説明

建設機械のフレーム構造

【課題】転倒時保護構造を有するキャブを搭載するために必要なスペースをフレーム上に確保して建設機械の強度を向上させることが可能な建設機械のフレーム構造を提供する。
【解決手段】ブルドーザ10は、転倒時運転者保護構造(ROPS構造)を有するキャブ11を搭載しており、ブルドーザ10の骨格を形成するフレーム構造として、舟形形状のメインフレーム40と略コの字型形状の門型フレーム41とを備えている。門型フレーム41は、メインフレーム40の上部に取り付けられており、略鉛直方向に沿って配置される左右一対の柱部41a,41bと、その上端同士を接続する梁部41cとを有している。梁部41cの上面には、キャブ11を載置するためのマウント部41caとキャブ11を強固に保持するためのストッパ部41cbとが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルドーザ等の建設機械のフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブルドーザ等の建設機械では、舟形形状のメインフレームに対して、スラントノーズ、トラックフレーム、タンクフレームおよびキャブ等の各部材が搭載されて構成されている。
例えば、特許文献1には、左右一対のメインフレームを車体前後方向に沿って配設した薄い一枚のストレートプレートで構成し、左右の外側面に中空の柱部材を固設するとともに、柱部材の位置をイコライザーバーを揺動自在に支持するクロスメンバーの位置と略同一面上とした建設機械のメインフレーム構造が開示されている。
【特許文献1】特開2000−027229号公報(平成12年1月25日公開)
【特許文献2】実開平06−049284号公報(平成6年7月5日公開)
【特許文献3】実開平02−088877号公報(平成2年7月13日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の建設機械のフレーム構造では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された建設機械のフレーム構造では、転倒時保護構造(ROPS(Rollover Protective Structure)構造)を有するキャブを搭載することが想定されていない。このため、ROPS構造を有するキャブを搭載する際に必要なマウント部やストッパ部等を配置するスペースを別途メインフレームに確保する必要がある。
【0004】
本発明の課題は、転倒時保護構造を有するキャブを搭載するために必要なスペースをフレーム上に確保して建設機械の強度を向上させることが可能な建設機械のフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る建設機械のフレーム構造は、転倒時運転者保護構造を採用したキャブを搭載する建設機械のフレーム構造であって、メインフレームと、門型フレームとを備えている。門型フレームは、メインフレームの上部に取り付けられた略コの字型の部材であって、上下方向に伸びる一対の柱部と、一対の柱部の上部同士をつなぐように略水平方向に沿って配置された梁部とを有する。そして、門型フレームにおける梁部の上面には、キャブを搭載するマウント部とキャブと門型フレームとを接続するストッパ部とがそれぞれ形成されている。
【0006】
ここでは、エンジン等を搭載するメインフレームに対して、略コの字型の門型フレームを取り付けている。そして、この門型フレームを構成する上下方向に伸びる左右一対の柱部の上部同士をつなぐように略水平方向に沿って配置される梁部の上面に、キャブを搭載するためのマウント部と、ROPS構造(転倒時運転者保護構造)のストッパ部とを設けている。
【0007】
ここで、ROPS構造を有するキャブでは、フレーム上に搭載するためのマウント部に加えて、フレームからキャブの一部が抜けないように強固に固定するためのストッパ部を設ける必要がある。このため、従来のメインフレームに直接ROPS構造のキャブを搭載する場合には、上記ストッパ部を設けるスペースをフレームの上部に確保する必要がある。
【0008】
本発明の建設機械のフレーム構造では、メインフレームに対して別途略コの字型の門型フレームを設け、この上面にキャブのマウント部とストッパ部とを設けている。
これにより、ROPS構造を有するキャブを搭載する際に必要なストッパ部やキャブのマウント部を門型フレームにおける梁部の上面に形成することができるため、ROPS構造を有するキャブを搭載することが可能になる。また、メインフレームにキャブ等の全ての構成を取り付ける場合と比較して、門型フレームに対してROPS構造のキャブを強固に固定することができるため、建設機械における全体の強度を向上させることができる。
【0009】
第2の発明に係る建設機械のフレーム構造は、第1の発明に係る建設機械のフレーム構造であって、門型フレームには、ラジエータが吊り下げられた状態で固定される。
ここでは、建設機械に搭載されたエンジンを冷却するためのラジエータを、門型フレームに吊り下げ固定する。
これにより、例えば、ラジエータをエンジンフードの外部に取り付ける場合でも、略コの字型の門型フレームに対して吊り下げるようにして固定することで、ラジエータを容易にメインフレームに対して取り付けることができる。
【0010】
第3の発明に係る建設機械のフレーム構造は、第2の発明に係る建設機械のフレーム構造であって、門型フレームはメインフレームの後方に配置されており、ラジエータは門型フレームの後方側に取り付けられる。
ここでは、メインフレームの後方に取り付けられた門型のフレームの後方側にラジエータを取り付けている。つまり、建設機械の後方にラジエータを配置している。
【0011】
これにより、例えば、メインフレームの前方に配置されるエンジンとラジエータとを分離して配置することができるため、メインフレームの前側に位置するエンジンフードの大きさを縮小してオペレータの前方の視認性を向上させることができる。
【0012】
第4の発明に係る建設機械のフレーム構造は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る建設機械のフレーム構造であって、門型フレームは、メインフレームに取り付けられた燃料タンクおよび作動油タンクの一部と接触する。
ここでは、メインフレームの左右両側に燃料タンクおよび作動油タンクを取り付けており、各タンクの一部を門型フレームと接触させることで、門型フレームを、例えば、ブルドーザの進行方向における振れ止めとして用いている。
これにより、メインフレームの左右両端に固定される燃料タンクおよび作動油タンクをより安定した状態で強固に取り付け固定することができる。
【0013】
第5の発明に係る建設機械のフレーム構造は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る建設機械のフレーム構造であって、キャブの後部が門型フレーム上に載置されており、門型フレームにおける梁部の上面は、前方側へ下方傾斜している。
ここでは、キャブを搭載するマウント部とROPS構造のストッパ部とが形成された門型フレームにおける梁部の上面を、前方へ下方傾斜させている。
【0014】
これにより、キャブの後部が門型フレーム上に配置されている場合には、前進時における地表からの衝撃を効率よくマウント部において受け止めて振動を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る建設機械のフレーム構造によれば、ROPS構造を有するキャブを搭載することが可能になるとともに、建設機械における全体の強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るブルドーザ(建設機械)10のフレーム構造について、図1〜図6を用いて説明すれば以下の通りである。なお、以下の説明で用いる「前」、「後」については、ブルドーザ10の前進側を「前」、後進側を「後」と示すものとする。
[ブルドーザ10全体の構成]
本実施形態のブルドーザ10は、図1〜図3に示すように、キャブ(運転室)11、ノーズモジュール12、左右の走行装置13,14、燃料タンクモジュール(燃料タンク)15、作動油タンクモジュール(作動油タンク)16、作業装置20、ラジエータモジュール30およびメインフレーム40(図4参照)を備えている。
【0017】
キャブ11は、ブルドーザ10のオペレータが座るためのシートや各種操作のためのレバー、ペダルおよび計器類が内装されている。そして、キャブ11は、転倒時運転者保護構造(以下、ROPS構造と示す。)を有しており、後述するメインフレーム40(図4参照)上における後方に配置されている。
ノーズモジュール12は、内部にエンジン24(図4参照)を収納しており、キャブ11の前方に取り付けられている。そして、ノーズモジュール12は、エンジン24のエアクリーナの吸気口と排気管とが貫通する穴のみを開口させており、密閉構造を形成している。このため、ノーズモジュール12から露出する排気管12aから放出されるエンジン24の排気音はマフラ(図示せず)によって消音され、エンジン音が外部に漏れることを防止して騒音の少ないブルドーザを得ることができる。
【0018】
また、ノーズモジュール12を密閉構造にすることで、ノーズモジュール12内への塵埃の侵入を防止している。これによって、エンジン24のオルタネータや空調用コンプレッサのプーリおよびベルト(いずれも図示せず)等の可動部の磨耗を防止して塵埃に対する信頼性を向上させている。なお、ノーズモジュール12に形成された吸気口からの塵埃の侵入を防止するために、プリクリーナおよびエアクリーナ内のフィルタ(いずれも図示せず)が設けられている。
【0019】
さらに、ノーズモジュール12には、その上面から上方へ伸びるように排気管12aが取り付けられている。そして、この排気管12aは、キャブ11内のオペレータから見て、キャブ11を構成するピラーと重なる位置に立設されている。これにより、排気管12aによって、キャブ11内のオペレータからの前方の視認性が低下することを防止している。
【0020】
走行装置13,14は、後述するメインフレーム40(図4参照)の左右両側に取り付けられており、板状のシューが複数連結されて無端状に形成され、上下の複数の転輪に巻き掛けられた履帯13a,14aを回転させることで不整地における走行を可能としている。
燃料タンクモジュール15は、カバーの内側においてノーズモジュール12の内部に搭載されたエンジン24(図4参照)に対して供給される燃料を貯留する燃料タンクを含んでおり、キャブ11の左側方に取り付けられている。
【0021】
作動油タンクモジュール16は、変速機系統および作業機系統に供給される作業油を貯留する作動油タンクを含んでおり、キャブ11の右側方に取り付けられている。
また、左右の各タンクモジュール15,16間の後部には、ラジエータモジュール30が、各タンクモジュール15,16のカバーの後端よりも前に配置されている。これによって、ラジエータモジュール30を外部の障害物から保護するとともに、キャブ11から後方を見たときに、ラジエータモジュール30越しに後方の作業状態を容易に確認することができる。このため、ブルドーザ10の後部にリッパやウィンチを取り付けた場合でも、キャブ11からラジエータモジュール30越しに後方作業機を確認しながら作業を行うことができる。
【0022】
作業装置20は、ブレード21および油圧シリンダ22を有しており、油圧シリンダ22が伸縮することでブレード21を所望の方向へ傾けたり、移動させたりする。
ラジエータモジュール30は、ラジエータ31、ファン32およびモータ33を有しており、モータ33によってファン32を回転させてラジエータ31内を流れる冷却水を冷やすことによりエンジン24を冷却する。また、ラジエータモジュール30は、キャブ11の後方であって、メインフレーム40の最後端部に取り付けられている。
【0023】
さらに、本実施形態のブルドーザ10では、ラジエータ31をノーズモジュール12内ではなく、キャブ11の後方へ別途独立して配置している。これにより、ノーズモジュール12の大きさおよび形状を、エンジン24との関係のみによって選択することが可能となる。この結果、ノーズモジュール12を小型化し、かつ外面を前傾させることで、キャブ11から同ノーズモジュール12越しにブレード21の上部を見通すことが可能となり、前方の視認性を大幅に向上させている。
【0024】
また、ラジエータモジュール30は、側面視において燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16の後端部よりも前方側(内側)に配置されている。このように、左右の機器類の後端より前側へ凹ませた位置にラジエータモジュール30を配置することで、ラジエータモジュール30の損傷を防止することができる。
メインフレーム40は、ブルドーザ10の骨格を形成するベースとなる部材であって、前方に作業装置20、左右両側に走行装置13,14(トラックフレームモジュール13b,14b)、上部にノーズモジュール12、後述する門型フレーム41(図4参照)、キャブ11、燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16を搭載している。なお、メインフレーム40を含むブルドーザ10のフレーム構造については、後段にて詳述する。
【0025】
[ブルドーザ10のフレーム構造]
本実施形態のブルドーザ10は、図4に示すように、メインフレーム40に対して、門型フレーム41、ノーズモジュール12、左右一対のトラックフレームモジュール13b,14b、燃料タンクモジュール15、作動油タンクモジュール16、ラジエータモジュール30およびキャブ11が取り付けられている。なお、トラックフレームモジュール14bについては、説明の便宜上図4には示していないが、メインフレーム40を挟んで左右一対のトラックフレームモジュール13b,14bが設けられているものとする。
【0026】
(メインフレーム40)
メインフレーム40は、図4に示すように、ブルドーザ10の中心に配置された舟形形状のフレームであって、その前部にエンジン24を搭載している。また、メインフレーム40は、左右両端にピボットシャフト42を有しており、このピボットシャフト42に対して左右のトラックフレームモジュール13b,14bが取り付けられる。
【0027】
さらに、メインフレーム40には、図5に示すように、舟形形状の左右両縁上に、キャブ11の前部を支持するマウント部40a、ストッパ部40bが設けられている。
マウント部40aは、キャブ11の前側の両端が載置されるキャブダンパマウントであって、防振マウントが取り付けられている。このため、ブルドーザ10を走行中に走行装置13,14に加わる衝撃を緩衝してキャブ11内のオペレータに対する振動の伝達を軽減することができる。
【0028】
ストッパ部40bは、ROPS構造を有するキャブ11とメインフレーム40の一部との接続を強固にするために設けられており、キャブ11を搭載した車両全体の強度を向上させる。なお、ストッパ部40bの構成は、後述する門型フレーム41上に形成されたストッパ部41cbと同様であるため、ストッパ部40b,41cbの詳しい構成については図6を参照しながら後段にて詳述する。
【0029】
(門型フレーム41)
門型フレーム41は、図5に示すように、メインフレーム40の中心部よりやや後方の位置に、略コの字型形状の開口部分が下向きになるように溶接によって取り付けられており、メインフレーム40の一部を形成している。また、門型フレーム41は、略コの字方形状を構成するために、略鉛直方向に沿って配置された2本の柱部41a,41bと柱部41a,41bの上端部同士を接続する梁部41cとを有している。なお、この柱部41a,41bと梁部41cとは、溶接によって一体化されている。
【0030】
柱部41a,41bは、略鉛直方向に沿って互いに平行に配置されている。そして、柱部41a,41bの下端部は、舟形形状のメインフレーム40における左右両縁の部分に溶接によって接続されている。一方、柱部41a,41bの上端部は、梁部41cの両端にそれぞれ接続されている。これにより、2本の柱部41a,41bと梁部41cとが略コの字方形状を形成する。
【0031】
梁部41cは、略水平方向に沿って、2本の柱部41a、41bの上端部同士をつなぐ位置に配置されている。そして、梁部41cの上面における両端部には、キャブ11を載置するためのマウント部41caが配置されている。また、梁部41cの上面における上記マウント部41caの内側には、ROPS構造のキャブ11を門型フレーム41に対して強固に固定するストッパ部41cbが配置されている。さらに、梁部41cの上面は、前方に向かって下方傾斜している。
【0032】
マウント部41caは、キャブ11の後ろ側の両端が載置されるキャブダンパマウントであって、防振マウントが取り付けられている。このため、ブルドーザ10を走行中に走行装置13,14に加わる衝撃を緩衝してキャブ11内のオペレータに対する振動の伝達を軽減することができる。そして、上述のように、梁部41cの上面は前方に向かって下方傾斜しているため、ブルドーザ10の前進時において走行装置13,14に対して加えられる衝撃をマウント部41caにおける防振マウントによって効率よく吸収して、キャブ11内のオペレータに対する振動の伝達をさらに効果的に軽減することができる。なお、キャブ11の前側については、上述したメインフレーム40の上面に設けられたマウント部40a(図5参照)に載置されるとともに、同じくメインフレーム40の上面に設けられたストッパ部40b(図5参照)において強固に固定される。
【0033】
ストッパ部41cbは、図6に示すように、キャブ11の底面から突出する突出部11aを保持するための爪部51を有している。キャブ11の底面から突出する突出部11aは、先端部分に円盤状の板材11bを有しており、この板材11bの部分がストッパ部41cbの爪部51に引っかかって抜けないような構造となっている。このように、ストッパ部41cbにおいて、メインフレーム40の一部である門型フレーム41とキャブ11との接続を強固にすることで、ROPS構造を有するキャブ11を搭載した車両全体の強度を向上させることができる。なお、メインフレーム40に設けられたストッパ部40bについても、キャブ11の前側が載置される点以外は上記ストッパ部41cbと同様の構成により同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、門型フレーム41の後方側には、図4に示すように、ラジエータモジュール30が吊り下げられるようにして取り付けられる。
これにより、舟形形状のメインフレーム40の上部に略コの字型形状の門型フレーム41を立設することで、ラジエータモジュール30の取付けが容易になる。
さらに、門型フレーム41の左右両側には、図4に示すように、メインフレーム40の左右両側に取り付けられた燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16の一部が接触するように取り付けられている。
【0035】
これにより、門型フレーム41を、燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16の振れ止め部材として用いることができる。よって、燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16を、メインフレーム40に対してより安定した状態で強固に取り付けることができる。
[本ブルドーザ10のフレーム構造の特徴]
(1)
本実施形態のブルドーザ10は、図4に示すように、転倒時運転者保護構造(ROPS構造)を有するキャブ11を搭載しており、ブルドーザ10の骨格を形成するフレーム構造として、舟形形状のメインフレーム40と略コの字型形状の門型フレーム41とを備えている。門型フレーム41は、図5に示すように、メインフレーム40の上部に取り付けられており、略鉛直方向に沿って配置される左右一対の柱部41a,41bと、その上端同士を接続する梁部41cと、を有している。そして、梁部41cの上面には、キャブ11を載置するためのマウント部41caとキャブ11を強固に保持するためのストッパ部41cbとが設けられている。
【0036】
これにより、ROPS構造を有するキャブ11を搭載する場合に必要となるマウント部41caとストッパ部41cbとを門型フレーム41における梁部41cb上に設けることができる。この結果、剛性が高いキャブ11を搭載できるとともに、このキャブ11とメインフレーム40の一部として機能する門型フレーム41との接合を強固なものとすることができるため、ブルドーザ10全体の強度を向上させることが可能になる。
【0037】
(2)
本実施形態のブルドーザ10では、図4に示すように、門型フレーム41に対してラジエータモジュール30が吊り下げられるようにして固定配置される。
このように、メインフレーム40に対して取り付けられてメインフレーム40の一部として機能する門型フレーム41にラジエータモジュール30を取り付けることで、舟形形状メインフレーム40だけの従来のフレーム構造と比較して、ラジエータモジュール30を容易に、かつ強固に固定することが可能になる。
【0038】
(3)
本実施形態のブルドーザ10では、図4に示すように、門型フレーム41をメインフレーム40の中央部よりやや後方よりに取り付けている。そして、ラジエータモジュール30は、この門型フレーム41の後方側に吊り下げるように固定される。
これにより、本実施形態のように、エンジン24とラジエータ31とを別々に配置する場合でも、ラジエータ31を含むモジュール30を容易にメインフレーム40の一部である門型フレーム41に対して取り付けることが可能になる。また、このようにラジエータモジュール30をエンジン24と離れた後方の位置に配置することで、エンジン24を収納するノーズモジュール12を小型化して、キャブ11内のオペレータによる前方の視認性を向上させて作業効率を大幅に向上させることができる。さらに、後方にエンジン24とは分離して配置されたラジエータモジュール30については、内部にラジエータ31、ファン32、モータ33のみを収納する薄型のモジュールであるため、後方の視認性についても確保できる。
【0039】
(4)
本実施形態のブルドーザ10では、メインフレーム40の左右両端に取り付けられた燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16が、門型フレーム41の左右両端に対してそれぞれ接触するように取り付けられている。
これにより、メインフレーム40に対して取り付けられる各タンクモジュール15,16を、メインフレーム40に対してより安定した状態で強固に取り付けることができる。
【0040】
(5)
本実施形態のブルドーザ10では、門型フレーム41を構成する梁部41cの上面を、前方に向かって下方傾斜させている。
これにより、梁部41cの上面に配置されるマウント部41caも前方に下方傾斜させることで、ブルドーザ10の前進中において走行装置13,14に対して地面から加わる衝撃を効率よく吸収することができる。よって、走行中にキャブ11内のオペレータに伝達される振動や衝撃を軽減して、乗り心地のよいブルドーザを得ることができる。
【0041】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、門型フレーム41を舟形形状のメインフレーム40の中央部分よりも後方側に取り付けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
例えば、門型フレームをメインフレームの最後端に取り付けてもよい。この場合でも、ラジエータモジュールや各タンクモジュール等をフレームに取り付け易くなるとともに、フレーム構造の強度を向上させることができるという上記と同様の効果を得ることができる。
(B)
上記実施形態では、マウント部41caが配置されている門型フレーム41の柱部41a,41bを略鉛直方向に沿って配置している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
例えば、梁部41cの上面(マウント部41ca)が前方へ下方傾斜するようになっていれば、図7に示すように、門型フレーム41の柱部41a,41bを後方に傾けるようにして取り付けてもよい。この場合でも、マウント部41caにおいてブルドーザ10の走行中に走行装置13,14に加わる衝撃を受け止めて衝撃や振動を効率よく吸収することができる。
【0044】
(C)
上記実施形態では、門型フレーム41に対して、ラジエータモジュール30等を吊り下げるように固定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態で説明したラジエータモジュール以外のモジュールを門型フレーム41に取り付けるようにしてもよい。
【0045】
(D)
上記実施形態では、燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16の一部が、門型フレーム41に対して固定されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
燃料タンクモジュール15および作動油タンクモジュール16の一部が門型フレーム41の一部と固定されている必要はなく、例えば、ブルドーザ10の進行方向において接触していればよい。この場合でも、上記進行方向における各タンクモジュール15,16の移動を門型フレーム41によって規制することで、門型フレーム41を各タンクモジュール15,16の振れ止めとして機能させることができる。
【0046】
(E)
上記実施形態では、ブルドーザのフレーム構造に対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ブルドーザ以外にも、ホイールローダや油圧ショベル等の他の建設機械を構成するフレーム構造に対しても本発明を適用することできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の建設機械のフレーム構造は、ROPS構造を有するキャブを固定するためのストッパ部およびマウント部をフレームの上面に形成して強固なフレーム構造とすることができるという効果を奏することから、ブルドーザ以外の建設機械のフレーム構造に対しても広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るブルドーザの前方斜視図。
【図2】図1に示すブルドーザの側面図。
【図3】図1のブルドーザの後方斜視図。
【図4】図1のブルドーザが備えているフレーム構造を示す斜視分解図。
【図5】図4のフレーム構造に含まれるメインフレームと門型フレームを示す斜視図。
【図6】図5のA部分を拡大した断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るブルドーザが備えているフレーム構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0049】
10 ブルドーザ(建設機械)
11 キャブ(運転室)
11a 突出部
11b 板材
12 ノーズモジュール
12a 排気管
13 走行装置
13a 履帯
13b トラックフレームモジュール
14 走行装置
14a 履帯
14b トラックフレームモジュール
15 燃料タンクモジュール
16 作動油タンクモジュール
20 作業装置
21 ブレード
22 油圧シリンダ
24 エンジン
30 ラジエータモジュール
31 ラジエータ
32 ファン
33 モータ
40 メインフレーム
40a マウント部
40b ストッパ部
41 門型フレーム
41a,41b 柱部
41c 梁部
41ca マウント部
41cb ストッパ部
42 ピボットシャフト
51 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転倒時運転者保護構造を採用したキャブを搭載する建設機械のフレーム構造であって、
メインフレームと、
前記メインフレームの上部に取り付けられており、上下方向に伸びる一対の柱部と、前記一対の柱部の上部同士をつなぐように略水平方向に沿って配置された梁部とを有する略コの字型の門型フレームと、
を備えており、
前記門型フレームにおける前記梁部の上面には、前記キャブを搭載するマウント部と前記キャブと前記門型フレームとを接続するストッパ部とがそれぞれ形成されている、
建設機械のフレーム構造。
【請求項2】
前記門型フレームには、ラジエータが吊り下げられた状態で固定される、
請求項1に記載の建設機械のフレーム構造。
【請求項3】
前記門型フレームは前記メインフレームの後方に配置されており、前記ラジエータは前記門型フレームの後方側に取り付けられる、
請求項2に記載の建設機械のフレーム構造。
【請求項4】
前記門型フレームは、前記メインフレームに取り付けられた燃料タンクおよび作動油タンクの一部と接触する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建設機械のフレーム構造。
【請求項5】
前記キャブの後部が前記門型フレーム上に載置されており、
前記門型フレームにおける前記梁部の上面は、前方側へ下方傾斜している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の建設機械のフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−507144(P2009−507144A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513039(P2008−513039)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/JP2006/317712
【国際公開番号】WO2007/032243
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】