説明

座標計測装置及び荷電粒子ビーム描画装置

【課題】試料に形成された多数のパターンの座標を短時間で計測することが可能な座標計測装置を提供する。
【解決手段】偏向器13により電子線12を偏向走査することで、試料Mに形成された複数のパターンのSEM画像が画像取得手段35により取得される。取得したSEM画像に含まれる複数のパターンのうちの一のパターンの座標がステージ位置に対応させられ、この一のパターンの座標に対する他のパターンの相対的な座標が座標計測手段38により計測される。ステージ22を移動させて又は移動させながら、SEM画像を取得し、座標を計測させる制御を繰り返し実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標計測装置及び荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体デバイスの高集積化に伴い、半導体デバイスの回路パターンが微細化及び複雑化する傾向にある。微細な回路パターンを形成するために、高精度の原画パターンとしてのフォトマスクやレチクル(以下「マスク」という)が必要となる。高精度のマスクを製造するために、優れた解像度を有する荷電粒子ビーム描画装置が用いられている。
【0003】
この種の荷電粒子ビーム描画装置では、ハードウェア構成に起因する描画位置ずれが発生することが知られている。つまり、マスクの撓み、ステージの走行精度、及び、ステージに設けられたミラーの曲がりなどに起因して、描画位置のずれが生じる。荷電粒子ビーム描画装置の描画精度を高めるためには、位置精度を向上させる必要がある。
【0004】
そこで、マスク上に形成された複数の十字パターンの座標を計測し、各十字パターンの計測座標と設計座標の差分を描画位置ずれ量として算出し、この描画位置ずれ量を荷電粒子ビーム描画装置の座標系でフィッティングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。十字パターンの座標の計測には、光学式の座標計測装置や、特許文献2に記載されたような座標計測装置が用いられている。
【0005】
ここで、荷電粒子ビーム装置の位置精度をより一層高めるためには、狭ピッチで形成された多数の十字パターンの座標を計測して描画位置ずれ量を算出することが望ましい。
【0006】
然し、上記十字パターンの個数及びピッチは、十字パターンの座標を計測する座標計測装置のスループットを考慮して定められている。通常用いられている10mmピッチで形成された169個(=13個×13個)の十字パターンの位置測定を光学式の座標測定機(Vistec社製のLMS-IPRO)により行うと、約20〜30分の測定時間を要する。
【0007】
また、上記フィッティングを行う座標に対応する描画位置ずれ量のデータがない場合、その周辺座標に対応する描画位置ずれ量のデータから、当該座標に対応する描画位置ずれ量を補完して求めている。
【0008】
近年、上記荷電粒子ビーム描画装置で用いられるDACアンプの分解能が向上している。これにより、荷電粒子ビーム描画装置において、例えば、8μmピッチのような狭ピッチでマスク全面の描画位置ずれ量のフィッティングを行うことが可能となっている。しかしながら、上述したように、従来用いられていた座標計測装置のスループットを考慮すると、十字パターンの測定数を増加させるには限界がある。十字パターンの測定数を変えずにフィッティング数を増やした場合、上述した描画位置ずれ量の補完が頻繁に行われることとなり、荷電粒子ビーム装置の位置精度が不十分となる可能性がある。
【0009】
そこで、試料に形成された多数のパターンの座標を短時間で計測することが可能な座標計測装置の開発が急務となっている。
【特許文献1】特開2008−85120号公報
【特許文献2】特許第3385698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の課題は、上記座標計測装置を提供することにある。また、本発明の第2の課題は、荷電粒子ビーム描画装置の描画位置精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、試料を保持するステージと、ステージを移動させるステージ移動手段と、ステージの位置を測定するステージ位置測定手段と、試料に形成された複数のパターンの画像を、光又は荷電粒子線を偏向走査することで取得する画像取得手段と、画像に含まれる複数のパターンのうちの1つのパターンの座標をステージ位置測定手段により測定されたステージ位置に対応させ、該1つのパターンの座標に対する他のパターンの相対的な座標を計測する座標計測手段と、ステージ移動手段により前記ステージを移動させて又は移動させながら、画像取得手段により画像を取得させ、座標計測手段により座標を計測させる制御を繰り返し実行する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この第1の態様において、制御手段は、連続して取得される2つの画像がステージ移動方向に沿って重なるように、ステージ移動量を制御するものであり、2つの画像の重複部分に含まれるパターンについて先に計測された座標と後に計測された座標とが相違する場合、後に計測された座標を先に計測された座標に合わせる座標合わせ手段を更に備えるように構成してもよい。
【0013】
この第1の態様において、画像に含まれる各パターンに対応してステージ位置測定手段により測定されたステージ位置と座標計測手段により計測された相対的座標とを取得し、取得したステージ位置と相対的座標との差分を偏向走査に起因する座標ずれ量として算出する座標ずれ量算出手段と、座標ずれ量算出手段により算出された座標ずれ量に基づいて、相対的座標を補正する座標補正手段とを更に備えるように構成してもよい。
【0014】
この第1の態様において、座標補正手段により補正された相対的座標と、予め記憶されたパターン設計座標との差分を、荷電粒子ビーム描画装置の描画位置ずれ量として算出する描画位置ずれ量算出手段を更に備えるように構成してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、荷電粒子ビームの光路上に配置された偏向器を用いて荷電粒子ビームを偏向し、ステージ上の試料にパターンを描画する荷電粒子ビーム装置において、上記第1の態様の描画位置ずれ量算出手段により算出された描画位置ずれ量を入力する描画位置ずれ量入力手段と、描画位置ずれ量を用いて偏向器を制御する偏向器制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、取得画像に含まれる複数のパターンのうち1つのパターンの座標がステージ位置に対応させられ、この1つのパターンに対する他のパターンの相対的な座標が計測される。従って、これら複数のパターンの座標を一括して取得できるため、多数のパターンの座標を短時間で計測することが可能である。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、上記描画位置ずれ量算出手段により算出された描画位置ずれ量を用いて偏向器が制御されるため、荷電粒子ビーム描画装置の描画位置精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態における座標計測装置1の構成図である。
【0019】
図1に示す座標計測装置1は、電子鏡筒10を備えている。電子鏡筒10の中には、電子線12を発する電子銃11と、電子線12を試料であるマスクMの表面上で走査するための偏向器13とが配置されている。
【0020】
偏向器13は、偏向制御手段32からDACアンプ33を介して印加される偏向信号に基づいて、マスクMにおける電子線12の照射位置を制御するものである。このDACアンプ33は、マスクMへのパターン描画を行なった荷電粒子ビーム描画装置のDACアンプと同じ分解能(例えば、1ビット当たり0.3nm)を有するものであることが好適である。
【0021】
電子鏡筒10の下には、試料室20が配置されている。試料室20の中には、マスクMを載置したステージ22が収容されている。
【0022】
マスクMとして、例えば、透明基板上に、図2に示すような1辺の長さL1が4μmである複数のクロム膜からなるボックスパターン50が、8μmのピッチP1でアレイ状に形成されたものを用いることができる。このピッチP1は、パターン描画を行った荷電粒子ビーム描画装置の副偏向領域の1辺の長さ(例えば、8μm)以下とすることが好適である。尚、ボックスパターン50が形成されたマスクMの代わりに、十字パターンが形成されたマスクを用いてもよい。
【0023】
ステージ22は、ステージ移動手段34によって、x方向(紙面に平行な方向)及びy方向(紙面に垂直な方向)に移動可能である。ステージ22には、レーザ干渉計25用のミラー24が設けられている。レーザ干渉計25は、ミラー24にレーザ光を照射し、ミラー24の反射光を受光し、その受光信号を位置検出手段36に出力するものである。位置検出手段36は、レーザ干渉計25からの信号に基づいて、ステージ22のX方向及びY方向の位置を検出するものである。
【0024】
電子鏡筒10の底部には、マスクMからの二次電子26を検出する二次電子検出手段27が設けられている。二次電子検出手段27は、画像取得手段35に接続されている。画像取得手段35は、検出された二次電子26に基づいて、SEM画像を取得するものである。
【0025】
また、座標計測装置1は、制御手段30を備えている。制御手段30は、座標計測装置1の全体的な制御を実行するものである。制御手段30には、メモリなどからなる記憶装置31が接続されるほか、上記した偏向制御手段32、ステージ移動手段34、画像取得手段35及び位置検出手段36が接続されている。記憶装置31には、マスクMに描画された複数のボックスパターンの設計座標が記憶されている。
【0026】
また、制御手段30には、座標処理手段37と、描画位置ずれ量算出手段41と、描画位置ずれ量出力手段42とが接続されている。座標処理手段37は、座標計測手段38と、座標ずれ量算出手段39と、座標補正手段40とを有している。
【0027】
詳細は後述するが、座標計測手段38は、SEM画像に含まれる複数のパターンの座標を計測するものである。座標ずれ量算出手段39は、電子線12を偏向走査することに起因する視野内(SEM画像取得領域内)での座標ずれ量を算出するものである。座標補正手段40は、座標ずれ量算出手段39により算出された座標ずれ量を用いて、前記座標計測手段38により測定された各パターンの座標を補正するものである。
【0028】
次に、図3乃至図6を参照して、上記座標計測装置1における座標計測方法について説明する。
【0029】
先ず、ステージ22を移動させて、所定の位置に位置決めする。この所定位置とは、例えば、図3に示す領域R1が、SEM画像として取得される視野に対応するステージ位置である。このステージ22の位置をレーザ干渉計25を用いて計測する。そして、偏向器13を用いて電子線12を領域R1内でX方向及びY方向に走査する。ここで、電子線12を走査可能な領域(SEM画像を取得可能な視野)R1の1辺の長さL2は、例えば、190μmであり、パターン描画を行った荷電粒子ビーム描画装置の主偏向領域の1辺の長さ(例えば、180μm)よりも長くすることが好適である。
【0030】
この領域R1内の二次電子26は二次電子検出手段27により検出され、その検出結果から画像取得手段35により図4に示すような領域R1のSEM画像が取得される。取得された領域R1のSEM画像は、記憶装置31に格納される。
【0031】
領域R1のSEM画像が取得されると、そのSEM画像に含まれる各ボックスパターン50の座標がそれぞれ座標計測手段38により計測される。取得されたSEM画像に含まれる1つのボックスパターン50の近傍を図5において拡大して示す。
【0032】
図5に示すボックスパターン50をX方向に横切る領域51の信号波形SをSEM画像から抽出する。この信号波形Sの抽出は、記憶装置31に予め記憶されたパターン設計座標に基づいて行われる。抽出された波形Sの例を図6に示す。図6に示す波形Sは、ボックスパターン50に対応する部分の信号強度が高くなっている。波形Sの高信号強度部分の中点を通る線が、ボックスパターン50のX方向の中心線53として求められる(図5参照)。
【0033】
同様にして、図5に示すように、ボックスパターン50をY方向に横切る領域52の信号波形をSEM画像から抽出し、その信号波形からボックスパターン50のY方向の中心線54が求められる。これら求められた中心線53、54の交点Cの座標が、ボックスパターン50の中心座標として計測される。
【0034】
上記方法を用いて領域R1のSEM画像に含まれる全てのボックスパターン50の中心座標が計測されると、任意の一のボックスパターン50の中心座標(例えば、図4に示す領域R1の中央付近に存するボックスパターン50Aの中心座標)が、上記レーザ干渉計25の測定値と対応付けられる。そして、このボックスパターン50Aの座標に対する相対的な座標が、他のボックスパターン50についてそれぞれ求められる。この他のボックスパターン50についてはレーザ干渉計25の測定値と直接対応付ける必要がない。従って、SEM画像に含まれる複数のボックスパターン50の相対的な座標を即座に求めることができる。
【0035】
また、領域R1のSEM画像が記憶装置31に格納されると、次の領域R2のSEM画像を取得するため、ステージ22をX方向に所定量だけ移動させて、ステージ22の位置決めを行う。そして、上記領域R1と同様に、ステージ22の位置をレーザ干渉計25により測定した後、視野に対応する領域R2のSEM画像を取得する。
【0036】
ここで、ステージ22の移動量は、領域R1、R2の1辺の長さL2よりも短い距離(例えば、180nm)とすることが好ましい。これにより、図3に示すように、連続してSEM画像が取得される2つの領域R1、R2を、所定の幅W1だけオーバラップさせることができる。すなわち、連続して取得される2つのSEM画像の一部をステージ22の移動方向(例えば、X方向)に沿って重ねることができる。これにより、SEM画像の取得漏れを確実に防止することができる。
【0037】
これら2つのSEM画像の重複部分に含まれるボックスパターン50については、2回座標が計測されることとなる。ステージ22の走行精度に起因して、先の領域R1で計測された座標と、後の領域R2で計測された座標とが相違する場合がある。この場合、先に計測された座標が正しいものとして、後に計測された座標を先に計測された座標に合わせることが望ましい。これにより、後に計測された座標が逐次補正されるため、座標の精度が向上する。このような座標の合わせ処理は、座標処理手段37により行なうことができる。
【0038】
以上説明したように、ステージ22を移動させて位置決めを行い、電子線12を走査させてSEM画像を取得し、取得したSEM画像に含まれる複数のボックスパターン50の座標を計測することを繰り返し実行することで、マスクMに形成された全てのボックスパターン50の座標が計測される。
【0039】
尚、ステージ22を位置決めした後にSEM画像を取得するのではなく、ステージ22を一方向にトラッキングさせながらSEM画像を取得してもよい。これによれば、ステージ22の停止制御が不要となり、スループットを向上させることができる。
【0040】
ところで、電子線12が偏向走査される領域R1、R2内、すなわち、座標計測装置1の視野内では、電子線12を偏向走査する際に偏向走査するためのDACアンプ33の線形性の誤差や偏向電極の歪みなどによる偏向歪が生じて、マスクの位置検出手段36により検出された座標と比較して座標ずれ(「歪」ともいう。)が生じる可能性がある。
【0041】
この種の座標ずれ量は、後述する荷電粒子ビーム描画装置100(図9参照)のステージ103の走行精度やレーザ干渉計などから構成される位置検出手段105の計測位置を規定するレーザミラー103Aなどのハードウェアに起因する描画位置ずれ量に比して微小ではあるものの、座標計測装置1に起因するものである、従って、この座標ずれは、荷電粒子ビーム描画装置の描画位置ずれを算出する上で取り除くことが望ましい。
【0042】
次に、図7を参照して、電子線12の偏向走査に起因する視野内の座標ずれ量の算出方法について説明する。
【0043】
先ず、ステージ22を移動させて、ステージ22の位置決めをする(ステップS100)。その後、レーザ干渉計25を用いてステージ22の位置を計測する(ステップS102)。この計測されたステージ位置は、記憶装置31内に記憶される。これと共に、SEM画像を取得する(ステップS104)。
【0044】
次に、上記ステップS102で得られたステージ位置をSEM画像に含まれる一のボックスパターンと対応付けると共に、このステージ位置に対する相対的座標を他のボックスパターンについて計測する(ステップS106)。計測された相対的座標は、記憶装置31内に記憶する(ステップS108)。
【0045】
次に、任意の視野内の全てのボックスパターンについて対応するステージ位置と相対的座標とを取得したか否かを判別する(ステップS110)。このステップS110では、図8に示すような均一なパターンを使い、任意の視野F内において選ばれた1つのボックスパターンについてボックスパターンの配置されているピッチでステージ移動を繰り返し行うことによって、視野F内の全ての異なるボックスパターンの位置50a、50b、…について、ステージ位置と相対的座標とが取得されたか否かが判断される。つまり、任意の視野F内において選ばれた1つのボックスパターンについて視野F内に存するボックスパターン数だけ、ステージ位置と相対的座標とが取得されたか否かが判断される。
【0046】
上記ステップS110で任意の視野F内において選ばれた1つのボックスパターンについて視野F内の全てのボックスパターン数だけステージ位置と相対的座標の両方を取得したと判別された場合、パターン毎にステージ位置と相対的座標とのずれ量を算出する(ステップS112)。その後、本処理を終了する。
【0047】
図1に示す座標補正手段40は、このようにして算出された視野内の座標ずれ量を用いて、座標計測手段38により計測された任意の視野F内における各ボックスパターンの座標を補正する。即ち、座標計測手段38により計測された相対的座標から視野内の座標ずれ分を補正することで、相対的座標の精度を向上させることができる。
【0048】
次に、描画位置ずれ量算出手段41により、上記座標補正手段40により補正された各ボックスパターン50の座標と、該各ボックスパターン50の設計座標との差分を描画位置ずれ量として算出する。算出された描画位置ずれ量は、記憶装置31内に格納される。
【0049】
そして、記憶装置31内に格納された1つのマスクM分の描画位置ずれ量が、描画位置ずれ量出力手段42により読み出され、図9に示す荷電粒子ビーム描画装置100に出力される。図9は、本実施の形態における電子ビーム描画装置100の構成図である。
【0050】
上記座標測定装置1の描画位置ずれ量出力手段42から出力された描画位置ずれ量は、荷電粒子ビーム描画装置100の描画位置ずれ量入力手段132により入力され、描画位置ずれ量メモリ134内に格納される。格納された描画位置ずれ量は、荷電粒子ビーム描画装置100において描画位置を補正するための情報として用いられる。
【0051】
図9において、試料室101の中には、試料であるマスク102を載置したステージ103が収容されている。ステージ103は、ステージ移動手段104によって、x方向(紙面に平行な方向)とy方向(紙面に垂直な方向)に移動可能である。ステージ103にはミラー103Aが設けられており、ステージ103の位置は、レーザ干渉計等を用いた位置検出手段105によって検出される。
【0052】
試料室101の上には、電子ビーム光学系110が配置されている。電子ビーム光学系110は、電子銃106と、各種レンズ107,108,109,111,112と、ブランキング用偏向器113と、ビーム寸法可変用偏向器114と、ビーム走査用の主偏向器115と、ビーム走査用の副偏向器116と、ビーム成形用アパーチャ117,118とが配置されている。
【0053】
主偏向器115は、電子ビームを所定のサブフィールド(副偏向領域)に位置決めする。一方、副偏向器116は、サブフィールド内での図形描画単位の位置決めを行う。また、ビーム寸法可変用偏向器114とビーム成形用アパーチャ117,118は、ビーム形状を制御する役割を果たす。さらに、ブランキング用偏向器113は、マスク102の面上で電子ビームの照射を制御する役割を果たす。
【0054】
電子ビームによる描画工程では、まず、ステージ103を一方向に連続的に移動し、主偏向ビームの偏向幅に応じて短冊状に分割されたフレーム領域に描画処理を行う。次いで、前記方向と直交する方向にステージ103をステップ移動して、同じように描画処理を行う。これを繰り返すことにより、各フレーム領域が順次描画されて行く。
【0055】
図9において、制御計算機120には、磁気ディスク121が接続されている。ここで、磁気ディスク121には、LSIの描画データ(CADデータ)が格納されている。磁気ディスク121から読み出された描画データは、パターンメモリ122に一時的に格納される。データ展開ユニット130は、パターンメモリ122から読み出した描画データを展開して、フレーム領域毎のパターンデータ、すなわち、描画位置や図形データ等からなるフレーム情報を生成する。このフレーム情報は、データ解析手段であるパターンデータデコーダ123と描画データデコーダ124で解析された後、ブランキングアンプ125、ビーム成形アンプ26、主偏向アンプ127および副偏向アンプ128に送られる。
【0056】
パターンデータデコーダ123では、フレーム情報を入力し、必要に応じて、フレーム領域に包含される図形データに反転処理を施して、反転パターンデータを生成する。次いで、フレームデータとして定義されている図形データを、ビーム成形用アパーチャ117,118の組み合わせによって形成可能な単位描画図形群に図形分割する。そして、得られたデータに基づいてブランキングデータを作成した後、これをブランキングアンプ125に送る。また、所望とするビーム寸法データを作成して、これをビーム成形アンプ126に送る。次に、ビーム成形アンプ126から電子ビーム光学系110のビーム寸法可変用偏向器114に所定の偏向信号が送られ、これによって電子ビームの寸法が制御される。
【0057】
描画データデコーダ124では、フレームデータと、描画位置ずれ量メモリ134から読み出した描画位置ずれ量とに基づいて、サブフィールドの位置決めのデータが作成される。得られたデータは、主偏向アンプ127に送られる。そして、主偏向アンプ127から電子ビーム光学系110の主偏向器115に所定の信号が送られ、指定されたサブフィールド位置で電子ビームが偏向走査される。また、描画データデコーダ124では、副偏向器走査のコントロール信号が発生して、副偏向アンプ128に送られる。次いで、副偏向アンプ128から副偏向器116に所定の副偏向信号が送られ、これによってサブフィールド毎の描画が行われる。
【0058】
このように、ビーム成形用アパーチャ117,118で成形された電子ビームは、上記座標計測装置1で求められた描画位置ずれ量を用いて照射位置が決められる。図10は、この様子を説明する図である。尚、図10において、151は描画領域、152はフレーム、153はサブフィールド、154はショット図形である。図10に示すように、まず、ステージ(図示せず)をx方向に移動させながら、電子ビームによって描画領域151を構成するフレーム152を描画する。続いて、y方向にステージをステップ送りして、次のフレームを描画する。これを繰り返すことによって、試料の全面に描画を行うことができる。
【0059】
以上述べたように、本実施の形態においては、電子線12を走査することでSEM画像が取得され、SEM画像に含まれる複数のボックスパターン50のうち1つのボックスパターンの座標がレーザ干渉計25及び位置検出手段36により検出されたステージ位置に対応させられ、この1つのボックスパターンの座標に対して他のボックスパターン50の相対的な座標が計測される。従って、SEM画像に含まれる複数のボックスパターン50の座標をまとめて計測することができる。よって、マスクMに形成された多数のボックスパターン50の座標を短時間で計測することができる。
【0060】
また、これら多数のボックスパターン50の座標に対して、電子線の偏向走査に起因する視野内の座標ずれの分だけ補正が行うことで、座標計測装置1により計測された座標の精度を高めることができる。そして、視野内の座標ずれの補正が施された座標と設計座標との差分を描画位置ずれ量として算出し、この描画位置ずれ量を用いて電子ビーム描画装置100において偏向器115、116が制御される。従って、電子ビーム描画装置100の描画位置精度を向上させることができる。
【0061】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施の形態では電子線を用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子線を用いた場合にも適用可能である。
【0062】
また、本発明は電子線を走査することで取得されたSEM画像を複数のパターン座標を計測する際に用いているが、画像の取得方法はこれに限られず、光学画像素子(例えば、CCDカメラ)を使って、均一な照明の下で取得された光学画像や光を走査することで取得された光学画像を用いてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、ボックスパターン50がマスクM全面に連続して形成されている場合について説明したが、ボックスパターン50が不連続で形成されていてもよい。この場合、SEM画像を取得する際に、ボックスパターン50が形成されていない領域をスキップするように、ステージ移動量が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態における座標計測装置の構成図である。
【図2】マスクMに形成されたボックスパターン50を示す図である。
【図3】SEM画像が取得される領域を示す図である。
【図4】領域R1のSEM画像を示す図である。
【図5】SEM画像に含まれる1つのボックスパターン50近傍の拡大図である。
【図6】SEM画像から抽出された波形Sを示す図である。
【図7】電子線12の偏向走査に起因する視野内の座標ずれ量の算出方法について説明するフローチャートである。
【図8】視野内のボックスパターンを示す図である。
【図9】本実施の形態における電子ビーム描画装置の構成図である。
【図10】電子ビームによる描画の様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1 座標計測装置
M 試料
12 電子線
13 偏向器
22 ステージ
30 制御手段
34 ステージ移動手段
35 画像取得手段
37 座標処理手段
38 座標計測手段
39 座標ずれ量算出手段
40 座標補正手段
41 描画位置ずれ量算出手段
42 描画位置ずれ量出力手段
50 ボックスパターン
R1、R2 領域
F 視野
100 電子ビーム描画装置
132 描画位置ずれ量入力手段
134 描画位置ずれ量メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するステージと、
前記ステージを移動させるステージ移動手段と、
前記ステージの位置を測定するステージ位置測定手段と、
前記試料に形成された複数のパターンの画像を、光又は荷電粒子線を偏向走査することで取得する画像取得手段と、
前記画像に含まれる複数のパターンのうちの1つのパターンの座標を前記ステージ位置測定手段により測定されたステージ位置に対応させ、該1つのパターンの座標に対する他のパターンの相対的な座標を計測する座標計測手段と、
前記ステージ移動手段により前記ステージを移動させて又は移動させながら、前記画像取得手段により画像を取得させ、前記座標計測手段により座標を計測させる制御を繰り返し実行する制御手段とを備えたことを特徴とする座標計測装置。
【請求項2】
前記制御手段は、連続して取得される2つの画像がステージ移動方向に沿って重なるように、ステージ移動量を制御するものであり、
前記2つの画像の重複部分に含まれるパターンについて先に計測された座標と後に計測された座標とが相違する場合、後に計測された座標を先に計測された座標に合わせる座標合わせ手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の座標計測装置。
【請求項3】
前記画像に含まれる各パターンに対応して前記ステージ位置測定手段により測定された前記ステージ位置と前記座標計測手段により計測された前記相対的座標とを取得し、取得した前記ステージ位置と前記相対的座標との差分を前記偏向走査に起因する座標ずれ量として算出する座標ずれ量算出手段と、
前記座標ずれ量算出手段により算出された座標ずれ量に基づいて、前記相対的座標を補正する座標補正手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の座標計測装置。
【請求項4】
前記座標補正手段により補正された前記相対的座標と、予め記憶されたパターン設計座標との差分を、荷電粒子ビーム描画装置の描画位置ずれ量として算出する描画位置ずれ量算出手段を更に備えたことを特徴とする請求項3記載の座標計測装置。
【請求項5】
荷電粒子ビームの光路上に配置された偏向器を用いて前記荷電粒子ビームを偏向し、ステージ上の試料にパターンを描画する荷電粒子ビーム装置において、
請求項4に記載の座標計測装置の描画位置ずれ量算出手段により算出された描画位置ずれ量を入力する描画位置ずれ量入力手段と、
前記描画位置ずれ量を用いて前記偏向器を制御する偏向器制御手段とを備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−147066(P2010−147066A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319583(P2008−319583)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】