説明

平坦化方法

【課題】CARE法のメリットを延ばし、CARE法のデメリットを補完することで、十分な加工速度を確保しながら、被加工物の加工後における加工表面にダメージを残すことなく該加工表面の平坦度を高めた表面除去加工を行うことができるようにする。
【解決手段】緩衝剤を含む第1処理液中に被加工物を配し、ガラス系金属酸化物からなる触媒定盤を透過させて被加工物の被加工面に光を照射させながら、触媒定盤の表面を被加工物の被加工面に接触または極接近させる光照射触媒基準エッチングで初期表面除去工程を行い、ハロゲン化水素酸、過酸化水素水またはオゾン水からなる第2処理液中に被加工物を配し、少なくとも表面が、白金、金、セラミックス系固体触媒、遷移金属、及びガラス系金属酸化物の何れかのみからなる触媒定盤の該表面を被加工物の被加工面に接触または極接近させる触媒基準エッチングで最終表面除去工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦化方法に係わり、特にSiCやGaNからなる単体基板や、SiCやGaNを載せた接合基板(エピタキシャル基板)、MEMS(micro electro mechanical system)に使用される基板等の被加工物の被加工面(表面)を平坦に除去加工する平坦化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。特に、線幅が0.5μm以下の光リソグラフィの場合、焦点深度が浅くなるためステッパーの結像面の平坦度を必要とする。このような半導体基板の表面を平坦化する一手段として、化学機械研磨(CMP)を行うCMP装置が知られている。
【0003】
一方、半導体デバイス材料として、SiCやGaN等の重要性が高まっている。このようなSiCやGaNの表面を、精度高く平坦に除去加工する新たな加工法として、化学的な反応が可能な触媒作用を利用して被加工物表面をエッチング除去する触媒基準エッチング(catalyst referred etching:CARE)法が提案されている。このCARE法は、例えばフッ化水素酸等のハロゲン化水素酸からなる処理液中に被加工物を配し、白金、金またはセラミックス系固体触媒からなる触媒を被加工物の表面(被加工面)に接触若しくは極接近させて配し、触媒の表面でハロゲン化水素を分子解離して生成したハロゲンラジカルと被加工物の表面原子との化学反応で生成したハロゲン化合物を処理液中に溶出させることによって、被加工物表面を除去加工(エッチング)するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−114632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SiCやGaNなどの被加工物の表面除去加工(エッチング)を行うCARE法は、被加工物の表面(被加工面)を、CMP等の従来の一般的な加工法に比べ、精度高く加工除去して、優れた平坦度を有する加工表面を得ることができるとともに、加工表面にダメージを残すことがないといった優れた特徴を有している。しかしながら、CARE法は、例えばハロゲンラジカルと被加工物の表面原子との化学反応で生成したハロゲン化合物を処理液中に溶出させて、被加工物表面を除去加工(エッチング)するようにしており、その加工速度が、半導体デバイスの製造に広く使用されている研削やCMP等に比べてかなり遅く、そのため、スループットを向上させることが困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、CARE法のメリットを延ばし、CARE法のデメリットを補完することで、十分な加工速度を確保しながら、被加工物の加工後における加工表面にダメージを残すことなく該加工表面の平坦度を高めた表面除去加工を行うことができるようにした平坦化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被加工物のSiCまたはGaNからなる被加工面を平坦に除去加工する平坦化方法であって、緩衝剤を含む第1処理液中に被加工物を配し、ガラス系金属酸化物からなる触媒定盤を透過させて被加工物の被加工面に光を照射させながら、前記触媒定盤の表面を被加工物の被加工面に接触または極接近させて該被加工面を平坦に加工して該被加工面の平坦度を向上させる光照射触媒基準エッチングで初期表面除去工程を行い、初期表面除去工程後の被加工物の被加工面を、フッ化水素酸洗浄または純水洗浄で洗浄し、ハロゲン化水素酸、過酸化水素水またはオゾン水からなる第2処理液中に被加工物を配し、少なくとも表面が、白金、金、セラミックス系固体触媒、遷移金属、及びガラス系金属酸化物の何れかのみからなる触媒定盤の該表面を被加工物の被加工面に接触または極接近させて該被加工面をダメージの残らない平坦に加工する触媒基準エッチングで最終表面除去工程を行い、最終表面除去工程後の被加工物の被加工面を、SPM洗浄、王水洗浄、及びフッ化水素酸洗浄のいずれか1つで洗浄することを特徴とする平坦化方法である。
【0008】
ここで、表面除去工程とは、被加工物である基板等の表面部分を除去加工する工程であり、洗浄工程とは、表面除去工程前後に被加工物表面に付着した微粒子汚染、有機物汚染、金属汚染を除去する工程である。表面除去工程後に残存する被加工物表面の酸化膜を除去する工程も洗浄工程に含まれる。
【0009】
これにより、初期表面除去工程を経て、被加工物の被加工面(表面)の平坦度を向上させた後、最終表面除去工程において、被加工物の表面(被加工面)を精度高く平坦に除去加工できるCAREを行うことで、被加工物の被加工面の平坦度を徐々に高めながら、平坦度に優れ、かつダメージのない最終的な加工表面を、十分な加工速度で創成することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記第2処理液には、前記触媒定盤の濡れ性を向上させる濡れ性向上剤が更に加えられていることを特徴とする請求項1記載の平坦化方法である。
請求項3に記載の発明は、前記濡れ性向上剤は、硝酸またはエタノールであることを特徴とする請求項2記載の平坦化方法である。
【0011】
第2処理液としてフッ化水素酸を使用し、触媒に白金を用いると、白金表面はフッ化水素酸に対する濡れ性が悪いため、加工基準面となる触媒表面に第2処理液(フッ化水素酸)を効率的に供給することが難しくなる。このような場合には、第2処理液としてのフッ化水素酸に濡れ性向上剤を混ぜることで、触媒表面に第2処理液を効率的に供給することができる。好ましく用いられる濡れ性向上剤としては、硝酸またはエタノールが挙げられる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記第2処理液には、pH調整用緩衝剤が更に加えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の平坦化方法である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記第2処理液には、有機アルコールまたは無機酸が更に加えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の平坦化方法である。
有機アルコールとしては、メタノールやエタノールが例示され、無機酸としては、硫酸や硝酸が例示される。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記触媒定盤を回転駆動する駆動モータの電流値の変化、前記第2処理液の濃度変化、被加工面を光学的モニタで測定した時の測定結果、及び被加工物の加工前後における質量変化のいずれかで前記最終表面除去工程の終点を検知することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平坦化方法である。
【0015】
処理液に少量の酸や塩基を加えても、処理液のpHが変化しないようにした緩衝剤を第2処理液に加えてもよい。特に、GaNの加工を行う場合、GaNの酸化物であるGaは酸または塩基に溶解性を持つため、第2処理液のpHを7付近として、Gaの処理液中への溶解を防ぐ必要がある。pHを調整した緩衝剤を第2処理液中に加えることで、第2処理液のpHを調整することができる。また、緩衝剤は、生成したHイオンやOHイオンを消費する性質を持つため、固体酸性触媒や塩基性触媒近傍でのHイオンやOHイオンの活性距離を短くすることができる。その結果、固体触媒の極近傍にのみにHイオンやOHイオンを存在させて、被加工物をより平坦に加工することができる。
【0016】
触媒基準エッチングに光照射を伴う光照射触媒基準エッチングは、触媒基準エッチングに比べ、加工後の加工表面の平坦度は劣るものの、加工速度を速めた表面除去加工を行うことができる。従って、触媒基準エッチングに光照射を伴う光照射触媒基準エッチングを行った後、触媒基準エッチングを行うことで、全体としての加工速度を速めることができる。
【0017】
例えば、被加工物の加工表面に白金汚染が生じた場合には王水洗浄によって、被加工物の加工表面に貴金属以外の金属汚染が生じた場合または有機汚染が生じた場合にはSPM洗浄によって、被加工物表面に酸化膜が生成された場合にはフッ化水素酸洗浄によって、被加工物の加工表面を洗浄することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被加工物の被加工面(表面)の平坦度を向上させた後、最終表面除去工程において、被加工物の表面(被加工面)を精度高く平坦に除去加工できるCARE(触媒基準エッチング)を行うことで、被加工物の被加工面の平坦度を徐々に高めながら、平坦度に優れ、かつダメージのない最終的な加工表面を、十分な加工速度で創成することができる。これによって、CARE法のメリットを十分に生かしながら、スループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】平坦化装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1の平坦化装置の最終表面除去加工ユニットとしてのCAREユニットの概要を示す縦断正面図である。
【図3】図3のCAREユニットの触媒定盤の平面図である。
【図4】図3の一部拡大断面図である。
【図5】触媒定盤の他の例を示す平面図である。
【図6】図5に示す触媒定盤を回転体に取付けた状態を示す断面図である。
【図7】CARE加工した後における試料、及び該試料を王水により洗浄した後の白金汚染を全反射X線蛍光分析法により測定した結果を示すグラフである。
【図8】CARE加工した後における試料、及び該試料をSPM、更にはフッ化水素酸(HF)で洗浄した後の白金汚染を全反射X線蛍光分析法により測定した結果を示すグラフである。
【図9】CARE加工した後における試料の鉄汚染、及び該試料をSEM洗浄した後の鉄汚染をX線光電子分光法より測定した結果を示すグラフである。
【図10】SiC試料を光照射CARE加工した後における試料表面をX線光電子分光法で測定した結果を示すグラフである。
【図11】光照射CARE加工したSiC試料をフッ化水素酸洗浄した後における試料表面をX線光電子分光法で測定した結果を示すグラフである。
【図12】緩衝液(緩衝剤)を添加した処理液を使用して被加工物をCARE加工する加工概念を工程順に示す図である。
【図13】光源を備えたCAREユニット(光照射CAREユニット)の概要を示す図である。
【図14】図14(a)は、CARE加工前の試料表面の位相シフト干渉顕微鏡像を示し、図14(b)は、緩衝液(緩衝剤)を含まない処理液(超純水)を使用してCARE加工を行った後の試料表面の位相シフト干渉顕微鏡像を示し、図14(c)は、緩衝液(緩衝剤)を含む処理液を使用してCARE加工を行った後の試料表面の位相シフト干渉顕微鏡像を示す。
【図15】白金を成膜した基板及び白金を成膜しない基板を超純水中に浸漬した状態で光照射を行った時における光照射前後のXPS O1sスペクトルである。
【図16】図16(a)は、加工前の試料(GaN基板)表面の位相シフト緩衝顕微鏡像を示し、図16(b)は、裏面に白金蒸着を行っていない試料における加工後の試料(GaN基板)表面の位相シフト緩衝顕微鏡像を示し、図16(c)は、裏面に白金蒸着を行った試料の加工後の試料(GaN基板)表面の位相シフト緩衝顕微鏡像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、触媒基準エッチングの処理液としてフッ化水素酸(HF)を、触媒として白金をそれぞれ使用して、SiCウェハ等の基板の表面(被加工面)を所望の平坦度に除去加工する例について説明する。
【0021】
図1は、平坦化装置の全体構成を示す平面図である。図1に示すように、この平坦化装置は、略矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は、隔壁1a,1b,1cによって、ロード/アンロード部2と表面除去加工部3と洗浄部4とに区画されている。これらのロード/アンロード部2、表面除去加工部3及び洗浄部4は、それぞれ独立に組立てられて独立に排気される。
【0022】
ロード/アンロード部2は、多数の基板(被加工物)をストックする基板カセットを載置する2つ以上(この例では3つ)のフロントロード部20を備えている。これらのフロントロード部20は、平坦化装置の幅方向(長手方向と垂直な方向)に隣接して配列されている。フロントロード部20には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。ここで、SMIF、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0023】
また、ロード/アンロード部2には、フロントロード部20の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上に基板カセットの配列方向に沿って移動可能な第1搬送機構としての第1搬送ロボット22が設置されている。第1搬送ロボット22は、走行機構21上を移動することによって、フロントロード部20に搭載された基板カセットにアクセスできるようになっている。この第1搬送ロボット22は、上下に2つのハンドを備えており、例えば、上側のハンドを基板カセットに基板を戻すときに使用し、下側のハンドを加工前の基板を搬送するときに使用することで、上下のハンドを使い分けることができるようになっている。
【0024】
ロード/アンロード部2は、最もクリーンな状態を保つ必要がある領域であるため、ロード/アンロード部2の内部は、装置外部、表面除去加工部3、及び洗浄部4のいずれよりも高い圧力に常時維持されている。また、第1搬送ロボット22の走行機構21の上部には、HEPAフィルタやULPAフィルタなどのクリーンエアフィルタを有するフィルタファンユニット(図示せず)が設けられており、このフィルタファンユニットによりパーティクルや蒸気、ガスが除去されたクリーンエアが常時下方に向かって吹出ている。
【0025】
表面除去加工部3は、基板表面(被加工面)の除去加工が行われる領域であり、この例では、第1表面除去加工ユニットとしてのラッピングユニット30A、第2表面除去加工ユニットとしてCMPユニット30B、及び第3表面除去加工ユニット(最終表面除去加工ユニット)としての2台の触媒基準エッチング(CARE)ユニット30C,30Dを内部に有している。これらのラッピングユニット30A、CMPユニット30B及びCAREユニット30C,30Dは、図1に示すように、平坦化装置の長手方向に沿って配列されている。
【0026】
ラッピングユニット30Aは、表面にラッピング面を有する定盤300Aと、基板を着脱自在に保持して定盤300Aに対して押圧するためのトップリング301Aと、定盤300Aにダイヤモンドスラリやコロイダルシリカスラリ等のラップ液を供給するためのラップ液供給ノズル302Aと、定盤300Aの表面に純水を供給する純水供給ノズル303Aを備えている。ラッピングユニット30Aのラッピング時には、ラップ液供給ノズル302Aから定盤300A上にラップ液(スラリ)が供給され、被加工物である基板がトップリング301Aで保持されて定盤300Aに向けて押圧されて基板表面のラッピングが行われる。
【0027】
ラッピングユニット(第1表面除去加工ユニット)30Aは、例えば比較的大きな初期凹凸を有する基板表面を所望の平坦度に平坦化する際に、主として加工量を稼ぎながら、基板表面の平坦度を向上させるためのもので、例えば基板表面に比較的大きな初期凹凸を有さない場合には省略することができる。この例では、第1表面除去加工ユニットとして、ラッピングユニット30Aを使用しているが、ラッピングユニット30Aの代わりに、CAREユニット30C,30Dよりも大幅に加工量が稼げる研削ユニット、例えば電解インプロセスドレッシング(ELID)鏡面研削ユニットを使用してもよい。
【0028】
CMPユニット(第2表面除去加工ユニット)30Bは、研磨面を有する研磨テーブル300Bと、基板を着脱自在に保持し研磨テーブル300Bに対して押圧しながら研磨するためのトップリング301Bと、研磨テーブル300Bに研磨液やドレッシング液(例えば、水)を供給するための研磨液供給ノズル302Bと、研磨テーブル300Bの研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ303Bと、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素)の混合流体を霧状にして、1又は複数のノズルから研磨テーブル300Bの研磨面に噴射するアトマイザ304Bとを備えている。
【0029】
CMPユニット30Bの研磨テーブル300Bの上面には研磨布または砥石(固定砥粒)等が貼付されており、この研磨布または砥石(固定砥粒)等によって基板表面を研磨する研磨面が構成されている。CMPユニット30Bでの研磨時には、研磨液供給ノズル302Bから研磨テーブル300B上の研磨面に研磨液が供給され、被加工物である基板がトップリング301Bで保持され研磨面に向けて押圧されて基板表面の研磨が行われる。
【0030】
このCMPユニット(第2表面除去加工ユニット)30Bは、CAREユニット30C,30Dに比べて、加工速度を速くして、加工量を稼ぎながら、基板表面の平坦度を向上させるためのもので、前述のラッピングユニット(第1表面除去加工ユニット)30Aと組合せることで、比較的大きな初期凹凸を有する基板表面を所望の平坦度に平坦化するのに効率的であるが、省略してもよい。
【0031】
この例では、第2表面除去加工ユニットとして、CMPユニットを使用しているが、CMPユニットの代わりに、下記の図2乃至図4に示す構成のCAREユニット30C,30Dに、基板ホルダで保持した基板の表面に向けて光、好ましくは紫外線を照射する光源を備え、基板表面の除去加工に際して、基板表面に光を照射して基板表面を活性状態することで、CAREユニットよりも加工速度を速めた光照射触媒基板ユニット(光照射CAREユニット)を使用してもよい。また、図13に示す光照射触媒基板ユニット(光照射CAREユニット)を使用してもよい。
【0032】
CAREユニット(第3表面除去加工ユニット)30C,30Dは、図2に詳細に示すように、処理槽124と、該処理槽124内に回転自在に配置された触媒定盤126と、表面(被加工面)を下向きにして基板(被加工物)128を着脱自在に保持する基板ホルダ130を有している。基板ホルダ130は、加工性、対薬品性及び温度に対する耐性に優れた、例えばSiCによって構成されているが、硬質塩化ビニルまたはPEEK材で構成してもよく、触媒定盤126の回転軸芯と平行且つ偏心した位置に設けた上下動自在な回転軸132の先端に連結されている。基板ホルダ130は、回転軸132に対してピボット支持(ボール軸受け支持)されているので、触媒定盤126の表面に、基板ホルダ130の基板保持面が追従することができ、被加工物128が触媒定盤126に面接触できるようになっている。
【0033】
この例では、CAREユニット30C,30Dで、SiCウェハ等の基板128の表面除去加工を行うため、処理液として、例えばフッ化水素酸(50%HF)を使用し、触媒定盤126として、例えば28mmの肉厚のモリブデンからなる基材140の表面に、触媒としての1mm肉厚の白金142を貼付けたものを使用している。なお、触媒定盤126として、触媒としての白金を設けることなく、モリブデンまたはモリブデン合金製のものを使用して、触媒定盤126自体を触媒として使用してもよく、また、処理液として、フッ化水素酸以外の、例えば塩化水素酸等のハロゲン化水素酸を使用してもよい。
【0034】
また、処理液として、触媒定盤表面の濡れ性を向上させる濡れ性向上剤を添加したものを使用することが好ましい。濡れ性向上剤とは、親水基と疎水基を同一分子内にもつ物質であり、処理液に濡れ性向上剤を添加することで、触媒定盤の処理液に対する濡れ性を向上させることができる。これにより、基板(被加工物)と触媒定盤との間への処理液の供給効率が向上し、安定した表面去加工を行うことができる。
【0035】
処理液に、pH調整用緩衝剤を更に添加してもよい。これにより、処理液のpHを調整して、除去加工反応部以外で基板(被加工物)が処理液中に溶解することを抑制することができる。また、触媒定盤の表面で生成する活性種であるHイオンやOHイオンを速やかに失活して、除去加工反応を触媒定盤表面の極近傍に限定することができ、これによって、加工後における基板(被加工物)の加工表面の平坦度を向上させることができる。
【0036】
処理液に、メタノール、エタノール等の有機アルコール、または硫酸、硝酸等の無機酸を添加してもよい。触媒定盤の表面で生成されるF原子やOHラジカルは、非常に活性で、生存時間が短く即時に失活してしまう。このため、十分な加工速度を得ることができない場合がある。このような場合に、エタノール等のアルコールや硝酸等の無機酸を処理液に加えてF原子やOHラジカルと反応させることで、F原子やOHラジカルと比較して生存時間が長い有機ラジカルや硝酸ラジカルを2次的に生成し、加工速度を向上させることができる。
【0037】
なお、上記の添加剤(濡れ性向上剤、pH調整剤、有機アルコール、無機酸)を1種または2種以上を組合せて処理液に添加しても良い。
更に、処理液に、処理液のpHが変化しないようにした緩衝剤(緩衝液)を添加するようにしてもよい。
【0038】
基板ホルダ130の内部には、該ホルダ130で保持した基板128の温度を制御する温度制御機構としてのヒータ170が回転軸132内に延びて埋設されている。処理槽124の上方には、温度制御機構としての熱交換器172によって所定の温度に制御した処理液(フッ化水素酸)を処理槽124の内部に供給する処理液供給ノズル174が配置されている。更に、触媒定盤126の内部には、触媒定盤126の温度を制御する温度制御機構としての流体流路176が設けられている。
【0039】
なお、この例では、基板128の温度を制御する温度制御機構としてのヒータ170、処理液の温度を制御する温度制御機構としての熱交換器172、及び触媒定盤126の温度を制御する温度制御機構としての流体流路176を設けた例を示しているが、これらの温度制御機構を全て省略しても、いずれか1つを設けるようにしてもよい。
【0040】
アレニウスの式で知られるように、化学反応は反応温度が高ければ、それだけ反応速度は大きくなる。このため、被加工物128、処理液及び触媒定盤126の温度の少なくとも1つの制御して、反応温度を制御することで、加工速度を変化させながら、加工速度の安定性を向上させることができる。
【0041】
触媒定盤126の白金(触媒)142の表面には、図3及び図4に示すように、3つの溝形成部146a,146b,146cに亘って、複数の溝144が同心円状に形成されている。この例では、3つの溝形成部146a,146b,146cを有しており、中央に位置する溝形成部146bの幅が基板ホルダ130で保持する基板128の直径より小さく設定されている。これによって、基板ホルダ130で保持した基板128の両端部が溝形成部146a,146b、及び溝形成部146b,146cで挟まれた平坦部にそれぞれ位置して、基板ホルダ130で保持して回転させた基板128の端部が溝144に引っかからないようになっている。また、白金(触媒)142の厚さを薄くすると形成する溝の深さは、必然的に浅くする必要があるが、溝の幅、深さ、ピッチ等の大きさを小さくすると流体の流動性が悪化し、基板と触媒間に発生する吸付き(吸着)力が大きくなる。そのため、許容可能な吸着力で溝深さDを極力浅くする方が望ましい。
【0042】
更に、図3に仮想線で示すように、例えば基板128の周囲を囲繞するリテーナリング148を備えた基板ホルダを使用した場合に、リテーナリング148の両端部が両側の溝形成部146a,146cの外側の平坦部に位置して、回転しているリテーナリング148が溝144に引っかからないように、溝形成部146a,146b,146cの全体の幅が、リテーナリング148の直径より小さく設定されている。この例において、溝144は、基板128の端部等の引っかかりを防止するため、図4に示すように、角形状ではなく、R形状に形成されている。溝は、テーパ状の任意の形状であってもよい。
【0043】
触媒定盤126と基板128との接触部(加工部)に、処理液を効率的に供給するためには、溝144のピッチ(溝ピッチ)をできるだけ細かくした方が好ましい。この例では、図4に示すように、溝ピッチPは、3mm〜5mm程度に設定されており、溝深さDは、0.5mm〜1.0mm程度に設定されている。溝深さDは、触媒としての白金142の厚さを薄くするため、吸付きが起きない程度に浅い方が好ましい。この例のように、触媒定盤126の白金(触媒)142の表面に、多数の溝144を同心状に設けた場合、基板ホルダ130によって、基板128を揺動させることが、加工量の面内均一性を高める上で好ましい。同心円状の溝形状を偏芯させても、スパイラル状の溝形状を用いていてもよい。
【0044】
これにより、処理液供給ノズル174から触媒定盤126に向けて処理液(フッ化水素酸)を供給する。すると、処理液は、触媒定盤126の表面に設けた溝144内に保持される。そして、基板ホルダ130で保持した基板(被加工物)128を触媒定盤126の白金(触媒)142の表面に所定の圧力で押付けて、基板128を触媒定盤126の白金(触媒)142との接触部(加工部)に処理液を介在させながら、触媒定盤126及び基板128を回転させて、SiCウェハ等からなる基板128の表面(下面)を平坦に除去加工(エッチング)する。なお、基板ホルダ130で保持した基板128を触媒定盤126の白金(触媒)142に所定の圧力で押付けることなく、基板128を白金(触媒)142に極近接させて、基板128の表面を平坦に除去加工(エッチング)するようにしてもよい。
【0045】
基板ホルダとして、基板飛び出し防止用のリテーナリング148を有するものを使用する場合には、リテーナリング148の少なくとも触媒定盤126と面する部分の材質は、使用している触媒定盤126の表面の材質と同じにすることが好ましい。例えば、白金を触媒定盤126の表面材質(触媒)として用いている時は、リテーナリング148の触媒定盤126の表面と接触する部分の材質を白金とする。また、例えば鉄を触媒定盤の表面材質として用いている時は、リテーナリングの触媒定盤と接触する部分の材質を鉄とする。
【0046】
これにより、リテーナリング148の表面材料が触媒定盤126との磨耗により削れて触媒定盤126の表面に付着した場合にも、触媒定盤126の触媒効果を失うことなく加工を継続することができる。リテーナリング148の表面材質は、触媒定盤126の表面材質と同じ金属を多く含んだ合金であってもよい。例えば、鉄を触媒定盤の表面材質として用いている場合、リテーナリングの表面材質は、鉄を多く含む合金である炭素鋼やステンレスで合ってもよい。
【0047】
図5及び図6に示すように、例えば図2に示す基板ホルダ130で保持されて加工される基板(被加工物)128に接触する領域に、多数の貫通穴200aを有する触媒定盤200を使用してもよい。この触媒定盤200は、例えば前述の触媒定盤126と同様に、モリブデンからなる基材の表面に触媒としての白金を貼付けている。
【0048】
この例では、触媒定盤200の内部に、等間隔の格子位置に複数の貫通穴200aが形成されている。この格子間隔は、例えば5mmで、貫通穴200aの径は、例えば1mmである。貫通穴200aの格子間隔及び穴径はできるだけ小さい方が好ましい。このように、触媒定盤200に複数の貫通穴200aを均等に設けることで、基板(被加工物)128の全面を一様に加工することができる。
【0049】
そして、触媒定盤200の下面には、凹部200bが形成され、この触媒定盤200を回転体202の上面に取付けることで、触媒定盤200と回転体202との間に処理液溜り204が形成されている。更に、触媒定盤200の中央は、上下に貫通し、ここにロータリジョイント206が取付けられている。このロータリジョイント206は、例えば図2に示す処理液供給ノズル174に接続される。
【0050】
この例によれば、触媒定盤200を回転体202と共に回転させながら、ロータリジョイント206を通して、触媒定盤200と回転体202との間の処理液溜り204に処理液を供給し、貫通穴200aから処理液が噴出するようにして加工を行う。これにより、基板(被加工物)128が触媒定盤200に張り付くのを抑制するのと同時に、貫通穴200a内に溜った処理液を入れ替えることができる。
【0051】
貫通穴200aから処理液が噴出する時の噴出圧力は、基板(被加工物)128を触媒定盤200に押付ける圧力より十分に低くすることが好ましい。なお、触媒定盤の強度を考慮し、触媒定盤の中心から放射状の溝を形成し、この溝を通して、貫通穴の下方まで処理液を供給するようにしても良い。
【0052】
CAREユニット30C,30Dは、図1に示すように、触媒定盤126の表面である白金(触媒)142の表面に向け、必要に応じて、キャビテーションを発生させるか、または超音波を当てながら、純水を噴射して該表面をコンディショニングするコンディショニング部としての純水噴射ノズル150が配置されている。なお、触媒定盤に向けて光を照射し光電気化学エッチングによって触媒定盤表面の欠片や有機物汚染を除去する光照射器、または触媒定盤と対向して電極を設置し触媒定盤と対向電極の間に電圧を印加することで、触媒定盤表面の欠片や有機物汚染を電解除去する電解除去装置によって、コンディショニング部を構成してもよい。触媒定盤126から離脱した欠片は、例えばろ過(フィルタなど)で除去される。
【0053】
ラッピングユニット30A及びCMPユニット30Bと洗浄部4との間には、長手方向に沿った4つの搬送位置(ロード/アンロード部2側から順番に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4とする)の間で基板を搬送する第2(直動)搬送機構としての第1リニアトランスポータ5が配置されている。この第1リニアトランスポータ5の第1搬送位置TP1の上方には、ロード/アンロード部2の第1搬送ロボット22から受け取った基板を反転する反転機31が配置されており、その下方には上下に昇降可能なリフタ32が配置されている。また、第2搬送位置TP2の下方には上下に昇降可能なプッシャ33が、第3搬送位置TP3の下方には上下に昇降可能なプッシャ34が、第4搬送位置TP4の下方には上下に昇降可能なリフタ35がそれぞれ配置されている。
【0054】
CAREユニット30C,30Dの側方には、第1リニアトランスポータ5に隣接して、長手方向に沿った3つの搬送位置(ロード/アンロード部2側から順番に第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7とする)の間で基板を搬送する第2(直動)搬送機構としての第2リニアトランスポータ6が配置されている。この第2リニアトランスポータ6の第5搬送位置TP5の下方には上下に昇降可能なリフタ36が、第6搬送位置TP6の下方にはプッシャ37が、第7搬送位置TP7の下方にはプッシャ38がそれぞれ配置されている。更に、CAREユニット30Cとプッシャ37との間には、桶と純水ノズルとを有する純水置換部160が、CAREユニット30Dとプッシャ38との間にも、桶と純水ノズルとを有する純水置換部162が配置されている。
【0055】
表面除去加工時にスラリ等を使用することを考えるとわかるように、表面除去加工部3は最もダーティな(汚れた)領域である。したがって、本実施形態では、表面除去加工部3内のパーティクルが外部に飛散しないように、定盤等の除去加工部の周囲から排気が行われており、表面除去加工部3の内部の圧力を、装置外部、周囲の洗浄部4、ロード/アンロード部2よりも負圧にすることでパーティクルの飛散を防止している。また、通常、定盤等の除去加工部の下方には排気ダクト(図示せず)が、上方にはフィルタ(図示せず)がそれぞれ設けられ、これらの排気ダクト及びフィルタを介して清浄化された空気が噴出され、ダウンフローが形成される。
【0056】
洗浄部4は、基板を洗浄する領域であり、第2搬送ロボット40と、第2搬送ロボット40から受け取った基板を反転する反転機41と、基板を洗浄する3つの洗浄ユニット42,43,44と、洗浄後の基板を純水でリンスしてスピンドライする乾燥ユニット45と、反転機41、洗浄ユニット42,43,44及び乾燥ユニット45の間で基板を搬送する、走行自在な第3搬送ロボット46を備えている。これらの第2搬送ロボット40、反転機41、洗浄ユニット42〜44及び乾燥ユニット45は、長手方向に沿って直列に配置され、これらの第2搬送ロボット40、反転機41、洗浄ユニット42〜44及び乾燥ユニット45と、第1リニアトランスポータ5との間に、第3搬送ロボット46が走行自在に配置されている。これらの洗浄ユニット42〜44及び乾燥ユニット45の上部には、クリーンエアフィルタを有するフィルタファンユニット(図示せず)が設けられており、このフィルタファンユニットによりパーティクルが除去されたクリーンエアが常時下方に向かって吹出ている。また、洗浄部4の内部は、表面除去加工部3からのパーティクルの流入を防止するために表面除去加工部3よりも高い圧力に常時維持されている。
【0057】
この例では、第1及び第2洗浄ユニット42,43として、王水、SPM(硫酸過酸化水素水)またはフッ化水素酸等の薬液中に基板を浸漬させて基板を洗浄する薬液洗浄ユニットが使用され、第3洗浄ユニット44として、基板に向けて純水を供給して基板を洗浄する純水洗浄ユニットが使用されている。具体的には、第1洗浄ユニット42として、基板をフッ化水素酸で洗浄する洗浄ユニットが、第2洗浄ユニット43として、基板を王水で洗浄する洗浄ユニットが使用されている。
【0058】
図1に示すように、表面除去加工部3を包囲する隔壁1aには、反転機31と第1搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ10が設置されており、基板の搬送時にはシャッタ10を開いて、第1搬送ロボット22と反転機31との間で基板の受け渡しが行われる。また、表面除去加工部3を包囲する隔壁1bには、CMPユニット30Bと対面する位置に位置してシャッタ13が、CAREユニット30Cと対面する位置に位置してシャッタ14がそれぞれ設置されている。
【0059】
次に、このような構成の平坦化装置を用いて基板の表面を平坦化する処理について説明する。
【0060】
フロントロード部20に搭載した基板カセットから、1枚の基板を第1搬送ロボット22で取出して、反転機31に搬送する。反転機31は、基板を180°反転させた後、第1搬送位置TP1のリフタ32に乗せる。ラッピングユニット30Aは、そのトップリング301Aでリフタ32から基板を受取って、基板表面のラッピングを行う。つまり、ラッピングユニット30Aでは、例えば、ダイヤモンドスラリやコロイダルシリカスラリ等のラップ液を定盤301Aに供給しながら、例えば数10μm/h以下の加工速度で、基板表面を10μm程度除去して基板表面の平坦度を向上させるラッピング加工を行う。この場合、基板表面における加工後のダメージ深さは、1μm程度である。そして、基板表面を、必要に応じて純水でリンスする。
【0061】
ラッピング後の基板を第2搬送位置TP2でプッシャ33に受渡し、第1リニアトランスポータ5の横移動に伴って、第3搬送位置TP3に搬送する。そして、この第3搬送位置TP3で、CMPユニット30Bは、そのトップリング301Bでプッシャ34から基板を受け取って、基板表面のCMPを行う。つまり、CMPユニット30Bでは、例えば、コロイダルシリカを有する研磨液を研磨テーブル300Bに供給しながら、例えば数μm/h以下の加工速度で、基板表面を数μm程度除去して基板表面の平坦度を更に向上させるCMPを行う。この場合、基板表面における加工後のダメージ深さは、10nm程度である。そして、基板表面を、必要に応じて純水でリンスする。
【0062】
CMP後の基板を第4搬送位置TP4でリフタ35に受渡す。第2搬送ロボット40は、基板をリフタ35から受取って反転機41に搬送する。そして、反転機41は、基板を180°反転させた後、第1洗浄ユニット(薬液洗浄ユニット)42に搬送する。第1洗浄ユニット42は、例えばフッ化水素酸に基板を浸漬させる、基板のフッ化水素酸洗浄を行う。このフッ化水素酸洗浄後の基板を、第3搬送ロボット46で第3洗浄ユニット(純水洗浄ユニット)45に搬送し、純水で洗浄した後、第3搬送ロボット46で反転機41に戻す。なお、基板を薬液洗浄する必要がないときには、反転機で180°反転させた基板を第3搬送ロボット46で第3洗浄ユニット(純水洗浄ユニット)45に搬送し、純水で洗浄した後、第3搬送ロボット46で反転機41に戻す。反転機41は、基板を180°反転させる。
【0063】
第2搬送ロボット40は、反転後の基板を反転機41から受取り、第5搬送位置TP5でリフタ36に乗せる。第2トランスポータ6は、横移動を行って、リフタ36上の基板を第6搬送位置TP6または第7搬送位置TP7の一方に搬送する。そして、CAREユニット30Cは、その基板ホルダ130で、プッシャ37から、CAREユニット30Dは、その基板ホルダ130で、プッシャ38から基板をそれぞれ受取り、CARE(触媒基準エッチング)加工を行う。つまり、CAREユニット30C、30Dでは、例えばフッ化水素酸からなる処理液を触媒定盤126に供給しながら、触媒定盤126の表面に設けた白金142のSiCに対する触媒作用を利用して、例えば100nm/h以下の加工速度で、基板表面を数10nm程度除去するCARE加工を行う。この場合、基板表面における加工後のダメージ深さはゼロである。
【0064】
そして、CAREユニット30CでCARE加工を行った基板にあっては、CARE加工後の基板表面に残ったフッ化水素酸を純水置換部160で純水に置換して第6搬送位置TP6に戻し、CAREユニット30DでCARE加工を行った基板にあっては、CARE加工後の基板表面に残ったフッ化水素酸を純水置換部162で純水に置換して第7搬送位置TP7に戻す。しかる後、純水置換後の基板を、第2トランスポータ6を横移動させて、第5搬送位置TP5に移動させる。CARE加工後の基板の表面にフッ化水素酸が付着している状態で、励起波長の光が当たると、基板表面が荒れる可能性がある。このような場合には、CAREユニット30Cから純水置換部160及びCAREユニット30Dから純水置換部162への搬送経路の窓にUV遮断フィルムを貼ることが望ましい。
【0065】
第2搬送ロボット40は、第5搬送位置TP5から基板を取出し、反転機41に搬送する。反転機41は、基板を180°反転させた後、第1洗浄ユニット42に搬送する。第3搬送ユニット46は、基板を第1洗浄ユニット42から第2洗浄ユニット43に搬送し、ここで、基板を王水浸漬させて洗浄する、基板の王水洗浄を、必要に応じて複数回行う。
【0066】
そして、第3搬送ロボット46は、王水洗浄後の基板を第3洗浄ユニット(純水洗浄ユニット)44に搬送して、ここで基板の純水洗浄を行った後、乾燥ユニット45に搬送し、ここで基板を純水リンスした後、高速回転させてスピン乾燥させる。第1搬送ロボット22は、スピン乾燥後の基板を乾燥ユニット45から受取り、フロントロード部20に搭載した基板カセットに戻す。
【0067】
CAREユニット30C,30DによるCARE加工の終点検知方法としては、(a)加工時間から終点を検知する方法、(b)触媒定盤を回転駆動する駆動モータの電流値の変化から終点を検知する方法、(c)処理液の濃度変化から終点を検知する方法、(d)被加工面をIn-Situ光学的モニタで測定して終点を検知する方法(例えば、フォトルミネッセンス測定方法)、(e)基板を処理液から取出し、(In-LineもしくはEx-Situで)TEMなどの機器を用いて終点を検査する手法、(g)基板(被加工物)の加工前後の重量の変化から終点を検知する方法などが挙げられる。なお、パターンが形成されたSiCウェハ等の基板にあっては、SEMで行ってもよい。加工後表面の結晶性が重要である場合には、結晶性を確認することができるフォトルミネッセンス測定が好ましい。フォトルミネッセンス測定は大気圧で行うことができるので、取扱も容易である。
【0068】
この例によれば、第1表面除去加工ユニットとしてのラッピングユニット30Aにより、例えば数10μm/h以下の加工速度で、基板表面を10μm程度除去して基板表面の平坦度を向上させるラッピング加工を行い(基板表面における加工後のダメージ深さ1μm程度)、第2表面除去加工ユニットとしてのCMPユニット30Bにより、例えば数μm/h以下の加工速度で、基板表面を数μm程度除去して基板表面の平坦度を更に向上させるCMPを行い(基板表面における加工後のダメージ深さ10nm程度)、しかる後、第3表面除去加工ユニット(最終表面除去加工ユニット)としてのCAREユニット30Cまたは30Dにより、例えば100nm/h以下の加工速度で、基板表面を数10nm程度除去して、基板表面の平坦度を向上させるCARE加工を行っている(基板表面における加工後のダメージ深さゼロ)。
【0069】
これにより、基板(被加工物)の表面(被加工面)の平坦度を徐々に高めながら、平坦度に優れ、かつダメージのない最終的な加工表面を、十分な加工速度で創成することができる。この場合、被加工物の種類や加工状態にあっては、ラッピング加工(第1表面除去加工)またはCMP(第2表面除去加工)の一方を省略してもよい。
【0070】
SiCをCARE加工した場合、使用後の処理液中にはC(カーボン)が溶出しており、カーボンを処理する必要がある。カーボン処理方法としては、使用後の処理液に、触媒定盤の基板ホルダと反対の位置及び/または循環ライン内でUV照射して化学結合を切り、別の場所でカーボン析出させて、処理槽中の処理液のカーボン濃度を低減する方法が挙げられる。また処理液の循環ラインや配管にフィルタを設置して、カーボンを始めとするCARE加工に際して悪影響を及ぼす成分のろ過を行うことが好ましい。
【0071】
この例のように、処理液としてフッ化水素酸を、触媒として白金をそれぞれ使用して、SiCウェハからなる基板の表面を平坦に除去加工(CARE加工)すると、加工後における基板の加工表面に白金汚染が残る。この白金汚染は、基板を王水に浸漬させる、王水洗浄によって除去することができる。
【0072】
つまり、処理液としてフッ化水素酸を、触媒として白金をそれぞれ使用して、下記の表1に示す加工条件で、SiCからなる試料をCARE加工した後における試料の白金汚染、及び該試料を王水により洗浄した後の白金汚染を、下記の表2に示す測定条件で、全反射X線蛍光分析法(Total Reflection X-ray fluorescence:TRXF)により測定した結果を図7に示す。王水による洗浄では、塩酸(60%):硝酸(60%)を3:1で混ぜて60℃に加熱した溶液(王水)中に、試料を10分間浸漬させ、その後、超純水リンスを1分間行って、1回の王水洗浄とした。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
図7より、CARE加工後の試料に白金汚染が確認されたが、その後、試料の王水洗浄を繰返す毎に白金汚染が減少していることが分る。
【0076】
比較として、前述のようにして、SiCからなる試料をCARE加工した後、試料のSPM洗浄、更にはフッ化水素酸洗浄を行った場合におけるTRXF測定結果を図8に示す。SPM洗浄は、硫酸(98%):過酸化水素水(30%)=4:1の溶液中に、試料を10分間浸漬させた後、超純水リンスを1分間行った。フッ化水素酸洗浄は、フッ化水素酸(HF:50%)溶液中に、試料を10分間浸漬させた後、超純水リンスを1分間行った。図8により、CARE加工後に存在する白金汚染は、SPM洗浄やフッ化水素酸洗浄では除去できないことがわかる。このSPM洗浄及びフッ化水素酸洗浄は、以下同様である。
【0077】
この例では、処理液としてフッ化水素酸を、触媒定盤表面の触媒として白金をそれぞれ使用したCARE法でSiCの表面を除去加工(エッチング)するようにした例を示している。処理液としてフッ化水素酸や塩化水素等のハロゲン化水酸化物を、触媒として、白金、金、セラミック系固定触媒、モリブデンまたはモリブデン合金を使用したCARE法で、Si,SiC,GaN,サファイヤ、ルビーまたはダイヤモンドの表面を除去加工(エッチング)するようにしてもよい。
【0078】
更に、処理液として過酸化水素水またはオゾン水を、触媒定盤表面の触媒として遷移元素、例えばFe,Ni,Co,Cu,CrまたはTiを使用したCARE法で、Si,SiC,GaN,サファイヤ、ルビーまたはダイヤモンドの表面を除去加工(エッチング)するようにしてもよい。
【0079】
例えば、図2乃至図4に示すCAREユニット30C,30Dにおいて、処理液供給ノズル174から処理液としての過酸化水素水を触媒定盤126に供給し、触媒定盤126として、それ自体が触媒作用のあるFe製のものを使用して、SiCウェハ等の基板表面を除去加工(エッチング)するようにしてもよい。このように、処理液として過酸化水素水を、触媒としてFeをそれぞれ使用して、SiCウェハ等の基板表面のCARE加工を行うと、加工後における基板の加工表面に鉄汚染が生じ、また酸化膜が生成される。
【0080】
処理液として過酸化水素水を、触媒として鉄をそれぞれ使用して、上記表1に示す加工条件で、SiCからなる試料をCARE加工した後における試料の鉄汚染、及び該試料をSPM洗浄した後の鉄汚染をX線光電子分光法(x-ray photoelectron spectroscopy:XPS)より測定した結果を図9に示す。ここで、図9(a)は、CARE加工後の試料のFe2pコアレベルのXPS測定結果を、図9(b)は、SPM洗浄後の試料のFe2pコアレベルのXPS測定結果をそれぞれ示す。図9(a)から、CARE加工後にはFe2pコアレベルのシグナルが確認されたが、図9(b)から、SPM洗浄後にFe2pコアレベルのシグナルは全く検出されていない。このことから、CARE加工で生じた鉄汚染がSPM洗浄により完全に除去されたことがわかる。
【0081】
SiCの表面除去工程は、一般的に酸化・酸化膜除去という過程を経る、そのため、加工後の被加工物表面に酸化膜が残存する。特に、被加工物の被加工面に紫外線を照射しながら加工する光照射CARE工程では、紫外線を照射して酸化を促進するために加工後の被加工物表面に酸化膜が残存しやすくなる。
【0082】
処理液として過酸化水素水を、触媒として石英ガラスをそれぞれ使用して、更に被加工物の被加工面に紫外線を照射しながら加工する光照射CAREにより、SiCからなる試料を6時間加工した後、及び該試料をフッ化水素酸洗浄した後における試料表面をX線光電子分光法で測定した結果を図10及び図11に示す。図10は、光照射CARE加工後の試料表面を測定した結果であり、試料材質であるSi−C結合を示すピーク(101.3eV)の他に、酸化膜(SiO)を示す103.6eVのピークが観察される。図11は、光照射CARE加工後の試料を、50%フッ化水素酸溶液中に10分間浸漬を行させた後のX線光電子分光法測定結果であり、酸化膜が除去されて、SiOのピークが無くなり、Si−C結合のピークの値が大きくなったことが判る。このことから、光照射CARE加工後のSiC試料をフッ化水素酸中に浸漬させることで、試料表面に残存する酸化膜を除去できることが確認された。
【0083】
処理液として過酸化水素水を、触媒として鉄をそれぞれ使用してSiCからなる試料をCARE加工した後にも、その除去加工の原理上、試料表面に酸化膜が残存すると考えられる。このため、この場合にも、除去加工後にフッ化水素酸洗浄により酸化膜を除去することが好ましい。
【0084】
以上より、例えば、図2乃至図4に示すCAREユニット30C,30Dにおいて、処理液供給ノズル174から供給される処理液としての過酸化水素水を使用して、触媒定盤126を触媒作用のあるFe製とした場合には、図1に示す平坦化装置の第1洗浄ユニット42として、前述の例と同様に、基板をフッ化水素酸に浸漬させて洗浄する、フッ素酸化酸洗浄ユニットを使用し、第2洗浄ユニット43としては、基板をSPMに浸漬させて洗浄する、SPM洗浄ユニットを使用することが好ましい。これにより、CARE加工後の基板を、第1洗浄ユニット42でフッ化水素酸洗浄し、第2洗浄ユニット43でSPM洗浄して、基板表面の鉄汚染および基板表面に生成された酸化膜を除去することができる。
【0085】
処理液として過酸化水素水またはオゾン水を使用した場合、触媒定盤表面の触媒として、上記遷移金属の他に、白金や金等の貴金属、セラミックス系の金属酸化膜、またはガラス系の金属酸化物を使用してもよい。セラミックス系の金属酸化膜としては、例えばアルミナが、ガラス系の金属酸化物としては、サファイヤ(Al)、石英(SiO)またはジルコニア(ZrO)がそれぞれ挙げられる。
【0086】
更に、処理液として過酸化水素水またはオゾン水を使用した場合、触媒定盤表面の触媒として、酸性または塩基性を有する固体触媒を使用してもよい。この酸性または塩基性を有する固体触媒としては、例えばイオン交換機能を付与した不織布、樹脂または金属が挙げられる。イオン交換機能を付与する素材は、例えばポリエチレン繊維からなる不織布、フッ素樹脂やPEEK等の樹脂、またはPt,Au等の金属の耐酸化性材料であることが好ましく、例えば、グラフト重合法により、ポリエチレン繊維からなる不織布にイオン交換機能を付与することができる。この場合、固体触媒のイオン交換容量を大きくすることによって、被加工物に対するエッチング速度をより速くすることができる。固体酸触媒としては、他にHSO、HPO等をシリカーアルミナに付着させた固体化酸、金属硫酸塩、金属リン酸塩などの無機塩、Al、ThO、Al−SiO、TiO−SiO等の酸化物が挙げられる。また、固体塩基触媒としては、NaOH、KOH、Na、Kをシリカゲル等に付着させた固体化塩基、NaCO、BaCO、NaWO等の無機塩、CaO、MgO、SrO、MgO−SiO、MgO−Al等の酸化物が挙げられる。
【0087】
定盤表面の汚染(特に有機汚染)もしくは定盤表面の酸化膜の有無が濡れ性に寄与すると考えられる。触媒定盤の濡れ性を向上させる手段として、加工前に行う方法と、加工中に行う方法がある。
(1)触媒定盤の濡れ性向上を加工前に別処理で行う場合
定盤を加工前に薬液洗浄(例えば硫酸・過水洗浄)または紫外線照射を行う。これにより定盤表面の有機物汚染が除去され、定盤表面の濡れ性が向上する。また紫外線照射を行うことにより、鉄等の定盤表面が酸化され濡れ性が向上する。紫外線照射により触媒表面に酸化膜を生成し、触媒定盤の濡れ性を向上するのは、白金以外の定盤に適用可能である。
(2)加工中に触媒定盤の濡れ性向上化を行う場合
加工中に、トップリングとは異なる位置で、定盤表面に紫外線照射をし、触媒表面に酸化膜を生成し、触媒定盤の濡れ性を向上させる。これにより加工中に付着した定盤表面の有機物が除去されるため、濡れ性が向上し、親水化しやすくなる。また、加工中に鉄等の定盤表面の酸化膜が除去されたとしても、紫外線照射を行うことにより再度酸化膜を生成することが可能であり、濡れ性が向上する。
【0088】
なお、上記の実施形態のCAREユニット30C,30Dでは、基板ホルダ130で1枚の基板を保持し、基板1枚毎に触媒定盤に向け押圧してCARE加工を行っている。触媒定盤は一般に高価であり、加工性能が触媒定盤の表面状態に影響を受ける。このため、基板ホルダで複数の基板、例えば4枚の基板を同時に保持し、触媒定盤に向け同時に押圧して、複数の基板を同時にCARE加工することが、スループットを向上させる上で好ましい。CAREユニットとして、基板を1枚保持する複数の基板ホルダを備えたものを使用してもよい。
【0089】
CARE加工を行う前に、ウェット洗浄で基板(被加工物)の表面(被加工面)を洗浄することが好ましい。基板表面の汚染には、例えば微粒子汚染、有機汚染、及び金属汚染があり、微粒子汚染に対しては、ウォータージェット等の非スクラブ洗浄(コロイダルシリカを用いる場合にはフッ化水素酸洗浄)、有機汚染に対しては、SPM洗浄(硫酸過水洗浄)、金属汚染に対しては、SPM洗浄またはフッ化水素酸洗浄が適当である。これらの洗浄では、SiC基板表面は変化しないので、汚染のみを除去することができる。
【0090】
緩衝液(緩衝剤)を添加した処理液を使用して被加工物をCARE加工する加工概念を図12(a)〜(d)に示す。図12(a)に示すように、処理液412b中に固体酸性触媒416を浸漬させて配置すると、固体酸性触媒416の表面で水素イオン(H)416aが生成され、この水素イオン416aは、固体酸性触媒416の表面から離脱する。ここで、処理液412b中には、緩衝液(緩衝剤)を添加することで緩衝剤480が溶け込んでおり、このため、図12(b)に示すように、固体酸性触媒416の表面から脱離した水素イオン416aは、速やかに緩衝剤480と反応して不活性化する。そのため、水素イオン416aは、加工基準面となる固体酸性触媒416の表面上若しくは極近傍にしか存在しない。そこで、図12(c)に示すように、固体酸性触媒416と被加工物414の被加工面とを、緩衝剤480を含む処理液412b中で接触または極接近させると、接触部分の被加工物414の表面原子が化学反応により処理液412b中に溶解される。そして、図12(d)に示すように、固体酸性触媒416を被加工物414の被加工面から離すと、固体酸性触媒416の表面で生成される水素イオン416aが被加工物414の表面に作用しなくなるため、溶解反応が止まる。従って、固体酸性触媒416が接触または極接近している間だけ、被加工物414の被加工面が加工される。
【0091】
固体酸触媒としては、他にHSO、HPO等をシリカーアルミナに付着させた固体化酸、金属硫酸塩、金属リン酸塩などの無機塩、Al、ThO、Al−SiO、TiO−SiO等の酸化物、陽イオン交換体、が挙げられる。また、固体塩基触媒としては、NaOH、KOH、Na、Kをシリカゲル等に付着させた固体化塩基、NaCO、BaCO、NaWO等の無機塩、CaO、MgO、SrO、MgO−SiO、MgO−Al等の酸化物、陰イオン交換体が挙げられる。
【0092】
処理液中に緩衝液(緩衝剤)を添加しない場合、つまり処理液中に緩衝剤が存在しない場合、水素イオンは固体酸性触媒の表面を脱離した後も処理液中に拡散する。そのため、水素イオンは、固体酸性触媒の表面からある程度離れた場所にも存在する。このため、固体酸性触媒と被加工物の被加工面とを、処理液中で接触または極接近させると、接触部分だけではなく固体酸性触媒の表面から離れた部分においても化学反応により、被加工面の表面原子が、処理液中に溶解される。これにより、被加工面の凸部だけでなく、凹部にも水素イオンが作用して、被加工表面は等方的に加工され、平坦化が進行しない。
【0093】
緩衝液(緩衝剤)としては、リン酸緩衝液が挙げられるが、リン酸緩衝液以外にも、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液など、処理液のpHの変化を小さくするようなものであればよい。処理液に緩衝液を添加して使用する場合、処理液としては、超純水や、オゾン水、過酸化水素水または過硫酸カリウム水溶液などの酸化剤を含む水溶液などが好ましい。添加剤濃度は、所定のpHになるように調整することが好ましい。例えば、GaN基板を加工する場合、処理液のpHは、7付近(pH=6.5〜7.5)であることが望ましい。
【0094】
図13は、光源を備えたCAREユニット(光照射CAREユニット)の概要を示す。このCAREユニット(光照射CAREユニット)は、例えば緩衝液(緩衝剤)を含む処理液482で内部を満たす容器484と、回転軸486の上端に連結されて容器484内に回転自在に配置された定盤488と、被加工面を下向きにして、GaN基板等の被加工物490を着脱自在に保持するホルダ492を有している。ホルダ492は、回転軸494の下端に固定されている。定盤488の下方には、光源496が設置され、定盤488は、光透過性に優れた固体酸性触媒、例えば石英によって構成されている。これによって、光源496により、定盤488を通じて、光、例えば紫外光が被加工物490の下面(被加工面)に照射される。定盤488は、光透過性に優れたサファイヤやジルコニアなどで構成されてもよい。
【0095】
図13に示すCAREユニット(光照射CAREユニット)を使用し、紫外線を照射しながらGaNウェハ(試料)の加工を行った。加工時間は3時間である。図14(a)は、加工前の試料表面の位相シフト干渉顕微鏡像を示す。図14(b)は、緩衝液(緩衝剤)を加えない処理液(超純水)を使用して加工を行った後の試料表面の位相シフト干渉顕微鏡像を示し、図14(c)は、緩衝液(pH6.8のリン酸塩緩衝液)を加えた処理液(純水)を使用して加工を行った後の試料表面の位相シフト干渉顕微鏡像を示す。
【0096】
図14(a)から、前加工で試料の表面に導入された表面ラフネスが観察でき、図14(b)及び(c)から、緩衝液(緩衝剤)を加えた処理液を用いて加工した場合は、緩衝液(緩衝剤)を加えなかった処理液を用いて加工した場合と比べ、表面ラフネスが大幅に減少していることがわかる。
【0097】
例えば、半導体ウェハ等の基板にバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光を照射すると価電子帯の電子が励起され、電子−正孔対が生成される。基板表面の酸化は、光照射によって生成された価電子帯の正孔を介して行われる。光吸収により生成した電子−正孔対が再結合して消滅すると、基板表面での酸化反応が行われないため、再結合を抑制する必要がある。白金(Pt)と基板を電気的に接触させることによって、光吸収により生成した伝導体の電子は白金に蓄積され、溶液との電子授受を行うため、電子−正孔対の再結合を抑制することが可能である。
【0098】
基板と白金を電気的に接触させる効果を確認するために、GaN基板表面の光酸化実験を行った。試料はn型−GaN基板(0001)面であり、裏面(000−1)に白金を電子ビーム蒸着により500nmの膜厚で成膜し基板と白金を電気的に接触させた。また、白金を成膜していないGaN基板を比較試料とした。
【0099】
光照射は、基板を超純水中に浸漬した状態において3時間に亘って行った。図15に光照射前後のXPS O1sスペクトルを示す。白金成膜を行わなかった試料のO1sピーク強度は光照射前の強度と比較して変化が確認されない。それに対し、白金成膜を行った試料のO1sピーク強度は、光照射前よりも大きくなっていることが判る。以上のことから白金蒸着を行った場合のみ、試料表面の酸化が行われていることが判る。
【0100】
また裏面に白金蒸着を行ったGaN基板と、行っていないGaN基板を試料とし、光照射CARE法により加工実験を行った。実験は、pH=6.86のリン酸緩衝溶液中で試料表面に光を照射しながら、3時間に亘って試料を加工した。図16(a)及び(b)に、裏面に白金蒸着を行っていない試料の加工前後の試料(GaN基板)表面の位相シフト緩衝顕微鏡像を、図16(c)に、裏面に白金蒸着を行った試料の加工後の試料(GaN基板)表面の位相シフト緩衝顕微鏡像をそれぞれ示す。裏面に白金成膜を行っていない試料表面(図16(b))は、前加工面(図16(a))と比較して、モフォロジーおよびマイクロラフネスが変化しておらず、加工が進行していないことが判る。それに対し、裏面に白金を成膜した試料表面(図16(c))は、前加工面に存在するスクラッチが除去され平坦化されていることが判る。またマイクロラフネスも6.497nm rmsから0.804nm rmsへと改善されていることがわかる。
【0101】
基板に接触させる金属としては、白金以外にも、Ti,Ni,Crなど他の金属などでもよいが、処理液と金属の界面には白金を用いることが好ましい。また成膜方法は、真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ成膜等どれを用いてもよい。裏面の略全面に白金を蒸着することが望ましいが、裏面の一部へ白金を蒸着してもよく、また必ずしも、基板裏面への成膜である必要がなく、金属製の基板ホルダを用いるなど、基板と金属が電気的に接続していればよい。基板ホルダのリテイナの内側に白金をコーティングし、基板のエッジ部と接触させても良い。
【0102】
これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
1 ハウジング
2 ロードアンロード部
3 表面除去加工部
4 洗浄部
5 第1リニアトランスポータ
6 第2リニアトランスポータ
20 フロントロード部
30A ラッピングユニット(第1表面除去加工ユニット)
30B CMPユニット(第2表面除去加工ユニット)
30C,30D CARE(触媒基準エッチング)ユニット(第3表面除去加工ユニット)
124 処理槽
126 触媒定盤
128 基板(被加工物)
130 基板ホルダ
140 基材
142 白金(触媒)
144 溝
150 純水噴射ノズル
160,162 純水置換部
170 ヒータ
172 熱交換器
174 処理液供給ノズル
176 流体流路
200 触媒定盤
200a 貫通穴
202 回転体
204 処理液溜り
206 ロータリジョイント
300A 定盤
300B 研磨テーブル
301A、301B トップリング
302A ラップ液供給ノズル
302B 研磨液供給ノズル
303B ドレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物のSiCまたはGaNからなる被加工面を平坦に除去加工する平坦化方法であって、
緩衝剤を含む第1処理液中に被加工物を配し、ガラス系金属酸化物からなる触媒定盤を透過させて被加工物の被加工面に光を照射させながら、前記触媒定盤の表面を被加工物の被加工面に接触または極接近させて該被加工面を平坦に加工して該被加工面の平坦度を向上させる光照射触媒基準エッチングで初期表面除去工程を行い、
初期表面除去工程後の被加工物の被加工面を、フッ化水素酸洗浄または純水洗浄で洗浄し、
ハロゲン化水素酸、過酸化水素水またはオゾン水からなる第2処理液中に被加工物を配し、少なくとも表面が、白金、金、セラミックス系固体触媒、遷移金属、及びガラス系金属酸化物の何れかのみからなる触媒定盤の該表面を被加工物の被加工面に接触または極接近させて該被加工面をダメージの残らない平坦に加工する触媒基準エッチングで最終表面除去工程を行い、
最終表面除去工程後の被加工物の被加工面を、SPM洗浄、王水洗浄、及びフッ化水素酸洗浄のいずれか1つで洗浄することを特徴とする平坦化方法。
【請求項2】
前記第2処理液には、前記触媒定盤の濡れ性を向上させる濡れ性向上剤が更に加えられていることを特徴とする請求項1記載の平坦化方法。
【請求項3】
前記濡れ性向上剤は、硝酸またはエタノールであることを特徴とする請求項2記載の平坦化方法。
【請求項4】
前記第2処理液には、pH調整用緩衝剤が更に加えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の平坦化方法。
【請求項5】
前記第2処理液には、有機アルコールまたは無機酸が更に加えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の平坦化方法。
【請求項6】
前記触媒定盤を回転駆動する駆動モータの電流値の変化、前記第2処理液の濃度変化、被加工面を光学的モニタで測定した時の測定結果、及び被加工物の加工前後における質量変化のいずれかで前記最終表面除去工程の終点を検知することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の平坦化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−64972(P2012−64972A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271384(P2011−271384)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2007−305607(P2007−305607)の分割
【原出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】