説明

廃棄物焼却炉

【課題】 炉壁にクリンカが付着するのを、速やかに、かつ効果的に防止する。
【解決手段】 廃棄物を一次空気により酸素不足状態で燃焼させる一次燃焼域と、該一次燃焼域の燃焼ガスを二次空気により燃焼させる二次燃焼域とを有する廃棄物焼却炉において、前記二次燃焼域の入側の炉内に水を噴霧するノズルと、該ノズルから噴霧する水量を制御して前記二次燃焼域の入側の炉内の温度を設定温度範囲に保持する制御手段とを設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却炉に係り、例えば、流動床式あるいはストーカ式の廃棄物焼却炉の炉壁に付着するクリンカの発生を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどを焼却処理する廃棄物焼却炉、一般に、廃棄物を一次空気により酸素不足状態で燃焼させる一次燃焼域と、この一次燃焼域の燃焼ガスを二次空気により燃焼させる二次燃焼域とを有して形成される。このような廃棄物焼却炉において、炉に投入される廃棄物の発熱量が変動し、燃焼温度が高く、かつ濃度の高い未燃ガスが二次燃焼域に供給されると、二次燃焼域が高温(例えば950℃以上)になり、燃焼飛灰が溶融され、その溶融飛灰(クリンカ)が炉壁に付着するという問題がある。
【0003】
このようなクリンカが炉壁に付着する問題を避けるため、例えば、特許文献1に記載された流動床式の廃棄物焼却炉においては、流動床の上方の空塔部に形成される二次燃焼域に空気を吹き込む二次空気供給ノズルに水噴霧ノズルを設け、二次空気量の増減に応じて水噴霧量を増減制御することにより、二次燃焼域の温度を下げてクリンカの発生を抑制することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2に記載されたストーカ式の廃棄物焼却炉においては、炉壁にクリンカが付着し、それが成長して落下するのを防止するため、炉壁に水を噴霧するとともに、炉内温度に応じて水量を制御することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−118523号公報
【特許文献2】特開昭55−8507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、二次空気量の増減に応じて水噴霧量を増減制御するようにしているから、二次空気量が少なくなると、水噴霧量も少なくなることになる。そのため、二次燃焼域の温度が高いにも関わらず、水噴霧量が低減される場合があり、二次燃焼域の温度を迅速に下げることができず、必ずしもクリンカの生成及び付着を回避することができない。また、二次空気量の制御による温度制御は、一般に、応答性が悪いから、二次空気量の制御に応じて水噴霧量を制御すると、二次燃焼域の温度を下げすぎるおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2に記載された技術によれば、炉壁面の全面に水を噴霧するとともに、常時噴霧する必要があるから、水量が多くなるなど実用的でない。
【0008】
本発明は、炉壁にクリンカが付着するのを、速やかに、かつ効果的に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、廃棄物を一次空気により酸素不足状態で燃焼させる一次燃焼域と、該一次燃焼域の燃焼ガスを二次空気により燃焼させる二次燃焼域とを有する廃棄物焼却炉において、前記二次燃焼域の入側の炉内に水を噴霧するノズルと、該ノズルから噴霧する水量を制御して前記二次燃焼域の入側の炉内の温度を設定温度範囲に保持する制御手段とを設けてなることを特徴とする。
【0010】
このように構成することにより、本発明によれば、二次燃焼域の入側の炉内の温度に基づいて、その領域に噴霧する水量を制御しているから、二次燃焼域の燃焼温度をクリンカが生成される温度以下に、例えば、950℃未満に迅速にかつ効果的に抑えることができる。特に、二次燃焼域の入側の炉内の温度は、一次燃焼域における燃焼状態が速やかに反映されることから、クリンカの生成及び付着の抑制を応答性よく実現できる。
【0011】
一方、流動床式の廃棄物燃焼炉にあっては、二次燃焼域を形成する炉壁の一部を上向きに傾斜して設ける場合がある。このような傾斜炉壁を有する二次燃焼域の場合、燃焼飛灰が傾斜炉壁に堆積し、堆積された状態で二次燃焼域の高温により溶融されてクリンカになることがある。そして、そのクリンカが成長して剥がれて流動床の流動媒体の砂に落下すると、流動不良を起こすおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、炉の底部に形成される廃棄物と流動化媒体の堆積層に一次空気を含む流動化気体を散気して流動床を形成し、該流動床により前記廃棄物を酸素不足状態で燃焼させ、前記流動層の上方の前記炉の空塔部に二次空気を供給して二次燃焼域を形成し、前記二次空気の供給ノズルを前記二次燃焼域を形成する上向きの傾斜炉壁に設けてなる廃棄物焼却炉において、前記傾斜炉壁の下方の炉内に水を噴霧するノズルと、該ノズルから噴霧する水量を制御して前記傾斜炉壁の下方の炉内の温度を設定温度範囲に保持する制御手段とを設けてなることを特徴とする。
【0013】
これにより、クリンカが堆積成長しやすい傾斜炉壁を有する場合であっても、クリンカが成長して流動床の流動媒体の砂に落下することを回避できるから、流動不良を起こすおそれをなくすことができる。
【0014】
上記の場合において、設定温度範囲は、850℃以上で950℃以下とすることが好ましい。また、制御手段は、水噴霧量の制御に加えて、流動化気体と二次空気の少なくとも一方の量を制御して、傾斜炉壁の下方の炉内の温度を設定温度範囲に保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炉壁にクリンカが付着するのを、速やかに、かつ効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の廃棄物焼却炉の実施形態について説明する。図1に、本発明の廃棄物焼却炉を備えた廃棄物焼却プラントの一実施形態の構成を示す。図示のように、ごみ収集車1で収集された都市ごみは、プラットホーム2からごみピットへ直接投入されるか、またはダンピングボックス3を介してごみピット4へ投入される。ごみピット4内のごみはクレーン5により掴み取られてホッパ6に投入され、定量供給装置7を介して焼却炉8へ投入される。焼却炉8へ投入されるごみは、炉底部に供給される流動砂と一次空気により攪拌流動されて燃焼する流動床9を形成して燃焼される。流動床9において不足空気により燃焼されたごみの燃焼排ガスは、流動床9の上方の空塔部に設けられた二次空気ノズル16から供給される二次空気により燃焼され、さらに頂部の出口付近に下向きに設けられた三次空気ノズル17から供給される三次空気により完全燃焼されるようになっている。
【0017】
焼却炉8から排出される排ガスは、例えば950℃の温度を有し、廃熱ボイラ18及びエコノマイザ19を通流して800℃位までに温度降下され、次いで減温塔20を通流することにより、ダイオキシンの再合成温度域(500℃〜650℃)以下まで急速に冷却される。減温塔20から排出される排ガスには活性炭注入管22より活性炭が吹込まれ、第1の濾過式集塵機21へ導入される。これにより排ガス中に再合成されて存在するダイオキシン類が活性炭に吸着される。第1の濾過式集塵機21から排出される排ガスに、消石灰注入管24より消石灰が吹込まれ、第2の濾過式集塵機23へ導入される。これにより、排ガス中のSOが消石灰により還元される。このように、第1の濾過式集塵機21と第2の濾過式集塵機23は、排ガス中に含まれるダイオキシン類を吸着した活性炭と煤塵を2段階に除去する。その後、排ガスは、蒸気式ガス再加熱器25により触媒反応温度域まで再加熱されてから、アンモニア注入管26よりアンモニアを注入されて触媒反応塔27に導かれてNOが除去され、誘引通風機28を介して煙突29から大気へ放出される。
【0018】
ここで、図2を用いて、焼却炉8の構成を詳細に説明する。図2(a)のように、本実施形態の焼却炉8は矩形断面を有する縦型炉であり、底部の流動床燃焼域が形成されるようになっている。底部に形成される流動床9の上方の空塔部に上向きの傾斜炉壁8aが形成され、この傾斜炉壁8aの高さ方向中央部に二次空気ノズル16が設けられ、これにより流動床9の上方の空塔部に二次燃焼域が形成されている。流動床9には流動化空気を供給する散気管10が設けられている。散気管10は、コントロールダンパ13を介して押込み送風機14と接続されている。コントロールダンパ13は、図示していない制御手段により炉内温度計に応じてモータにより弁開度が制御される。また、流動床9に臨ませて起動バーナ11と助燃バーナ12が設けられている。
【0019】
また、本実施形態の特徴である水噴霧ノズル34a、bが、傾斜炉壁8aの下部の炉壁に設けられている。なお、水噴霧ノズル34a、bは、図2(b)に示すように、対向させて配置することにより、水噴霧時の排ガス温度を均一化することができる。
【0020】
このように構成される本実施形態の焼却炉8の動作について次に説明する。焼却炉8へ投入されるごみは、炉底部に供給される流動砂と、散気管10から供給される流動化空気である一次空気により攪拌流動化され、起動バーナ11によって流動床9による燃焼が開始される。燃焼が開始すると起動バーナ11が停止され、流動床9において不足空気によりごみが安定して燃焼される。燃焼排ガスは、二次空気ノズル16から供給される二次空気により活発に燃焼され、さらに頂部の三次空気ノズル17から供給される三次空気により完全燃焼される。また、炉頂部に設けられた再燃焼バーナ30により燃焼が促進される。
【0021】
ここで、炉に投入されるごみの発熱量が変動し、流動床9から温度の高い、かつ濃度の高い未燃ガスが二次燃焼域に供給されることがある。この場合、二次燃焼域が高温(例えば950℃以上)になり、これにより燃焼飛灰が溶融され、その溶融飛灰であるクリンカが炉壁に付着する場合がある。特に、図2(a)に示すように、本実施形態の焼却炉8の頂部を下部に対してずらした位置に配置すると、炉中間部に上向きの傾斜炉壁(レンガ壁)8aが形成される。この傾斜炉壁8aには、クリンカが付着しやすく、また堆積成長しやすい。
【0022】
そこで、本実施形態では、傾斜炉壁8aの下端部より下方の炉壁に設けた複数の水噴霧ノズル34a、34bから水を噴霧して、二次燃焼域の温度を下げることにより、クリンカの生成を抑えるとともに、傾斜炉壁8aへの付着を抑制している。すなわち、水噴霧ノズル34a、34bには、シャトオフ弁31を介して噴射ポンプ32により噴射水槽15から水が供給され、また、霧化用の圧縮空気が供給される。また、流動床9の上部であって、傾斜炉壁8aの下方の排ガス温度を計測する第1の中間部ガス温度計35aが設けられている。そして、シャトオフ弁31は、第1の中間部ガス温度計35aの検出温度が設定温度(例えば、950℃)以上のときに、図示していない制御手段により開かれる。このように、流動床9の上部あるいは二次燃焼域の入口側の排ガス温度が設定温度以上になると、水噴霧ノズル34a、34b等から水が噴霧され、速やかに同部位の温度が設定温度未満に保持される。
【0023】
また、これに合わせて、コントロールダンパ13を絞り込んで一次空気である流動化空気を減少させて、二次燃焼域の入口側の排ガス温度を下げることが好ましい。これにより、短時間で排ガス温度を下げることができ、水噴霧の時間を短縮できる。一方、ダイオキシンの発生を抑制するために、燃焼温度を800℃以上で2秒間以上保持する必要があるため、3次燃焼域に設けた第2の中間部ガス温度計35bの検出温度が850℃以下になったときには、シャトオフ弁31を全閉にして水噴霧を停止する。図3に、上述した本実施形態による焼却炉中間部の排ガス温度の変化と、流動化空気及び中間部の水噴霧の制御のタイムチャートを示す。
【0024】
また、炉頂部の炉出口部に複数の水噴霧ノズル33が設けられ、傾斜炉壁8aの上部に設けた上部ガス温度計35cの検出温度に基づいて、排ガス温度が設定温度(例えば950℃)以上になったとき、水噴霧ノズル33から水を噴霧して排ガス温度を下げるようにしている。
【0025】
上述したように、本実施形態のような傾斜炉壁を有する流動床式焼却炉の場合、二次燃焼域の燃焼飛灰が傾斜炉壁に堆積し、堆積された状態で二次燃焼域の高温により溶融されてクリンカになることを効果的に防止することができる。その結果、傾斜炉壁の成長したクリンカが剥がれて流動床の流動砂に落下して流動不良を起こすおそれを回避できる。
【0026】
なお、本発明は、流動床式焼却炉に限らず、ストーカ式焼却炉の適用しても同様の効果を奏することができる。要は、廃棄物を一次空気により酸素不足状態で燃焼させる一次燃焼域と、一次燃焼域の燃焼ガスを二次空気により燃焼させる二次燃焼域とを有する廃棄物焼却炉において、二次燃焼域の入側の炉内に水を噴霧するノズルと、このノズルから噴霧する水量を制御して二次燃焼域の入側の炉内の温度を設定温度範囲(例えば、850〜950℃)に保持することにより、炉壁にクリンカが付着するのを、速やかに、かつ効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の廃棄物焼却炉を備えた廃棄物焼却プラントの全体図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態の廃棄物焼却炉の要部拡大断面図、(b)は(a)の線A−Aにおける断面図である。
【図3】本発明の実施形態の廃棄物焼却炉の運用方法を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
8 焼却炉
8a 傾斜炉壁
34a,34b 水噴霧ノズル
35a 第1の中間部ガス温度計
35b 第2の中間部ガス温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を一次空気により酸素不足状態で燃焼させる一次燃焼域と、該一次燃焼域の燃焼ガスを二次空気により燃焼させる二次燃焼域とを有する廃棄物焼却炉において、前記二次燃焼域の入側の炉内に水を噴霧するノズルと、該ノズルから噴霧する水量を制御して前記二次燃焼域の入側の炉内の温度を設定温度範囲に保持する制御手段とを設けてなることを特徴とする廃棄物焼却炉。
【請求項2】
炉の底部に形成される廃棄物と流動化媒体の堆積層に一次空気を含む流動化気体を散気して流動床を形成し、該流動床により前記廃棄物を酸素不足状態で燃焼させ、前記流動層の上方の前記炉の空塔部に二次空気を供給して二次燃焼域を形成し、前記二次空気の供給ノズルを前記二次燃焼域を形成する上向きの傾斜炉壁に設けてなる廃棄物焼却炉において、
前記傾斜炉壁の下方の炉内に水を噴霧するノズルと、該ノズルから噴霧する水量を制御して前記傾斜炉壁の下方の炉内の温度を設定温度範囲に保持する制御手段とを設けてなることを特徴とする流動床焼却炉。
【請求項3】
前記設定温度範囲は、850℃以上で950℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の流動床焼却炉。
【請求項4】
前記制御手段は、前記水噴霧量の制御に加えて、前記流動化気体と前記二次燃焼空気の少なくとも一方の量を制御して前記傾斜炉壁の下方の炉内の温度を設定温度範囲に保持することを特徴とする請求項3又は4に記載の廃棄物焼却炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−194462(P2006−194462A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3670(P2005−3670)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】