説明

廃プラスチック乾燥装置

【課題】 廃プラスチックをその乾燥気流中で適正な浮遊攪拌状態に維持させて乾燥を行なうことができ、熱ロスが少なくエネルギ効率性やメンテナンス性、大量処理性に優れた廃プラスチック乾燥装置を提供する。
【解決手段】 水分を含む廃プラスチックがブロアを介して挿入されるサイクロン部14と、サイクロン部14の逆円錐状下部に連結されて流下する廃プラスチックをその内部に設けられた攪拌羽根15a及びスクリュー羽根15bにより攪拌して浮遊させその底部に設けられた処理物排出口15cから排出させる回転攪拌部15と、回転攪拌部15内の攪拌羽根上部に設けられた熱風供給口15dを介して加熱空気を供給する熱風供給部16と、を備えるように廃プラスチック乾燥装置10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭などから排出される、ポリ袋、ラップなどを含むフィルム状プラスチック廃棄物を有効利用する技術に係り、詳しくは、これらフィルム状プラスチック廃棄物を破砕洗浄して得た破砕小片を乾燥するための廃プラスチック乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭などでゴミとして排出され、ポリ袋、ラップ等のプラスチック材料を含む廃棄物は、その選別技術や粉砕技術、洗浄技術の進展に伴ってプラスチック原料として再利用されるようになってきた。例えば、従来の廃プラスチックの再利用方法では、一般のポリ袋、ラップ等を含む廃プラスチックを粉砕装置により所定の寸法に粉砕され、水又は薬品などを用いて洗浄された後、この水分等を多く含む粉砕物は遠心分離などにより脱水され、最終的に乾燥処理されて、再生用プラスチック原料とされる。
このような水分を含む廃プラスチックの乾燥技術に関連して、例えば以下のような技術のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、回転円筒の軸線と平行方向に挿通された送風管の一方より乾燥ガスを送り込むと共に送風管の他方より冷却ガスを送り込み、送風管の長手方向へ適宜な間隔で設けられた吹き出し口より、乾燥ガス,冷却ガスを回転円筒内へ吹き出して、回転円筒の一方より投入された被乾燥物を回転円筒の他方より排出させるようにした乾燥方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、長手方向を軸として回転する円筒部内で熱風により廃棄物が乾燥されて乾燥機出口から排出される回転式乾燥機において、廃棄物が排出される乾燥機出口手前の円筒部に、廃棄物中に混在する可燃物に比べて比重の大きい不燃物は通過でき、かつ、廃棄物中の可燃物は通過できない口径の多数の開口部を有する残さ排出機構を設けた回転式乾燥機が記載されている。
【0005】
特許文献3には、廃プラスチックを空気輸送する輸送配管と、輸送後の廃プラスチックと空気を分離する分離機と、輸送のための気流を発生する送風機と、輸送後の排気を輸送配管に再循環させるための循環配管と、排気の一部を系外に排出する排気配管と、循環空気量と排気空気量を調整する調整弁とを備えた廃プラスチック乾燥装置が記載されている。
【特許文献1】特開2000−146442号公報
【特許文献2】特開2000−249469号公報
【特許文献3】特開2001−246624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の再生方法では、以下のような問題がある。
特許文献1に記載の乾燥方法は、回転円筒に挿通された送風管の両端側からそれぞれ乾燥ガスと冷却ガスとを送り込むので、乾燥ガスが冷却ガスと混合して、熱のロスが多くエネルギ効率が低く、特にフィルム状プラスチック廃棄物の熱乾燥が不十分であるという問題がある。
また、被乾燥物を回転円筒の軸方向、すなわち水平方向に挿入するので、被乾燥物を回転円筒内で飛散させて乾燥ガスと接触させるような浮遊攪拌状態に維持させるのが困難であるため、乾燥効率を高められないという問題があった。
さらに、被乾燥物を回転円筒に一回通過させて処理するだけなので、廃プラスチックの大きさや形態、種類、混合比率などに応じた、適正稼働状態の制御性が困難であるという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載の回転式乾燥機では、特許文献1と同様の問題を有することに加えて、処理物分別用のフィルタ部材がその排出口に設けられているので、このフィルタ部材にフィルム状のプラスチックが付着して孔の部分を閉塞させるなどのトラブルを生じやすくメンテナンス性に乏しく、大量処理に適さない場合があるという問題がある。
【0008】
特許文献3に記載の廃プラスチック乾燥装置では、廃プラスチックを空気輸送するのに用いた排気を輸送配管に再循環させて廃プラスチックを気流と接触させることによって熱風を用いることなく乾燥させるので、大量の廃プラスチックの処理には限界があり、完全乾燥状態にするのは困難であり、また、その乾燥状態の調整が難しいという問題がある。また、塊状のプラスチック類がフィルム状の粉砕物の間に挟み込まれ、そのまま次の工程に搬送されるため、脱水装置のメッシュ板の目詰まりの原因になり易いという問題を有している。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためになされたもので、廃プラスチックをその乾燥気流中で適正な浮遊攪拌状態に維持させて乾燥を行なうことができ、熱ロスが少なくエネルギ効率性やメンテナンス性、大量処理性に優れるとともに、廃プラスチックの形態や種類などに応じて、その稼働状態を適正に調整することのできる廃プラスチック乾燥装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の廃プラスチック乾燥装置によれば、サイクロン部上部から落下する廃プラスチックをその内部に設けられた攪拌羽根により攪拌して浮遊させるとともに、
熱風攪拌ユニット上部に設けられた熱風供給口から加熱空気を供給しながら乾燥させるので、フィルム状の廃プラスチックをその乾燥気流中で適正な浮遊攪拌状態に維持させて乾燥効率や水分除去率を高めることができ、熱ロスが少なくエネルギ効率性やメンテナンス性、大量処理性に優れた廃プラスチック乾燥装置を提供することできる。
また、本発明によれば、サイクロン部を具備する回転攪拌部を複数組並設して廃プラスチックの多段乾燥処理を順次行なうこともできるので、廃プラスチックの形態や種類などに応じて、その稼働状態を適正に調整して大量の廃プラスチックを効率的に処理することもできる。
さらに、本発明によれば、回転攪拌部の処理物排出口に向けて廃プラスチックを掻き寄せるスクリュー羽根を設けているので、回転攪拌部の底部に廃プラスチックが滞留するようなことがなく、廃プラスチックの攪拌状態を常時均一化して乾燥処理を効果的に行なうことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の廃プラスチック乾燥装置は、水分を含む廃プラスチックをその周壁の接線方向に沿って設けられた周壁供給口から送風ブロアを介して挿入し底部に廃プラスチックを流下させるとともに、その天井中央部から脱気を伴いながら排気エアーを排出するサイクロン部と、サイクロン部の逆円錐状下部に連結され流下する廃プラスチックを内部に設けられた攪拌羽根により攪拌して浮遊させその底部に設けられた処理物排出口から排出させる回転攪拌部と、回転攪拌部内の攪拌羽根上部に設けられた熱風供給口を介して廃プラスチックを乾燥させる加熱空気を供給する熱風供給部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明の廃プラスチック乾燥装置は、前記(1)において、サイクロン部を具備する回転攪拌部が複数組並設され、回転攪拌部の処理物排出口から排出される処理物を送風ブロアを介して隣接するサイクロン部の周壁供給口に供給して廃プラスチックの多段乾燥処理を順次行なうこともできる。
【0013】
(3)本発明の廃プラスチック乾燥装置は、前記(1)又は(2)において、回転攪拌部が、攪拌羽根後部に同軸に連設され処理物排出口に向けて廃プラスチックを掻き寄せるスクリュー羽根を具備することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の廃プラスチック乾燥装置は、水分を含む廃プラスチックを、その周壁の接線方向に沿って設けられた周壁供給口から送風ブロアを介して挿入し、その底部に分離された廃プラスチックを流下させるとともに、その天井中央部から脱気を伴いながら排気エアーを排出するサイクロン部と、
サイクロン部の逆円錐状下部に連結されて流下する廃プラスチックをその内部に設けられた攪拌羽根により攪拌して浮遊させ、
その底部に設けられた処理物排出口から排出させる回転攪拌部と、
回転攪拌部内の攪拌羽根上部に設けられた熱風供給口を介して廃プラスチックを乾燥させる加熱空気を供給する熱風供給部と、を備えることを要旨としたものである。
これによって、廃プラスチックを回転攪拌部内で所定の浮遊攪拌状態に維持させることができ、その乾燥処理の効率を高めることができる。
【0015】
サイクロン部は、略円筒状に形成されその周壁供給口から比重分離工程などにより分別され水洗された廃プラスチックが圧送用空気とともに吹き込まれ、その天井中央部に設けられた廃ガス放出口から排ガスが排出される処理物供給部と、
処理物供給部の下部に連設され分離された廃プラスチックを、その略逆円錐状底部から回収する処理物回収部とを備えて構成される。
こうして、その周壁供給口から圧送用空気とともに吹き込まれる処理物の比重差などによる遠心力を利用して、その逆円錐状下部から廃プラスチックを有効に分離回収することができる。
ここで廃プラスチックとは、熱可塑性樹脂のシート、板状材、ポリエチレン遮水シート、コンクリート水槽用の高密度ポリエチレン等、再生利用することができる種々のプラスチック材料をいう。
なお、家庭などから排出される廃棄物を処理する分離工程では、比較的比重が小さいPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のフィルム状の粉砕物と、比重の大きい金属類等とに、水を媒体として用いて予め比重分離される。このように分離され水分を含むフィルム状の処理物が、サイクロン部の周壁供給口から圧送用空気とともに吹きまれ、そのサイクロン部底部から排出される。
【0016】
回転攪拌部はサイクロン部の底部に連設されており、回収された廃プラスチックが上部から供給され、その底部が略円筒状に形成された基体と、基体内に水平方向に配置された回転軸に設けられた攪拌羽根と、基体底部に設けられた処理物排出口と、基体内の攪拌羽根上部に設けられた熱風供給口と、サイクロン部がその上部で連設されるサイクロン連設部とを備え、全体が密閉構造となっている。
なお、サイクロン部を含め回転攪拌部の外周部分には金属箔やガラスファイバなどを含むの断熱材が配置され、熱損失の発生を抑制してエネルギ効率を高めるようにしている。攪拌羽根は、例えば回転軸から放射状に突出して形成された一対のアーム部と、このアーム部の先端に突設された爪部とを有するものや、スクリュー状に形成されたものなどが適用でき、回転攪拌部の上方から供給されるフィルム状の廃プラスチックを巻き上げて、加熱空気の気流中で付着した水分を効果的に除去できる。
【0017】
熱風供給部は、電熱ヒータや燃焼バーナなどの熱風発生装置を有しており、発生する加熱空気をブロアなどを介して回転攪拌部の熱風供給口から回転攪拌部に所定風量及び所定温度で供給して、基体上部のサイクロン部から供給され攪拌羽根によって攪拌される廃プラスチックに接触させて熱風乾燥ができるようになっている。
熱風供給部の配管系には分岐配管や流量調整弁が設けられ、熱風発生装置やブロアを制御する制御部を介して、回転攪拌部に熱風供給口を介して供給される加熱空気の流量や温度を所定値に制御して、廃プラスチックの供給量や種類、形態に応じて適正な乾燥処理ができるようにしている。
【0018】
また、本発明の廃プラスチック乾燥装置は、サイクロン部を具備する回転攪拌部が複数組並設され、回転攪拌部の処理物排出口から排出される処理物を送風ブロアを介して隣接するサイクロン部の周壁供給口に供給して、廃プラスチックの多段乾燥処理を順次行なうことができる。これによって、各回転攪拌部における加熱空気の温度や供給量などをそれぞれ設定することができ、供給される廃プラスチックの形態や種類、含水量などに応じて、その稼働状態を適宜調整して大量の廃プラスチックを効率的に処理することもできるようにしている。
【0019】
さらに、本発明の廃プラスチック乾燥装置は、回転攪拌部の処理物排出口に向けて廃プラスチックを掻き寄せるスクリュー羽根を設けることもでき、回転攪拌部の底部に廃プラスチックが滞留するのを効果的に防止することができるので、廃プラスチックの攪拌状態を常時均一化して乾燥処理をさらに効果的に行なうことができる。
【0020】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら実施の形態1に係る廃プラスチック乾燥装置についてさらに具体的に説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る廃プラスチック乾燥装置の正面断面図であり、図2は同廃プラスチック乾燥装置の平面図であり、図3は同廃プラスチック乾燥装置の側面断面図である。
図1〜図3において、実施の形態1の廃プラスチック乾燥装置10は、
互いに仕切り部10bにより区画されその内部で回転する回転軸10aが水平に貫通されて共有された3組の熱風攪拌ユニット11、12、13と、
水分を含む廃プラスチックを周壁の接線方向に沿って設けられた周壁供給口14aから送風ブロアを介して挿入される廃プラスチックを中心下方に流下させるとともに天井中央部14bから脱気を伴いながら排気エアーを分離排出するサイクロン部14と、
サイクロン部14の逆円錐状下部に連結されて内部に設けられた攪拌羽根15aと攪拌羽根15aの後部に回転軸10aと同軸に配置されたスクリュー羽根15bを介して廃プラスチックを掻き寄せて底部に設けられた処理物排出口15cから排出させる底部が略円筒状の回転攪拌部15と、
回転攪拌部15内の攪拌羽根15a上部に設けられた熱風供給口15dを介して廃プラスチックを乾燥させる加熱空気を供給する電熱ヒータ16a及びブロア16bを備えた熱風供給部16とを有する。
【0021】
廃プラスチック乾燥装置10は、図示するように、サイクロン部14及び回転攪拌部15を備えた熱風攪拌ユニット11、12、13を連設するようにして形成されている。
水分を含む廃プラスチック処理物は、熱風攪拌ユニット11の周壁供給口14aに送風ブロアをなどを介して供給され、熱風攪拌ユニット11、12、13を経てそれぞれの乾燥条件で熱風乾燥処理がなされる。こうして、最終的に脱水された廃プラスチックが熱風攪拌ユニット13の処理物排出口15cから得られるようになっている。
【0022】
熱風攪拌ユニット11、12、13における各回転攪拌部15は、例えばその高さが約2000mm、幅が約1500mm、奥行きが約1000mmの略直方体状であって、その内部に水平配置された回転軸10aを備え、回転軸10aに配置される攪拌羽根15aとこの後部に同軸接続されて回転するスクリュー羽根15bとを有している。
スクリュー羽根15bは、その周囲が円筒状に形成され、仕切り部10bと攪拌羽根15aとの間に設けられた熱風攪拌ユニット後部室に格納され、攪拌羽根15a側から取り込まれた廃プラスチックを熱風攪拌ユニットの底部に設けられた処理物排出口15cに向けて誘導できるようにしている。
【0023】
攪拌羽根15a及びスクリュー羽根15bは、一例としてその直径が600〜800mmであって、バディボックス減速機などの減速機15e及び電動モータ15fを介して所定の回転速度(例えば38〜40回転/分)で駆動される。
回転攪拌部15の上部には、熱風供給口15dが設けられ、熱風供給部16から所定風量(例えば30〜60NM/分)、及び所定温度(例えば120〜200℃)の加熱空気がそれぞれの回転攪拌部15に吹き込まれるようになっている。
回転攪拌部15の下部側は、略半円筒状に形成され、スクリュー羽根15b側の底部に処理物排出口15cが設けられている。処理物排出口15cから排出される廃プラスチックは、処理物排出用配管15gに設けられた送風ブロアとなる処理物搬送用ブロア15hを介して、隣接するサイクロン部14の周壁供給口14aに供給されて、次の熱風攪拌ユニットにおいて所定の処理条件で熱風乾燥処理が順次なされる。
【0024】
なお、攪拌羽根15aとしては、図1〜図3に示すように、先端長さが異なる攪拌アームを回転軸10aから放射状に突設したようなものや、図3に示すように、風車状などに形成したようなものの他に、回転攪拌部15内に設けた固定刃と噛み合わせて廃プラスチックを切断粉砕する回転刃を有するように構成することもできる。この回転刃には粉砕途中の廃プラスチックを逃がすための複数の隙間を形成することもできる。
また、扁平にして略V字状に傾斜した形態の回転体を回転刃の先端に取り付けたものなども用いることもできる。このように回転刃に複数の隙間を設けて、切断した廃プラスチックを回転刃と固定刃から逃げやすくして、供給される廃プラスチックを回転刃と固定刃とに順次確実に噛み込ませて、連続的に効率よく切断粉砕した上で廃プラスチックを回転攪拌部15内に浮遊飛散させることもできる。
なお、回転刃が、略V文字状に傾斜した状態で回転体の先端に取り付けられたものでは、廃プラスチックを略V文字状の谷部分で鋏のように着実に捉えて切断することができる。
【0025】
つぎに、以上のように構成された実施の形態1の廃プラスチック乾燥装置10に適用される廃プラスチックの熱風乾燥処理方法について説明する。
再処理設備などで回収され種々の廃プラスチックは、まず、ガラスびんや中身入りボトル等が除去される。次に、前洗い、水洗い、仕上げ洗いをして、廃プラスチックの汚れを洗浄除去しベルトコンベア等に流して、粉砕装置により所定の寸法のフレーク状に粉砕する。このフレーク状にした廃プラスチックの粉砕物は、水中又は薬品中において洗浄された後、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)は水に浮かせ、PET(ポリエチレンテレフタレート)は沈ませて、プラスチックの種類別に分離する。
水分を含むフィルム状ポリエチレン(含水率約30重量%)などの軟質系プラスチックの粉砕物(廃プラスチック)は、廃プラスチック乾燥装置10における第1の熱風攪拌ユニット11の周壁供給口14aに送風ブロアを介して所定空気流量(例えば160〜140NM/分)及び所定の廃プラスチック供給量(例えば600〜750kg/時)で供給される。
【0026】
こうして、第1の熱風攪拌ユニット11に供給された廃プラスチックはサイクロン部14の周壁に沿って旋回挿入されて遠心力が付加され、フィルム状ポリエチレンなどはサイクロン部14の逆円錐状の底部を流下して、サイクロン部14に連設された回転攪拌部15内に導入される。一方、サイクロン部14の天井中央部14bからは水分を含むガスが系外に排気される。
回転攪拌部15では、上方から流下する廃プラスチックを攪拌羽根15aで攪拌しながら浮遊させ、熱風供給部16から導入される加熱空気と接触させ、その水分を蒸発させる。このようにして所定量の水分が除去された廃プラスチックは攪拌羽根15a後部に設けられたスクリュー羽根15bによって処理物排出口15cの方向に掻き寄せられる。
このようにして掻き寄せられた廃プラスチックは、第1の熱風攪拌ユニット11の処理物排出口15cから排出され、処理物搬送用ブロア15hを介して隣接する第2の熱風攪拌ユニット12の周壁供給口14aに導入される。
第2、第3の熱風攪拌ユニット12、13においても、前記同様のプロセスを繰り返すことにより、それぞれ所定の熱風乾燥処理がなされた後、第3の熱風攪拌ユニット13の処理物排出口15cから、最終的に所定の含水率、例えば4〜8重量%の範囲などに乾燥処理された廃プラスチックを得ることができる。
また、第1〜第3の熱風攪拌ユニット11、12、13において、廃プラスチックの初期含水率に対して、所定比率、例えば約1/3ずつを除去するように分配処理することも可能であり、これによって、各熱風攪拌ユニット11、12、13における負荷を均一にさせて、生産安定性やメンテナンス性などを向上させることもできる。
【0027】
実施の形態1の廃プラスチック乾燥装置10は、サイクロン部14下部から流下する廃プラスチックをその内部に設けられた攪拌羽根15aにより攪拌するとともに、その攪拌羽根15a上部に設けられた熱風供給口15dから加熱空気を供給しながら乾燥させるので、廃プラスチックをその加熱気流中で適正な浮遊攪拌状態に維持させることができ、処理効率やエネルギ効率に優れている。
また、サイクロン部14及び回転攪拌部15を備えた熱風攪拌ユニット11、12,13を並設して、廃プラスチックをそれぞれ温度条件などで設定して多段乾燥処理を順次行なうことができるので、廃プラスチックの形態や種類などに応じて、その稼働状態を適正に調整して大量の廃プラスチックを効率的に処理できる。
さらに、各回転攪拌部15の処理物排出口15cに向けて廃プラスチックを掻き寄せるためのスクリュー羽根15bを設けているので、回転攪拌部15の底部への廃プラスチックの堆積などが防止されて、デッドスペースなどを生じることがなく、廃プラスチックの乾燥処理を効果的に行なえる。
【0028】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る廃プラスチック乾燥装置の模式構成図である。
図4において、実施の形態1とほぼ同様の構成からなる実施の形態2の廃プラスチック乾燥装置20は、内部で回転駆動される回転軸10aを備えて廃プラスチックを攪拌羽根15aにより攪拌して熱風乾燥させる3組の熱風攪拌ユニット21、22、23と、
熱風攪拌ユニット21、22,23における回転軸の回転速度R(R1〜R3)、
熱風供給部16から熱風供給口15dを介して供給される加熱空気の流量Q(Q1〜Q3)、
この加熱空気の温度T、
処理物排出口15cから排出される廃プラスチックを隣接する熱風攪拌ユニットに搬送する送風ブロアや処理物搬送用ブロア15hの負荷動力M(M1〜M3)、
熱風攪拌ユニット21の周壁供給口14aから供給される廃プラスチックの供給量Vなどをそれぞれ制御する制御部24を有する。
なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様の機能を有するものについては同一の符号を付してその詳しい説明を省略するものとする。
【0029】
廃プラスチック乾燥装置20において、各熱風攪拌ユニット21、22、23の回転軸はそれぞれ独立に動くように配置してもよく、また実施の形態1と同様それぞれを同軸に配置して各回転速度RがR1=R2=R3となるように同期駆動するようにしてもよい。また、各サイクロン部14及び回転攪拌部15の所定箇所には温度計や水分計、ビデオモニタなどのセンサ機器が必要に応じて設けられ、その内部状態などの情報データを取得して制御部24で管理することができるようになっている。
制御部24は、内部状態の情報データや、供給される廃プラスチックの形態や種類、含水量、その処理量などの入力条件に基づいて、各熱風攪拌ユニット21、22,23の送風ブロアや処理物搬送用ブロア15h、各配管系に設けられた流量調整弁、攪拌羽根15aを回転させるための駆動装置、熱風供給部16などを制御して、各熱風攪拌ユニット21、22,23内でそれぞれ所定の熱風攪拌状態が維持されるようにしている。
【0030】
実施の形態2の廃プラスチック乾燥装置20は、実施の形態1の構成による作用効果に加えて、乾燥システム全体を制御する制御部24を有するので、供給される廃プラスチックの形態やその含水量に変動が生じても、これに対応して各熱風攪拌ユニット21、22、23における多段乾燥処理をそれぞれ適正な乾燥条件に維持させることができ、大量の廃プラスチック処理を安定的、かつ効率的に行なうことができる。
【0031】
以上実施の形態1、2をもとに本発明の廃プラスチック乾燥装置について説明したが、本発明はこれらの実施の形態のものに限定されるものではない。例えば、実施の形態ではサイクロン部を具備する回転攪拌部を3組並設するように配置しているが、この回転攪拌部を単独で構成したり、あるいは2組あるいは4組以上で構成したりすることも可能である。また、実施の形態における各部のサイズ、廃プラスチックの供給量などの数値はその一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係る廃プラスチック乾燥装置の正面断面図である。
【図2】同廃プラスチック乾燥装置の平面図である。
【図3】同廃プラスチック乾燥装置の側面断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る廃プラスチック乾燥装置の模式構成図である。
【符号の説明】
【0033】
10 実施の形態1の廃プラスチック乾燥装置
10a 仕切り部
10b 回転軸
11、12、13 熱風攪拌ユニット
14 サイクロン部
14a 周壁供給口
14b 天井中央部
15 回転攪拌部
15a 攪拌羽根
15b スクリュー羽根
15c 処理物排出口
15d 熱風供給口
15e 減速機
15f 電動モータ
15g 処理物排出用配管
15h 処理物搬送用ブロア(送風ブロア)
16 熱風供給部
16a 電熱ヒータ
16b ブロア
20 実施の形態2の廃プラスチック乾燥装置
21、21、23 熱風攪拌ユニット
24 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む廃プラスチックをその周壁の接線方向に沿って設けられた周壁供給口から送風ブロアを介して挿入し底部に廃プラスチックを流下させるとともに、天井中央部から脱気を伴いながら排気エアーを排出するサイクロン部と、
前記サイクロン部の逆円錐状下部に連結され流下する前記廃プラスチックを内部に設けられた攪拌羽根により攪拌して浮遊させその底部に設けられた処理物排出口から排出する回転攪拌部と、
前記回転攪拌部内の攪拌羽根上部に設けられた熱風供給口を介して廃プラスチックを乾燥させる加熱空気を供給する熱風供給部と、
を備えた廃プラスチック乾燥装置。
【請求項2】
前記サイクロン部を具備する回転攪拌部が複数組並設され、前記回転攪拌部の処理物排出口から排出される処理物を送風ブロアを介して隣接するサイクロン部の周壁供給口に供給して、前記廃プラスチックの多段乾燥処理を順次行なうことを特徴とする請求項1記載の廃プラスチック乾燥装置。
【請求項3】
前記回転攪拌部が、前記攪拌羽根後部に同軸に連設され前記処理物排出口に向けて廃プラスチックを掻き寄せるスクリュー羽根を具備していることを特徴とする請求項1又は2記載の廃プラスチック乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−71153(P2006−71153A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253522(P2004−253522)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(394008271)日本シーム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】