説明

帯状金属板への塗装方法

【課題】 塗装の前に、帯状金属板に対して塗装箇所を特定するためだけの特別な加工を施しておく必要がなく、しかも塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれを小さくできる帯状金属板への塗装方法を提供する。
【解決手段】 表面に付着した塵を除去した帯状金属板1のパイロット挿入孔1aが予め定めた位置に到達したか否かを位置検出センサ21により検出する。パイロット挿入孔1aは、後の工程で帯状金属板1をプレス加工を行う際に、位置決め用のパイロットを挿入するために設けられた貫通孔である。位置検出センサ21の出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号としてインクジェット式塗装装置23により塗装パターンPを帯状金属板1の表面上に塗装する。ヒータで帯状金属板1上の塗装パターンを予備乾燥してから塗装を焼き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル等の帯状金属板に所定の塗装パターンを塗装する方法及び塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状金属板の一方の面上に絶縁塗料等を予め全面的に又は連続して塗装しておき、その帯状金属板にプレス加工を施して、例えば一方の面に絶縁塗料等が形成された所定形状の加工品を製造する方法が実施されている。従来は、塗装を全面的にまたは連続して行っているため、後のプレス加工の際に、特に塗装された位置を気にすることなく作業を行えばよかった。しかしながら全面塗装または連続塗装を行うと、本来必要の無い部分(プレス加工により捨てられてしまう部分)にまでインクを塗布することになるため、インクが無駄になるだけでなく、加工品の価格が高くなる問題があった。
【0003】
そこで発明者は、このような問題を解消するためには、帯状金属板の表面の必要箇所(後にプレス加工が施される部分)にだけ塗装を行うことを考えた。帯状金属板の表面への部分塗装に関しては、特開平8−80465号公報に一例が示されている。この公報に示された方法では、帯状金属板の表面に予め凹凸模様などを形成しておき、イメージスキャナによりこれらの凹凸を読み取り、その読み取り結果から塗装面積範囲を確定して、確定した塗装面積範囲にインクジェット式塗装装置により塗装を行う。
【特許文献1】特開平8−80465号公報(図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この方法では、必要な部分にだけ塗装を行うことは可能であるが、この方法を実行するためには、予め帯状金属板の表面に塗装面積を確定するための模様等を形成しておかなければならない。またこの方法で塗装を行ったとしても、後のプレス加工の際に、プレス加工をする位置に高い位置精度で所定の塗装がなされている保証がない。そのため、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれが大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、塗装の前に、帯状金属板に対して塗装箇所を特定するためだけの特別な加工を施しておく必要がなく、しかも塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれを小さくできる帯状金属板への塗装方法及び帯状金属板の塗装装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、塗装の障害となる塵を除去し、さらにインクジェット式塗装装置の周囲への塵の進入を阻止して、塗装精度を高めることができる帯状金属板への塗装方法及び帯状金属板の塗装装置を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、塗装後にインクが流れるのを防止して、しかも塗装パターンを焼き付ける前の予備乾燥が完了するまでの間に、塗装パターンに塵が付着するのを防止することができる帯状金属板への塗装方法及び帯状金属板の塗装装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、塗装位置の調整または塗装の中止を行える帯状金属板の塗装装置を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、無駄な塗装をすることを早期に停止させることができる帯状金属板への塗装方法及び帯状金属板の塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が改良の対象とする塗装方法では、長手方向に所定の間隔をあけて所定形状の塗装パターンが表面に塗装により形成された帯状金属板に対して、塗装パターンが形成された部分を含む被加工部にプレス加工を施して所定形状の加工品を製造するために、帯状金属板の表面に塗装パターンを塗装する。
【0011】
本発明では、帯状金属板として、プレス加工の際に位置決め用のパイロットを挿入するために、長手方向と直交する幅方向の両縁部に長手方向に沿って一定の間隔をあけて設けられた複数のパイロット挿入孔を予め備えたパイロット挿入孔付きの帯状金属板を用いる。なお、ここでいうパイロットとは、帯状金属板をプレス加工する際に、プレスの位置決めを行うために帯状金属板と係合するピン等の部材である。このようなパイロット挿入孔付きの帯状金属板は、一般的に広く使用されている。
【0012】
本発明の方法では、帯状金属板を連続送給装置により長手方向に連続的に送給しながら、パイロット挿入孔が予め定めた位置に到達したか否かを位置検出センサにより検出する。そして位置検出センサの出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号としてインクジェット式塗装装置により塗装パターンを帯状金属板の表面上に塗装する。このように、既に形成されているパイロット挿入孔を位置検出センサにより検出すれば、塗装の前に、帯状金属板に対して塗装箇所を特定するためだけの特別な加工を施しておく必要がない。
【0013】
また、本発明では、位置検出センサからのトリガ信号の指令により、インクジェット式塗装装置のノズルからの噴射開始時期を決めることにより、塗装パターンの位置を常にパイロット挿入孔に対して同じ位置関係になる位置に塗装することが可能になる。そのため、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置のいずれもが、共通のパイロット挿入孔を基準に位置決定されるため、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれを小さくすることができる。
【0014】
最も単純な制御をするために、位置検出センサからトリガ信号が出力されたら、直ちにインクジェット式塗装装置からインクの噴射を開始するようにすればよい。しかしながらこのようにしなくても、トリガ信号が出力されてから、所定の時間経過した後からインクの噴射を開始するようにしてもよいのは勿論である。本願明細書においては、トリガ信号とは、インクジェット式塗装装置からインクを噴射するための、きっかけまたはタイミングを決定するために使用できる信号と定義される。
【0015】
位置検出センサは、光学的にパイロット挿入孔の位置を検出することができるものを用いることができる。このようなものを用いれば、パイロット挿入孔を利用して簡単に位置検出を行える。最も簡単なものとしては、帯状金属板の厚み方向の両側に発光素子と受光素子とを配置し、パイロット挿入孔を通過する光の有無に基づいてパイロット挿入孔の位置を検出するものが考えられる。なお位置検出センサの構成は、特に限定されるものではなく、任意である。
【0016】
インクジェット式塗装装置の塗装開始時期は、例えば、パイロット挿入孔の到達を位置検出センサが検出した時間を基準にして、帯状金属板の送給速度と、位置検出センサが検出したパイロット挿入孔とインクジェット式塗装装置のノズルとの距離から求めることができる。このようにすれば、単純な算出で比較的正確な塗装を行える。
【0017】
位置検出センサ及びインクジェット式塗装装置は、帯状金属板の移動を許容するが実質的に閉じられた塗装ルーム内に配置するのが好ましい。位置検出センサ及びインクジェット式塗装装置の周囲に、不必要な塵が舞うと、塵がインクジェット式塗装装置のヘッドに付着して塗装エラーが発生しやすくなったり、ヘッドからの塵除去の作業が必要になって作業効率が低下する。このような塗装ルームを配置すると、塵が舞うのを防止できるため、塗装エラーの発生や作業効率の低下を防止できる。なおこの場合、インクジェット式塗装装置よりも前方(帯状金属板が送給されてくる方向)に帯状金属板の表面に付着した塵を除去する塵除去装置を配置してもよい。このような塵除去装置を設けると、塗装ルームを用意したことと相俟って、塗装パターンの塗装精度を大幅に高めることができる。
【0018】
インクジェット式塗装装置で用いるインクは、粘性が低いので塗装流れを起こしやすい。しかしながら、塗装パターンの焼き付けを塗装直後に行うためにインクジェット式塗装装置の近くに焼付装置を配置すると、インクジェット式塗装装置から出るインクの粘性が変動して塗装品質のコントロールが困難になったり、インクジェット式塗装装置が故障するおそれがある。そこでインクジェット式塗装装置による塗装を行った後に、インクジェット式塗装装置に熱影響を与えず、塗装流れを防止できる温度で塗装を予備乾燥し、予備乾燥の後に塗装を焼き付けるのが好ましい。このようにすれば、塗装後の塗装流れを防止でき、しかもインクジェット式塗装装置の機能低下を防ぐことができる。
【0019】
この予備乾燥は、帯状金属板の表面に隣接して配置した加熱装置によって、帯状金属板を部分的に60〜200℃の温度になるように加熱するのが好ましい。60℃を下回るとインク流れを十分に防止できない。また、200℃を上回ると、インクジェット式塗装装置の機能が低下するおそれがある。
【0020】
塗装ルーム内には、塗装パターンの形状を撮影する撮影手段を配置してもよい。そしてこの撮影手段により撮影した撮影結果に基づいて、塗装位置の調整または塗装の中止を行うようにすればよい。このようにすると、例えば、早期に塗装エラーの発生を発見することができて無駄な塗装を継続することがなくなって歩留まりが高くなる。
【0021】
帯状金属板はコイル状に巻回されており、塗装及びプレス加工は、コイル状に巻回された状態から解かれたものに実施さるのが好ましい。このようにすれば、帯状金属板をコイル状態で保管及び移動ができるので、帯状金属板の扱いが容易である。
【0022】
なお、本願明細書いうプレス加工とは、凹凸形成、切断、絞り等の種々のプレスによる加工を含むものである。
【0023】
本願発明の改良の対象とする塗装装置は、長手方向に所定の間隔をあけて所定形状の塗装パターンが表面に塗装により形成された帯状金属板に対して、塗装パターンが形成された部分を含む被加工部にプレス加工を施して所定形状の加工品を製造するために、帯状金属板の表面に塗装パターンを塗装する。本発明では、帯状金属板として、プレス加工の際に位置決め用のパイロットを挿入するために、長手方向と直交する幅方向の両縁部に長手方向に沿って一定の間隔をあけて設けられた複数のパイロット挿入孔を予め備えたパイロット挿入孔付きの帯状金属板を用いる。そして、帯状金属板を長手方向に連続的に送給する連続送給装置と、パイロット挿入孔が予め定めた位置に到達したか否かを検出する位置検出センサと、位置検出センサの出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号として塗装パターンを帯状金属板の表面上に塗装するインクジェット式塗装装置とを具備している。本発明の塗装装置では、帯状金属板を連続送給装置により長手方向に連続的に送給しながら、パイロット挿入孔が予め定めた位置に到達したか否かを位置検出センサにより検出する。そして位置検出センサの出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号としてインクジェット式塗装装置により塗装パターンを帯状金属板の表面上に塗装する。このように、既に形成されているパイロット挿入孔を位置検出センサにより検出すれば、塗装の前に、帯状金属板に対して塗装箇所を特定するためだけの特別な加工を施しておく必要がない。また、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置のいずれもが、共通のパイロット挿入孔を基準に位置決定されるため、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれを小さくすることができる。
【0024】
位置検出センサとして、光学的にパイロット挿入孔の位置を検出するものを用いれば、パイロット挿入孔を利用して簡単に位置検出を行える。
【0025】
位置検出センサ及びインクジェット式塗装装置を配置し、帯状金属板の移動を許容するが実質的に閉じられた塗装ルームと、インクジェット式塗装装置よりも前方に配置されて、表面に付着した塵を除去する塵除去装置とを更に具備するのが好ましい。このようにすれば、塵が舞うのを防止できるため、塗装エラーの発生や作業効率の低下を防止できる。 塗装ルーム内には、インクジェット式塗装装置の後方に、インクジェット式塗装装置に熱的な影響を与えず且つ前記塗装パターンのインクの流れ出しを防止できる温度で塗装パターンを予備乾燥する予備乾燥器を配置するのが好ましい。塗装ルーム内に予備乾燥を配置すれば、予備乾燥が完了する前に塗装パターン上に塵が付着するような事態が発生することがなくなるので、塗装の精度が高くなる。
【0026】
塗装ルーム内には、塗装パターンの形状を撮影し、撮影手段により撮影した撮影結果から塗装の良否を判定し、塗装エラーを発見したときには、塗装位置の調整または塗装の中止を行う撮影手段を配置するのが好ましい。このように撮影手段を配置すると、早期に塗装エラーの発生を発見することができて無駄な塗装を継続することがなくなって歩留まりが高くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の帯状金属板への塗装方法によれば、塗装の前に、帯状金属板に対して塗装箇所を特定するためだけの特別な加工を施しておく必要がない。また、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置のいずれもが、共通のパイロット挿入孔を基準に位置決定されるため、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態の帯状金属板の塗装装置の概略図であり、図2は、図1の塗装装置の塗装部分の拡大斜視図である。両図に示すように、本例の塗装装置では、帯状金属板1がアンコイラ3から解かれて進み、塗装工程を経て駆動軸を備えたリコイラ5で巻き取られるラインにより塗装を行う。帯状金属板1は、鉄、鉄系合金、銅系合金、アルミ系合金等からなり、図2に示すように、長手方向と直交する幅方向の両縁部に長手方向に沿って一定の間隔をあけて複数のパイロット挿入孔1aが設けられているパイロット挿入孔付きの帯状金属板である。パイロット挿入孔1aは、リコイラ5で巻き取った後の工程で帯状金属板1をプレス加工を行う際に、位置決めのために、複数のパイロット(位置決め用のピン)が挿入される貫通孔である。このパイロット挿入孔1aは、後述する位置検出センサ21により検出される被検出部の役割も果たしている。帯状金属板1は、該帯状金属板1の送給方向に配置された5つのロール7A〜7Eとガイド機構9にガイドされている。5つのロール7A〜7Eの内ロール7Aとロール7Bは、金属板を挟んで対向して配置されている。ロール7Aは、円周面に粘着テープ7aが張られており、金属板1の表面に付着した塵を除去する塵除去装置を構成している。塵除去装置としては、ロール自体が粘着物質で形成されているものを用いても構わない。ロール7Bは、金属板1の速度を検出する速度検出用ロールを兼ねている。本例では、アンコイラ3、リコイラ5、ロール7A〜7E及びガイド機構9により連続送給装置が構成されている。
【0029】
帯状金属板1の送給方向には、塗装ルーム11と焼付炉13とエアブロア15とが送給方向にしたがって配置されている。そして、アンコイラ3、ロール7B、後述する塗装制御装置29及びリコイラ5は、ライン速度制御装置17に接続されている。ライン速度制御装置17はロール7Bによる速度の検出に応じて、リコイラ5の駆動速度を増減して調整し、アンコイラ3からの異常信号に応じて、リコイラ5の駆動を停止したり、異常部位の記憶を行う。異常部位の記憶を行った場合は、後の工程で異常部位の除去を行う。また、ライン速度制御装置17は、現在の速度の情報を塗装制御装置29に送る。
【0030】
塗装ルーム11は、カバー19に囲まれたルームであり、帯状金属板1の移動を許容するが実質的に閉じられた構造を有している。塗装ルーム11内には、位置検出センサ21とインクジェット式塗装装置23と撮影手段を構成するカメラ25と予備乾燥器を構成するヒータ27とが配置されている。このような塗装ルームを用いると、位置検出センサ21及びインクジェット式塗装装置23の周囲に、不必要な塵が舞うことがなくなるため、塵の存在が原因となって発生する塗装エラーの発生や作業効率の低下を防止できる。なお、塗装ルーム11内にファン等を配置して塗装ルーム11内の内圧を高めれば、塵の侵入を更に防ぐことができる。位置検出センサ21とインクジェット式塗装装置23とカメラ25は、塗装制御装置29に接続されている。位置検出センサ21は、図2に示すように、帯状金属板1を介して対向するように配置された発光素子21aと受光素子21bとを有する光学的なセンサである。発光素子21aから発光されパイロット挿入孔1aを通った光を受光素子21bが感知して、位置検出センサ21は、光学的にパイロット挿入孔1aが予め定めた位置に到達したか否かを検出する。
【0031】
インクジェット式塗装装置23は、帯状金属板1の面上に所定の間隔をあけて配置された公知のインクジェット方式の塗装装置である。インクジェット式塗装装置23は、位置検出センサ21の出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号として塗装パターンを帯状金属板1の表面上に塗装する。
【0032】
カメラ25は、塗装パターンの形状を撮影する撮影手段を構成しており、撮影した撮影結果から塗装の良否を判定し、塗装エラーを発見したときには、塗装位置の調整または塗装の中止をする。
【0033】
ヒータ27は、帯状金属板1の塗装面上に配置された電熱線から構成されている。このヒータ27は、インクジェット式塗装装置23による塗装を行った後に、インクジェット式塗装装置23に熱的な影響を与えず、塗装パターンのインクの流れ出しを防止できる温度できる温度(60〜200℃)で帯状金属板1の塗装パターンを予備乾燥する。
【0034】
焼付炉13は、帯状金属板1を囲む炉であり、予備乾燥を終えた帯状金属板1を約250℃で加熱して、塗装パターンを本格的に焼き付ける。
【0035】
本例の塗装装置では、次のようにして塗装が行われる。まず、コイル状に巻回された帯状金属板1をアンコイラ3から解きつつ送り出す。そして、ロール7Aで帯状金属板1の表面に付着した塵を除去する。
【0036】
次に、パイロット挿入孔1aが予め定めた位置に到達したか否かを位置検出センサ21により検出する。そして、位置検出センサ21の出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号として、インクジェット式塗装装置23により所定形状の塗装パターンP(図2)を帯状金属板1の長手方向に所定の間隔をあけて該帯状金属板1の表面上に塗装する。具体的には、パイロット挿入孔1aの到達を位置検出センサ21が検出した時間を基準にして、帯状金属板1の送給速度と、位置検出センサ21が検出したパイロット挿入孔1aとインクジェット式塗装装置23のノズルとの距離から塗装制御装置29が塗装開始時期を求めて、インクジェット式塗装装置23に塗装開始の指令を送る。
【0037】
次に、塗装パターンPの形状をカメラ25により撮影し、撮影結果から塗装の良否を判定し、塗装エラーを発見したときには、塗装を中止する。
【0038】
次に、ヒータ27で帯状金属板1上の塗装パターンを予備乾燥してから、焼付炉13内で塗装を焼き付ける。そして、エアブロア15でエアを吹き付けて、帯状金属板1を冷却してから帯状金属板1をリコイラ5で巻き取る。
【0039】
なお、リコイラ5で巻き取られた帯状金属板1は、再度、アンコイラを用いて解きつつ送り出され、パイロット挿入孔1aが位置決め用の複数のパイロットに挿入されて、塗装パターンが形成された部分を含む被加工部にプレス加工が施されて所定形状の加工品に製造される。本例では、プレスによる絞り加工が施される。
【0040】
本例の塗装方法によれば、既に形成されているパイロット挿入孔を位置検出センサにより検出するので、塗装の前に帯状金属板1に対して塗装箇所を特定するためだけの特別な加工を施しておく必要がない。また、塗装パターンPの塗装位置とプレス加工位置のいずれもが、共通のパイロット挿入孔(1a)を基準に位置決定されるため、塗装パターンの塗装位置とプレス加工位置との相対位置のずれを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態の帯状金属板の塗装装置の概略図である。
【図2】図1の塗装装置の塗装部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 帯状金属板
1a パイロット挿入孔
11 塗装ルーム
13 焼付炉
21 位置検出センサ
23 インクジェット式塗装装置
27 ヒータ(予備乾燥器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に所定の間隔をあけて所定形状の塗装パターンが表面に塗装により形成された帯状金属板に対して、前記塗装パターンが形成された部分を含む被加工部にプレス加工を施して所定形状の加工品を製造するために、前記帯状金属板の前記表面に前記塗装パターンを塗装する方法であって、
前記帯状金属板として、前記プレス加工の際に位置決め用のパイロットを挿入するために、前記長手方向と直交する幅方向の両縁部に前記長手方向に沿って一定の間隔をあけて設けられた複数のパイロット挿入孔を予め備えたパイロット挿入孔付きの帯状金属板を用い、
前記帯状金属板を連続送給装置により前記長手方向に連続的に送給しながら、前記パイロット挿入孔が予め定めた位置に到達したか否かを位置検出センサにより検出し、前記位置検出センサの出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号としてインクジェット式塗装装置により前記塗装パターンを前記帯状金属板の前記表面上に塗装することを特徴とする帯状金属板への塗装方法。
【請求項2】
前記位置検出センサは、光学的に前記パイロット挿入孔の位置を検出する請求項1に記載の帯状金属板への塗装方法。
【請求項3】
前記インクジェット式塗装装置の前記塗装開始時期は、
前記パイロット挿入孔の到達を前記位置検出センサが検出した時間を基準にして、前記帯状金属板の送給速度と、前記位置検出センサが検出した前記パイロット挿入孔と前記インクジェット式塗装装置のノズルとの距離から求めることを特徴とする請求項1に記載の帯状金属板への塗装方法。
【請求項4】
前記位置検出センサ及び前記インクジェット式塗装装置は、前記帯状金属板の移動を許容するが実質的に閉じられた塗装ルーム内に配置しており、
前記インクジェット式塗装装置よりも前方に前記表面に付着した塵を除去する塵除去装置を配置して、前記表面に付着した塵を除去した後に塗装を行うことを特徴とする請求項1に記載の帯状金属板への塗装方法。
【請求項5】
前記インクジェット式塗装装置の後方に、前記インクジェット式塗装装置に熱的な影響を与えず且つ前記塗装パターンのインクの流れ出しを防止できる温度で前記塗装パターンを予備乾燥する予備乾燥器を配置して予備乾燥を行い、
前記予備乾燥した後に前記塗装パターンを本格的に焼き付けることを特徴とする請求項4に記載の帯状金属板への塗装方法。
【請求項6】
前記予備乾燥は、前記表面に隣接して配置した加熱装置によって、前記帯状金属板を部分的に60〜200℃の温度になるように加熱することにより行うことを特徴とする請求項5に記載の帯状金属板の塗装方法。
【請求項7】
前記塗装ルーム内に前記塗装パターンの形状を撮影する撮影手段を配置し、前記撮影手段により撮影した撮影結果に基づいて、塗装位置の調整または塗装の中止を行う請求項4に記載の帯状金属板への塗装方法。
【請求項8】
前記帯状金属板はコイル状に巻回されており、前記塗装及びプレス加工は、前記コイル状に巻回された状態から解かれたものに実施される請求項1乃至6のいずれか1項に記載の帯状金属板への塗装方法。
【請求項9】
長手方向に所定の間隔をあけて所定形状の塗装パターンが表面に塗装により形成された帯状金属板に対して、前記塗装パターンが形成された部分を含む被加工部にプレス加工を施して所定形状の加工品を製造するために、前記帯状金属板の前記表面に前記塗装パターンを塗装する塗装装置であって、
前記帯状金属板として、前記プレス加工の際に位置決め用のパイロットを挿入するために、前記長手方向と直交する幅方向の両縁部に前記長手方向に沿って一定の間隔をあけて設けられた複数のパイロット挿入孔を予め備えたパイロット挿入孔付きの帯状金属板を用い、
前記帯状金属板を前記長手方向に連続的に送給する連続送給装置と、
前記パイロット挿入孔が予め定めた位置に到達したか否かを検出する位置検出センサと、
前記位置検出センサの出力を塗装開始時期を定めるためのトリガ信号として前記塗装パターンを前記帯状金属板の前記表面上に塗装するインクジェット式塗装装置とを具備する帯状金属板の塗装装置。
【請求項10】
前記位置検出センサは、光学的に前記パイロット挿入孔の位置を検出する請求項9に記載の帯状金属板の塗装装置。
【請求項11】
前記位置検出センサ及び前記インクジェット式塗装装置を配置し、前記帯状金属板の移動を許容するが実質的に閉じられた塗装ルームと、
前記インクジェット式塗装装置よりも前方に配置されて、前記表面に付着した塵を除去する塵除去装置とを更に具備する請求項10に記載の帯状金属板の塗装装置。
【請求項12】
前記塗装ルーム内には、前記インクジェット式塗装装置の後方に、前記インクジェット式塗装装置に熱的な影響を与えず且つ前記塗装パターンのインクの流れ出しを防止できる温度で前記塗装パターンを予備乾燥する予備乾燥器が配置されている請求項11に記載の帯状金属板の塗装装置。
【請求項13】
前記塗装ルーム内には、前記塗装パターンの形状を撮影し、前記撮影手段により撮影した撮影結果から塗装の良否を判定し、塗装エラーを発見したときには、塗装位置の調整または塗装の中止を行う撮影手段が配置されている請求項11に記載の帯状金属板の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7070(P2006−7070A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186635(P2004−186635)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(592197706)特殊金属工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】