説明

廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法

【課題】汚泥などの廃棄物の焼却設備から発生する燃焼廃ガスに含まれる熱エネルギーを高い効率で再利用することのできる廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物の焼却炉41から発生する燃焼廃ガス53を、空気予熱器42の熱交換による熱回収を行った後、白煙防止器43においてこの燃焼廃ガス53を使用して空気を加熱し、得られた温度が200〜300℃の加熱空気の一部を白煙防止のために混合するとともに、加熱空気の残部を燃料電池発電設備のアノード61から生ずる未利用燃料の燃焼用空気および/またはカソード62の熱交換用空気として使用する廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法である。従来未利用であった白煙防止用加熱空気の余剰分を燃料電池の燃焼用と熱交換用空気として利用するため、エネルギー効率がよく、焼却設備のエネルギーコストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場で発生する汚泥、一般家庭や商店などから排出される都市ごみや生ごみ、その他水分含有量の多い有機性の産業廃棄物の焼却処理において、そこで生ずる燃焼廃ガス中の燃焼廃熱を有効に利用する燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市下水などから発生する種々の汚水は、一般に下水処理場で処理され、清澄な処理水と汚泥とに分離される。このうち、汚泥は処理場内の汚泥焼却炉で燃焼し、減量化と安定化が図られている。また、一般家庭や商店などから排出される都市ごみや生ごみ、その他水分含有量の多い有機性の産業廃棄物も、水分含量が多く、かつ有機物であるため腐敗などの問題が生ずることが多く、同様に焼却炉で焼却処理されることが多い。
【0003】
汚泥などの廃棄物焼却炉には、その構造から流動焼却炉、多段焼却炉、階段式ストーカ炉、回転乾燥焼却炉などがあるが、近年は、流動焼却炉の採用が圧倒的に多く、このような流動焼却炉のシステムフローの一例を示すと図1の通りである。
【0004】
汚泥焼却炉の流動床炉は、一般的に燃焼温度800〜850℃、空気比1.3程度で運転されているが、安定燃焼のため補助燃料として都市ガス(LNG)、重油、灯油など化石燃料が用いられており、例えば、脱水汚泥300トン/日の処理能力の汚泥焼却炉では、都市ガス利用の場合で150Nm/h程度の燃料を消費している。
【0005】
そして、汚泥焼却炉から出た燃焼廃ガスは、一般的に次の二通りの方法によってその廃熱回収が行われている(非特許文献1参照)。
(1) 汚泥焼却炉の燃焼用空気を常温から500℃程度に予熱するため、空気予熱器により廃ガスと燃焼用空気の熱交換を行い、廃ガスから熱回収を行う。
(2) 処理工程の最後の煙突から出る廃ガスの白煙防止のため、空気予熱器より出た廃ガスを白煙防止用熱交換器で常温の空気と熱交換を行い、常温の空気を200〜300℃の温度の熱風として熱回収を行う。この200〜300℃の温度に加熱された空気は、最後の煙突の中に導入され、煙突の白煙防止のために使用される。
【0006】
次に、空気予熱器を出た燃焼廃ガスは、サイクロンや電気集じん機、バグフィルタなどの集じん装置を通し、廃ガス中に含まれる粉塵や固形微粒子などの固形分を捕捉して除去する。さらに、排煙処理塔(スクラバー)は、廃ガス中に含まれる硫黄酸化物や塩化水素を吸収除去するために設けられている。
【0007】
このような従来の廃棄物の焼却処理システムにおいては、エネルギーの有効利用という観点から次のような問題点がある。
(1) 空気予熱器で熱回収された後の廃ガスは、それでも500〜550℃の高温であるため、さらに白煙防止用熱交換器で熱回収され250〜350℃まで冷却されると共に、常温の空気を200〜300℃まで加熱した熱風として回収する。この加熱空気を、洗浄・冷却処理された後の廃ガスと煙突内にて混合させることにより、煙突からの白煙防止として利用している。しかしながら、実質的に煙突で白煙防止に必要な熱風量は、白煙防止用熱交換器で熱回収される量の概ね30%で十分であり、残りの70%程度はそのまま大気に放出されており、その中の熱量が有効に活用されていない。
例えば、脱水汚泥300トン/日の処理能力の汚泥焼却炉では、約25,000Nm/h程度の熱風が発生するが、その70%の約17,500Nm/h程度の熱風の熱量が利用されていないこととなる。
【0008】
(2) 廃棄物焼却処理システムでは、燃焼廃ガスの廃熱から蒸気を回収し、蒸気タ−ビン発電を行う方法もあるが、下水処理汚泥は発熱量が小さいと同時に、プラント規模が比較的小型であるため、廃熱発電はあまり効率的ではなくほとんど行われておらず、焼却処理システムの運転電力は全て外部から供給されているのが実情である。下水処理汚泥の場合については、東京都区部内の1ケ所で、焼却炉(300t/日×3基)の廃熱で2MPaの蒸気を発生させ2500kwの蒸気タービン発電を行っているが、これが国内焼却炉が約300基ある中での唯一の廃熱発電の事例である。
また、下水処理場全体では、上記の汚泥焼却施設の他に、水処理施設の中でバッキ装置が利用されており、このバッキ装置の空気源供給として送風機が運転され、ポンプも含めて膨大な電力が消費されている。
【0009】
例えば、脱水汚泥300トン/日の処理能力の下水処理場では、その消費電力量(kwh/h)は、汚泥の焼却処理に800(kwh/h)であるが、バッキ装置等の水処理に3,100(kwh/h)、汚泥の濃縮・脱水に500(kwh/h)、処理場内のポンプに1,000(kwh/h)等が消費され、全体で5,500(kwh/h)の消費量となる。
この電力を補う方法として、分散型電源であって高効率の発電方式である燃料電池発電システムを導入する方法もあるが、近年導入が始まりつつある溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)による単独発電では、発電端効率が47%程度で最新鋭の大型火力の発電端効率と大きな差異は無く、特に大きな導入メリットがない。
【0010】
(3) 溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)は、例えば図2に示すように、アノードにLNG等の燃料ガスを導入し、カソードに酸素源としての空気と炭酸源としての炭酸ガス成分を導入して燃料電池反応によって発電するシステムである。
このMCFCでは、アノ−ドで発電に利用される燃料ガスの利用率は70%程度であり、残りの30%の燃料ガスが未利用の状態で排出されるが、これは常温の空気と混合して燃焼させた後、さらに常温の空気と希釈してカソードの空気源、炭酸源として供給している。アノードから排出される未利用燃料ガスはその温度が600℃程度であるが、これを常温空気と混合して燃焼している点と、更にここで得られた燃焼後の800℃程度の高温ガスを希釈器で常温の空気によって希釈してカソードに導入する点で、600℃〜800℃に加熱されたガスを2度も冷却することとなり、ここに含まれる熱量を有効に利用していないという問題がある。尚、燃料電池のセル内の温度分布を均一にする必要があるために、アノードの燃料利用率をこの値以上に高くすることは技術的に困難である。
【0011】
【非特許文献1】「下水道施設計画・設計指針と解説(後編)」2001年版、468〜469頁、社団法人日本下水道協会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述のような従来の廃棄物焼却設備の問題点を解決しようとするものであって、廃棄物焼却設備から発生する燃焼廃ガスを高い効率で利用することのできる廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、廃棄物焼却設備と燃料電池発電システムを組み合わせて、そこで発生する余剰の高温ガスを相互に利用することによって、発生する熱量を非常に高い効率で有効に利用することのできる方法を見出し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、本発明は、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)廃棄物の焼却炉から発生する燃焼廃ガスを、空気予熱器の熱交換による熱回収を行った後、白煙防止器においてこの燃焼廃ガスを使用して空気を加熱し、得られた加熱空気の一部を燃焼廃ガスの排出口での白煙防止のために混合するとともに、該加熱空気の残部を高温型燃料電池発電設備の燃料電池のアノードから生ずる未利用燃料の燃焼用空気および/またはカソードの熱交換用空気として使用することを特徴とする廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【0015】
(2)白煙防止器で加熱された加熱空気の温度が200〜300℃であることを特徴とする、前記(1)に記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【0016】
(3)白煙防止器で加熱された加熱空気のうちの20〜40容量%が白煙防止のために使用され、残部の60〜80容量%が高温型燃料電池発電設備に使用されることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【0017】
(4)高温型燃料電池発電設備の燃料電池のアノードから生ずる未利用燃料に、前記白煙防止器で加熱された加熱空気の全部又は一部を混合して燃焼させ、得られた高温の二酸化炭素を含む燃焼ガスを、前記白煙防止器で加熱された加熱空気の残部と熱交換してカソードに供給することを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【0018】
(5)高温型燃料電池発電設備が溶融炭酸塩型燃料電池または固体酸化物型燃料電池のいずれかを使用するものである、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【0019】
(6)高温型燃料電池発電設備から発生する高温の排気ガスを用いてボイラーによって高温蒸気を得て、これを焼却炉の前段に設けた廃棄物乾燥機に導入して含水廃棄物を乾燥することを特徴とする、前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【0020】
(7)焼却炉が、下水汚泥焼却炉、都市ごみ若しくは生ごみ焼却炉、または含水有機性廃棄物焼却炉のいずれかであることを特徴とする、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法は、従来利用されていなかった廃棄物焼却設備の白煙防止用の加熱空気の余剰のものを高温型燃料電池発電設備のアノードの未利用燃料の燃焼用空気および/または燃料電池のカソード用の希釈空気として使用するため、高温の廃ガスを有効に利用することができ、エネルギーの無駄がなく、高い効率で電力を発電することができる。さらに、高温型燃料電池発電設備のカソードからの高温廃ガスおよび白煙防止用の加熱空気のうちの余ったものを利用して、ボイラーによって高温の水蒸気を発生させることによって熱回収を行い、これを廃棄物焼却設備において汚泥などの含水廃棄物の乾燥に使用するため、焼却炉の燃焼用の補助燃料の使用量を減らすことができ、条件によっては補助燃料を使用せずに焼却を行うことができる。
従って、これらの熱エネルギーの有効利用によって、廃棄物の焼却エネルギーを低減すると同時に、高効率で燃料電池発電によって電力を得ることができ、運転コストの低減や化石燃料に由来する温室効果ガスの削減に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を用いて本発明の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を詳しく説明する。
図1は、従来の汚泥焼却設備の一例のフロー図であり、図2は高温型燃料電池発電設備の一例を示すフロー図であり、図3は本発明の廃棄物焼却設備と高温型燃料電池発電設備とを組み合わせた廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を実施するための設備の一例を示すフロー図である。なお、これらの図面に示すものは本発明の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を実施するための設備の一例を示すものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
従来の廃棄物の焼却設備では、図1に示すように、例えば汚泥焼却設備では、焼却炉1に水分を多量に含む汚泥10を装入し、補助燃料11として都市ガス(LNG)、重油、灯油など化石燃料を用いて汚泥を焼却している。ここで発生する燃焼廃ガス12は800〜850℃の高温であるため、これを空気予熱器2に導入して焼却用に使用する空気との熱交換を行い、焼却用空気を500℃前後に予熱するとともに、燃焼廃ガス13は500〜550℃に冷却される。次に、この燃焼廃ガス13を白煙防止器3に導入して、常温の空気と熱交換を行い、常温の空気を200〜300℃の高温の空気14に加熱するとともに、燃焼廃ガス15はその温度が250〜350℃となる。この燃焼廃ガス15は、その後集塵器4、スクラバー5、誘引ファン6を通って、最終的に煙突7から大気に放出される。この大気に放出する際に大量の水分を含んでいるため、そのまま大気に放出すると水蒸気による白色の排気となる。この白色の排気が大量の有害な物質を含む排気のような誤解を受ける恐れがあるため、この煙突内に先ほどの白煙防止器3で加熱された200〜300℃の加熱空気14を導入して、排気全体の温度を高くし、白煙の発生を防止している。
【0024】
しかしながら、煙突7での白煙防止のために必要な加熱空気の量は、白煙防止器3で燃焼廃ガスとの熱交換によって得られる加熱空気の全量の30%程度であり、残りの70%程度は特に白煙防止のために使用されることなく煙突から大気中に放出されている。
【0025】
また、高温型燃料電池発電設備、特に溶融炭酸塩型燃料電池を使用する場合には、図2に示すように、アノード21に燃料として都市ガス(LNG)などをアノードガス26として用い、カソード22の空気と二酸化炭素の混合ガス(カソードガス、31)との間で燃料電池反応を行い、電力27を得ている。この際、アノード21からは未反応のまま残った未利用燃料を含む600℃前後の高温ガス28が生成するため、この高温ガス28を常温の一次空気30と混合して、燃焼器23で未利用燃料を燃焼させて、得られた800℃前後の高温の二酸化炭素を含むガス29を、常温の二次空気31と希釈器24で混合して、炭酸源を確保するためのカソードガス32としてカソード22に供給している。
【0026】
しかし、このような高温型燃料電池発電設備において、アノード21からの未利用燃料の燃焼のための一次空気30と、さらにカソード22へ供給する酸素源としての二次空気31として常温の空気を使用している。このため、高温型燃料電池発電設備全体のヒートバランスから見ると燃料電池の適正な作動温度である約550℃を維持するために、このように大量の常温の空気を使用することによる熱量の損失が起こっている。
【0027】
一方、本発明の方法においては、焼却炉41に装入された汚泥等51を焼却のために燃焼させて、発生した燃焼ガス53を空気予熱器42で燃焼用の空気と熱交換して熱回収を行う。次いで、空気予熱器42を出た燃焼廃ガス54によって白煙防止器43で白煙防止用の空気の加熱を行い、200〜300℃の加熱空気56を得る。白煙防止器43を出た燃焼廃ガス55は、250〜350℃に冷却されて、集塵器44、スクラバー45、誘引ファン46を経て、煙突47から大気中へ放出される。
白煙防止器43で得られた加熱空気56はその温度が200〜300℃であるが、その全量の20〜40容積%、好ましくは30%程度を煙突47中に導入して、白煙防止のために燃焼廃ガスと混合し、最終的に煙突から排出する。そして、残りの60〜80容積%、好ましくは70%程度の加熱空気58を高温型燃料電池発電設備に供給し、そのうちの一部59が燃焼器63でアノードからの未利用燃料の燃焼用の空気として利用され、残りの加熱空気60が熱交換器64を経て、カソード62とボイラー65に供給される。
【0028】
本発明の方法においては、廃棄物焼却設備と組み合わせて使用する燃料電池発電設備はその反応温度が600〜1000℃の高温型燃料電池を使用する燃料電池発電設備であり、反応温度が数十度から200℃程度の低温型燃料電池発電設備は使用できない。高温型燃料電池発電設備としては、具体的にはカソードで二酸化炭素と酸素と電子が反応して炭酸イオンを生成し、アノードで水素と反応して電子を放出する、いわゆる「溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)」と、カソードで酸素と電子が反応して酸素イオンを生成し、アノードで水素と反応して電子を放出する、いわゆる「固体酸化物型燃料電池(SOFC)」とが利用できる。
【0029】
高温型燃料電池発電設備においては、溶融炭酸塩型燃料電池を使用する場合には、燃料電池のアノード側にアノードガスとして水素を含有するガスを供給し、酸素源としての空気と炭酸源としての二酸化炭素を含むカソードガスとの間で燃料電池反応を行い、電力を発生させる。
アノードガスの水素の含有率は、100〜50容積%であることが好ましく、90〜70容積%であることが更に好ましい。アノードガスとしては、例えば、都市ガス(LNG)等の炭化水素を含有する燃料66及び水を用いて、工業炉に備えられた水蒸気改質装置(図示せず)によって改質させて得られる、水素と二酸化炭素とを含有する改質ガスを利用することができる。改質ガスをそのまま利用してもよいし、水素分離器(図示せず)によって、改質ガスから水素を選択的に分離して水素濃度を高めたものを利用してもよい。
【0030】
燃料電池のアノード61で発電に利用できる燃料ガス66の利用率は70%程度であり、残りの約30%の燃料ガスは、燃料電池の反応温度である600℃前後の温度で、発電に利用されずに未反応の燃料ガス68としてアノード61から排出される。本発明の方法では、このアノード61から排出された未利用の燃料ガス68を、廃棄物焼却設備の白煙防止器43で得られた加熱空気の一部59を用いて燃焼器63にて燃焼させ、二酸化炭素を含むアノード燃焼ガス69とする。ここでは白煙防止器43で得られた加熱空気59の温度が200〜300℃であるので、燃焼器63で未利用の燃料ガス68を燃焼させた後のアノード燃焼ガス69はその温度が750〜800℃程度の高温のガスとなる。
【0031】
本発明の方法においては、この燃焼器63で得られたアノード燃焼ガス69は、二酸化炭素を15〜20容積%程度含み、温度が750〜800℃程度の高温のガスであるので、これを燃料電池のカソードガスの炭酸源として、またその高温ガスの有する顕熱を熱量として再利用する。即ち、アノード燃焼ガス69を熱交換器64に導入し、熱交換器64のもう一方に前記の白煙防止器43で得られた加熱空気の一部60を導入して、アノード燃焼ガス69を燃料電池の適正温度である550℃に冷却するとともに、白煙防止器43で得られた加熱空気の一部60もその温度を550℃に加熱する。
【0032】
熱交換器64で550℃に冷却されたアノード燃焼ガス70は、燃料電池のカソード62に供給される。そして、白煙防止器43からの加熱空気60の余剰のもの73は、ボイラー65に供給されて水を加熱し、高温の水蒸気77を発生させるのに利用される。
【0033】
燃料電池のカソード62からは燃料電池反応が終わった後の550℃程度の、主として窒素、酸素、二酸化炭素、水蒸気からなる高温のガス71が排気される。この高温の排気ガス71も同様にボイラー65に導入されて、ここで水を加熱し高温の水蒸気77を得るために使用される。
【0034】
ボイラー65で製造された高温の水蒸気77は、廃棄物焼却設備の焼却炉41の前に設けられた乾燥機50に供給される。この乾燥機50は、汚泥や生ごみのなどのような水分を多量に含む廃棄物を加熱・乾燥し、廃棄物中の水分を減少させ、その後に焼却炉41にて焼却処理される。ボイラー65で製造された水蒸気77は、この乾燥機50の加熱用の蒸気として利用することができる。本発明の方法によれば、このボイラー65で製造された水蒸気77を使用して含水廃棄物中の水分を予め減少させることができる。例えば、汚泥の場合には通常80%程度の水分を含んでいるが、その水分量を70%程度以下に減少させれば汚泥自身が燃焼することができる。その結果、焼却炉41においてLNG等の補助燃料52を使用しなくても、廃棄物自身の燃焼熱によって十分にその燃焼温度を維持することができるようになり、補助燃料を全く使用しなくても廃棄物焼却設備の運転が可能となる。
【0035】
また、乾燥機50で加熱用に使用された水蒸気77の凝縮水75は、再び高温型燃料電池発電設備のボイラー72の給水74に加えることができ、水蒸気発生用の水を循環させて、再利用することができる。
【0036】
以上に説明したような本発明の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を採用することによって、次のような経済的なメリットを享受することができる。
【0037】
従来のMCFC型燃料電池が、その燃料として都市ガス(LNG)のみを用いて単独で運転する方式であるが、本発明の方法では廃棄物の焼却廃熱を有効に利用している。そのため熱交換器での回収熱量を増大させることができ、高温型燃料電池発電設備として高い効率で発電を行うことができる。
例えば、発電効率を次の様に定義するとする:
発電効率=発電電力/(使用燃料熱量−熱交換器による廃熱回収熱量)×100%
この定義に従うと、従来MCFC型燃料電池を用いた方式の効率は約47%であるのに対して、本発明の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を採用した場合には発電効率が59%となる。
【0038】
汚泥焼却炉の能力が300トン/日の規模の廃棄物焼却設備の場合、煙突からの白煙防止のために使用したものを差し引いた余剰加熱空気として、250℃で概ね17,500Nm/hの白煙防止空気が利用できる。
一方、本発明の方法では、燃料電池の出力が1000kwの場合には、高温型燃料電池発電設備として250℃で約3,200Nm/hの加熱空気を必要とするので、利用可能な余剰加熱空気の全量を高温型燃料電池発電設備に供給した場合には、約5,400kw発電能力の発電設備に利用することができる。さらに、このように高効率で発電した電力は、下水処理場内で電力使用量の大きい水処理設備などに利用でき下水処理場内の電力自給率を向上させることができる。
【0039】
高温型燃料電池発電設備の熱交換器での熱回収量が増加するため、ボイラーでの蒸気回収量を増加させることが出来る。
例えば、能力が300トン/日の規模の廃棄物焼却設備の場合であって、白煙防止のために使用したものを差し引いた利用可能な白煙防止器からの加熱空気の全量を高温型燃料電池発電設備に導入した場合、熱交換器に常温空気(20℃)を導入する場合に比較すると550℃で、8,000Nm/hの加熱空気を回収できる。そして、これをボイラーに導入すれば、340℃で、2.1MPaの蒸気として、さらに1,600kg/hだけ多く回収することができ、これを他の設備での蒸気(熱)利用やボイラー・タービン発電にも利用することができる。
【0040】
以上の本発明の説明は、焼却する含水廃棄物として、主として下水処理で発生する汚泥を例として説明したが、本発明の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法は汚泥等の産業廃棄物の焼却処理に限定するものではなく、同様に水分を多く含む都市ごみ、生ごみ等の一般廃棄物にも同様に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
下水処理場の汚泥の焼却処理、都市ごみや家庭の生ごみの焼却処理、その他水分を含有する有機性の産業廃棄物の焼却処理に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の汚泥焼却設備の一例のフロー図である。
【図2】従来の高温型燃料電池発電設備の一例を示すフロー図である。
【図3】本発明の廃棄物焼却設備と高温型燃料電池発電設備とを組み合わせた廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法を実施するための設備の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0043】
1,41:焼却炉、2,42:空気予熱器、3,43:白煙防止器、4,44:集塵器、5,45:スクラバー、6,46:誘引ファン、7,47:煙突、8,48,9,49:送風機、10,78:汚泥、11,26,52,66:LNG、12,53,13,54,15,55:燃焼廃ガス、14,56,57,58,59,60:加熱空気、21,61:アノード、22,62:カソード、23,63:燃焼器、24:希釈器、25,65:ボイラー、27,67:電力、28,68:アノード排ガス、29,69:アノード燃焼ガス、30:一次空気、31:二次空気、32,70:カソードガス、33,71:カソード排ガス、34,72:ボイラー排気、35,76,77:水蒸気、50:乾燥機、51:乾燥汚泥、75:凝縮水、64:熱交換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の焼却炉から発生する燃焼廃ガスを、空気予熱器の熱交換による熱回収を行った後、白煙防止器においてこの燃焼廃ガスを使用して空気を加熱し、得られた加熱空気の一部を燃焼廃ガスの排出口での白煙防止のために混合するとともに、該加熱空気の残部を高温型燃料電池発電設備の燃料電池のアノードから生ずる未利用燃料の燃焼用空気および/またはカソードの熱交換用空気として使用することを特徴とする廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【請求項2】
白煙防止器で加熱された加熱空気の温度が200〜300℃であることを特徴とする、請求項1に記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【請求項3】
白煙防止器で加熱された加熱空気のうちの20〜40容量%が白煙防止のために使用され、残部の60〜80容量%が高温型燃料電池発電設備に使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【請求項4】
高温型燃料電池発電設備の燃料電池のアノードから生ずる未利用燃料に、前記白煙防止器で加熱された加熱空気の全部又は一部を混合して燃焼させ、得られた高温の二酸化炭素を含む燃焼ガスを、前記白煙防止器で加熱された加熱空気の残部と熱交換してカソードに供給することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【請求項5】
高温型燃料電池発電設備が溶融炭酸塩型燃料電池または固体酸化物型燃料電池のいずれかを使用するものである、請求項1ないし4のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【請求項6】
高温型燃料電池発電設備から発生する高温の排気ガスを用いてボイラーによって高温水蒸気を得て、これを焼却炉の前段に設けた廃棄物乾燥機に導入して含水廃棄物を乾燥することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。
【請求項7】
焼却炉が、下水汚泥焼却炉、都市ごみ若しくは生ごみ焼却炉、または含水有機性廃棄物焼却炉のいずれかであることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の廃棄物の焼却廃熱の有効利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−265728(P2007−265728A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87475(P2006−87475)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】