説明

建設機械

【課題】 キャブの転倒を規制する転倒規制装置を、簡単な作業で安価に設けることができ、またキャブを容易に取付け、取外せるようにする。
【解決手段】 キャブ7を構成するベース枠体8の左後取付ベース11と旋回フレーム5のキャブ支持部6との間に転倒規制装置42を設け、補強装置32の連結部材35と旋回フレーム5のキャブ支持部6との間に転倒規制装置47を設ける。これにより、キャブ7に対して大きな荷重が作用した場合でも、キャブ7が転倒するのを規制することができ、防振マウント41の損傷を防止することができる。また、転倒規制装置42,47は、ストッパボルト44,49を旋回フレーム5の下側から通し穴43,48に通してキャブ7側に螺着するだけの簡単な作業で組立てることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械に関し、特に、フレーム上にキャブを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体を構成する旋回フレーム上には、左前側に位置してキャブが搭載されている。この油圧ショベルのキャブは、中空構造体をなすキャブボックスと、該キャブボックスの下側を閉塞する床板とを有し、前記床板上にはオペレータが着座する運転席、各種レバー等が設けられている。そして、キャブは、旋回フレームに対し複数個の防振マウントを介して旋回フレームに支持されている。これにより、キャブに伝わる振動を各防振マウントの働きにより緩和し、乗り心地を良好にしている。
【0004】
また、旋回フレーム上にキャブを支持する各防振マウントは、例えば減衰力発生手段を内蔵した本体部と、下側が該本体部内の減衰力発生手段に接続され、上側が本体部から突出した取付ねじとにより大略構成され、前記取付けねじは前記本体部内で減衰力発生手段に接続されると共に、前記本体部に対し弾性を有するゴム部材を介して変位可能に取付けられている。
【0005】
そして、防振マウントは、本体部が旋回フレームに取付けられ、取付ねじがキャブの下側に取付けられている。これにより、防振マウントは、走行時、作業時に旋回フレームからキャブに伝わる振動を、本体部に対して取付ねじを変位させることにより減衰力発生手段で減衰し、キャブに伝わる振動を緩和している。
【0006】
ここで、油圧ショベルは、例えば傾斜の急な斜面で無理な姿勢で作業を行なった場合に転倒する可能性があり、油圧ショベルが転倒した場合には、キャブの側方に大きな荷重が作用する。そして、キャブに大きな荷重が作用すると、該キャブが持ち上がるように大きく変位するから、各防振マウントの減衰力発生手段、ゴム部材等が損傷する虞がある。従って、油圧ショベルには、転倒するような事態が生じたとしても、各防振マウントが常用ストロークを超えて大きく変位しないように、旋回フレームとキャブとの間に該キャブの転倒を規制する補強部材を設けている。
【0007】
そこで、旋回フレームとキャブとの間に設けられた補強部材の構成について説明する。この補強部材は、床板を取付けるためにキャブボック内の下側に設けられた連結部材に断面ほぼコ字状に形成した補強部材を取付け、該補強部材の下側を床板に設けた開口を通して床下の旋回フレームに係合可能な位置に配置する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−339406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来技術によるものでは、キャブの変位を規制する補強部材を設けるために、キャブの床板に補強部材を通す開口を形成する必要がある。また、補強部材を断面ほぼコ字状に加工する必要がある。このため、補強部材を設けるために多くの加工作業が必要になるから、作業性の低下、製造コストの上昇等を招くという問題がある。
【0010】
しかも、従来技術の補強部材は、キャブ内の後端部に配設しているから、修理やメンテナンスのためにキャブを取外す場合には、作業が困難なキャブ内の後端部で補強部材を取付けているボルトをスパナ等の工具を用いて取外さなくてはならず、作業性が悪いという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、キャブの変位を規制する転倒規制装置を、簡単な作業で安価に設けることができ、作業性の向上、製造コストの低減を図ることができるようにした建設機械を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、フレームからキャブを取外す場合にはキャブの外部から転倒規制装置を取外すことができ、修理作業、メンテナンス作業等の作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明による建設機械は、支持構造体をなすフレームと、該フレーム上に配設され内部に運転室を画成し左,右方向の一側に乗降口を有するキャブと、前記フレームとキャブとの間に設けられ前記キャブをフレームに対して振動を緩衝した状態で支持する防振マウントとを備えている。
【0014】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記キャブは、枠構造体からなるベース枠体と、該ベース枠体上に設けられ左,右方向の一の側面に上,下方向に延びるセンタピラーを有する中空なキャブボックスと、該キャブボックスの下側を閉塞するように前記ベース枠体に取付けられた床板と、該床板と前記キャブボックスのセンタピラーとの間に設けられ前記センタピラーを内側から補強する補強装置とを含んで構成し、前記補強装置と前記フレームとの間には、前記防振マウントの常用ストロークを超えて前記キャブが大きく変位するのを規制する転倒規制装置を設ける構成としたことにある。
【0015】
請求項2の発明によると、前記補強装置は、前記床板上に左,右方向に延びて設けられた床板補強部材と、該床板補強部材の一方の端部と前記キャブボックスのセンタピラーとを連結する連結部材とにより構成し、前記転倒規制装置は、前記補強装置の連結部材と前記フレームとの間に設ける構成としたことにある。
【0016】
請求項3の発明によると、前記転倒規制装置は、前記キャブの下側に位置して前記フレームに設けられた上,下方向の通し穴と、上側が前記キャブに固定され下側が該通し穴内を貫通して延びたボルトと、該ボルトの下端部側に設けられ前記キャブを持ち上げる動きを前記通し穴の周囲に当接して規制するストッパとにより構成したことにある。
【0017】
請求項4の発明によると、前記転倒規制装置を構成する前記ストッパと前記通し穴の周囲のフレームとの間には、前記キャブが前記防振マウントの常用ストロークの範囲で変位している状態では前記ストッパと前記フレームとを離間させ常用ストロークの範囲を越えたときに前記ストッパと前記フレームとを当接させる緩衝用隙間を設けたことにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、建設機械は、例えば急斜面等で無理な姿勢のまま走行したり、作業したりするときに転倒する虞があり、該建設機械が転倒した場合には、乗降口が位置するキャブの一側から建設機械の重量に応じた大きな荷重が作用する。このため、キャブボックスの一の側面には、上,下方向に延びるセンタピラーを設けると共に、センタピラーを補強装置によって内側から補強しているから、大きな荷重に対してもキャブボックスの変形を小さく抑えることができる。また、キャブの一側からの荷重は該キャブの一側を持ち上げて転倒させるように作用する。しかし、センタピラーを補強する補強装置とフレームとの間に転倒規制装置を設けているから、該転倒規制装置によってキャブが大きく変位するのを規制することができる。
【0019】
ここで、転倒規制装置は、センタピラーを補強する強度部材からなる補強装置を利用して設けているから、該転倒規制装置をキャブ側に高強度に取付けることができ、キャブの転倒を確実に防止することができる。また、センタピラーを補強する補強装置は、乗降口の近傍に配設されているから、転倒規制装置を取付けたり、取外したりする作業を用意に行なうことができ、作業性を向上することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、床板補強部材とセンタピラーとを連結する強度部材として形成された連結部材を利用して転倒規制装置を取付けることができるから、キャブに対する転倒規制装置の取付強度を高めることができ、耐久性等を向上することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、キャブが防振マウントの常用ストロークを超えて大きく変位しようとしたときに、転倒規制装置は、通し穴の周囲にボルトの下端部に設けられたストッパを当接させることにより、この位置でキャブの変位を防止することができ、防振マウントの損傷を防止することができる。
【0022】
また、転倒規制装置は、フレームに設けた通し穴にボルトを下側から挿通し、キャブの下側に取付けることにより容易に設置することができる。一方、修理やメンテナンスのためにフレームからキャブを取外す場合には、キャブの外部からボルトを取外すことにより、キャブを簡単な作業で取外すことができる。この結果、キャブの取付け作業、取外し作業の作業性を向上でき、また製造コストを低減することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、防振マウントが常用ストロークの範囲で変位しているときには、ストッパとフレームとが離間しているから、防振マウントを機能させてフレームからキャブに伝わる振動を緩衝することができる。一方、防振マウントが常用ストロークを越えて変位したときには、ストッパと通し穴の周囲のフレームとを当接させ、これ以上の変位を規制することにより、防振マウントの損傷を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】旋回フレームを単体で拡大して示す平面図である。
【図3】図1中のキャブを拡大して示す正面図である。
【図4】図3に示すキャブの背面図である。
【図5】ドアを省略した状態でキャブの構成を図3中の矢示V−V方向から示す拡大横断面図である。
【図6】ベース枠体、キャブボックス、床板、補強装置をキャブ支持部上に搭載した状態で右前側から拡大して示す外観斜視図である。
【図7】ベース枠体を拡大して示す平面図である。
【図8】左後取付ベース等を示す要部拡大の斜視図である。
【図9】床板、センタピラーに補強装置を取付けた状態を示す要部拡大の斜視図である。
【図10】床板、センタピラー、床板補強部材、連結部材、転倒規制装置の一部を分解した状態で示す要部拡大の分解斜視図である。
【図11】連結部材を単体で拡大して示す斜視図である。
【図12】連結部材を図11中の矢示XII−XII方向からみた一部破断の左側面図である。
【図13】キャブ支持部とベース枠体との間に転倒規制装置を設けた状態を図5中の矢示XIII−XIII方向からみた要部拡大の断面図である。
【図14】キャブ支持部と連結部材との間に転倒規制装置を設けた状態を図5中の矢示XIV−XIV方向からみた要部拡大の断面図である。
【図15】本発明の第1の変形例による転倒規制装置を図13と同様位置からみた要部拡大の断面図である。
【図16】本発明の第2の変形例による転倒規制装置を図13と同様位置からみた要部拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図14に従って詳細に説明する。
【0026】
図1において、1は建設機械としてのクローラ式の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行なう作業装置4とにより大略構成されている。
【0027】
また、上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に設けられた後述の旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の左前側に搭載された後述のキャブ7と、該キャブ7を前記旋回フレーム5に対して振動を緩衝した状態で支持する後述の防振マウント41と、キャブ7が大きく変位するのを抑える転倒規制装置42,47とを備えている。
【0028】
5は上部旋回体3のベースをなす支持構造体として形成された旋回フレームで、該旋回フレーム5は、図2に示すように、前,後方向に延びて設けられた厚肉な底板5Aと、該底板5A上に前,後方向に延びて立設され、前側に作業装置4が取付けられる左,右の縦板5B,5Bと、前記底板5A、各縦板5Bから左,右方向に張出した複数本の張出ビーム5Cと、該各張出ビーム5Cの先端部に前,後方向に延びて設けられた左,右のサイドフレーム5D,5Dと、左前側に設けられた後述のキャブ支持部6とにより大略構成されている。
【0029】
6は旋回フレーム5の一部をなし該旋回フレーム5の左前側に設けられたキャブ支持部で、該キャブ支持部6は、前,後方向の中間部に位置し、左,右方向に延びた両端が底板5A、左縦板5Bと左サイドフレーム5Dに固着された中間横梁6Aと、該中間横梁6Aの後側に間隔をもって配置され、両端が底板5A、左縦板5Bと左サイドフレーム5Dに固着された後横梁6Bと、前記中間横梁6Aの右端部から左サイドフレーム5Dと平行に前側に延びた縦梁6Cと、前記中間横梁6Aの前側に間隔をもって左,右方向に延び、前記左サイドフレーム5Dと縦梁6Cとを連結した前枠6Dとにより大略構成されている。
【0030】
ここで、キャブ支持部6を構成する後横梁6Bは、上板6B1と前板6B2とにより断面ほぼL字状に形成され、前記上板6B1には後述する防振マウント41の本体部41Aを取付けるためのマウント取付穴6Eが左,右方向に離間して2個形成されている。また、キャブ支持部6の前枠6Dは、上板6D1と前板6D2とにより断面ほぼL字状に形成され、前記上板6D1には防振マウント41の本体部41Aを取付けるためのマウント取付穴6Fが左,右方向に離間して2個形成されている。
【0031】
さらに、後横梁6Bの上板6B1には、左側のマウント取付穴6Eの前側に位置して後述する転倒規制装置42の通し穴43が設けられている。また、中間横梁6Aは、上板6A1と前板6A2とにより断面L字状に形成され、前記上板6A1には、左側に位置して後述する転倒規制装置47の通し穴48が設けられている。
【0032】
次に、7は旋回フレーム5のキャブ支持部6上に搭載された油圧ショベル1のキャブで、該キャブ7は、後述の防振マウント41を介してキャブ支持部6上に設けられ、オペレータが乗車する後述の運転室31を画成している。そして、キャブ7は、図3ないし図6に示すように、後述のベース枠体8、キャブボックス17、床板30、補強装置32、運転席38等によって大略構成されている。
【0033】
8はキャブ7の下側に設けられたベース枠体で、該ベース枠体8は、後述のキャブボックス17、床板30等と共にキャブ7を構成している。そして、ベース枠体8は、図5、図6に示す如く、後述の左前取付ベース9、右前取付ベース10、左後取付ベース11、右後取付ベース12、左接続フレーム13、右接続フレーム14、前接続フレーム15、後接続フレーム16により、前,後方向に長尺な長方形状の枠構造体として形成されている。
【0034】
また、ベース枠体8は、キャブボックス17の骨組を形成する左前ピラー18、右前ピラー19、左後ピラー20、右後ピラー21、センタピラー24等を固着し、また、キャブ7を旋回フレーム5のキャブ支持部6上に搭載するときに後述の防振マウント41を取付ける強度上重要な部品となっている。従って、ベース枠体8は、例えば油圧ショベル1の転倒等を想定しキャブ7に大きな荷重が作用した場合でも、キャブボックス17が大きく変形しないように、十分に高い強度をもって形成されている。
【0035】
そこで、キャブ7の下部に該キャブ7の一部として設けられたベース枠体8の構成について詳しく説明する。
【0036】
9はベース枠体8の左前の角隅位置に配設された左前取付ベースで、該左前取付ベース9は、例えば鋳鋼等の材料を用いた鋳造手段または鍛造手段により、単一のブロック体からなる鋳造部品または鍛造部品として成形されている。そして、左前取付ベース9は、図7に示す如く、ほぼ三角形状に形成された基板9Aと、該基板9Aから上向きに突出した支持突起9Bと、前記基板9Aのほぼ中央位置に設けられたマウント取付穴9Cとにより大略構成されている。また、左前取付ベース9のマウント取付穴9Cには、後述する防振マウント41の取付ねじ41Bが挿通される。
【0037】
10はベース枠体8の右前の角隅位置に配設された右前取付ベースで、該右前取付ベース10は、左前取付ベース9とほぼ同様に、例えば単一のブロック体からなる鋳造部品または鍛造部品として形成されている。そして、右前取付ベース10は、ほぼ三角形状に形成された基板10Aと、該基板10Aから上向きに突出した支持突起10Bと、前記基板10Aの右端部に位置して支持突起10Bから後側に延びたフレーム取付部10Cと、前記基板10Aのほぼ中央位置に設けられ、防振マウント41の取付ねじ41Bが挿通されるマウント取付穴10Dとにより大略構成されている。
【0038】
11はベース枠体8の左後の角隅位置に配設された左後取付ベースで、該左後取付ベース11は、左前取付ベース9とほぼ同様に、例えば単一のブロック体からなる鋳造部品または鍛造部品として形成されている。これにより、左後取付ベース11は、他の取付ベース9,10,12と共に、キャブ7を防振マウント41に連結するのに十分な強度を有している。
【0039】
そして、左後取付ベース11は、図8に示す如く、左側から右側に向けて屈曲しつつ後側に斜めに延びたリブ11Aと、該リブ11Aの左端部に前向きに形成されたフレーム取付部11Bと、前記リブ11Aの右端部に右向きに形成されたフレーム取付部11Cと、前記リブ11Aから前側に張出した前張出部11Dと、前記リブ11Aから後側に張出した後張出部11Eと、前記前張出部11Dのほぼ中央位置に設けられたストッパ取付穴11Fと、前記後張出部11Eのほぼ中央位置に設けられたマウント取付穴11Gとにより大略構成されている。
【0040】
ここで、左後取付ベース11の前張出部11Dに設けられたストッパ取付穴11Fは、例えばねじ山が刻設されたねじ穴として形成され、該ストッパ取付穴11Fには後述する転倒規制装置42のストッパボルト44が下側から螺着される。また、左後取付ベース11のマウント取付穴11Gには防振マウント41の取付ねじ41Bが挿通され、このときに、マウント取付穴11Gは、運転室31の外部で左後の角隅位置に配置されているから、キャブ7の外部からの簡単な作業で防振マウント41を取付けることができる。
【0041】
12はベース枠体8の右後の角隅位置に配設された右後取付ベースで、該右後取付ベース12は、左前取付ベース9とほぼ同様に、例えば単一のブロック体からなる鋳造部品または鍛造部品として形成されている。そして、右後取付ベース12は、図7に示す如く、右側から左側に向けて屈曲しつつ後側に斜めに延びたリブ12Aと、該リブ12Aの右端部に前向きに形成されたフレーム取付部12Bと、前記リブ12Aの左端部に左向きに形成されたフレーム取付部12Cと、前記リブ12Aから後側に張出した張出部12Dと、該張出部12Dの右寄り位置に設けられたマウント取付穴12Eとにより大略構成されている。
【0042】
さらに、右後取付ベース12のマウント取付穴12Eは、前述した左後取付ベース11のマウント取付穴11Gと同様に、運転室31の外部で右後の角隅位置に配置しているから、キャブ7の外部からの簡単な作業で防振マウント41を取付けることができる。
【0043】
13はベース枠体8の左側に位置して前,後方向に延びて設けられた左接続フレームを示している。この左接続フレーム13は、例えば左前取付ベース9と左後取付ベース11との間を接続する板状フレーム13Aと、後述のセンタピラー24と左後取付ベース11との間に設けられた筒状フレーム13Bとにより大略構成されている。
【0044】
ここで、左接続フレーム13の板状フレーム13Aは、例えば横断面がほぼJ字状、L字状等の曲げ板を用いて形成され、その前端部が左前取付ベース9の基板9A下面に溶接手段を用いて固着され、後端部が左後取付ベース11のリブ11A下面に固着される。
【0045】
また、左接続フレーム13の筒状フレーム13Bは、例えば横断面が角筒状のパイプ部材を用いて形成されている。これにより、筒状フレーム13Bは、左後取付ベース11、板状フレーム13A、センタピラー24間の強度を高めることができる。そして、筒状フレーム13Bは、その前側が板状フレーム13A等にボルト止めされ、後端部が左後取付ベース11のフレーム取付部11Bに溶接手段を用いて固着される。
【0046】
14はベース枠体8の右側に位置して前,後方向に延びて設けられた右接続フレームで、該右接続フレーム14は、例えば横断面が角筒状のパイプ部材を用いて形成されている。そして、右接続フレーム14は、その前端部が右前取付ベース10のフレーム取付部10Cに溶接手段を用いて固着され、後端部が右後取付ベース12のフレーム取付部12Bに固着される。
【0047】
15はベース枠体8の前側に位置して左,右方向に延びて設けられた前接続フレームで、該前接続フレーム15は、所望の形状に折曲げられた複数枚のパネル部材15A,15B等からなり、それぞれの左側部分が左前取付ベース9に溶接手段を用いて固着され、右側部分が右前取付ベース10に固着される。
【0048】
16はベース枠体8の後側に位置して左,右方向に延びて設けられた後接続フレームで、該後接続フレーム16は、例えば横断面が角筒状のパイプ部材を用いて形成されている。そして、後接続フレーム16は、その左端部が左後取付ベース11のフレーム取付部11Cに溶接手段を用いて固着され、右端部が右後取付ベース12のフレーム取付部12Cに固着される。
【0049】
17はベース枠体8上に設けられたキャブボックスで、該キャブボックス17はキャブ7の外形を構成している。そして、キャブボックス17は、図3、図4、図5に示す如く、ベース枠体8から上側に延びる後述のピラー18〜24によって支持された前面部17A、後面部17B、左側面部17C、右側面部17Dの4面と天面部17Eによって箱状体として形状されている。また、前面部17Aには前窓(図示せず)が取付けられ、左側面部17Cには後述の乗降口28にドア29が開,閉可能に設けられている。
【0050】
そして、キャブボックス17は、後述する運転席38の周囲を覆うもので、左前ピラー18、右前ピラー19、左後ピラー20、右後ピラー21、左ルーフピラー22、右ルーフピラー23、センタピラー24、乗降口28、リヤパネル25、サイドパネル26、ルーフパネル27等により大略構成されている。また、キャブボックス17を構成する左前ピラー18、右前ピラー19、左後ピラー20、右後ピラー21の下端部は、ベース枠体8の各取付ベース9,10,11,12に溶接手段を用いて固着されている。
【0051】
そこで、キャブ7の一部として設けられたキャブボックス17の構成について詳しく説明する。
【0052】
18はキャブボックス17の左前部で上,下方向に延びた左前ピラーで、該左前ピラー18は、キャブボックス17の前面部17Aと左側面部17Cとの間の稜線を形成している。また、左前ピラー18は、例えばパイプ部材からなり、その下端部はベース枠体8の左前取付ベース9に溶接手段等を用いて固着されている。
【0053】
19はキャブボックス17の右前部で上,下方向に延びた右前ピラーで、該右前ピラー19は、キャブボックス17の前面部17Aと右側面部17Dとの間の稜線を形成している。また、右前ピラー19は、左前ピラー18とほぼ同様に、例えばパイプ部材からなり、その下端部はベース枠体8の右前取付ベース10に溶接されている。
【0054】
一方、20はキャブボックス17の左後部で上,下方向に延びた左後ピラーで、該左後ピラー20は、キャブボックス17の後面部17Bと左側面部17Cとの間の稜線を形成している。また、左後ピラー20は、左前ピラー18とほぼ同様に、例えばパイプ部材からなり、その下端部はベース枠体8の左後取付ベース11に溶接されている。
【0055】
21はキャブボックス17の右後部で上,下方向に延びた右後ピラーで、該右後ピラー21は、キャブボックス17の後面部17Bと右側面部17Dとの間の稜線を形成している。また、右後ピラー21は、左前ピラー18とほぼ同様に、例えばパイプ部材からなり、その下端部はベース枠体8の右後取付ベース12に溶接されている。
【0056】
さらに、22はキャブボックス17の左上側で前,後方向に延びた左ルーフピラーで、該左ルーフピラー22は、キャブボックス17の左側面部17Cと天面部17Eとの間の稜線を形成している。また、左ルーフピラー22は、左前ピラー18とほぼ同様にパイプ部材からなり、左前ピラー18の上部と左後ピラー20の上部に溶接されている。
【0057】
23はキャブボックス17の右上側で前,後方向に延びた右ルーフピラーで、該右ルーフピラー23は、キャブボックス17の右側面部17Dと天面部17Eとの間の稜線を形成している。また、右ルーフピラー23は、左前ピラー18とほぼ同様にパイプ部材からなり、右前ピラー19の上部と右後ピラー21の上部に溶接されている。また、左,右のルーフピラー22,23は、左,右方向に延びる複数本の連結フレーム(図示せず)によって連結されている。
【0058】
24はキャブボックス17を構成する左側面部17Cの前,後方向の中間部位に設けられたセンタピラーで、該センタピラー24は、例えばほぼL字形状にプレス加工された内側と外側のパネル部材を溶接により固着することによって中空の板体として形成されている。また、センタピラー24は、左側面部17Cの前,後方向のほぼ中間部に位置して上,下方向に延びたピラー部24Aと、該ピラー部24Aの下部側に一体的に設けられたサイドパネル部24Bとによって構成されている。
【0059】
また、ピラー部24Aを構成する内側のパネル部材には、図10に示すように、根本部分となる下側位置に上,下に間隔をもって例えば2個の連結部材取付穴24Cが設けられ、該各連結部材取付穴24Cは、後述する補強装置32の連結部材35を取付けるためのもので、例えばナットを溶接して形成されている。
【0060】
そして、センタピラー24のピラー部24Aは、その下端部がベース枠体8の左接続フレーム13に固着され、上端部が左ルーフピラー22に固着されている。また、センタピラー24のサイドパネル部24Bは、下端部がベース枠体8の左接続フレーム13に固着され、後端部が左後ピラー20に固着されている。これにより、センタピラー24は、例えば油圧ショベル1が転倒したり、重量物が衝突した場合に、キャブ7の変形を抑える支柱として機能するものである。
【0061】
25はキャブボックス17の後面部17Bを形成するリヤパネル、26はキャブボックス17の右側面部17Dを形成するサイドパネル、27はキャブボックス17の天面部17Eを形成するルーフパネルをそれぞれ示している。
【0062】
28はキャブボックス17の左側面部17Cに位置してセンタピラー24よりも前側に設けられた乗降口(図4、図6参照)で、該乗降口28は、オペレータが運転室31に出入りするときに通るものである。また、乗降口28には、開,閉可能にドア29が取付けられている。
【0063】
次に、30はキャブボックス17の下側を閉塞する床板で、該床板30は、キャブ7の一部を構成するもので、ベース枠体8にほぼ収まるように前,後方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。そして、床板30は、左前、右前、左後、右後の角隅位置に4個のねじ挿通穴(いずれも図示せず)を有し、該各ねじ挿通穴に防振マウント41の取付ねじ41Bを挿通することにより、ベース枠体8を構成する各取付ベース9,10,11,12と一緒に共締めされている。また、床板30は、その周囲がベース枠体8の各接続フレーム13〜16等にボルト止めされている。
【0064】
さらに、床板30には、図10に示すように、センタピラー24のピラー部24Aとほぼ同じ前,後方向位置に複数個のねじ穴30Aが形成され、該各ねじ穴30Aは、後述の床板補強部材33を固定するもので、例えば4個を一列として前,後に4列(2列のみ図示)設けられている。
【0065】
ここで、31はキャブ7内に画成された運転室で、該運転室31は、ベース枠体8、キャブボックス17、床板30等によって囲まれた空間として形成されている。そして、運転室31では、オペレータが乗込んで油圧ショベル1の操作を行なう。
【0066】
32は床板30の前,後方向の途中に位置して設けられた補強装置で、該補強装置32は、床板30の強度を高めた上で、旋回フレーム5の左,右方向の外側に位置するキャブボックス17の左側面部17Cを構成するセンタピラー24を内側(運転室31内)から補強し、キャブ7の剛性を高めるものである。また、補強装置32は、後述の台座36と一緒に運転席38を支持する支持台を兼ねている。そして、補強装置32は、後述の床板補強部材33と連結部材35とにより大略構成され、床板30の前,後方向の途中に位置して左,右方向に延びている。
【0067】
33は床板30上に設けられた床板補強部材で、該床板補強部材33は、図5、図6等に示すように、センタピラー24のピラー部24Aとほぼ同じ前,後方向の途中に位置して左,右方向に延びて設けられている。また、床板補強部材33は、前,後方向に離間して平行に配設された前縦面部33A,後縦面部33Bと、該各縦面部33A,33Bの上部に亘って設けられた上横面部33Cとによりコ字状の断面形状を有する剛体として形成されている。これにより、床板補強部材33は、曲げ、捩れ等に対して高い剛性を有している。
【0068】
また、床板補強部材33の各縦面部33A,33Bには、その下部から前,後方向に張出してフランジ部33Dが設けられ、該各フランジ部33Dには、図10に示す如く、床板30のねじ穴30Aに対応して4個のボルト挿通穴33Eが上,下方向に穿設されている。また、前縦面部33Aには、センタピラー24側となる左側に位置してねじ穴33Fが形成されている。さらに、上横面部33Cには左側に位置してねじ穴33Gが形成されている。
【0069】
そして、床板補強部材33は、各フランジ部33Dに設けられた各ボルト挿通穴33Eにボルト34を挿通し、該各ボルト34を床板30のねじ穴30Aに螺着することにより、図9に示すように、該床板30に一体的に取付けることができる。また、床板補強部材33を床板30上に取付けた状態では、剛性を有する床板補強部材33が床板30の撓み、捩れ等を抑え、該床板30の強度を高めることができる。
【0070】
35は床板補強部材33とキャブボックス17のセンタピラー24との間に設けられた連結部材で、該連結部材35は、床板補強部材33の左端部とセンタピラー24を形成するピラー部24Aの下側部分とを高い強度をもって連結するものである。また、連結部材35は、後述する転倒規制装置47のストッパボルト49を取付けるためのキャブ7側の強度部材を形成している。
【0071】
そして、連結部材35は、図10ないし図12に示す如く、床板補強部材33の上横面部33Cに沿って左,右方向に延びた補強部材取付板部35Aと、該補強部材取付板部35Aの左端部からセンタピラー24のピラー部24Aに沿って上側に延びたピラー取付板部35Bと、前記補強部材取付板部35Aの前端縁部とピラー取付板部35Bの前端縁部とに亘って固着された前側板部35Cと、該前側板部35Cと平行になるように前記補強部材取付板部35Aの後端縁部とピラー取付板部35Bの後端縁部とに亘って固着された後側板部35Dと、前記前側板部35Cから前側に突出しつつ下側に延びた2枚の縦板部35Eと、該各縦板部35Eの下端部を連結するように横方向に延びた底板部35Fとにより大略構成されている。
【0072】
また、補強部材取付板部35Aには、床板補強部材33の上横面部33Cに設けられたねじ穴33Gに対応するボルト挿通穴35Gが形成されている。また、ピラー取付板部35Bには、センタピラー24に設けられた2個の連結部材取付穴24Cに対応する2個のボルト挿通穴35Hが形成されている。さらに、前側板部35Cは、補強部材取付板部35Aよりも下側に延びて形成され、床板補強部材33の前縦面部33Aに設けられたねじ穴33Fに対応するボルト挿通穴35Jが形成されている。
【0073】
ここで、前側板部35Cの前側に設けられた各縦板部35Eと底板部35Fは、後述する転倒規制装置47のストッパボルト49を取付けるものであり、前記底板部35F上には前記ストッパボルト49が螺着されるナット35Kが溶接されている。
【0074】
そして、連結部材35は、補強部材取付板部35Aを床板補強部材33の上横面部33Cに押し当て、この状態でボルト挿通穴33Eに通したボルト34を床板補強部材33の上横面部33Cのねじ穴33Gに螺着する。また、前側板部35Cのボルト挿通穴35Gに通したボルト34を床板補強部材33の前縦面部33Aに設けられたねじ穴33Fに螺着する。これにより、連結部材35は床板補強部材33に強固に取付けることができる。
【0075】
一方、連結部材35は、センタピラー24のピラー部24Aに押し当て、この状態でボルト挿通穴35Hに通したボルト34をセンタピラー24の連結部材取付穴24Cに螺着する。これにより、連結部材35は、センタピラー24のピラー部24Aに対して取付けることができる。
【0076】
このように、床板補強部材33とキャブボックス17のセンタピラー24とを連結部材35によって連結した状態では、補強装置32は、キャブ7に大きな荷重が作用した場合でも、センタピラー24の根本部分を支持して当該センタピラー24の変形、即ち、キャブボックス17の変形を小さく抑えることができる。
【0077】
36は床板補強部材33の前側に位置して床板30上に設けられた台座(図5、図6参照)で、該台座36は、例えば床板補強部材33とほぼ同様の形状を有している。これにより、台座36は、床板補強部材33と同様に床板30の強度を高めることができる。
【0078】
37は床板補強部材33と台座36の上側に配設されたシートスタンド(図5中に図示)、38は該シートスタンド37の上側に設けられた運転席(図5中に二点鎖線で図示)をそれぞれ示している。また、運転席38は、オペレータが着座するもので、運転席38の左,右両側には、作業装置4等を操作する作業レバー39が設けられている。さらに、運転席38の前側には、床板30の前部に位置して下部走行体2を走行させる走行レバー・ペダル40が設けられている。
【0079】
41は旋回フレーム5のキャブ支持部6とキャブ7との間に設けられた例えば4個の防振マウント(図5、図6参照)で、該各防振マウント41は、キャブ7の左前、右前、左後、右後の4箇所に配置され、キャブ7をキャブ支持部6に対して振動を緩衝した状態で支持するものである。そして、各防振マウント41は、例えば粘性液体が封入された本体部41Aと、該本体部41Aから上側に突出して延びた取付ねじ41Bとからなり、前記取付ねじ41Bは円環状のゴム部材を介して本体部41Aに一体的に取付けられている。
【0080】
また、4個の防振マウント41のうち左前と右前に位置する2個の防振マウント41は、その本体部41Aがキャブ支持部6の前枠6Dに形成されたマウント取付穴6Fに取付けられ、左後と右後に位置する2個の防振マウント41は、その本体部41Aがキャブ支持部6の後横梁6Bに形成されたマウント取付穴6Eに取付けられている。
【0081】
そして、各防振マウント41は、本体部41Aを旋回フレーム5のキャブ支持部6に取付け、上側に突出した取付ねじ41Bを床板30のねじ挿通穴、ベース枠体8を形成する各取付ベース9,10,11,12のマウント取付穴9C,10D,11G,12Eに下側から螺着することにより、キャブ7に取付けられている。
【0082】
次に、旋回フレーム5とキャブ7との間に設けられ、キャブ7が大きく変位するのを防止する2個の転倒規制装置42,47について説明する。ここで、油圧ショベル1は、例えば急斜面等で無理な姿勢のまま走行したり、作業したときには転倒する虞があり、転倒した場合にはキャブ7に対して左側方から大きな荷重が作用する。このときには、旋回フレーム5とキャブ7とを連結している各防振マウント41が常用のストロークを超えて損傷する虞がある。そこで、転倒規制装置42,47は、防振マウント41の常用ストロークを超えてキャブ7が大きく変位するのを防止し、各防振マウント41が損傷するような事態を未然に防ぐものである。
【0083】
即ち、42はキャブ7の左後側の角隅部に位置して旋回フレーム5とキャブ7との間に設けられた後側の転倒規制装置で、該転倒規制装置42は、旋回フレーム5側に設けられた後述の通し穴43と、キャブ7側に取付けられる後述のストッパボルト44、ワッシャ45、カラー46とにより大略構成されている。
【0084】
43は旋回フレーム5を構成するキャブ支持部6の後横梁6Bに設けられた通し穴(図2、図13中に図示)で、該通し穴43は、後横梁6Bの上板6B1を上,下方向に貫通する円形穴として形成されている。また、通し穴43は、後述するカラー46よりも大きくワッシャ45よりも小さな径寸法をもって形成されている。
【0085】
44はキャブ7を構成するベース枠体8の左後取付ベース11に取付けられたストッパボルトで、該ストッパボルト44は、頭部44Aを下側に配置し、上側が左後取付ベース11のストッパ取付穴11Fに螺着されている。また、ストッパボルト44の下側は、通し穴43を貫通して延び、頭部44Aが通し穴43よりも下側に配置されている。
【0086】
45はストッパボルト44の頭部44A上に配設されたワッシャで、該ワッシャ45は、ストッパボルト44の頭部44Aと共にストッパを構成している。即ち、ワッシャ45は、その外径寸法が通し穴43の内径寸法よりも大きく設定されている。これにより、ワッシャ45は、キャブ7の左側部分が上側に大きく変位しようとしたときに通し穴43(後横梁6Bの上板6B1)に下側から当接し、ストッパボルト44の頭部44Aと共にストッパとして機能する。
【0087】
また、46はストッパボルト44の外周側に設けられた円筒状のカラーで、該カラー46は、左後取付ベース11の前張出部11Dとワッシャ45との間に挟持して設けられている。これにより、カラー46は、ストッパボルト44を左後取付ベース11のストッパ取付穴11Fに螺着したときに、後横梁6Bの上板6B1とワッシャ45との間に緩衝用隙間Gを形成するスペーサとして機能する。
【0088】
ここで、後横梁6Bの上板6B1とワッシャ45との間に形成された緩衝用隙間Gは、防振マウント41が常用のストローク範囲で変位している状態ではワッシャ45と通し穴43(後横梁6B)とを離間させ、常用ストロークの範囲を越えたとき、即ち防振マウント41が損傷する虞があるときにワッシャ45と後横梁6Bとを当接させる隙間寸法に設定されている。
【0089】
このように構成された後側の転倒規制装置42は、キャブ7が右側に転倒するように変位したときに、ワッシャ45を通し穴43が設けられたキャブ支持部6の後横梁6Bに当接させる。これにより、転倒規制装置42は、ストッパボルト44によってキャブ7の左側部分を旋回フレーム5に連結し、キャブ7が転倒するのを規制することができる。
【0090】
次に、47はキャブ7の前,後方向の中間部に位置して旋回フレーム5とキャブ7との間に設けられた中間部の転倒規制装置で、該転倒規制装置47は、前述した後側の転倒規制装置42とほぼ同様に、旋回フレーム5側に設けられた後述の通し穴48と、キャブ7側に取付けられる後述のストッパボルト49、ワッシャ50、カラー51とにより大略構成されている。
【0091】
48は旋回フレーム5を構成するキャブ支持部6の中間横梁6Aに設けられた通し穴(図2、図14中に図示)で、該通し穴48は、中間横梁6Aの上板6A1を上,下方向に貫通する円形穴として形成されている。また、通し穴48は、後述するカラー51よりも大きくワッシャ50よりも小さな径寸法をもって形成されている。
【0092】
49はキャブ7を構成する補強装置32の連結部材35に取付けられたストッパボルトで、該ストッパボルト49は、前述したストッパボルト44と同様に、頭部49Aを下側にして連結部材35のナット35Kに螺着されている。また、ストッパボルト49の下側は、通し穴48を貫通し、頭部49Aが通し穴48よりも下側に配置されている。
【0093】
50はストッパボルト49の頭部49A上に配設されたワッシャで、該ワッシャ50は、前述したワッシャ45と同様に、ストッパボルト49の頭部49Aと共にストッパを構成している。即ち、ワッシャ50は、その外径寸法が通し穴48の内径寸法よりも大きく設定され、キャブ7の左側部分が上側に大きく変位しようとしたときに通し穴48(中間横梁6Aの上板6A1)に下側から当接することができる。
【0094】
また、51はストッパボルト49の外周側に設けられた円筒状のカラーで、該カラー51は、中間横梁6Aの上板6A1とワッシャ50との間に挟持して設けられている。これにより、カラー51は、ストッパボルト49を連結部材35のナット35Kに螺着したときに、中間横梁6Aの上板6A1とワッシャ50との間に緩衝用隙間Gを形成するスペーサとして機能する。
【0095】
このように構成された中間部の転倒規制装置47は、後側の転倒規制装置42と同様に、キャブ7が右側に転倒するように変位したときに、ワッシャ50を通し穴48が設けられたキャブ支持部6の中間横梁6Aに当接させる。これにより、転倒規制装置47は、ストッパボルト49によってキャブ7の左側部分を旋回フレーム5に連結し、キャブ7が転倒するのを規制することができる。
【0096】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、キャブ7を組立てて旋回フレーム5に搭載する作業について説明する。
【0097】
まず、油圧ショベル1のキャブ7の下部を形成するベース枠体8を組立て、このベース枠体8上にキャブボックス17を組立てる。また、ベース枠体8の下側に床板30を取付けてキャブ7の外形部分を形成したら、床板30に運転席38、作業レバー39、走行レバー・ペダル40等を組付ける。
【0098】
そして、キャブ7を組立てたら、旋回フレーム5のキャブ支持部6上にキャブ7を運搬し、キャブ支持部6に予め取付けられた各防振マウント41の取付ねじ41Bをベース枠体8の取付ベース9〜12に締着することにより、キャブ支持部6にキャブ7を防振状態で取付ける。
【0099】
次に、旋回フレーム5のキャブ支持部6とキャブ7との間に転倒規制装置42,47を組付ける場合の作業について説明する。
【0100】
まず、キャブ7の左後側に位置する転倒規制装置42を組立てる場合には、ストッパボルト44にワッシャ45、カラー46を装着し、このストッパボルト44をキャブ支持部6の後横梁6Bに設けた通し穴43に下側から挿通し、該ストッパボルト44を左後取付ベース11のストッパ取付穴11Fに螺着することにより、転倒規制装置42を組立てることができる。
【0101】
また、キャブ7の左側の中間部に位置する転倒規制装置47を組立てる場合には、左後側の転倒規制装置42と同様に、ワッシャ50、カラー51を装着したストッパボルト49をキャブ支持部6の中間横梁6Aに設けた通し穴48に下側から挿通し、該ストッパボルト49を補強装置32を構成する連結部材35のナット35Kに螺着することにより、転倒規制装置47を組立てることができる。
【0102】
このように、各転倒規制装置42,47は、ストッパボルト44,49を旋回フレーム5の下側からキャブ7に螺着するだけで簡単に組立てることができる。また、修理作業やメンテナンス作業を行なうために、旋回フレーム5からキャブ7を取外す場合には、ストッパボルト44,49を弛めるだけでキャブ7を簡単に取外すことができる。
【0103】
次に、上述したように旋回フレーム5にキャブ7が搭載された油圧ショベル1を操作して作業を行なうときの動作について説明する。
【0104】
まず、オペレータは、キャブ7内の運転室31に搭乗して運転席38に着座する。この状態で走行レバー・ペダル40を操作することにより、下部走行体2のクローラを駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席38に着座したオペレータは、左,右の作業レバー39を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0105】
ここで、油圧ショベル1は、無理な姿勢で走行したり、作業したときに転倒する虞があり、転倒した場合にはキャブ7の左側から大きな荷重が作用する。このときには、キャブ7が右側に転倒するように大きく変位しようとする。しかし、本実施の形態による油圧ショベル1は、旋回フレーム5とキャブ7との間に転倒規制装置42,47を設けている。従って、キャブ7が右側に大きく変位しようとしたときには、転倒規制装置42,47のストッパボルト44,49の頭部44A,49Aとワッシャ45,50が旋回フレーム5側の通し穴43,48の周囲に当接し、キャブ7の変位を止めることができる。これにより、各防振マウント41が損傷するような事態を防止することができる。
【0106】
さらに、キャブ7には、床板30の強度を高め、センタピラー24を運転室31側から支持して補強する補強装置32を設けているから、油圧ショベル1の転倒等によってキャブ7の左側に大きな荷重が作用した場合でも、キャブボックス17の変形を小さく抑えることができる。
【0107】
かくして、本実施の形態によれば、キャブ7を構成するベース枠体8の左後取付ベース11と旋回フレーム5のキャブ支持部6との間に転倒規制装置42を設け、キャブ7を構成する補強装置32の連結部材35と旋回フレーム5のキャブ支持部6との間に転倒規制装置47を設ける構成としている。これにより、例えば急斜面等で無理な姿勢のまま走行したり、作業したときに油圧ショベル1が転倒した場合し、キャブ7に対して大きな荷重が作用した場合でも、転倒規制装置42,47は、防振マウント41の常用ストロークを超えキャブ7が大きく変位して転倒するのを規制することができ、防振マウント41の損傷を防止して耐久性、信頼性等を向上することができる。
【0108】
また、転倒規制装置42のストッパボルト44は、防振マウント41を取付ける強度部材として形成されたベース枠体8の左後取付ベース11に取付け、転倒規制装置47のストッパボルト49は、センタピラー24等を補強する強度部材として形成された補強装置32の連結部材35に取付ける構成としている。従って、キャブ7に対するストッパボルト44,49の取付強度を高めることができるから、転倒規制装置42,47の耐久性、信頼性等を向上することができる。
【0109】
ここで、油圧ショベル1が転倒した場合には、乗降口28が位置するキャブ7の左側から油圧ショベル1の重量に応じた大きな荷重が作用するから、この荷重はキャブ7の左側部分を持ち上げるように該キャブ7を転倒(変位)させようとする。そこで、本実施の形態では、転倒規制装置42,47は、キャブ7の左側に位置して設けているから、油圧ショベル1の転倒による大きな荷重に対しても、キャブ7の変位を防振マウント41の常用ストロークの範囲で規制することができ、防振マウント41を確実に保護することができる。
【0110】
また、中間部の転倒規制装置47のストッパボルト49が取付けられる補強装置32の連結部材35は、床板30に取付けられて運転席38の台座をなす床板補強部材33とは別部材として設けている。これにより、油圧ショベル1が小型で、転倒した場合にもキャブ7に小さな荷重しか作用しない場合には、連結部材35と中間部の転倒規制装置47とを省略することができ、機種に応じてキャブ7の転倒規制能力を最適に設定することができる。
【0111】
しかも、転倒規制装置42,47は、ストッパボルト44,49を旋回フレーム5の下側から通し穴43,48に通してキャブ7側に螺着するだけの簡単な作業で組立てることができる。また、修理作業やメンテナンス作業を行なうために、旋回フレーム5からキャブ7を取外す場合には、ストッパボルト44,49を弛めるだけでキャブ7を簡単な作業で取外すことができる。この結果、キャブ7の取付け作業、取外し作業の作業性を向上でき、また製造コストを低減することができる。
【0112】
一方、転倒規制装置42,47を構成するワッシャ45,50と通し穴43,48(キャブ支持部6)との間には緩衝用隙間Gを設けているから、防振マウント41の常用ストロークでキャブ7が変位しているときには、ワッシャ45,50と通し穴43,48とを離間させることにより、各防振マウント41を機能させて旋回フレーム5からキャブ7に伝わる振動を緩和することができ、乗り心地を良好にすることができる。
【0113】
また、転倒規制装置42,47のストッパボルト44,49には、市販のボルトを用いることができるから、転倒規制装置42,47の製造コストを低減の低減を図ることができる。
【0114】
さらに、本実施の形態では、旋回フレーム5とキャブ7との間に2つの転倒規制装置42,47を設けているから、総重量が大きく、転倒したときにキャブ7に大きな荷重が作用する中型以上の油圧ショベル1においても、キャブ7の大きな変位(転倒)を確実に規制することができ、防振マウント41を保護して、信頼性等を向上することができる。
【0115】
なお、実施の形態では、例えば後側の転倒規制装置42は、旋回フレーム5側の通し穴43と、該通し穴43に挿通して左後取付ベース11に螺着されるストッパボルト44と、通し穴43の周囲となる後横梁6Bの上板6B1に当接するワッシャ45と、該ワッシャ45と後横梁6Bの上板6B1との隙間を緩衝用隙間Gに設定するカラー46とにより構成した場合を例示した。
【0116】
しかし、本発明はこれに限らず、例えば図15に示す第1の変形例による転倒規制装置61のように、両ねじボルト62の一方(上側)をナット63を用いて抜け止め状態で左後取付ベース11に螺着し、両ねじボルト62の他方(下側)に通し穴43よりも大径なナット64を螺着し、もう1個のナット65により大径なナット64を後横梁6Bの上板6B1から緩衝用隙間Gだけ離れた位置に固定する構成としてもよい。この構成は、中間部の転倒規制装置47にも同様に適用することができる。
【0117】
また、上述した第1の変形例以外にも、図16に示す第2の変形例による転倒規制装置71のように、ストッパボルト72の頭部72Aを通し穴43よりも大径に形成すると共に、該ストッパボルト72の先端側に頭部72Aを後横梁6Bの上板6B1から緩衝用隙間Gだけ離れた位置に固定する段部72Bを設ける構成としてもよい。この構成は、中間部の転倒規制装置47にも同様に適用することができる。
【0118】
一方、実施の形態では、旋回フレーム5とキャブ7との間に2つの転倒規制装置42,47を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば総重量の小さな小型の油圧ショベル1の場合には、転倒したときにキャブ7に作用する荷重が小さくなるから、2つの転倒規制装置42,47のうち、いずれか一方だけを設ける構成としてもよい。
【0119】
また、実施の形態では、転倒規制装置42,47をキャブ7の左側だけに設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば転倒規制装置42,47をキャブ7の左,右両側に設ける構成としてもよい。
【0120】
また、実施の形態では、後側に位置する2個の防振マウント41を、キャブ7の外部から取付ける構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば後側に位置する2個の防振マウント41を、キャブ7の内部から取付ける構成としてもよい。
【0121】
また、実施の形態では、旋回フレーム5とキャブ7との間には、キャブ7の左前、右前、左後、右後に位置する4箇所の角隅位置に防振マウント41を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば旋回フレーム5とキャブ7との間に5個以上の防振マウント41を設ける構成としてもよい。
【0122】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、トラクタ等の他の建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0123】
1 油圧ショベル(建設機械)
5 旋回フレーム
6 キャブ支持部
6A 中間横梁
6B 後横梁
6C 縦梁
6D 前枠
6E,6F マウント取付穴
7 キャブ
8 ベース枠体
9 左前取付ベース
10 右前取付ベース
11 左後取付ベース
12 右後取付ベース
13 左接続フレーム
14 右接続フレーム
15 前接続フレーム
16 後接続フレーム
17 キャブボックス
17A 前面部
17B 後面部
17C 左側面部
17D 右側面部
17E 天面部
18 左前ピラー
19 右前ピラー
20 左後ピラー
21 右後ピラー
24 センタピラー
28 乗降口
30 床板
31 運転室
32 補強装置
33 床板補強部材
35 連結部材
38 運転席
41 防振マウント
42,47,61,71 転倒規制装置
43,48 通し穴
44,49,62,72 ストッパボルト
44A,49A,72A 頭部(係合部)
45,50 ワッシャ(係合部)
46,51 カラー
G 緩衝用隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなすフレームと、該フレーム上に配設され内部に運転室を画成し左,右方向の一側に乗降口を有するキャブと、前記フレームとキャブとの間に設けられ前記キャブをフレームに対して振動を緩衝した状態で支持する防振マウントとを備えてなる建設機械において、
前記キャブは、枠構造体からなるベース枠体と、該ベース枠体上に設けられ左,右方向の一の側面に上,下方向に延びるセンタピラーを有する中空なキャブボックスと、該キャブボックスの下側を閉塞するように前記ベース枠体に取付けられた床板と、該床板と前記キャブボックスのセンタピラーとの間に設けられ前記センタピラーを内側から補強する補強装置とを含んで構成し、
前記補強装置と前記フレームとの間には、前記防振マウントの常用ストロークを超えて前記キャブが大きく変位するのを規制する転倒規制装置を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記補強装置は、前記床板上に左,右方向に延びて設けられた床板補強部材と、該床板補強部材の一方の端部と前記キャブボックスのセンタピラーとを連結する連結部材とにより構成し、
前記転倒規制装置は、前記補強装置の連結部材と前記フレームとの間に設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記転倒規制装置は、前記キャブの下側に位置して前記フレームに設けられた上,下方向の通し穴と、上側が前記キャブに固定され下側が該通し穴内を貫通して延びたボルトと、該ボルトの下端部側に設けられ前記キャブを持ち上げる動きを前記通し穴の周囲に当接して規制するストッパとにより構成してなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記転倒規制装置を構成する前記ストッパと前記通し穴の周囲のフレームとの間には、前記キャブが前記防振マウントの常用ストロークの範囲で変位している状態では前記ストッパと前記フレームとを離間させ常用ストロークの範囲を越えたときに前記ストッパと前記フレームとを当接させる緩衝用隙間を設けてなる請求項3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−95999(P2010−95999A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11872(P2010−11872)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【分割の表示】特願2004−166063(P2004−166063)の分割
【原出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】