説明

弾性クローラの製造方法

【課題】 芯金の翼部の帯長手方向両端に位置する縁端面に対する加硫接着をより確実に行うことにより、耐久性に優れた弾性クローラを製造する。
【解決手段】 本発明は、芯金4を有する弾性クローラ1の製造方法に関する。この製造方法は、芯金4の翼部5の帯長手方向両端に位置する第1端縁面33を、未加硫ゴムよりなる被覆材30で予め被覆する第1工程と、クローラ本体2の接地側部分を構成する未加硫の第1ゴム層21と、クローラ本体2の非接地側部分を構成する未加硫の第2ゴム層22との間に翼部6を挟んだ状態で、各ゴム層21,22を金型11のキャビティ内にセットする第2工程と、キャビティ内の未加硫の各ゴム材を加圧下で加熱して加硫成形する第3工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状に形成されたゴム製のクローラ本体の内部に芯金を埋設した弾性クローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農林作業車両や建設車両などに装着される無端状履帯として、例えば、芯金付きの弾性クローラが既に一般に使用されている。この弾性クローラは、無端帯状に形成されたゴム製のクローラ本体と、このクローラ本体の内部に帯長手方向に所定間隔おきに設けられた複数の芯金とを備えている。
上記芯金付きの弾性クローラを製造する場合には、未加硫の予備成形品として、クローラ本体の接地側部分を構成する第1ゴム層と、クローラ本体の非接地部分を構成する第2ゴム層とを予め用意しておく。
【0003】
そして、上記各ゴム層の間に芯金の両翼部を挟んだ状態で、その各ゴム層を積層して金型のキャビティ内にセットした後、そのキャビティ内の未加硫の各ゴム材料(第1及び第2ゴム層等)を加圧下で加熱して加硫反応を起こさせることにより、クローラ本体の所定位置に芯金が埋設された上記弾性クローラが成形される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−145331号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の製造方法では、芯金の翼部の帯長手方向の両端縁面と、その翼部を挟む各ゴム層との間に空隙がある状態で、それらが金型のキャビティ内にセットされることになる。
従って、加硫成形時における未加硫ゴムの流れ方によっては、芯金の翼部の端縁面に対して未加硫ゴムが十分に回らず、加硫成形後におけるゴム成分の接着力が不十分となったり、芯金の翼部の端縁面に近接してエア溜まりが残存したりすることがあった。
【0006】
一方、上記芯金の翼部における帯長手方向の両端縁面に接するゴム部分は、クローラ本体がスプロケット等に巻き付いて屈曲を繰り返す場合に、クローラ本体の内部応力が集中するウィークポイントとなっている。
このため、上記両端縁面に対するゴム材料の接着力が不十分であったり、エア溜まりが残存していたりすると、翼部の端縁面に近接するゴム部分がその縁端面から剥離し易くなり、この剥離部分からの亀裂が成長すると芯金が離脱する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、芯金の翼部の帯長手方向両端に位置する縁端面に対する加硫接着をより確実に行うことにより、耐久性に優れた弾性クローラを製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の弾性クローラの製造方法は、無端帯状のゴム製のクローラ本体の内部に複数の芯金が帯長手方向に所定間隔おきに設けられた弾性クローラを製造する方法であって、前記芯金の翼部の帯長手方向両端に位置する第1端縁面を、未加硫ゴムよりなる被覆材で予め被覆する第1工程と、前記クローラ本体の接地側部分を構成する未加硫の第1ゴム層と、前記クローラ本体の非接地側部分を構成する未加硫の第2ゴム層との間に前記翼部を挟んだ状態で、前記各ゴム層を金型のキャビティ内にセットする第2工程と、前記キャビティ内の未加硫の各ゴム材を加圧下で加熱して加硫成形する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法によれば、芯金の翼部の帯長手方向両端に位置する第1端縁面を未加硫ゴムよりなる被覆材で予め被覆し(第1工程)、その翼部を間に挟んだ状態で第1ゴム層と第2ゴム層を金型のキャビティ内にセットするようにした(第2工程)ので、加硫成形を行う前に翼部の第1端縁面に対面する空隙が発生するのが防止される。
従って、その後の加硫成形(第3工程)において、翼部の帯長手方向両側に位置する第1端縁面に対してゴム材料を確実に加硫接着させることができる。
【0010】
(2) 本発明の製造方法において、前記第1工程は、前記翼部のる帯幅方向外端に位置する第2端縁面についても、前記被覆材で予め被覆する作業を含むことが好ましい。この場合、芯金の翼部を間に挟んだ状態で第1ゴム層と第2ゴム層を金型のキャビティ内にセットした場合に、第2端縁面が必ず未加硫ゴム(被覆材)に接することになり、加硫成形を行う前に第2端縁面に対面する空隙が発生するのが防止される。
従って、その後の加硫成形(第3工程)において、翼部の帯幅方向外端に位置する第2端縁面に対してもゴム材料を確実に加硫接着させることでき、芯金をより強固にクローラ本体に一体化することができる。
【0011】
(3) 本発明の製造方法において、前記被覆材は、前記翼部の第1及び第2端縁面の双方を連続的に被覆するように、それらの端縁面に沿って平面視コの字状に貼り付けられていることが好ましい。
その理由は、前記被覆材を途中で分断する場合に比べて、被覆材の貼り付け作業がより簡便になるとともに、加硫成形時において被覆材がより剥がれ難くなるからである。
【0012】
(4) また、本発明の製造方法において、前記被覆材は、前記翼部の表裏両側に位置する双方のアール部を含む範囲で当該端縁面を被覆していることが好ましい。
その理由は、翼部の表裏両側に位置する上記アール部は、加硫成形時に未加硫ゴムが回り難い空隙を形成する原因になるので、当該アール部を被覆材で被覆することが端縁面に対する加硫接着を強化する上で最も効果的だからである。
【発明の効果】
【0013】
以上の通り、本発明によれば、芯金の翼部の帯長手方向両端に位置する縁端面に対する加硫接着を確実に行えるので、その端縁面からのゴム材料の剥離を抑制することができ、弾性クローラの耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る弾性クローラの横断面図である。
【図2】加硫成形用の金型とそのキャビティ内にセットする予備成形素材とを示す横断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】金型に装着する前の被覆材を有する芯金の斜視図である。
【図5】芯金の翼部の端縁部の拡大断面図であり、(a)は被覆材を貼り付ける前の状態、(b)は貼り付けた後の状態を示す。
【図6】金型に装着する前の被覆材を有する芯金の変形例を示す斜視図である。
【図7】芯金に被覆材を設けない場合の予備成形素材の積層状態を示す側面断面図であり、(a)は間詰めブロックがない場合、(b)は間詰めブロックを設ける場合、(c)は帯状間詰め層を設ける場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
〔弾性クローラの構成〕
図1は、本発明の製造方法によって製造可能な、弾性クローラ1の一例を示す横断面図である。本実施形態の弾性クローラ1は、コンバインやハーベスタなどの農林作業車両又はショベルーカーなどの建設車両のクローラ走行装置に用いられるもので、ゴム様弾性材を無端帯状に形成してなるクローラ本体2と、クローラ本体2の各係合孔3間に埋設された芯金4とを有している。
【0016】
上記係合孔3は、クローラ走行装置の駆動スプロケットの係合爪(図示せず。)が挿通可能であり、クローラ本体2の表裏方向に貫通している。また、係合孔3は、クローラ本体2の周方向に所定間隔をおいて形成されている。
芯金4は、鋼材又は硬質プラスチック等の剛性材料よりなり、クローラ本体2の帯幅方向(図1の左右方向)中央部に位置する厚肉部5と、厚肉部5から帯幅方向外側に延びる左右一対の翼部6と、クローラ走行装置の転輪の転動経路を一定範囲に規制すべく厚肉部5の内周側から突設された左右一対の係合突起7とを有している。
【0017】
クローラ本体2の外周面における両翼部6,6に対応する部分には、走行時における牽引力を増大させるためのラグ8が突設されている。このラグ8は、断面ほぼ台形状でかつクローラ本体2の幅方向に延びて形成されており、芯金4と対応する周方向位置でかつ同芯金4と同ピッチで、クローラ本体2の外周面に配置されている。
また、クローラ本体2の断面内部における芯金4の両翼部6,6の外周側には、スチールコード等の強化繊維よりなる抗張体9が埋設されており、この抗張体9は、当該クローラ本体2の内部で無端状に周回している。
【0018】
上記のように構成された弾性クローラ1は、駆動スプロケットの係合爪をクローラ本体2の係合孔3に引っ掛けた状態でクローラ走行装置に装着される。弾性クローラ1は、その駆動スプロケットによって帯長手方向に駆動され、これによってクローラ走行装置が所定方向に走行可能となる。
【0019】
〔弾性クローラの予備成型素材とその成形金型〕
図2は、加硫成形用の金型11とそのキャビティ内にセットする弾性クローラ1の予備成形素材とを示す横断面図である。また、図3は、図2のA−A線断面図である。
図2に示すように、加硫成形用の金型11は上型12と下型13とからなり、上型12は下型13に対して図示しないプレス装置によって接離自在となっている。
【0020】
上型12には、クローラ本体2の外周側部分(接地側部分)を成形するための上成形溝14が形成され、下型13には、クローラ本体2の内周側部分(非接地側部分)を成形するための下成形溝15が形成されている。従って、上型12を下型13に接合すると、上下の各成形溝14,15によってクローラ本体2の横断面形状に相当するキャビティが構成される。
上成形溝14と下成形溝15の帯幅方向中央部には、クローラ本体2の係合孔3を成形するための突部16,17が帯長手方向(図2の紙面貫通方向)に所定間隔おきに形成されている。
【0021】
また、上成形溝14には、クローラ本体2にラグ8を成形するためのラグ用凹部18が帯長手方向に所定間隔おきに形成され、下成形溝15には、芯金4の係合突起7が嵌り込む芯金用凹部19が帯長手方向に所定間隔おきに形成されている。
クローラ本体2の予備成形素材は、クローラ本体2の接地側部分(図2の上側部分)を構成する未加硫の第1ゴム層21と、クローラ本体2の非接地側部分(図2の下側部分)を構成する未加硫の第2ゴム層22とからなる。
【0022】
このうち、第1ゴム層21は、上成形溝14の内部に充填される上側スラグ23と、芯金4の翼部6の接地側に配置される左右一対の抗張体層24とからなる。各抗張体層24の断面内部には前記抗張体9が予め埋設されている。
なお、図2では図示していないが、上側スラグ23の上面側には、クローラ本体2の外周面に設けるラグ8を構成するための、未加硫ゴムよりなるラグ用ブロックが帯長手方向に所定間隔おきに配置される。
【0023】
第2ゴム層22は、下成形溝15の内部における芯金4の翼部6に対応する部分に充填される左右一対の下側スラグ25よりなる。
図3に示すように、帯長手方向(図3の左右方向)に並ぶ複数の芯金4の各翼部6は、抗張体層24と下側スラグ25の間に上下から挟まれるが、隣り合う芯金4の翼部6同士の間には、未加硫ゴムよりなる間詰めブロック27が介装されるようになっている。
【0024】
上記の予備成形素材のうち、下側スラグ25は、クローラ本体2の転輪通過面を構成することから、加硫成形後のゴム硬度が比較的高めの73〜80度になるように配合されたNR(天然ゴム)やSBR(スチレンブタジエンゴム)等よりなる。
これに対して、クローラ本体2の接地部側を構成する上側スラグ23は、下側スラグ25よりも加硫成形後のゴム硬度が小さくなるように配合されたNRやSBR等よりなり、例えば、建機用クローラの場合には65〜68度、コンバインの場合には62〜65度、雪上作業車の場合には58〜63度になるように配合される。
【0025】
また、上側スラグ23と下側スラグ25の間に介在する間詰めブロック27及び後述の被覆材30の場合には、加硫成形後のゴム硬度が上側スラグ23と下側スラグ25の場合のほぼ中間となるように配合された、NRが主体のゴム材よりなり、具体的には60〜78度程度のゴム硬度となるように配合される。
【0026】
〔芯金の被覆材〕
図4は、金型11に装着する前の被覆材30を有する芯金4の斜視図である。
図4に示すように、本実施形態では、金型11に装着する前の芯金4の翼部6の端縁面33,34が、未加硫ゴムよりなる被覆材30で予め被覆されている。
具体的には、この被覆材30は、翼部6の帯長手方向両端に位置する第1端縁面33を被覆する第1被覆部31と、翼部6の帯幅方向外端に位置する第2端縁面34を被覆する第2被覆部32とを一体に有する、細幅の未加硫ゴムシートよりなる。
【0027】
上記被覆材30は、帯長手方向両端に位置する一対の第1端縁面33と、帯幅方向外端に位置する第2端縁面34との双方に行き渡る長さを有しており、これらの端縁面33,34の縁長さ方向に沿って平面視コの字状に貼り付けられている。
また、被覆材30の貼り付け前の幅寸法b(図5(a)参照)は少なくとも芯金4の翼部6の厚さ寸法aよりも大きくなっており、図5(b)に示すように、貼り付け後において、翼部6の表裏両側に位置する双方のアール部6Rを含む範囲で端縁面33,34を被覆可能な寸法に設定されている。
【0028】
なお、被覆材30で上記アール部6Rを被覆する理由は、後述の通り、このアール部6Rは、加硫成形時に未加硫ゴムが回り難い空隙37を形成する原因になる部分であることから、当該アール部6Rに行き渡るように被覆材30で被覆することが、端縁面33,34に対する加硫接着を強化する上で最も効果的だからである。
【0029】
〔弾性クローラの製造方法〕
上記構成の予備成形素材と芯金4を構成材料として弾性クローラ1を加硫成形するには、図2に示すように、下型13の下成形溝15の内部に左右一対の下側スラグ25,25を装填し、その各下側スラグ25,25の上に、予め被覆材30が貼り付けられた芯金4の翼部6及び間詰めブロック27をそれぞれ載置する。なお、この場合、芯金4の係合突起7は下成形溝15の芯金用凹部19に嵌め込むようにする。
【0030】
次に、芯金4の翼部6に対応する帯幅方向位置に、左右一対の抗張体層24,24を上から載置する。このとき、芯金4の両翼部6,6は、第1ゴム層21の抗張体層24と第2ゴム層22の下側スラグ25との間に上下から挟まれた状態となる。
そして、抗張体層24,24の上に上側スラグ23を載置してから、上型12を強制的にダウンさせて下型13に接合させる。これにより、クローラ本体2の予備成形素材が上成形溝14と下成形溝15とで構成されるキャビティ内で加圧され、その未加硫のゴム成分がキャビティ内を流動して所定形状に成形されることになる。
【0031】
その後、上記のように予備成形素材を加圧した状態で、図示しない加熱装置によって金型11を所定温度で所定時間だけ加熱することにより、金型11のキャビティ内の未加硫の各ゴム材に加硫反応を起こさせて予備成形素材を加硫成形する。
上記の加硫成形が完了すると、上型12を上昇させて下型13と分離し、完成品である弾性クローラ1を上型12及び下型13から脱型する。そして、脱型後の有端状の弾性クローラ1の帯長手方向端部同士を別工程にて互いに接合することにより、無端帯状の弾性クローラ1の製造が完了する。
【0032】
〔従来製法の問題点〕
図7(a)〜(c)は、芯金4に被覆材30を設けない従来製法の場合の、予備成形素材の積層状態を示す側面断面図(図2のA−A線断面図に相当する断面図)である。
図7(a)〜(c)のうち、図7(a)は間詰めブロック27がない場合を示す。
この場合、抗張体層24と下側スラグ25の間に翼部6の厚さ分の空間層36が形成されるので、この空間層36がすべて埋まる分の未加硫ゴムの塑性流動が抗張体層24や下側スラグ25において発生しなければ、加硫成形後のゴム材が翼部6の第1端縁面33に適切に加硫接着しない。
【0033】
これに対して、図7(b)のように、翼部6の間に間詰めブロック27を介装した場合には、空間層36の大部分が未加硫ゴムで満たされるので、図7(a)の場合に比べて、翼部6の第1端縁面33に対する加硫接着がより確実になる。
しかし、図7(b)の場合でも、翼部6の表裏両側にアール部6R(図5参照)がある場合には、間詰めブロック27と翼部6の間にほぼ三角形状の空隙37が形成されるので、加硫成形時における未加硫ゴムの塑性流動が不十分であると、加硫成形後にその空隙37が残存する恐れがある。
【0034】
また、図7(c)に示すように、間詰めブロック27の代わりに、未加硫ゴムよりなる帯長手方向に延びる帯状間詰め層38を、翼部6と下側スラグ25の上に敷くこともあるが、この場合も、帯状間詰め層38と翼部6の第1端縁面33の間にほぼ三角形状の空隙37が形成されるので、加硫成形時における未加硫ゴムの塑性流動が不十分な場合には、加硫成形後にその空隙37が残存する恐れがある。
【0035】
このように、従来製法では、予備成形素材を金型11にセットした段階では、翼部6の第1端縁面33に面する空隙37を完全に埋めることができないので、加硫成形時における未加硫ゴムの流れ方によっては、芯金4の翼部6の第1端縁面33に対して未加硫ゴムが十分に回らず、第1縁端面33に対する接着力が不十分となったり、第1端縁面33に近接してエア溜まりが残存したりすることがある。
【0036】
〔本実施形態の効果〕
これに対して、本実施形態の製造方法によれば、芯金4の翼部6における帯長手方向両端に位置する第1縁端面33を、未加硫ゴムよりなる被覆材30で予め被覆しておき(図4参照)、その芯金4の翼部6を間に挟んだ状態で第1ゴム層21と第2ゴム層22を金型11のキャビティ内にセットするようにしたので、加硫成形を行う前に翼部6の第1端縁面33に対面する空隙が発生するのが防止される。
【0037】
従って、その後の加硫成形において、芯金4の翼部6の帯長手方向両端に位置する第1端縁面33にゴム材料を確実に加硫接着させることができるので、第1端縁面33からのゴム材料の剥離が効果的に抑制され、弾性クローラ1の耐久性を向上することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、被覆材30が、第1端縁面33に対応する第1被覆部31だけでなく、翼部6の帯幅方向外端に位置する第2端縁面34を被覆する第2被覆部32を有するので、第2端縁面34に対してもゴム材料を確実に加硫接着させることができる。従って、芯金4をより強固にクローラ本体2に一体化することができる。
【0038】
なお、上記被覆材30はその長さ方向において途中で分断していてもよい。もっとも、この場合には、分割された被覆材30をそれぞれ端縁面33,34に貼り付ける作業が繁雑になるし、加硫成形時において被覆材30が剥がれ易くなる。
従って、図5に示すように、翼部6の第1及び第2端縁面33,34の双方を連続的に被覆可能な長さの被覆材30を採用し、この被覆材30を、各端縁面33,34に沿って平面視コの字状に貼り付けることが好ましい。
【0039】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲でのすべての変更が含まれる。
例えば、図6に示すように、第2縁端面34を被覆する第2被覆部32を省略し、帯長手方向両端に位置する第1端縁面33を被覆する第1被覆部31のみで、被覆材30を構成することにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、弾性クローラ1の接地側部分を上型12で成形し、非接地側部分を下型13で成形する金型11を使用したが、前記特許文献1のように、弾性クローラ1の帯幅方向一端側を成形する上型と他端側を成形する下型とからなる金型を用いる場合にも、本発明の製造方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
4 芯金
5 厚肉部
6 翼部
6R アール部
7 係合突起
11 金型
12 上型
13 下型
21 第1ゴム層
22 第2ゴム層
30 被覆材
31 第1被覆部
32 第2被覆部
33 第1縁端面
34 第2縁端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状のゴム製のクローラ本体の内部に複数の芯金が帯長手方向に所定間隔おきに設けられた弾性クローラを製造する方法であって、
前記芯金の翼部の帯長手方向両端に位置する第1端縁面を、未加硫ゴムよりなる被覆材で予め被覆する第1工程と、
前記クローラ本体の接地側部分を構成する未加硫の第1ゴム層と、前記クローラ本体の非接地側部分を構成する未加硫の第2ゴム層との間に前記翼部を挟んだ状態で、前記各ゴム層を金型のキャビティ内にセットする第2工程と、
前記キャビティ内の未加硫の各ゴム材を加圧下で加熱して加硫成形する第3工程と、 を含むことを特徴とする弾性クローラの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記翼部の帯幅方向外端に位置する第2端縁面についても、前記被覆材で予め被覆する作業を含む請求項1に記載の弾性クローラの製造方法。
【請求項3】
前記被覆材は、前記翼部の第1及び第2端縁面の双方を連続的に被覆するように、それらの端縁面に沿って平面視コの字状に貼り付けられている請求項2に記載の弾性クローラの製造方法。
【請求項4】
前記被覆材は、前記翼部の表裏両側に位置する双方のアール部を含む範囲で当該端縁面を被覆している請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性クローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−131386(P2012−131386A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285523(P2010−285523)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】