説明

平面度測定装置

【課題】部品点数を削減して構造の簡略化を図ることができるとともに、移動制御を容易に行うことができる平面度測定装置を提供する。
【解決手段】基台11上に立設支持されたシート状の被測定物Wの上方において、被測定物Wに沿って延びるように、基台上11に横軸ガイドレール14を架設する。横軸ガイドレール14には横軸スライダ15を横方向へ移動可能に支持する。被測定物Wの表裏両面に沿って平行に延びるように、横軸スライダ15には一対の縦軸ガイドレール16を吊下する。各縦軸ガイドレール16には一対の縦軸スライダ19を縦方向へ移動可能に支持する。被測定物Wの表裏両面に対向するように、各縦軸スライダ19には一対のセンサ20を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば液晶パネルを露光する際に使用されるマスク等のシート状の被測定物の平面度を測定する平面度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶パネル上に所定のパターンを露光する場合には、感光剤を塗布したパネルの表面に、パターンを付した石英ガラスよりなるシート状のマスクを積層配置し、この状態でマスクを介してパネルに光を照射することにより、マスク上のパターンをパネル上に写し込んでいた。この場合、シート状のマスクの表裏両面が所定の平面度に仕上げ加工されていないと、露出精度が低下するおそれがある。そのため、この種のマスクの製造時には、マスクの表裏両面の平面度を測定して、その平面度が所定値内になるように仕上げる必要があった。
【0003】
従来、このようなマスク等のシート状をなす被測定物の平面度を測定する平面度測定装置としては、例えば図7〜図9に示すような構成が提案されている。この従来構成においては、基台31上に門型の支持枠32が立設されている。支持枠32内に立設状態で配置されるように、基台31上には図示しない支持装置によりシート状の被測定物Wが着脱可能に支持される。支持枠32の両側枠部32aの内面には、一対の縦軸ガイドレール33が固定配置されている。各縦軸ガイドレール33には、一対の縦軸スライダ34が縦方向へ移動可能に支持されている。
【0004】
前記被測定物Wの表裏両面に沿って平行に延びるように、両縦軸スライダ34間には一対の横軸ガイドレール35が支持板36及び取付ブロック37を介して架設支持されている。各横軸ガイドレール35には一対の横軸スライダ38が横方向へ移動可能に支持されている。被測定物Wの表裏両面に対向するように、各横軸スライダ38の内面には光学センサ等よりなる一対のセンサ39が支持されている。
【0005】
そして、図示しないサーボモータ及びボールネジ等よりなる縦軸駆動機構により、一対の縦軸スライダ34が上下方向に同期して移動されるとともに、図示しないリニアモータ等よりなる横軸駆動機構により、一対の横軸スライダ38が左右方向に移動される。これにより、図7に実線及び鎖線で示すように、各横軸スライダ38上のセンサ39が被測定物Wの表裏両面の任意の測定位置に対向配置される。この状態で、各センサ39により被測定物Wの表裏両面の平面度及び被測定物Wの厚さが測定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この従来の平面度測定装置においては、縦軸ガイドレール33及び横軸ガイドレール35が2本ずつ設けられるとともに、縦軸スライダ34及び横軸スライダ38が2個ずつ設けられている。このため、構造が複雑で部品点数が多くなるという問題があった。また、横軸ガイドレール35が一対の縦軸スライダ34間に架設支持されているため、その横軸ガイドレール35に傾きが生じないように、一対の縦軸スライダ34を縦軸駆動機構により同期して移動させる必要がある。このため、移動制御が煩雑になるという問題もあった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、部品点数を削減して構造の簡略化を図ることができるとともに、スライダを同期して移動させる必要がなく、移動制御を容易に行うことができる平面度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、シート状の被測定物を立設状態で支持する基台と、前記被測定物の上方において被測定物に沿って延びるように、基台上に架設された横軸ガイドレールと、その横軸ガイドレールに横方向へ移動可能に支持された横軸スライダと、前記被測定物の表裏両面に沿って平行に延びるように、前記横軸スライダに吊下された一対の縦軸ガイドレールと、各縦軸ガイドレールに縦方向へ移動可能に支持された一対の縦軸スライダと、前記被測定物の表裏両面に対向するように、各縦軸スライダに支持された一対のセンサとを備えたことを特徴としている。
【0009】
従って、請求項1記載の発明の平面度測定装置においては、横軸ガイドレール及び横軸スライダを各一対設ける必要がなく、1個ずつ設ければよい。よって、従来装置に比較して、部品点数を削減することができるとともに、構造の簡略化を図ることができる。また、センサを支持する一対の縦軸スライダを同期して移動させる必要がないため、移動制御を容易に行うことができる。
【0010】
さらに、請求項2記載発明のように上記構成において、前記基台上に、両縦軸ガイドレールの下端部の移動を規制するための規制部材を設けるとよい。このように構成した場合には、横軸スライダの移動時に、吊下状態にある一対の縦軸ガイドレールの下端部に横振れが生じるおそれを防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の平面度測定装置において、前記横軸スライダは静圧軸受機構を介して前記横軸ガイドレールに支持され、前記縦軸スライダは静圧軸受機構を介して前記縦軸ガイドレールに支持されていることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の平面度測定装置において、前記横軸スライダはリニアモータにより往復動され、前記縦軸スライダはボールネジ送り機構により往復動されるようになっていることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の平面度測定装置において、前記縦軸スライダは前記縦軸ガイドレールの上下二箇所に装着され、両スライダは自在継手により連動可能に連結され、一方の縦軸スライダを前記ボールネジ送り機構により往復動し、他方の縦軸スライダに前記センサを装着したことを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の平面度測定装置において、前記縦軸スライダには被測定物の水平方向の寸法及び垂直方向の寸法を測定するレーザラインセンサが設けられ、該センサは帯状のレーザ光を傾斜して被測定物に照射するように設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、部品点数を削減して構造の簡略化を図ることができるとともに、スライダを同期して移動させる必要がなく、移動制御を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、基台11の上面両側部には一対の支柱12がブラケット13により立設されている。両支柱12間において立設状態で配置されるように、基台11上には図示しない支持装置によりシート状の被測定物Wが着脱可能に支持される。被測定物Wの上方において被測定物Wに沿って延びるように、両支柱12の上端部間には横軸ガイドレール14が架設されている。横軸ガイドレール14には、横軸スライダ15が静圧軸受機構としての静圧空気軸受を介して図示しないリニアモータにより横方向へ移動可能に支持されている。
【0017】
図1〜図4に示すように、前記被測定物Wの表裏両面に沿って平行に延びるように、横軸スライダ15には一対の縦軸ガイドレール16が支持板17を介して吊下支持されている。両縦軸ガイドレール16間には、それらの間隔を一定に保つための上下一対の間隔保持部材18が介在されている。各縦軸ガイドレール16には、一対の縦軸スライダ19が静圧軸受機構としての静圧空気軸受を介して縦方向へ移動可能に支持されている。前記両縦軸スライダ19は図示しないが同一の駆動源により回転されるボールネジ送り機構により往復動されるようになっている。被測定物Wの表裏両面に対向するように、各縦軸スライダ19の内面には光学センサ等よりなる一対のセンサ20が支持されている。この実施形態ではセンサ20としてレーザ変位計を用いている。
【0018】
図1及び図3に示すように、前記被測定物Wの上方において被測定物Wに沿って延びるように、基台11上にはレール状の規制部材21が延長配置されている。そして、この規制部材21の両側面に両縦軸ガイドレール16の下端内面が当接されることにより、両縦軸ガイドレール16の下端部の移動が横振れしないように規制される。
【0019】
次に、前記のように構成された平面度測定装置の作用を説明する。
さて、この平面度測定装置において、マスク等の被測定物Wの平面度を測定する場合には、図示しない支持装置により被測定物Wが基台11上の所定位置に立設配置される。この状態で、平面度測定装置が作動されると、図示しないリニアモータ等よりなる横軸駆動機構により、横軸スライダ15が左右方向に移動されるとともに、図示しないサーボモータ及びボールネジ等よりなる縦軸駆動機構により、一対の縦軸スライダ19が上下方向に移動される。これにより、図1及び図2に実線及び鎖線で示すように、各縦軸スライダ19上のセンサ20が被測定物Wの表裏両面の任意の測定位置に対向配置される。そして、これらの測定位置において、各センサ20により被測定物Wの表裏両面の平面度及び被測定物Wの厚さが測定される。センサ20により該センサ20から被測定物Wまでの距離が縦横の多数の座標点において測定され、この測定値に基づいて被測定物Wの平面度が測定される。なお、センサ20とは別のセンサ(図示略)により被測定物Wの形状や大きさも測定される。
【0020】
以上のように、この実施形態の平面度測定装置においては、横軸ガイドレール14上の横軸スライダ15に一対の縦軸ガイドレール16が吊下支持されている。このため、横軸ガイドレール14及び横軸スライダ15を各一対設ける必要がなく、1個ずつ設ければよい。従って、従来装置に比較して、部品点数を削減することができるとともに、構造の簡略化を図ることができる。また、センサ20を支持する一対の縦軸スライダ19を同期して移動させる必要がないため、移動制御を容易に行うことができる。
【0021】
さらに、この実施形態の平面度測定装置では、基台11上に両縦軸ガイドレール16の下端部の移動を規制するための規制部材21が設けられている。このため、横軸スライダ15の移動時に、吊下状態にある一対の縦軸ガイドレール16の下端部に横振れが生じるおそれを防止することができ、被測定物Wとセンサ20との間隔を一定に保持して測定精度を向上することができる。
【0022】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図5に示す実施形態においては、前記一対の縦軸ガイドレール16に対し前記縦軸スライダ19と異なる縦軸スライダ22が縦軸ガイドレール16に沿って上下方向の案内移動可能に装着されている。前記縦軸スライダ19と縦軸スライダ22は自在継手としてのユニバーサルジョイント23によって連動可能に連結されている。前記縦軸スライダ22は図示しないボールねじ送り機構によって上下方向の往復移動可能に装着されている。
【0023】
この実施形態においては、前記縦軸スライダ22が図示しないボールねじ送り機構によって昇降動作され、縦軸スライダ19はユニバーサルジョイント23を介して縦軸スライダ22に連結されているので、ボールねじ送り機構のボールねじの振れ回りによる縦軸スライダ22の揺動が縦軸スライダ19に伝動されるのをなくすことができる。このため、縦軸スライダ19に設けたセンサ20による被測定物Wの平面度の測定を安定して高精度に行うことができる。
【0024】
・ 図6に示す実施形態は、縦軸ガイドレール16に昇降可能に設けた縦軸スライダ19に対し、前記センサ20の他に被測定物Wの縦横の寸法を計測するためのレーザラインセンサ25を設けている。このレーザラインセンサ25の帯状のレーザ光を照射するレーザ照射口26は水平線及び垂直線に対しそれぞれ45度傾斜するように取り付けられている。そして、このレーザラインセンサ25から帯状のレーザ光を45度の傾斜状態で被測定物Wに照射し、被測定物Wの水平方向の両端縁及び垂直方向の両端縁により帯状のレーザ光が一定量だけそれぞれ遮光された状態を検出し、そのときのレーザラインセンサ25の水平方向の二位置座標及び垂直方向の二位置座標から被測定物Wの水平方向及び垂直方向の寸法を制御装置に設けたコンピュータによりそれぞれ演算するようにしている。従って、この実施形態では、被測定物Wの水平方向の寸法及び垂直方向の寸法を一つのセンサ25によって測定することができ、センサの個数を少なくすることができる。
【0025】
・ 前記実施形態において、センサ20として光学センサとは異なった例えば接触子を有するセンサ等の構成を用いること。
・ 前記実施形態において、横軸駆動機構としてリニアモータとは異なった例えばボールネジ送り機構等の構成を用いること。
【0026】
・ 前記実施形態において、縦軸駆動機構としてサーボモータ及びボールネジ等とは異なった構成を用いること。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態の平面度測定装置を示す正面図。
【図2】図1の平面度測定装置の平面図。
【図3】図1の3−3線における断面図。
【図4】図1の4−4線における断面図。
【図5】この発明の別の実施形態を示す縦断面図。
【図6】この発明の別の実施形態を示す部分正面図。
【図7】従来の平面度測定装置を示す正面図。
【図8】図7の6−6線における断面図。
【図9】図7の7−7線における断面図。
【符号の説明】
【0028】
W…被測定物、11…基台、14…横軸ガイドレール、15…横軸スライダ、16…縦軸ガイドレール、19,22…縦軸スライダ、20…センサ、21…規制部材、25…レーザラインセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被測定物を立設状態で支持する基台と、
前記被測定物の上方において被測定物に沿って延びるように、基台上に架設された横軸ガイドレールと、
その横軸ガイドレールに横方向へ移動可能に支持された横軸スライダと、
前記被測定物の表裏両面に沿って平行に延びるように、前記横軸スライダに吊下された一対の縦軸ガイドレールと、
各縦軸ガイドレールに縦方向へ移動可能に支持された一対の縦軸スライダと、
前記被測定物の表裏両面に対向するように、各縦軸スライダに支持された一対のセンサと
を備えたことを特徴とする平面度測定装置。
【請求項2】
前記基台上には、両縦軸ガイドレールの下端部の移動を規制するための規制部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の平面度測定装置。
【請求項3】
前記横軸スライダは静圧軸受機構を介して前記横軸ガイドレールに支持され、前記縦軸スライダは静圧軸受機構を介して前記縦軸ガイドレールに支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の平面度測定装置。
【請求項4】
前記横軸スライダはリニアモータにより往復動され、前記縦軸スライダはボールネジ送り機構により往復動されるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の平面度測定装置。
【請求項5】
前記縦軸スライダは前記縦軸ガイドレールの上下二箇所に装着され、両スライダは自在継手により連動可能に連結され、一方の縦軸スライダを前記ボールネジ送り機構により往復動し、他方の縦軸スライダに前記センサを装着したことを特徴とする請求項4に記載の平面度測定装置。
【請求項6】
前記縦軸スライダには被測定物の水平方向の寸法及び垂直方向の寸法を測定するレーザラインセンサが設けられ、該センサは帯状のレーザ光を傾斜して被測定物に照射するように設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の平面度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−109436(P2009−109436A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284337(P2007−284337)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(593206986)株式会社関ヶ原製作所 (18)
【Fターム(参考)】