説明

建設機械用キャビン

【課題】視界を妨げることなく転倒時にキャビンを保護できる建設機械用キャビンを提供する。
【解決手段】フロントポスト2、ルーフサイド3及びリアポスト4からなる左右一対のサイドフレーム5のいずれか一方のルーフサイド3に、そのフロントポスト2間で乗降口16を区画するためのセンターピラー10を設けた建設機械用キャビン1において、センターピラー10とそのリアポスト4間のルーフサイド3に第1補強ピラー17を設け、他方のルーフサイド3に、一方のルーフサイド3に設けたセンターピラー10と第1補強ピラー17の中間に位置するように第2補強ピラー21を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用キャビンに係り、特に、転倒時にキャビンを保護できる建設機械用キャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの建設機械用キャビンの骨組み構造は、図6に示すように、左右のフロントポスト2、2と左右のリアポスト4、4の上部をルーフサイド3、3で連結して左右のサイドフレーム5、5を形成し、その左右のサイドフレーム5、5をフロントクロスメンバ6、ルーフ補強材8及びリアクロスメンバ7で連結し、左側のサイドフレーム5にセンターピラー10を設けて構成される。
【0003】
センターピラー10には、フロントポスト2とセンターピラー10の間に形成される乗降口16を開閉するドア(図示せず)が取り付けられ、左右のルーフサイド3、3間には、ルーフパネル(図示せず)が取り付けられ、また周囲に適宜ウインド(図示せず)が取り付けられて建設機械用キャビン30とされる。
【0004】
この建設機械用キャビン30は、自走式の走行体(図示せず)に旋回自在に設けられ、オペレータがキャビン30内で、油圧ショベルなどを旋回・俯仰操作する関係上、視界確保のためにガラス張りの構造になっており、ポスト2、4等は視界の妨げにならないようにされる。
【0005】
しかし、建設機械が万一転倒した場合、現状の骨組み構造では、上方からの負荷に対してはセンターピラー10のみの補強であり弱く、横からの負荷に対しても左右のルーフサイド3、3を垂直に結ぶルーフ補強材8のみの補強であり脆弱であった。
【0006】
そのため、建設機械が転倒した場合、まず左側からの負荷に対してルーフが座屈し、その次、縦方向の負荷に対してセンターピラー10が座屈することとなり、オペレータの居住空間が確保しずらかった。
【0007】
また、特許文献1には、転倒防止時のオペレータの保護を目的として、キャビンの後方から屋根部にかけて形鋼などにて運転室用保護構造体を取り付け、建設機械が万一転倒しても、運転室用保護構造体で転倒時の衝撃を受けてキャビンを保護することが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−145182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、キャビンを転倒時の変形から防止すべく運転室用保護構造体を取り付けたのでは、視界の妨げになると共に、デザイン性にも落ちるという問題があった。また、キャビンの後方に運転室用保護構造体の柱のスペースが必要となり、このスペースが無い小さな建設機械には適用できないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、視界を妨げることなく転倒時にキャビンを保護できる建設機械用キャビンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、フロントポスト、ルーフサイド及びリアポストからなる左右一対のサイドフレームのいずれか一方のルーフサイドに、そのフロントポスト間で乗降口を区画するためのセンターピラーを設けた建設機械用キャビンにおいて、上記センターピラーとそのリアポスト間のルーフサイドに第1補強ピラーを設け、他方のルーフサイドに、一方のルーフサイドに設けたセンターピラーと第1補強ピラーの中間に位置するように第2補強ピラーを設けたものである。
【0012】
上記センターピラーと第1補強ピラーが設けられた一方のルーフサイドと、上記第2補強ピラーが設けられた他方のルーフサイド間に、これらピラーを連結するようにV字状の斜材を設けるとよい。
【0013】
また、上記第1補強ピラーと上記第2補強ピラーには、それぞれ窓ガラスを取り付けるための凹凸が形成されるとよい。
【0014】
上記第1補強ピラーと上記第2補強ピラーが、アウターパネルとインナーパネルを接合して閉断面状に形成されるとよい。
【0015】
上記斜材が、角パイプからなるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視界を妨げることなく転倒時にキャビンを保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態を示し、図2は図1のA−A線矢視断面図を示し、図3は図1のB−B線矢視断面図を示したものである。
【0019】
図1に示すように、建設機械用キャビン1の骨組みは、フロントポスト2、ルーフサイド3及びリアポスト4からなる左右一対のサイドフレーム5、5と、左右のルーフサイド3、3を連結する前後一対のクロスメンバ6、7と、左右のルーフサイド3、3に垂直に掛け渡して設けられるルーフ補強材8と、それぞれのポスト2、4の下端を接続するように矩形枠状に形成されるベースフレーム9と、左側のルーフサイド3とベースフレーム9の間に略鉛直に延びて設けられるセンターピラー10とを備えて構成されている。
【0020】
フロントポスト2、2は、それぞれ断面異形状に形成された鋼管からなる。ルーフサイド3、3は、それぞれフロントポスト2を構成する鋼管の上部を後方に延ばすように屈曲して形成されており、フロントポスト2と一体に形成されている。リアポスト4は、それぞれ鉛直に起立するように形成されている。リアポスト4、4には、クロスメンバ6、7とベースフレーム9との間の高さで左右のリアポスト4、4を接続するリア補強材11が設けられている。また、右側のサイドフレーム5には、そのフロントポスト2とリアポスト4をリア補強材11と同じ高さで接続するサイド補強材12が設けられている。
【0021】
ベースフレーム9は、左右両側に平行に配置される一対のサイドメンバ13、13と、これらサイドメンバ13、13間を接続する前後一対の下側クロスメンバ14、15とからなる。
【0022】
センターピラー10は、左側のフロントポスト2との間に乗降口16を区画するものであり、センターピラー10には、乗降口16を開閉するためのドア(図示せず)が取り付けられるようになっている。
【0023】
また、センターピラー10と左側のリアポスト4との間のルーフサイド3には、建設機械が転倒したとき縦方向の力を受けるための第1補強ピラー17が設けられている。第1補強ピラー17は、左側のサイドメンバ13に対して垂直に固定されている。図2に示すように、第1補強ピラー17は、アウターパネル18とインナーパネル19を接合して閉断面状に形成されており、窓ガラス(図示せず)を取り付けるための凹凸20を有する。
【0024】
図1に示すように、右側のルーフサイド3には、第1補強ピラー17と同様に縦方向の力を受けるための第2補強ピラー21が設けられている。第2補強ピラー21は、前後の位置がセンターピラー10と第1補強ピラー17の中間に位置するように配置されており、右側のサイドメンバ13に対して垂直に固定されている。第2補強ピラー21は、第1補強ピラー17と同様に、アウターパネル18とインナーパネル19を接合して閉断面状に形成されており、窓ガラス(図示せず)を取り付けるための凹凸20を有する。
【0025】
また、左右のルーフサイド3、3間には、建設機械が転倒したとき横方向の力を受けるためのV字状の斜材22が設けられている。具体的には、斜材22は、センターピラー10、第2補強ピラー21及び第1補強ピラー17を連結するように左右のルーフサイド3、3に設けられている。図1及び図3に示すように、斜材22は2本の角パイプからなり、閉断面状に形成されている。
【0026】
次に本実施の形態の作用について述べる。
【0027】
斜面等で作業中の建設機械が左側に転倒した場合、まず建設機械用キャビン1のルーフ左側が接地し、左側のルーフサイド3に横方向の力が作用する。この力は、クロスメンバ6、7、ルーフ補強材8及び斜材22に分散されるため、ルーフが大きく変形することはなく、たわみ限界領域(deflection-limiting volume(DLV))23を確保することができ、オペレータの安全を確保できる。また、斜材22は、V字状にされているため、横方向の力が前後方向に傾いて作用した場合であってもV字状の斜材22とルーフサイド3とが一体となって力を受けることができ、たわみ限界領域23を確保することができる。またさらに、斜材22はセンターピラー10、第1補強ピラー17及び第2補強ピラー21を接続するようにルーフサイド3、3間に設けられているため、これらピラー10、17、21とルーフサイド3との接続部の変形を良好に抑えることができ、ピラー10、17、21の機能が損なわれるのを防ぐことができる。
【0028】
建設機械が更に転倒して建設機械用キャビン1のルーフ上面が接地した場合、ルーフが受ける力は、センターピラー10、第1補強ピラー17及び第2補強ピラー21に分散される。このとき、これらピラー10、17、21とルーフサイド3が接続される接続部は変形し難いように形成されているため、ルーフ上面が接地する前にピラー10、17、21が大きく傾いたり曲がったりしていることはなく、ルーフ上面からの縦方向の力を安定して受けることができ、たわみ限界領域23を確保することができ、オペレータの安全を確保することができる。
【0029】
また、通常使用時においては、第1補強ピラー17は建設機械のブーム(図示せず)とは反対側にあるため視界を遮ることはなく、第2補強ピラー21はセンターピラー10より後方にあるため視界を遮ることはなく、斜材22は、センターピラー10より後方にあるためルーフ前部に形成されるルーフ窓(図示せず)に重なることはなく、視界を良好に保ちつつ建設機械用キャビン1の転倒に対する強度を向上させることができる。
【0030】
このように、センターピラー10とそのリアポスト4間のルーフサイド3に第1補強ピラー17を設け、他方のルーフサイド3に、一方のルーフサイド3に設けたセンターピラー10と第1補強ピラー17の中間に位置するように第2補強ピラー21を設けたため、視界を妨げることなく建設機械用キャビン1の転倒に対する強度を向上させることができ、転倒時に建設機械用キャビン1を保護できる。
【0031】
また、センターピラー10と第1補強ピラー17が設けられた一方のルーフサイド3と、第2補強ピラー21が設けられた他方のルーフサイド3間に、これらピラー10、17、21を連結するようにV字状の斜材22を設けたため、視界を妨げることなく建設機械用キャビン1の転倒に対する強度を更に向上させることができ、簡単な構造で安価に建設機械用キャビン1を保護できる。
【0032】
第1補強ピラー17と第2補強ピラー21には、それぞれ窓ガラスを取り付けるための凹凸20が形成されるものとしたため、窓ガラスを容易に取り付けることができる。
【0033】
第1補強ピラー17と第2補強ピラー21が、アウターパネル18とインナーパネル19を接合して閉断面状に形成されるものとしたため、容易に加工することができ、形状を自由に設定することができる。
【0034】
斜材22が、角パイプからなるものとしたため、簡単な構造で確実に強度を得ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、建設機械用キャビン1は一般に建設機械のブームの左側に配置されることから、建設機械用キャビン1の左側にセンターピラー10を設けるものとしたが、建設機械用キャビン1がブームの右側や後方に配置される場合、右側にセンターピラー10を設けるものとしてもよい。この場合、第1補強ピラー17、第2補強ピラー21及び斜材22は、上述とは左右対称となるように配置するとよい。
【0036】
また、第1補強ピラー17と上記第2補強ピラー21は、アウターパネル18とインナーパネル19を接合して閉断面状に形成されるものとしたがこれに限るものではない。図4に示すように、鋼管を引き抜き加工してなる異型鋼管構造にて閉断面状の第1補強ピラー24と第2補強ピラー25を形成してもよい。
【0037】
斜材22は、角パイプからなるものとしたがこれに限るものではない。図1及び図5に示すように、左右のルーフサイド3間に設けられるルーフパネル26の下面に断面U字状の溝型鋼27を溶接して閉断面構造の斜材28を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す建設機械用キャビンの骨組みの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図2の変形例を示す第1補強メンバの断面図である。
【図5】図3の変形例を示す第2補強メンバの断面図である。
【図6】従来の建設機械用キャビンの骨組みの斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 建設機械用キャビン
2 フロントポスト
3 ルーフサイド
4 リアポスト
5 サイドフレーム
10 センターピラー
16 乗降口
17 第1補強ピラー
18 アウターパネル
19 インナーパネル
20 凹凸
21 第2補強ピラー
22 斜材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントポスト、ルーフサイド及びリアポストからなる左右一対のサイドフレームのいずれか一方のルーフサイドに、そのフロントポスト間で乗降口を区画するためのセンターピラーを設けた建設機械用キャビンにおいて、上記センターピラーとそのリアポスト間のルーフサイドに第1補強ピラーを設け、他方のルーフサイドに、一方のルーフサイドに設けたセンターピラーと第1補強ピラーの中間に位置するように第2補強ピラーを設けたことを特徴とする建設機械用キャビン。
【請求項2】
上記センターピラーと第1補強ピラーが設けられた一方のルーフサイドと、上記第2補強ピラーが設けられた他方のルーフサイド間に、これらピラーを連結するようにV字状の斜材を設けた請求項1記載の建設機械用キャビン。
【請求項3】
上記第1補強ピラーと上記第2補強ピラーには、それぞれ窓ガラスを取り付けるための凹凸が形成された請求項1又は2記載の建設機械用キャビン。
【請求項4】
上記第1補強ピラーと上記第2補強ピラーが、アウターパネルとインナーパネルを接合して閉断面状に形成された請求項1〜3いずれかに記載の建設機械用キャビン。
【請求項5】
上記斜材が、角パイプからなる請求項2記載の建設機械用キャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−56929(P2009−56929A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225737(P2007−225737)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】