説明

床洗浄法

【課題】
硬質床表面を洗浄するための洗浄法であって、実質的に清浄で非滑性な硬質床表面を効果的に復元させることができる有効な洗浄法を提供する。
【解決手段】
下記の逐次的な過程(a)〜(c)を含む、脂肪および脂肪酸のCa塩を含有する複合汚れを有する、グラウトで固めた素焼き陶製タイル表面たる硬質床表面の洗浄法であって:
(a)最初に、複合的汚れが存在する硬質床表面にアルカリ性pHを有する第一クリーナーを接触させ、続いて該複合汚れに機械的力を印加し、
(b)次に、処理された床表面に酸性pHを有する第二クリーナーを接触させ、機械的汚れ除去作用を加え、
(c)次いで、処理された床表面に中性pHを有する第三クリーナーを接触させる、硬質床表面の洗浄法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は汚れて滑りやすい硬質床表面からの汚れ除去法に関する。この発明はまた、グラウトで固めた素焼陶製タイル(quarry tile)張床表面からの汚れの除去または該床表面の洗浄法にも関する。複数の洗浄剤を特有の順序で併用することによって、2種またはそれ以上の様々な汚れ混合物(洗浄剤から誘導される有機物汚れ、無機物汚れ、主としてアルカリ性汚れ、タンパク質汚れ、炭水化物汚れ、中性脂肪または脂肪酸もしくはその塩を含む脂肪汚れを含む)を含有する複合物汚れをグラウト表面とタイル表面から除去することができる。この方法の特有の方法には、洗浄剤の床表面への順次適用および該洗浄剤の存在下における床表面の研磨または研磨的洗浄過程を含む汚れの機械的除去が含まれる。処理後の床は実質的に汚れがなく、摩擦係数(COF)またはフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)によって特徴づけられる非滑性状態に復帰する。
【背景技術】
【0002】
レストラン、ホテルおよびカフェテリア等の一般的な調理ユニットの床表面は一般に硬質である。好ましい表面はグラウトで固めた素焼陶製タイル張表面である。このようなタイル張りの床は固着性または接着性基材に素焼陶製タイルを埋設して該タイルの安定した土分を用意することによって設置される。タイルの接合部にはグラウトと呼ばれるセメント状物質が充填される。従って、この種の床表面は格子状に配設された素焼陶製タイルと各々のタイルを包囲するグラウト線から構成される。
【0003】
調理ユニット内では多種多様な汚れが発生する。調理においてはタンパク質型食材、脂肪型食材および炭水化物型食材が利用される。調理ユニットはまたその周囲環境および水の硬度成分と洗浄剤成分を含有する水性クリーナーに起因する汚れにもさらされる。このような食材と汚れは床表面に汚れ沈着物を形成する。脂肪性汚れは一般的には2つのタイプのものを含む。即ち、中性脂肪汚れ(例えば、実質的に中性脂肪酸トリグリセリドエステルおよび類似の中性脂肪を含有する)と遊離の脂肪酸またはその塩である。脂肪酸塩はナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、第一鉄イオンおよび第二鉄イオン等のカチオンから形成される。
【0004】
従来から多種多様のクリーナーと洗浄法が開発されている。従来の大部分のクリーナーは塩基性および中性のものであり、酸性のものは比較的少ない。床表面上に汚れ沈着物を形成する多様なタイプの汚れや複合的な汚れの洗浄に関しては多くの研究がなされている。単一のクリーナーによって全ての汚れを効果的に除去することはできない。中性脂肪汚れを除去する洗剤は無機物汚れの除去には効果が弱い。遊離脂肪酸を除去する洗剤はタンパク質汚れの除去には有効ではない。
【0005】
汚染されたまたは汚れた硬質床表面または素焼陶製タイルは多年にわたって各種の施設やサービス産業の分野において種々の問題をもたらしている。汚れた床表面は有害なバクテリアの温床となり、また、滑りやすく危険であり、さらに一般的に美感の点からも魅力のないものとなる。一般的な台所の床の汚れは種々の成分、例えば、飽和および不飽和脂肪成分(中性脂肪エステル)、脂肪酸、脂肪酸塩(ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、タンパク質、炭水化物、無機物(一般的には水道水の硬度成分に起因する)、クリーナー残渣、汚物やほこり等、並びに局部的な周囲環境に起因するその他の成分を含有する。このような汚れの組成はメニュー、洗浄法、洗浄用薬剤、水道水の硬度、清掃、洗浄計画の時機、洗浄手順およびその他の要因に応じて場所によって異なる。さらに、グラウト線またはグラウト表面に沈着する汚れは素焼陶製タイル上に沈着する汚れとは実質的に相違する。本発明者はグラウト線またはグラウト表面に沈着する汚れは素焼陶製タイル上に沈着する汚れよりも実質的に多くの無機物や脂肪酸成分を含有することを見出した。
【0006】
床の幾何学的形状も洗浄に影響を与える。グラウト線は一般的には素焼陶製タイル表面から垂直方向へくぼんでいる。素焼陶製タイルとグラウト線の位置の相違は汚れの沈着に対しては実質的に異なる環境をもたらす。グラウト線上の汚れは、床の構築に際してグラウトをくぼんだ状態で設置するので保護されるのが一般的である。素焼陶製タイル表面は洗浄過程における機械的研磨作用をより多く受ける。グラウト線はくぼんでいるために、特に素焼陶製タイルに隣接するその周縁部は汚れの沈着に対しては保護領域または凹状領域を提供する。グラウト線上の汚れの沈着物はグラウト線上に自然に蓄積する物質のほか、清掃に際して素焼陶製タイル表面から除去されてグラウト線上へ移動した物質も含む。このような複合的沈着物と床表面の幾何学的形状は床の維持管理者に異なる問題をもたらす。素焼陶製タイル表面上の汚れはグラウト線上に一般的に蓄積する汚れとは相違する。さらに、軟水を使用する施設における汚れは硬水を使用する施設における汚れとは実質的に相違し、また、脂肪の多いメニューを提供する施設における汚れは、より健康的な低脂肪メニューを提供する施設における汚れとは実質的に相違する。
【0007】
多くの洗浄法が従来から知られている。床の維持管理には洗浄作業のみを伴う場合が多い。しかしながら、より一般的な硬質床表面の洗浄法には「メインテナンス(maintenance)」過程と「ストリッピング(stripping)」過程が含まれる。メインテナンス過程はごく普通には1日に1回または2回の割合で強くない洗浄方式でおこなって1日に蓄積する汚れを除去する。ストリッピング過程は強力な洗浄方式でおこなうものであって、床の汚れまたはその他の汚染物を実質的に除去することを保証する。ストリッピング過程にはクレンザーの集中的な適用と床表面の注意深い研磨によって全ての汚れを除去することを保証する。ストリッピング過程の間のメインテナンス過程では、ストリッピング過程の間の汚れの蓄積量をより低濃度の洗剤を用いる強くない洗浄方式によって低減させる。しかしながら、強力なストリッピング過程においても除去できない複合的汚れもある。中性のタンパク質と脂肪を含む汚れを除去するための単一の水性ノニオン界面活性剤含有中性クリーナーは脂肪酸汚れに対しては効果が低く、また、脂肪酸と硬度成分を含む汚れに対しては効果はさらに悪くなる。同様に、塩基性クリーナーまたは酸性クリーナーを用いる単一の洗浄過程によって床を清浄化することはできない。多くの場合、各種の施設内において複合的汚れが沈着した硬質床表面や素焼陶製タイルの洗浄のために提案されている洗剤は一般的には単一過程で用いられる中性クリーナーまたは塩基性クリーナーを含有する。このようなタイプのクリーナーは中性脂肪汚れまたは主としてアルカリ性の無機物汚れに対して部分的には有効であるが、該クリーナーや該クリーナーを用いる洗浄法をかなり強い機械的作用を伴うストリッピング過程において利用するときであっても、素焼陶製タイル表面やグラウト線上に沈着した複合的汚れを効果的に除去することはできない。
【0008】
酸性クリーナーも試みられてきた。コックレルらによる米国特許第4,749,508号および同第4,877,459号各明細書には、素焼陶製タイルに付着した汚れを除去するための酸性クリーナーの使用技術が開示されている。本発明者はコックレルらによる酸性クリーナーが無機硬度成分をかなりの割合で含有する脂肪汚れまたは酸性汚れの除去において有用であることを見出した。コックレルらによる酸性クリーナーは硬質表面に適用されるものであって、かなり強い研磨作用のもとで使用することによって、硬質表面に付着した汚れは除去される。本発明者は複合的汚れのなかにはコックレルらによる酸性クリーナーを使用しても実質的に除去されないものがあることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,749,508号明細書
【特許文献2】米国特許第4,877,459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は汚れの複合的性質が酸性洗浄を妨げる汚れをもたらすことを見出した。従来のいずれのクリーナーも単一の洗浄過程で大部分の場所から汚れを除去することはできない。前述のように、タンパク質に基づく汚れ、炭水化物に基づく汚れ、遊離脂肪酸汚れ、中性脂肪酸汚れ、汚物およびクリーナー残渣等を種々の割合で含む汚れに水道水中の硬度成分がかなりの量で混入することによって、一般的なストリッピング過程またはメインテナンス過程における一般的な酸性クリーナーまたは塩基性クリーナーを単独で用いる洗浄法を妨げる汚れがもたらされる。
【0011】
硬質床表面を洗浄するためのストリッピング法、メインテナンス法またはストリッピング−メインテナンス法によって実質的に清浄で非滑性な硬質床表面を効果的に復元させることができる有効な洗浄法の開発が強く要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明者は、除去が困難な複合的汚れの大部分を硬質床表面、好ましくはグラウトで固めた素焼陶製タイル表面から除去するのに有効なストリッピング法、ストリッピング−メインテナンス法またはメインテナンス法において使用できる逐次的洗浄法を見出した。この方法はグラウトで固めた素焼陶製タイル表面だけでなく凹状のグラウト線からも汚れを除去するためのクリーナーの逐次的使用を含む。本発明者が見出したこの方法は中性クリーナー、実質的に酸性のクリーナーまたは塩基性クリーナーの単独使用の場合に比べて、硬質床表面からの汚れの除去率を高めて実質的に清浄で非滑性の素焼陶製タイル表面を復元させると共にグラウト線からの汚れの除去も改善する。この方法には、中性pHから少なくとも0.5離れたpHを有する水性クリーナーを用いる第一洗浄過程と相補的pHを有するクリーナーを用いる第二洗浄過程が含まれる。「相補的pH」とは、塩基性pHに対しては約6.5よりも小さなpHを意味し、また、酸性pHに対しては約7.5よりも大きなpHを意味する。
【0013】
第一の態様においては、洗浄法は塩基性クリーナー(即ち、約7.5よりも大きなpHを有する洗浄組成物)を最初に使用し、次いで相補的pHを有する酸性クリーナー(即ち、約6.5よりも小さなpHを有する洗浄組成物)を使用することからなる。
第二の態様においては、洗浄法は酸性クリーナー(即ち、約6.5よりも小さなpHを有する洗浄組成物)を最初に使用し、次いで相補的pHを有する塩基性クリーナー(即ち、7.5よりも大きなpHを有する洗浄組成物)を使用することからなる。
【0014】
最初に用いるクリーナーと素焼陶製タイル表面の汚れまたはグラウト線の汚れが接触している間に機械的力を汚れに印加して汚れの除去を促進してもよい。このような機械的力は各種の研磨器具、例えば機械的回転式スクラバー、サンドブラスト、ウォーターブラスト、研磨パッドおよびブラシスクラバー等を用いて印加してもよい。本発明者は、第一クリーナー(酸性または塩基性クリーナー)の使用の後に相補的pHを有する第二クリーナー(塩基性または酸性クリーナー)を使用するこの特有の逐次的洗浄法によって従来のいずれの洗浄法に比べても実質的に改善された洗浄効果が得られることを見出した。このような方法による洗浄結果は、特定の汚れの場合には中性クリーナー、好ましくはノニオン界面活性剤を含有する中性クリーナーの使用によって高めることができる。さらに、任意の汚れや表面に対する好ましい方法においては、第一クリーナーと相補的pHを有する第二クリーナーの逐次的使用を繰り返してもよく、また、機械的な汚れ除去法またはその他の常套のいずれかの汚れ除去法を併用してもよい。さらに本発明者は、塩基性クリーナーを使用した後で酸性クリーナーを逐次的に使用することによって最適な洗浄効果が得られることを見出した。
【0015】
この明細書において、「複合的汚れ」は硬質床表面、例えばグラウトで固めた素焼陶製タイル等に形成される汚れであって、次の群から選択される成分を少なくとも2種含む混合物を含有する:タンパク質性汚れ、炭水化物性汚れ、硬度成分および/または洗剤から誘導される汚れ、遊離脂肪酸またはその塩(ナトリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩等)を含む脂肪性汚れ、中性脂肪またはこれらの任意の混合物。現在最も一般的に使用されているクリーナーによって除去できない代表的な複合的汚れを図1に示す。
【0016】
「硬質床表面」は各種の施設、サービス施設または商業的調理ユニット等において一般的に設置されている床表面を意味する。このような硬質表面を有する床としては石製床、素焼陶製タイル製床、セラミックタイル製床、伸縮目地を有するコンクリート製床、アスファルト製床、アスベスト製床、リノリュームフローリングおよびモザイク床等が例示される。「機械的力」、この言葉は明細書およびクレーム中で用いているが、汚れを除去する好ましい方向において汚れの表面を研磨する角度または硬質床表面から汚れを分離もしくは除去する角度で床表面または汚れ残渣に印加される力を意味する。このような機械的力は剥離様式、剪断様式または研磨様式で印加してもよい。研磨様式は汚れの表面を研磨することによって汚れを小さな粒子として除去する様式である。剥離様式は汚れと床表面またはグラウト線表面との間に分離力を作用させる。また、剪断様式は床またはグラウトの表面に対して垂直な角度で汚れを移動させる。機械的力は機械的回転式スクラバー、研磨ブラシ、研磨パッド、鋭利なエッジを有する器具、機械的に駆動される環状の洗浄用ブラシもしくはパッド、洗剤に配合される研磨粉、モップ、ストリングモップおよびデッキブラシ等によって印加してもよい。「汚れを実質的に完全に除去する」とは床のオーナーにとって美感の点から容認される清浄な床表面がもたらされることを意味する。清浄な床は、洗浄後の汚れの量がフーリエ変換赤外分光分析によって測定したときに元の複合的汚れの量の35%以下、好ましくは15%以下、最も好ましくは5%以下になることによって定義される。清浄性はスリップや転倒の可能性を低減させる摩擦係数[ASTM C−1028に従い、ブラングレーバーマシン(Brungraber Machine)によって測定した値;COF]によって特徴づけることもできる。一般的にはCOFの最小値は0.4、好ましくは0.5である。さらに、実質的に完全な汚れの除去は、グラウト線から汚れの大部分が除去されて、グラウト線が実質的に新しい外観を呈することを意味する。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明による床洗浄法は第一クリーナーを使用した後で、相補的pHを有する第二クリーナーを逐次的に使用する点に特徴がある。第一クリーナーを使用した後で相補的な第二クリーナーを逐次的に使用するこの特有の洗浄法によって汚れを実質的に完全に除去することができる。この特有の洗浄法は、除去困難な汚れが蓄積する凹状のグラウト線からも汚れを除去する機械的な汚れ除去力の印加を伴う多段階洗浄法の一部として組み入れてもよい。第一クリーナーを使用した後で相補的な第二クリーナーを使用する特有の逐次的方法を組み入れる多段階洗浄法においては、さらに清掃やすすぎのような床の清浄過程、中性クリーナーや水性リンスの使用過程、機械的研磨過程および上記の逐次的洗浄処理を繰り返す過程等を組み入れてもよい。初めの清掃過程は粗い汚れの除去や汚れの研磨の一環として利用してもよい。最初の水性もしくは中性のすすぎ液または洗剤を用いる洗浄過程は清掃過程によってほぐされるかまたは部分的に除去されてゆるく沈着した汚れを除去するのに用いてもよい。第一クリーナーを使用した後、相補的pHを有する第二クリーナーを逐次的に使用する洗浄処理は一回でもよいが、2回またはそれ以上の回数繰り返してもよい。この逐次的洗浄処理の後で常套の他の洗浄処理をおこなってもよく、あるいはこれらを適宜併用してもよい。
【0018】
本発明方法の好ましい態様においては、第一クリーナーを適用した後、該クリーナーと接触してほぐされた汚れに機械的力を印加する過程を含む。このように処理された汚れに相補的pHを有するクリーナーを接触させ、これに機械的汚れ除去作用を加えることによって実質的に完全な洗浄がもたらされる。
【0019】
図2は逐次的洗浄法による汚れ除去試験の結果を示す棒グラフである。酸/酸および塩基/塩基で表示した棒グラフが示すように、単一のpHを有するクリーナーを2回使用しても脂肪酸のカルシウム塩または一般的に中性の脂肪成分の除去率は悪い。しかしながら、酸/塩基および塩基/酸(後者の方が好ましい)の場合にはいずれの成分もほとんど除去される。好ましい塩基/酸の場合には、脂肪の70%が除去され、また、脂肪酸のカルシウム塩は全て除去される(これらの汚れ成分は従来の洗浄法によっては除去が特に困難な成分である)。図3および図4は酸/塩基洗浄法または塩基/酸洗浄法によって処理した素焼陶製床タイルの汚れ表面のFTIRスペクトルを示す。これらのFTIRスペクトルには中性脂肪または脂肪酸のカルシウム塩に起因するピークがみられる。これらのスペクトルから明らかなように、本発明による逐次的洗浄法によってこれらの汚れ成分は実質的に除去される。
【0020】
硬質表面用アルカリ性クリーナー
本発明において有用なアルカリ性クリーナーは以下の表に示す配合処方によって調製することができる(該表には配合成分の全ては示さない)。

【0021】
硬質表面用クリーナーは緩衝剤を含有していてもよい。塩基性緩衝剤には塩基および相補的酸の塩が含まれる。このような塩基としては、特に限定的ではないが次のものが例示される:重炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合物、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムとリン酸三ナトリウムの混合物、ホウ酸塩(例えば、テトラホウ酸ナトリウムおよびホウ砂等)および炭酸塩とリン酸塩の混合物。炭酸塩とリン酸塩の適当な混合物は重量比が約1:1でpHが約9〜10になるものである。
【0022】
硬質表面用クリーナーは穏やかなアルカリ源またはアンモニウム源を好ましくは約1〜20.0重量%含有してもよい。このような成分としては特に限定的ではないが次のものが例示される:水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸ジアンモニウム、モノエタノールアミン、塩化アンモニウムと炭酸ナトリウムの混合物、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムとリン酸三ナトリウムの混合物、ホウ酸塩(例えば、テトラホウ酸ナトリウムおよびホウ砂等)および炭酸塩とリン酸塩の混合物。炭酸塩とリン酸塩の適当な混合物は重量比が約1:1で、pHが約9〜10になるものである。
【0023】
アルカリ源またはアンモニウム源は穏やかなアルカリ源となり、また、顧客の満足度を高めるアンモニア源ともなる。このような組成物は苛性アルカリ源を約8.0〜12.0重量%、好ましくは約10.0重量%含有していてもよい。適当なアルカリ源としては、特に限定的ではないが水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアルカリ金属ケイ酸塩等が例示される。好ましいクリーナーは苛性アルカリ源、穏やかなアルカリ源またはこれらの混合物を含有していてもよい。
【0024】
この組成物は有機または無機の金属イオン封鎖剤を好ましくは約1〜15.0重量%含有していてもよい。適当な金属イオン封鎖剤としてはアルカリ金属リン酸塩、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩等が例示される。金属イオン封鎖剤はトリポリリン酸ナトリウムビーズを含有するのが好ましい。有機金属イオン封鎖剤にはアミノポリカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸等)およびヒドロキシカルボン酸(例えば、グルコン酸、クエン酸、酒石酸およびγ−ヒドロキシ酪酸等)等が含まれる。
【0025】
硬質表面用クリーナーはアニオン界面活性剤を好ましくは約25重量%含有していてもよい。適当なアニオン界面活性剤としては、特に限定的ではないが、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびその他のアニオン界面活性剤が例示される。コストの観点からは、アニオン界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0026】
本発明によるアルカリ性クリーナーにはその安定性を維持するために溶剤または補助溶剤を配合してもよい。水性媒体中に界面活性剤と酸を溶解させた溶液を安定に維持し得る水混和性溶剤はいずれも使用できる。好ましい補助溶剤はアルコールおよびアルキレングリコール、ジアルキレングリコールもしくはトリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルもしくはジアルキルエーテル等である。本発明において補助溶剤として有用なアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールが含まれる。本発明において特に有用な補助溶剤はポリグリム、セロソルブおよびカルビトール等の慣用名で知られているエチレングリコールおよびジエチレングリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルである。この種の補助溶剤の代表的なものとしてはメチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ジグリムおよびトリグリム等が例示される。低コスト、入手の容易性および溶解力の点からはC〜Cアルキルカルビトールが好ましい。本発明において最も好ましい補助溶剤にはブチルカルビトールが含まれる。これらの好ましい補助溶剤は表面張力を低下させ、グリースの可溶化を促進させ、また、安定で単一相としての発泡性の酸性クリーナーの形態を維持する。
【0027】
硬質表面クリーナーはノニオン界面活性剤も好ましくは約15.0重量%含有していてもよい。適当なノニオン界面活性剤としては、特に限定的ではないがノニルフェノールやオクチルフェノール等のアルキルフェノールとエチレンオキシドの反応生成物である脂肪アルコールエトキシレートが例示される。好ましいノニオン界面活性剤にはオクチルフェノールまたはノニルフェノールとエチレンオキシド7〜10モルとの反応生成物が含まれる。以下の酸性クリーナーに関して説明するその他の界面活性剤も使用してもよい。
【0028】
本発明によるアルカリ性組成物は常套のいずれの方法によって調製してもよい。配合成分は水性媒体に溶解または懸濁もしくは分散させ、均一な水性組成物が得られるまで撹拌する。一般に配合成分の添加順序は特に限定的ではないが、製法と初期のクリーナーの安定性の観点からは、無機成分を水溶液に最初に添加した後、有機成分を界面活性剤と共に最後に添加する。これらの成分は混合されて、最終の水性系となり、この水性系は、軟水または水道水中でアルカリ成分の約1%活性濃度でpH約6.5〜13以下を有する。好ましくは、最終溶液のpHはクリーナーの1%水溶液で約8〜13である。
【0029】
硬質表面用酸性クリーナー

【0030】
簡単に言えば、本発明による硬質表面用洗浄組成物は、水性の溶液または分散液中に弱酸および/または強酸並びに界面活性剤を含有する。
【0031】
本発明による酸性組成物の調製に用いる酸性成分には、本発明による水性物に溶解して系のpHを約1〜6.5にする無機酸または有機酸が含まれる。pHが約1よりも実質的に小さくなると被洗浄環境に一般的に使用されている金属やその他の材質の表面を腐食し、また、pHが約6.5よりも大きくなると組成物の洗浄効率が許容できない程度まで低下する。
【0032】
本発明による酸性クリーナー組成物には強酸または弱酸のいずれも配合できる。使用できる一般的な強酸には硫酸、塩酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等が含まれる。酸性成分に関して用いる「弱酸」とは、本発明による組成物を調製するのに有用な濃度で該酸を周囲温度で水に溶解させたときに第一解離過程が実質的に完結しないような酸を意味する。このような無機酸および有機酸は次の文献に記載されているように弱電解質とも呼ばれており、該文献の開示内容も本明細書の一部を成す:コルトッフら、「定量無機分析教本」(ザ・マクミラン社発行、第3版、1952年)、第34頁〜第37頁。
【0033】
市販されている最も一般的な弱無機酸および弱有機酸は本発明に使用できる。有用な弱酸としては次のものが例示される:アジピン酸、コハク酸、グルトン酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、グルコン酸、γ−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸および酒石酸等。硬質表面からの除去が困難な汚れの一つのタイプは脂肪酸や脂肪とCaHPOが一緒になったものであることが判明した。CaHPOは多くの汚れの一部を成すものであって、酸性成分としてリン酸を用いる酸含有クリーナーと硬質成分との相互作用によって形成される成分である。このような汚れも本発明方法によれば効果的に除去される。
【0034】
本発明による酸性クリーナーには種々のアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤が配合できることが判明した。アニオン界面活性剤にはスルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスフォネートおよびカルボキシレート等が含まれる。好ましいアニオン界面活性剤には直鎖状のアルキルスルフェートおよびスルホネート、直鎖状のアルキルベンゼンスルフェートおよびスルホネートおよびこれらの関連界面活性剤が含まれる。
【0035】
種々のノニオン界面活性剤が使用できる。このような界面活性剤にはエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)の長いブロックを有するブロックコポリマーが含まれる。この種の界面活性剤は大きな親水性基、例えばアルキル基、アルキルフェニル基および脂肪酸基等を有していてもよい。この種の界面活性剤は比較的親水性の部分と比較的疎水性の部分を有するので有用な界面活性剤となる。このような有用な界面活性剤としてはプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合反応によって形成される疎水性ポリオキシアルキレン塩基とエチレンオキシドとの縮合物[プルロニック(Pluronic)(登録商標)シリーズ、BASFワイアンドット]、逆プルロニック、アルコールエトキシレートおよびノニルフェノールエトキシレート等が例示される。酸性系に用いるのに特に有用な界面活性剤にはアミンオキシド界面活性剤が含まれる。有用なアミンオキシド界面活性剤は次式:

(式中、RはC〜C20アルキルもしくはC〜C20アルキルアミド−C〜Cアルキル基を示し、RおよびRは相互に独立してC〜C低級アルキルまたはヒドロキシ−C〜C低級アルキル基を示す)
で表されるものである。上式において、RとRの両方がメチル基、エチル基または2−ヒドロキシエチル基であるのが好ましい。この種の好ましい界面活性剤としてはラウリル(ジメチル)アミンオキシド[ニノックス(Ninox)(登録商標)L、ステファンケミカル社、ノースフィールド、イリノイ]、ココジメチルアミンオキシド(ニノックスC)、ミリスチル(ジメチル)アミンオキシド(ニノックスM)、ステアリル(ジメチル)アミンオキシド[シェルカモックス(Schercamox)(登録商標)DMS、シェルケミカルズ社、クリフトン、ニュージャーシー]、ココ(ビスヒドロキシエチル)アミンオキシド(シェルカモックスCMS)、タロウ(ビスヒドロキシエチル)アミンオキシドおよびココアミドプロピル(ジメチル)アミンオキシド(ニノックスCA)が例示される。
【0036】
これらの界面活性剤はアルカリ性溶液中ではノニオン性であるが、酸性溶液中ではカチオン性である。本発明に用いる組成物中のアミンオキシド界面活性剤の好ましい含有量は約1〜15%、特に約2〜10%である。
【0037】
本発明に用いる組成物には、アミンオキシドの汚れ分散力を高めるために少量のノニオン界面活性剤を配合してもよいが、その配合量は全界面活性剤の25%を越えないようにするのが一般的である。有用なノニオン界面活性剤にはC〜C10アルキル置換フェノールのポリエチレンオキシ縮合物、例えばエチレンオキシド8〜10モルとノニルフェノールとの縮合物[イゲパル(Igepal)(登録商標)610、630および710;GAF社製]等が含まれる。他の有用なノニオン界面活性剤としてはプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合反応によって形成される疎水性ポリオキシアルキレン塩基とエチレンオキシドとの縮合物(プルロニックシリーズ、BASFワイアンドット)、C〜C22アルキルアルコールと該アルコール1モルあたり2〜50モルのエチレンオキシドとの縮合物、アルキルメルカプタンのエチレンオキシドエステル、脂肪酸のエチレンオキシドエステル、脂肪酸アミドのエチレンオキシドエーテルおよびこれらに類似の化合物が例示される。ノニオン界面活性剤を使用する場合、その好ましい含有量は全組成物の約0.25〜3%、特に約0.5〜1.5%である。
【0038】
本発明に用いる酸性クリーナーの安定性を維持するために補助溶剤を用いてもよい。水性媒体中において界面活性剤と酸を安定な溶液として維持するいずれの水混和性溶剤も使用できる。好ましい補助溶剤はアルコールおよびアルキレングリコール、ジアルキレングリコールもしくはトリアルキレングリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテル等である。本発明において補助溶剤として用いるのに有用なアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールが含まれる。本発明において特に有用な補助溶剤はポリグリム、セロソルブおよびカルビトール等の慣用名で知られているエチレングリコールまたはジエチレングリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルである。この種の補助溶剤の代表的なものとしてはメチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ジグリムおよびトリグリム等が例示される。コスト、入手の容易性および溶解力の観点からはC〜Cアルキルカルビトールが好ましい。本発明に用いる最も好ましい補助溶剤にはブチルカルビトールが含まれる。これらの好ましい補助溶剤は表面張力を低減させ、グリースの可溶化を促進し、また発泡性の酸性クリーナーを安定な単一相系に維持する。
【0039】
酸性成分の一般的な含有量はクリーナーの約5〜25重量%である。酸性成分のこのような濃度は硬度成分の除去の点で有効なだけでなく、コストとユーザーの安全性の観点からも好ましい。
【0040】
本発明において用いる発泡性で噴霧可能な酸性クリーナーに配合する界面活性剤の全含有量は約2〜約15重量%であるが、活性とコストの観点からは約3〜約12重量%が好ましく、特に好ましくは約2.5〜6.5重量%である。配合する界面活性剤の主成分はアミンオキシドであり、好ましくは全界面活性剤の約50〜100%、最も好ましくは約75〜100%である。
【0041】
本発明に用いる発泡性の酸性クリーナーを安定化する補助溶剤の含有量は約1〜約15重量%である。汚れの除去を促進して表面張力を低減させるためには、エチレングリコールのモノアルキルエーテルまたはジアルキルエーテルを含有する補助溶剤を約2.5〜10重量%の濃度で使用するのが好ましい。本発明に用いるポンプ輸送が可能で発泡性の酸性クリーナーに用いる最も好ましい補助溶剤はC〜Cアルキルカルビトールを含有するものであり、その使用濃度は約2.5〜5重量%である。発泡組成物の安定性と粘着性を改善するために、所望により、有効量の酸安定性増粘剤を添加してもよい。有用な増粘剤にはキサンタンガム[ケルツァン(Kelzan)(登録商標)、メルック社]およびポリビニルピロリドンが含まれる。増粘剤の一般的使用量は約0.1〜5重量%である。
【0042】
本発明に用いる酸性組成物は常套のいずれの方法で調製してもよい。該組成物の形態は固体状ブロック、注型固体、ペレット、顆粒または集塊、液体またはゲルであってもよい。配合成分は水に溶解または懸濁させた後、溶液が得られるまで撹拌する。一般に、配合成分の添加順序は特に限定的ではないが、調製の容易性とクリーナーの初期安定性の観点からは、酸性成分を水性相に溶解させた後、補助溶剤を添加し、最後にこの均一混合物中にアミンオキシド含有界面活性剤組成物を撹拌下で添加する。得られた成分は水性系と混合し、クリーナーの濃度が1%でpHが約1〜約5になるように調整する。最終溶液のpHは軟水または水道水中のクリーナーの濃度が1%のときに1.5〜3にするのが好ましいが、最も好ましい最終洗浄溶液のpHは約2〜3である。
【0043】
アルカリ性洗浄組成物および酸性洗浄組成物は多様な製品形態を取ることができる。このような製品形態としては液状製品、濃厚液製品、ゲル状製品、顆粒状またはペレット状製品、固体ブロック状製品および注型ブロック状製品等が例示される。液状製品は配合成分を水性液または水性溶剤に加えることによって調製するのが一般的である。このような液状製品は典型的には活性成分を水または相溶性溶剤に溶解または懸濁させた後、濃厚液または使用液の濃度まで適当に希釈することによって調製される。ゲル状製品は同様にゲル化剤を適当な濃度で含有する相溶性水性液、水溶液または混合水性有機系に活性成分を溶解または懸濁させることによって調製される。固体状の粒状製品は乾燥した固体状成分を適当な割合で単に混合するか、またはこれらの成分を適当な集塊に凝集させることによって調製される。ペレット状製品はこのような固体状顆粒または集塊を適当なペレット化装置を用いて適当な大きさのペレットに圧縮することによって調製される。固体状ブロック製品および固体状注型ブロック製品は適当な容器内に予備硬化させた配合成分のブロックまたは注型性液状配合成分を導入し、該容器内で配合成分を固体状ブロックに硬化させることによって調製される。この場合の好ましい容器は使い捨てプラスチック製容器または水溶性のフィルム状容器である。一般的には、固体状ブロック製品の計量分配は該ブロックに水を噴霧して濃厚液を調製し、該濃厚液を最終使用濃度まで希釈するための容器へ輸送することによっておこなわれる。
【0044】
本発明による逐次的洗浄法に用いるクリーナーの好ましい計量分配装置は2種、3種またはそれ以上の洗浄組成物を使用場所まで計量分配するのに適合したディスペンサーを具有する、このような計量分配装置においては、個々の使用溶液を計量分配する複数のディスペンサーをハウジング内に配設し、計量分配は制御系によって調整するのが好ましい。2種、3種またはそれ以上の洗浄組成物を計量分配するためのディスペンサーは単一の計量分配系の中に組み入れてもよい。各々のディスペンサーは制御手段を介して共通の希釈用入口に接続するのが好ましい。各々のディスペンサーユニットの出口は共通の出口と液体を介して連絡させるが、該共通出口は濃厚液を所望の使用場所または使用点、例えば自動床洗浄機、モップバケツ、噴霧ヘッドまたはその他の有用な洗浄用装置へ送給するためのチューブまたはその他の手段に接続するのが好ましい。個々の製品、例えば中性クリーナー、酸性クリーナーまたは塩基性クリーナー等を計量分配するための各々のディスペンサーは一般的には予め決められた温度の加圧水源を有する。注型固体状ブリケットまたは集塊化学薬剤形態の固体状濃厚物は高圧流(一般的には高圧水流)をあてることによって計量分配される。給水系は制御弁を有しており、該制御弁はディスペンサーに流入する水を制御し、また、ディスペンサーの出口へ送給される所定量の濃厚液を調製する水のフローと流量を制御する。濃厚製品にあてる水量を制御するための適当な制御手段を用いてもよい。固体状化学薬剤組成物から使用溶液を調製するためのディスペンサーを具有する好ましい多製品計量分配系は米国特許出願第08/349,917号(1994年12月6日出願)明細書に開示されている。
【0045】
7.5よりも大きいpH、好ましくは8よりも大きいpHを有するクリーナーおよび6.5よりも小さいpH、好ましくは5.5よりも小さいpHを有するクリーナーを含む前記のいずれかのクリーナー組成物の使用に際しては、クリーナーを一般的な順序で硬質床表面上に塗布し、該床表面上でクリーナーと接触した汚れに機械的力を印加し、次いで床表面上に存在するクリーナーと脱着した汚れを除去する。クリーナーと汚れの除去処理は種々の方法、例えば、モップがけ、スクィージー処理、真空除去、流水処理、すすぎ処理またはこれらのいずれかの併用によっておこなえばよい。クリーナーの塗布に先だって、粗いごみ等は掃除によって除去すべきである。さらに、すすぎ水または中性クリーナーを用いて弱く付着した汚れ残渣を除去してもよい。
【0046】
一般的には、汚れの除去を促進するための床表面のこすり処理の前後においてはクリーナーと汚れは一定時間接触させた状態にしておいてもよい。汚れに対するこすり処理またはその他の機械的力を印加する処理の前後において5〜10分間にわたってクリーナーを汚れに含浸させることによって汚れを除去を促進することができる。
【0047】
本発明に用いるクリーナーと接触した汚れをこすり取る好ましい用器は、処理された汚れを効果的かつ効率よく削り落とす先端のとがった剛直ブラシファイバーを有するデッキブラシである。最適な汚れ除去処理をおこなった後、残存するクリーナーは完全に除去することが重要である。乾燥後に床表面上に残存するクリーナーは溶解または懸濁された汚れを再沈着させる。
【0048】
本発明の好ましい洗浄法においては、硬質床表面に第一クリーナーを接触させた後、相補的pHを有する第二クリーナーを適用する。相補的pHを有するクリーナーを逐次的に併用する特有の洗浄法によって汚れの実質的な除去と洗浄法が確立される。クリーナーの逐次的使用法は多数の他の過程を含む洗浄法の一部として利用してもよい。1日あたりの種々の洗浄法を以下の表に示す。この表においては、脚注に示す意義を有する略字によって好ましい洗浄過程を示す。このような方法は1日あたりの洗浄過程のスケジュールを示す。翌日の洗浄スケジュールにおいては、汚れのタイプと量および曜日に応じて別のスケジュールを採用してもよい。




【0049】
上記の表に示す一週間あたりの洗浄スケジュールにおいては、1日ごとにN、A、B、A/BまたはB/Aの洗浄処理をおこなう。翌日は別のクリーナーを使用する。本発明には、同じ週において酸性クリーナーを使用した後、塩基性クリーナーを使用するか、または塩基性クリーナーを使用した後、酸性クリーナーを使用する洗浄法が含まれる。中性クリーナーを用いる洗浄過程は任意の曜日における他の洗浄過程の一部に組み入れてもよい。各曜日においては、一般的には付着力の弱い汚れを清掃によって除去し、すすぎをおこなった後、クリーナーを使用すると共に削り落しまたはこすり落し処理をおこなう。こすり落し処理の後にはクリーナーとほぐされた汚れを真空除去処理、モップ処理、スクィージー処理または他の除去処理によって取り除く。この除去処理の後、床表面は一般的には水を用いてすすぎ、乾燥処理に付すことによって清浄化された非滑性表面が得られる。しかしながら、多くの洗浄場所においてはすすぎ処理は要求されない。
【0050】
本発明による洗浄方法においては、汚れまたは床表面に機械的力を印加することによって汚れ除去率を実質的に高めることができる。このような機械的力は床タイル表面から汚れを剥離様式または剪断様式で削り落すか、または除去する。機械的力は種々の方法で印加させることができる。第一に、床表面を硬い鋭利なエッジを有する用具を用いて研削することができる。このような方法は凹状のグラウト線の洗浄において最も有効であるが、床表面の洗浄にも利用できる。さらに、機械的研磨力をグラウト線および素焼陶製タイル表面に印加することができる。このような研磨力はブラシ、研磨パッド、サンドブラスト、ウォーターブラストまたはクロスやスクィージーのような常套の掃除用具を用いて酸性クリーナーまたは塩基性クリーナーの存在下での研磨等によって印加することができる。このような機械的力は手動で印加してもよく、あるいは機械的用具(例えば、電気駆動式スクラバーまたはブラシ等)を用いて印加してもよい。このような機械的に駆動する用具による力は該用具の設計に応じて前後もしくは左右の方向または循環方向に加えてもよい。本発明による逐次的洗浄法を使用することによって微生物の実質的な死滅がもたらされることも判明した。普通の環境下においては、本発明によるクリーナーの逐次的使用によって微生物の死滅数は3log10(元の微生物数)から5log10(元の微生物数)に高くなると考えられる。微生物を殺菌する最適な条件下では、5log10の死滅数は30秒以内で達成可能であるとも考えている。
【0051】
汚れ除去の定量化は硬質床表面からの汚れ除去の分野の当業者にとっては周知な事項である。しかしながら、以下の試験法を前記のFTIR法またはCOF法の補足または代替として利用することによって硬質床表面、特にグラウトで固めた素焼陶製タイル表面からの汚れの除去を定量化することができる。これに関連する汚れは硬質表面または素焼陶製タイル表面からの汚れの除去を測定するのに理想的な汚れである。しかしながら、グラウト線からの汚れの除去を測定するためには、これに関連する汚れと方法が理想的である。
【0052】
台所の床の汚れ
ガードナー(Gardner)の直線的汚れ除去試験法
目的:種々の洗剤組成物の洗浄効率の比較
原理:素焼陶製床タイルを、レストランの台所の床にみられる汚れを再形成する汚れ混合物(例えば、脂肪酸カルシウム塩の汚れ等)と共に200°Fで2時間焼成する。これらのタイルについて、試験の前後においてウルトラスキャン(Ultrascan)スペクトロフォトメーターを用いる測定をおこなった。
ガードナーの直線的洗濯適性装置(WG8100型)を使用し、ナイロン製ブラシ(ガードナー社製)および希釈洗剤溶液を用いて汚れたタイルを洗浄した。
装置と材料
1.プラスチック製型板(21−15/16”×6−15/16”×1/2”)と2つの穴(3−1/16”×3−1/16”)を有するガードナーの直線的装置
2.ウルトラスキャンスペクトロフォトメーター装置
3.クリーム色の素焼陶製タイル(3”×3”パネル)[カラータイル社(セントポール、ミネソタ)製]
4.ペイントブラシ(1”幅;非ナイロン製)
5.ガードナーの直線的ブラシ(2つのブラシを合体したブラシ;2−3/4”幅×3−1/2”長さ)
6.秤り
7.メスシリンダー(200ml)
8.オーブン(200°Fに予熱)
タイル汚染法
1.ウルトラスキャンスペクトロフォトメーターを用いてデータを得るためにはタイルの汚染前の測定値が必要である。素焼陶製タイル(各々の被験濃厚製品に対して4枚のタイルを使用する)の滑らかな面を測定する。
2.汚染物はタイルに塗布する前に十分に混合し、その稠度はタイルに塗布するのに必要な値に維持する。タイルを秤りの上に載せ、風袋を量る。汚染物約2.0gをタイルに載せ、ペイントブラシを用いて一方向になでつけた後、タイルを回転させ、該方向と直角方向になでつける。試験に必要なだけのタイルを汚染させる。
3.汚れたタイルを予め200°Fに加熱したオーブン内に入れ、2時間焼成した後、取り出して一夜放置する(タイルは1日経過後に使用すべきではない)。
汚れ除去試験法
1.一般的には濃度が2oz/gal(1.5重量%)の試験溶液を調製する。水は適当な水を使用すればよいが、全試験を通じては同じ水を使用すべきである。
2.プラスチック製型板をガードナーの直線的試験装置内に入れ、ブラシをハウジングボックス内に入れる。
3.汚れた2枚のタイルを型板の開口部に入れる。
4.メスシリンダーを用いて試験溶液200mlをトレー内に注ぐ。
5.試験装置の運転を開始させ、タイルを32パスにわたって洗浄する(8パス経過ごとにタイルを回転させる)。
6.ブラシとタイルを取り出して温水ですすぐ。
7.タイルを風乾させる。
測定データ(例)
適当なウルトラスキャン装置を使用し、汚れたタイルの洗浄の前の測定値(B)および後の測定値(A)を記録する。
算出
(A−B)/(最初のB)×100=CE
結果の解釈
汚染物のバッチの違いによる偏差および試験者の違いによる偏差を除くためには、同じ日に同じ汚染物を用いて同じ試験者によって試験がおこなわれる場合以外は、類似製品に関する結果は比較すべきでない。これは比較のためにのみ有用な経験的な試験である。既知の結果をもたらす製品を、他の全ての洗剤に対する比較として各々の試験操作において使用する。
【0053】
この出願に係る添付図、明細書、種々の手順および表は本発明の目的と範囲を理解するための基礎となるものであるが、本発明はさらに多種多様な有用な手順に従って具体化することができる。以下の請求の範囲において本発明を具体的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は多くの施設においてみられる複合的汚れ、即ち、中性脂肪、タンパク質、飽和ならびに不飽和脂肪酸の不溶性カルシウム塩およびかなりの量の他の成分を含有する汚れのパイ図表である。
【図2】図2は汚れ除去試験におけるFTIR(フーリエ変換赤外分光分析)から得られたデータを示す棒グラフである。これらの棒グラフの比較により、第一クリーナーを使用した後で相補的pHを有するクリーナーを使用することによって汚れの除去率が改善されることがわかる。
【図3】図3は逐次的洗浄法に基づいて汚れが実質的に除去されることを示すFTIRスペクトル(シリカセル)を示す。汚れたタイルの場合にも、標準的な洗浄法によって類似の結果が得られた。
【図4】図4は逐次的洗浄法に基づいて汚れが実質的に除去されることを示すFTIRスペクトル(シリカセル)を示す。汚れたタイルの場合にも、標準的な洗浄法によって類似の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の逐次的な過程(a)〜(c)を含む、脂肪および脂肪酸のCa塩を含有する複合汚れを有する、グラウトで固めた素焼き陶製タイル表面たる硬質床表面の洗浄法であって:
(a)最初に、複合的汚れが存在する硬質床表面にアルカリ性pHを有する第一クリーナーを接触させ、続いて該複合汚れに機械的力を印加し、
(b)次に、処理された床表面に酸性pHを有する第二クリーナーを接触させ、機械的汚れ除去作用を加え、
(c)次いで、処理された床表面に中性pHを有する第三クリーナーを接触させ;
上記第一クリーナーが、重炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合物、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムとリン酸三ナトリウムの混合物、テトラホウ酸ナトリウムまたはホウ砂から選ばれるホウ酸塩、および炭酸塩とリン酸塩の混合物からなるグループから選択される緩衝剤を10〜20重量%、
水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸ジアンモニウム、モノエタノールアミン、塩化アンモニウムと炭酸ナトリウムの混合物、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムとリン酸三ナトリウムの混合物、テトラホウ酸ナトリウムまたはホウ砂から選ばれるホウ酸塩、および炭酸塩とリン酸塩の混合物からなるグループから選択されるアルカリ源またはアンモニウム源を5〜15重量%、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアルカリ金属ケイ酸塩からなるグループから選択される苛性アルカリ源を5〜15重量%、
トリポリリン酸ナトリウムビーズを含有する無機の金属イオン封鎖剤を5〜20重量%、
ドデシルベンゼンスルホン酸から選択されるアニオン界面活性剤を1〜25重量%、
オクチルフェノールおよびノニルフェノールとエチレンオキシド7〜10モルとの反応生成物からなるグループから選択されるノニオン界面活性剤を0〜25重量%、
アミノポリカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸からなるグループから選択される有機金属イオン封鎖剤0〜25重量%、および
〜Cアルキルカルビトールからなるグループから選択される溶剤を0.1〜15重量%からなり;
上記弟二クリーナーが、緩衝剤を10〜20重量%、
リン酸から選択される緩酸を5〜45重量%、
硫酸、塩酸およびトリクロロ酢酸からなるグループから選択される強酸を5〜45重量%、
アミンオキシドから選択されるカチオン界面活性剤を0〜20重量%、
直鎖状のアルキルスルフェートまたはスルホネートおよび直鎖状のアルキルベンゼンスルフェートまたはスルホネートからなるグループから選択されるアニオン界面活性剤を1〜25重量%、
〜C10アルキル置換フェノールのポリエチレンオキシ縮合物から選択されるノニオン界面活性剤を0〜25重量%、
有機金属イオン封鎖剤を0〜25重量%、および
〜Cアルキルカルビトールから選択される溶媒を0.1〜15重量%からなり;そして第三クリーナがノニオン界面活性剤含有する、硬質床表面の洗浄法。
【請求項2】
機械的力がブラシ、機械的回転式スクラバー、研磨パッドまたはこれらの組合せを用いる清掃力を含む請求項1記載の洗浄法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233667(P2009−233667A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168822(P2009−168822)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【分割の表示】特願平8−523492の分割
【原出願日】平成7年8月22日(1995.8.22)
【出願人】(596071567)エコラブ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ECOLAB INC.
【Fターム(参考)】