説明

差分比較検査方法および差分比較検査装置

【課題】角部や隅部を有するパターンであっても適切な比較検査ができる差分比較検査方法および差分比較検査装置を提供すること。
【解決手段】パターンに形成された凹状の隅である内角及び凸状の角である外角を、それぞれマスタ画像から検出する。次に、検出した内角近傍の領域である内角領域の範囲を決定する。併せて、検出した外角近傍の領域である外角領域の範囲を決定する。そして、マスタ画像とオブジェクト画像との差分に基づいて比較検査を行う。このとき、マスタ画像における内角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より過剰に形成されているオブジェクト画像のパターンの領域である過剰領域に対する差分は除外して比較検査を行う。また、マスタ画像における外角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より不足して形成されているオブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物を撮像した画像を用いた差分比較検査方法および装置に関し、より特定的には、基板上に形成されたパターンの比較検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等が実装されるプリント基板の表面には、所定の回路を構成するのに必要な導体配線がパターン形成される。この配線パターンの検査方法の1つとして、比較検査法がある。これは、CADデータから作成される良品画像と、検査対象である基板を撮像した検査画像とを比べて、一定以上の差がある部分を欠陥として検出する方法である。具体的には、比較検査法は、CADデータをデジタル画像に変換した画像であるマスタ画像と、検査対象(被検査物)を撮像してデジタル画像にした検査画像との画素数の差分に基づいて欠陥を検出する。典型的には、この差分値が所定値以上であれば、検査対象を欠陥とするものである。図21は、このような比較検査法を説明するための図である。図21において、CADデータのマスタパターン画像(図21(A))を二値化したデジタル画像(図21(B))に変換する。同様に、検査対象となる検査パターンを撮像した画像(図21(C))も、二値化したデジタル画像(図21(D))に変換する。そして、双方のデジタル画像を比較し、画素毎の差分値を算出する(図21(E))。そして、この差分値が所定値以上であれば、当該検査対象には欠陥があるとされる。
【0003】
しかし、プリント基板の表面に形成される配線パターンは、エッチングのような化学処理の工程を介して作られるため、特に角や隅の部分でエッチングの影響を受けやすい。例えば、図形(パターン領域)の凸状の角部分(外角)で、凸部の先端が丸くなってしまう「オーバーエッチング」や、図形の凹状の隅部分(内角)で、凹部の内側が丸くなってしまう「アンダーエッチング」という現象が起こってしまう(図22参照)。このようなオーバーエッチングやアンダーエッチングによって形成されるパターン領域は、上述した比較検査法では、マスタ画像と相違があると判定されるために、欠陥部分として検出される。その一方で、このようなエッチングによる角や隅部分の相違は、プリント基板の性能上大きな問題とはならないことが多い。そのため、このようなオーバーエッチングやアンダーエッチングによって形成されるパターン領域については、欠陥として検出されないことが望ましい。すなわち、プリント基板の表面に形成される配線パターンの比較検査においては、パターンの直線部分については比較検査の感度を上げ、角や隅などのエッジ部分については比較検査の感度を下げて検査することが必要となる。
【0004】
上述したオーバーエッチングなどを欠陥として検出しないようにするための方法として、差分値として許容する値を高く設定してプリント基板全面を検査するという方法がある。また、マスタ画像から内角と外角とを検出し、その周囲の一定の範囲だけ差分値として許容する値を高く設定して(すなわち、比較検査の感度を下げる)検査を行うという方法もある。つまり、内角部および外角部周辺についてのみ、差分値が相対的に大きくても欠陥と判定されないようにしておくという方法もある。また、外角部については予め角を丸め(角落とし)、内角部については予め肉付けしたマスタ画像を準備しておいて、検査画像と比較する方法がある(例えば、特許文献1)。さらに、別の方法として、内角部および外角部を比較検査の対象から外すという方法もある(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−143052号公報
【特許文献2】特開昭61−86639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された方法の場合、検査対象となるパターン領域の全ての角や隅が、予め角や隅を丸めたマスタ画像と同じような形状となっているとは限らない。これは、検査対象となるパターン領域における角や隅の形状は、エッチングの状態によって変化することがあるためである。そのため、オーバーエッチングやアンダーエッチングを原因とする欠陥検出が多少は軽減されるものの、依然、欠陥として検出される。また、角部や隅部についてのみ欠陥判定の条件の許容値を上げる(感度を下げる)場合は、判定のための許容値を角部や隅部とそれ以外の部分との2種類準備する必要がある。そのため、許容値判定の回路が複数必要になってコストがかかる。また、上述の特許文献2に開示された方法の場合は、確かにオーバーエッチングやアンダーエッチングを原因とする欠陥が検出されないが、そもそも角部や隅部の検査を行っていないため、角部や隅部にプリント基板の性能上問題となるような欠陥が生じている場合も、欠陥として検出できない。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、角部や隅部を有するパターンであっても適切な比較検査ができる差分比較検査方法および差分比較検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成を採用した。
【0008】
第1の発明は、パターンが形成された被検査物を撮像したオブジェクト画像と当該パターンのマスタ画像とを比較して、当該被検査物を検査する差分比較検査方法であって、角検出ステップと、内角領域決定ステップと、外角領域決定ステップと、比較検査ステップとを有する。角検出ステップは、パターンに形成された凹状の隅である内角及び凸状の角である外角をそれぞれマスタ画像から検出する。内角領域決定ステップは、検出した内角近傍の領域である内角領域の範囲を決定する。外角領域決定ステップは、検出した外角近傍の領域である外角領域の範囲を決定する。比較検査ステップは、マスタ画像とオブジェクト画像との差分に基づいて比較検査する。また、比較検査ステップは、マスタ画像における内角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より過剰に形成されているオブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査する。更に、マスタ画像における外角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より不足して形成されているオブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、オブジェクト画像およびマスタ画像は、それぞれパターンが形成された領域の画素値を第1の値、それ以外の画素値を当該第1の値とは異なる第2の値とする二値化された画像である。また、内角領域決定ステップは、内角領域内の画素値を第1の値、当該内角領域外の画素値を第2の値とした内角領域画像を生成する内角領域画像生成ステップを含む。また、外角領域決定ステップは、外角領域内の画素値を第1の値、当該外角領域外の画素値を第2の値とした外角領域画像を生成する外角領域画像生成ステップを含む。また、比較検査ステップは、同一の座標軸上でマスタ画像と内角領域画像と外角領域画像とオブジェクト画像との位置合わせを行う位置合わせステップと、当該座標軸上において同じ位置となる検査対象位置の画素の画素値を各画像から取得する画素値取得ステップと、取得したオブジェクト画像の画素値が第1の値であり、取得したマスタ画像の画素値が第2の値であり、且つ、取得した内角領域画像の画素値が第1の値であるときは、当該検査対象位置のマスタ画像およびオブジェクト画像の画素値を同じ値として比較検査し、取得したオブジェクト画像の画素値が第2の値であり、取得したマスタ画像の画素値が第1の値であり、且つ、取得した外角領域画像の画素値が第1の値であるときは、当該検査対象位置のマスタ画像およびオブジェクト画像の画素値を同じ値として比較検査する。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、角検出ステップは、内角あるいは外角をそれぞれ示す1つの画素をマスタ画像から検出し、内角領域決定ステップは、検出した内角となる画素を中心とする所定の大きさの領域を内角領域として決定し、外角領域決定ステップは、検出した外角となる画素を中心とする所定の大きさの領域を外角領域として決定する。
【0011】
第4の発明は、上記第3の発明において、内角領域決定ステップは、検出された内角の画素に対して、膨張処理を予め定められた回数以上繰り返して実行することで内角領域を決定し、外角領域決定ステップは、検出された外角の画素に対して、膨張処理を予め定められた回数以上繰り返して実行することで外角領域を決定する。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明において、検出した内角あるいは外角に近接するパターンの直線部の幅を検出する幅検出ステップを更に有する。また、内角領域画像生成ステップは、検出された幅に応じて、膨張処理を繰り返す回数を変更し、外角領域画像生成ステップは、検出された幅に応じて、膨張処理を繰り返す回数を変更する。
【0013】
第6の発明は、上記第3の発明において、角検出ステップは、マスタ画像における注目画素の画素値と当該注目画素を基準に抽出する複数の画素の位置をそれぞれ示す複数のパターンを用いてマスタ画像から抽出された画素値と、所定の論理式とを用いて、当該注目画素が内角あるいは外角を示す1つの画素であることを検出する論理演算ステップを更に含む。また、論理演算ステップは、パターンのうち、いずれか1つのパターンを用いて抽出された画素値および注目画素の画素値が代入された所定の論理式の演算結果が内角あるいは外角であることを示したときは、当該注目画素を内角あるいは外角を示す1つの画素として検出する。
【0014】
第7の発明は、上記第3の発明において、角検出ステップは、マスタ画像における注目画素の画素値と当該注目画素を基準に抽出する複数の画素の位置をそれぞれ示す複数のパターンを用いてマスタ画像から抽出された画素値とを用いて、当該注目画素が内角あるいは外角を示す1つの画素であることを検出する論理演算ステップを更に含み、論理演算ステップは、注目画素の画素値がマスタ画像で示されるパターンの領域内を示し、当該注目画素の画素値が前記パターンの何れか1つを用いて抽出された画素値全てと異なるとき、当該注目画素が外角を示す1つの画素であるとして検出し、注目画素の画素値がマスタ画像で示されるパターンの領域外を示し、当該注目画素の画素値がパターンの何れか1つを用いて抽出された画素値全てと異なるとき、当該注目画素が内角を示す1つの画素であるとして検出する。
【0015】
第8の発明は、パターンが形成された被検査物を撮像したオブジェクト画像と当該パターンのマスタ画像とを比較して、当該被検査物を検査する差分比較検査装置であって、角検出部と、内角領域決定部と、外角領域決定部と、比較検査部とを備える。角検出部は、パターンに形成された凹状の隅である内角及び凸状の角である外角をそれぞれマスタ画像から検出する。内角領域決定部は、検出した内角近傍の領域である内角領域の範囲を決定する。外角領域決定部は、検出した外角近傍の領域である外角領域の範囲を決定する。比較検査部は、マスタ画像と前記オブジェクト画像との差分に基づいて比較検査する。また、比較検査部は、マスタ画像における内角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より過剰に形成されているオブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査する。また、比較検査部は、マスタ画像における外角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より不足して形成されているオブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査する。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、マスタ画像とオブジェクト画像で一致しない個所があっても、当該個所が内角あるいは外角であるかに応じて、比較検査の感度(検査精度)を変更できる。すなわち、オブジェクト画像の内角部分について、マスタ画像よりも過剰な部分があっても、当該部分については差分をとらず、その結果、当該部分について欠陥として報告されるという虚報を防ぐことができる一方、同じ内角部分であっても、本来欠陥として報告されるべき部分については、差分が取られ、欠陥として報告される。また、オブジェクト画像の外角部分について、マスタ画像に対して不足している部分があっても、当該部分については差分をとらず、その結果、当該部分について欠陥として報告される虚報を防ぐことができる。一方、同じく外角部分であっても、本来欠陥として報告されるべき部分については、差分が取られ、欠陥として報告される。これにより、雑多になりがちなプリントパターンの角部の形状に応じて、適切な欠陥検出が可能となる。また、従来のように、内角部および外角部周辺について、差分値が相対的に大きくても欠陥と判定されないように高い値を設定して検査を行う必要もない。すなわち、欠陥として報告される差分値の閾値を低下させることができる。そのため、差分値の閾値を低めに設定し、全体として高い感度の比較検査を行いつつも、アンダーエッチングやオーバーエッチングにような欠陥としては検出して欲しくない部分については、欠陥として検出されることを防ぐことができる。その結果、精度の高い比較検査が可能となる。
【0017】
上記第2の発明によれば、二値化した画像を用いるため、例えば0と1の組み合わせによる単純な論理判定処理を行うことができ、処理速度を高めることが可能となる。
【0018】
上記第3の発明によれば、検出された内角あるいは外角の画素を中心とする領域を内角領域あるいは外角領域とする。これにより、エッチングファクター等による内角や外角の様々な形状に対しても万能的に対応した比較検査を行うことができる。
【0019】
上記第4の発明によれば、検出された内角あるいは外角の画素を近傍膨張することで内角領域あるいは外角領域とする。これにより、ほぼ円状の領域が生成できるため、多彩な角や隅の形状に対応できる内角領域および外角領域を生成することができる。
【0020】
上記第5の発明によれば、検出した外角あるいは内角に近接しているパターンの直線部の幅に応じて、当該内角および外角の画素の膨張段数を変化させる。これにより、直線部の幅に応じた内角領域および外角領域を生成することができ、より適切で精度の高い比較検査が可能となる。
【0021】
上記第6乃至第7の発明によれば、所定のパターンおよび論理式を用いて内角あるいは外角を示す画素の検出を行う。そのため、マスタ画像の各画素について一律でかつ単純な判定処理を行うことで内角あるいは外角を検出することができ、処理の高速化および処理負荷を軽減を図ることができる。
【0022】
また、本発明の比較検査装置によれば、上述した第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る差分比較検査装置ついて、図面を参照して説明する。図1は、当該差分比較検査装置の一例である光学式外観検査装置1(以下、検査装置1と呼ぶ)の全体構成を模式的に示す図である。すなわち、図1(A)は検査装置1の上面図であり、図1(B)は検査装置1の正面図である。図1において、検査装置1は、ステージ部11、ステージ支持部12、ステージ駆動機構13、ベース部14、撮像カメラ15、支持部材16、カメラ支持部17、およびカメラ駆動機構18を備えている。
【0024】
ステージ部11は、最上面に水平のステージ面を構成している。被検査物であるプリント配線板Sは、ステージ部11のステージ面上に載置される。ステージ部11の下部は、ステージ支持部12によって支持されている。ステージ支持部12は、ステージ駆動機構13の上面に固設されている。また、ベース部14は、上記ステージ面と平行でかつ図示Y軸方向(主走査方向)に延設されて固定される。ステージ駆動機構13は、ベース部14の上面にY軸方向に延びるように設けられたガイド上に、当該ガイドに沿って滑動可能に設置される。つまり、ステージ駆動機構13、ならびにその上に固定されるステージ支持部12およびステージ部11は、Y軸方向に移動可能である。
【0025】
支持部材16は、ステージ部11の上部空間に架設されている。支持部材16上には、上記ステージ面と平行で、かつ上記Y軸方向に垂直な図示X軸方向(副走査方向)に延びるカメラ駆動機構18が設けられる。カメラ支持部17は、カメラ駆動機構18に接続され、X軸方向に沿って往復移動可能に配置される。撮像カメラ15は、その撮像方向が鉛直下向き(図示Z軸下方向)となるようにカメラ支持部17に支持されている。撮像カメラ15は、例えばCCDカメラにより構成され、入射する光をその色や強度を示す電気信号に変換して、撮像したプリント配線板Sの画像を生成する。
【0026】
検査装置1は、撮像カメラ15によってプリント配線板Sを撮像し、プリント配線板Sの上面の画像を取得する。このとき、プリント配線板Sの全面の画像を取得するために、検査装置1は、ステージ部11をY軸方向に移動させるとともに撮像カメラ15をX軸方向に移動させる。具体的には、撮像カメラ15のX軸方向の位置を固定した状態でステージ部11がY軸方向に移動されることによって主走査が行われる。ここで、基板Sの一端から他端までの主走査が完了する毎に、撮像カメラ15は副走査方向(X軸方向)に沿って所定距離だけ移動する。これによって、プリント配線板Sの検査領域全体についてのプリントパターンを含むプリント配線板Sの全面の画像を撮像カメラ15によって得ることが可能となる。
【0027】
図2は、検査装置1の機能的な構成を示すブロック図である。図2において、検査装置1は、上述した構成要素の他に、制御部21、オブジェクト画像生成部22、角領域画像生成部23、記憶部26、および比較検査部31を備えている。
【0028】
制御部21は、例えばCPUボードによって構成されている。制御部21は、以下に述べる各構成部と接続されている。また、制御部21は、記憶部26へのデータの入出力や撮像カメラ15の動作制御や各種画像処理等の、本実施形態に係る検査処理全体の制御を行う。
【0029】
オブジェクト画像生成部22は、撮像カメラ15が取り込んだ画像を2値化する。ここでは、撮像カメラ15が取り込んだ画像を構成する各画素のうち、所定の閾値より濃度が高い(濃い)画素を1とし、残りの画素を0として2値化するものとする。もちろん、所定の閾値より濃度が高い画素を0とし、残りの画素を1としても構わない。また、オブジェクト画像生成部22は、当該2値化した画像であるオブジェクト画像27を記憶部26へ格納する。
【0030】
角領域画像生成部23は、角検出部24および膨張部25を備えている。角検出部24は、記憶部26に格納されているマスタ画像28を読み込み、当該マスタ画像28から、内角および外角の位置をそれぞれ検出する。膨張部25は、角検出部24が検出した内角及び外角の位置に相当する上記マスタ画像上の1画素を、所定の段数だけ8近傍膨張(拡大)することで内角領域および外角領域を決定し、当該内角領域および外角領域をそれぞれ示す内角領域画像29および外角領域画像30を生成して、記憶部26に格納する。
【0031】
記憶部26は、例えば半導体メモリやハードディスク等の記憶媒体であり、上記オブジェクト画像27と、CADデータに基づいて予め作成されるマスタ画像28と、膨張部25によって生成される内角領域画像29および外角領域画像30(詳細は後述)とが格納される。また、図示しないが、後述する比較検査処理で用いられる各種フラグ等も記憶部26に記憶される。
【0032】
比較検査部31は、上記記憶部26に格納されている内角領域画像29および外角領域画像30を用いて、オブジェクト画像27とマスタ画像28との比較検査を行う。
【0033】
なお、図2に示す制御部21、オブジェクト画像生成部22、角領域画像生成部23、および比較検査部31は、典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。これらは、個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。また、集積回路化の手法は、LSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。
【0034】
次に、本実施形態における比較検査処理の概要について説明する。本実施形態では、基本的には、CADデータから生成された2値化画像であるマスタ画像28と、検査対象を撮像して、同様に2値化することで生成されたオブジェクト画像27とを比較することで比較検査処理が行われる。なお、ここでは、説明を具体的にするために、プリントパターン領域内となる部分を1(ドット有り)、領域外となる部分を0(ドット無し)とする。
【0035】
図3(A)は、マスタ画像28の一例を示す図であり、図4はオブジェクト画像27の一例を示す図である。この2つの画像を単純に比較すると、図4のオブジェクト画像27において、アンダーエッチング部分41(マスタ画像28が示すパターン領域より過剰に形成されている領域)およびオーバーエッチング部分42(マスタ画像28が示すパターン領域より不足して形成されている領域)については、マスタ画像28と一致しない。
【0036】
そのため、比較検査を行う前に、内角と外角とを識別するための画像データ、すなわち、内角領域画像29および外角領域画像30を生成する。具体的には、マスタ画像28から、後述のような方法でパターンに形成された凹状の隅である内角(図3(A)の菱形印)および凸状の角である外角(図3(A)の星印)を示す1画素をそれぞれ検出する。次に、当該検出した1画素を所定の段数だけ8近傍膨張する。すなわち、検出された1画素を当該1画素を中心とした複数画素に拡大することで、当該検出された1画素の近傍領域を内角領域あるいは外角領域として生成する。そして、図3(B)に示すような、検出された内角の1画素を拡大した内角領域を1とし、その他の領域を0とする画像データ29を生成する(これが、内角領域画像29となる)。併せて、図3(C)に示すような、検出された外角の1画素を拡大した外角領域を1とし、その他の領域を0とする画像データ30も生成する(これが、外角領域画像30となる)。なお、図3(A)〜図3(C)においては、1(ドットあり)を黒色領域で示し、0(ドット無し)を白色領域で示している。そして、マスタ画像28とオブジェクト画像27とを比較検査する際に、例えば、ある画素を比較したときに、マスタ画像28とオブジェクト画像27とで差異があったときは、上記内角領域画像29および外角領域画像30を参照し、当該差異のある画素が内角領域あるいは外角領域に含まれているかを判定する。その結果、内角領域に含まれている場合は、当該画素が、アンダーエッチング部分(過剰に形成されている領域)であれば、当該画素についての差分は取らないが、当該画素がオーバーエッチング部分(不足して形成されている領域)であれば、差分を取る。一方、外角領域に含まれている場合は、当該画素が、当該画素がオーバーエッチング部分であれば、差分を取らないが、アンダーエッチング部分であれば、当該画素についての差分は取る。そして、最終的な差分値が所定の許容値を超えていれば、欠陥があると判定するものである。
【0037】
図5は、本実施形態における比較検査の原理を示す図である。図5において、検査対象画素値51は、検査対象画素についてのマスタ画像28およびオブジェクト画像27の画素値を示す。当該画素値は、0が画素のないことを示し、1は画素があることを示す。差分の有無52は、当該画素にかかるマスタ画像28とオブジェクト画像27との差分の有無を示す。0は差分がないことを示し、1は差分があることを示す。
【0038】
図5において、例えば、所定の画素の画素値について、マスタ画像28およびオブジェクト画像27が共に0である場合は、外角領域、内角領域、および通常領域全てに対して差分がない(0)と判定される。マスタ画像28およびオブジェクト画像27が共に1である場合も、同様に、全てに対して差分がない(0)と判定される。
【0039】
一方、検査対象の画素にかかるマスタ画像28の画素値が0でオブジェクト画像27の画素値が1の場合は、当該画素が外角領域および通常領域にあるときは差分がある(1)と判定される。しかし、当該画素が内角領域にあるときは、差分がない(0)と判定される。つまり、図4に示したアンダーエッチング部分41については、差分があるとは判定しない。一方、当該画素が内角領域に含まれていても、マスタ画像28の画素値が1でオブジェクト画像27の画素値が0の場合、すなわち、内角領域におけるオーバーエッチング部分については、差分があると判定される。
【0040】
また、検査対象の画素にかかるマスタ画像28の画素値が1でオブジェクト画像27の画素値が0の場合は、当該画素が内角領域および通常領域にあるときは差分がある(1)と判定される。しかし、当該画素が外角領域にあるときは、差分がない(0)と判定される。つまり、図4に示したオーバーエッチング部分42については、差分があるとは判定しない。一方、当該画素が外角領域に含まれていても、マスタ画像28の画素値が0でオブジェクト画像27の画素値が1の場合、すなわち、外角領域におけるアンダーエッチング部分については、差分があると判定される。このように、本実施形態では、マスタとオブジェクトとで差異がある部分につき、当該差異のある部分が内角領域か外角領域か通常領域かに応じて、差分検出の判定基準を変化させる。
【0041】
以下、図6〜図20を用いて、検査装置1が行う比較検査処理の詳細動作を説明する。まず、比較検査処理に先立って、上述した比較検査に用いる各種画像を準備するための準備処理が行われる。図6は、当該準備処理の詳細を示すフローチャートである。
【0042】
図6において、まず、内角領域画像29を生成するための内角領域画像生成処理(ステップS1)が行われる。続いて、外角領域画像30を生成するための外角領域画像生成処理(ステップS2)が行われる。なお、これらの処理を行う順序は逆でもいいし、並行に行ってもかまわない。ここで、本実施形態における内角とは、例えば、図7に示すような、プリントパターンに形成された凹状の隅となる部分であって、プリントパターンの領域外に位置する隅の1画素を内角ポイントと呼ぶ(図7の菱形印の画素)。また、外角は、図7に示すような、プリントパターンに形成された凸状の角となる部分であって、プリントパターンの領域内に位置する角の1画素を外角ポイントと呼ぶ(図7の星印の画素)。
【0043】
図8は、上記ステップS1で示した内角領域画像生成処理の詳細を示すサブルーチンである。図8において、まず、制御部21は、予め生成され記憶部26に格納されているているマスタ画像28を角検出部24に読み込ませる(ステップS11)。
【0044】
続いて、角検出部24は、読み込んだマスタ画像28から、上記内角ポイントを検出する(ステップS12)。このステップS12の処理を、より具体的に説明すると、まず、角検出部24は、マスタ画像28の各画素から、内角ポイントであるか否かの判定対象となる1画素(以下、注目画素と呼ぶ)を決定する。そして、当該注目画素およびその周辺の所定の画素の画素値(1か0か)に基づいて、次に説明するような論理演算を行うことで、注目画素が内角ポイントであるか否かを判定する。図9は、当該内角ポイント検出のために用いられる、上記注目画素とその周辺の所定の画素との組み合わせパターン91を示す図である。図9では内角ポイントを検出するために用いる画素を、注目画素Oと、その周辺の所定の画素A、B、およびCとによって示しており、それらの組み合わせが合計8個のパターン91として用意されている。そして、各パターン91が示す注目画素Oと、その周辺の所定の画素A、B、およびCとの画素値を用いて、以下のような論理演算を行う。
On=!O&A&B&C
なお、上記数式おける!は反転、&は論理積を示している。また、1は画素有り、0は画素無しを示す。そして、上記の演算を図9に示す全てのパターン91について行い、いずれか1つでも、On=1となれば、上記注目画素Pは内角ポイントであるとする。そして、マスタ画像28の全ての画素を順に注目画素に設定しながら、このような論理演算を行っていくことで、マスタ画像28における内角ポイントを検出する。
【0045】
内角ポイントが検出できれば、次に、膨張部25は、当該内角ポイントを所定の段数、8近傍膨張(拡大)する(ステップS13)。これは、検出した全ての内角ポイントそれぞれに対して行う。また、ここでは、8近傍膨張の段数は1段であるとして、以下説明を続ける。
【0046】
続いて、膨張部25は、上記8近傍膨張した内角ポイントを内角領域として決定し、上記図3(B)に示したような内角領域画像29として、記憶部26に保存する(ステップS14)。なお、内角領域画像29は、マスタ画像28における内角の位置を示すためのものであるため、その画像サイズはマスタ画像28のサイズと一致するものが好ましい(これは、後述の外角領域画像30についても同様である)。以上で、内角領域画像生成処理が終了する。これによって生成された内角領域画像29(図3(B))において、画素値が1の領域は内角領域を示し、0の領域は内角領域ではない領域であることが示される。換言すれば、内角領域画像29は、内角領域であるか否かを2値で表した画像である。また、近傍膨張を行っているため、内角領域が円に近い形の領域となる。これにより、エッチングファクターにより様々な形状で形成される角のどんな形状にも万能的に対応できる。
【0047】
上記内角領域画像生成処理の次または並行して、外角領域画像生成処理が行われる。図10は、上記ステップS2で示した外角領域画像生成処理の詳細を示すフローチャートである。図10において、まず、制御部21は、予め生成され記憶部26に格納されているているマスタ画像28を角検出部24に読み込ませる(ステップS21)。続いて、角検出部24は、読み込んだマスタ画像28から、上記外角ポイントを検出する(ステップS22)。このステップS22の処理を、より具体的に説明すると、まず、角検出部24は、マスタ画像28の各画素から、上記注目画素を決定する。そして、上記図9に示した各パターン91が示す注目画素Oと、その周辺の所定の画素A、B、およびCとの画素値を用いて、以下のような論理演算を行う。
Og=O&!A&!B&!C
そして、上記の演算を図9に示す全てのパターン91について行い、いずれか1つでも、Og=1になれば、注目画素Oは外角ポイントであると判定する。そして、マスタ画像28の全ての画素を順に注目画素に設定しながら、このような論理演算を行っていくことで、マスタ画像28における外角ポイントを検出する。
【0048】
外角ポイントが検出できれば、次に、膨張部25は、当該外角ポイントを所定の段数、8近傍膨張(拡大)する(ステップS23)。これは、検出した全ての外角ポイントそれぞれに対して行う。ここでは、上記ステップS12と同様に、8近傍膨張の段数は1段であるとする。
【0049】
続いて、膨張部25は、上記8近傍膨張した外角ポイントを外角領域として決定し、上記図3(C)に示したような外角領域画像30として、記憶部26に保存する(ステップS24)。以上で、外角領域画像生成処理が終了する。これによって生成された外角領域画像30(図3(C))において、画素値が1の領域は外角領域を示し、0の領域は外角領域ではない領域であることが示される。換言すれば、外角領域画像30は、外角領域であるか否かを2値で表した画像である。
【0050】
上述したような準備処理で内角領域画像29および外角領域画像30が生成された後、撮像カメラ15で、検査対象となるプリントパターンを含む画像が撮像される。そして、当該撮像した画像を2値化したオブジェクト画像27がオブジェクト画像生成部22で生成された後、当該オブジェクト画像27とマスタ画像28とを比較する比較検査処理が行われる。本処理の詳細を説明する前に、処理概要について図11を用いて説明する。
【0051】
本処理では、オブジェクト画像27とマスタ画像28とを比較する際、図11(A)に示すように、両画像を所定の大きさのブロックに区切り、これらのブロックを単位として両画像を比較検査する。当該ブロック単位における処理では、図11(B)および(C)に示すような、例えば5×5ピクセルの「検査ウィンドウ」と呼ばれるウィンドウを当該ブロックの左上から順に走査していく。そして、この検査ウィンドウ内における画素を比較して、その差分をとっていく。そして、当該差分値が予め設定されている許容値を越えれば、その時点で当該ブロックには欠陥があると判定する。
【0052】
続いて、検査装置1が行う比較検査処理の詳細を説明する。図12は、検査装置1が行う比較検査処理の詳細を示すフローチャートである。図12において、まず、制御部21は、比較検査部31に上記オブジェクト画像27、マスタ画像28、内角領域画像29、および外角領域画像30を読み込ませる(ステップS31)。次に、読み込んだ各画像を、所定の大きさのブロックに細分化する(ステップS32;図11参照)。このステップS32の処理をより具体的に説明すると、まず、比較検査部31は、各画像に対して、基準点となる座標をそれぞれ決定する。例えば、比較検査部31は、各画像の左上端の座標(0,0)を基準点とする。そして、オブジェクト画像27、マスタ画像28、内角領域画像29、および外角領域画像30の基準点を合わせることで、位置合わせを行う(つまり、各画像の左上端を揃える)。そして、当該基準点から、右下方向に向かって、図11(A)に示したような所定の大きさのブロックで上記画像を細分化する(より正確には、各ブロックの境界となる座標値を記憶部26に記憶しておく)。ここでは、図11(A)に示したように、各画像を6×6のブロックに分割するものとする。なお、図示しないが、内角領域画像29および、外角領域画像30についても同じように6×6のブロックで細分化されている。また、1つのブロックの大きさは、例えば320×256ピクセルである。
【0053】
次に、制御部21は、各ブロックを識別するための変数となる変数nを1にする(ステップS33)。本実施形態では、各画像を6×6のブロックに細分化しているため、変数nは、1〜36の範囲内の値となる。つまり、変数nは、細分化したブロックの番号を示している。図11(A)を例にとると、左上のブロックが1番目のブロック(n=1)となり、右方向に向かってn=2、3・・・と増えていき、右下隅のブロックがn=36のブロックになる。
【0054】
次に、n番目のブロックについて、オブジェクト画像27とマスタ画像28との比較検査を行う、ブロック検査処理が行われる(ステップS34)。図13は、上記ステップS34で示したブロック検査処理の詳細を示すフローチャートである。
【0055】
図13において、まず、「ゆすらせ処理」を行うためのゆすらせ基準位置Δを座標(0,0)に設定する(ステップS41)。
【0056】
ここで、上記「ゆすらせ処理」について説明する。一般的に、プリント基板は、薄板部材で構成されるために「反り」が生じることがある。そのため、検査対象となるプリント基板に形成されたプリントパターンにも微妙な「歪み」が生じる。このような「歪み」がある場合は、上述のようにマスタ画像とオブジェクト画像との位置を同一の基準点で合わせたとしても、「歪み」のために微妙にずれる個所が発生することがある。このような状況を考慮して、上記ブロック単位の画像でオブジェクト画像27とマスタ画像28とを比較検査する際に、n番目のブロックのマスタ画像サイズを、同じn番目のブロックのオブジェクト画像より少し大きいサイズに設定し、オブジェクト画像27より少し広い範囲のマスタ画像28を切り出して比較検査する。
【0057】
図14を用いて具体的に説明すると、上記オブジェクト画像27から、例えば320×256ピクセルの画像(図14(A))を1ブロックとして切り出す。これに対して、上下左右それぞれ例えば5ピクセルずつ大きい(つまり、上下方向および左右方向がそれぞれ合計10ピクセル大きい)、330×266ピクセルの画像(図14(B))を1ブロックとしてマスタ画像28から切り出す。そして、当該切り出したオブジェクト画像27を切り出し後のマスタ画像28に重ね、この10ピクセルの差について、1ピクセルごとにずらしながら比較検査を行う(このように画像を少しずつ動かすことを「ゆすらせ」と呼ぶ)。
【0058】
図15は、上記「ゆすらせ処理」を模式的に示す図である。上述のように、オブジェクト画像27に「歪み」が存在している場合、上記ステップS32における位置合わせだけだと、マスタ画像28とオブジェクト画像27とは完全に一致せず、微妙なズレが生じる。そのため、少し大きめのマスタ画像28の中でオブジェクト画像27をずらしながら比較することで、両者の微妙なズレを埋めていく。そして、このようにオブジェクト画像27をずらしながら比較検査し、両者の差分値が一度でも許容値内に収まれば、「欠陥無し」とし、一度も許容値内に収まらなければ、「欠陥有り」と判定するものである。
【0059】
そして、上記基準位置Δは、このマスタ画像28に対してのオブジェクト画像27の位置を決めるためのものである。図15においては、まず、比較検査部31は、基準位置Δ=(0,0)として比較検査を行う(図15(A))。この時点では、両画像は全く一致していないため、両者の差分値は許容値を超え、その結果「欠陥有り」という判定になる。次に、オブジェクト画像27をX方向に+1移動させた、基準位置Δ=(1,0)の位置で比較検査を行う(図15(B))。この時点でもまだ両画像は一致していないため「欠陥有り」と判定される。このようにオブジェクト画像27をマスタ画像28のサイズの範囲内でずらしてながら比較していく。その結果、基準位置Δ=(1,1)のとき、図15(C)に示すように、両画像の位置がほぼ一致すると、両者の差分値は許容値以下に収まることになる。そのため、当該ブロックについては、「欠陥無し」と判定される(なお、一度「欠陥無し」と判定されれば、当該ブロックの検査についてはそこで終了する)。
【0060】
図13に戻り、ステップS41の次に、比較検査部31は、n番目のブロックの画像を、上記オブジェクト画像27、マスタ画像28、内角領域画像29、および外角領域画像30からそれぞれ切り出す(ステップS42)。このステップS42の処理をより具体的に説明すると、まず、比較検査部31は、上記オブジェクト画像27から、n番目のブロックの画像を切り出す。以下、当該画像をデータDと呼ぶ。このデータDの画像サイズは、上述のブロックの大きさと同じ、例えば320×256ピクセルとなる。続いて、比較検査部31は、マスタ画像28、内角領域画像29、および外角領域画像30からn番目のブロックの画像を切り出す。以下、マスタ画像28から切り出した画像をデータM、内角領域画像29から切り出した画像をデータA、外角領域画像30から切り出した画像をデータBと呼ぶ。これらデータM、A、Bの画像サイズは、上述した「ゆすらせ」を行うために、上記ブロックの上下左右の4方向それぞれについて5ピクセル大きくした、例えば330×266ピクセルのサイズで切り出される。
【0061】
次に、比較検査部31は、オブジェクト画像27とマスタ画像28との差分量SAを0にする。併せて、図11(C)を用いて説明した検査ウィンドウ内で検査対象となる画素(以下、検査ポイントと呼ぶ)の位置を示す変数P1を(0,0)にする。また、上記「ゆすらせ処理」によるデータD(オブジェクト画像27)のずらし量を考慮した変数P2を(0,0)にする(ステップS43)。続いて、比較検査部31は、上記データD等の画像を上記検査ウィンドウを用いて検査するための、ウィンドウ検査処理を行う(ステップS44)。
【0062】
図16は、上記ステップS44で示したウィンドウ検査処理の詳細を示すフローチャートである。本処理では、「検査ウィンドウ」内の各画素(5×5=25画素)について順に比較検査する。まず、比較検査部31は、検査対象となる画素を取得する(ステップS61)。具体的には、検査ウィンドウをデータDにセットし(最初は左上端を基準に位置が合わせられる)、変数P1で示される検査ウィンドウ内の座標に対応するデータDの座標の画素値を取得する。併せて、検査ウィンドウをデータM、データA,およびデータBにセットし(最初は左上端を基準に位置が合わせられる)、変数P1で示される検査ウィンドウ内の座標に基準位置Δを加えた座標(変数P2の示す座標)に対応する、当該データM、データA、およびデータB上の座標の画素値(0か1)をそれぞれ取得する。以下、データMから取得した画素値を画素値[m]、データAから取得した画素値を画素値[a]、データBから取得した画素値を画素値[b]、データDから取得した画素値を画素値[d]と呼ぶ。
【0063】
次に、比較検査部31は、ステップS61で取得した画素値について、以下の論理演算を行う(ステップS62)。
S=(!m&d&!a)#(m&!d&!b) …(1)
上記数式(1)において、!は反転、&は論理積、#は論理和を示す。また、演算優先順位は、高いものから、「!→&→#→=」である。また、S=1で差分あり、S=0で差分なしを示す。
【0064】
上記論理演算について、図17を用いて補足説明する。図17は、図3(A)の外角(星印)部分の比較検査の例を説明するための図である。図17においては、基準位置Δ=(0,0)であり、検査ポイントは、変数P1=(2,2)の位置(つまり、3行3列目の位置にある画素)である。そして、当該検査ポイントに対応するデータM(マスタ画像28)の画素は1(画素あり)であるが、データD(オブジェクト画像27)の画素では0(画素無し)になっている。このような場合、データMとデータDとの比較のみを行うと、両者が一致していない(差分あり)と判定される。しかし、本実施形態によれば、データB(外角領域画像30)で1(画素あり)であるため差分なしと判定する。つまり、内角領域画像29と外角領域画像30とを併用して、それらが示す領域に応じて判定基準を変化させている。
【0065】
図17の場合、変数P1=(2,2)および変数P2=(2,2)の位置においては、画素値[m]=1、画素値[a]=0、画素値[b]=1、画素値[d]=0となる。これらの値で上述した数式(1)を用いて演算すると、S=0、すなわち差分なしと判定される。また、図17において、上記検査ポイントの右下の画素(つまり、変数P1=(3,3)および変数P2=(3,3)の位置であり、4行4列目の位置にある画素)については、画素値[m]=1、画素値[a]=0、画素値[b]=1、画素値[d]=1となり、S=0となる。また、上記検査ポイントの左上の画素(つまり、変数P1=(1,1)および変数P2=(1,1)の位置であり、2行2列目の位置にある画素)については、画素値[m]=0、画素値[a]=0、画素値[b]=1、画素値[d]=0となり、上記論理演算の結果、S=0となる。
【0066】
一方、仮に、図17のデータD(オブジェクト画像)において、変数P1=(1,1)の位置における画素値[d]=1であるとする。すなわち、外角においてアンダーエッチングとなっており、欠陥として検出されるべき状態である場合を想定する。この場合、変数P1=(1,1)および変数P2=(1,1)の位置においては、画素値[m]=0、画素値[a]=0、画素値[b]=1、画素値[d]=1となる。その結果、上記論理演算によって、S=1、すなわち、差分ありと判定される。また、仮に、図17のデータD(オブジェクト画像)において、変数P1=(4,4)の位置における画素値[d]=0であるとする。すなわち、外角におけるオーバーエッチングが許容範囲を超えてしまっており、欠陥として検出されるべき状態である場合を想定する。この場合、変数P1=(4,4)および変数P2=(4,4)の位置においては、画素値[m]=1、画素値[a]=0、画素値[b]=0、画素値[d]=0となる。その結果、上記論理演算によって、S=1、すなわち、差分ありと判定される。つまり、許容値を超えるようなオーバーエッチングやアンダーエッチング等、本来欠陥として検出されるべきものは検出される。
【0067】
このように、マスタ画像28とオブジェクト画像27について差異がある個所について、図5に示した表のように、マスタ画像28とオブジェクト画像27との画素値0および1の組み合わせと、上記内角領域画像29および外角領域画像30とを用いることにより、内角部のアンダーエッチングや外角のオーバーエッチングの状態に応じて、差分を取らないようにすることができる。その結果、欠陥として検出して欲しくないような個所についての虚報を減らすことが可能となる。また、差分の有無判定の許容値についても、従来のように、内角部および外角部周辺について、差分値が相対的に大きくても欠陥と判定されないように高い値を設定して検査を行う必要もない。そのため、比較検査の感度を高めたまま、許容範囲内のアンダーエッチングやオーバーエッチングについては欠陥として検出されない、精度の高い比較検査が可能となる。
【0068】
図16に戻り、ステップS62の処理の次に、比較検査部31は、上記数式(1)の演算結果Sが1か否かを判定する(ステップS63)。その結果、S=1、すなわち差分があった場合(ステップS63でYES)は、SAに1を加算し(ステップS64)、処理を次のステップS65に進める。一方、S=0であれば(ステップS63でNO)、そのままステップS65に進む。
【0069】
次に、比較検査部31は、検査ウィンドウ内の検査ポイントを移動する(ステップS65)。すなわち、変数P1に所定値を加える。例えば、検査ポイントを1画素だけ右方向に移動させたい場合は、(+1,0)を変数P1に加える。また、変数P2についても、(+1,0)を加える。
【0070】
次に、比較検査部31は、検査ウィンドウ内の全ての画素をついて上記論理演算による比較検査を行ったか否か判定する(ステップS66)。具体的には、検査ウィンドウは5×5ピクセルであることから、検査ポイントを25回以上移動したか否かを判定する。その結果、検査ウィンドウ内の全画素について検査が済んでいない場合は(ステップS66でNO)、比較検査部31は、上記ステップS61に戻って処理を繰り返す。一方、全画素について検査が済んだ場合は(ステップS66でYES)、比較検査部31は、当該ウィンドウ検査処理を終了する。
【0071】
図13に戻り、次に、比較検査部31は、差分量SAが予め指定されている所定の許容値を超えたか否かを判定する(ステップS45)。つまり、上記検査ウインドウ内で検出された差分が当該許容値を超えたか否かが判断される。その結果、許容値を超えていない場合は(ステップS45でNO)、比較検査部31は、検査ウィンドウを1画素だけ移動させる(ステップS46)。移動させる方向については、最初は上記ブロック内の左上端にあるとして、そこから右方向に1画素ずつ移動していく。そして検査ウィンドウが当該ブロックの右端にきたら、1画素下に移動させ、今度は左方向に向かって移動させる。そして、左端に検査ウィンドウが来たら、1画素下に移動し、右方向へ移動させていく。この動きを、検査ウインドウが右下端に行くまで繰り返す。
【0072】
続いて、比較検査部31は、検査ウィンドウがブロック内の領域全てに移動したか、すなわち、当該ブロック内の領域を全て検査したか否かを判定する(ステップS47)。その結果、まだブロック内を全て検査し終わっていない場合は、比較検査部31は、上記ステップS43に戻って処理を繰り返す。一方、ブロック内の領域を全て検査した場合は、比較検査部31は、当該n番目のブロックには欠陥無しと判定し、nブロック目の検査結果を「欠陥なし」として記憶部26に記憶し(ステップS48)、当該ブロック検査処理を終了する。
【0073】
一方、上記ステップS45の判定の結果、差分量SAが許容値を超えている場合は(ステップS45でYES)、上述したように、データD(n番目のブロックのオブジェクト画像)の位置をマスタ画像上で「ゆすらせ」て再度比較検査する「ゆすらせ処理」を行うために、比較検査部31は、基準位置Δに所定値を加算する(ステップS39)。この所定値は、データDがデータM上を一通り巡回するような値である。例えば、上述した検査ウィンドウと同様に、左上から右下に向かって移動していうような値を加算してもよいし、また、最初はΔをデータMの中心になるようにして、(+1、0)、次に(0、+1)、次に(−1、0)、次に(0、−1)、というように、データDが渦巻状に移動するような値を加算しても良い。
【0074】
次に、比較検査部31は、Δに所定値を加算した結果、データDの位置(例えば四隅のいずれか一端)がデータMのサイズ(330×266ピクセル)の範囲外に来たか否かを判定する(ステップS50)。その結果、範囲外にきた場合は(ステップS50でYES)、ゆすらせた結果、欠陥が無かった位置(両画像が一致した位置)がなかったということになる。そのため、比較検査部31は、当該ブロックについては欠陥有りと判定し、nブロック目の検査結果として、記憶部26に記憶しておく(ステップS51)。以上で、ブロック検査処理が終了する。
【0075】
図12に戻り、ブロック検査処理が終了すれば、次のブロックを検査するために、比較検査部31は、nに1を加算する(ステップS35)。続いて、比較検査部31は、全ブロックを検査したか否かを判定する(ステップS36)。その結果、まだ検査していないブロックが残っている場合は(ステップS36でNO)、制御部21は、上記ステップS34に戻って処理を繰り返す。一方、全ブロックを検査した場合は(ステップS36でYES)、比較検査部31は、当該比較検査処理を終了する。以上で、本実施形態にかかる比較検査処理は終了する。
【0076】
このように、本実施形態では、オブジェクト画像とマスタ画像28とを比較検査する際に、差異がある部分について、そこが外角であるか内角であるかに応じて差分判定の判定基準を変化させる。すなわち、外角におけるオーバーエッチングについては差分は取らないが、アンダーエッチングについては差分をとる。また、内角におけるオーバーエッチングについては差分は取るが、アンダーエッチングについては差分をとらない。そのため、角部や隅部において、オブジェクト画像27とマスタ画像28で差分がある個所について、欠陥として判定して欲しくないような差分のみを除外することができる。これにより、精度の高い比較検査が可能となる。また、従来のように、マスタ画像28に対して、内角部の肉付けや外角部の角落としをする等の加工を行う必要もない。そのため、マスタ画像28の加工のための回路を設ける必要もなく、回路規模を縮小してコストダウンを図ることができる。また、差分判定のための許容値について、従来のように内角部および外角部用の許容値と、それ以外の部分用の許容値との2種類を準備する必要がなくなる。そのため、許容値判定のための回路も1つだけですみ、回路規模を縮小してコストダウンを図ることができる。また、従来のように内角や外角についての虚報(オーバーエッチング等を欠陥と判定すること)がなく、許容値を低めに設定することができる(すなわち、検査精度を上げる)ため、より信頼性の高い比較検査が可能となる。したがって、検査精度を下げることによって見逃していたパターン欠陥を検出することができる。また、本実施形態では、内角あるいは外角を近傍膨張して円に近い形の領域を作成している。これにより、例えば、予め四角い領域パターンを準備して内角・外角領域として一律に当てはめるような方法に比べ、エッチングファクターにより様々な形状で形成される角や隅のどんな形状にも万能的に対応できる。
【0077】
なお、上述の実施形態では、準備処理における角検出処理(図8のステップS12、図10のステップS22)において、図9に示したような8つのパターン91を用いて内角あるいは外角を検出していた。これに限らず、更に多くのパターンを用いても良い。例えば、上述の8つのパターン91を用いた検出は、「低感度検出」である。これに対して、図18に示すような16個のパターン92を用いた検出は、「中感度検出」となる。さらに、図19に示すような24個のパターン93を用いた検出は、「高感度検出」となる。いずれも、上述したように、パターン92または93における注目画素Oと、その周辺の所定の画素A、B、C(パターン93においては、周辺の所定の画素Dも用いる)との画素値を用いて、上述したステップS12およびS22のような論理演算を行う。
【0078】
これら「中感度検出」および「高感度検出」は、以下のような場合に用いることが考えられる。例えば、図20(A)に示すような斜めに形成された直線のパターンは、CADデータからマスタ画像28を生成する際に、パターンが伸張されるため、図20(B)に示すように一部に段差が生じることがある。つまり、現実には直線であっても、マスタ画像28に対する画像処理によって段差が形成されてしまうことがある。このような段差の部分は、検査精度を上げた場合にオブジェクト画像27との間で差異となるが、欠陥ではない。しかしながら、このような段差は「低感度検出」では、角や隅として検出できないため、欠陥として判定されることがある。そのため、このような画像処理によって生じるような微小な段差(例えば、「低感度検出」では十分な検査ができない個所や「低感度検出」では虚報となる個所)は、適宜、「中感度検出」や「高感度検出」を用いて内角領域または外角領域として設定するようにする。これにより、上記のような斜め線等に生じる微小な段差についても「内角」または「外角」として検出することができる。その結果、微小な段差についても欠陥の判定基準を変化させることができ、欠陥として判定されない。そのため、許容値を上げることが不要となり、精度の高い比較検査が可能となる。
【0079】
更に、上記角検出部24が検出した内角あるいは外角に近接する上記プリントパターンの直線部の幅に応じて、上記ステップS13やステップS13における8近傍膨張の段数を変化させてもよい。例えば、上記直線部の幅についての情報を予めCADデータから取得しておき、当該幅が細い場合は膨張する段数を少なめに、太い場合は膨張する段数を多めに決定するようにしてもよい。なお、上記近傍膨張について、8近傍膨張だけでなく4近傍膨張を用いても良いし、この2つを組み合わせて用いても良いことはいうまでもない。
【0080】
また、上記ステップS32において、オブジェクト画像27等をブロックに区切る際に、1つのブロック範囲が他のブロック範囲と重なるように区切ってもよい。例えば、上述のように1つのブロックのサイズを320×256とした場合、最初のブロックの位置については、左端上の座標(0,0)を、マスタ画像28等の座標(0,0)に合わせるが、2つ目のブロックの位置については、マスタ画像28等の(300、0)に合わせるようにする。このように、ブロックの一部を重複させるようにして、各ブロック単位で比較検査を行うことで、ブロックの端部にあるパターンについても正確に検査をすることができる。その結果、上記「ゆすらせ」と併用することで、より一層正確な比較検査を行うことができる。
【0081】
また、被検査物について、上述した実施形態ではプリント配線板を被検査物としていた。これに限らず、半導体ウェハや液晶基板等、また、これらを作成するためのマスクフィルムや印刷版等を被検査物としてもよい。
【0082】
また、上述した実施形態においては、オブジェクト画像27やマスタ画像28等の二値化した画像を用いて比較検査を行っていた。このような二値化画像に限らず、二値以上の値で構成される画像を用いて比較検査を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかる差分比較検査方法および差分比較検査装置は、基板上に形成されたパターンについて適切な比較検査ができ、基板検査装置等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る光学式検査装置の全体構成を模式的に示す図
【図2】本発明の実施形態に係る光学式検査装置を示す機能ブロック図
【図3】マスタ画像28の一例を示す図
【図4】オブジェクト画像27の一例を示す図
【図5】本実施形態における比較検査の原理を示す図
【図6】準備処理の詳細を示すフローチャート
【図7】内角・外角を説明するための図
【図8】図6のステップS1で示した内角領域画像生成処理の詳細を示すフローチャート
【図9】角検出のための、注目画素とその周辺の所定の画素との組み合わせパターンを示す図
【図10】図6のステップS2で示した外角領域画像生成処理の詳細を示すフローチャート
【図11】画像のブロックによる細分化の一例を示す図
【図12】比較検査処理の詳細を示すフローチャート
【図13】図12のステップS34で示したブロック検査処理の詳細を示すフローチャート
【図14】「ゆすらせ」を説明するための図
【図15】「ゆすらせ」を説明するための図
【図16】図13のステップS44で示したウィンドウ検査処理の詳細を示すフローチャート
【図17】本実施形態における比較検査について説明するための図
【図18】中感度の角検出パターンの一例を示す図
【図19】高感度の角検出パターンの一例を示す図
【図20】斜め線の段差について説明するための図
【図21】従来の比較検査法を説明するための図
【図22】オーバーエッチングおよびアンダーエッチングの一例を示す図
【符号の説明】
【0085】
1 光学式外観検査装置
11 ステージ部
12 ステージ支持部
13 ステージ駆動機構
14 ベース部
15 撮像カメラ
16 支持部材
17 カメラ支持部
18 カメラ駆動機構
21 制御部
22 オブジェクト画像生成部
23 角領域画像生成部
24 角検出部
25 膨張部
26 記憶部
27 オブジェクト画像
28 マスタ画像
29 内角領域画像
30 外角領域画像
31 比較検査部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された被検査物を撮像したオブジェクト画像と当該パターンのマスタ画像とを比較して、当該被検査物を検査する差分比較検査方法であって、
前記パターンに形成された凹状の隅である内角及び凸状の角である外角をそれぞれ前記マスタ画像から検出する角検出ステップと、
前記検出した内角近傍の領域である内角領域の範囲を決定する内角領域決定ステップと、
前記検出した外角近傍の領域である外角領域の範囲を決定する外角領域決定ステップと、
前記マスタ画像と前記オブジェクト画像との差分に基づいて比較検査する比較検査ステップとを有し、
前記比較検査ステップは、
前記マスタ画像における前記内角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より過剰に形成されている前記オブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査し、
前記マスタ画像における前記外角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より不足して形成されている前記オブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査する、差分比較検査方法。
【請求項2】
前記オブジェクト画像および前記マスタ画像は、それぞれ前記パターンが形成された領域の画素値を第1の値、それ以外の画素値を当該第1の値とは異なる第2の値とする二値化された画像であり、
前記内角領域決定ステップは、前記内角領域内の画素値を前記第1の値、当該内角領域外の画素値を前記第2の値とした内角領域画像を生成する内角領域画像生成ステップを更に含み、
前記外角領域決定ステップは、前記外角領域内の画素値を前記第1の値、当該外角領域外の画素値を前記第2の値とした外角領域画像を生成する外角領域画像生成ステップを更に含み
前記比較検査ステップは、
同一の座標軸上で前記マスタ画像と前記内角領域画像と前記外角領域画像と前記オブジェクト画像との位置合わせを行う位置合わせステップと、
前記座標軸上において同じ位置となる検査対象位置の画素の画素値を前記各画像から取得する画素値取得ステップと、
前記取得したオブジェクト画像の画素値が前記第1の値であり、前記取得したマスタ画像の画素値が前記第2の値であり、且つ、前記取得した内角領域画像の画素値が前記第1の値であるときは、当該検査対象位置の前記マスタ画像およびオブジェクト画像の画素値を同じ値として比較検査し、
前記取得したオブジェクト画像の画素値が前記第2の値であり、前記取得したマスタ画像の画素値が前記第1の値であり、且つ、前記取得した外角領域画像の画素値が前記第1の値であるときは、当該検査対象位置の前記マスタ画像およびオブジェクト画像の画素値を同じ値として比較検査する、画素値判定ステップを更に含む、請求項1に記載の差分比較検査方法。
【請求項3】
前記角検出ステップは、前記内角あるいは外角をそれぞれ示す1つの画素を前記マスタ画像から検出し、
前記内角領域決定ステップは、前記検出した内角となる画素を中心とする所定の大きさの領域を前記内角領域として決定し、
前記外角領域決定ステップは、前記検出した外角となる画素を中心とする所定の大きさの領域を前記外角領域として決定する、請求項1に記載の比較検査方法。
【請求項4】
前記内角領域決定ステップは、前記検出された内角の画素に対して、膨張処理を予め定められた回数以上繰り返して実行することで前記内角領域を決定し、
前記外角領域決定ステップは、前記検出された外角の画素に対して、膨張処理を予め定められた回数以上繰り返して実行することで前記外角領域を決定する、請求項3に記載の差分比較検査方法。
【請求項5】
更に、前記検出した内角あるいは外角に近接する前記パターンの直線部の幅を検出する幅検出ステップを有し、
前記内角領域画像生成ステップは、前記検出された幅に応じて、前記膨張処理を繰り返す回数を変更し、
前記外角領域画像生成ステップは、前記検出された幅に応じて、前記膨張処理を繰り返す回数を変更する、請求項4に記載の比較検査方法。
【請求項6】
前記角検出ステップは、前記マスタ画像における注目画素の画素値と当該注目画素を基準に抽出する複数の画素の位置をそれぞれ示す複数のパターンを用いて前記マスタ画像から抽出された画素値と、所定の論理式とを用いて、当該注目画素が前記内角あるいは外角を示す1つの画素であることを検出する論理演算ステップを更に含み、
前記論理演算ステップは、前記パターンのうち、いずれか1つのパターンを用いて抽出された画素値および前記注目画素の画素値が代入された前記所定の論理式の演算結果が内角あるいは外角であることを示したときは、当該注目画素を前記内角あるいは外角を示す1つの画素として検出する、請求項3に記載の比較検査方法。
【請求項7】
前記角検出ステップは、前記マスタ画像における注目画素の画素値と当該注目画素を基準に抽出する複数の画素の位置をそれぞれ示す複数のパターンを用いて前記マスタ画像から抽出された画素値とを用いて、当該注目画素が前記内角あるいは外角を示す1つの画素であることを検出する論理演算ステップを更に含み、
前記論理演算ステップは、
前記注目画素の画素値が前記マスタ画像で示されるパターンの領域内を示し、当該注目画素の画素値が前記パターンの何れか1つを用いて抽出された画素値全てと異なるとき、当該注目画素が前記外角を示す1つの画素であるとして検出し、
前記注目画素の画素値が前記マスタ画像で示されるパターンの領域外を示し、当該注目画素の画素値が前記パターンの何れか1つを用いて抽出された画素値全てと異なるとき、当該注目画素が前記内角を示す1つの画素であるとして検出する、請求項3に記載の比較検査方法。
【請求項8】
パターンが形成された被検査物を撮像したオブジェクト画像と当該パターンのマスタ画像とを比較して、当該被検査物を検査する差分比較検査装置であって、
前記パターンに形成された凹状の隅である内角及び凸状の角である外角をそれぞれ前記マスタ画像から検出する角検出部と、
前記検出した内角近傍の領域である内角領域の範囲を決定する内角領域決定部と、
前記検出した外角近傍の領域である外角領域の範囲を決定する外角領域決定部と、
前記マスタ画像と前記オブジェクト画像との差分に基づいて比較検査する比較検査部とを備え、
前記比較検査部は、
前記マスタ画像における前記内角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より過剰に形成されている前記オブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査し、
前記マスタ画像における前記外角領域において、当該マスタ画像が示すパターンの領域より不足して形成されている前記オブジェクト画像のパターンの領域に対する差分を除外して比較検査する、差分比較検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−163259(P2007−163259A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358962(P2005−358962)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】