説明

廃プラスチックの精製処理方法並びに廃プラスチックを原料とするプラスチック成形品の製造方法及びプラスチックボードの製造方法

【目的】 廃プラスチックから品質がよいプラスチック成形品を安定的に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 廃プラスチック103を減圧手段を備えた第1の押出機10へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を濾過する処理を行った後、冷却・固化させて廃プラスチックの粒状品105を得、この粒状品105を、減圧手段を備えた第2の押出機20へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を押出成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物として回収された廃棄プラスチック(以下、廃棄プラスチックを廃プラスチックと記す)をプラスチック成形品の素材としてリサイクルするための精製処理方法並びに廃プラスチックを原料とするプラスチック成形品の製造方法及びプラスチックボードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックのうち、特に、一般家庭から排出されるものは、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニール)、PVDC(ポリ塩化ビニリディン)など多種類のプラスチックの混合物である。また、一般廃棄物の廃プラスチックには、プラスチック以外に、金属や紙類などの異物が含まれている。
【0003】
従来、このような状態で回収される一般廃棄物の廃プラスチックは、通常再利用しないPVC、PVDCなどの塩素含有プラスチックや、金属や紙などの異物を取り除く処理が施された後、エネルギー源などの用途に再利用されていた。
【0004】
金属や再利用しない種類のプラスチックなどの異物を分別して取り除く方法としては、PVC、PVDCなどの塩素含有プラスチックを分別する静電分離法や近赤外線法、鉄を分別する磁選、紙などの軽量物を分別する風選、固形物と軽量物と粉粒物に分別する揺動反発式選別機による方法、多種類のプラスチックを比重が小さいもの(PE、PPなど)と比重が大きいもの(PVC、PVDC、PETなど)に分別する湿式比重分離法などがある。そして、廃プラスチックを再利用する際には、これらの分別方法を幾つか組み合わせた方法が実施されていた。
【0005】
しかし、廃プラスチックをプラスチック成形品の素材としてリサイクルする場合、上記従来の分別方法の組み合わせによる処理をしただけのものを原料として使用すると、成形時にダイスに詰まりが生じる問題が発生することが分かり、そのための技術改良が行われた(例えば、特許文献1)。特許文献1には、上記従来の分別処理法では除去できなかった異物(固形物)を除去する技術が示されている。この技術は、上記従来の分別処理法によって分別された廃プラスチックをプラスチック製品の成形温度まで加熱して溶融し、その溶融物を濾過することにより、残存していた金属類や融点が高いプラスチックなどの固形物を取り除く方法によるものである。
【0006】
そして、廃プラスチックを原料としてプラスチック成形品を製造する技術としては、軽量化されたプラスチックボードの製造方法が特許文献2に開示されている。この技術により製造されるプラスチックボードは、廃プラスチックを発泡処理して多孔質状にした主層と、その主層の両面を覆う熱可塑性プラスチックからなる表層により3層構造に形成されている。
【特許文献1】特開2003−191238号公報
【特許文献2】特許第3528841号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らが、特許文献1の方法と同様の方法により分別した廃プラスチックを加熱溶融させて濾過処理したものを原料とし、押出成形してプラスチックボードを製造したところ、ダイスの詰まりは解消されたものの、新たに種々の問題が発生した。
【0008】
すなわち、押出成形した製品の表面に膨らみができたり、あるいは凹みができたり、また厚さが薄い部分ができて製品の厚さが変動すると言う問題等が発生し、品質がよいプラスチック製品を安定的に製造することができなかった。
【0009】
また、押出機で加熱溶融処理した後の工程において、廃プラスチックから著しい悪臭が発生して作業環境が悪くなるという問題も発生し、悪臭に関わる問題は解消されなかった。
【0010】
このように、特許文献1の方法によっても、ダイスの詰まりは解消されるものの、品質がよいプラスチック製品を安定的に製造することができないと言う新たな問題が発生する。また、悪臭に関わる問題も依然として解消されない。
【0011】
本発明の目的は、廃プラスチックから品質がよいプラスチック成形品を安定的に製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の問題が発生する原因を究明するために、過去に行った試験の結果を検討すると共に、種々の試験を行った。その結果、成形品の表面に凹凸ができたり、厚さが変動する等の原因は、押出機からダイスへ導入される廃プラスチックの溶融物中に気泡が含まれているためであることが分かった。そして、その気泡は、廃プラスチックを加熱した際にガスが発生することにより生成するものであることが分かった。
【0013】
押出機による廃プラスチックの加熱温度は、一般に、180℃〜250℃程度であるが、廃プラスチックが上記の温度まで加熱されると、付着していた水分の蒸発、食品などの付着物の揮散や分解、一部のプラスチック成分の分解などが起り、廃プラスチック中の一部の物質がガス化する。そして、発生したガスは気泡となり、廃プラスチック溶融物中に含まれたまま押出機から排出してダイスへ導入され、上記のような種々の問題が引き起こされることになる。
【0014】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであり、上記の課題を解決する廃プラスチックの精製処理方法は、廃プラスチックを加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、次いで、その溶融物を濾過することを特徴としている。
【0015】
また、廃プラスチックを原料とするプラスチック成形品の製造方法は、廃プラスチックを減圧手段を備えた第1の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を濾過する処理を行った後、冷却・固化させて廃プラスチックの粒状品を得、この粒状品を、減圧手段を備えた第2の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を押出成形することを特徴としている。
【0016】
さらに、廃プラスチックを原料とするプラスチックボードの製造方法は、熱可塑性の廃プラスチックからなる主層と、この主層の両面に熱可塑性プラスチックからなる表層を設けた3層構造のプラスチックボードの製造方法であって、廃プラスチックを減圧手段を備えた第1の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を濾過する処理を行った後、冷却・固化させて廃プラスチックの粒状品を得る工程と、この粒状品を減圧手段を備えた第2の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物にガスを吹き込んで溶融物中に気泡を含ませる工程と、この気泡を含む廃プラスチックの溶融物を平板状に成形して前記主層を成形すると共に、別途に加熱して溶融させた熱可塑性プラスチックを前記主層の両面に相溶させて一体化させ、前記表層を形成する工程と、形成された前記主層と前記表層が一体化されたものを押出成形して帯状にした後、冷却固化させる工程とを有することを特徴としている。
【0017】
本発明において、廃プラスチックを原料としてプラスチックボードなどの製品を製造する場合、廃プラスチックを精製処理し、精製した廃プラスチックを押出成形する処理を行うが、本発明により、廃プラスチックから品質の良い製品を得ることができるのは、次に記す構成を有するためである。精製処理工程では、廃プラスチックを加熱溶融して濾過する固形物の除去処理(濾過処理)を行うだけではなく、加熱溶融した廃プラスチック中のガスを除去する処理(脱気処理)が付加されており、さらに、成形工程においても、精製処理した廃プラスチックを押出成形する際に、ここでも押出機内で加熱溶融した廃プラスチックの脱気処理を行う。
【0018】
まず、精製処理工程においては、濾過処理と脱気処理からなる2段階の精製処理を行うが、ここで発生するガスは、廃プラスチックに含まれている水分や食品などの付着物に由来するものであって、回収される廃プラスチックが一般家庭から排出される雑多なものである上に、前記の分別処理では除去できずに混入してくるものであるので、その混入は許容せざるを得ない。このため、押出機内で生成したガス成分を除去する処理をしなければならないが、押出機内で発生したガスを単に排気すると言う程度の処置、例えば、押出機にファンを取り付けて、機内の空間部に溜まっているガスを排気すると言うような処置では、軟化状態になっているだけの廃プラスチックの内部に含まれている気泡を取り除くことはできない。このため、本発明においては、真空ポンプなどの減圧手段により、押出機内の所定部を高度の減圧状態に保持し、溶融廃プラスチックの内部に存在するガスを吸引して除去する脱気処理を行う。
【0019】
精製処理工程では、押出機から排出される溶融廃プラスチックは水中で延伸されて冷却固化された後、切断されて粒状物になる。しかし、脱気処理がされていなかった場合には、溶融した廃プラスチックに気泡が含まれているため、延伸した廃プラスチックが途切れてしまうことがあり、その際には、精製処理工程全体を休止しなければならない。また、粒状化処理を継続することができたとしても、多量の水分を抱き込んだ不定形の粒状物が生成し、次の成形工程に悪影響を及ぼすことになる。なお、この精製処理工程では、押出機から排出した溶融廃プラスチックをカッター等で切って水中へ落とし、粒状物としても良い。
【0020】
そして、精製処理工程で脱気処理を行うと、精製処理を安定的に継続することができると共に、廃プラスチックから悪臭ガスが除去される。悪臭ガスの発生は、廃プラスチックに付着していた食品などが加熱されて揮散した成分や分解した成分などによるものと思われるが、臭気を発するガスは微量の存在でも影響を及ぼすものであるので、廃プラスチックに付着している臭気発生物質を精製処理以前の段階で、臭気を発しない程度まで除去してしまうことは難しい。例えば、精製処理工程の前段階で行う廃プラスチックの分別処理が、同時に水洗浄が行われる湿式比重分離であったとしても、水溶性のものなどは除去できるが、粘着した付着物などは除去することはできない。
【0021】
また、成形工程においても、加熱溶融した廃プラスチックの脱気を行うが、この脱気処理を行う理由は次の通りである。精製処理工程で得られた粒状の廃プラスチックは、臭気成分などは取り除かれているが、湿分の他に精製処理工程で粒状化した際に取り込まれた水分が含まれている。この水分は僅かな量であるが、プラスチックの成形においては無視し得ないものである。例えば、水分0.5mass%を含んでいる精製廃プラスチックを500kg/hrの流量で押出機へ装入し、200℃に加熱した場合、溶融廃プラスチックから約5.4m3/hrにも及ぶ多量のガスが発生することになる。このような多量のガスが発生すると、その気泡が成形時に表面を膨らませたり、表面へ吹き出して凹みを作ってしまったりし、成形品の品質を低下させる。このように、成形工程に供する廃プラスチックに僅か0.5mass%の水分が含まれていただけでも、良好な成形品を得ることはできない。
【0022】
また、廃プラスチックに含まれるガス発生物質はその量が変動するものであるので、特に、発泡処理をして多孔質の成形品を製造する場合、発泡処理後の廃プラスチック中のガス量が変動して所定値に維持することができず、品質の良い製品を得ることができない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、廃プラスチックの精製処理及びその精製品を成形する工程のいずれにおいても、廃プラスチックを加熱して溶融する際に、減圧状態に保持するので、廃プラスチックが加熱されたときに発生したガスが吸引されて除去される。このため、成形品に膨れができたり、表面に凹みができたりすることがなくなり、品質がよいプラスチック成形品を安定的に製造することができる。また、精製処理では臭気発生物質が除去されると共に、精製処理を安定的に継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は廃プラスチックを原料とするプラスチック成形品の製造方法の一例を示す図である。この方法は廃プラスチックを精製する処理工程Aとその精製廃プラスチックを成形品に加工する成形工程Bからなる。精製処理工程Aへ供給する原料廃プラスチックは、例えば、図4に示す方法によって、回収されてきた廃プラスチックからPVCや鉄類を除去する分別処理をしたものであって、主としてPE、PPなどのポリオレフィン系のものである。図4に示す分別処理方法については後述する。
【0025】
図1において、第1の押出機10及び第2の押出機20は電熱加熱手段を有すると共に、機内の一部を高度な減圧状態に保持するための真空ポンプが接続されており、装入物を加熱する機能と装入物を脱気処理する機能を有している。
【0026】
精製処理工程Aにおいては、分別処理された廃プラスチック103を第1の押出機10へ装入し、加熱して溶融する。廃プラスチックの加熱温度は、回収対象プラスチックの種類によって異なり、180℃〜250℃程度の範囲にするが、融点が高い対象外のプラスチックが混入している場合、その対象外のプラスチックの融点よりも低い温度に設定する。
【0027】
押出機10内では、前述のように、装入された廃プラスチック中に含まれていた水分が蒸発したり、付着していた食品などの有機物が揮散したり、あるいは分解したり、さらにプラスチックの一部が分解したりしてガス化し、無視し得ない量のガスが発生する。しかし、押出機10内は真空ポンプ14により吸引されて高度な減圧状態になっているので、発生したガスは溶融された廃プラスチック中に留まることなく、吸引されて排気される。排気されたガスは悪臭を放つ成分が含まれているので、吸着材が充填された脱臭装置15へ導入され、脱臭処理される。
【0028】
次いで、押出機10から排出された溶融物を、ギアポンプ11により、スクリーンを備えた濾過装置12へ圧入し、濾過する。この濾過処理により、前工程の分別処理で除去できなかった融点が高い対象外のプラスチックやアルミ箔などの固形物104が取り除かれる。この濾過処理においては、網目の大きさが異なる複数のスクリーンを大、小の順に直列に配置して多段階の濾過を行い、スクリーンの目詰まりを軽減させることが好ましい。
【0029】
固形物104が除去された溶融物は、造粒機13へ導入され、水中で延伸されて冷却固化された後、切断されて精製された粒状の廃プラスチック105となる。この精製粒状廃プラスチック105は、溶融した際に固形の状態で存在していた金属や融点が高いプラスチックなどが含まれておらず、さらに、悪臭発生物質も除去されている。このため、この精製粒状廃プラスチック105をプラスチック成形品の素材として使用すれば、品質のよいプラスチック製品を製造することができる。
【0030】
成形工程Bにおいては、前工程で得た精製粒状廃プラスチック105を第2の押出機20へ装入して溶融する。装入される精製粒状廃プラスチック105にも水分が含まれているが、第2の押出機20にも真空ポンプ24が接続されており、機内の一部が高度な減圧状態になっているので、発生したガスは溶融された廃プラスチック中に留まることなく、吸引されて排気される。
【0031】
溶融された廃プラスチックはギアポンプ21により、ダイ22へ導入されて所定の形状に成形され、冷却固化されてプラスチック成形品106となる。この成形工程Bにおいては、ダイ22へ導入された溶融廃プラスチックには気泡が含まれていないので、成形品に膨らみや凹みができることなく、表面が平滑なプラスチック成形品が得られる。
【0032】
図2は廃プラスチックを原料とするプラスチックボードの製造方法の一例を示す図である。図2の方法は廃プラスチックを精製する処理工程Aとその精製廃プラスチックを成形品に加工する成形工程Cからなる。この方法によれば、図3に示すように、多数の空洞部109が形成された主層108aとその両面に設けた表層108bからなる3層構造のプラスチックボードが製造される。このプラスチックボードは、コンクリート型枠用パネル、壁や天井の部材などの用途に供することが可能な軽量化されたものである。以下、図3に示す3層構造の軽量プラスチックボードの製造法について説明する。
【0033】
図2において、図1の場合と同様に、第1の押出機30及び第2の押出機40は電熱加熱手段を有すると共に、機内の一部を高度な減圧状態に保持するための真空ポンプが接続されており、装入物を加熱する機能と装入物を脱気処理する機能を有している。図2の説明において、廃プラスチックの精製処理工程は図1の精製処理工程と同様の処理操作を行う工程であるので、その説明を省略する。
【0034】
成形工程Cにおいては、精製処理工程Aで得られた精製粒状廃プラスチック105を、主層を形成する第2の押出機40へ装入して溶融する。精製粒状廃プラスチック105にも水分が含まれているが、第2の押出機40は機内の一部が高度な減圧状態になっているので、発生したガスは溶融された廃プラスチック中に留まることなく、吸引されて除去される。そして、第2の押出機40には、主層内に空洞部を形成させるためのガス吹込み手段が設けられており、所定流量に調整された窒素ガスなどのガスが吹き込まれる。このガス吹込みにより、吹き込まれたガスが溶融物中に分散し、気泡を含んだ溶融物ができる。気泡を含んだ溶融物はギアポンプ41により、3層に成形するためのTダイ42へ導入して板状にし、主層を成形する。主層中には気泡が含まれており、この気泡は、後に形成されるプラスチックボードの空洞部になる。
【0035】
なお、主層中に空洞部ができる割合はガスの吹き込み量により決定されるが、もしも、第2の押出機40へ供給される廃プラスチックにガス発生物質が含まれていた場合には、主層中の気泡量が増加してしまうので、発生するガス量に相当する分だけ吹き込みガスを減少させなければならない。しかし、例えば、供給される廃プラスチックに、僅か0.5mass%の水分が含まれていたとしても、これによるガス発生量は窒素ガスなどの吹き込み量の数倍〜十倍以上にも相当するので、目的とするプラスチックボードを製造することができなくなる。また、供給される廃プラスチックの水分含有量がさらに僅かであっても、廃プラスチックは性状が一定のものではなく、ガス発生物質の量は常に変動するので、実質的に、ガス吹き込み量を制御することによって気泡量を一定に保つことはできない。
【0036】
この点については、本発明においては、第2の押出機40の機内が高度な減圧状態に保持されており、廃プラスチックから発生したガスは吸引されて除去されるので、ガス吹き込み量を制御することにより溶融物に存在させる気泡量を一義的に決定することができる。このため、主層中の空洞部の生成割合を所定の範囲に保つことができる。
【0037】
また、主層の形成と並行して、異物などを含まないポリオレフィン系プラスチックを、電熱加熱手段を備えた表層用押出機45へ装入して溶融する。この溶融物をギアポンプ46により、Tダイ42へ導入し、気泡を含んだ主層の溶融物の両面に相溶させて一体化させ、表層を形成する。
【0038】
次いで、Tダイ42から押出されたものを金属ロールが配列された造形冷却装置43へ導入し、冷却して固化させることにより、多数の空洞部が形成された主層とその両面にポリオレフィン系プラスチックからなる表層が形成された3層構造の軽量プラスチックボード108が得られる。
【0039】
次に、廃プラスチックを精製処理工程へ供給する際の分別処理方法の一例を図4について説明する。回収されてきた一般廃棄物の廃プラスチック100を、必要に応じて磁選等の処理をした後、破砕機50により適度の大きさに破砕する。この破砕された廃プラスチックを湿式比重分離装置51により比重が小さいものと比重が大きいものに分別する処理を行い、低比重分を回収する。本実施形態で用いる湿式比重分離装置は遠心分離方式のものであって、その構造は図5に示す。
【0040】
上記の比重分離処理方法を図5により説明する。図5において、回転可能に構成された本体60に、廃プラスチックが分散されている水66が装入される。本体60が回転すると、水より比重が大きいもの(高比重分)101が本体60の外周部に集まり、水より比重が小さいもの(低比重分)102が水面部(内側)に集まる構造になっている。そして、外周部に集まったものと、水面部(内側)に集まったものを、スクリューによってそれぞれ別々に抜き出すことにより、装入した廃プラスチックが比重が小さいものと比重が大きいものに分別される。図5中、62は廃プラスチックが分散されている水の装入口、63は高比重分と低比重分を左右別々の方向に掻き出すスクリュー、64は高比重分の排出口、65は低比重分の排出口である。
【0041】
この比重分離処理により、装入した廃プラスチックからPVC、PVDC、PETなどが高比重分として取り除かれ、主としてPE、PPなどのポリオレフィン系のものからなるプラスチックが低比重分として回収される。抜き出された低比重分の廃プラスチック102は水切り処理された後、造粒機52へ装入されて粒状廃プラスチック103になる。分別されたポリオレフィン系のプラスチックは、そのまま次工程へ送って精製処理することもできるが、その状態が非常に嵩高であるので、貯蔵容積を減らすため、またハンドリングを容易にするために、粒状化することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】廃プラスチックを原料とするプラスチック成形品の製造方法の一例を示す図である。
【図2】廃プラスチックを原料とするプラスチックボードの製造方法の一例を示す図である。
【図3】図2の方法により製造される3層構造の軽量プラスチックボードの断面を示す図である。
【図4】廃プラスチックを分別処理する方法の一例を示す図である。
【図5】遠心分離方式湿式比重分離装置の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10 第1の押出機
12 濾過装置
13 造粒機
14 真空ポンプ
20 第2の押出機
22 ダイ
24 真空ポンプ
30 第1の押出機
32 濾過装置
33 造粒機
34 真空ポンプ
40 第2の押出機
42 Tダイ
45 表層用押出機
51 湿式比重分離装置
100 回収されてきた廃プラスチック
102 低比重分
103 分別処理された廃プラスチック
104 固形物
105 精製粒状廃プラスチック
106 プラスチック成形品
107 ポリオレフィン系プラスチック
108 軽量プラスチックボード
108a 主層
108b 表層
109 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、次いで、その溶融物を濾過することを特徴とする廃プラスチックの精製処理方法。
【請求項2】
廃プラスチックを減圧手段を備えた第1の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を濾過する処理を行った後、冷却・固化させて廃プラスチックの粒状品を得、この粒状品を、減圧手段を備えた第2の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を押出成形することを特徴とする廃プラスチックを原料とするプラスチック成形品の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性の廃プラスチックからなる主層と、この主層の両面に熱可塑性プラスチックからなる表層を設けた3層構造のプラスチックボードの製造方法であって、廃プラスチックを減圧手段を備えた第1の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物を濾過する処理を行った後、冷却・固化させて廃プラスチックの粒状品を得る工程と、この粒状品を、減圧手段を備えた第2の押出機へ装入し、加熱しながら減圧状態に保持して溶融し、その溶融物にガスを吹き込んで溶融物中に気泡を含ませる工程と、この気泡を含む廃プラスチックの溶融物を平板状に成形して前記主層を成形すると共に、別途に加熱して溶融させた熱可塑性プラスチックを前記主層の両面に相溶させて一体化させ、前記表層を形成する工程と、形成された前記主層と前記表層が一体化されたものを押出成形して帯状にした後、冷却固化させる工程とを有することを特徴とする廃プラスチックを原料とするプラスチックボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−62070(P2007−62070A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248934(P2005−248934)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(500570427)JFE環境株式会社 (21)
【Fターム(参考)】