説明

平版印刷版の製版方法

【課題】pH3〜10程度の現像液を用いても、十分な耐刷性を維持でき、かつ充分な検版性を発揮できる、平版印刷版の製版方法を提供する。
【解決手段】粗面化処理されたアルミニウム支持体上に、赤外線吸収色素、重合開始剤、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物、及び酸性色素と相互作用する有機高分子化合物を含有する画像形成層を設けた平版印刷版原版を、画像様に露光した後、界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液により現像することを特徴とする、平版印刷版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な検版性及び耐刷性を発揮できる平版印刷版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤含有現像液によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像記録層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から高pHのアルカリ現像処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっており、簡易化の一つとして中性に近い水溶液で現像できることが強く望まれている。
【0004】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0005】
上述のような背景から、現在、デジタル化と製版作業の簡易化の両面への適合が、従来にも増して強く望まれている。このようなデジタル化され簡易化された製版作業を作業効率のよい明室または黄色灯下で行うには、それに対応した光源および平版印刷版原版が必要とされる。
そのようなレーザー光源としては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザーおよびYAGレーザー等の固体レーザーが、高出力かつ小型のものを安価に入手できるようになったことから、極めて有用である。また、UVレーザーも用いうる。
【0006】
また、これに対応する平版印刷版原版および製版方法としては、例えば、特許文献1には、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた画像形成層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版をガム液により現像する製版方法が記載されている。この製版方法では、上記平版印刷版原版を、赤外線レーザーを用いた画像露光によって、疎水性熱可塑性重合体粒子を融着させて画像を形成させた後、ガム液により未露光部を除去することにより現像が可能となる。しかし、このように微粒子の単なる熱融着による合体で画像を形成させる方法は、良好な現像性を示すものの、画像強度が極めて弱く、耐刷性が不十分であるという問題を有していた。
特許文献2には、(i)親水性支持体、および(ii)ラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤および赤外吸収染料を含有し、赤外レーザー露光により硬化し、ガム液で現像可能な感光層からなる平版印刷版原版を用意し、赤外レーザーで画像様に露光し、該感光層の未硬化部分をガム液で除去することからなる平版印刷版原版の処理方法が記載されている。また、特許文献3及び4には、ラジカル重合系感光層を赤外レーザー露光により硬化し、pH2〜10の水性現像液で未露光部を除去する平版印刷版原版の現像方法が記載されている。重合反応を用いて画像形成する方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有する。
【0007】
一般に、現像処理工程を必要とする平版印刷版原版は、現像処理により非画像部が除去されアルミニウム支持体が露出するため、画像形成層中に染料あるいは顔料を添加することにより、現像処理を行えば検版が可能となる。しかしながら、重合反応を用いる画像形成層に染料あるいは顔料を添加すると、重合性が低下し耐刷性が不足する問題が生じる。
以上のように、画像形成層に染料あるいは顔料を添加しなければ、耐刷性の向上に有用であるが、一方で検版性が困難となる。他方、画像形成層に染料あるいは顔料を添加すると検版性は良好となるが、耐刷性が低下する。従って、平版印刷版の製版において、耐刷性と検版性とを両立させる手段が望まれている。
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1342568号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/111727号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6902865号明細書
【特許文献4】特開2006−106700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、pH3〜10程度の現像液を用いても、十分な耐刷性を維持でき、かつ充分な検版性を発揮できる、平版印刷版の製版方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、下記の構成による感光性平版印刷版原版、及びそれを用いた平版印刷版の作製方法により、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、粗面化処理されたアルミニウム支持体上に、赤外線吸収色素、重合開始剤、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物、及び酸性色素と相互作用する有機高分子化合物を含有する画像形成層を設けた平版印刷版原版を画像様に露光した後、界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液により現像することを特徴とする、平版印刷版の製版方法である。
該酸性色素と相互作用する有機高分子化合物としては、アンモニウム基を有する有機化合物が挙げられる。
該画像形成層にポリマー微粒子を含ませる実施態様があり、アクリロニトリル共重合体からなる平均粒径150〜200nmであるポリマー微粒子があげられる。
本発明で使用する感光性平版印刷版原版の実施態様として、該アルミニウム支持体と画像形成層の間に、支持体吸着性基及び架橋性基をあわせ持つポリマーを含有する中間層を設けた態様がある。本発明の感光性平版印刷版原版の画像形成層にはさらに、エチレン性不飽和基及び親水性基をあわせ持つポリマーを含ませることができる。
該粗面化されたアルミ支持体の実施態様として、20〜60nmの平均ポア径を有する陽極酸化皮膜を有するものがある。
本発明で使用する、上記界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液の実施態様として、さらに有機溶剤を0.1〜5.0質量%含有する態様がある。該水溶液の別の実施態様として、水溶性高分子化合物を含有する態様がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザーによる画像記録が可能であり、pH3〜10の処理液を用いて現像しても、十分な耐刷性を維持しつつ、該処理液を用いて着色することで検版性を大幅に向上させた平版印刷版の製版方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、粗面化処理したアルミニウム支持体上に、赤外線吸収色素、重合開始剤、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物、及び酸性色素と相互作用する有機高分子化合物、を含有する画像形成層を設けた感光性平版印刷版原版であり、これを画像露光した後、界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液により現像することで、充分な検版性を発揮することができる。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成について詳細に説明する。
【0013】
(画像形成層)
本発明の平版印刷版原版における画像形成層は、画像露光後、pH3〜10の処理液で未露光部分を除去することにより画像形成可能な画像形成層であり、該処理液中の酸性色素と相互作用することにより着色される。
該画像形成層は(A)赤外線吸収色素、(B)重合開始剤、(C)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物、及び(D)酸性色素と相互作用する有機高分子化合物を少なくとも含有し、重合反応を利用して画像部が硬化する。
【0014】
<(A)赤外線吸収剤>
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の重合開始剤(ラジカル発生剤)に電子移動および/またはエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0015】
染料としては、市販の染料および例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0016】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)および(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
これらの染料のうち中でも好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(i)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
一般式(i)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または下記構造式で表される基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ハロゲン原子、セレン原子を示す。Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表し、Xa-は後述するZa-と同様に定義される。
【0021】
【化3】

【0022】
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0023】
Ar1およびAr2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素原子数12個以下の炭化水素基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。Y1およびY2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3およびR4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられ、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0024】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(i)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0025】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0026】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0027】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0028】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像形成層塗布液中での良好な安定性と画像形成層の良好な均一性が得られる。
【0029】
顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0030】
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の画像形成層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、画像形成層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像形成層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
画像形成層の吸光度は、画像形成層に添加する赤外線吸収剤の量と画像形成層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像形成層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0031】
<(B)重合開始剤>
本発明に用いられる(B)重合開始剤としては、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、(C)重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうる重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
本発明における重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ系重合開始剤、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0032】
(a)上記有機ハロゲン化物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に好ましいものとして、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0033】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基が結合したs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−フルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−クロロ−4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−シアノフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−アセチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−エトキシカルボニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−フェノキシカルボニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスルホニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルスルホニウムフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン・テトラフルオロボレート、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ジエトキシホスホリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(4−ヒドロキシフェニルカルボニルアミノ)フェニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(p−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−(o−メトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(3,4−エポキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−〔1−フェニル−2−(4−メトキシフェニル)ビニル〕−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−ヒドロキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(3,4−ジヒドロキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−t−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
【0034】
(b)カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4'−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0035】
(c)アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0036】
(d)有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0037】
(e)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0038】
(f)アジド化合物としては、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)へキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル))4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0039】
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号、特許第2764769号明細書、特開2002−116539号公報、および、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0040】
(i)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2003−328465号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0041】
(j)オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653-1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202-232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物が挙げられる。具体例としては下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
【0042】
【化4】

【0043】
(k)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0044】
特に反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物あるいはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好適なものとして挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明に好適なオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
【0045】
【化5】

【0046】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0047】
式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましくは特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
以下に、本発明において重合開始剤として好適に用いられるオニウム塩の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
(B)重合開始剤としては、上記に限定されないが、特に反応性、安定性の面から、(a)有機ハロゲン化物、なかでも、これに包含されるトリアジン系開始剤、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物に包含されるジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩がより好ましい。また、これらの重合開始剤の中でも赤外線吸収剤との組み合わせで焼き出し画像の視認性向上を図る観点からは、オニウム塩であって、対イオンとして無機アニオン、例えば、PF6-、BF4-など、を有するものが好ましい。さらに、発色に優れていることから、オニウム塩としては、ジアリールヨードニウムが好ましい。
【0056】
また、これらの(B)重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、画像形成層中や、これに隣接して別の層を設けそこに添加してもよい。
これらの重合開始剤は、各々画像形成層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。これらの重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<(C)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物>
本発明で使用する、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物は、より具体的には、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0058】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0059】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0060】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0061】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0062】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0063】
また、イソシアネートとヒドロキシル基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示されるヒドロキシル基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0064】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
【0065】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0066】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号、各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0067】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像形成層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
重合性化合物は、画像形成層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
そのほか、重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0068】
<(D)酸性色素と相互作用する有機高分子化合物>
酸性色素と相互作用する物質として、下記のアンモニウム基含有ポリマーが好適なものとして挙げられる。アンモニウム基含有ポリマーは、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、2級、3級、及び4級のアンモニウム基が好ましく、特に好ましくは、4級アンモニウム基である。アンモニウム基を有する繰り返し単位としては、一般式(i)および(ii)で表わされる構造が好ましく、中でも、一般式(i)で表わされる構造がもっとも好ましい。
【化13】

R1は水素原子、低級アルキル基を表わす。Qは単結合、アルキレン基、フェニレン基、アラルキレン基、
【化14】

で表される基を表す。ここで、Lはアルキレン、アリーレン、アラルキレンを表し、Rはアルキル基を表す。Gは
【化15】

を表す。
【0069】
R2、R3、R4は水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、これらは同じであっても、異なっていてもよく、また置換されていてもよい。X-は陰イオンを表す。また、Q、 R2、R3、R4の任意の2つ以上の基が相互に結合していて、窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。nは1〜4の整数である。
具体的には以下の一般式(iii)、一般式(iv)、一般式(v)、一般式(vi)を挙げることができる。
【化16】

式中、R11は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。R2はアルキレン基、およびアルキレンオキシ基などの二価の連結基を表し、R31、R32およびR33は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。X-は、F-、Cl-、Br-、I-、置換基を有してもよいベンゼンスルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、プロピル硫酸アニオン、分岐してもよいブチル硫酸アニオン、分岐してもよいアミル硫酸アニオン、PF6-、BF4-、B(C654-などの有機または無機のアニオンを表す。
【0070】
アンモニウム基を有する繰り返し単位を誘導するモノマーとともに、共重合させることができるモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるモノマーが挙げられる。
【0071】
共重合モノマーの具体例として、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクゾレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、プロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0072】
本発明で使用する酸性色素と相互作用する有機高分子化合物はまた、下記式(III)で表されるエステル基又は下記式(IV)で表されるアミド基を分子内に有していてもよい。
【化17】

上記式中、bは2〜5の整数であり、cは2〜7の整数であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。
【0073】
これら重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類である。これらを1種あるいは2種以上用いることができ、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0〜95mol%であり、特に好ましくは、20〜90mol%である。
【0074】
上記アンモニウム基含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:cSt/g/ml)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。
【0075】
<還元比粘度の測定方法>
30質量%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液をウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れ、30℃にて流れおちる時間を測定し、計算(「動粘度」=「粘度計定数」×「液体が細管を通る時間(秒)」)を用いて定法により算出する。
【0076】
アンモニウム基含有ポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して0.0005質量%〜30.0質量%が好ましく、0.001質量%〜20.0質量%がより好ましく、0.002質量%〜15.0質量%が最も好まし好ましい。
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
【0077】
【化18】

【0078】
【化19】

【0079】
【化20】

【0080】
【化21】

【0081】
<(E)ポリマー微粒子>
本発明において、必要に応じて画像形成層にポリマー微粒子を含有させることができる。該ポリマー微粒子としては、具体的には疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、および熱反応性ポリマー微粒子から選ばれる少なくとも1種のポリマー微粒子であることが好ましい。
【0082】
画像形成層に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報および欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。かかるポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくは共重合体、またはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、及びアクリロニトリルのホモポリマーもしくは共重合体があげられ、これらの中で最も好適なもとしてアクリロニトリル共重合体を挙げることができる。アクリロニトリル共重合体のポリマー微粒子を添加することにより、耐刷性が良化する。
【0083】
上記ポリマー微粒子を構成するポリマーおいて、共重合させることができるモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるモノマーが挙げられる。
【0084】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクゾレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、プロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0085】
また、上記ポリマー微粒子を構成するポリマーは、下記式(III)で表されるエステル基又は下記式(IV)で表されるアミド基を分子内に有していてもよい。
【化22】

上記式中、bは2〜5の整数であり、cは2〜7の整数であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。
【0086】
例えばアクリロニトリルに共重合させるモノマーとして、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類などが好ましく、それらの共重合成分の含有量は0〜95mol%であり、特に好ましくは、20〜90mol%である。
【0087】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は10〜2000nmの範囲が好ましく、さらに100〜300nmの範囲が好ましく、特に150〜200nmの範囲が好ましい。10nm以上でポリマー微粒子の経時安定性がより良好になり、2000nmより小さくなることで耐刷性が良好になる。
【0088】
疎水化前駆体として用いうる前記粒径の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法が挙げられ、その他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
【0089】
本発明において疎水化前駆体として用いうる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱硬化性ポリマー微粒子および熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、およびその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0090】
熱硬化性ポリマーとしては、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素またはメトキシメチル化尿素など尿素誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミンまたはその誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、特に好ましいのは、フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂およびエポキシ樹脂である。
【0091】
好適なフェノール骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールなどをホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、およびN−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール骨格を有するメタクリルアミドもしくはアクリルアミドまたはメタクリレートもしくはアクリレートの重合体または共重合体を挙げることができる。
【0092】
本発明に用いられる熱硬化性ポリマー微粒子の平均粒径は10〜2000nmの範囲が好ましく、さらに100〜300nmの範囲が好ましく、特に150〜200nmの範囲が好ましい。
このような熱硬化性ポリマー微粒子は、溶解分散法で容易に得られるが、熱硬化性ポリマーを合成する際に微粒子化してもよい。しかし、これらの方法に限らない。
【0093】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基およびこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基および反応相手であるヒドロキシル基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物および反応相手であるアミノ基またはヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。
【0094】
これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0095】
重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合または懸濁重合することが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。具体的には、先に記載したアクリロニトリルと共重合可能なモノマーと同じである。
【0096】
熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0097】
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマーまたは親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
【0098】
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度および経時安定性が得られる。
【0099】
<マイクロカプセルおよび/またはミクロゲル>
本発明においては、上記の画像形成層構成成分(A)〜(D)及びその他構成成分を画像形成層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散型画像形成層である。他の一つの態様は、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させて画像形成層に含有させるマイクロカプセル型画像形成層である。さらに、マイクロカプセル型画像形成層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。ここで、マイクロカプセル型画像形成層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
さらに他の態様として、画像形成層に架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様が挙げられる。該ミクロゲルは、その中および/または表面に該構成成分(A)〜(C)の一部を含有することが出来る。特に(C)重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0100】
画像形成層構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、後述のバインダーポリマーに導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0102】
一方、ミクロゲルを調製する方法としては、特公昭38−19574号、同42−446号明細書に記載されている界面重合による造粒、特開平5−61214号明細書に記載されているような非水系分散重合による造粒を利用することが可能である。但し、これらの方法に限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
【0103】
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、界面重合により造粒され3次元架橋を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。
【0104】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0105】
<その他の画像形成層成分>
画像形成層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。以下、それらについて説明する。
【0106】
<1>バインダーポリマー
画像形成層には、画像形成層の膜強度を向上させるため、バインダーポリマーを用いることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
特にアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
これらのバインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0107】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2n CR1 =CR23 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR23 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR23 、−(CH2n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR23 、−(CH2n −O−CO−CR1 =CR23 および−(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 またはR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C65 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C65 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 および−CH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
【0108】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0109】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0110】
また、バインダーポリマーは、本発明で使用する高分子化合物は親水性基を有することが好ましい。親水性基は、画像形成層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性を両立することが可能になる。
【0111】
親水性基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、アルキレンオキサイド構造、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等などがあり、好ましいのはアミド基、ヒドロキシル基、ポリオキシエチル基、アルキレンオキサイド構造などが挙げられ、下記一般式(II)で表されるアルキレンオキサイド構造が最も好ましい。該アルキレンオキサイド構造を側鎖に有していることが好ましい。
【0112】
【化23】

式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは1、3又は5であり、lは1〜9の整数を表す。lは好ましくは1〜8の整数であり、より好ましくは1〜7の整数、さらに好ましくは1〜6の整数、最も好ましくは2〜4の整数である。
【0113】
アクリル樹脂に親水性基を付与するには親水性モノマーを共重合すればよい。親水性基を有する共重合モノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオキシエチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノメタクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリレートが挙げられる。
これらを1種あるいは2種以上用いることができ、これらの親水性基を有する構造単位の好適に使用される含有量は、特定高分子化合物中の1〜85mol%であり、特に好ましくは5〜70mol%である。
【0114】
さらに本発明には、効果を損なわない程度に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの炭素原子を有する親油性の基を導入することができる。これらにより着肉性を制御できる。
アクリル樹脂に親油性を付与するには親油性モノマーを共重合すればよい。共重合モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるモノマーが挙げられる。
【0115】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクゾレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、プロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0116】
バインダーポリマーは、質量平均モル質量(Mw)が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量(Mn)が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0117】
バインダーポリマーは、市販品を購入するか、あるいは公知の方法で合成することによって入手できる。
【0118】
バインダーポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して、5〜90質量%であり、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、(B)ラジカル重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
【0119】
本発明における特定高分子化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化24】

【0120】
【化25】

【0121】
【化26】

【0122】
【化27】

【0123】
【化28】

【0124】
【化29】

【0125】
<2>界面活性剤
本発明の画像形成層には、現像性を促進するため、および塗布面状を向上させるため界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0127】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0128】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0129】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0130】
さらに好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0131】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0132】
<3>着色剤
本発明の画像形成層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤を用いると、画像形成後の画像部と非画像部の区別がつきやすくなるので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0133】
<4>焼き出し剤
本発明の画像形成層には、焼き出し画像生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0134】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p',p"−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0135】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0136】
酸またはラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、画像形成層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0137】
<5>重合禁止剤
本発明の画像形成層には、画像形成層の製造中または保存中において(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0138】
<6>高級脂肪酸誘導体等
本発明の画像形成層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0139】
<7>可塑剤
本発明の画像形成層は、現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0140】
<8>無機微粒子
本発明の画像形成層は、硬化皮膜強度向上および現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像形成層中に安定に分散して、画像形成層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
【0141】
<9>低分子親水性化合物
本発明の画像形成層は、現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有してもよい。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類およびその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩等が挙げられる。
【0142】
これらの中でも有機スルホン酸、有機スルファミン酸や有機硫酸のナトリウム塩やリチウム塩が好ましく使用される。これらの化合物を画像形成層に含有することにより、耐刷性を低下させることなく現像性を向上させることが可能になる。
【0143】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルホン酸ナトリウム、イソブチルスルホン酸ナトリウム、sec−ブチルスルホン酸ナトリウム、tert−ブチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルホン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルホン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルホン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘプチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルオクチルスルホン酸ナトリウム、tert−オクチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルノニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、2−メチルアリルスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1,3−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,5−ベンゼントリスルホン酸トリナトリウム、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、2−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフチルジスルホン酸ジナトリウム、2,6−ナフチルジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフチルトリスルホン酸トリナトリウム、およびこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
【0144】
有機スルファミン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルファミン酸ナトリウム、イソブチルスルファミン酸ナトリウム、tert−ブチルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルファミン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルファミン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルファミン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム、およびこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
【0145】
これらの化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどなく、長鎖アルキルスルホン酸塩や長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などが良好に用いられる前述の界面活性剤とは明確に区別される。
【0146】
有機硫酸塩としては特に下記一般式(2)で示される化合物が好ましく使用される。
【化30】

【0147】
上記一般式(2)中、Rは、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、mは1〜4の整数を表し、Xはナトリウム、カリウムまたはリチウムを表す。
【0148】
Rは、好ましくは、置換もしくは無置換の、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。置換基としては、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、ハロゲン原子、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。
【0149】
一般式(2)で表される化合物の好ましい例としては、オキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウム、トリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、テトラオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。最も好ましい化合物としては、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウムが挙げられる。
【0150】
低分子化合物として、上記の化合物以外に下記一般式(3)で表される特定イソシアヌル酸骨格化合物も好ましく用いることができる。
【化31】

上記一般式(3)において、R1〜R3のうちの少なくとも1つは−(CH2CH2O)n−R4基であり、R4は水素原子、または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、nは1〜20の整数である。また、残りのR1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、およびR5−COOHからなる群より選ばれた基であり、R5は炭素数が1〜6のアルキレン基を表す。
【0151】
本発明に用いられる特定イソシアヌル酸骨格化合物は、現像効率の観点で、R1〜R3のうち2つ以上が−(CH2CH2O)n−R4基であることが好ましく、3つ全てが−(CH2CH2O)n−R4基であるものが特に好ましい。
また、前記R4が炭素数1〜4のアルキル基である場合、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
また、−(CH2CH2O)n−R4基においては、現像性の観点から、n=1〜10の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、さらに、R4については、水素原子またはメチル基であるものが好ましく、水素原子であるものが特に好ましい。
【0152】
前記R1〜R3が炭素数1〜4のアルキル基である場合、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
また、前記R1〜R3が−R5−COOHの場合、−C24COOHが好ましい例として挙げられる。
(CH2CH2O)n−R4基以外の残りのR1〜R3は、水素原子、またはメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0153】
本発明に用いられる特定イソシアヌル酸骨格化合物の具体例としては、例えば、以下に示す構造式(D−1)〜(D−10)の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
【化32】

【0155】
これらの中でも、現像促進と耐刷性のバランスが特に優れることから、構造式(D−1)のトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0156】
これら低分子親水性化合物の画像形成層への添加量は、画像形成層全固形分量の0.5
質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0157】
<10>感脂化剤
後述の保護層に無機質層状化合物を含有させる場合は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物を併用することが好ましい。ホスホニウム化合物は無機質層状化合物の表面被覆剤(感脂化剤)として機能し、無機質層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
好ましいホスホニウム化合物の例としては以下の一般式(4)または一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。より好ましいホスホニウム化合物としては、一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0158】
【化33】

【0159】
式(4)中、Ar1〜Ar6は、各々独立にアリール基または複素環基を表し、Lは2価の連結基を表し、Xn-はn価のカウンターアニオンを表し、nは1〜3の整数を表し、mはn×m=2を満たす数を表す。
【0160】
ここでアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。Lは炭素数が6〜15の連結基中であることが好ましく、より好ましくは、炭素数6〜12の連結基である。
【0161】
n-の好ましいものとしては、Cl-、Br-、I-などのハロゲンアニオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、硫酸エステルアニオン、PF6-、BF4-、過塩素酸アニオンなどが挙げられる。中でも、Cl-、Br-、I-などのハロゲンアニオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンが特に好ましい。
【0162】
一般式(4)で表されるホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
【0163】
【化34】

【0164】
【化35】

【0165】
【化36】

【0166】
上記一般式(5)において、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基または水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はカウンターアニオンを示す。
ここで、R1〜R4がアルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基であるときの炭素数は通常1〜20、アルケニル基またはアルキニル基であるときの炭素数は通常2〜15、シクロアルキル基であるときの炭素数は通常3〜8であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が、アリールオキシ基としてはフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が、アリールチオ基としてはフェニルチオ基等が、複素環基としてはフリル基、チエニル基等が、それぞれ挙げられる。また、これらの有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、スルフィノ基、スルホ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基およびハロゲン原子等が挙げられる。なお、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
- の表すアニオンとしては、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオン、ClO4 -、PF6 -、SO4-2などの無機酸アニオン、有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオンが挙げられる。有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオンの有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等が挙げられる。これらの中で、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4 - 、PF6 - 等が好ましい。一般式(5)で表されるホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
【0167】
【化37】

【0168】
本発明に好適の用いられる感脂化剤として、上記ホスホニウム化合物の他に、次の含窒素低分子化合物が挙げられる。好ましい含窒素低分子化合物としては下記一般式(I)の構造を有す化合物が挙げられる。
【0169】
【化38】

【0170】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基または水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はアニオンであり、PF6-、BF4-、またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基ならびに複素環基から選ばれる置換基を有する有機スルホン酸アニオンを示す。
【0171】
すなわち本発明に用いられる含窒素低分子化合物としては、R1〜R4の少なくとも1つが水素原子であるアミン塩類、およびR1〜R4がいずれも水素原子でない第4級アンモニウム塩類が挙げられる。また下記一般式(II)で示されるイミダゾリニウム塩類、下記一般式(III)で示されるベンゾイミダゾリニウム塩類、下記一般式(IV)で示されるピリジニウム塩類、下記一般式(V)で示されるキノリニウム塩類の構造でもよい。
【0172】
【化39】

【0173】
上記式中、R5とR6は、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基または水素原子を表す。X-はアニオンであり、前記一般式(I)のX-と同義である。
【0174】
これらの中でも、第4級アンモニウム塩類、およびピリジニウム塩類が好ましく用いられる。以下に、それらの具体例を示す。
【0175】
【化40】

【0176】
画像形成層への上記ホスホニウム化合物または含窒素低分子化合物の添加量は、画像形成層固形分の0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。これらの範囲内で印刷途中の良好なインキ着肉性が得られる。
【0177】
<画像形成層の形成>
本発明の画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像形成層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散または溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0178】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像形成層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
【0179】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版には、画像形成層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像形成層での傷の発生防止、高照度レーザー露光時のアブレーション防止などの機能も有する。以下では、本発明の保護層の構成成分等について説明する。
【0180】
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる画像形成層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が画像形成層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、さらに、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像形成層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に記載されている。
【0181】
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
【0182】
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、中でも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。その中でも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0183】
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、さらにはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
【0184】
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。また変性ポリビニルアルコールとしては、アニオン変性部位を有すKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、カチオン変性部位を有すC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有すM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有すMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有すHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有すR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0185】
上記ポリビニルアルコールの含有量としては、保護層総質量中の50〜95質量%である。
【0186】
また保護層には無機質の層状化合物を含有することが好ましい。層状化合物とは薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式:
A(B,C)2-5410(OH,F,O)2
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si410)F2等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
【0187】
上記の層状化合物の中でも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイトおよび膨潤性合成雲母はこの傾向が強い。
【0188】
層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。粒子径が0.3μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0189】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0190】
次に、層状化合物を保護層に用いる場合の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0191】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で1/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0192】
本発明において保護層塗布液の粘度は、25℃で、3.0×10-3〜20.0×10-3Pa・s、好ましくは、3.5×10-3〜15×10-3Pa・sであることが好ましい。更に好ましくは6×10-3〜10×10-3Pa・sである。
このような粘度とすることで、塗布層の塗布乾燥後の様態が均一になり、印刷時におけるインクローラー、水ローラーの圧力が均一になるために耐刷性が向上する。3.5×10-3Pa・sより小さくなると塗布乾燥時にフカレムラおよび液寄りによる塗布ムラが発生し、均一な塗布層が得られず、11.5×10-3Pa・sより大きくなると塗布液のレベリング性が劣化し、スジ様の塗布ムラが発生し、耐刷性が劣化する場合があり、従って、上記の範囲が好ましい。
なお、上記の粘度測定は、塗布液温度を25℃に固定し、東京計器社製E型粘度計で測定することができる。
【0193】
上記無機層状化合物は、保護層だけではなく画像形成層に添加することもできる。無機層状化合物の画像形成層への添加は、耐刷性、重合効率(感度)および経時安定性の向上に有用である。
画像形成層への無機層状化合物の添加量は、画像形成層の固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく、0.3〜30質量%がさらに好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
【0194】
保護層の他の添加物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を上記水溶性または水不溶性ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。これら活性剤の添加量は上記水溶性または水不溶性ポリマーに対して0.1〜100質量%添加することができる。
【0195】
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報および英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、画像形成層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
さらに、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
【0196】
保護層の形成は、上記保護層成分を溶媒に分散または溶解して調製された保護層塗布液を、画像形成層上に塗布、乾燥して行われる。塗布溶剤はバインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。
この保護層塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤や皮膜の物性改良のため水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。さらに、この塗布液には、画像形成層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書または特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、保護層は、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.2〜1.5g/m2の範囲であることが好ましく、0.2〜1.2g/m2の範囲がより好ましく、最も好ましくは0.2〜1g/m2の範囲である。
【0197】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
【0198】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および画像形成層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0199】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0200】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、さらに、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0201】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、リン酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0202】
一つの態様としては、支持体は、ブラシ研磨され、リン酸で陽極酸化されたアルミニウム支持体、または、陽極酸化後、ポリアクリルリン酸を用いた後処理によって中間層を形成されたアルミニウム支持体である。
【0203】
リン酸で陽極酸化された支持体は、硫酸で陽極酸化された支持体を凌ぐ利点をもたらすことが出来る。なぜならば、硫酸陽極酸化から生じる陽極孔サイズは典型的には20nm未満であり、これに対してリン酸陽極酸化から生じる陽極孔サイズは典型的には30nmよりも大きいからである。本発明の陽極酸化された支持体の調整において、その他のコンベンショナルな陽極酸化法を用いることも出来る。これらの方法は、硫酸陽極酸化によって生成される陽極孔サイズよりも大きい陽極孔サイズを生成する方法を含む。
【0204】
本発明に用いられる支持体の陽極酸化より生じる陽極孔サイズとしては、20〜60nmが好ましく、25〜60nmがより好ましく、30〜60nmが最も好ましい。
支持体の陽極酸化より生じる陽極孔サイズの拡大により得られる効果としては、支持体の表面積が増大することにより、支持体と画像形成層の密着が良くなり、耐刷が良化することが挙げられる。
支持体の陽極酸化より生じる陽極孔サイズの拡大により得られるもう一つの効果としては、表面の起伏がなだらかになり、光の反射率が上昇し、陽極孔が小さいときよりも支持体の明度が上がり、画像形成層との色合いの差が大きくなる。結果として、現像後の検版性が上昇することが挙げられる。
【0205】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろん、これら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。例えば、封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0206】
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0207】
<1>無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0208】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、さらに、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、現像性および耐汚れ性を向上させることができる。
【0209】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0210】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、現像性および耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0211】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0212】
<2>水蒸気による封孔処理
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0213】
<3>熱水による封孔処理
熱水による封孔処理としては、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0214】
前記親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0215】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像形成層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
【0216】
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後または下塗り層(後述の中間層)を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0217】
(中間層)
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像形成層と支持体との間に中間層(下塗り層)を設けることができる。中間層は、未露光部において、画像形成層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。また、赤外線レーザー露光の場合は、該中間層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
中間層用化合物(下塗り化合物)としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗り化合物として好ましくは、支持体吸着性基及び架橋性基を有する高分子樹脂があり、最も好ましい下塗り化合物としては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーを共重合した高分子樹脂が挙げられる。
【0218】
本発明で使用する下塗り用高分子樹脂の重要な成分は、親水性支持体表面への吸着性基である。親水性支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
【0219】
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)あるいは官能基(例えば、ヒドロキシル基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基またはカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−および−COCH2COCH3を含む。中でも−OPO32および−PO32が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基を含む。アンモニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基およびホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
【0220】
吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記式(U1)または(U2)で表される化合物が挙げられる。
【化41】

【0221】
上式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。R2およびR3は、水素原子であることが特に好ましい。Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基である。
式(U1)において、Xは、酸素原子(−O−)またはイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。式(U1)において、Lは、2価の連結基である。Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)または2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(―S―)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)またはカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
【0222】
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基および複素環基を含む。
芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
【0223】
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2)n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
式(U2)において、Yは炭素原子または窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。Lは式(U1)の場合と同じ2価の連結基または単結合を表す。
【0224】
吸着性の官能基については、前述した通りである。
以下に、式(U1)または(U2)で表される代表的な化合物の例を示す。
【化42】

【0225】
本発明に用いることができる下塗り用高分子樹脂の親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等が好適に挙げられる。中でも高親水性を示すスルホン酸基を有するモノマーが好ましい。スルホン酸基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸, アリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。中でも親水性能および合成の取り扱いから2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0226】
本発明で使用する下塗り層用の水溶性高分子樹脂は、架橋性基を有することが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗り層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0227】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0228】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2)nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2) nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2) n−O−CO−CR1=CR23、および−(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、および−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗り層用高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドが好適である。
【0229】
下塗り層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、および良好な保存安定性が得られる。
【0230】
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量(Mw)が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量(Mn)が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
下塗り用高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0231】
下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の高分子樹脂およびその他の必要成分を有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)および/または水に溶解して得られる。下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0232】
[製版方法]
本発明に用いられる露光光源としては、レーザーが好ましい。本発明に用いられるレーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を照射する固体レーザーおよび半導体レーザー、250〜420nmの光を照射する半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。250〜420nmの光を照射する半導体レーザーにおいては、出力は0.1mW以上であることが好ましい。いずれのレーザーにおいても、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0233】
本発明の平版印刷版の製版方法において、赤外線レーザーなどのレーザーで画像様に露光された平版印刷版原版は、界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液により現像される。この水溶液(以下、処理液又は現像液ともいう)は、水溶性高分子化合物を含有するいわゆるガム液であることが現像後の不感脂化の点でより好ましく、また、該現像液のpHは3.5〜9が好ましく、4〜8であることがより好ましい。
以下に、該現像液に用いられる成分について説明する。
【0234】
該現像液は、感光性平版印刷版原版の画像形成層に含まれている着色に関する素材と感応する物質、すなわち前記に説明した酸性色素と相互作用する有機高分子化合物と感応する酸性色素を含んでいる。
ここで酸性色素とは、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カルボキシル基等の酸性基を含む色素酸の塩であり、水に溶けて負に荷電する色素を意味し、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、キサンテン系構造を持つものなどがある。
【0235】
酸性色素としては「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)のp.393〜526の酸性色素の項目に記載されている公知のものが利用できる。
具体的には
C.I.アシッドイエロー 17、23、42、44、79、142、
C.I.アシッドレッド 1、8、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、87、89、92、97、106、111、114、115、134、186、249、254、289、
C.I.アシッドブルー 9、29、45、92、249、
C.I.アシッドブラック 1、2、7、24、26、94、
C.I.フードイエロー 3、4、
C.I.フードレッド 7、9、14、
C.I.フードブラック 1、2などが好適に用いられる。
【0236】
これら酸性色素の具体的な商品名の例としては、住友化学 Dyestuffs Auxiliary Chemicals for Dyeingの酸性色素の項目に記載されているものがある。例えばTortrazine NS conc.、Solar Light Orange GX、Solar Orange、Silk Scarlet、Acid Scarlet BA、Brill. Scarlet 3R conc.、Roccelline NS conc. 120%、Solar Rhodamine B、Acid Violet 5B、Solar Pure Blue AFX、Acid Brill. Milling Green B、Solar Brown RKX、Acid Blue Black 10B(住友化学)などが挙げられる。
【0237】
酸性色素の含有量は、現像液の全質量に基づいて、0.01〜30質量%が適当であり、好ましくは0.01〜20質量%であり,最も好ましくは0.01〜10質量%である。
【0238】
本発明で使用する現像液には、界面活性剤が必須成分である。本発明で使用する現像液に含ませることができる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類およびα−オレフィンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、が特に好ましく用いられる。
【0239】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等が用いられる。
【0240】
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン類、アルキルイミダゾリン類、アルキルアミノカルボン酸類等が用いられる。
【0241】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリプロピレングリコールの分子量200〜5000、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはソルビトールのポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンの付加物、アセチレングリコール系等が挙げられる。又、弗素系、シリコン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0242】
該界面活性剤は二種以上併用することができる。使用量は特に限定する必要はないが、好ましい範囲としては現像液の全質量に基づいて0.01〜20質量%が適当であり、好ましくは0.05〜10質量%である。
【0243】
本発明においては、現像後の不感脂化の観点から、水溶性高分子化合物を含むことが好ましい。現像液において水溶性高分子化合物の含有量は1〜20質量%が適当であり、より好ましくは5〜15質量%の範囲である。水溶性高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、デキストリン、ステラビック、ストラクタン、アルギン酸塩類、ポリアクリル酸塩類、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース塩、大豆のオカラから抽出した水溶性多糖類が好ましく、また、プルランまたはプルラン誘導体、ポリビニルアルコールも好ましい。
【0244】
さらに、変成澱粉誘導体としてブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリンおよびシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉および無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉およびカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体が好ましい。
【0245】
また天然高分子化合物としては、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉およびコーンスターチ等の澱粉類、カラジーナン、ラミナラン、海ソウマンナン、ふのり、アイリッシュモス、寒天およびアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、トロロアオイ、マンナン、クインスシード、ペクチン、トラガカントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、キャロブガム、ベンゾインガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、レバン等のホモ多糖ならびにサクシノグルカンおよびサンタンガム等のヘトロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼインおよびコラーゲン等の蛋白質が好ましい。
なかでもアラビアガムおよびヒドロキシ澱粉が特に好ましい。
【0246】
本発明で使用される現像液には、上記の他にpH調整剤、防腐剤、防黴剤、親油性物質、湿潤剤、キレート剤、消泡剤などを含有させておくことができる。
【0247】
該現像液はpH3〜10の範囲で使用される。そのため一般にpH調整剤が添加される。pHを3〜10にするためには一般的に現像液中に鉱酸、有機酸または無機塩等を添加し調節する。その添加量は0.01〜2質量%である。例えば鉱酸としては硝酸、硫酸、リン酸、メタリン酸等が挙げられる。有機酸としては酢酸、蓚酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸、レブリン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸、またグリシン、α−アラニン、β−アラニンなどのアミノ酸等が挙げられる。無機塩としては硝酸マグネシウム、第1リン酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、硫酸ニッケル、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。鉱酸、有機酸または無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上を併用してもよい。
現像液はpH3〜10の範囲で使用することができるが、pH3.5〜9の範囲がより好ましく、pH4〜8の範囲が最も好ましい.
【0248】
また、防腐剤としては繊維、木材加工、食品、医薬、化粧品、農薬分野等で使用されている公知の物が使用できる。例えば第4級アンモニウム塩、一価フェノール誘導体、二価フェノール誘導体、多価フェノール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾロピリミジン誘導体、一価ナフトール、カーボネート類、スルホン誘導体、有機スズ化合物、シクロペンタン誘導体、フェニル誘導体、フェノールエーテル誘導体、フェノールエステル誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、ニトリル誘導体、ナフタリン類、ピロール誘導体、キノリン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、第2級アミン、1,3,5トリアジン誘導体、チアジアゾール誘導体、アニリド誘導体、ピロール誘導体、ハロゲン誘導体、二価アルコール誘導体、ジチオール類、シアン酸誘導体、チオカルバミド酸誘導体、ジアミン誘導体、イソチアゾール誘導体、一価アルコール、飽和アルデヒド、不飽和モノカルボン酸、飽和エーテル、不飽和エーテル、ラクトン類、アミノ酸誘導体、ヒダントイン、シアヌール酸誘導体、グアニジン誘導体、ピリジン誘導体、飽和モノカルボン酸、ベンゼンカルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、ビフェニル、ヒドロキサム酸誘導体、芳香族アルコール、ハロゲノフェノール誘導体、ベンゼンカルボン酸誘導体、メルカプトカルボン酸誘導体、第4級アンモニウム塩誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒノキチオール、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、イソキノリン誘導体、アルシン誘導体、チオカルバミン酸誘導体、リン酸エステル、ハロゲノベンゼン誘導体、キノン誘導体、ベンゼンスルホン酸誘導体、モノアミン誘導体、有機リン酸エステル、ピペラジン誘導体、フェナジン誘導体、ピリミジン誘導体、チオファネート誘導体、イミダゾリン誘導体、イソオキサゾール誘導体、アンモニウム塩誘導体等の公知の防腐剤が使用できる。特に好ましい防腐剤として、ピリジンチオール−1−オキシドの塩、サリチル酸およびその塩、1,3,5−トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,3,5−トリスヒドロキシメチルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールが挙げられる。好ましい添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、使用時の現像液に対して0.01〜4質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0249】
現像液には親油性物質を含有させておくこともできる。好ましい親油性物質には、例えばオレイン酸、ラノリン酸、吉草酸、ノニル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などのような炭素数が5〜25の有機カルボン酸、ひまし油などが含まれる。これらの親油性物質は単独もしくは2以上を組み合わせて使用することができる。現像液中に含ませる親油性物質は、その総質量に対して0.005〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。
【0250】
その他、現像液には必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等を添加することができる。これらの湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。これらの湿潤剤の好ましい使用量としては0.1〜5質量%である。
【0251】
また、現像液にはキレート化合物を添加してもよい。通常、現像液は通常濃縮液として市販され、使用時に水道水、井戸水等を加えて希釈して使用される。この希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもあるので、キレート化合物を添加して、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることが出来る。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。これらキレート剤は現像液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量としては使用時の現像液に対して0.001〜1.0質量%が適当である。
【0252】
また、現像液には消泡剤を添加することもでき、特にシリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型および可溶化型等がいずれも使用できる。好ましくは使用時の現像液に対して0.001〜1.0質量%の範囲が最適である。
【0253】
現像液は乳化分散型として調製してもよく、その油相としては有機溶剤が用いられ、又、前述したような界面活性剤の助けを借りて、可溶化型(乳化型)にしてもよい。
【0254】
現像液中に使用する有機溶剤としては、20℃で水に対する溶解性が5質量%以下で沸点160℃以上の有機溶剤であることが好ましい。例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸ジエステル剤、例えば、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えば、エポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド類、例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェートなどの燐酸エステル類、例えば、安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類などの凝固点が15℃以下で、1気圧下での沸点が300℃以上の可塑剤が含まれる。
その他アルコール系としては、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール系としてはエチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテルエチレングリコールヘキシルエーテル、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0255】
上記化合物を選択するときの条件としては臭気が特に挙げられる。これら溶剤の使用量の好ましい範囲は現像液において0.1〜5質量%が適当で、より好ましい範囲は0.5〜3質量%である。これらの溶剤は1種もしくは2種以上併用することもできる。
【0256】
本発明で使用する現像液を乳化分散型とするとき、水相を温度40℃±5℃に調製し、高速攪拌し、水相の中に調製した油相をゆっくり滴下し充分攪拌後、圧力式のホモジナイザーを通して乳化分散することによって作製される。
【0257】
現像液の残余の成分は水である。現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておくことができ、使用時に水で希釈することで、運搬上有利となる。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0258】
本発明における、上述のpH3〜10の現像液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷用原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号各公報に記載の自動処理機や、米国特許第5148746号、米国特許第5568768号、英国特許第2297719号の各明細書に記載のシリンダー上にセットされた画像記録後の平版印刷用原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。なお、本発明において、擦り処理後の平版印刷版を、引き続いて、水洗、乾燥処理、不感脂化処理することも任意に可能である。
【0259】
本発明で使用する上述の現像液が水溶性高分子化合物を含有し、いわゆるガム液である場合、それを用いた製版方法として、ガム液の単独処理、すなわち、該ガム液による1液処理(標準的な処理で最低必要となる、現像処理およびガム引き処理を、1液で同時に行うことを意味する)が可能である。あるいは、ガム液(現像)/ガム液(不感脂化)の2段階処理、または、ガム液による現像処理/水洗/ガム液による不感脂化処理を必要に応じて選択できる。現像で用いるガム液と不感脂化で用いるガム液は、同じでも異なっていてもよい。
本発明において使用する現像液は、任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃、より好ましくは20℃〜40℃である。
【実施例】
【0260】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔I〕平版印刷版原版の作製
平版印刷版原版を以下のとおり11種類作製した。
[平版印刷版原版1]
(1)支持体(1)の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0261】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0262】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、1.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で12秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は6mg/m2であった。その後、水洗して、支持体(1)を得た。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0263】
上記支持体(1)上に、下記下塗り液(1)を乾燥塗布量が20mg/m2になるよう塗布し、100℃ 30秒間オーブンで乾燥し、以下の実験に用いる支持体を作製した。
<下塗り液(1)>
・下記の下塗り化合物(1) 0.18g
・メタノール 55.24g
・蒸留水 6.15g
【化43】

【0264】
(2)画像形成層の形成
下塗り層を有する上記支持体に、下記組成の画像形成層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像形成層を形成した。
画像形成層塗布液(1)は下記感光液(1)およびミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0265】
<感光液(1)>
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.240g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造:(A)成分〕 0.030g
・重合開始剤(1)〔下記構造:(B)成分〕 0.162g
・重合性化合物〔(C)成分〕
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・アンモニウム基含有ポリマー(上記符号(15)の構造) 0.010g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0266】
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1)〔下記合成法〕 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0267】
【化44】

【0268】
【化45】

【0269】
(ミクロゲル(1)の合成)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
【0270】
(3)保護層の形成
上記画像形成層上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成して平版印刷版原版1を得た。
<保護層塗布液(1)>
・下記の通り調製した無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA-405、けん化度81.5モル% 、
重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤(エマレックス710)、
1質量%水溶液 8.60g
・イオン交換水 6.0g
【0271】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0272】
[平版印刷版原版2]
上記画像形成層塗布液(1)中のアンモニウム基含有ポリマーを除く以外は、平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版2を作製した。
【0273】
[平版印刷版原版3]
(1)支持体(2)の作成
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS 1052)をコンベンショナルな方法によりブラシ研磨し、リン酸で陽極酸化することにより処理し、1.5g/m2直流陽極酸化皮膜を設けた後、ポリアクリル酸で処理して支持体(2)を作製した。
(2)平版印刷版原版の作成
平版印刷版原版1の支持体(1)を上記支持体(2)に変更した以外は、平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版3を作製した。
【0274】
[平版印刷版原版4]
平版印刷版原版1の感光層におけるミクロゲル(1)を、下記の通り製造したポリマー微粒子(疎水化前駆体)水分散液に変更した以外は、同様にして平版印刷版原版4を作製した。
(ポリマー微粒子(疎水化前駆体)水分散液の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ蒸留水350mLを加えて内温が80℃となるまで加熱した。分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム3.0gを1.5g添加し、さらに開始剤として過硫化アンモニウム0.45gを添加し、次いでアクリロニトリル22.0g、グリシジルメタクリレート20.0gおよびスチレン20.0gとの混合物を滴下ロートから約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH6に調整し、最後に不揮発分が15質量%となるように純水を添加してポリマー微粒子(疎水化前駆体)水分散液を得た。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径155nmに極大値を有していた。
ここで、粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0275】
[平版印刷版原版5]
支持体(2)に、下記組成の画像形成層塗布液(2)をバー塗布した後、94℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.5g/m2の画像形成層を形成した。
<画像形成層塗布液(2)>
・ウレタンアクリレート1*1 0.325g
・グラフト・コポリマー1*2 0.060g
・グラフト・コポリマー2*3 0.198g
・メルカプト−3−トリアゾール*4 0.180g
・アンモニウム基含有ポリマー(上記符号(15)の構造) 0.005g
・Irgacure250*5 0.032g
・赤外線吸収剤2(下記構造) 0.007g
・Klucel 99M*6 0.007g
・Byk 336*7 0.015g
・n-プロパノール 7.470g
・水 1.868g
【0276】
*1 Desmodur N100(Bayer Corp., Milford, CTから入手可能な、ヘキサメチレンジイソシアネートを主剤とする脂肪族ポリイソシアネート樹脂)を、ヒドロキシエチルアクリレートおよびペンタエリトリトールトリアクリレートと反応することにより、ウレタンアクリレート1を調製した。
*2 グラフト・コポリマー1は、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-(2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル)-ω-メトキシ-,エテニルベンゼンでグラフトされたポリマーであり、これを、80%n-プロパノール/20%水の溶剤中25%の分散体である。
*3 グラフト・コポリマー2は、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/スチレン/アクリロニトリル=10:9:81のグラフト・コポリマーのポリマー微粒子であり、これを、n-プロパノール/水の重量比が80/20である溶媒中に,24wt%含有している分散体である。また、その平均粒径は193nmである。
【0277】
*4 メルカプト-3-トリアゾールは、PCAS(フランス国パリ)から入手可能なメルカプト-3-トリアゾール-1H,2,4,を意味する。
*5 Irgacure 250は、75%プロピレンカーボネート溶液として、Ciba specialty Chemicals, Tarrytown, NYから入手可能なヨードニウム塩であり、そして式、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル],-ヘキサフルオロホスフェートを有する。
*6 Klucel 99Mは、Hercules(ベルギー国Heverlee)から入手可能な、1%水溶液として使用されるヒドロキシプロピルセルロース増粘剤である。
*7Byk 336は、25%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液中の,Byk Chemie,Walling ford,Connecticutから入手可能な改質ジメチルポリシロキサン・コポリマーである。
【0278】
【化46】

【0279】
[平版印刷版原版6]
画像形成層塗布液(2)中のアンモニウム基含有ポリマーを除く以外は、平版印刷版原版5と同様にして平版印刷版原版6を作製した。
【0280】
[平版印刷版原版7]
平版印刷版原版1と同様にして、但し画像形成層用感光液中、アンモニウム基含有ポリマーとして上記符号(23)の構造のポリマーを用い、平版印刷版原版7を作製した。
[平版印刷版原版8]
平版印刷版原版1と同様にして、但し画像形成層用の感光液中、アンモニウム基含有ポリマーとして上記符号(24)の構造のポリマーを用い、平版印刷版原版8を作製した。
[平版印刷版原版9]
平版印刷版原版1と同様にして、但し画像形成層用の感光液中、アンモニウム基含有ポリマーとして上記符号(25)の構造のポリマーを用い、平版印刷版原版9を作製した。
[平版印刷版原版10]
平版印刷版原版1と同様にして、但し画像形成層用の感光液中、アンモニウム基含有ポリマーとして上記符号(26)の構造のポリマーを用い、平版印刷版原版10を作製した。
[平版印刷版原版11]
平版印刷版原版1と同様にして、但し画像形成層用の感光液中、アンモニウム基含有ポリマーとして上記符号(27)の構造のポリマーを用い、平版印刷版原版11を作製した。
【0281】
[処理液の調製]
以下の処方で処理液1及び2を調製した。
<処理液1> pH7.0
アラビアガム 1.6質量%
酵素変成馬鈴薯澱粉 8.8質量%
燐酸化ワキシー玉蜀黍澱粉 0.80質量%
ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.10質量%
クエン酸 0.14質量%
αアラニン 0.11質量%
EDTA−四ナトリウム塩 0.10質量%
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸2Na塩 0.18質量%
エチレングリコール 0.72質量%
ベンジルアルコール 0.87質量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.04質量%
エマルジョン型シリコン消泡剤 0.01質量%
Acid Blue Black 10B 0.50質量%
水を加えて 全量を100質量%とする
<処理液2> pH7.0
処理液1からAcid Blue Black 10Bを除いた以外は同様のものである。
【0282】
[製版]
上記のようにして得られた各種平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線画像を含むようにした。
次に露光済み平版印刷版原版を、図1に示す自動現像装置を使用し、図中14の現像部にて画像形成層未露光部の除去工程、図中16の水洗部にて水道水による水洗工程、図中18の不感脂化処理部にて不感脂化工程を、下記表1に記載の処理液を用いて行った。
製版された平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
【0283】
[評価]
(A)検版性
上記露光済み原版を自動現像処理機で処理する前後にて、コニカミノルタ製CM2600Dを用いて画像部と非画像部の明度(L*)の差ΔLを測定し、検版性の評価を行った。これらの結果を表1に併せて示す。この差ΔLが大きいほど検版性が高いと判断する。
(B)耐刷性
印刷枚数を増やしていくと徐々に画像形成層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0284】
【表1】

【0285】
表1に示される結果からわかるように、本発明の平版印刷版の製版方法によれば、pH3〜10の処理液を用いて、十分な耐刷性を発揮できる平版印刷版が提供でき、かつ検版性を大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】自動現像装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0287】
1 自動現像装置
10 現像処理部
12 平版印刷版原版
14 現像部
16 水洗部
18 不感脂化処理部
20 乾燥部
24 現像槽
141、142 ブラシローラ(擦り部材)
200 前処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面化処理されたアルミニウム支持体上に、赤外線吸収色素、重合開始剤、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するラジカル重合性化合物、及び酸性色素と相互作用する有機高分子化合物を含有する画像形成層を設けた平版印刷版原版を、画像様に露光した後、界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液により現像することを特徴とする、平版印刷版の製版方法。
【請求項2】
界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液が、さらに水溶性高分子化合物を含有する、請求項1記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項3】
酸性色素と相互作用する有機高分子化合物がアンモニウム基を含有する、請求項1又は2に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項4】
平版印刷版原版の画像形成層がポリマー微粒子を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項5】
該ポリマー微粒子が、アクリロニトリル共重合体であり、かつ平均粒径150〜200nmである、請求項4記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項6】
前記平版印刷版原版の画像形成層が、さらにエチレン性不飽和基及び親水性基をあわせ持つポリマーを含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項7】
平版印刷版原版のアルミニウム支持体と画像形成層の間に、支持体吸着性基及び架橋性基をあわせ持つポリマーを含有する中間層が設けられている、請求項1〜6のいずれか1項記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項8】
粗面化処理されたアルミニウム支持体が、20〜60nmの平均ポア径を有する陽極酸化皮膜を有する、請求項1〜7のいずれか17記載の感光性平版印刷版の製版方法。
【請求項9】
界面活性剤及び酸性色素を含有するpH3〜10の水溶液がさらに、有機溶剤を0.1〜5.0質量%含有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の平版印刷版の製版方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−26006(P2010−26006A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184124(P2008−184124)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】