、限界値を超えた付近のdt/dsの値を、前回の値に戻し、終了する。
【0061】
以上のような手順により、切削送り速度データ生成部35は、テーブル送りモータ15x,15yの定格トルク以下、すなわち、移動速度Vx,Vyが限界速度Lvと限界速度−Lvとの範囲内で、加速度Ax,Ayが限界加速度Laと限界加速度−Laとの範囲内で、最大速度の切削送り速度Vが得られる。
【0062】
図8に、移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示す。なお、図8において、X軸方向の加速度Axと移動速度Vxは、実線で示し、Y軸方向の加速度Ayと移動速度Vyは、一点鎖線で示し、切削送り速度Vは、2点鎖線で示している。
【0063】
図8から明らかなように、X軸方向において、例えば、3番目の制御点c3で減速を開始して、4番目の制御点c4から6番目の制御点c6まで略限界加速度−Laで減速している。これにより、初期値(0番目)の制御点c0から1番目の制御点c1までの移動速度Vxを、限界速度Lvに設定することができる。また、X軸方向において、例えば、18番目の制御点c18で加速を開始して、19番目の制御点c19から22番目の制御点c22まで略限界加速度Laで加速している。これにより、23番目の制御点c23以降の移動速度Vxを、限界速度Lvに設定することができる。
【0064】
なお、比較のために、図9に、従来の一定の切削送り速度Vで工具経路を移動する場合の、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示す。なお、図9において、X軸方向の加速度Axと移動速度Vxは、実線で示し、Y軸方向の加速度Ayと移動速度Vyは、一点鎖線で示し、切削送り速度Vは、2点鎖線で示している。
【0065】
図9から明らかなように、加速度Ax,Ayは、限界加速度La,−Laに達しているが、移動速度Vx,Vyは、限界速度Lv,−Lvに対して非常に低い。
【0066】
すなわち、図8及び図9から明らかなように、制御システム5は、切削送り速度Vの積分値を、図9に示す従来の切削送り速度Vの積分値よりも大幅に大きくすることができる。したがって、制御システム5は、従来よりも、加工時間を短縮することができる。
【0067】
なお、制御システム5は、加工シミュレーション部39によって、事前に、移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを検証し、評価することができる。このために、制御システム5は、加工後のワーク2の形状、特に、ワーク2の角部をトレランス内で変更できる場合、入力操作部41を操作し、例えば、図10に示すように、工具経路の曲率半径をR1からR2に変更して、より大きくなるようにし、減速具合を減らした切削送り速度を生成し、工作機械4に更に高速な加工を行わせるようにしてもよい。
【0068】
以上のような構成を有する本発明を適用した工作機械の制御システム5は、切削送り速度データ生成部35によって、事前に、CLデータと、現在のワーク2の質量と、工作機械4の駆動部6の駆動モータ15の定格トルクとに基づいて、テーブル送りモータ15x,15yの定格トルク以下、すなわち、移動速度Vx,Vyが、現在のワーク2に対する限界速度Lvと限界速度−Lvとの範囲内で、加速度Ax,Ayが、現在のワーク2に対する限界加速度Laと限界加速度−Laとの範囲内で、最大速度となる切削送り速度データを生成することができる。したがって、本発明の工作機械の制御システム5は、従来よりも、高速化を図り、加工時間を削減することができる。更に、本発明の工作機械の制御システム5は、事前に、工作機械4の最大速度となる切削送り速度データを検証することができる。
【0069】
更に、本発明を適用した工作機械の制御システム5は、加減速度データ生成部37によって、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、加減速データを生成し、制御部42によって、加減速度データと駆動指令とを、工作機械4の駆動部6のモータアンプ16に直接出力し、モータアンプ16によって、入力された加減速度データと駆動指令の通りに工作機械4の駆動部6の駆動モータ15を駆動させることで、工作機械4のワーク2と工具3とを、工具経路に沿って工具経路の各部において事前に検証した最大速度となる切削送り速度Vで相対的に移動させることができる。したがって、本発明の工作機械の制御システム5は、ワーク2の角部を、設計者が事前に意図した形状に加工することができ、工作機械4の加工精度の向上を図ることができる。
【0070】
更に、本発明を適用した工作機械の制御システム5は、加工シミュレーション部39によって、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、又は、加減速データに基づいて、ワーク2と工具3とを仮想的に移動させた加工シミュレーションを行い、加工シミュレーションの結果を表示部40に表示することで、容易に、切削送り速度データ及び工作機械4の全体の動作を検証することができる。
【0071】
なお、図11に示すように、本発明を適用した工作機械の制御システム5は、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータに基づいて、「Gコード」と呼ばれるNCプログラム等からなるNCデータを生成するNCデータ生成部43を更に備えるようにしてもよい。これにより、工作機械の制御システム5は、出力先の工作機械が、例えば、図11に示すような従来の工作機械60のようにNCデータに基づいて駆動部61を制御するCNC制御部62を有する場合、NCデータ生成部43によって、NCデータを生成し、制御部42によって、NCデータを従来の工作機械60のCNC制御部62に出力する。そして、CNC制御部62は、NCデータが入力されると、入力されたNCデータに従って、モータアンプ63を介して駆動モータ64を駆動させる。すなわち、工作機械の制御システム5は、モータアンプ16によって、入力された駆動指令の通り駆動モータ15を駆動させる工作機械4と、NCデータに基づいて駆動モータ64を駆動させるCNC制御部62を有する従来の工作機械60との両方を、駆動制御することができる。
【0072】
更に、本発明を適用した工作機械の制御システム5の工作機械4,60は、X軸,Y軸,Z軸の互いに直交する3つの直動駆動軸を有する立型のマシニングセンタに限定されるものではなく、3つの直動駆動軸を有する横型のマシニングセンタであってもよい。また、X軸,Y軸,Z軸の互いに直交する3つの直動駆動軸と、3つの直動駆動軸から選定された2つの直動軸の軸周り方向に回転する2つの回転駆動軸とを有する5軸のマシニングセンタであってもよい。更に、NC旋盤をベースとし、NC旋盤にミーリング加工が可能な主軸が旋回可能に取り付けられた5軸制御複合加工機であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 工作システム、2 ワーク、3 工具、4 工作機械、5 制御システム、6 駆動部、10 ベッド、11 加工テーブル、12 コラム、13 加工ヘッド、14 主軸、15 駆動モータ、16 モータアンプ、20 CPU、21 ROM、22 RAM、30 形状データ記憶部、31 工具/加工データ記憶部、32 CLデータ生成部、33 CLデータ記憶部、34 駆動能力データ記憶部、35 切削送り速度データ生成部、36 切削送り速度データ記憶部、37 加減速度データ生成部、38 加減速度データ記憶部、39 加工シミュレーション部、40 表示部、41 入力操作部、42 制御部、43 NCデータ生成部、50 外部装置、60 工作機械、61 駆動部、62 CNC制御部、63 モータアンプ、64 駆動モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前に工作機械の最適な切削送り速度を算出して、工具経路と算出した最適な切削送り速度とを工作機械の駆動部に直接出力し、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させる工作機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械は、「Gコード」と呼ばれるNCプログラム等からなるNCデータに基づいて、駆動モータの駆動を制御するCNC制御部を有している。このような従来の工作機械は、例えば自由曲面の切削加工を行う場合、特許文献1に示すように、微小線分による指令がなされ、切削送り速度を一定にするように、CNC制御部に対して、NCデータによって指示がなされる。そして、従来の工作機械のCNC制御部は、NCデータが入力されると、入力されたNCデータに従って、モータアンプを介して駆動モータを駆動させる。
【0003】
しかしながら、従来の工作機械のCNC制御部では、加工動作時に、Gコードを先読みし、各駆動軸に分配された加速度及び速度が限界を超えないように適当に切削送り速度を指令値よりも落として加工が行われている。これは、従来の工作機械のCNC制御部では、入力されたNCプログラムを逐次解析しながら実行するインタープリタ方式を用いていることや、各駆動軸を駆動する駆動部の加速度及び速度の限界は予め分かるが、加工時のワーク等の移動物の質量や慣性力などのデータを持っていないために、加速度に伴う発生トルクの限界を事前に算出することができないためである。
【0004】
したがって、従来の工作機械では、切削送り速度を指令値よりも必要以上に落として加工が行われている。
【0005】
また、被加工物であるワークの角部などを加工する場合には、停止しないと理論上加速度が無限大になってしまう。このため、従来の工作機械のCNC制御部では、ワークの角部で停止する前に次の駆動軸の動作を開始する切削モード(G64)が設けられており、ワークの角部を適当に丸めることにより高速化が図られている。
【0006】
しかしながら、このような切削モードでは、ワークの角部にCNC制御部によって適当に設定された本来図面上には存在していないR部を形成して加工の高速化を図るために、加工後のワークが設計者の意図する形状と異なるおそれがある。更に、このワークの角部に形成されたR部は、CNC制御部によって適当に設定されるので、実際にワークを加工してみないとどのような形状になるのか分からないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−11808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、工具経路と工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データとに基づいて、事前に工作機械の最適な切削送り速度を算出して、工具経路と算出した最適な切削送り速度とを工作機械の駆動部に直接出力し、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させて、従来よりも、加工時間を短縮し、加工精度の向上を図る工作機械の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために本発明に係る工作機械の制御システムは、ワークと工具とを相対的に移動させる工作機械の駆動部を駆動するデータを生成し、データを駆動部に出力して、工作機械を制御するものである。更に、本発明に係る工作機械の制御システムは、ワークの加工後の形状に関する形状データに基づいて、ワーク座標系における工具経路を含むCLデータを生成するCLデータ生成部と、CLデータ生成部によって生成されたCLデータを記憶するCLデータ記憶部と、工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データを予め記憶している駆動能力データ記憶部と、CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと駆動能力データ記憶部に記憶されている駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成する切削送り速度データ生成部と、切削送り速度データ生成部によって生成された切削送り速度データを記憶する切削送り速度データ記憶部と、CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと切削送り速度データ記憶部に記憶されている切削送り速度データとを工作機械の駆動部に出力して、ワークと工具とを、CLデータの工具経路に沿って工具経路の各部における切削送り速度で相対的に移動させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の工作機械の制御システムによれば、CLデータ生成部によって、ワークの加工後の形状に関する形状データに基づいて、工具経路を含むCLデータを生成し、次いで、切削送り速度データ生成部によって、CLデータと工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成し、次いで、制御部によって、CLデータと切削送り速度データとを工作機械の駆動部に直接出力することで、ワークと工具とを、工具経路に沿って工具経路の各部における最適な切削送り速度で相対的に移動させることができる。
【0011】
したがって、本発明の工作機械の制御システムによれば、従来よりも、高速化を図り、加工時間を短縮することができる。更に、本発明の工作機械の制御システムによれば、加工後のワーク、例えばワークの角部を、設計者の意図する形状に加工することができ、工作機械の加工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した工作機械の制御システムを備える工作システムのブロック図である。
【図2】工具経路を示した図である。
【図3】(1)式のpj(s)のX座標値xj(S)と媒介変数sとの関係を示した図である。
【図4】(1)式のpj(s)のY座標値yj(S)と媒介変数sとの関係を示した図である。
【図5】(2)式のtj(s)とsとの関係を示した図である。
【図6】dt/dsの値を示した図である。
【図7】切削送り速度を求めるための手順を示したフローチャートである。
【図8】X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、X軸方向及びY軸方向の加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示した図である。
【図9】従来の一定の切削送り速度Vで工具が工具経路を移動する場合の、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、X軸方向及びY軸方向の加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示した図である。
【図10】工具経路の曲率半径を変更して、減速具合を減らした場合の、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、X軸方向及びY軸方向の加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示した図である。
【図11】本発明を適用した工作機械の制御システムを備える工作システムの変形例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した工作機械の制御システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した工作機械の制御システムを備える工作システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、工作システム1は、被加工物であるワーク2と工具3とを相対的に移動させて、工具3によってワーク2を所望の形状に加工する工作機械4と、工作機械4を制御する制御システム5とを備える。
【0015】
工作機械4は、図1に示すように、例えば、X軸,Y軸,Z軸の互いに直交する3つの直動駆動軸を有する立型のマシニングセンタである。具体的に、工作機械4は、基台としてのベッド10上に水平面内にて互いに直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)へ移動自在に支持された加工テーブル11と、ベッド10の一端側に立設されたコラム12に加工テーブル11の上方に面して鉛直方向(Z軸方向)へ移動自在に支持された加工ヘッド13と、加工ヘッド13から垂下された主軸14とを有する。更に、主軸14には、エンドミル等の工具3が着脱可能に取り付けられている。
【0016】
加工テーブル11は、テーブル送りモータ15x,15yによって駆動される送りねじ軸(図示せず)の回転に応じて、X軸方向及びY軸方向に移動される。また、加工ヘッド13は、工具送りモータ15zによって駆動される送りねじ軸(図示せず)の回転に応じて、Z軸方向に移動される。更に、主軸14は、主軸モータ15sに連結されており、主軸モータ15sの回転に応じて下端に取り付けられた工具3とともにZ軸回りに回転駆動される。テーブル送りモータ15x,15y、工具送りモータ15z及び主軸モータ15sは、例えばサーボモータである。なお、テーブル送りモータ15x,15y、工具送りモータ15z及び主軸モータ15sを、単に、駆動モータ15ともいう。
【0017】
更に、工作機械4は、駆動モータ15を駆動するモータアンプ16を有している。このモータアンプ16には、制御システム5から入出力インターフェイス(図示せず)を介して駆動指令が直接入力される。モータアンプ16は、駆動指令が入力されると、例えば後述する加減速度データを駆動電流に変換及び増幅して、駆動モータ15を駆動する。なお、駆動モータ15及びモータアンプ16を、単に、駆動部6ともいう。
【0018】
以上のような構成を有する工作機械4は、制御システム5からモータアンプ16に入力された駆動指令に応じて、工具3を主軸モータ15sによって回転駆動させながら、加工テーブル11をテーブル送りモータ15x,15yによってX軸方向及び/又はY軸方向に移動させるとともに、加工ヘッド13を工具送りモータ15zによってZ軸方向に移動させる。かくして、工作機械4は、加工テーブル11に装着されたワーク2と工具3とを相対的に移動させて、工具3によってワーク2を所望の形状に加工する。
【0019】
制御システム5は、図1に示すように、CPU20、ROM21、RAM22等で構成された工作機械4とは別体の例えば汎用のコンピュータからなり、形状データ記憶部30と、工具/加工データ記憶部31と、CLデータ生成部32と、CLデータ記憶部33と、駆動能力データ記憶部34と、切削送り速度データ生成部35と、切削送り速度データ記憶部36と、加減速度データ生成部37と、加減速度データ記憶部38と、加工シミュレーション部39と、表示部40と、入力操作部41と、制御部42とを備えている。
【0020】
CLデータ生成部32、切削送り速度データ生成部35、加減速度データ生成部37、加工シミュレーション部39及び制御部42は、汎用のコンピュータのCPU20で実現される。更に、形状データ記憶部30、工具/加工データ記憶部31、CLデータ記憶部33、駆動能力データ記憶部34、切削送り速度データ記憶部36及び加減速度データ記憶部38は、汎用のコンピュータのメモリ及び外部記憶装置で構成される。
【0021】
形状データ記憶部30は、工作機械4及び制御システム5とは別体のコンピュータ支援設計装置、所謂CAD装置として機能する外部装置50から形状データが入力されると、入力された形状データを一旦記憶する。この形状データは、外部装置50で生成されたものであり、例えば、加工後のワーク2の最終的な形状、寸法及び仕上面精度、ワーク2の材質、加工前のワーク2の形状、ワーク2の質量などに関するデータである。このような形状データは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどの記録媒体や、外部装置50からネットワーク等を介して入力される。
【0022】
工具/加工データ記憶部31は、上述した形状データ記憶部30と同様にして、各種記憶媒体及びネットワークを介して、予め、加工条件データが記憶されている。この加工条件データは、例えば、加工モード(等高線加工、走査線加工、直線補間、円弧補間、エアーカットの回避処理など)、工具の種類(型式,材質など)、工具径、ワーク2の材質に応じて工具種類ごとに設定された切削速度、回転当りの切削量、取り代などに関するデータである。
【0023】
CLデータ生成部32は、形状データ記憶部30に記憶されている形状データと、工具/加工データ記憶部31に記憶されている加工条件データとを読み出して、ワーク2上の工具3の移動経路を含むCL(Cutter Location)データを生成する。そして、CLデータ生成部32は、生成したCLデータを、CLデータ記憶部33に出力し、CLデータ記憶部33に一旦記憶する。
【0024】
駆動能力データ記憶部34は、上述した形状データ記憶部30及び工具/加工データ記憶部31と同様にして、各種記憶媒体及びネットワークを介して、予め、駆動部6の駆動モータ15の駆動能力に関する駆動能力データが記憶されている。この駆動能力データは、例えば、テーブル送りモータ15x,15y、工具送りモータ15z及び主軸モータ15sのそれぞれの、始動トルク、停動トルク(最大トルク)、定格トルク等の駆動モータ15のトルクに関するデータである。
【0025】
切削送り速度データ生成部35は、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータと、形状データ記憶部30に記憶されている加工テーブル11に装着された現在のワーク2の質量と、駆動能力データ記憶部34に記憶されている駆動能力データとを読み出して、CLデータの工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度データを生成する。そして、切削送り速度データ生成部35は、生成した切削送り速度データを、切削送り速度データ記憶部36に出力し、切削送り速度データ記憶部36に一旦記憶する。なお、切削送り速度データ生成部35が、CLデータの工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度データを生成する手順については、後述する。
【0026】
加減速度データ生成部37は、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータと、切削送り速度データ記憶部36に記憶されている切削送り速度データとを読み出して、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、ワーク2と工具3との相対的な加速度又は減速度を表す加減速度データを生成する。そして、加減速度データ生成部37は、生成した加減速度データを、加減速度データ記憶部38に出力し、加減速度データ記憶部38に一旦記憶する。
【0027】
加工シミュレーション部39は、例えば、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータと、切削送り速度データ記憶部36に記憶されている切削送り速度データとを、又は、加減速度データ記憶部38に記憶されている加減速度データを読み出して、ワーク2と工具3とを仮想的に移動させる加工シミュレーションを行う。更に、加工シミュレーション部39は、工具3によってワーク2を所望の形状に加工するのにかかる加工時間を算出する。そして、加工シミュレーション部39は、加工シミュレーションの結果及び加工時間を表示部40に出力する。
【0028】
表示部40は、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等で構成されており、加工シミュレーション部39によって行われた加工シミュレーションの結果、加工時間、上述した切削送り速度データ、加減速度データ等を表示する。
【0029】
入力操作部41は、工作機械4のオペレータに操作される、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成されている。入力操作部41は、オペレータによって、例えば、各記憶部に記憶されているデータの中から所望のデータを選択したり、各生成部にデータの生成を開始させたり、工作機械4に加工を開始させたり、記憶されている又は生成されたデータを編集したりするなどの操作が行われる。
【0030】
制御部42は、例えば、表示部40に表示された加工シミュレーションの結果及び加工時間等が設計者が意図するものとなり、入力操作部41がオペレータによって加工を開始させる操作が行われると、加減速度データ記憶部38に記憶されている加減速度データを読み出し、この加減速度データと駆動指令とを、駆動部6のモータアンプ16に直接出力する。
【0031】
以上のような構成を有する制御システム5は、上述したように、CLデータ生成部32によって、形状データと加工条件データとに基づいて、CLデータを生成し、切削送り速度データ生成部35によって、CLデータと、加工テーブル11に装着された現在のワーク2の質量と、駆動能力データとに基づいて、CLデータの工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度データを生成し、加減速度データ生成部37によって、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、加減速度データを生成し、制御部によって、加減速度データと駆動指令とを、駆動部6のモータアンプ16に直接出力する。かくして、制御システム5は、工作機械4のワーク2と工具3とを、工具経路に沿って工具経路の各部において最大速度となる切削送り速度で相対的に移動させて、工具3によってワーク2を所望の形状に加工させる。
【0032】
次に、制御システム5の切削送り速度データ生成部35が、切削送り速度がCLデータの工具経路の各部において最大速度となるように切削送り速度データを生成する手順について、図2乃至図7を用いて説明する。
【0033】
ここでは、例えば、図2に示すように、加工テーブル11に装着されたワーク2の角部において、X軸方向及びY軸方向のうちの一方の駆動軸が停止する前に他方の駆動軸の加工動作を開始する切削モード(G64)で加工する場合を例に説明する。なお、工作機械4は、X軸,Y軸,Z軸の3つの直動駆動軸を有するが、以下、X軸方向及びY軸方向の2次元で説明する。
【0034】
図2には、CLデータ生成部32によって生成された工具経路が曲線で示されている。なお、曲線上の点は制御点である。この曲線は、例えば、3次スプライン曲線であり、2階微分可能である。なお、曲線は、Nurbs曲線、Bスプライン曲線等であってもよい。
【0035】
このような3次スプライン曲線pj(s)は、媒介変数をsとすると、下記(1)式のように表される。
【0036】
【数1】
【0037】
また、axj,ayjは、初期値S0における定数であり、bxj,byjは、1階微分における定数であり、すなわち、xとyとでそれぞれ偏微分した定数であり、cxj,cyjは、2階微分における定数であり、dxj,dyjは、2階微分における定数である。
【0038】
したがって、制御点のうちのj番目の制御点とj+1番目の制御点の間の曲線は、pj(s)で表され、これらの曲線は、図3に示すX座標値xj(S)と、図4に示すY座標値yj(S)とによって示すことができる。
【0039】
ここで、前提条件として
(1) xj(sj)=xj, yj(sj)=yj : 制御点を通過する
(2) xj(sj+1)=xj+1(sj+1)=xj+1,
yj(sj+1)=yj+1(sj+1)=yj+1 : 連続
(3) xj’(sj+1)=xj+1’(sj+1),
yj’(sj+1)=yj+1’(sj+1) : 1階微分値が連続
(4) xj’’(sj+1)=xj+1’’(sj+1),
yj’’(sj+1)=yj+1’’(sj+1) : 2階微分値が連続
(5) x0’’(0)=xn−1’’(sn)=0,
y0’’(0)=yn−1’’(sn)=0 : 始点終点の2階微分値が0
とすると、各区間における定数axj,bxj,cxj,dxj,ayj,byj,cyj,dyjを求めることができる。
【0040】
ここで、移動速度は、媒介変数sの時間変化によって表現されるので、その逆関数t(s)を、上記(1)式と同じく、下記(2)式に示すように、2階微分以上可能な曲線で定義することができる。
【0041】
【数2】
【0042】
したがって、ワーク2と工具3との相対的な移動速度、例えば、上述した工作機械4では加工テーブル11がX軸方向及びY軸方向に駆動するので、加工テーブル11のX軸方向の移動速度Vxは、下記(3)式のように表され、加工テーブル11のY軸方向の移動速度Vyは、下記(4)式のように表される。
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
したがって、切削送り速度Vは、下記(5)式のように表される。
【0046】
【数5】
【0047】
更に、加工テーブル11のX軸方向の加速度Axは、下記(6)式のように表され、加工テーブル11のY軸方向の加速度Ayは、下記(7)式のように表される。
【0048】
【数6】
【0049】
【数7】
【0050】
そして、工作機械4においては、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ayで、加工テーブル11をX軸方向及び/又はY軸方向に駆動する際に、加工テーブル11をX軸方向に駆動するテーブル送りモータ15xとY軸方向に駆動するテーブル送りモータ15yとが、例えば、テーブル送りモータ15x,15yの故障、加熱の観点から、定格トルク以下であることが必要である。
【0051】
図2に示すようなPj(s)からなる工具経路を変更することができない、すなわち、加工後のワーク2の形状を変更できない場合には、(2)式のtj(s)の形状を変更、すなわち、制御点の位置を変えることにより、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとを制御することができる。
【0052】
ここでは、tは時間であるので、図5に示すように、(2)式のtj(s)を、単調増加関数となる範囲内でその形状を変更する。そのためには、(2)式のtj(s)そのものを変更するよりも、図6に示すようなdt/dsを、正の値の範囲内で変化させるほうが容易である。
【0053】
以上のような考えをもとに、加速度Ax,Ayがテーブル送りモータ15x,15yの定格トルク以下であって、移動速度Vx,Vyが最大速度となるような切削送り速度Vを求める。
【0054】
次に、この切削送り速度Vを求めるための手順を、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
図7に示すように、ステップS1において、切削送り速度データ生成部35は、形状データ記憶部30に記憶されている現在のワーク2の質量と、駆動能力データ記憶部34に記憶されているテーブル送りモータ15x,15yの定格トルクとを読み出して、図8に示す、テーブル送りモータ15x,15yが現在のワーク2を最大限に移動させることができる限界速度Lv,−Lv及び限界加速度La,−Laを算出する。以下、テーブル送りモータ15x,15yの限界速度Lv,−Lvと、限界加速度La,−Laとを、単に、限界値ともいう。
【0056】
次いで、ステップS2において、切削送り速度データ生成部35は、上述したdt/dsが適当な大きさの一定値(以下、初期一定値ともいう)となるように、(2)式のtj(s)の初期値を設定する。このとき、dt/dsは、速度の逆数に相当するものであるので、dt/dsの初期一定値は、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとがテーブル送りモータ15x,15yの限界値に達しないように設定される。すなわち、dt/dsの初期一定値は、移動速度Vx,Vyが限界速度Lvと限界速度−Lvとの範囲内に設定され、加速度Ax,Ayが限界加速度Laと限界加速度−Laとの範囲内に設定される。
【0057】
次いで、ステップS3において、切削送り速度データ生成部35は、現在のdt/dsの値を、全体的に所定の値だけ小さくなるように、(2)式のtj(s)の制御点の位置を修正する。すなわち、(2)式のtj(s)についてt(縦軸)とs(横軸)との関係を示す図5中の直線の傾きをゆるくすることであり、速度を上げるようにする。
【0058】
次いで、ステップS4において、切削送り速度データ生成部35は、移動速度Vx,Vy、切削送り速度V、加速度Ax,Ayを算出する。次いで、ステップS5において、切削送り速度データ生成部35は、算出した移動速度Vx,Vy及び加速度Ax,Ayと、テーブル送りモータ15x,15yの限界値とを比較し、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとが限界値を超えていないか否かを判定する。
【0059】
そして、ステップS5において、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとが限界値を超えていないときには、ステップS3に戻り、dt/dsの値を、更に、所定の値だけ小さくなるように、(2)式のtj(s)の制御点の位置を修正する。
【0060】
一方、移動速度Vx,Vyと加速度Ax,Ayとが限界値を超えているときには、ステップS6において、限界値を超えた付近のdt/dsの値を、前回の値に戻し、終了する。
【0061】
以上のような手順により、切削送り速度データ生成部35は、テーブル送りモータ15x,15yの定格トルク以下、すなわち、移動速度Vx,Vyが限界速度Lvと限界速度−Lvとの範囲内で、加速度Ax,Ayが限界加速度Laと限界加速度−Laとの範囲内で、最大速度の切削送り速度Vが得られる。
【0062】
図8に、移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示す。なお、図8において、X軸方向の加速度Axと移動速度Vxは、実線で示し、Y軸方向の加速度Ayと移動速度Vyは、一点鎖線で示し、切削送り速度Vは、2点鎖線で示している。
【0063】
図8から明らかなように、X軸方向において、例えば、3番目の制御点c3で減速を開始して、4番目の制御点c4から6番目の制御点c6まで略限界加速度−Laで減速している。これにより、初期値(0番目)の制御点c0から1番目の制御点c1までの移動速度Vxを、限界速度Lvに設定することができる。また、X軸方向において、例えば、18番目の制御点c18で加速を開始して、19番目の制御点c19から22番目の制御点c22まで略限界加速度Laで加速している。これにより、23番目の制御点c23以降の移動速度Vxを、限界速度Lvに設定することができる。
【0064】
なお、比較のために、図9に、従来の一定の切削送り速度Vで工具経路を移動する場合の、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを示す。なお、図9において、X軸方向の加速度Axと移動速度Vxは、実線で示し、Y軸方向の加速度Ayと移動速度Vyは、一点鎖線で示し、切削送り速度Vは、2点鎖線で示している。
【0065】
図9から明らかなように、加速度Ax,Ayは、限界加速度La,−Laに達しているが、移動速度Vx,Vyは、限界速度Lv,−Lvに対して非常に低い。
【0066】
すなわち、図8及び図9から明らかなように、制御システム5は、切削送り速度Vの積分値を、図9に示す従来の切削送り速度Vの積分値よりも大幅に大きくすることができる。したがって、制御システム5は、従来よりも、加工時間を短縮することができる。
【0067】
なお、制御システム5は、加工シミュレーション部39によって、事前に、移動速度Vx,Vy、加速度Ax,Ay、切削送り速度Vを検証し、評価することができる。このために、制御システム5は、加工後のワーク2の形状、特に、ワーク2の角部をトレランス内で変更できる場合、入力操作部41を操作し、例えば、図10に示すように、工具経路の曲率半径をR1からR2に変更して、より大きくなるようにし、減速具合を減らした切削送り速度を生成し、工作機械4に更に高速な加工を行わせるようにしてもよい。
【0068】
以上のような構成を有する本発明を適用した工作機械の制御システム5は、切削送り速度データ生成部35によって、事前に、CLデータと、現在のワーク2の質量と、工作機械4の駆動部6の駆動モータ15の定格トルクとに基づいて、テーブル送りモータ15x,15yの定格トルク以下、すなわち、移動速度Vx,Vyが、現在のワーク2に対する限界速度Lvと限界速度−Lvとの範囲内で、加速度Ax,Ayが、現在のワーク2に対する限界加速度Laと限界加速度−Laとの範囲内で、最大速度となる切削送り速度データを生成することができる。したがって、本発明の工作機械の制御システム5は、従来よりも、高速化を図り、加工時間を削減することができる。更に、本発明の工作機械の制御システム5は、事前に、工作機械4の最大速度となる切削送り速度データを検証することができる。
【0069】
更に、本発明を適用した工作機械の制御システム5は、加減速度データ生成部37によって、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、加減速データを生成し、制御部42によって、加減速度データと駆動指令とを、工作機械4の駆動部6のモータアンプ16に直接出力し、モータアンプ16によって、入力された加減速度データと駆動指令の通りに工作機械4の駆動部6の駆動モータ15を駆動させることで、工作機械4のワーク2と工具3とを、工具経路に沿って工具経路の各部において事前に検証した最大速度となる切削送り速度Vで相対的に移動させることができる。したがって、本発明の工作機械の制御システム5は、ワーク2の角部を、設計者が事前に意図した形状に加工することができ、工作機械4の加工精度の向上を図ることができる。
【0070】
更に、本発明を適用した工作機械の制御システム5は、加工シミュレーション部39によって、CLデータと切削送り速度データとに基づいて、又は、加減速データに基づいて、ワーク2と工具3とを仮想的に移動させた加工シミュレーションを行い、加工シミュレーションの結果を表示部40に表示することで、容易に、切削送り速度データ及び工作機械4の全体の動作を検証することができる。
【0071】
なお、図11に示すように、本発明を適用した工作機械の制御システム5は、CLデータ記憶部33に記憶されているCLデータに基づいて、「Gコード」と呼ばれるNCプログラム等からなるNCデータを生成するNCデータ生成部43を更に備えるようにしてもよい。これにより、工作機械の制御システム5は、出力先の工作機械が、例えば、図11に示すような従来の工作機械60のようにNCデータに基づいて駆動部61を制御するCNC制御部62を有する場合、NCデータ生成部43によって、NCデータを生成し、制御部42によって、NCデータを従来の工作機械60のCNC制御部62に出力する。そして、CNC制御部62は、NCデータが入力されると、入力されたNCデータに従って、モータアンプ63を介して駆動モータ64を駆動させる。すなわち、工作機械の制御システム5は、モータアンプ16によって、入力された駆動指令の通り駆動モータ15を駆動させる工作機械4と、NCデータに基づいて駆動モータ64を駆動させるCNC制御部62を有する従来の工作機械60との両方を、駆動制御することができる。
【0072】
更に、本発明を適用した工作機械の制御システム5の工作機械4,60は、X軸,Y軸,Z軸の互いに直交する3つの直動駆動軸を有する立型のマシニングセンタに限定されるものではなく、3つの直動駆動軸を有する横型のマシニングセンタであってもよい。また、X軸,Y軸,Z軸の互いに直交する3つの直動駆動軸と、3つの直動駆動軸から選定された2つの直動軸の軸周り方向に回転する2つの回転駆動軸とを有する5軸のマシニングセンタであってもよい。更に、NC旋盤をベースとし、NC旋盤にミーリング加工が可能な主軸が旋回可能に取り付けられた5軸制御複合加工機であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 工作システム、2 ワーク、3 工具、4 工作機械、5 制御システム、6 駆動部、10 ベッド、11 加工テーブル、12 コラム、13 加工ヘッド、14 主軸、15 駆動モータ、16 モータアンプ、20 CPU、21 ROM、22 RAM、30 形状データ記憶部、31 工具/加工データ記憶部、32 CLデータ生成部、33 CLデータ記憶部、34 駆動能力データ記憶部、35 切削送り速度データ生成部、36 切削送り速度データ記憶部、37 加減速度データ生成部、38 加減速度データ記憶部、39 加工シミュレーション部、40 表示部、41 入力操作部、42 制御部、43 NCデータ生成部、50 外部装置、60 工作機械、61 駆動部、62 CNC制御部、63 モータアンプ、64 駆動モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと工具とを相対的に移動させる工作機械の駆動部を駆動するデータを生成し、該データを該駆動部に出力して、該工作機械を制御する工作機械の制御システムにおいて、
上記ワークの加工後の形状に関する形状データに基づいて、ワーク座標系における工具経路を含むCLデータを生成するCLデータ生成部と、
上記CLデータ生成部によって生成されたCLデータを記憶するCLデータ記憶部と、
上記工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データを予め記憶している駆動能力データ記憶部と、
上記CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと上記駆動能力データ記憶部に記憶されている駆動能力データとに基づいて、該CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成する切削送り速度データ生成部と、
上記切削送り速度データ生成部によって生成された切削送り速度データを記憶する切削送り速度データ記憶部と、
上記CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと上記切削送り速度データ記憶部に記憶されている切削送り速度データとを上記工作機械の駆動部に出力して、上記ワークと上記工具とを、該CLデータの工具経路に沿って該工具経路の各部における切削送り速度で相対的に移動させる制御部とを備えることを特徴とする工作機械の制御システム。
【請求項2】
上記切削送り速度データ生成部は、上記ワークの質量と上記駆動部のモータのトルクの定格データとに基づいて、上記切削送り速度データが最大速度となるように生成することを特徴とする請求項1記載の工作機械の制御システム。
【請求項3】
上記CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと上記切削送り速度データ記憶部に記憶されている切削送り速度データとに基づいて、上記ワークと上記工具との相対的な加速度又は減速度を表す加減速度データを生成する加減速度データ生成部と、
上記加減速度データ生成部によって生成された加減速度データを記憶する加減速度データ記憶部とを更に備え、
上記制御部は、上記加減速度データ記憶部に記憶されている加減速度データに基づいて、上記工作機械の駆動部に駆動指令を出力する請求項1又は請求項2に記載の工作機械の制御システム。
【請求項4】
更に、上記CLデータと上記切削送り速度データとに基づいて、又は、上記加減速度データに基づいて、上記ワークと上記工具とを仮想的に移動させた加工シミュレーションを行う加工シミュレーション部と、
上記加工シミュレーション部によって行われた加工シミュレーションの結果を表示する表示部とを備えることを特徴とする請求項1乃至3記載のうちいずれか1つに記載の工作機械の制御システム。
【請求項5】
上記工作機械が、NCデータに基づいて、上記駆動部を制御するCNC制御部を備える場合、
当該工作機械の制御システムは、更に、上記CLデータに基づいて、上記NCデータを生成するNCデータ生成部を備え、
上記制御部は、上記NCデータ生成部によって生成されたNCデータを上記工作機械のCNC制御部に出力することを特徴とする請求項1乃至4記載のうちいずれか1つに記載の工作機械の制御システム。
【請求項1】
ワークと工具とを相対的に移動させる工作機械の駆動部を駆動するデータを生成し、該データを該駆動部に出力して、該工作機械を制御する工作機械の制御システムにおいて、
上記ワークの加工後の形状に関する形状データに基づいて、ワーク座標系における工具経路を含むCLデータを生成するCLデータ生成部と、
上記CLデータ生成部によって生成されたCLデータを記憶するCLデータ記憶部と、
上記工作機械の駆動部の駆動能力に関する駆動能力データを予め記憶している駆動能力データ記憶部と、
上記CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと上記駆動能力データ記憶部に記憶されている駆動能力データとに基づいて、該CLデータの工具経路の各部における切削送り速度データを生成する切削送り速度データ生成部と、
上記切削送り速度データ生成部によって生成された切削送り速度データを記憶する切削送り速度データ記憶部と、
上記CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと上記切削送り速度データ記憶部に記憶されている切削送り速度データとを上記工作機械の駆動部に出力して、上記ワークと上記工具とを、該CLデータの工具経路に沿って該工具経路の各部における切削送り速度で相対的に移動させる制御部とを備えることを特徴とする工作機械の制御システム。
【請求項2】
上記切削送り速度データ生成部は、上記ワークの質量と上記駆動部のモータのトルクの定格データとに基づいて、上記切削送り速度データが最大速度となるように生成することを特徴とする請求項1記載の工作機械の制御システム。
【請求項3】
上記CLデータ記憶部に記憶されているCLデータと上記切削送り速度データ記憶部に記憶されている切削送り速度データとに基づいて、上記ワークと上記工具との相対的な加速度又は減速度を表す加減速度データを生成する加減速度データ生成部と、
上記加減速度データ生成部によって生成された加減速度データを記憶する加減速度データ記憶部とを更に備え、
上記制御部は、上記加減速度データ記憶部に記憶されている加減速度データに基づいて、上記工作機械の駆動部に駆動指令を出力する請求項1又は請求項2に記載の工作機械の制御システム。
【請求項4】
更に、上記CLデータと上記切削送り速度データとに基づいて、又は、上記加減速度データに基づいて、上記ワークと上記工具とを仮想的に移動させた加工シミュレーションを行う加工シミュレーション部と、
上記加工シミュレーション部によって行われた加工シミュレーションの結果を表示する表示部とを備えることを特徴とする請求項1乃至3記載のうちいずれか1つに記載の工作機械の制御システム。
【請求項5】
上記工作機械が、NCデータに基づいて、上記駆動部を制御するCNC制御部を備える場合、
当該工作機械の制御システムは、更に、上記CLデータに基づいて、上記NCデータを生成するNCデータ生成部を備え、
上記制御部は、上記NCデータ生成部によって生成されたNCデータを上記工作機械のCNC制御部に出力することを特徴とする請求項1乃至4記載のうちいずれか1つに記載の工作機械の制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−152884(P2012−152884A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16912(P2011−16912)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】
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