説明

建設機械

【課題】本発明は、不要なエンジンの稼動を抑制可能であるとともに、空気調和装置が作動している際の燃料消費量を低減可能な建設機械を提供することを目的とする。
【解決手段】建設機械100は、エンジン1と、エンジン1により駆動されるポンプ2,3と、エンジン1とポンプ2,3との間に設けられたクラッチ機構4と、キャブ103内の空調を行うことが可能な空気調和装置5と、エンジン1及びクラッチ機構4の作動を制御する制御装置6と、を備えている。制御装置6は、エンジン1が稼動している状態において、空気調和装置5が作動しておらず、且つ、予め設定された停止条件を満たしたときは、エンジン1を停止する。また、エンジン1が稼動している状態において、空気調和装置5が作動しており、且つ、前記停止条件を満たしているときは、クラッチ機構4を断状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の条件を満たした場合にエンジンが停止するように制御される建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め定められた条件を満たした場合にエンジンが停止するように制御される建設機械として、特許文献1に記載の作業機械が知られている。この作業機械に搭載されたエンジンは、機体コントローラなどの制御手段により、始動、停止およびエンジンスピードなどが制御される。そして、当該制御手段は、操作レバーが操作されない状態が設定された時間を越えたときはアイドリング運転中のエンジンを自動的に停止させる。ただし、当該制御手段は、作業機械のキャブ内の空調に用いられる空気調和装置を運転中の場合等は、エンジンを停止させない。
これにより、エンジンアイドリング運転を停止でき、より大きな省エネルギ、低排気ガス運転の効果を得られる。また、作業機械が電力を必要とする場合は、エンジンアイドリング運転を停止することなく、発電機を駆動し続けることによりバッテリの消耗を防止できる。
【0003】
【特許文献1】特許3825289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された作業機械は、空気調和装置を運転している場合は、エンジンを停止させない構成である。そのため、例えば、当該作業機械の油圧回路に圧油を供給するための油圧ポンプがエンジンにより駆動され、当該エンジンの駆動/停止に従って作動/停止をする構成である場合は、空気調和装置を運転していれば、油圧を要する作業をしていないときであってもエンジンで油圧ポンプが駆動されることになる。この場合、油圧ポンプへの余分な動力が必要となり、燃料消費量が増加してしまい、省エネルギーの観点から望ましくない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、エンジンの不要な稼動を抑制可能であるとともに、空気調和装置が作動している際の燃料消費量を低減可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明は、所定の条件を満たした場合にエンジンが停止するように制御される建設機械に関する。
そして、本発明に係る建設機械は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の建設機械は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る建設機械における第1の特徴は、エンジンと、前記エンジンにより駆動されるポンプと、前記エンジンと前記ポンプとの間に設けられ、前記エンジンの動力を前記ポンプに伝達可能な接状態と、前記エンジンの動力を前記ポンプに伝達不能な断状態と、に切換可能なクラッチ機構と、キャブと、前記エンジンの動力を用いて作動し、前記キャブ内の空調を行うことが可能な空気調和装置と、前記エンジン及び前記クラッチ機構の作動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンジンが稼動している状態において、前記空気調和装置が作動しておらず、且つ、予め設定された停止条件を全て満たしたときは、前記エンジンを停止するとともに、前記エンジンが稼動している状態において、前記空気調和装置が作動しており、且つ、前記停止条件を全て満たしているときは、前記クラッチ機構を前記断状態に制御することである。
【0008】
この構成によると、制御装置は、エンジンが稼動している状態において、空気調和装置が作動しておらず、且つ、予め設定された停止条件を全て満たしたときは、エンジンを停止する。したがって、空気調和装置の作動の有無とは異なる条件であって、建設機械がエンジンの稼動を要しない状態であることを示す条件を前記停止条件として予め設定しておくことで、エンジンの不要な稼動を抑制可能である。これにより、建設機械の燃料消費量を低減可能である。
また、前記停止条件を満たしているときであっても、空気調和装置が作動している場合は、エンジンが停止されることはないため、空気調和装置の運転が可能である。これにより、快適なキャブ内環境を保つことが可能となる。このとき、制御装置により、クラッチ機構は前記断状態に制御されるため、エンジンからポンプに余分な動力が伝達されることはない。したがって、エンジンの駆動に要する燃料の消費量を、ポンプの駆動に要する燃料の消費量に相当する量だけ削減することができる。これにより、建設機械の燃料消費量を低減可能である。
【0009】
また、本発明に係る建設機械における第2の特徴は、前記制御装置は、停止している前記エンジンが駆動される際には、前記クラッチ機構が前記断状態となるように制御することである。
【0010】
この構成によると、エンジンが停止した状態から当該エンジンを駆動させる際に、ポンプを駆動させるための動力が不要になる。したがって、エンジンを駆動させる際の燃料消費量を削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る建設機械における第3の特徴は、前記ポンプから供給される圧油を動力源として作動する油圧装置と、前記油圧装置の油圧を検出する油圧検出手段とを備え、前記油圧検出手段によって検出された油圧が設定圧以下で、かつ、当該設定圧以下の状態が所定時間継続することを前記停止条件として含むことである。
【0012】
この構成によると、空気調和装置が作動しておらず、油圧検出手段によって検出された油圧が設定圧以下で、かつ、当該設定圧以下の状態が所定時間継続している場合でなければ制御装置によりエンジンが停止されることはない。この場合、油圧装置の作動状況を考慮して、建設機械がエンジンの駆動を要しない状態であるか否かが判断されるため、エンジンの駆動が必要なときにエンジンが停止されてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る建設機械における第4の特徴は、前記ポンプから供給される圧油を動力源として作動する油圧装置と、前記油圧装置を操作するための操作手段と、を備え、前記停止条件には、前記油圧装置に対して外部から負荷が作用していないこと、が含まれることである。
【0014】
この構成によると、空気調和装置が作動しておらず、且つ、油圧装置に対して外部から負荷が作用していない場合でなければ制御装置によりエンジンが停止されることはない。この場合、油圧装置に対して作用している外部負荷を考慮して、建設機械がエンジンの駆動を要しない状態であるか否かが判断される。これにより、油圧装置に対して外部負荷が作用しているときにエンジンが停止されて油圧装置に圧油を供給するためのポンプの駆動が停止してしまうことを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るクローラクレーン100(建設機械)を示す側面概略図である。本実施形態においては、スタンダードクレーンを例に挙げて説明する。尚、スタンダードクレーンに限らずラッフィングジブクレーン等の他のクレーンにも本発明を適用できる。また、クレーンに限らず油圧ショベル等、他の建設機械にも本発明を適用することができる。
【0017】
図1に示すように、クローラクレーン100は、クローラからなる下部走行体101と、当該下部走行体101上にて旋回軸受を介して縦軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体102と、当該上部旋回体102に設けられた走行時の運転室とクレーン作業時の操縦室を兼ねるキャブ103と、上部旋回体102にブームフットピン(図示せず)を中心として起伏自在に取り付けられたブーム104と、当該ブーム104の先端部に設けられた複数のブームポイントシーブ105と、当該ブームポイントシーブ105から吊下げられたフック106と、当該フック106に設けられた複数のフックシーブ107と、上部旋回体102に設けれられた巻上用ウインチ108と、当該巻上用ウインチ108から延びるとともにブームポイントシーブ105とフックシーブ107との間に掛け回される巻上ワイヤーロープ109と、を有している。そして、巻上用ウインチ108により巻上ワイヤーロープ109を巻き取ったり、送り出したりすることで、フック106を昇降することができる。また、上部旋回体102の後部にはガントリ110が立設されており、当該ガントリ110の頂部とブーム104の先端部とが、ブームガイライン111及びブーム起伏ロープ112を介して連結されている。ブーム起伏ロープ112は、上部旋回体102上に設けられたブーム起伏用ウインチ(図示せず)から延びるロープであり、ブームガイライン111の端部が連結された上部スプレッダ113とガントリ110の頂部に設けられた下部スプレッダ114との間に掛け回されている。前記ブーム起伏用ウインチによりブーム起伏ロープ112を巻き取ったり、送り出したりすることで、上部スプレッダ113と下部スプレッダ114との間隔を変化させてブーム104を起伏することができる。
【0018】
下部走行体101、巻上用ウインチ108、ブーム起伏用ウインチ、上部旋回体102を旋回させるための旋回機構等は、油圧モータ等を備えて構成される油圧により駆動される油圧装置であり、後述する油圧ポンプ2,3から供給される圧油により駆動される。
【0019】
図2は、図1に示すクローラクレーン100の主要部を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係るクローラクレーン100は、エンジン1と、油圧ポンプ2,3(ポンプ)と、エンジン1と油圧ポンプ2,3との間に設けられたクラッチ機構4と、エンジン1の動力を用いて作動する空気調和装置5と、エンジン1及びクラッチ機構4の動作を制御する制御装置6と、油圧ポンプ2,3から供給される圧油を動力源として作動する油圧装置7(下部走行体101、巻上用ウインチ108、ブーム起伏用ウインチ、上部旋回体102を旋回させるための旋回機構等)と、当該油圧装置7を操作するためのコントロールレバー8(操作手段)と、を備えている。
【0020】
エンジン1と油圧ポンプ2,3とは、クラッチ機構4及びパワーデバイダ9を介して連結されている。
クラッチ機構4は、エンジン1の動力をパワーデバイダ9に伝達可能な接状態と、エンジン1の動力をパワーデバイダ9に伝達不能な断状態と、に切換可能に構成されている。具体的には、クラッチ機構4は、重なり合うクラッチディスクの摩擦によりエンジン1の動力がパワーデバイダ9に伝達される多板クラッチとして構成することができる。尚、多板クラッチとして構成する場合に限らず、前記接状態と前記断状態とに切換可能な構成の様々なクラッチ機構を用いることができる。
【0021】
パワーデバイダ9は、入力軸9aと、出力軸9b,9cと、当該入力軸9aと出力軸9b,9cとの間に介在して入力軸9aの回転を出力軸9b,9cにそれぞれ伝達する複数のギア9dと、を有する。そのため、当該パワーデバイダ9により、クラッチ機構4を介してエンジン1から入力軸9aに伝達される動力は、出力軸9b,9cを介して油圧ポンプ2,3にそれぞれ分割して伝達される。
【0022】
尚、本実施形態においては、2つの油圧ポンプ2,3をエンジン1の動力を用いて駆動できる構成を例示したが、この場合に限らず、1つ又は3つ以上の油圧ポンプをエンジン1の動力で駆動できる構成にしてもよい。尚、油圧ポンプが1つの場合はパワーデバイダ9が不要となる。
【0023】
空気調和装置5は、クローラクレーン100が有するキャブ103内の空調(暖房、冷房等)を行うものである。当該空気調和装置5は、エンジン1の駆動軸と動力伝達ベルト等を介して連結されたコンプレッサを有し、エンジン1の駆動力を用いて空調運転を行うことができるように構成されている。また、空気調和装置5の駆動には、図示しないバッテリに蓄えられた電力が利用される。尚、当該バッテリには、エンジン1の駆動力を用いて図示しない発電機により発電された電力が蓄えられる。
【0024】
上述したように、本実施形態における油圧装置7としては、クローラクレーン100の下部走行体101、巻上用ウインチ108、ブーム起伏用ウインチ、上部旋回体102を旋回させるための旋回機構等が挙げられる。油圧ポンプ2,3からの圧油により駆動する油圧装置7は、キャブ103内に設けられたコントロールレバー8の操作に基づいて作動するように構成されている。例えば、コントロールレバー8としての走行操作レバーを操作することにより、走行用アクチュエータである下部走行体101が駆動し、クローラクレーン100を走行させることが可能である。尚、コントロールレバー8は、油圧装置7を含む油圧回路のコントロールバルブをパイロット制御するリモコン弁の操作レバーや、電磁比例弁を介してパイロット制御するジョイスティック等で構成することができる。
【0025】
制御装置6は、プログラムされたコンピュータによってエンジン1及びクラッチ機構4を制御する装置である。制御装置6には、空気調和装置5の作動を検知する空調動作検知センサ5aと、油圧装置7に対して作用する外部負荷を検知する外部負荷検知センサ7aと、コントロールレバー8が操作されたことを検知するレバー操作検知センサ8aと、が接続されている。尚、外部負荷検知センサ7aとしては、例えば、フック106に吊下げられている吊荷の荷重を検知する荷重検知センサを用いることができる。そして、制御装置6は、空調動作検知センサ5aと、外部負荷検知センサ7aと、レバー操作検知センサ8aと、の検知結果に基づいて、エンジン1及びクラッチ機構4を制御する。
【0026】
具体的には、制御装置6は、エンジン1が駆動している状態において、空気調和装置5が作動しておらず、且つ、予め定められた停止条件を全て満たしているときは、エンジン1を停止する。ここで、停止条件とは、空気調和装置5が作動しているか否かの条件とは異なる条件であって、クローラクレーン100がエンジン1の駆動を要しない状態であることを示す条件である。本実施形態においては、停止条件は、コントロールレバー8が予め設定された時間を越えて操作されておらず、且つ、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していないこと、として設定されている。したがって、例えば、フック106に荷物が吊下げられている場合等は、油圧装置7に対して外部から負荷が作用しているため、エンジン1が停止されることはない。
【0027】
また、制御装置6は、エンジン1が駆動している状態において、空気調和装置5が作動しており、且つ、予め定められた前記停止条件を全て満たしているときは、クラッチ機構4を断状態に制御する。
【0028】
次に、制御装置6によるエンジン及びクラッチ機構の制御方法について図3に基づいて説明する。図3は、制御装置6によるエンジン及びクラッチ機構の制御フローを示す図である。尚、制御装置6は、複数の機能部(停止条件判定部6a、エンジン制御部6b、及び、クラッチ制御部6c)を有して構成されており、各機能部により以下の処理が実行される。
【0029】
制御装置6の停止条件判定部6aは、まず、外部負荷検知センサ7aとレバー操作検知センサ8aからの検知結果に基づいて、停止条件(コントロールレバー8が予め設定された時間を越えて操作されておらず、且つ、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していないこと)が成立しているか否かを判定する(ステップ101、以下、S101と称する。他のステップも同様に称する。)。前記停止条件が成立している場合(S101:YES)は、空調動作検知センサ5aからの検知結果に基づいて、空気調和装置5が作動しているか否かを判定する(S102)。一方、前記停止条件が成立していない場合(S101:NO)は、クラッチ機構4を接状態に維持し(又は切り換えて)(S103)、前記停止条件が成立するまで、当該ステップ(S101,S103)を所定の時間間隔でループする(即ち、エンジン1を稼動させ、クラッチ機構4を接状態とした状態で維持される)。
【0030】
前記停止条件が成立している場合(S101:YES)において、空気調和装置5が作動していない場合(S102:YES)は、エンジン1が停止される(S104)。具体的には、停止条件判定部6aからエンジン制御部6bに、前記停止条件が成立しており、且つ、空気調和装置5が作動していない旨の信号が送信され、当該信号を受けたエンジン制御部6bは、エンジン1を停止させる。
【0031】
前記停止条件が成立している場合(S101:YES)において、空気調和装置5が作動している場合(S102:NO)は、クラッチ機構4が断状態に切り換えられる(S105)。具体的には、停止条件判定部6aからエンジン制御部6bに、前記停止条件が成立しており、且つ、空気調和装置5が作動している旨の信号が送信され、当該信号を受けたクラッチ制御部6cは、クラッチ機構4を断状態に切り換える。
【0032】
クラッチ機構4が断状態に切り換えられると、再度、前記停止条件が成立しているか否かを判定するステップ(S101)に移行する。クラッチ機構4が断状態に切り換えられた後、例えば、オペレータによりコントロールレバー8の操作がなされ、停止条件が成立しなくなった場合は(S101:NO)、クラッチ機構4は接状態に切り換えられる(S103)。一方、クラッチ機構4が断状態に切り換えられた後、例えば、前記停止条件が成立した状態でオペレータにより空気調和装置5の運転が停止された場合は(S102:YES)、エンジン1が停止される(S104)。
【0033】
次に、エンジン1が停止しているときの制御装置6による制御について説明する。
エンジン1が停止しているときに、例えば、オペレータによりコントロールレバー8の操作がなされる等により停止条件が成立しなくなった場合、又は、空気調和装置5の運転がなされた場合は、制御装置6はクラッチ機構4を断状態にしてエンジン1を始動させる。
尚、コントロールレバー8の操作がなされる等により停止条件が成立しなくなった場合においては、制御装置6はクラッチ機構4を断状態にしてエンジン1を始動させた後、クラッチ機構4を接状態に切り換える。これにより、適切に、油圧ポンプ2,3を駆動させることができる。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態に係るクローラクレーン100は、エンジン1と、エンジン1により駆動される油圧ポンプ2,3と、エンジン1と油圧ポンプ2,3との間に設けられ、エンジン1の動力を油圧ポンプ2,3に伝達可能な接状態と、エンジン1の動力を油圧ポンプ2,3に伝達不能な断状態と、に切換可能なクラッチ機構4と、エンジン1の動力を用いて作動し、キャブ103内の空調を行うことが可能な空気調和装置5と、エンジン1及びクラッチ機構4の作動を制御する制御装置6と、を備えている。
制御装置6は、エンジン1が稼動している状態において、空気調和装置5が作動しておらず、且つ、予め設定された時間を越えてコントロールレバー8が操作されておらず、且つ、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していない場合は、エンジン1を停止する。
また、制御装置6は、エンジン1が稼動している状態において、空気調和装置5が作動しており、且つ、予め設定された時間を越えてコントロールレバー8が操作されておらず、且つ、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していない場合は、クラッチ機構4を前記断状態に制御する。
【0035】
この構成によると、制御装置6は、エンジン1が稼動している状態において、空気調和装置5が作動しておらず、且つ、予め設定された停止条件(予め設定された時間を越えてコントロールレバー8が操作されていないこと、及び、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していないこと)を全て満たしたときは、エンジン1を停止する。これにより、クローラクレーン100がエンジン1の稼動を要しない状態である場合は、不要なエンジンの稼動を抑制可能である。これにより、クローラクレーン100の燃料消費量を低減可能である。
【0036】
また、前記停止条件を満たしているときであっても、空気調和装置5が作動している場合は、エンジン1が停止されることはないため、空気調和装置5の運転が可能である。これにより、快適なキャブ内環境を保つことが可能となる。このとき、制御装置6により、クラッチ機構4は断状態に制御されるため、エンジン1から油圧ポンプ2,3に余分な動力が伝達されることはない。したがって、エンジン1の駆動に要する燃料の消費量を、油圧ポンプ2,3の駆動に要する燃料の消費量に相当する量だけ削減することができる。これにより、クローラクレーン100の燃料消費量を低減可能である。また、排気ガスの排出量を低減することができる。
【0037】
特に、クレーンにおいては、運転操作をしていない状況においても、吊荷を保持した状態で待機している場合や、トラック等での荷物の到着を持つ場合等、オペレータはいつでも操作できる状態でキャブ内で待機している時間が長い。そのため、キャブ内の空調のために空気調和装置を作動させる時間も長い。また、キャブ内の空間は小さく、且つ、吊荷を確認するために窓が大きい場合が多く、太陽の日射等、外気の影響を受け易いため、空気調和装置の使用頻度も高くなる。このような事情から、上記構成のクレーンとすることで燃料消費量の低減が大幅に可能になる。
【0038】
また、前記停止条件に、予め設定された時間を越えてコントロールレバー8が操作されていないこと、が含まれるため、空気調和装置5が作動しておらず、且つ、予め設定された時間を越えてコントロールレバー8が操作されていない場合でなければ制御装置6によりエンジン1が停止されることはない。この場合、コントロールレバー8の操作状況を考慮して、クローラクレーン100がエンジン1の駆動を要しない状態であるか否かが判断されるため、エンジン1の駆動が必要なときにエンジン1が停止されてしまうことを防ぐことができる。
【0039】
また、前記停止条件に、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していないこと、が含まれるため、空気調和装置5が作動しておらず、且つ、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していない場合でなければ制御装置6によりエンジン1が停止されることはない。この場合、油圧装置7に対して作用している外部負荷を考慮して、クローラクレーン100がエンジン1の駆動を要しない状態であるか否かが判断される。これにより、油圧装置7に対して外部負荷が作用しているときにエンジン1が停止されて油圧装置7に圧油を供給するための油圧ポンプ2,3の駆動が停止してしまうことを防ぐことができる。
【0040】
また、本実施形態において、制御装置6は、停止しているエンジン1が駆動される際には、クラッチ機構4が断状態となるように制御する。
【0041】
この構成によると、エンジン1が停止した状態から当該エンジン1を駆動させる際に、クラッチ機構4が断状態であるので、油圧ポンプ2,3を駆動させるための動力が不要になる。したがって、エンジン1を駆動させる際の燃料消費量を削減することができる。また、エンジン1を再駆動するときの、油圧ポンプ2,3を駆動させるための負荷が減るため、エンジン1を再駆動するためのスターターの負担が減り、当該スターターの寿命を延ばすことができる。
【0042】
尚、本実施形態では、停止条件が、予め設定された時間を越えてコントロールレバー8が操作されていないこと、及び、油圧装置7に対して外部から負荷が作用していないこと、である場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されない。
例えば、オペレータによりコントロールレバー8の操作以外の所定の操作がなされたことを停止条件として更に加えても良い。この場合、当該所定の操作がオペレータによりなされていない場合は、自動的にエンジン1が停止することはない。そのため、オペレータの意に反してエンジン1が停止されることを防ぐことができる。
また、油圧装置7の油圧を検出する油圧センサ(油圧検出手段)を設置し、当該油圧センサによって検出された油圧が設定圧以下で、かつ、当該設定圧以下の状態が所定時間継続することを停止条件として含む構成としてもよい。この場合、油圧装置7の作動状況を考慮して、建設機械100がエンジン1の駆動を要しない状態であるか否かが判断されるため、エンジン1の駆動が必要なときにエンジン1が停止されることをより確実に防ぐことができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係るクローラクレーンを示す側面概略図である。
【図2】図1に示すクローラクレーンの主要部を示すブロック図である。
【図3】制御装置によるエンジン及びクラッチ機構の制御フローを示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン
2,3 油圧ポンプ(ポンプ)
4 クラッチ機構
5 空気調和装置
6 制御装置
7 油圧装置
100 クローラクレーン(建設機械)
103 キャブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動されるポンプと、
前記エンジンと前記ポンプとの間に設けられ、前記エンジンの動力を前記ポンプに伝達可能な接状態と、前記エンジンの動力を前記ポンプに伝達不能な断状態と、に切換可能なクラッチ機構と、
キャブと、
前記エンジンの動力を用いて作動し、前記キャブ内の空調を行うことが可能な空気調和装置と、
前記エンジン及び前記クラッチ機構の作動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記エンジンが稼動している状態において、前記空気調和装置が作動しておらず、且つ、予め設定された停止条件を満たしたときは、前記エンジンを停止するとともに、
前記エンジンが稼動している状態において、前記空気調和装置が作動しており、且つ、前記停止条件を満たしているときは、前記クラッチ機構を前記断状態に制御することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記制御装置は、停止している前記エンジンが駆動される際には、前記クラッチ機構が前記断状態となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ポンプから供給される圧油を動力源として作動する油圧装置と、
前記油圧装置の油圧を検出する油圧検出手段とを備え、
前記油圧検出手段によって検出された油圧が設定圧以下で、かつ、当該設定圧以下の状態が所定時間継続することを前記停止条件として含む請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ポンプから供給される圧油を動力源として作動する油圧装置と、
前記油圧装置を操作するための操作手段と、
を備え、
前記停止条件には、前記油圧装置に対して外部から負荷が作用していないこと、が含まれることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−281077(P2009−281077A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135186(P2008−135186)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】