廃熱利用装置
【課題】ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能な廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】実施例1の廃熱利用装置は、駆動系1aに用いられるランキンサイクル3aを備えている。駆動系1aは、エンジン5と、エンジン5に対して加圧空気を供給するターボチャージャ7とを有している。ランキンサイクル3aは、加圧空気との熱交換によって作動流体を加熱させる加圧空気ボイラ23を有している。また、ランキンサイクル3aには、加圧空気ボイラ23の下流で配管28、29から分岐し、膨張機25を迂回して配管30に合流するバイパス路33と、制御装置11aによって制御され、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とを調整可能な流量調整弁35とを有している。
【解決手段】実施例1の廃熱利用装置は、駆動系1aに用いられるランキンサイクル3aを備えている。駆動系1aは、エンジン5と、エンジン5に対して加圧空気を供給するターボチャージャ7とを有している。ランキンサイクル3aは、加圧空気との熱交換によって作動流体を加熱させる加圧空気ボイラ23を有している。また、ランキンサイクル3aには、加圧空気ボイラ23の下流で配管28、29から分岐し、膨張機25を迂回して配管30に合流するバイパス路33と、制御装置11aによって制御され、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とを調整可能な流量調整弁35とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に従来の廃熱利用装置が開示されている。特許文献1の廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、エンジンで生じた排気の一部を吸気系流体である還流排気としてエンジンに還流させる排気還流路とを有している。ランキンサイクルは、ポンプと還流排気ボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。還流排気ボイラは、還流排気と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。配管は、ポンプ、還流排気ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0003】
また、特許文献2の廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、過給器としてのターボチャージャとを有している。このターボチャージャは、エンジンに対して吸気系流体である加圧空気を供給する。ランキンサイクルは、ポンプと冷却水ボイラと加圧空気ボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。冷却水ボイラは、エンジンの冷却水と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。加圧空気ボイラは、加圧空気と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。配管は、ポンプ、冷却水ボイラ、加圧空気ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0004】
これらの廃熱利用装置では、吸気系流体としての還流排気や加圧空気が高温となることから、還流排気ボイラや加圧空気ボイラによって作動流体を好適に加熱することが可能である。このため、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーの量が大きくなり、廃熱利用装置が高性能となる。
【0005】
また、これら廃熱利用装置では、還流排気ボイラや加圧空気ボイラにおける熱交換によって還流排気や加圧空気を冷却することが可能となる。このため、密度を大きくした状態で内燃機関に還流排気や加圧空気を供給することが可能となる。このように、これらの廃熱利用装置では、加圧空気を冷却することでエンジンの出力を向上させることが可能である他、還流排気を冷却することで最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−239513号公報
【特許文献2】特開2008−8224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の廃熱利用装置は、ランキンサイクルがモリエル線図上で一定の運転状態を繰り返すに過ぎない。このため、還流排気ボイラから流出した還流排気や加圧空気ボイラから流出した加圧空気の温度が閾値を超えて高く、これらに対する冷却要求量が大きい場合であっても、還流排気ボイラや加圧空気ボイラにおいて、還流排気や加圧空気を十分に冷却することができない。このため、これらの廃熱利用装置では、加圧空気の冷却が不足して内燃機関の出力等を十分に高くすることができなかったり、還流排気の冷却が不足して排気中の窒素酸化物含有量を低減させることができなかったりする。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能な廃熱利用装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の廃熱利用装置は、内燃機関を有する駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備え、
該ランキンサイクルは、ポンプと、該内燃機関に対して冷却されつつ吸気される吸気系流体との間で熱交換を行うボイラと、膨張機と、凝縮器と、該ポンプ、該ボイラ、該膨張機及び該凝縮器の順で前記作動流体を循環させる配管とを有する廃熱利用装置において、
前記吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、
前記ランキンサイクルの蒸発圧力を下げる蒸発圧力低下手段と、
該判断手段が判断した該冷却要求量が閾値を超えた場合には、予め定められた設定蒸発圧力より低くなるように該蒸発圧力低下手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする廃熱利用装置。(請求項1)。
【0010】
本発明の廃熱利用装置はランキンサイクルを備えている。このランキンサイクルは、駆動系に用いられ、作動流体を循環させる。駆動系は、内燃機関を有している。一方、ランキンサイクルは、ポンプとボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。ボイラは、吸気系流体と作動流体との間で熱交換を行う。また、配管は、ポンプ、ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0011】
吸気系流体とは、内燃機関に対して冷却されつつ吸気されることが求められる流体を指す。このように、冷却によって吸気系流体の密度を大きくし、その状態で内燃機関に吸気させることで、内燃機関では出力等が向上し、内燃機関の性能が向上することとなる。
【0012】
この廃熱利用装置では、ボイラで作動流体を好適に加熱することが可能となり、作動流体の圧力エネルギーが大きくなる。このため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルで回収可能なエネルギーの量を大きくすることが可能となる。この回収可能なエネルギーとしては、例えば、圧力エネルギーを基に発電した電力や内燃機関に回生される動力等が挙げられる。また、この廃熱利用装置では、ボイラでの冷却により、吸気系流体の密度を大きさせつつ内燃機関に吸気させることが可能となる。
【0013】
さらに、この廃熱利用装置は、吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、ランキンサイクルの蒸発圧力を下げる蒸発圧力低下手段と、制御手段とを備えている。そして、制御手段は、判断手段が判断した冷却要求量が閾値を超えた場合に、蒸発圧力が予め定められた設定蒸発圧力より低くなるように蒸発圧力低下手段を制御する。このため、この廃熱利用装置では、吸気系流体の温度が閾値を超え、より一層の吸気系流体の冷却が求められる状態において、蒸発圧力低下手段がランキンサイクルの蒸発圧力を下げる。
【0014】
本発明において、ランキンサイクルの蒸発圧力とは、ポンプの下流から膨張機の上流までの作動流体の圧力を指す。また、設定蒸発圧力とは、ボイラから流出する吸気系流体の温度が閾値を超えておらず、ランキンサイクルが通常動作する場合の蒸発圧力を指す。ここで、蒸発圧力を下げることにより、ランキンサイクルは、設定蒸発圧力で作動している場合に比べて、モリエル線図上で顕熱領域が減り、潜熱領域が増えた運転状態になる。このため、ボイラにおいて、吸気系流体と作動流体との熱交換が進んでも、潜熱領域では作動流体の温度は上がらず、作動流体が吸気系流体からより多くの熱を奪うことが可能になる。このため、吸気系流体をより冷却することができる。この場合、吸気系流体の密度が大きくなった状態で内燃機関に還流されることから、上記のように、内燃機関では出力が向上する他、排気中における窒素酸化物の含有量が低減する。なお、蒸発圧力が下がれば、膨張機が回収する圧力エネルギーは小さくなる。
【0015】
したがって、本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能である。
【0016】
蒸発圧力低下手段は、ボイラの下流で配管から分岐し、膨張機を迂回して配管に合流するバイパス路と、制御手段によって制御され、膨張機に流入する作動流体の流量とバイパス路に流入する作動流体の流量とを調整可能な流量調整弁とを有していることが好ましい(請求項2)。
【0017】
この場合、膨張機に流入する作動流体の流量を減らし、バイパス路に流入する作動流体の流量を多くすることによって、ランキンサイクルの蒸発圧力を下げることができる。両者の流量を調整することによって、ランキンサイクルの蒸発圧力を任意に定めることができる。
【0018】
また、蒸発圧力低下手段は、制御手段によって制御され、膨張機に流入する作動流体の流量と、ポンプが吐出する作動流体の流量との比を変更する流量比変更手段であることも好ましい(請求項3)。
【0019】
この場合、流量比変更手段により、ポンプが吐出する作動流体の流量を膨張機に流入する流量に比べて少なくすれば、ランキンサイクルの蒸発圧力を下げることができる。両者の流量比を調整することによって、ランキンサイクルの蒸発圧力を任意に定めることができる。
【0020】
流量比変更手段は、ポンプ及び膨張機の少なくとも一方の回転数を変更可能な変速手段であることができる(請求項4)。例えば、変速手段によってポンプの回転数を下げることにより、ポンプが吐出する作動流体の流量を膨張機に流入する流量に比べて少なくすることができる。また、膨張機の回転数を上げることによっても蒸発圧力を下げることができる。
【0021】
また、流量比変更手段は、ポンプ及び膨張機の少なくとも一方の単位回転数当たりの容量を変更可能な容量制御手段であることができる(請求項5)。例えば、容量制御手段によってポンプの単位回転数当たりの吐出容量を小さくし、これによってポンプが吐出する作動流体の流量を膨張機に流入する流量に比べて少なくすることができる。また、膨張機の単位回転数当たりの吸入容積を大きくすることによっても蒸発圧力を下げることができる。
【0022】
本発明の廃熱利用装置において、判断手段は、種々の手段によって吸気系流体に対する冷却要求量を判断することが可能である。例えば、本発明の廃熱利用装置は、内燃機関に対する出力要求を検出可能な出力要求検出手段を備え得る。そして、判断手段は、出力要求検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することが好ましい(請求項6)。
【0023】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラから流出する吸気系流体の温度を検出可能な第1温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第1温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項7)。
【0024】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラに流入する作動流体の温度を検出可能な第2温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第2温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項8)。
【0025】
また、本発明の廃熱利用装置は、ポンプに流入する作動流体の温度を検出可能な第3温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第3温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項9)。
【0026】
また、本発明の廃熱利用装置は、膨張機の下流からポンプの上流までの作動流体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え得る。そして、判断手段は、圧力検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項10)。
【0027】
これらのように、内燃機関に対する出力要求の他、ボイラから流出する吸気系流体の温度、ボイラ又はポンプに流入する作動流体の温度、膨張機の下流からポンプの上流までの作動流体の圧力(凝縮圧力)に基づくことで、判断手段は吸気系流体に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となる。このため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、内燃機関の性能向上とをより好適に両立することが可能となる。
【0028】
駆動系が有する内燃機関としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の他、種々の形式のエンジンを採用することができる。また、これらのエンジンはモータを組み合わせたハイブリッドエンジンでも良い。さらに、これらのエンジンは空冷式でも水冷式でも良い。なお、内燃機関は複数であっても良い。
【0029】
また、駆動系は、内燃機関に対して吸気系流体である加圧空気を供給する過給器を有し得る。そして、ボイラは、加圧空気と作動流体との間で熱交換を行う加圧空気ボイラであり得る(請求項11)。
【0030】
この場合、過給器によって内燃機関に加圧空気が供給されることで、内燃機関の出力が向上する。ここで、加圧空気は、冷却によりその密度が増大させつつ内燃機関に吸気されることが求められることから吸気系流体に該当する。この廃熱利用装置では、加圧空気ボイラにおいて作動流体と熱交換を行うことで、加圧空気を冷却し、その密度を高くすることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、内燃機関に対してより多くの加圧空気を供給可能となり、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。この過給器としては、ターボチャージャやスーパーチャージャ等を採用することができる。なお、過給器は複数であっても良い。
【0031】
また、駆動系は、内燃機関で生じた排気の一部を吸気系流体である還流排気として内燃機関に還流させる排気還流路を有し得る。そして、ボイラは、還流排気と作動流体との間で熱交換を行う還流排気ボイラであり得る(請求項12)。
【0032】
この場合、排気還流路により、排気の一部が内燃機関に吸気(還流)されることで、内燃機関の出力が向上する他、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となる。ここで、還流排気も冷却によりその密度を増大させつつ内燃機関に還流されることが求められることから吸気系流体に該当する。そして、この廃熱利用装置では、還流排気ボイラにおいて作動流体と熱交換を行うことで、還流排気を冷却し、その密度を高くすることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、内燃機関に対して好適に還流排気を還流させることが可能となり、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図2】実施例1〜3の廃熱利用装置の運転状態を示すモリエル線図である。
【図3】実施例1の廃熱利用装置に係り、作動流体及び加圧空気の温度を示す説明図である。
【図4】実施例2の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図5】実施例3の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図6】実施例4の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図7】実施例4〜9の廃熱利用装置の運転状態を示すモリエル線図である。
【図8】実施例4の廃熱利用装置に係り、作動流体及び還流排気の温度を示す説明図である。
【図9】実施例5の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図10】実施例6の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図11】実施例7の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図12】実施例8の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図13】実施例9の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した実施例1〜9を図面を参照しつつ説明する。
【0036】
(実施例1)
実施例1の廃熱利用装置は、車両に搭載され、図1に示すように、車両の駆動系1aに用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3aと、バイパス路33と、流量調整弁35と、制御装置11aとを備えている。バイパス路33及び流量調整弁35が蒸発圧力低下手段に相当し、制御装置11aが判断手段及び制御手段に相当する。
【0037】
駆動系1aは、内燃機関としてのエンジン5と、過給器としてのターボチャージャ7とを有している。エンジン5は、公知の水冷式ガソリンエンジンである。エンジン5の内部には冷却水が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン5には、排ガスを排出する排気口5cと、後述する加圧空気を吸入する吸気口5dとが形成されている。
【0038】
ターボチャージャ7は公用品が採用されている。ターボチャージャ7は、エンジン5から生じた排ガスによって作動され、エンジン5に対し、車外の空気を加圧した加圧空気(吸気系流体)を供給する。
【0039】
エンジン5とターボチャージャ7とは配管13〜15によって接続されている。また、配管14と配管15とには後述する加圧空気ボイラ23が接続されている。配管13は内部を排ガスが流通可能となっており、エンジン5の排気口5cとターボチャージャ7とに接続されている。一方、配管14及び配管15は内部を加圧空気が流通可能となっている。配管14はターボチャージャ7と加圧空気ボイラ23の第1流入口23aとに接続されている。配管15は加圧空気ボイラ23の第1流出口23bとエンジン5の吸気口5dとに接続されている。
【0040】
さらに、ターボチャージャ7には、配管16、17の各一端側が接続されている。配管16の他端側は、図示しないエアインテークと接続されている。配管17の他端側は図示しない車両のマフラに開口している。配管16は、ターボチャージャ7を介して配管14と連通している。同様に、配管17は、ターボチャージャ7を介して配管13と連通している。
【0041】
ランキンサイクル3aは、ポンプ20aと、加圧空気ボイラ23と、膨張機25と、凝縮器27と、配管28〜32とを有している。このランキンサイクル3aは、バイパス路33及び流量調整弁35が一体に組み付けられている。配管28〜32及びバイパス路33には、作動流体としての冷媒(HFC134a)が流通可能となっている。このポンプ20aには、速度及び吐出容量が予め一定に規定された電動式ポンプが採用されている。
【0042】
加圧空気ボイラ23には、第1流入口23a及び第1流出口23bと、第2流入口23c及び第2流出口23dとが形成されている。また、加圧空気ボイラ23内には、両端側でそれぞれ第1流入口23a及び第1流出口23bと連通する第1通路23eと、両端側でそれぞれ第2流入口23c及び第2流出口23dと連通する第2通路23fとが設けられている。この加圧空気ボイラ23では、第1通路23e内の加圧空気と、第2通路23f内の作動流体との熱交換により、加圧空気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0043】
膨張機25には、その内部に作動流体を流入させる流入口25aと、作動流体を流出させる流出口25bとが形成されている。膨張機25では、加圧空気ボイラ23を経て加熱された作動流体を膨張させることにより回転駆動力を発生させる。この膨張機25には図示しない公知の発電機が接続されている。発電機は膨張機25の駆動力によって発電を行い、図示しないバッテリに電力を充電する。
【0044】
凝縮器27には、その内部に作動流体を流入させる流入口27aと、作動流体を流出させる流出口27bとが形成されている。凝縮器27は、その内部を流通する作動流体と車外の空気との間で熱交換を行い、膨張機25での膨張によって気化された作動流体を冷却して液化させる。凝縮器27の近傍には電動ファン27cが設けられている。この電動ファン27cは制御装置11aに電気的に接続されている。
【0045】
これらのポンプ20a、加圧空気ボイラ23、膨張機25及び凝縮器27は配管28〜32によって接続されている。具体的には、ポンプ20aと加圧空気ボイラ23の第2流入口23cとは配管32によって接続されている。加圧空気ボイラ23の第2流出口23dと流量調整弁35とは配管28によって接続されている。流量調整弁35と膨張機25の流入口25aとは配管29によって接続されている。膨張機25の流出口25bと凝縮器27の流入口27aとは配管30によって接続されている。そして、凝縮器27の流出口27bとポンプ20aとが配管31によって接続されている。
【0046】
流量調整弁35は配管28と配管29との間に設けられている。また、バイパス路33の一端側は流量調整弁35と接続されており、その他端側は配管30と接続されている。バイパス路33は、その内部に作動流体を流通させることにより、作動流体に膨張機25を迂回させる。流量調整弁35は、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とを調整可能である。この流量調整弁35は制御装置11aに電気的に接続されている。
【0047】
このランキンサイクル3aでは、ポンプ20aを作動させることにより、配管32に向けて作動流体が一定の流量で吐出される。そして、この作動流体は加圧空気ボイラ23及び膨張機25を経て凝縮器27に至る順で配管28〜32内を循環する。この際、作動流体は、流量調整弁35によって膨張機25に流入する流量とバイパス路33に流入する流量とが調整される。
【0048】
制御装置11aは、電動ファン27cの作動制御を行うことで、作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。また、制御装置11aは、ポンプ20aの作動制御を行う。さらに、制御装置11aは、車両のECU等(図示略)から受信した信号によって車両のアクセル開度を検知可能に構成されており、このアクセル開度に基づき、エンジン5に対する出力要求を検出可能となっている。また、制御装置11aは、エンジン5に対する出力要求に基づいて、加圧空気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11aは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35を調整する。
【0049】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0050】
車両が駆動されることにより、駆動系1aではエンジン5が作動する。これにより、排気口5cから排出された排ガスが配管13、ターボチャージャ7及び配管17を経てマフラから車外に排出される(鎖線矢印参照)。この際、排ガスに依ってターボチャージャ7が作動される。これにより、車外の空気が配管16よりターボチャージャ7に吸引され、圧縮される。この空気は加圧空気として、配管14、加圧空気ボイラ23の第1通路23e及び配管15を経てエンジン5の吸気口5dよりエンジン5内へ吸入される(鎖線矢印参照)。
【0051】
一方、ランキンサイクル3aでは、制御装置11aが流量調整弁35の調整を行う。ここで、エンジン5に対する出力要求が所定値(検知したアクセル開度が所定値)以下の場合には、加圧空気に対する冷却要求量が閾値以下であると判断し、流量調整弁35を制御することにより、配管28と配管29とが連通され、配管28、29とバイパス路33とが非連通とされる。
【0052】
まず、ポンプ20aによって配管31内の作動流体が配管32内に吐出される。この際、図2に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Aから状態Bに移行し、高圧となる。次いで、図1に示すように、作動流体は配管32を経て加圧空気ボイラ23において加圧空気と熱交換される。この際、第1通路23eを流通する加圧空気はターボチャージャ7によって圧縮されることにより約150°C程度の熱を有しているため、第2通路23fを流通する作動流体は、一定程度の温度に加熱される。この際、図2に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Bから状態Cに移行し、蒸発圧力がP3の高温高圧となる。この蒸発圧力P3がこの廃熱利用装置において予め定められた設定蒸発圧力に相当する。一方、図1に示すように、第1通路23eを流通する加圧空気は、第2通路23fを流通する作動流体に対して放熱を行うため、一定程度冷却された状態でエンジン5に至ることとなる。
【0053】
そして、加圧空気ボイラ23によって加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口23dから流出し、配管28、29を経て膨張機25の流入口25aから膨張機25内へ至る。そして、その作動流体は膨張機25内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機25に接続された発電機は発電を行う。この際、図2に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Cから状態Dに移行し、凝縮圧力がP1の高温低圧となる。
【0054】
図1に示すように、膨張機25内で減圧された作動流体は流出口25bから流出し、配管30を経て凝縮器27の流入口27aから凝縮器27内へ至る。凝縮器27の作動流体は、凝縮器27の周りの空気に放熱を行い、冷却される。この際、制御装置11aは電動ファン27cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させて液化させる。この際、図2に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Dから状態Aに移行する。そして、図1に示すように、冷却された作動流体は流出口27bから流出し、配管31を経て再びポンプ20aに至ることとなる。
【0055】
このように作動流体が状態A→B→C→D→Aに移行する運転状態においては、図2に示すように、状態Bから状態Cに移行する間、顕熱領域が長く、潜熱領域が短い。このため、作動流体は、図3に示すように、温度T1から線図L1を経て約75°C程度まで昇温することとなる。このため、約150°Cの加圧空気は線図L2を経てT3まで冷却されることとなる。このように、作動流体の蒸発圧力が高くなることから、ランキンサイクル3aにおいて回収可能なエネルギーの量は大きく、廃熱利用装置が高性能を発揮する。
【0056】
一方、エンジン5に対する出力要求が所定値を超えた場合、すなわち、検知したアクセル開度が所定値を超えた場合、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断する。エンジン5の出力を高めるためにはより多くの加圧空気をエンジン5に供給する必要があり、そのためには加圧空気をより冷却してその密度を高くすることが必要であるからである。これにより、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えた場合に応じた流量調整弁35の制御を行う。具体的には、図1に示すように、配管28とバイパス路33とが連通され、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とが調整される。
【0057】
これにより、加圧空気ボイラ23を経た作動流体は、一部がパイパス路33に流入する。そして、このバイパス路33の作動流体は、膨張機25を迂回し、配管30から凝縮器27に至る。この際、図2に示すように、作動流体は状態A→E→F→D’→Aに移行する運転状態となる。この運転状態の蒸発圧力はP3(設定蒸発圧力)よりも低いP2である。これにより、ランキンサイクル3aでは、設定蒸発圧力P3でランキンサイクル3aが作動している場合に比べて顕熱領域が減り、潜熱領域が増える。このため、加圧空気ボイラ23において、作動流体と加圧空気との熱交換が進んでも、潜熱領域では作動流体の温度は上がらず、作動流体が加圧空気からより多くの熱を奪うことが可能になる。このため、加圧空気をより冷却することができる。
【0058】
すなわち、作動流体は、図3に示すように、温度T1から線図L3を経て約50°C程度までしか昇温しないこととなる。このため、約150°Cの加圧空気は線図L4を経てT3よりも低いT2まで冷却されることとなる。このため、エンジン5に対し、より多くの加圧空気を供給することが可能となる。なお、この場合、作動流体の蒸発圧力が下がっていることから、膨張機25が回収する圧力エネルギーは小さくなる。
【0059】
また、この廃熱利用装置では、加圧空気ボイラ23が加圧空気に対するインタークーラとして機能するため、専用のインタークーラを別途設ける必要がなく、小型化されているとともに、廃熱利用装置の構造が簡素化している。
【0060】
さらに、この廃熱利用装置では、エンジン5に対する出力要求に基づくことで、制御装置11aは加圧空気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0061】
したがって、実施例1の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上を図りつつ、駆動系1aによる出力要求に対してより対応可能であり、かつエンジン5の出力の向上と車両等への搭載性と製造コストの低廉化とを実現可能である。
【0062】
(実施例2)
実施例2の廃熱利用装置は、図4に示すように、実施例1におけるポンプ20aに替えて、電動モータMによって駆動されるポンプ20bを採用している。電動モータMは制御装置11aによって変速可能に構成されている。つまり、制御装置11a及び電動モータMのうち、ポンプ20bの回転数を変速する部分が変速手段である。また、加圧空気ボイラ23と膨張機25とは配管34によって接続されており、実施例1のような流量調整弁35及びバイパス路33を有していない。他の構成は実施例1と同様である。
【0063】
この廃熱利用装置では、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合に、制御装置11a及び電動モータMによってポンプ20bの回転数を下げる。これによってポンプ20bが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20bが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3aの蒸発圧力を下げることができる。
【0064】
したがって、実施例2の廃熱利用装置によっても実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(実施例3)
実施例3の廃熱利用装置は、図5に示すように、実施例2におけるポンプ20bに替えて、吐出容量を変更可能なポンプ20cを採用している。ポンプ20cは制御装置11によって制御されるようになっている。つまり、制御装置11及びポンプ20cのうち、ポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を変更する部分が容量制御手段である。他の構成は実施例2と同様である。
【0066】
この廃熱利用装置では、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合に、制御装置11及びポンプ20cによってポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を小さくする。これによってポンプ20cが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20cが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3aの蒸発圧力を下げることができる。
【0067】
したがって、実施例3の廃熱利用装置によっても実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
(実施例4)
実施例4の廃熱利用装置も車両に搭載され、図6に示すように、車両の駆動系1bに用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3bと、第1温度センサ37aと、バイパス路33と、流量調整弁35と、制御装置11bとを備えている。実施例1の廃熱利用装置と同様、バイパス路33及び流量調整弁35が蒸発圧力低下手段に相当している。また、制御装置11bが判断手段及び制御手段に相当している。
【0069】
駆動系1bは、内燃機関としてのエンジン2と、排気路としての配管8と、排気還流路としての配管9a、9bと、空気導入路としての配管12と、冷却液路としての配管4a、4bと、ラジエータ6と、冷却液ポンプ10とを有している。また、配管9aには、可変バルブ17が設けられている。
【0070】
エンジン2は、公知の水冷式ディーゼルエンジンである。エンジン2には、排気を排出する排気口2aと、後述する混合空気を吸入する吸気口2bとが形成されている。また、このエンジン2の内部には冷却液としてのLLC(ロングライフクーラント)が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン2には、このウォータジャケットとそれぞれ連通する流出口2cと流入口2dとが形成されている。
【0071】
ラジエータ6には、その内部に冷却液を流入させる流入口6aと、冷却液を流出させる流出口6bとが形成されている。ラジエータ6は、その内部を流通する冷却液と車外の空気との間で熱交換を行う。さらに、ラジエータ6の近傍には、電動ファン6cが設けられている。この電動ファン6cは、制御装置11bと電気的に接続されている。
【0072】
配管8は、一端側が排気口2aと接続されており、他端側が図示しないマフラと接続されている。これにより、配管8は、エンジン2で生じた排気をその内部に流通させることでマフラに導くことが可能となっている。
【0073】
配管9aは一端側が配管8と接続されており、他端側が後述する還流排気ボイラ21の第1流入口21aと接続されている。また、配管9bは、一端側が還流排気ボイラ21の第1流出口21bと接続されており、他端側がエンジン2の吸気口2bと接続されている。
【0074】
配管12は、一端側が配管9bと接続されており、他端側が図示しない車両のエアインテークと接続されている。これにより、配管12は、車外の空気をその内部に流通させることで配管9b(排気還流路)に導くことが可能となっている。そして、排気還流路である配管9a、9bは、配管8を流通する排気の一部をその内部に流通させることで、還流排気(吸気系流体)と空気との混合空気としてエンジン2に還流させることが可能となっている。
【0075】
可変バルブ17は、配管9aに設けられている。可変バルブ17は制御装置11bと電気的に接続されている。この可変バルブ17は、その開度を調整することにより配管8から配管9aに流入する排気の流量を調整可能である。なお、この可変バルブ17には公用品が採用されている。
【0076】
第1温度センサ37aは、配管9bに設けられている。第1温度センサ37aは制御装置11bと電気的に接続されている。この第1温度センサ37aは、第1温度検出手段として機能し、還流排気ボイラ21の第1流出口21bを流出し、配管9bを流通する還流排気の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11bに向けて発信する。なお、第1温度センサ37aには公用品が採用されている。
【0077】
配管4aは一端側がエンジン2の流出口2cと接続されており、他端側がラジエータ6の流入口6bと接続されている。また、配管4bは一端側がラジエータ6の流出口6aと接続されており、他端側がエンジン2の流入口2dと接続されている。
【0078】
冷却液ポンプ10にはポンプ20aと同様の電動式ポンプが採用されている。この冷却水ポンプ10は配管4aに設けられている。また、冷却液ポンプ10は制御装置11bと電気的に接続されている。なお、冷却液ポンプ10は配管4bに設けられても良い。
【0079】
ランキンサイクル3bは、ポンプ20aと、還流排気ボイラ21と、膨張機25と、凝縮器27と、配管26と、配管28〜31とを有している。このランキンサイクル3bは、バイパス路33及び流量調整弁35が一体に組み付けられている。
【0080】
還流排気ボイラ21には、第1流入口21a及び第1流出口21bと、第2流入口21c及び第2流出口21dとが形成されている。また、還流排気ボイラ21内には、両端側でそれぞれ第1流入口21a及び第1流出口21bと連通する第1通路21eと、両端側でそれぞれ第2流入口21c及び第2流出口21dと連通する第2通路21fとが設けられている。この還流排気ボイラ21では、第1通路21e内の還流排気と、第2通路21f内の作動流体との熱交換により、還流排気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0081】
ポンプ20aと還流排気ボイラ21の第2流入口21cとは配管26によって接続されている。還流排気ボイラ21の第2流出口21bと流量調整弁35とは配管28によって接続されている。このランキンサイクル3bの他の構成は実施例1の廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aと同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。これにより、このランキンサイクル3bでは、ポンプ20aを作動させることにより、還流排気ボイラ21及び膨張機25を経て凝縮器27に至る順で配管26及び配管28〜31内の作動流体が一定の流量で循環する。この際、作動流体は、流量調整弁35によって膨張機25に流入する流量とバイパス路33に流入する流量とが調整される。
【0082】
制御装置11bは、電動ファン6c、27cの作動制御を行うことで、冷却液や作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。また、制御装置11bは、可変バルブ17の開閉制御と、冷却液ポンプ10及びポンプ20aの各作動制御とを行う。さらに、制御装置11bは、第1温度センサ37aが検出した還流排気の温度に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11bは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35を調整する。
【0083】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0084】
車両が駆動されることにより、駆動系1bではエンジン2が作動する。これにより、排気口2aから排出された排気が配管8を経てマフラから車外に排出される(同図の破線矢印参照)。この際、制御装置11bが可変バルブ17の開度を調整することで、配管8を流通する排気の一部が配管9aに流入する。配管9aに流入した排気は還流排気として、第1流入口21aから還流排気ボイラ21内に流入し、第1通路21e内を流通して、第1流出口21bから配管9bに至る。配管9bを流通する還流排気は、配管12を経た車外の空気と混合され、混合空気として吸気口2bよりエンジン2内に還流する。
【0085】
また、制御装置11bは、冷却液ポンプ10及び電動ファン6cを作動させる。これにより、エンジン2の流出口2cから流出した冷却液が配管4aを流通し、流入口6bからラジエータ6内に流入する。ラジエータ6内において車外の空気と熱交換を行うことで冷却された冷却液は、流出口6cから流出して配管4bを流通し、流入口2dからエンジン2内に流入する(同図の一点鎖線矢印参照)。これにより、エンジン2の冷却が行われる。
【0086】
一方、ランキンサイクル3bでは、制御装置11bがポンプ20a及び電動ファン27cをそれぞれ作動させる。また、上記の第1温度センサ37aから発信された検出値に基づき、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量を判断する。ここで、第1温度センサ37aから発信された検出値が小さい場合には、還流排気ボイラ21における熱交換において還流排気が十分に冷却されているといえる。このため、制御装置11bは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい、すなわち、還流排気に対する冷却要求量が小さいと判断し、それに応じた流量調整弁35の調整を行う。具体的には、流量調整弁35により配管28と配管29とが連通され、配管28、29とバイパス路33とが非連通とされる。
【0087】
この場合、まず、ポンプ20aによって配管31内の作動流体が配管26内に吐出される。この際、図7に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Aから状態Gに移行し、高圧となる。次いで、図6に示すように、作動流体は配管26を経て還流排気ボイラ21において還流排気との熱交換が行われる。この際、第1通路21eを流通する還流排気は約500°C程度の熱を有しているため、第2通路21fを流通する作動流体は、一定程度の温度に加熱される。これにより、図7に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Gから状態Hに移行し、蒸発圧力がP5の高温高圧となる。この蒸発圧力P5がこの廃熱利用装置において予め定められた設定蒸発圧力に相当する。一方、図6に示すように、第1通路21eを流通する還流排気は、第2通路23fを流通する作動流体に対して放熱を行うため、一定程度冷却された状態でエンジン2に至ることとなる。
【0088】
そして、還流排気ボイラ21によって加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口21dから流出し、配管28、29を経て膨張機25の流入口25aから膨張機25内へ至る。そして、その作動流体は膨張機25内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機25に接続された発電機は発電を行う。ここで、図7に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Hから状態Dに移行し、凝縮圧力がP1の高温低圧となる。
【0089】
図1に示すように、膨張機25内で減圧された作動流体は、実施例1のランキンサイクル3aと同様、凝縮器27において冷却される。この際、制御装置11bは電動ファン27cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させて液化させる。これにより、図7に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Dから状態Aに移行することとなる。
【0090】
このように作動流体が状態A→G→H→D→Aに移行する運転状態においては、状態Gから状態Hに移行する間、顕熱領域が長く、潜熱領域が短い。このため、作動流体は、図8に示すように、温度T1から線図L5を経て約120°C程度まで昇温することとなる。このため、約500°Cの還流排気は線図L6を経てT5まで冷却されることとなる。このように、作動流体の蒸発圧力が高くなることから、ランキンサイクル3bにおいて回収可能なエネルギーの量は大きく、廃熱利用装置が高性能を発揮する。
【0091】
一方、上記の第1温度センサ37aから発信された検出値が大きい場合には、還流排気ボイラ21での還流排気の冷却が足りていないこととなる。このため、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が大きい、すなわち、還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断する。これにより、制御装置11bは、それに応じた流量調整弁35の制御を行う。具体的には、図6に示すように、配管28とバイパス路33とが連通され、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とが調整される。
【0092】
これにより、還流排気ボイラ21を経た作動流体は、一部がパイパス路33に流入する。そして、このバイパス路33の作動流体は、膨張機25を迂回し、配管30から凝縮器27に至る。これにより、図7に示すように、作動流体は状態A→I→J→D’→Aに移行する運転状態となる。この運転状態の蒸発圧力はP5(設定蒸発圧力)よりも低いP4である。これにより、ランキンサイクル3bでは、設定蒸発圧力P5でランキンサイクル3bが作動している場合に比べて顕熱領域が減り、潜熱領域が増える。このため、還流排気ボイラ21において、作動流体と還流排気との熱交換が進んでも、潜熱領域では作動流体の温度は上がらず、作動流体が還流排気からより多くの熱を奪うことが可能になる。このため、還流排気をより冷却することができる。
【0093】
すなわち、作動流体は、図3に示すように、温度T1から線図L7を経て約110°C程度までしか昇温しないこととなる。このため、約500°Cの還流排気は線図L8を経てT5よりも低いT4まで冷却されることとなる。このため、エンジン2に対し、還流排気の割合が多い混合空気を還流させることが可能、すなわち、より多くの還流排気を還流させることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、エンジン2の出力が向上する他、マフラから車外に放出される排気中における窒素酸化物の含有量が低減する。なお、実施例1の廃熱利用装置と同様に、この場合、蒸発圧力が下がっていることから、膨張機25が回収する圧力エネルギーは小さくなる。
【0094】
さらに、この廃熱利用装置では、第1温度センサ37aが検出した還流排気の温度に基づくことで、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0095】
したがって、実施例4の廃熱利用装置によっても、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能である。
【0096】
また、この廃熱利用装置では、還流排気ボイラ21における還流排気の冷却能力が不足することがないため、複数の還流排気ボイラ21を設けたり、別途に還流排気専用の冷却装置等を設けたりする必要がない。このため、この廃熱利用装置は、小型化されているとともに、構造が簡素化されており、車両への搭載性が高くなっている。
【0097】
(実施例5)
実施例5の廃熱利用装置は、図9に示すように、実施例4におけるポンプ20aに替えて、電動モータMによって駆動されるポンプ20bを採用している。電動モータMは制御装置11bによって変速可能に構成されている。つまり、制御装置11b及び電動モータMのうち、ポンプ20bの回転数を変速する部分が変速手段である。また、実施例2の廃熱利用装置と同様、この廃熱利用装置におけるランキンサイクル3bにおいても、還流排気ボイラ21と膨張機25とは配管34によって接続されており、実施例1、4のような流量調整弁35及びバイパス路33を有していない。他の構成は実施例4と同様である。
【0098】
この廃熱利用装置では、第1温度センサ37aから発信された検出値に基づき、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11b及び電動モータMによってポンプ20bの回転数を下げ、これによってポンプ20bが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20bが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0099】
したがって、実施例5の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(実施例6)
実施例6の廃熱利用装置は、図10に示すように、実施例5におけるポンプ20bに替えて、吐出容量を変更可能なポンプ20cを採用している。ポンプ20cは制御装置11bによって制御されるようになっている。つまり、制御装置11及びポンプ20cのうち、ポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を変更する部分が容量制御手段である。他の構成は実施例5と同様である。
【0101】
この廃熱利用装置では、第1温度センサ37aから発信された検出値に基づき、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11b及びポンプ20cによってポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を小さくし、これによってポンプ20cが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20cが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0102】
したがって、実施例6の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0103】
(実施例7)
実施例7の廃熱利用装置では、実施例4の廃熱利用装置における制御装置11b及び第1温度センサ37aに替えて、図11に示す制御装置11c及び第2温度センサ37bが設けられている。
【0104】
第2温度センサ37bは、配管26に設けられている。第2温度センサ37bは制御装置11cと電気的に接続されている。この第2温度センサ37bは、第2温度検出手段として機能し、配管26を流通する作動流体の温度、すなわち、還流排気ボイラ21の第2流入口21cに流入する前の作動流体の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11cに向けて発信する。なお、第2温度センサ37bには第1温度センサ37aと同様の公用品が採用されている。
【0105】
制御装置11cは、第2温度センサ37bが検出した作動流体の温度に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。すなわち、作動流体の温度が所定値よりも高い場合には、還流排気ボイラ21での還流排気の冷却能力が低くなることから、相対的に還流排気の冷却要求量は大きくなる。そして、制御装置11cは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35の作動制御を行う。つまり、制御装置11cも判断手段及び制御手段に相当する。他の構成は実施例4と同様である。
【0106】
この廃熱利用装置では、第2温度センサ37bから発信された検出値が小さい場合には、制御装置11cは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい(還流排気に対する冷却要求量が小さい)と判断する。この場合、制御装置11cは実施例4と同様、配管28、29とバイパス路33とが非連通となるように流量調整弁35を制御する。
【0107】
一方、第2温度センサ37bから発信された検出値が大きい場合、つまり、還流排気ボイラ21に流入する前の作動流体の温度が高い場合には、制御装置11cは、還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。そして、第2温度センサ37bの検出値に基づき、制御装置11cが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11cは、配管28、29とバイパス路33とが連通するように流量調整弁35を制御する。これにより、この廃熱利用装置においてもランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0108】
また、この廃熱利用装置では、第2温度センサ37bが検出した作動流体の温度に基づくことで、制御装置11cは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0109】
したがって、実施例7の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
(実施例8)
実施例8の廃熱利用装置では、実施例4の廃熱利用装置における制御装置11b及び第1温度センサ37aに替えて、図12に示す制御装置11d及び第3温度センサ37cが設けられている。
【0111】
第3温度センサ37cは、配管31に設けられている。第3温度センサ37cは制御装置11dと電気的に接続されている。この第3温度センサ37cは、第3温度検出手段として機能し、配管31を流通する作動流体の温度、すなわち、ポンプ20aに流入する前の作動流体の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11dに向けて発信する。なお、第3温度センサ37cも第1温度センサ37aと同様の公用品が採用されている。
【0112】
制御装置11dは、第3温度センサ37cが検出した作動流体の温度に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11dは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35の作動制御を行う。つまり、制御装置11dも判断手段及び制御手段に相当する。他の構成は実施例4と同様である。
【0113】
この廃熱利用装置では、第3温度センサ37cから発信された検出値が小さい場合には、制御装置11dは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい(還流排気に対する冷却要求量が小さい)と判断する。この場合、制御装置11cは実施例4と同様、配管28、29とバイパス路33とが非連通となるように流量調整弁35を制御する。
【0114】
一方、第3温度センサ37cから発信された検出値が大きい場合、つまり、ポンプ20aに流入する作動流体の温度が高い場合には、制御装置11cは、還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。ポンプ20aに流入する作動流体の温度が高い場合には、還流排気ボイラ21において作動流体が高温に加熱されており、熱源である還流排気が高温になっていると判断できるためである。そして、第3温度センサ37cの検出値に基づき、制御装置11dが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11dは、配管28、29とバイパス路33とが連通するように流量調整弁35を制御する。これにより、この廃熱利用装置においてもランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0115】
また、この廃熱利用装置では、第3温度センサ37cが検出した作動流体の温度に基づくことで、制御装置11dは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0116】
したがって、実施例8の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0117】
(実施例9)
実施例9の廃熱利用装置では、実施例4の廃熱利用装置における制御装置11b及び第1温度センサ37aに替えて、図13に示す制御装置11e及び圧力センサ37dが設けられている。
【0118】
圧力センサ37dは配管31に設けられている。圧力センサ37dは制御装置11eと電気的に接続されている。この圧力センサ37dは、圧力検出手段として機能し、配管31流通する作動流体の圧力、すなわち、膨張機25の下流からポンプ20aの上流までの作動流体の圧力(凝縮圧力)を検出するとともに、その検出値を制御装置11eに向けて発信する。なお、この圧力センサ37dも公用品が採用されている。
【0119】
制御装置11eは、圧力センサ37dが検出した作動流体の凝縮圧力に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11e、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35の作動制御を行う。つまり、制御装置11eも判断手段及び制御手段に相当する。他の構成は実施例4と同様である。
【0120】
この廃熱利用装置では、圧力センサ37dから発信された検出値が小さい場合には、制御装置11dは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい(還流排気に対する冷却要求量が小さい)と判断する。圧力センサ37dから発信された検出値(凝縮圧力)が小さい場合には、配管31を流通する作動流体の温度が低いと判断でき、排気ボイラ21における熱源である還流排気の温度が高くないと判断できるためである。この場合、制御装置11eは実施例4と同様、配管28、29とバイパス路33とが非連通となるように流量調整弁35を制御する。
【0121】
一方、圧力センサ37dから発信された検出値が大きい場合、つまり、膨張機25の下流からポンプ20aの上流までの作動流体の凝縮圧力が高い場合には、制御装置11eは、還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。凝縮器27を経ても配管31を流通する作動流体の凝縮圧力が高い場合には、還流排気ボイラ21において作動流体が高温に加熱されている、つまり、還流排気が高温になっていると判断できるためである。そして、圧力センサ37dの検出値に基づき、制御装置11eが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11eは、配管28、29とバイパス路33とが連通するように流量調整弁35を制御する。これにより、この廃熱利用装置においてもランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0122】
また、この廃熱利用装置では、圧力センサ37dが検出した作動流体の凝縮圧力に基づくことで、制御装置11eは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0123】
したがって、実施例9の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0124】
以上において、本発明を実施例1〜9に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜9に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0125】
例えば、実施例1〜3の廃熱利用装置において、第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dを設けるとともに、制御装置11aはこれらの第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dの検出値を基に、加圧空気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。実施例5、6の廃熱利用装置においても同様に、第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dの検出値を基に、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。
【0126】
また、実施例4〜6の廃熱利用装置における制御装置11bについて、車両のアクセル開度を検知可能であるとともに、このアクセル開度に基づき、エンジン2に対する出力要求を検出可能とし、このエンジン2に対する出力要求に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。
【0127】
さらに、実施例1〜9の廃熱利用装置における制御装置11a〜11eについて、車速を検知し、この車速に基づいて加圧空気や還流排気に対する冷却要求量を判断する構成しても良い。ここで、車速が一定速度を超えていれば、凝縮器27において作動流体が好適に放熱されることとなる。これにより、配管31を流通する作動流体の温度が低下する。換言すれば、配管31を流通する作動流体の凝縮圧力が低くなる。この場合、加圧空気ボイラ23において加圧空気を好適に冷却することが可能となり、同様に、還流排気ボイラ21において還流排気を好適に冷却することが可能となる。このため、制御装置11a〜11eは、加圧空気又は還流排気に対する冷却要求が小さいと判断することが可能となる。一方、車速が一定速度よりも遅ければ、凝縮器27における作動流体の冷却能力が低下することから、配管31を流通する作動流体の温度(凝縮圧力)が高くなる。この場合には、加圧空気ボイラ23において加圧空気を十分に冷却することができなくなり、同様に、還流排気ボイラ21において還流排気を十分に冷却することができなくなる。このため、制御装置11a〜11eは、加圧空気や還流排気に対する冷却要求が大きいと判断することが可能となる。
【0128】
また、実施例1〜9の廃熱利用装置において、加圧空気ボイラ23に流入する前の加圧空気の温度や還流排気ボイラ21に流入する前の還流排気の温度を検出可能な検出手段(温度センサ等)を設けるとともに、制御装置11a〜11eは、これらの加圧空気や還流排気の温度を基に、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。この場合、加圧空気ボイラ23に流入する前の加圧空気の温度や還流排気ボイラ21に流入する前の還流排気の温度が高ければ、加圧空気ボイラ23から流出する加圧空気の温度や還流排気ボイラ21から流出する還流排気の温度も高くなる。このため、制御装置11a〜11eは、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断することができる。
【0129】
また、実施例1〜9の廃熱利用装置における制御装置11a〜11eについて、エンジン2、5に対する出力要求、第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dの各検出値、車速、加圧空気ボイラ23に流入する前の加圧空気の温度や還流排気ボイラ21に流入する前の還流排気の温度等をそれぞれ組み合わせることで、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。
【0130】
また、実施例1〜9の各構成を組み合わせた廃熱利用装置とすることも可能である。また、膨張機25の回転数を制御したり、1回転数当たりの容量を変更可能な膨張機を採用したりすることも可能である。
【0131】
さらに、実施例1、4、7〜9の廃熱利用装置において、流量制御弁35に替えて、配管28に対してバイパス路33及び配管29を選択的に連通可能な三方弁としてもよい。この場合は、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたときに配管28とバイパス流路33を連通させ、配管28と配管29とを非連通とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は車両等に利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1a、1b…駆動系
2…エンジン(内燃機関)
3a、3b…ランキンサイクル
5…エンジン(内燃機関)
7…ターボチャージャ(過給器)
9a、9b…配管(排気還流路)
11a、11c、11d、11e…制御装置(判断手段、制御手段)
11b…制御装置(判断手段、出力要求検出手段、制御手段)
20a〜20c…ポンプ
21…還流排気ボイラ
23…加圧空気ボイラ
25…膨張機
27…凝縮器
26〜32、34…配管
33…バイパス路(蒸発圧力低下手段)
35…流量調整弁(蒸発圧力低下手段)
37a…第1温度センサ(第1温度検出手段)
37b…第2温度センサ(第2温度検出手段)
37c…第3温度センサ(第3温度検出手段)
37d…圧力センサ(圧力検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に従来の廃熱利用装置が開示されている。特許文献1の廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、エンジンで生じた排気の一部を吸気系流体である還流排気としてエンジンに還流させる排気還流路とを有している。ランキンサイクルは、ポンプと還流排気ボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。還流排気ボイラは、還流排気と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。配管は、ポンプ、還流排気ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0003】
また、特許文献2の廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、過給器としてのターボチャージャとを有している。このターボチャージャは、エンジンに対して吸気系流体である加圧空気を供給する。ランキンサイクルは、ポンプと冷却水ボイラと加圧空気ボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。冷却水ボイラは、エンジンの冷却水と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。加圧空気ボイラは、加圧空気と作動流体との間で熱交換を行うことで作動流体を加熱する。配管は、ポンプ、冷却水ボイラ、加圧空気ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0004】
これらの廃熱利用装置では、吸気系流体としての還流排気や加圧空気が高温となることから、還流排気ボイラや加圧空気ボイラによって作動流体を好適に加熱することが可能である。このため、ランキンサイクルにおいて回収可能なエネルギーの量が大きくなり、廃熱利用装置が高性能となる。
【0005】
また、これら廃熱利用装置では、還流排気ボイラや加圧空気ボイラにおける熱交換によって還流排気や加圧空気を冷却することが可能となる。このため、密度を大きくした状態で内燃機関に還流排気や加圧空気を供給することが可能となる。このように、これらの廃熱利用装置では、加圧空気を冷却することでエンジンの出力を向上させることが可能である他、還流排気を冷却することで最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−239513号公報
【特許文献2】特開2008−8224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の廃熱利用装置は、ランキンサイクルがモリエル線図上で一定の運転状態を繰り返すに過ぎない。このため、還流排気ボイラから流出した還流排気や加圧空気ボイラから流出した加圧空気の温度が閾値を超えて高く、これらに対する冷却要求量が大きい場合であっても、還流排気ボイラや加圧空気ボイラにおいて、還流排気や加圧空気を十分に冷却することができない。このため、これらの廃熱利用装置では、加圧空気の冷却が不足して内燃機関の出力等を十分に高くすることができなかったり、還流排気の冷却が不足して排気中の窒素酸化物含有量を低減させることができなかったりする。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能な廃熱利用装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の廃熱利用装置は、内燃機関を有する駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備え、
該ランキンサイクルは、ポンプと、該内燃機関に対して冷却されつつ吸気される吸気系流体との間で熱交換を行うボイラと、膨張機と、凝縮器と、該ポンプ、該ボイラ、該膨張機及び該凝縮器の順で前記作動流体を循環させる配管とを有する廃熱利用装置において、
前記吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、
前記ランキンサイクルの蒸発圧力を下げる蒸発圧力低下手段と、
該判断手段が判断した該冷却要求量が閾値を超えた場合には、予め定められた設定蒸発圧力より低くなるように該蒸発圧力低下手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする廃熱利用装置。(請求項1)。
【0010】
本発明の廃熱利用装置はランキンサイクルを備えている。このランキンサイクルは、駆動系に用いられ、作動流体を循環させる。駆動系は、内燃機関を有している。一方、ランキンサイクルは、ポンプとボイラと膨張機と凝縮器と配管とを有している。ボイラは、吸気系流体と作動流体との間で熱交換を行う。また、配管は、ポンプ、ボイラ、膨張機及び凝縮器の順で作動流体を循環させる。
【0011】
吸気系流体とは、内燃機関に対して冷却されつつ吸気されることが求められる流体を指す。このように、冷却によって吸気系流体の密度を大きくし、その状態で内燃機関に吸気させることで、内燃機関では出力等が向上し、内燃機関の性能が向上することとなる。
【0012】
この廃熱利用装置では、ボイラで作動流体を好適に加熱することが可能となり、作動流体の圧力エネルギーが大きくなる。このため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルで回収可能なエネルギーの量を大きくすることが可能となる。この回収可能なエネルギーとしては、例えば、圧力エネルギーを基に発電した電力や内燃機関に回生される動力等が挙げられる。また、この廃熱利用装置では、ボイラでの冷却により、吸気系流体の密度を大きさせつつ内燃機関に吸気させることが可能となる。
【0013】
さらに、この廃熱利用装置は、吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、ランキンサイクルの蒸発圧力を下げる蒸発圧力低下手段と、制御手段とを備えている。そして、制御手段は、判断手段が判断した冷却要求量が閾値を超えた場合に、蒸発圧力が予め定められた設定蒸発圧力より低くなるように蒸発圧力低下手段を制御する。このため、この廃熱利用装置では、吸気系流体の温度が閾値を超え、より一層の吸気系流体の冷却が求められる状態において、蒸発圧力低下手段がランキンサイクルの蒸発圧力を下げる。
【0014】
本発明において、ランキンサイクルの蒸発圧力とは、ポンプの下流から膨張機の上流までの作動流体の圧力を指す。また、設定蒸発圧力とは、ボイラから流出する吸気系流体の温度が閾値を超えておらず、ランキンサイクルが通常動作する場合の蒸発圧力を指す。ここで、蒸発圧力を下げることにより、ランキンサイクルは、設定蒸発圧力で作動している場合に比べて、モリエル線図上で顕熱領域が減り、潜熱領域が増えた運転状態になる。このため、ボイラにおいて、吸気系流体と作動流体との熱交換が進んでも、潜熱領域では作動流体の温度は上がらず、作動流体が吸気系流体からより多くの熱を奪うことが可能になる。このため、吸気系流体をより冷却することができる。この場合、吸気系流体の密度が大きくなった状態で内燃機関に還流されることから、上記のように、内燃機関では出力が向上する他、排気中における窒素酸化物の含有量が低減する。なお、蒸発圧力が下がれば、膨張機が回収する圧力エネルギーは小さくなる。
【0015】
したがって、本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能である。
【0016】
蒸発圧力低下手段は、ボイラの下流で配管から分岐し、膨張機を迂回して配管に合流するバイパス路と、制御手段によって制御され、膨張機に流入する作動流体の流量とバイパス路に流入する作動流体の流量とを調整可能な流量調整弁とを有していることが好ましい(請求項2)。
【0017】
この場合、膨張機に流入する作動流体の流量を減らし、バイパス路に流入する作動流体の流量を多くすることによって、ランキンサイクルの蒸発圧力を下げることができる。両者の流量を調整することによって、ランキンサイクルの蒸発圧力を任意に定めることができる。
【0018】
また、蒸発圧力低下手段は、制御手段によって制御され、膨張機に流入する作動流体の流量と、ポンプが吐出する作動流体の流量との比を変更する流量比変更手段であることも好ましい(請求項3)。
【0019】
この場合、流量比変更手段により、ポンプが吐出する作動流体の流量を膨張機に流入する流量に比べて少なくすれば、ランキンサイクルの蒸発圧力を下げることができる。両者の流量比を調整することによって、ランキンサイクルの蒸発圧力を任意に定めることができる。
【0020】
流量比変更手段は、ポンプ及び膨張機の少なくとも一方の回転数を変更可能な変速手段であることができる(請求項4)。例えば、変速手段によってポンプの回転数を下げることにより、ポンプが吐出する作動流体の流量を膨張機に流入する流量に比べて少なくすることができる。また、膨張機の回転数を上げることによっても蒸発圧力を下げることができる。
【0021】
また、流量比変更手段は、ポンプ及び膨張機の少なくとも一方の単位回転数当たりの容量を変更可能な容量制御手段であることができる(請求項5)。例えば、容量制御手段によってポンプの単位回転数当たりの吐出容量を小さくし、これによってポンプが吐出する作動流体の流量を膨張機に流入する流量に比べて少なくすることができる。また、膨張機の単位回転数当たりの吸入容積を大きくすることによっても蒸発圧力を下げることができる。
【0022】
本発明の廃熱利用装置において、判断手段は、種々の手段によって吸気系流体に対する冷却要求量を判断することが可能である。例えば、本発明の廃熱利用装置は、内燃機関に対する出力要求を検出可能な出力要求検出手段を備え得る。そして、判断手段は、出力要求検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することが好ましい(請求項6)。
【0023】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラから流出する吸気系流体の温度を検出可能な第1温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第1温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項7)。
【0024】
また、本発明の廃熱利用装置は、ボイラに流入する作動流体の温度を検出可能な第2温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第2温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項8)。
【0025】
また、本発明の廃熱利用装置は、ポンプに流入する作動流体の温度を検出可能な第3温度検出手段を備え得る。そして、判断手段は、第3温度検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項9)。
【0026】
また、本発明の廃熱利用装置は、膨張機の下流からポンプの上流までの作動流体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え得る。そして、判断手段は、圧力検出手段が検出した検出値に基づき、吸気系流体に対する冷却要求量を判断することも好ましい(請求項10)。
【0027】
これらのように、内燃機関に対する出力要求の他、ボイラから流出する吸気系流体の温度、ボイラ又はポンプに流入する作動流体の温度、膨張機の下流からポンプの上流までの作動流体の圧力(凝縮圧力)に基づくことで、判断手段は吸気系流体に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となる。このため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、内燃機関の性能向上とをより好適に両立することが可能となる。
【0028】
駆動系が有する内燃機関としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の他、種々の形式のエンジンを採用することができる。また、これらのエンジンはモータを組み合わせたハイブリッドエンジンでも良い。さらに、これらのエンジンは空冷式でも水冷式でも良い。なお、内燃機関は複数であっても良い。
【0029】
また、駆動系は、内燃機関に対して吸気系流体である加圧空気を供給する過給器を有し得る。そして、ボイラは、加圧空気と作動流体との間で熱交換を行う加圧空気ボイラであり得る(請求項11)。
【0030】
この場合、過給器によって内燃機関に加圧空気が供給されることで、内燃機関の出力が向上する。ここで、加圧空気は、冷却によりその密度が増大させつつ内燃機関に吸気されることが求められることから吸気系流体に該当する。この廃熱利用装置では、加圧空気ボイラにおいて作動流体と熱交換を行うことで、加圧空気を冷却し、その密度を高くすることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、内燃機関に対してより多くの加圧空気を供給可能となり、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。この過給器としては、ターボチャージャやスーパーチャージャ等を採用することができる。なお、過給器は複数であっても良い。
【0031】
また、駆動系は、内燃機関で生じた排気の一部を吸気系流体である還流排気として内燃機関に還流させる排気還流路を有し得る。そして、ボイラは、還流排気と作動流体との間で熱交換を行う還流排気ボイラであり得る(請求項12)。
【0032】
この場合、排気還流路により、排気の一部が内燃機関に吸気(還流)されることで、内燃機関の出力が向上する他、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となる。ここで、還流排気も冷却によりその密度を増大させつつ内燃機関に還流されることが求められることから吸気系流体に該当する。そして、この廃熱利用装置では、還流排気ボイラにおいて作動流体と熱交換を行うことで、還流排気を冷却し、その密度を高くすることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、内燃機関に対して好適に還流排気を還流させることが可能となり、内燃機関の性能を高くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図2】実施例1〜3の廃熱利用装置の運転状態を示すモリエル線図である。
【図3】実施例1の廃熱利用装置に係り、作動流体及び加圧空気の温度を示す説明図である。
【図4】実施例2の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図5】実施例3の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図6】実施例4の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図7】実施例4〜9の廃熱利用装置の運転状態を示すモリエル線図である。
【図8】実施例4の廃熱利用装置に係り、作動流体及び還流排気の温度を示す説明図である。
【図9】実施例5の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図10】実施例6の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図11】実施例7の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図12】実施例8の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図13】実施例9の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した実施例1〜9を図面を参照しつつ説明する。
【0036】
(実施例1)
実施例1の廃熱利用装置は、車両に搭載され、図1に示すように、車両の駆動系1aに用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3aと、バイパス路33と、流量調整弁35と、制御装置11aとを備えている。バイパス路33及び流量調整弁35が蒸発圧力低下手段に相当し、制御装置11aが判断手段及び制御手段に相当する。
【0037】
駆動系1aは、内燃機関としてのエンジン5と、過給器としてのターボチャージャ7とを有している。エンジン5は、公知の水冷式ガソリンエンジンである。エンジン5の内部には冷却水が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン5には、排ガスを排出する排気口5cと、後述する加圧空気を吸入する吸気口5dとが形成されている。
【0038】
ターボチャージャ7は公用品が採用されている。ターボチャージャ7は、エンジン5から生じた排ガスによって作動され、エンジン5に対し、車外の空気を加圧した加圧空気(吸気系流体)を供給する。
【0039】
エンジン5とターボチャージャ7とは配管13〜15によって接続されている。また、配管14と配管15とには後述する加圧空気ボイラ23が接続されている。配管13は内部を排ガスが流通可能となっており、エンジン5の排気口5cとターボチャージャ7とに接続されている。一方、配管14及び配管15は内部を加圧空気が流通可能となっている。配管14はターボチャージャ7と加圧空気ボイラ23の第1流入口23aとに接続されている。配管15は加圧空気ボイラ23の第1流出口23bとエンジン5の吸気口5dとに接続されている。
【0040】
さらに、ターボチャージャ7には、配管16、17の各一端側が接続されている。配管16の他端側は、図示しないエアインテークと接続されている。配管17の他端側は図示しない車両のマフラに開口している。配管16は、ターボチャージャ7を介して配管14と連通している。同様に、配管17は、ターボチャージャ7を介して配管13と連通している。
【0041】
ランキンサイクル3aは、ポンプ20aと、加圧空気ボイラ23と、膨張機25と、凝縮器27と、配管28〜32とを有している。このランキンサイクル3aは、バイパス路33及び流量調整弁35が一体に組み付けられている。配管28〜32及びバイパス路33には、作動流体としての冷媒(HFC134a)が流通可能となっている。このポンプ20aには、速度及び吐出容量が予め一定に規定された電動式ポンプが採用されている。
【0042】
加圧空気ボイラ23には、第1流入口23a及び第1流出口23bと、第2流入口23c及び第2流出口23dとが形成されている。また、加圧空気ボイラ23内には、両端側でそれぞれ第1流入口23a及び第1流出口23bと連通する第1通路23eと、両端側でそれぞれ第2流入口23c及び第2流出口23dと連通する第2通路23fとが設けられている。この加圧空気ボイラ23では、第1通路23e内の加圧空気と、第2通路23f内の作動流体との熱交換により、加圧空気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0043】
膨張機25には、その内部に作動流体を流入させる流入口25aと、作動流体を流出させる流出口25bとが形成されている。膨張機25では、加圧空気ボイラ23を経て加熱された作動流体を膨張させることにより回転駆動力を発生させる。この膨張機25には図示しない公知の発電機が接続されている。発電機は膨張機25の駆動力によって発電を行い、図示しないバッテリに電力を充電する。
【0044】
凝縮器27には、その内部に作動流体を流入させる流入口27aと、作動流体を流出させる流出口27bとが形成されている。凝縮器27は、その内部を流通する作動流体と車外の空気との間で熱交換を行い、膨張機25での膨張によって気化された作動流体を冷却して液化させる。凝縮器27の近傍には電動ファン27cが設けられている。この電動ファン27cは制御装置11aに電気的に接続されている。
【0045】
これらのポンプ20a、加圧空気ボイラ23、膨張機25及び凝縮器27は配管28〜32によって接続されている。具体的には、ポンプ20aと加圧空気ボイラ23の第2流入口23cとは配管32によって接続されている。加圧空気ボイラ23の第2流出口23dと流量調整弁35とは配管28によって接続されている。流量調整弁35と膨張機25の流入口25aとは配管29によって接続されている。膨張機25の流出口25bと凝縮器27の流入口27aとは配管30によって接続されている。そして、凝縮器27の流出口27bとポンプ20aとが配管31によって接続されている。
【0046】
流量調整弁35は配管28と配管29との間に設けられている。また、バイパス路33の一端側は流量調整弁35と接続されており、その他端側は配管30と接続されている。バイパス路33は、その内部に作動流体を流通させることにより、作動流体に膨張機25を迂回させる。流量調整弁35は、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とを調整可能である。この流量調整弁35は制御装置11aに電気的に接続されている。
【0047】
このランキンサイクル3aでは、ポンプ20aを作動させることにより、配管32に向けて作動流体が一定の流量で吐出される。そして、この作動流体は加圧空気ボイラ23及び膨張機25を経て凝縮器27に至る順で配管28〜32内を循環する。この際、作動流体は、流量調整弁35によって膨張機25に流入する流量とバイパス路33に流入する流量とが調整される。
【0048】
制御装置11aは、電動ファン27cの作動制御を行うことで、作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。また、制御装置11aは、ポンプ20aの作動制御を行う。さらに、制御装置11aは、車両のECU等(図示略)から受信した信号によって車両のアクセル開度を検知可能に構成されており、このアクセル開度に基づき、エンジン5に対する出力要求を検出可能となっている。また、制御装置11aは、エンジン5に対する出力要求に基づいて、加圧空気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11aは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35を調整する。
【0049】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0050】
車両が駆動されることにより、駆動系1aではエンジン5が作動する。これにより、排気口5cから排出された排ガスが配管13、ターボチャージャ7及び配管17を経てマフラから車外に排出される(鎖線矢印参照)。この際、排ガスに依ってターボチャージャ7が作動される。これにより、車外の空気が配管16よりターボチャージャ7に吸引され、圧縮される。この空気は加圧空気として、配管14、加圧空気ボイラ23の第1通路23e及び配管15を経てエンジン5の吸気口5dよりエンジン5内へ吸入される(鎖線矢印参照)。
【0051】
一方、ランキンサイクル3aでは、制御装置11aが流量調整弁35の調整を行う。ここで、エンジン5に対する出力要求が所定値(検知したアクセル開度が所定値)以下の場合には、加圧空気に対する冷却要求量が閾値以下であると判断し、流量調整弁35を制御することにより、配管28と配管29とが連通され、配管28、29とバイパス路33とが非連通とされる。
【0052】
まず、ポンプ20aによって配管31内の作動流体が配管32内に吐出される。この際、図2に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Aから状態Bに移行し、高圧となる。次いで、図1に示すように、作動流体は配管32を経て加圧空気ボイラ23において加圧空気と熱交換される。この際、第1通路23eを流通する加圧空気はターボチャージャ7によって圧縮されることにより約150°C程度の熱を有しているため、第2通路23fを流通する作動流体は、一定程度の温度に加熱される。この際、図2に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Bから状態Cに移行し、蒸発圧力がP3の高温高圧となる。この蒸発圧力P3がこの廃熱利用装置において予め定められた設定蒸発圧力に相当する。一方、図1に示すように、第1通路23eを流通する加圧空気は、第2通路23fを流通する作動流体に対して放熱を行うため、一定程度冷却された状態でエンジン5に至ることとなる。
【0053】
そして、加圧空気ボイラ23によって加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口23dから流出し、配管28、29を経て膨張機25の流入口25aから膨張機25内へ至る。そして、その作動流体は膨張機25内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機25に接続された発電機は発電を行う。この際、図2に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Cから状態Dに移行し、凝縮圧力がP1の高温低圧となる。
【0054】
図1に示すように、膨張機25内で減圧された作動流体は流出口25bから流出し、配管30を経て凝縮器27の流入口27aから凝縮器27内へ至る。凝縮器27の作動流体は、凝縮器27の周りの空気に放熱を行い、冷却される。この際、制御装置11aは電動ファン27cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させて液化させる。この際、図2に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Dから状態Aに移行する。そして、図1に示すように、冷却された作動流体は流出口27bから流出し、配管31を経て再びポンプ20aに至ることとなる。
【0055】
このように作動流体が状態A→B→C→D→Aに移行する運転状態においては、図2に示すように、状態Bから状態Cに移行する間、顕熱領域が長く、潜熱領域が短い。このため、作動流体は、図3に示すように、温度T1から線図L1を経て約75°C程度まで昇温することとなる。このため、約150°Cの加圧空気は線図L2を経てT3まで冷却されることとなる。このように、作動流体の蒸発圧力が高くなることから、ランキンサイクル3aにおいて回収可能なエネルギーの量は大きく、廃熱利用装置が高性能を発揮する。
【0056】
一方、エンジン5に対する出力要求が所定値を超えた場合、すなわち、検知したアクセル開度が所定値を超えた場合、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断する。エンジン5の出力を高めるためにはより多くの加圧空気をエンジン5に供給する必要があり、そのためには加圧空気をより冷却してその密度を高くすることが必要であるからである。これにより、制御装置11aは、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えた場合に応じた流量調整弁35の制御を行う。具体的には、図1に示すように、配管28とバイパス路33とが連通され、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とが調整される。
【0057】
これにより、加圧空気ボイラ23を経た作動流体は、一部がパイパス路33に流入する。そして、このバイパス路33の作動流体は、膨張機25を迂回し、配管30から凝縮器27に至る。この際、図2に示すように、作動流体は状態A→E→F→D’→Aに移行する運転状態となる。この運転状態の蒸発圧力はP3(設定蒸発圧力)よりも低いP2である。これにより、ランキンサイクル3aでは、設定蒸発圧力P3でランキンサイクル3aが作動している場合に比べて顕熱領域が減り、潜熱領域が増える。このため、加圧空気ボイラ23において、作動流体と加圧空気との熱交換が進んでも、潜熱領域では作動流体の温度は上がらず、作動流体が加圧空気からより多くの熱を奪うことが可能になる。このため、加圧空気をより冷却することができる。
【0058】
すなわち、作動流体は、図3に示すように、温度T1から線図L3を経て約50°C程度までしか昇温しないこととなる。このため、約150°Cの加圧空気は線図L4を経てT3よりも低いT2まで冷却されることとなる。このため、エンジン5に対し、より多くの加圧空気を供給することが可能となる。なお、この場合、作動流体の蒸発圧力が下がっていることから、膨張機25が回収する圧力エネルギーは小さくなる。
【0059】
また、この廃熱利用装置では、加圧空気ボイラ23が加圧空気に対するインタークーラとして機能するため、専用のインタークーラを別途設ける必要がなく、小型化されているとともに、廃熱利用装置の構造が簡素化している。
【0060】
さらに、この廃熱利用装置では、エンジン5に対する出力要求に基づくことで、制御装置11aは加圧空気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0061】
したがって、実施例1の廃熱利用装置によれば、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収量の向上を図りつつ、駆動系1aによる出力要求に対してより対応可能であり、かつエンジン5の出力の向上と車両等への搭載性と製造コストの低廉化とを実現可能である。
【0062】
(実施例2)
実施例2の廃熱利用装置は、図4に示すように、実施例1におけるポンプ20aに替えて、電動モータMによって駆動されるポンプ20bを採用している。電動モータMは制御装置11aによって変速可能に構成されている。つまり、制御装置11a及び電動モータMのうち、ポンプ20bの回転数を変速する部分が変速手段である。また、加圧空気ボイラ23と膨張機25とは配管34によって接続されており、実施例1のような流量調整弁35及びバイパス路33を有していない。他の構成は実施例1と同様である。
【0063】
この廃熱利用装置では、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合に、制御装置11a及び電動モータMによってポンプ20bの回転数を下げる。これによってポンプ20bが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20bが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3aの蒸発圧力を下げることができる。
【0064】
したがって、実施例2の廃熱利用装置によっても実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
(実施例3)
実施例3の廃熱利用装置は、図5に示すように、実施例2におけるポンプ20bに替えて、吐出容量を変更可能なポンプ20cを採用している。ポンプ20cは制御装置11によって制御されるようになっている。つまり、制御装置11及びポンプ20cのうち、ポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を変更する部分が容量制御手段である。他の構成は実施例2と同様である。
【0066】
この廃熱利用装置では、加圧空気に対する冷却要求量が閾値を超えたと制御装置11aが判断した場合に、制御装置11及びポンプ20cによってポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を小さくする。これによってポンプ20cが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20cが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3aの蒸発圧力を下げることができる。
【0067】
したがって、実施例3の廃熱利用装置によっても実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
(実施例4)
実施例4の廃熱利用装置も車両に搭載され、図6に示すように、車両の駆動系1bに用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3bと、第1温度センサ37aと、バイパス路33と、流量調整弁35と、制御装置11bとを備えている。実施例1の廃熱利用装置と同様、バイパス路33及び流量調整弁35が蒸発圧力低下手段に相当している。また、制御装置11bが判断手段及び制御手段に相当している。
【0069】
駆動系1bは、内燃機関としてのエンジン2と、排気路としての配管8と、排気還流路としての配管9a、9bと、空気導入路としての配管12と、冷却液路としての配管4a、4bと、ラジエータ6と、冷却液ポンプ10とを有している。また、配管9aには、可変バルブ17が設けられている。
【0070】
エンジン2は、公知の水冷式ディーゼルエンジンである。エンジン2には、排気を排出する排気口2aと、後述する混合空気を吸入する吸気口2bとが形成されている。また、このエンジン2の内部には冷却液としてのLLC(ロングライフクーラント)が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン2には、このウォータジャケットとそれぞれ連通する流出口2cと流入口2dとが形成されている。
【0071】
ラジエータ6には、その内部に冷却液を流入させる流入口6aと、冷却液を流出させる流出口6bとが形成されている。ラジエータ6は、その内部を流通する冷却液と車外の空気との間で熱交換を行う。さらに、ラジエータ6の近傍には、電動ファン6cが設けられている。この電動ファン6cは、制御装置11bと電気的に接続されている。
【0072】
配管8は、一端側が排気口2aと接続されており、他端側が図示しないマフラと接続されている。これにより、配管8は、エンジン2で生じた排気をその内部に流通させることでマフラに導くことが可能となっている。
【0073】
配管9aは一端側が配管8と接続されており、他端側が後述する還流排気ボイラ21の第1流入口21aと接続されている。また、配管9bは、一端側が還流排気ボイラ21の第1流出口21bと接続されており、他端側がエンジン2の吸気口2bと接続されている。
【0074】
配管12は、一端側が配管9bと接続されており、他端側が図示しない車両のエアインテークと接続されている。これにより、配管12は、車外の空気をその内部に流通させることで配管9b(排気還流路)に導くことが可能となっている。そして、排気還流路である配管9a、9bは、配管8を流通する排気の一部をその内部に流通させることで、還流排気(吸気系流体)と空気との混合空気としてエンジン2に還流させることが可能となっている。
【0075】
可変バルブ17は、配管9aに設けられている。可変バルブ17は制御装置11bと電気的に接続されている。この可変バルブ17は、その開度を調整することにより配管8から配管9aに流入する排気の流量を調整可能である。なお、この可変バルブ17には公用品が採用されている。
【0076】
第1温度センサ37aは、配管9bに設けられている。第1温度センサ37aは制御装置11bと電気的に接続されている。この第1温度センサ37aは、第1温度検出手段として機能し、還流排気ボイラ21の第1流出口21bを流出し、配管9bを流通する還流排気の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11bに向けて発信する。なお、第1温度センサ37aには公用品が採用されている。
【0077】
配管4aは一端側がエンジン2の流出口2cと接続されており、他端側がラジエータ6の流入口6bと接続されている。また、配管4bは一端側がラジエータ6の流出口6aと接続されており、他端側がエンジン2の流入口2dと接続されている。
【0078】
冷却液ポンプ10にはポンプ20aと同様の電動式ポンプが採用されている。この冷却水ポンプ10は配管4aに設けられている。また、冷却液ポンプ10は制御装置11bと電気的に接続されている。なお、冷却液ポンプ10は配管4bに設けられても良い。
【0079】
ランキンサイクル3bは、ポンプ20aと、還流排気ボイラ21と、膨張機25と、凝縮器27と、配管26と、配管28〜31とを有している。このランキンサイクル3bは、バイパス路33及び流量調整弁35が一体に組み付けられている。
【0080】
還流排気ボイラ21には、第1流入口21a及び第1流出口21bと、第2流入口21c及び第2流出口21dとが形成されている。また、還流排気ボイラ21内には、両端側でそれぞれ第1流入口21a及び第1流出口21bと連通する第1通路21eと、両端側でそれぞれ第2流入口21c及び第2流出口21dと連通する第2通路21fとが設けられている。この還流排気ボイラ21では、第1通路21e内の還流排気と、第2通路21f内の作動流体との熱交換により、還流排気の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0081】
ポンプ20aと還流排気ボイラ21の第2流入口21cとは配管26によって接続されている。還流排気ボイラ21の第2流出口21bと流量調整弁35とは配管28によって接続されている。このランキンサイクル3bの他の構成は実施例1の廃熱利用装置におけるランキンサイクル3aと同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。これにより、このランキンサイクル3bでは、ポンプ20aを作動させることにより、還流排気ボイラ21及び膨張機25を経て凝縮器27に至る順で配管26及び配管28〜31内の作動流体が一定の流量で循環する。この際、作動流体は、流量調整弁35によって膨張機25に流入する流量とバイパス路33に流入する流量とが調整される。
【0082】
制御装置11bは、電動ファン6c、27cの作動制御を行うことで、冷却液や作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。また、制御装置11bは、可変バルブ17の開閉制御と、冷却液ポンプ10及びポンプ20aの各作動制御とを行う。さらに、制御装置11bは、第1温度センサ37aが検出した還流排気の温度に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11bは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35を調整する。
【0083】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0084】
車両が駆動されることにより、駆動系1bではエンジン2が作動する。これにより、排気口2aから排出された排気が配管8を経てマフラから車外に排出される(同図の破線矢印参照)。この際、制御装置11bが可変バルブ17の開度を調整することで、配管8を流通する排気の一部が配管9aに流入する。配管9aに流入した排気は還流排気として、第1流入口21aから還流排気ボイラ21内に流入し、第1通路21e内を流通して、第1流出口21bから配管9bに至る。配管9bを流通する還流排気は、配管12を経た車外の空気と混合され、混合空気として吸気口2bよりエンジン2内に還流する。
【0085】
また、制御装置11bは、冷却液ポンプ10及び電動ファン6cを作動させる。これにより、エンジン2の流出口2cから流出した冷却液が配管4aを流通し、流入口6bからラジエータ6内に流入する。ラジエータ6内において車外の空気と熱交換を行うことで冷却された冷却液は、流出口6cから流出して配管4bを流通し、流入口2dからエンジン2内に流入する(同図の一点鎖線矢印参照)。これにより、エンジン2の冷却が行われる。
【0086】
一方、ランキンサイクル3bでは、制御装置11bがポンプ20a及び電動ファン27cをそれぞれ作動させる。また、上記の第1温度センサ37aから発信された検出値に基づき、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量を判断する。ここで、第1温度センサ37aから発信された検出値が小さい場合には、還流排気ボイラ21における熱交換において還流排気が十分に冷却されているといえる。このため、制御装置11bは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい、すなわち、還流排気に対する冷却要求量が小さいと判断し、それに応じた流量調整弁35の調整を行う。具体的には、流量調整弁35により配管28と配管29とが連通され、配管28、29とバイパス路33とが非連通とされる。
【0087】
この場合、まず、ポンプ20aによって配管31内の作動流体が配管26内に吐出される。この際、図7に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Aから状態Gに移行し、高圧となる。次いで、図6に示すように、作動流体は配管26を経て還流排気ボイラ21において還流排気との熱交換が行われる。この際、第1通路21eを流通する還流排気は約500°C程度の熱を有しているため、第2通路21fを流通する作動流体は、一定程度の温度に加熱される。これにより、図7に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Gから状態Hに移行し、蒸発圧力がP5の高温高圧となる。この蒸発圧力P5がこの廃熱利用装置において予め定められた設定蒸発圧力に相当する。一方、図6に示すように、第1通路21eを流通する還流排気は、第2通路23fを流通する作動流体に対して放熱を行うため、一定程度冷却された状態でエンジン2に至ることとなる。
【0088】
そして、還流排気ボイラ21によって加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口21dから流出し、配管28、29を経て膨張機25の流入口25aから膨張機25内へ至る。そして、その作動流体は膨張機25内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機25に接続された発電機は発電を行う。ここで、図7に示すように、作動流体は等エントロピ線に沿って状態Hから状態Dに移行し、凝縮圧力がP1の高温低圧となる。
【0089】
図1に示すように、膨張機25内で減圧された作動流体は、実施例1のランキンサイクル3aと同様、凝縮器27において冷却される。この際、制御装置11bは電動ファン27cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させて液化させる。これにより、図7に示すように、作動流体は等圧線に沿って状態Dから状態Aに移行することとなる。
【0090】
このように作動流体が状態A→G→H→D→Aに移行する運転状態においては、状態Gから状態Hに移行する間、顕熱領域が長く、潜熱領域が短い。このため、作動流体は、図8に示すように、温度T1から線図L5を経て約120°C程度まで昇温することとなる。このため、約500°Cの還流排気は線図L6を経てT5まで冷却されることとなる。このように、作動流体の蒸発圧力が高くなることから、ランキンサイクル3bにおいて回収可能なエネルギーの量は大きく、廃熱利用装置が高性能を発揮する。
【0091】
一方、上記の第1温度センサ37aから発信された検出値が大きい場合には、還流排気ボイラ21での還流排気の冷却が足りていないこととなる。このため、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量が大きい、すなわち、還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断する。これにより、制御装置11bは、それに応じた流量調整弁35の制御を行う。具体的には、図6に示すように、配管28とバイパス路33とが連通され、膨張機25に流入する作動流体の流量とバイパス路33に流入する作動流体の流量とが調整される。
【0092】
これにより、還流排気ボイラ21を経た作動流体は、一部がパイパス路33に流入する。そして、このバイパス路33の作動流体は、膨張機25を迂回し、配管30から凝縮器27に至る。これにより、図7に示すように、作動流体は状態A→I→J→D’→Aに移行する運転状態となる。この運転状態の蒸発圧力はP5(設定蒸発圧力)よりも低いP4である。これにより、ランキンサイクル3bでは、設定蒸発圧力P5でランキンサイクル3bが作動している場合に比べて顕熱領域が減り、潜熱領域が増える。このため、還流排気ボイラ21において、作動流体と還流排気との熱交換が進んでも、潜熱領域では作動流体の温度は上がらず、作動流体が還流排気からより多くの熱を奪うことが可能になる。このため、還流排気をより冷却することができる。
【0093】
すなわち、作動流体は、図3に示すように、温度T1から線図L7を経て約110°C程度までしか昇温しないこととなる。このため、約500°Cの還流排気は線図L8を経てT5よりも低いT4まで冷却されることとなる。このため、エンジン2に対し、還流排気の割合が多い混合空気を還流させることが可能、すなわち、より多くの還流排気を還流させることが可能となる。これにより、この廃熱利用装置では、エンジン2の出力が向上する他、マフラから車外に放出される排気中における窒素酸化物の含有量が低減する。なお、実施例1の廃熱利用装置と同様に、この場合、蒸発圧力が下がっていることから、膨張機25が回収する圧力エネルギーは小さくなる。
【0094】
さらに、この廃熱利用装置では、第1温度センサ37aが検出した還流排気の温度に基づくことで、制御装置11bは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0095】
したがって、実施例4の廃熱利用装置によっても、ランキンサイクルにおける十分なエネルギーの回収と、駆動系の性能向上とを好適に両立可能である。
【0096】
また、この廃熱利用装置では、還流排気ボイラ21における還流排気の冷却能力が不足することがないため、複数の還流排気ボイラ21を設けたり、別途に還流排気専用の冷却装置等を設けたりする必要がない。このため、この廃熱利用装置は、小型化されているとともに、構造が簡素化されており、車両への搭載性が高くなっている。
【0097】
(実施例5)
実施例5の廃熱利用装置は、図9に示すように、実施例4におけるポンプ20aに替えて、電動モータMによって駆動されるポンプ20bを採用している。電動モータMは制御装置11bによって変速可能に構成されている。つまり、制御装置11b及び電動モータMのうち、ポンプ20bの回転数を変速する部分が変速手段である。また、実施例2の廃熱利用装置と同様、この廃熱利用装置におけるランキンサイクル3bにおいても、還流排気ボイラ21と膨張機25とは配管34によって接続されており、実施例1、4のような流量調整弁35及びバイパス路33を有していない。他の構成は実施例4と同様である。
【0098】
この廃熱利用装置では、第1温度センサ37aから発信された検出値に基づき、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11b及び電動モータMによってポンプ20bの回転数を下げ、これによってポンプ20bが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20bが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0099】
したがって、実施例5の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(実施例6)
実施例6の廃熱利用装置は、図10に示すように、実施例5におけるポンプ20bに替えて、吐出容量を変更可能なポンプ20cを採用している。ポンプ20cは制御装置11bによって制御されるようになっている。つまり、制御装置11及びポンプ20cのうち、ポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を変更する部分が容量制御手段である。他の構成は実施例5と同様である。
【0101】
この廃熱利用装置では、第1温度センサ37aから発信された検出値に基づき、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11b及びポンプ20cによってポンプ20cの1回転数当たりの吐出容量を小さくし、これによってポンプ20cが吐出する作動流体の流量を少なくすることができる。このため、膨張機25に流入する作動流体の流量に比べてポンプ20cが吐出する作動流体の流量が相対的に少なくなり、ランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0102】
したがって、実施例6の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0103】
(実施例7)
実施例7の廃熱利用装置では、実施例4の廃熱利用装置における制御装置11b及び第1温度センサ37aに替えて、図11に示す制御装置11c及び第2温度センサ37bが設けられている。
【0104】
第2温度センサ37bは、配管26に設けられている。第2温度センサ37bは制御装置11cと電気的に接続されている。この第2温度センサ37bは、第2温度検出手段として機能し、配管26を流通する作動流体の温度、すなわち、還流排気ボイラ21の第2流入口21cに流入する前の作動流体の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11cに向けて発信する。なお、第2温度センサ37bには第1温度センサ37aと同様の公用品が採用されている。
【0105】
制御装置11cは、第2温度センサ37bが検出した作動流体の温度に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。すなわち、作動流体の温度が所定値よりも高い場合には、還流排気ボイラ21での還流排気の冷却能力が低くなることから、相対的に還流排気の冷却要求量は大きくなる。そして、制御装置11cは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35の作動制御を行う。つまり、制御装置11cも判断手段及び制御手段に相当する。他の構成は実施例4と同様である。
【0106】
この廃熱利用装置では、第2温度センサ37bから発信された検出値が小さい場合には、制御装置11cは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい(還流排気に対する冷却要求量が小さい)と判断する。この場合、制御装置11cは実施例4と同様、配管28、29とバイパス路33とが非連通となるように流量調整弁35を制御する。
【0107】
一方、第2温度センサ37bから発信された検出値が大きい場合、つまり、還流排気ボイラ21に流入する前の作動流体の温度が高い場合には、制御装置11cは、還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。そして、第2温度センサ37bの検出値に基づき、制御装置11cが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11cは、配管28、29とバイパス路33とが連通するように流量調整弁35を制御する。これにより、この廃熱利用装置においてもランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0108】
また、この廃熱利用装置では、第2温度センサ37bが検出した作動流体の温度に基づくことで、制御装置11cは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0109】
したがって、実施例7の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
(実施例8)
実施例8の廃熱利用装置では、実施例4の廃熱利用装置における制御装置11b及び第1温度センサ37aに替えて、図12に示す制御装置11d及び第3温度センサ37cが設けられている。
【0111】
第3温度センサ37cは、配管31に設けられている。第3温度センサ37cは制御装置11dと電気的に接続されている。この第3温度センサ37cは、第3温度検出手段として機能し、配管31を流通する作動流体の温度、すなわち、ポンプ20aに流入する前の作動流体の温度を検出するとともに、その検出値を制御装置11dに向けて発信する。なお、第3温度センサ37cも第1温度センサ37aと同様の公用品が採用されている。
【0112】
制御装置11dは、第3温度センサ37cが検出した作動流体の温度に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11dは、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35の作動制御を行う。つまり、制御装置11dも判断手段及び制御手段に相当する。他の構成は実施例4と同様である。
【0113】
この廃熱利用装置では、第3温度センサ37cから発信された検出値が小さい場合には、制御装置11dは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい(還流排気に対する冷却要求量が小さい)と判断する。この場合、制御装置11cは実施例4と同様、配管28、29とバイパス路33とが非連通となるように流量調整弁35を制御する。
【0114】
一方、第3温度センサ37cから発信された検出値が大きい場合、つまり、ポンプ20aに流入する作動流体の温度が高い場合には、制御装置11cは、還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。ポンプ20aに流入する作動流体の温度が高い場合には、還流排気ボイラ21において作動流体が高温に加熱されており、熱源である還流排気が高温になっていると判断できるためである。そして、第3温度センサ37cの検出値に基づき、制御装置11dが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11dは、配管28、29とバイパス路33とが連通するように流量調整弁35を制御する。これにより、この廃熱利用装置においてもランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0115】
また、この廃熱利用装置では、第3温度センサ37cが検出した作動流体の温度に基づくことで、制御装置11dは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0116】
したがって、実施例8の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0117】
(実施例9)
実施例9の廃熱利用装置では、実施例4の廃熱利用装置における制御装置11b及び第1温度センサ37aに替えて、図13に示す制御装置11e及び圧力センサ37dが設けられている。
【0118】
圧力センサ37dは配管31に設けられている。圧力センサ37dは制御装置11eと電気的に接続されている。この圧力センサ37dは、圧力検出手段として機能し、配管31流通する作動流体の圧力、すなわち、膨張機25の下流からポンプ20aの上流までの作動流体の圧力(凝縮圧力)を検出するとともに、その検出値を制御装置11eに向けて発信する。なお、この圧力センサ37dも公用品が採用されている。
【0119】
制御装置11eは、圧力センサ37dが検出した作動流体の凝縮圧力に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する。そして、制御装置11e、この冷却要求量に基づき、流量調整弁35の作動制御を行う。つまり、制御装置11eも判断手段及び制御手段に相当する。他の構成は実施例4と同様である。
【0120】
この廃熱利用装置では、圧力センサ37dから発信された検出値が小さい場合には、制御装置11dは、還流排気に対する冷却要求量が閾値よりも小さい(還流排気に対する冷却要求量が小さい)と判断する。圧力センサ37dから発信された検出値(凝縮圧力)が小さい場合には、配管31を流通する作動流体の温度が低いと判断でき、排気ボイラ21における熱源である還流排気の温度が高くないと判断できるためである。この場合、制御装置11eは実施例4と同様、配管28、29とバイパス路33とが非連通となるように流量調整弁35を制御する。
【0121】
一方、圧力センサ37dから発信された検出値が大きい場合、つまり、膨張機25の下流からポンプ20aの上流までの作動流体の凝縮圧力が高い場合には、制御装置11eは、還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断する。凝縮器27を経ても配管31を流通する作動流体の凝縮圧力が高い場合には、還流排気ボイラ21において作動流体が高温に加熱されている、つまり、還流排気が高温になっていると判断できるためである。そして、圧力センサ37dの検出値に基づき、制御装置11eが還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたと判断した場合、制御装置11eは、配管28、29とバイパス路33とが連通するように流量調整弁35を制御する。これにより、この廃熱利用装置においてもランキンサイクル3bの蒸発圧力を下げることができる。
【0122】
また、この廃熱利用装置では、圧力センサ37dが検出した作動流体の凝縮圧力に基づくことで、制御装置11eは還流排気に対する冷却要求量を正確に判断することが可能となっている。
【0123】
したがって、実施例9の廃熱利用装置によっても実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0124】
以上において、本発明を実施例1〜9に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜9に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0125】
例えば、実施例1〜3の廃熱利用装置において、第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dを設けるとともに、制御装置11aはこれらの第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dの検出値を基に、加圧空気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。実施例5、6の廃熱利用装置においても同様に、第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dの検出値を基に、制御装置11bが還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。
【0126】
また、実施例4〜6の廃熱利用装置における制御装置11bについて、車両のアクセル開度を検知可能であるとともに、このアクセル開度に基づき、エンジン2に対する出力要求を検出可能とし、このエンジン2に対する出力要求に基づいて、還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。
【0127】
さらに、実施例1〜9の廃熱利用装置における制御装置11a〜11eについて、車速を検知し、この車速に基づいて加圧空気や還流排気に対する冷却要求量を判断する構成しても良い。ここで、車速が一定速度を超えていれば、凝縮器27において作動流体が好適に放熱されることとなる。これにより、配管31を流通する作動流体の温度が低下する。換言すれば、配管31を流通する作動流体の凝縮圧力が低くなる。この場合、加圧空気ボイラ23において加圧空気を好適に冷却することが可能となり、同様に、還流排気ボイラ21において還流排気を好適に冷却することが可能となる。このため、制御装置11a〜11eは、加圧空気又は還流排気に対する冷却要求が小さいと判断することが可能となる。一方、車速が一定速度よりも遅ければ、凝縮器27における作動流体の冷却能力が低下することから、配管31を流通する作動流体の温度(凝縮圧力)が高くなる。この場合には、加圧空気ボイラ23において加圧空気を十分に冷却することができなくなり、同様に、還流排気ボイラ21において還流排気を十分に冷却することができなくなる。このため、制御装置11a〜11eは、加圧空気や還流排気に対する冷却要求が大きいと判断することが可能となる。
【0128】
また、実施例1〜9の廃熱利用装置において、加圧空気ボイラ23に流入する前の加圧空気の温度や還流排気ボイラ21に流入する前の還流排気の温度を検出可能な検出手段(温度センサ等)を設けるとともに、制御装置11a〜11eは、これらの加圧空気や還流排気の温度を基に、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。この場合、加圧空気ボイラ23に流入する前の加圧空気の温度や還流排気ボイラ21に流入する前の還流排気の温度が高ければ、加圧空気ボイラ23から流出する加圧空気の温度や還流排気ボイラ21から流出する還流排気の温度も高くなる。このため、制御装置11a〜11eは、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量が大きいと判断することができる。
【0129】
また、実施例1〜9の廃熱利用装置における制御装置11a〜11eについて、エンジン2、5に対する出力要求、第1〜3温度センサ37a〜37cや圧力センサ37dの各検出値、車速、加圧空気ボイラ23に流入する前の加圧空気の温度や還流排気ボイラ21に流入する前の還流排気の温度等をそれぞれ組み合わせることで、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量を判断する構成としても良い。
【0130】
また、実施例1〜9の各構成を組み合わせた廃熱利用装置とすることも可能である。また、膨張機25の回転数を制御したり、1回転数当たりの容量を変更可能な膨張機を採用したりすることも可能である。
【0131】
さらに、実施例1、4、7〜9の廃熱利用装置において、流量制御弁35に替えて、配管28に対してバイパス路33及び配管29を選択的に連通可能な三方弁としてもよい。この場合は、加圧空気や還流排気に対する冷却要求量が閾値を超えたときに配管28とバイパス流路33を連通させ、配管28と配管29とを非連通とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は車両等に利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1a、1b…駆動系
2…エンジン(内燃機関)
3a、3b…ランキンサイクル
5…エンジン(内燃機関)
7…ターボチャージャ(過給器)
9a、9b…配管(排気還流路)
11a、11c、11d、11e…制御装置(判断手段、制御手段)
11b…制御装置(判断手段、出力要求検出手段、制御手段)
20a〜20c…ポンプ
21…還流排気ボイラ
23…加圧空気ボイラ
25…膨張機
27…凝縮器
26〜32、34…配管
33…バイパス路(蒸発圧力低下手段)
35…流量調整弁(蒸発圧力低下手段)
37a…第1温度センサ(第1温度検出手段)
37b…第2温度センサ(第2温度検出手段)
37c…第3温度センサ(第3温度検出手段)
37d…圧力センサ(圧力検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備え、
該ランキンサイクルは、ポンプと、該内燃機関に対して冷却されつつ吸気される吸気系流体との間で熱交換を行うボイラと、膨張機と、凝縮器と、該ポンプ、該ボイラ、該膨張機及び該凝縮器の順で前記作動流体を循環させる配管とを有する廃熱利用装置において、
前記吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、
前記ランキンサイクルの蒸発圧力を下げる蒸発圧力低下手段と、
該判断手段が判断した該冷却要求量が閾値を超えた場合には、予め定められた設定蒸発圧力より低くなるように該蒸発圧力低下手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする廃熱利用装置。
【請求項2】
前記蒸発圧力低下手段は、前記ボイラの下流で前記配管から分岐し、前記膨張機を迂回して該配管に合流するバイパス路と、前記制御手段によって制御され、該膨張機に流入する前記作動流体の流量と該バイパス路に流入する該作動流体の流量とを調整可能な流量調整弁とを有している請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記蒸発圧力低下手段は、前記制御手段によって制御され、前記膨張機に流入する前記作動流体の流量と、前記ポンプが吐出する該作動流体の流量との比を変更する流量比変更手段である請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記流量比変更手段は、前記ポンプ及び前記膨張機の少なくとも一方の回転数を変更可能な変速手段である請求項3記載の廃熱利用装置。
【請求項5】
前記流量比変更手段は、前記ポンプ及び前記膨張機の少なくとも一方の単位回転数当たりの容量を変更可能な容量制御手段である請求項3記載の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記内燃機関に対する出力要求を検出可能な出力要求検出手段を備え、
前記判断手段は、該出力要求検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記ボイラから流出する前記吸気系流体の温度を検出可能な第1温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第1温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項8】
前記ボイラに流入する前記作動流体の温度を検出可能な第2温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第2温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項9】
前記ポンプに流入する前記作動流体の温度を検出可能な第3温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第3温度検出手段が検出した検出値に基づき、前記吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項10】
前記膨張機の下流から前記ポンプの上流までの前記作動流体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記判断手段は、該圧力検出手段が検出した検出値に基づき、前記吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項11】
前記駆動系は、前記内燃機関に対して前記吸気系流体である加圧空気を供給する過給器を有し、
前記ボイラは、該加圧空気と前記作動流体との間で熱交換を行う加圧空気ボイラである請求項1乃至10のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項12】
前記駆動系は、前記内燃機関で生じた排気の一部を前記吸気系流体である還流排気として該内燃機関に還流させる排気還流路を有し、
前記ボイラは、該還流排気と前記作動流体との間で熱交換を行う還流排気ボイラである請求項1乃至10のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項1】
内燃機関を有する駆動系に用いられ、作動流体を循環させるランキンサイクルを備え、
該ランキンサイクルは、ポンプと、該内燃機関に対して冷却されつつ吸気される吸気系流体との間で熱交換を行うボイラと、膨張機と、凝縮器と、該ポンプ、該ボイラ、該膨張機及び該凝縮器の順で前記作動流体を循環させる配管とを有する廃熱利用装置において、
前記吸気系流体に対する冷却要求量を判断する判断手段と、
前記ランキンサイクルの蒸発圧力を下げる蒸発圧力低下手段と、
該判断手段が判断した該冷却要求量が閾値を超えた場合には、予め定められた設定蒸発圧力より低くなるように該蒸発圧力低下手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする廃熱利用装置。
【請求項2】
前記蒸発圧力低下手段は、前記ボイラの下流で前記配管から分岐し、前記膨張機を迂回して該配管に合流するバイパス路と、前記制御手段によって制御され、該膨張機に流入する前記作動流体の流量と該バイパス路に流入する該作動流体の流量とを調整可能な流量調整弁とを有している請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記蒸発圧力低下手段は、前記制御手段によって制御され、前記膨張機に流入する前記作動流体の流量と、前記ポンプが吐出する該作動流体の流量との比を変更する流量比変更手段である請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記流量比変更手段は、前記ポンプ及び前記膨張機の少なくとも一方の回転数を変更可能な変速手段である請求項3記載の廃熱利用装置。
【請求項5】
前記流量比変更手段は、前記ポンプ及び前記膨張機の少なくとも一方の単位回転数当たりの容量を変更可能な容量制御手段である請求項3記載の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記内燃機関に対する出力要求を検出可能な出力要求検出手段を備え、
前記判断手段は、該出力要求検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記ボイラから流出する前記吸気系流体の温度を検出可能な第1温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第1温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項8】
前記ボイラに流入する前記作動流体の温度を検出可能な第2温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第2温度検出手段が検出した検出値に基づき、該吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項9】
前記ポンプに流入する前記作動流体の温度を検出可能な第3温度検出手段を備え、
前記判断手段は、該第3温度検出手段が検出した検出値に基づき、前記吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項10】
前記膨張機の下流から前記ポンプの上流までの前記作動流体の圧力を検出可能な圧力検出手段を備え、
前記判断手段は、該圧力検出手段が検出した検出値に基づき、前記吸気系流体に対する前記冷却要求量を判断する請求項1乃至5のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項11】
前記駆動系は、前記内燃機関に対して前記吸気系流体である加圧空気を供給する過給器を有し、
前記ボイラは、該加圧空気と前記作動流体との間で熱交換を行う加圧空気ボイラである請求項1乃至10のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【請求項12】
前記駆動系は、前記内燃機関で生じた排気の一部を前記吸気系流体である還流排気として該内燃機関に還流させる排気還流路を有し、
前記ボイラは、該還流排気と前記作動流体との間で熱交換を行う還流排気ボイラである請求項1乃至10のいずれか1項記載の廃熱利用装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−83240(P2013−83240A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92809(P2012−92809)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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