微粒子単層膜付き基板の製造方法及び微粒子単層膜付き基板
【課題】
大気圧プラズマプロセスによる処理を始め、正確に制御可能な比較的簡単な工程のみからなり、大面積化や高スループット製造が可能な微粒子単層膜付き基板の製造方法を提供し、またそれにより製造された微粒子単層膜付き基板を提供する。
【解決手段】
官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、各種基板1の表面を大気圧プラズマ処理して、表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板2を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子3を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含む。
大気圧プラズマプロセスによる処理を始め、正確に制御可能な比較的簡単な工程のみからなり、大面積化や高スループット製造が可能な微粒子単層膜付き基板の製造方法を提供し、またそれにより製造された微粒子単層膜付き基板を提供する。
【解決手段】
官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、各種基板1の表面を大気圧プラズマ処理して、表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板2を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子3を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子単層膜付き基板の製造方法及び微粒子単層膜付き基板に係わり、更に詳しくは基板表面に微粒子を整然と単層状に固定化した微粒子単層膜付き基板の製造方法及びそれにより作製した微粒子単層膜付き基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機・高分子・無機材料、またはその複合材料から構成された直径0.001〜10μmの微粒子を平面配列させる方法として、移流集積法や電気泳動堆積法による単粒子膜の作製方法、更にはLangmuir-Blodgett(以下、LBと省略)膜の作製方法等が知られている。移流集積法とは、水溶液などの溶媒中に長時間分散する粒子の分散液にガラスなどの溶媒になじみやすい平坦な基板を浸漬し、雰囲気、湿度、粒子の濃度、基板の引き上げ速度等を制御することによって、基板上に単粒子膜を作製する方法である。また、電気泳動堆積法とは、微粒子を含む分散液中に二枚以上の電極を導入、または電極基板中に分散液をサンドイッチした状態で、電極間に直流を印加することにより、液中で帯電した微粒子を電界により輸送し基板上に堆積させる方法である。また、交流を印加して、微粒子を誘電泳動させて堆積する方法も提案されている。
【0003】
一方、LB膜は、主に清浄な水溶液表面に微粒子を含む溶液を展開し、表面圧をかけることにより水面上に単粒子膜を作製し、この膜を基板に転写する成膜方法である。これらの単層膜成膜法では、基板と分散液界面における粒子の自律的集積力を利用するものであり、基板表面の濡れ性が単粒子膜形成に大きく影響を及ぼす。この濡れ性に関しては、超親水性であればよいというものではなく、高い親和性を保ちながらも分散液は基板上においてある程度の接触角を形成する方が、微粒子配列性の良好な膜が得られる傾向にあることがわかっている。更に、既述の成膜法は、微粒子の自律的集合力だけを利用しているため、微粒子を固定化させる手法が組み込まれておらず、単層膜の吸着安定性に問題が残っている。
【0004】
これまでのところ、この微粒子分散液に対する濡れ性と微粒子の固定化の両方を同時に制御する方法は十分に解決されていない。この単粒子膜成膜に適した濡れ性及び固定化を制御する方法として、基板上に両媒性分子膜(特許文献1)や、イオン性吸着膜(非特許文献1)をバインダー層として配設することによって、単層状の微粒子膜を固定化する手法が提案されている。しかしながら、これらの手法はディッピングプロセスによる膜形成が主であるため、温度や湿度などの作業環境雰囲気による擾乱の影響を受けやすく、その精密な制御は困難であり、材料系に依存して、それぞれ物理的に数値制御が困難な特別なノウハウ等を必要とする。また、大面積化や高スループット製造などには不向きであるほか、バインダー層を形成させられる基板の種類が限定されるなど、その実用性や汎用性は乏しい。
【0005】
また、特許文献2には、大気圧プラズマを用いて、有機材料を加工する技術、あるいは金属、半導体若しくは無機物絶縁体の何れかの表面上に形成された有機物質を加工する技術が開示されている。更に、特許文献3には、大気圧プラズマを用いて、フッ素系高分子重合体膜や、セラミックスやガラス類、熱可塑性樹脂などの多孔体の表面を改質(親水化)する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平08−229474号公報
【特許文献2】特許第3366679号公報
【特許文献3】特許第3455610号公報
【非特許文献1】Langmuir 2003, 19, 8769-8776
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、基板表面に粒度が揃った微粒子を整然と単層状に固定化した微粒子単層膜付き基板の製造方法において、常温常圧下において巨大なエネルギーを大面積にわたって均一且つ簡便に供給することが可能な大気圧プラズマプロセスによる処理を始め、正確に制御可能な比較的簡単な工程のみからなり、大面積化や高スループット製造が可能な微粒子単層膜付き基板の製造方法を提供し、またそれにより製造された微粒子単層膜付き基板を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含むことを特徴とする微粒子単層膜付き基板の製造方法を構成した(請求項1)。
【0008】
ここで、前記微粒子として、ポリスチレン粒子、ポリアクリル酸粒子等の高分子粒子又は金、銀等の金属粒子又はシリカ、酸化チタン等の酸化物粒子を用いることが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、基板表面に修飾される官能基が、過カルボン酸基のような過酸化物基、水酸基、カルボン酸基等の酸素含有基又はオレフィンやベンゼン環などのπ電子共役系の官能基又はアミノ基、アミド基、イミド基、ピリジン環、ピロール環、ピロリドン環等の窒素含有基である(請求項3)。
【0010】
具体的には、前記官能基修飾工程として、洗浄した基板上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、この基板を誘電体でコーティングされた対向電極板間にギャップが1〜2.5mmになるように保持して電極間に高周波電力を投入し、大気圧プラズマを発生させて基板表面を処理する工程である(請求項4)。
【0011】
また、前記基板の表面にポリスチレン溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、このポリスチレン超薄膜を、酸素を含む大気圧プラズマで処理して酸素原子を導入し、分子中にカルボニル基と水酸基を生成することが好ましい(請求項5)。
【0012】
また、前記微粒子整列化工程が、スピンコート法又は移流集積法又は電気泳導堆積法又はLB法又はこれらの組み合わせにより、微粒子固定用基板の表面に微粒子の分散液を均一に塗布し、微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである(請求項6)。
【0013】
更に、前記微粒子整列化工程が、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板と対向基板の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させる電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板の表面上に微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである(請求項7)。
【0014】
また、前記洗浄工程が、微粒子膜を形成した基板を洗浄溶液中で超音波洗浄し、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去するものである(請求項8)。
【0015】
そして、前述の微粒子単層膜付き基板の製造方法によって製造された微粒子単層膜付き基板を提供する(請求項9)。
【発明の効果】
【0016】
以上にしてなる本発明の微粒子単層膜付き基板の製造方法は、官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含むので、基板表面に微粒子が単層状に稠密に配列した微粒子単層膜を作製するのと同時に、微粒子を基板表面に確実に固定化することが可能になる。これにより、バイオケミカルセンサ、情報記録素子、導波路、発光素子などに適した材料系の単層膜成膜によって、ナノ粒子本来のバルク形態にはない特異的な性質を限りなく引き出したナノ粒子デバイスの製作が可能になり、本発明の製造方法により作製した微粒子単層膜付き基板は、ナノ粒子デバイスの実用化の実現に多大な貢献をもたらすことができる。また、一連の工程にウェットプロセスとドライプロセスが混在していても、ドライプロセスが大気圧プラズマ処理であれば、全てのプロセスを常温常圧下で一貫して操作できるため、長尺シート状の基板を用いてロールツーロールプロセスで連続処理することもでき、高い生産性を有する。
【0017】
大気圧プラズマ処理は、巨大なエネルギーを大面積にわたって均一且つ簡便に供給することができるので、洗浄した基板上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、それを大気圧プラズマ処理するだけで、官能基が修飾された微粒子固定用基板を容易に作製することができ、その上に形成する微粒子と官能基との化学結合によって、基板表面に微粒子の単層膜を強固に固定化することができる。尚、単層膜の上に部分的に多層膜が形成されることもあるが、官能基を介した基板と一層目の微粒子との間の結合力より、一層目の微粒子と二層目の微粒子との間の結合力が小さいので、洗浄工程によって二層目以上の多層膜のみを簡単に除去することが可能である。ここで、洗浄工程には、エチルアルコール等の溶液中での超音波洗浄を利用することができる。
【0018】
また、微粒子整列化工程において、新たに開発した電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板の表面上に微粒子の稠密膜を形成させ固定することができ、その後の洗浄工程によって二層目以上の多層膜のみを除去して微粒子が稠密に整列した良質の単層膜を作製することができる。ここで、電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法は、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板と対向基板の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させる方法であり、機械的に精密に制御することができるので、単層膜の品質の安定化を図ることができる。
【0019】
例えば、前記基板の表面にポリスチレン溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、このポリスチレン超薄膜を、酸素を含む大気圧プラズマで処理して酸素原子を導入し、分子中にカルボニル基と水酸基を生成するので、ポリスチレン粒子との間で強い結合力が得られ、ポリスチレン粒子を基板表面に強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。本発明の微粒子単層膜付き基板の製造方法は、官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。
【0021】
前記官能基修飾工程は、洗浄した基板1上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し(図1(a)参照)、この基板1を誘電体でコーティングされた対向電極板間にギャップが1〜2.5mmになるように保持して電極間に高周波電力を投入し、大気圧プラズマPを発生させて基板表面を処理する工程(図1(b)参照)である。ここで、官能基が修飾された基板1を微粒子固定用基板2と称する。
【0022】
前記微粒子整列化工程は、前記官能基修飾工程により処理した後、直ちに、スピンコート法又は移流集積法又は電気泳導堆積法又はLB法又はこれらの組み合わせにより、微粒子固定用基板2の表面に微粒子3の分散液を均一に塗布し、微粒子3の稠密膜を形成させ固定するものである(図1(c)参照)。本発明では、前記微粒子整列化工程として、新たに開発した後述の電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板2の表面上に微粒子3の稠密膜を形成させ固定することがより好ましい。
【0023】
前記洗浄工程は、微粒子膜を形成した基板を洗浄溶液中で超音波洗浄し、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去するものである(図1(d)参照)。
【0024】
本発明で使用できる基板としては、大気圧プラズマ処理によって基板表面に官能基を修飾できれば良く、各種材料を挙げることができる。例えば、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板を用いることができる。ここで、基板表面に修飾される官能基が、過カルボン酸基のような過酸化物基、水酸基、カルボン酸基等の酸素含有基又はオレフィンやベンゼン環などのπ電子共役系の官能基又はアミノ基、アミド基、イミド基、ピリジン環、ピロール環、ピロリドン環等の窒素含有基であることが好ましい。
【0025】
また、前記微粒子として、ポリスチレン粒子、ポリアクリル酸粒子等の高分子粒子又は金、銀等の金属粒子又はシリカ、酸化チタン等の酸化物粒子を用いることができる。微粒子は、粒度の揃った安定なものを用いるが、市販されて入手が容易なもの、あるいは製造が容易なものを用いる。本発明で用いる微粒子の直径は0.001〜10μmである。微粒子の直径が0.001μm(1nm)より小さいと、微粒子の製造が困難であり、取り扱いも難しい。また、微粒子の直径が10μmより大きいと、基板表面が官能基で修飾されたとしても、結合に寄与する表面積の割合が小さくなるので相対的に結合力が弱くなり、固定化は困難である。これらの微粒子は、溶媒中で分散させて用いるが、水を溶媒として用いる他に、電解質を含む水溶液、微粒子が分散可能な各種有機溶媒、例えばエタノール、エーテル、乳化液等を適宜用いることも可能である。
【0026】
本発明で使用した容量結合型大気圧プラズマ処理装置Aの概念図を図2に示す。本装置は、13.56MHz高周波電源10、マッチングユニット11、チャンバー12、真空排気系13、電極14、電極昇降機構15、走査テーブル16、走査テーブル制御部から構成されている。前記電極14は図2(b)に示すように、棒状形状になっており、銅製の電極棒17(直径3mm)をアルミナ絶縁体18(内径3mm、外径5mm)で被覆している。対向電極19の材料にはアルミナを用いており、走査テーブル16の上に設置している。これにより、誘電体バリア放電条件下でのグロー放電を実現している。電極間距離は2.5mmに設定した。チャンバー12内を10Paまで真空排気した後、Heガスを大気圧になるまで流入し、投入電力を15Wの条件で大気圧プラズマを発生させた。このとき、マッチングユニット11を利用して反射電力が0Wになることを確認した。ここで、大気圧プラズマの発生に用いるガスは、空気、希ガス、ハロゲン系ガス、アンモニア、酸素等である。プラズマ照射時間は、走査テーブル16の走査速度を制御して基板表面に対するプラズマ発生領域の滞在時間で制御する。前述の棒状電極14の周囲に発生するプラズマの広がりは約10mmであるので、例えば走査テーブル16を0.083mm/secで走査することにより、対向電極19の上に保持した基板1にプラズマを約2分間照射することができる。
【0027】
前記電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法は、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板2と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板2と対向基板24の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させることにより、微粒子固定用基板2の表面上に微粒子3の稠密膜を形成させ固定する方法である。ここで、前記微粒子の直径は、ギャップよりも十分に小さいので、微粒子の大きさは微粒子単層膜の作製にあまり影響を及ぼさない。微粒子単層膜の作製は、分散液の溶媒の蒸発速度に大きく影響され、蒸発速度はギャップの大きさと室内環境によって決まる。ギャップが50μmよりも小さいと、室内環境によって蒸発速度が大きく変動し、微粒子単層膜の作製に対する制御ができなくなり、好ましくない。一方、ギャップが200μmよりも大きいと、溶媒の蒸発速度が遅くなり、微粒子固定用基板2と対向基板24の並行移動させる相対速度を遅くする必要があり、微粒子単層膜の作製に長時間を要するようになり、好ましくない。また、微粒子の分散液に対して電界を印加する目的は、対向基板のエッジに電界が集中し、微粒子濃度が高くなることを利用し、微粒子の濃度を一定に制御するためと、走査速度を上げることができ、微粒子単層膜の作製時間の短縮を図るためである。
【0028】
図3に示した狭ギャップ伸展装置Bは、ベース板20の上にX軸方向のリニアガイド21を設置し、ステッピングモータ22の駆動によってX軸ステージ23をX軸方向に精度良く走査することができるとともに、該ステージ23の上にαβステージ24を載置し、更にその上にZ軸ステージ25を載置し、該Z軸ステージ25の上に絶縁プレートを介して下側ホルダー26を設け、該下側ホルダー26に微粒子固定用基板2を装着し、そして前記ベース板20に前記X軸ステージ23を跨ぐように支持脚27,…を立設するとともに、該支持脚27,…にマイクロメータ28,…で3点支持された取付枠29を架設し、該取付枠28の中央部に前記微粒子固定用基板2と所定の間隔を隔てて対向基板30を取付けている。更に、図示しない電源より前記微粒子固定用基板2と対向基板30との間に電圧を印加できるようになっている。前記取付枠29をマイクロメータ28,…と、前記αβステージ24及び前記Z軸ステージ25により、前記微粒子固定用基板2と対向基板30とを精度良く姿勢を維持しながら、その距離を微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップになるように設定する。そして、機械的に位置制御された狭ギャップ間に微粒子の分散液を導入し、0〜300V/cmの電界を印加しながら、本実施形態では微粒子固定用基板2のみを50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させるのである。ここで、微粒子を固定化しない対向基板30の表面には、水素終端化処理や疎水性基を修飾するなどにより微粒子と特別に相互作用しないような処理を施すことにより、微粒子配列効率や精度が向上することが期待される。
【0029】
本発明では、前記微粒子固定用基板2と対向基板30が狭ギャップを保って並行移動することにより、ギャップ間の微粒子の分散液を均一に表面に沿って伸展し、微粒子3に対して機械的な外力を付与して微粒子固定用基板2の表面に微粒子3を稠密に整列させるのである。それに加えて、本発明では微粒子の分散液に対して電界を印加することにより、帯電した微粒子3を微粒子固定用基板2の表面に導く電気泳導堆積法も併用するのである。
【0030】
官能基が修飾された微粒子固定用基板2の表面と微粒子3は共有結合及びイオン結合、水素結合などの非共有結合を介して強固に結合されている。しかし、二層目以上の微粒子は、微粒子固定用基板2に固定化されていないので、要望していない多層膜が偶発的に形成された場合は、適当な洗浄溶液中で超音波洗浄等をおこなうことにより、二層目以上の微粒子のみを取り除くことができ、微粒子の単層膜を得る。
【0031】
以上のことからも明確なように、本発明の特徴として、一般的な物理現象を利用しているため微粒子及びそれを固定化する基板に対して材料の制限がないため、その汎用性と普及性に極めて富むのである。
【実施例1】
【0032】
次に、シリコン基板の表面にポリスチレン(PS)ナノ粒子の単層膜を形成する実施例を以下に説明する。本実施例では、分散重合法により合成した平均粒子径1000nm及び市販の平均粒子径260nmのPSナノ粒子を用いている。
【0033】
(ポリスチレンナノ粒子の合成)
PSナノ粒子の合成について、その手順を述べる。用いた試薬については、特記しない限りは全て市販のものを精製せずにそのまま使用した。200ml用の三つ口フラスコにエタノール45ml、超純水5ml(18MΩ)をそれぞれ加えた。フラスコ上部にリービッヒ還流冷却器を取り付け、75℃に設定したシリコンオイルバス中において30分間加熱しながら攪拌した。このときの攪拌用スターラーチップの回転数は300rpmに設定した。重量平均分子量が55000のポリビニルピロリドン(PVP,Aldrich)0.4g、水酸化ナトリウムを用いて精製したスチレンモノマー(和光純薬)1−5mlをそれぞれ加え、5分間加熱攪拌を行った。その後、この反応溶液の一部を取り出し、バイアル瓶に移し、室温になるまで自然冷却させた。ここに、重合開始剤として、エタノールにより再結晶させたアゾイソブチロニトリル(AIBN)を0.03g加えた。再度、三つ口フラスコ内にこの溶液を加え、75℃で22h30分間攪拌しながら加熱した。反応終了後、エタノールを加え、3000rpm、15分の条件で遠心分離操作を3回繰り返すことにより不純物を取り除いた。
【0034】
合成したPSナノ粒子の平均粒子径の計測には、光学顕微鏡(OLYMPUS BH2-UMA)と走査型電子顕微鏡(SEM, Hitachi S-800)を用いた。SEM観察については、イオンスパッタ装置(JEOL)をもちいてPSナノ粒子表面に白金パラジウムを数nm蒸着させた試料を、加速電圧20kVの条件で観測した。粒子100個についてその粒子径をカウントし、平均粒子径を求めた。
【0035】
(ポリスチレン超薄膜の作製)
5×25mm2に切り出したSiウエハ基板表面の有機物を除去するためにアセトン中で超音波処理を10分行った。アセトンを除去後、基板を超純水中で超音波洗浄装置に1分導入し、新しく超純水で置換して保存した。ポリスチレン超薄膜の作製直前に基板を取り出し、窒素ガンで表面の超純水を除去したのち使用した。ポリスチレンの質量を分析用上皿電子天秤で測定し、2wt%になるようにテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として加えることによりポリスチレン溶液を調整した。超音波洗浄機を用いて、ポリスチレンをTHF中に溶解させた。この溶液を洗浄したSi基板上に、ピペットを用いて200μl滴下し、2000rpm、20秒のスピンコート条件でポリスチレン薄膜を成膜した。スピンコートには、スピンコータ(MIKASA 1H-D)を用いた。その後、この薄膜を60℃で10分加熱することにより、残留するTHFを薄膜中より完全に除去した。このようにして得られたポリスチレン薄膜の膜厚は100nmである。
【0036】
(大気圧ヘリウムプラズマによるポリスチレン超薄膜表面の改質)
Si基板表面に作製したポリスチレン超薄膜を、前述の大気圧ヘリウムプラズマ発生装置で処理した。大気圧ヘリウムプラズマ処理したポリスチレン超薄膜表面の接触角を接触角計/固液界面解析装置(協和界面科学)を用いて測定した。また、全反射測定法(Attenuated Total Reflection:ATR)による赤外吸収分光測定により、プラズマ処理を施したポリスチレン薄膜表面の構造解析を行った。測定には、多重反射ATRユニットを組み合わせたフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR; JASCO FT-IR6100)を用いた。更に、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS, ULVAC-PHI Quantum 2000)により、プラズマ処理を施したポリスチレン薄膜表面の構造解析を行った。
【0037】
プラズマ処理時間に対するポリスチレン薄膜の接触角の変化から、プラズマ処理表面の濡れ性変化を追跡した。プローブには、表面張力72mNm-1の超純水を用いた。未処理表面は80°以上の接触角を示し、疎水性であることが分かった。0.5分間のプラズマ照射によって、接触角がおよそ15°にまで急激に低下することが観測された。処理時間2分までは接触角は一定値を示した。3分間以上の処理により接触角が更に低下し、5°以下の超親水表面を形成することが分かったが、これはSi基板表面が露出したことによる。プラズマ処理表面は、およそ10分まで空気中に暴露すると接触角が35°程度まで増大することが分かった。その後は数日にわたって、35°程度の接触角を維持していた。従って、プラズマ照射後、直ちに微粒子固定化の工程を行う必要がある。
【0038】
全反射赤外分光測定法により、プラズマ処理によって親水化されたポリスチレン薄膜表面の構造解析を行った結果を図4に示す。プラズマ未処理の初期状態では、1600cm-1、1490cm-1付近に芳香族C=C由来の2本の鋭い吸収ピークが観測された。また730cm-1、690cm-1付近の2本の吸収ピークは芳香族一置換体であることを示している。3030cm-1、2920cm-1、2850cm-1付近に見られたピークはそれぞれ芳香族C−H、−CH3、−CH2−の存在を示すものである。スピンコート溶媒として用いたTHF由来のピークは観測されず、薄膜内に残留していないことが明らかになった。その他にみられた主なピークとしては、1450cm-1、1100cm-1付近のものが挙げられる。前者のピークは−CH2−の存在を示唆する。プリズムにZnSe結晶を用いており、入射赤外光の潜り込み深さが1100cm-1程度ではおよそ2μmになる。後者のピークは基板として用いた自然酸化SiウエハのSi−O由来であると考えられる。
【0039】
プラズマ処理により、新たに3200cm-1付近を中心としたブロードなピークの出現が確認された。これは水酸基による吸収を示すものであり、隣接する多分子間で水素結合を形成しているために幅広い吸収となっていることが示唆される。また、1700cm-1付近にカルボニル基の伸縮振動に由来した吸収ピークの出現が確認された。ポリスチレンに由来する種々のC−C、C=Cなどのピーク強度の全体的な減少が確認された。これらの結果から、プラズマ処理によってポリスチレン分子のC−C、C−H結合が切断され、ガス化したのと同時に、新たに生成されたダングリングボンドに酸素が導入されることにより水酸基やカルボニル基が形成されたと考えられる。これらは全て親水性基であることから、ポリスチレン薄膜表面に形成された親水性基によって、接触角の低下が導かれたことが分光学的に明らかにすることができた。
【0040】
プラズマ処理を3分行ったポリスチレン薄膜表面のスペクトルから、3000cm-1を中心としたポリスチレンに特徴的な振動ピーク、またカルボニル基や水酸基の形成を示唆するピーク強度が検出感度以下まで低下することがわかった。Si基板上に作製したポリスチレン薄膜が全て除去されたと考えられる。プラズマ処理時間3分において接触角がいっそう低下した理由は、プラズマによってポリスチレン膜が除去され、基板のSiウエハ表面が露出したためと言える。従って、実際の工程においてはプラズマ処理時間を2分以内とする。
【0041】
X線光電子分光測定により、プラズマ処理後のポリスチレン薄膜表面の評価を行った結果を図5に示す。(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれプラズマ処理時間0、1、2、3分のものを示す。(a)と(b)を比較すると、プラズマを照射することで530eV付近にO1s軌道に由来すると考えられるピークが現れた。また、1000eV付近にはC1s軌道のオージェ過程に関与するピークが確認され、280eV付近のC1s軌道に由来するピーク強度が減少していることから、Cの化学結合状態が変化したことが示唆された。(b)、(c)、(d)に関しては全体図からは大きな変化はみられなかったため、個々の軌道について拡大して観察する必要がある。以下、プラズマ処理時間0、2分のものについて比較し、表面の化学結合状態について検討を行った。
【0042】
図6にプラズマ処理後のC1s軌道についてのXPS測定結果を示す。プラズマ処理により主ピーク部分が若干ブロード化し、291eV付近のベンゼン環に由来するピークがほぼ消失した。ピーク分離をおこなうことで主ピークから3つのピークが得られた。Oが導入されていることを考慮して、これらはC−C、−CO、−COOに由来するものであると判断した。プラズマ処理前後でC−Cのピーク強度が減少していることから、プラズマ種の攻撃により切断されたC−Cやベンゼン環のダングリングボンドにOが導入されたと考えられる。図7にO1s、N1s軌道についてのXPS測定結果を示す。プラズマ処理によってOが積極的に導入されたが、Nについてはそれほど導入されたとは言えなかった。
【0043】
(ポリスチレンナノ粒子の単層膜の作製)
次の3つのステップにより、シリコンウエハ上に粒子径260nm又は1000nmのポリスチレンナノ粒子の単層膜を作製した。ステップ1として洗浄したシリコンウエハ上に、スピンコート法により膜厚100nmのポリスチレン薄膜を作製した。ステップ2として、この試料を誘電体でコーティングされた金属棒と金属板が対向した電極間に設置した。電極間距離は1〜2.5mmに設定した。13.56MHzのRF電源をもちいて10〜30W程度の電力を電極間に投入することにより、電極間に大気圧ヘリウムプラズマを発生させ、1分間試料表面を大気圧ヘリウムプラズマに曝した。このとき、ポリスチレン薄膜の水に対する接触角は、90度前後から15度程度まで低下した。X線光電子分光法やFT−IR分光測定法により、ポリスチレン薄膜表面に親水性基として過酸化物基、カルボン酸基、水酸基などの形成が確認された。ステップ3として、スピンコート法又は図3の装置により、プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面に1〜10wt%の濃度になるようにポリスチレンナノ粒子を加えた。ポリスチレンナノ粒子は、市販製(モリテックス社製)のものを用いた。スピンコート法の場合は、2000rpmで20秒高速回転、図3の装置を用いる場合は、1〜10μm/sの速度で基板を対向基板に対して並行移動させることにより、プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面にポリスチレンナノ粒子の単層膜を作製した。ただし、スピンコート法で作製する場合は、基板の周辺部分に多層膜が形成されるが、すぐさまエタノール等による洗浄操作によって、二層目以上の多層化部のみを除去し、単層膜を作製することができる。
【0044】
図8は、大気圧ヘリウムプラズマを照射することで表面を活性化させたポリスチレン薄膜上にスピンコート法で粒子径260nmのPSナノ粒子単層膜を作製した結果を示すSEM像である。図8(a)は、微粒子整列化工程によってPSナノ粒子の稠密膜を形成させ固定した状態を示し、多層部分が多くを占めていることが分かる。図8(b)は、(a)をエタノール中に10分間浸漬させた後の状態を示し、多層部分が除去され、ナノ粒子単層膜が作製できたことが分かる。図9は、粒子径1000nmのPSナノ粒子膜を作製した結果を示すSEM像である。広い面積にわたって均一なPSナノ粒子単層膜が作製できていることが分かる。比較として、Si基板にポリスチレン薄膜を形成せずに、大気圧プラズマ処理のみで親水化した表面に同様にPSナノ粒子膜を形成した場合、エタノール中に10分間浸漬させるとPSナノ粒子は殆ど存在しなくなった。
【0045】
図10は、端面間距離50nm、100nmのキュービック形状銀ナノ粒子を合成し、それを用いて作製した銀ナノキューブ単層膜のSEM像を示している。図11は、15nmの球状金ナノ粒子を合成し、それを用いて作製した金ナノ粒子単層膜のSEM像を示している。サイズや組成の異なる様々な微粒子で、上記方法によって単層膜を作製し、電子顕微鏡及び光学顕微鏡で観察した。すべての微粒子において、二次元的に単層状に連続した微粒子の単層膜の形成が確認された。これらの微粒子膜は超音波洗浄程度では、基板表面から剥離しないことも確認している。
【0046】
一方で、洗浄したシリコンウエハやプラズマ処理をおこなっていない基板上では、微粒子の多層化及び、微粒子膜が存在しない箇所が多数観測されている。更に、スピンコート法によって作製した場合では、二層目以上を取り除く操作において顕著な違いが現れた。シリコンウエハ上に作製したポリスチレン微粒子膜をエタノール中で超音波洗浄をおこなうと、一層目の微粒子も同時に剥離してしまい、ウエハ上にはほとんど微粒子が確認されなかった。これらの結果から、プラズマ処理によってポリスチレン薄膜表面に形成された親水性基によって、微粒子が化学的に固定化されていることが認められた。
【0047】
次に、局在表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance:LSPR)を利用したセンサーを構成するために、金属微粒子が非最密構造に集積されたアレイを作製する方法を簡単に説明する。それには、前述のように、基板の表面に六方最密状態のPSナノ粒子単層膜を作製した後、図1(e)に示すように大気圧プラズマプロセスでエッチングしてPSナノ粒子の位置はそのままで直径を減少させ、互いの粒子間に間隔が開いた非最密構造を作製する(図1(f)参照)。つまり、大気圧プラズマプロセスによる精密加工で六方非最密構造を実現し、その表面に金超薄膜を成膜することによってコア部がポリスチレン、シェル部が金から構成されたPS@Auコアシェルナノ粒子アレイを作製した。
【0048】
図12(a)は最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(b)は2.5分間の大気圧プラズマエッチングを施して作製した非最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(c)は(b)の拡大図、(d)は(c)の45°の角度から見たSEM像である。個々のポリスチレンナノ粒子の粒子径が260nmから150nmに減少し、また互いに密接していたポリスチレンナノ粒子間に一定の空隙が形成されることが分かった。加工後のナノ粒子は同一の粒径を示していたことから、投入電力15W、13.56MHzのRF電源を用いて発生させた大気圧ヘリウムプラズマ加工により、個々のポリスチレンナノ粒子がそれぞれ均一に加工されていることが分かった。試料を45°傾斜させて同様にSEMの観察をおこなったところ、加工後のナノ粒子は球状の形状を保持していることが分かった。これは、大気圧プラズマ処理によるポリスチレンナノ粒子の加工が三次元において等方的に進行していることを強く示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば医療分野において、ナノ構造体表面の検体の吸着を光学特性の変化で検出する医療用光学センシングシステムに用いることが可能である。具体的には、金属微粒子表面や金属微細構造に発生するプラズモンと光の共鳴現象である局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用したセンサーを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の微粒子単層膜の作製方法を示す概念図である。
【図2】大気圧プラズマ処理装置の概念図であり、(a)は全体側面図、(b)は棒状電極と基板との関係を示す平面図である。
【図3】狭ギャップ伸展装置の簡略側面図である。
【図4】プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面を全反射赤外分光測定法により測定した結果を示すATR−FT−IRスペクトルである。
【図5】プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面をX線光電子分光測定により測定したXPSスペクトルを示し、(a)はプラズマ処理時間0分、(b)プラズマ処理時間1分、(c)プラズマ処理時間2分、(d)プラズマ処理時間3分の場合である。
【図6】プラズマ処理前後におけるポリスチレン薄膜表面をX線光電子分光測定により測定したC1s軌道のXPSスペクトルを示す。
【図7】プラズマ処理前後におけるポリスチレン薄膜表面をX線光電子分光測定により測定した結果を示し、(a)はO1s軌道のXPSスペクトル、(b)はN1s軌道のXPSスペクトルを示す。
【図8】(a)は微粒子整列化工程によってPSナノ粒子の稠密膜を形成させ固定した状態のSEM像を示し、(b)は(a)をエタノールで洗浄して多層部分を除去した状態のPSナノ粒子単層膜のSEM像である。
【図9】平均径1000nmのポリスチレン粒子単層膜のSEM像である。
【図10】銀ナノキューブ単層膜のSEM像である。
【図11】金ナノ粒子単層膜のSEM像である。
【図12】(a)は最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(b)は2.5分間の大気圧プラズマエッチングを施して作製した非最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(c)は(b)の拡大図、(d)は(c)の45°の角度から見たSEM像である。
【符号の説明】
【0051】
1 基板、
2 微粒子固定用基板、
3 微粒子、
10 高周波電源、
11 マッチングユニット、
12 チャンバー、
13 真空排気系、
14 電極、
15 電極昇降機構、
16 走査テーブル、
17 電極棒、
18 アルミナ絶縁体、
19 対向電極、
20 ベース板、
21 リニアガイド、
22 ステッピングモータ、
23 X軸ステージ、
24 αβステージ、
25 Z軸ステージ、
26 下側ホルダー、
27 支持脚、
28 マイクロメータ、
29 取付枠、
30 対向基板、
P 大気圧プラズマ、
A 大気圧プラズマ処理装置、
B 狭ギャップ伸展装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子単層膜付き基板の製造方法及び微粒子単層膜付き基板に係わり、更に詳しくは基板表面に微粒子を整然と単層状に固定化した微粒子単層膜付き基板の製造方法及びそれにより作製した微粒子単層膜付き基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機・高分子・無機材料、またはその複合材料から構成された直径0.001〜10μmの微粒子を平面配列させる方法として、移流集積法や電気泳動堆積法による単粒子膜の作製方法、更にはLangmuir-Blodgett(以下、LBと省略)膜の作製方法等が知られている。移流集積法とは、水溶液などの溶媒中に長時間分散する粒子の分散液にガラスなどの溶媒になじみやすい平坦な基板を浸漬し、雰囲気、湿度、粒子の濃度、基板の引き上げ速度等を制御することによって、基板上に単粒子膜を作製する方法である。また、電気泳動堆積法とは、微粒子を含む分散液中に二枚以上の電極を導入、または電極基板中に分散液をサンドイッチした状態で、電極間に直流を印加することにより、液中で帯電した微粒子を電界により輸送し基板上に堆積させる方法である。また、交流を印加して、微粒子を誘電泳動させて堆積する方法も提案されている。
【0003】
一方、LB膜は、主に清浄な水溶液表面に微粒子を含む溶液を展開し、表面圧をかけることにより水面上に単粒子膜を作製し、この膜を基板に転写する成膜方法である。これらの単層膜成膜法では、基板と分散液界面における粒子の自律的集積力を利用するものであり、基板表面の濡れ性が単粒子膜形成に大きく影響を及ぼす。この濡れ性に関しては、超親水性であればよいというものではなく、高い親和性を保ちながらも分散液は基板上においてある程度の接触角を形成する方が、微粒子配列性の良好な膜が得られる傾向にあることがわかっている。更に、既述の成膜法は、微粒子の自律的集合力だけを利用しているため、微粒子を固定化させる手法が組み込まれておらず、単層膜の吸着安定性に問題が残っている。
【0004】
これまでのところ、この微粒子分散液に対する濡れ性と微粒子の固定化の両方を同時に制御する方法は十分に解決されていない。この単粒子膜成膜に適した濡れ性及び固定化を制御する方法として、基板上に両媒性分子膜(特許文献1)や、イオン性吸着膜(非特許文献1)をバインダー層として配設することによって、単層状の微粒子膜を固定化する手法が提案されている。しかしながら、これらの手法はディッピングプロセスによる膜形成が主であるため、温度や湿度などの作業環境雰囲気による擾乱の影響を受けやすく、その精密な制御は困難であり、材料系に依存して、それぞれ物理的に数値制御が困難な特別なノウハウ等を必要とする。また、大面積化や高スループット製造などには不向きであるほか、バインダー層を形成させられる基板の種類が限定されるなど、その実用性や汎用性は乏しい。
【0005】
また、特許文献2には、大気圧プラズマを用いて、有機材料を加工する技術、あるいは金属、半導体若しくは無機物絶縁体の何れかの表面上に形成された有機物質を加工する技術が開示されている。更に、特許文献3には、大気圧プラズマを用いて、フッ素系高分子重合体膜や、セラミックスやガラス類、熱可塑性樹脂などの多孔体の表面を改質(親水化)する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平08−229474号公報
【特許文献2】特許第3366679号公報
【特許文献3】特許第3455610号公報
【非特許文献1】Langmuir 2003, 19, 8769-8776
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、基板表面に粒度が揃った微粒子を整然と単層状に固定化した微粒子単層膜付き基板の製造方法において、常温常圧下において巨大なエネルギーを大面積にわたって均一且つ簡便に供給することが可能な大気圧プラズマプロセスによる処理を始め、正確に制御可能な比較的簡単な工程のみからなり、大面積化や高スループット製造が可能な微粒子単層膜付き基板の製造方法を提供し、またそれにより製造された微粒子単層膜付き基板を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含むことを特徴とする微粒子単層膜付き基板の製造方法を構成した(請求項1)。
【0008】
ここで、前記微粒子として、ポリスチレン粒子、ポリアクリル酸粒子等の高分子粒子又は金、銀等の金属粒子又はシリカ、酸化チタン等の酸化物粒子を用いることが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、基板表面に修飾される官能基が、過カルボン酸基のような過酸化物基、水酸基、カルボン酸基等の酸素含有基又はオレフィンやベンゼン環などのπ電子共役系の官能基又はアミノ基、アミド基、イミド基、ピリジン環、ピロール環、ピロリドン環等の窒素含有基である(請求項3)。
【0010】
具体的には、前記官能基修飾工程として、洗浄した基板上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、この基板を誘電体でコーティングされた対向電極板間にギャップが1〜2.5mmになるように保持して電極間に高周波電力を投入し、大気圧プラズマを発生させて基板表面を処理する工程である(請求項4)。
【0011】
また、前記基板の表面にポリスチレン溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、このポリスチレン超薄膜を、酸素を含む大気圧プラズマで処理して酸素原子を導入し、分子中にカルボニル基と水酸基を生成することが好ましい(請求項5)。
【0012】
また、前記微粒子整列化工程が、スピンコート法又は移流集積法又は電気泳導堆積法又はLB法又はこれらの組み合わせにより、微粒子固定用基板の表面に微粒子の分散液を均一に塗布し、微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである(請求項6)。
【0013】
更に、前記微粒子整列化工程が、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板と対向基板の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させる電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板の表面上に微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである(請求項7)。
【0014】
また、前記洗浄工程が、微粒子膜を形成した基板を洗浄溶液中で超音波洗浄し、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去するものである(請求項8)。
【0015】
そして、前述の微粒子単層膜付き基板の製造方法によって製造された微粒子単層膜付き基板を提供する(請求項9)。
【発明の効果】
【0016】
以上にしてなる本発明の微粒子単層膜付き基板の製造方法は、官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含むので、基板表面に微粒子が単層状に稠密に配列した微粒子単層膜を作製するのと同時に、微粒子を基板表面に確実に固定化することが可能になる。これにより、バイオケミカルセンサ、情報記録素子、導波路、発光素子などに適した材料系の単層膜成膜によって、ナノ粒子本来のバルク形態にはない特異的な性質を限りなく引き出したナノ粒子デバイスの製作が可能になり、本発明の製造方法により作製した微粒子単層膜付き基板は、ナノ粒子デバイスの実用化の実現に多大な貢献をもたらすことができる。また、一連の工程にウェットプロセスとドライプロセスが混在していても、ドライプロセスが大気圧プラズマ処理であれば、全てのプロセスを常温常圧下で一貫して操作できるため、長尺シート状の基板を用いてロールツーロールプロセスで連続処理することもでき、高い生産性を有する。
【0017】
大気圧プラズマ処理は、巨大なエネルギーを大面積にわたって均一且つ簡便に供給することができるので、洗浄した基板上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、それを大気圧プラズマ処理するだけで、官能基が修飾された微粒子固定用基板を容易に作製することができ、その上に形成する微粒子と官能基との化学結合によって、基板表面に微粒子の単層膜を強固に固定化することができる。尚、単層膜の上に部分的に多層膜が形成されることもあるが、官能基を介した基板と一層目の微粒子との間の結合力より、一層目の微粒子と二層目の微粒子との間の結合力が小さいので、洗浄工程によって二層目以上の多層膜のみを簡単に除去することが可能である。ここで、洗浄工程には、エチルアルコール等の溶液中での超音波洗浄を利用することができる。
【0018】
また、微粒子整列化工程において、新たに開発した電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板の表面上に微粒子の稠密膜を形成させ固定することができ、その後の洗浄工程によって二層目以上の多層膜のみを除去して微粒子が稠密に整列した良質の単層膜を作製することができる。ここで、電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法は、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板と対向基板の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させる方法であり、機械的に精密に制御することができるので、単層膜の品質の安定化を図ることができる。
【0019】
例えば、前記基板の表面にポリスチレン溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、このポリスチレン超薄膜を、酸素を含む大気圧プラズマで処理して酸素原子を導入し、分子中にカルボニル基と水酸基を生成するので、ポリスチレン粒子との間で強い結合力が得られ、ポリスチレン粒子を基板表面に強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。本発明の微粒子単層膜付き基板の製造方法は、官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、前記微粒子固定用基板の表面に、粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、を含むことを特徴としている。
【0021】
前記官能基修飾工程は、洗浄した基板1上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し(図1(a)参照)、この基板1を誘電体でコーティングされた対向電極板間にギャップが1〜2.5mmになるように保持して電極間に高周波電力を投入し、大気圧プラズマPを発生させて基板表面を処理する工程(図1(b)参照)である。ここで、官能基が修飾された基板1を微粒子固定用基板2と称する。
【0022】
前記微粒子整列化工程は、前記官能基修飾工程により処理した後、直ちに、スピンコート法又は移流集積法又は電気泳導堆積法又はLB法又はこれらの組み合わせにより、微粒子固定用基板2の表面に微粒子3の分散液を均一に塗布し、微粒子3の稠密膜を形成させ固定するものである(図1(c)参照)。本発明では、前記微粒子整列化工程として、新たに開発した後述の電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板2の表面上に微粒子3の稠密膜を形成させ固定することがより好ましい。
【0023】
前記洗浄工程は、微粒子膜を形成した基板を洗浄溶液中で超音波洗浄し、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去するものである(図1(d)参照)。
【0024】
本発明で使用できる基板としては、大気圧プラズマ処理によって基板表面に官能基を修飾できれば良く、各種材料を挙げることができる。例えば、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板を用いることができる。ここで、基板表面に修飾される官能基が、過カルボン酸基のような過酸化物基、水酸基、カルボン酸基等の酸素含有基又はオレフィンやベンゼン環などのπ電子共役系の官能基又はアミノ基、アミド基、イミド基、ピリジン環、ピロール環、ピロリドン環等の窒素含有基であることが好ましい。
【0025】
また、前記微粒子として、ポリスチレン粒子、ポリアクリル酸粒子等の高分子粒子又は金、銀等の金属粒子又はシリカ、酸化チタン等の酸化物粒子を用いることができる。微粒子は、粒度の揃った安定なものを用いるが、市販されて入手が容易なもの、あるいは製造が容易なものを用いる。本発明で用いる微粒子の直径は0.001〜10μmである。微粒子の直径が0.001μm(1nm)より小さいと、微粒子の製造が困難であり、取り扱いも難しい。また、微粒子の直径が10μmより大きいと、基板表面が官能基で修飾されたとしても、結合に寄与する表面積の割合が小さくなるので相対的に結合力が弱くなり、固定化は困難である。これらの微粒子は、溶媒中で分散させて用いるが、水を溶媒として用いる他に、電解質を含む水溶液、微粒子が分散可能な各種有機溶媒、例えばエタノール、エーテル、乳化液等を適宜用いることも可能である。
【0026】
本発明で使用した容量結合型大気圧プラズマ処理装置Aの概念図を図2に示す。本装置は、13.56MHz高周波電源10、マッチングユニット11、チャンバー12、真空排気系13、電極14、電極昇降機構15、走査テーブル16、走査テーブル制御部から構成されている。前記電極14は図2(b)に示すように、棒状形状になっており、銅製の電極棒17(直径3mm)をアルミナ絶縁体18(内径3mm、外径5mm)で被覆している。対向電極19の材料にはアルミナを用いており、走査テーブル16の上に設置している。これにより、誘電体バリア放電条件下でのグロー放電を実現している。電極間距離は2.5mmに設定した。チャンバー12内を10Paまで真空排気した後、Heガスを大気圧になるまで流入し、投入電力を15Wの条件で大気圧プラズマを発生させた。このとき、マッチングユニット11を利用して反射電力が0Wになることを確認した。ここで、大気圧プラズマの発生に用いるガスは、空気、希ガス、ハロゲン系ガス、アンモニア、酸素等である。プラズマ照射時間は、走査テーブル16の走査速度を制御して基板表面に対するプラズマ発生領域の滞在時間で制御する。前述の棒状電極14の周囲に発生するプラズマの広がりは約10mmであるので、例えば走査テーブル16を0.083mm/secで走査することにより、対向電極19の上に保持した基板1にプラズマを約2分間照射することができる。
【0027】
前記電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法は、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板2と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板2と対向基板24の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させることにより、微粒子固定用基板2の表面上に微粒子3の稠密膜を形成させ固定する方法である。ここで、前記微粒子の直径は、ギャップよりも十分に小さいので、微粒子の大きさは微粒子単層膜の作製にあまり影響を及ぼさない。微粒子単層膜の作製は、分散液の溶媒の蒸発速度に大きく影響され、蒸発速度はギャップの大きさと室内環境によって決まる。ギャップが50μmよりも小さいと、室内環境によって蒸発速度が大きく変動し、微粒子単層膜の作製に対する制御ができなくなり、好ましくない。一方、ギャップが200μmよりも大きいと、溶媒の蒸発速度が遅くなり、微粒子固定用基板2と対向基板24の並行移動させる相対速度を遅くする必要があり、微粒子単層膜の作製に長時間を要するようになり、好ましくない。また、微粒子の分散液に対して電界を印加する目的は、対向基板のエッジに電界が集中し、微粒子濃度が高くなることを利用し、微粒子の濃度を一定に制御するためと、走査速度を上げることができ、微粒子単層膜の作製時間の短縮を図るためである。
【0028】
図3に示した狭ギャップ伸展装置Bは、ベース板20の上にX軸方向のリニアガイド21を設置し、ステッピングモータ22の駆動によってX軸ステージ23をX軸方向に精度良く走査することができるとともに、該ステージ23の上にαβステージ24を載置し、更にその上にZ軸ステージ25を載置し、該Z軸ステージ25の上に絶縁プレートを介して下側ホルダー26を設け、該下側ホルダー26に微粒子固定用基板2を装着し、そして前記ベース板20に前記X軸ステージ23を跨ぐように支持脚27,…を立設するとともに、該支持脚27,…にマイクロメータ28,…で3点支持された取付枠29を架設し、該取付枠28の中央部に前記微粒子固定用基板2と所定の間隔を隔てて対向基板30を取付けている。更に、図示しない電源より前記微粒子固定用基板2と対向基板30との間に電圧を印加できるようになっている。前記取付枠29をマイクロメータ28,…と、前記αβステージ24及び前記Z軸ステージ25により、前記微粒子固定用基板2と対向基板30とを精度良く姿勢を維持しながら、その距離を微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップになるように設定する。そして、機械的に位置制御された狭ギャップ間に微粒子の分散液を導入し、0〜300V/cmの電界を印加しながら、本実施形態では微粒子固定用基板2のみを50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させるのである。ここで、微粒子を固定化しない対向基板30の表面には、水素終端化処理や疎水性基を修飾するなどにより微粒子と特別に相互作用しないような処理を施すことにより、微粒子配列効率や精度が向上することが期待される。
【0029】
本発明では、前記微粒子固定用基板2と対向基板30が狭ギャップを保って並行移動することにより、ギャップ間の微粒子の分散液を均一に表面に沿って伸展し、微粒子3に対して機械的な外力を付与して微粒子固定用基板2の表面に微粒子3を稠密に整列させるのである。それに加えて、本発明では微粒子の分散液に対して電界を印加することにより、帯電した微粒子3を微粒子固定用基板2の表面に導く電気泳導堆積法も併用するのである。
【0030】
官能基が修飾された微粒子固定用基板2の表面と微粒子3は共有結合及びイオン結合、水素結合などの非共有結合を介して強固に結合されている。しかし、二層目以上の微粒子は、微粒子固定用基板2に固定化されていないので、要望していない多層膜が偶発的に形成された場合は、適当な洗浄溶液中で超音波洗浄等をおこなうことにより、二層目以上の微粒子のみを取り除くことができ、微粒子の単層膜を得る。
【0031】
以上のことからも明確なように、本発明の特徴として、一般的な物理現象を利用しているため微粒子及びそれを固定化する基板に対して材料の制限がないため、その汎用性と普及性に極めて富むのである。
【実施例1】
【0032】
次に、シリコン基板の表面にポリスチレン(PS)ナノ粒子の単層膜を形成する実施例を以下に説明する。本実施例では、分散重合法により合成した平均粒子径1000nm及び市販の平均粒子径260nmのPSナノ粒子を用いている。
【0033】
(ポリスチレンナノ粒子の合成)
PSナノ粒子の合成について、その手順を述べる。用いた試薬については、特記しない限りは全て市販のものを精製せずにそのまま使用した。200ml用の三つ口フラスコにエタノール45ml、超純水5ml(18MΩ)をそれぞれ加えた。フラスコ上部にリービッヒ還流冷却器を取り付け、75℃に設定したシリコンオイルバス中において30分間加熱しながら攪拌した。このときの攪拌用スターラーチップの回転数は300rpmに設定した。重量平均分子量が55000のポリビニルピロリドン(PVP,Aldrich)0.4g、水酸化ナトリウムを用いて精製したスチレンモノマー(和光純薬)1−5mlをそれぞれ加え、5分間加熱攪拌を行った。その後、この反応溶液の一部を取り出し、バイアル瓶に移し、室温になるまで自然冷却させた。ここに、重合開始剤として、エタノールにより再結晶させたアゾイソブチロニトリル(AIBN)を0.03g加えた。再度、三つ口フラスコ内にこの溶液を加え、75℃で22h30分間攪拌しながら加熱した。反応終了後、エタノールを加え、3000rpm、15分の条件で遠心分離操作を3回繰り返すことにより不純物を取り除いた。
【0034】
合成したPSナノ粒子の平均粒子径の計測には、光学顕微鏡(OLYMPUS BH2-UMA)と走査型電子顕微鏡(SEM, Hitachi S-800)を用いた。SEM観察については、イオンスパッタ装置(JEOL)をもちいてPSナノ粒子表面に白金パラジウムを数nm蒸着させた試料を、加速電圧20kVの条件で観測した。粒子100個についてその粒子径をカウントし、平均粒子径を求めた。
【0035】
(ポリスチレン超薄膜の作製)
5×25mm2に切り出したSiウエハ基板表面の有機物を除去するためにアセトン中で超音波処理を10分行った。アセトンを除去後、基板を超純水中で超音波洗浄装置に1分導入し、新しく超純水で置換して保存した。ポリスチレン超薄膜の作製直前に基板を取り出し、窒素ガンで表面の超純水を除去したのち使用した。ポリスチレンの質量を分析用上皿電子天秤で測定し、2wt%になるようにテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として加えることによりポリスチレン溶液を調整した。超音波洗浄機を用いて、ポリスチレンをTHF中に溶解させた。この溶液を洗浄したSi基板上に、ピペットを用いて200μl滴下し、2000rpm、20秒のスピンコート条件でポリスチレン薄膜を成膜した。スピンコートには、スピンコータ(MIKASA 1H-D)を用いた。その後、この薄膜を60℃で10分加熱することにより、残留するTHFを薄膜中より完全に除去した。このようにして得られたポリスチレン薄膜の膜厚は100nmである。
【0036】
(大気圧ヘリウムプラズマによるポリスチレン超薄膜表面の改質)
Si基板表面に作製したポリスチレン超薄膜を、前述の大気圧ヘリウムプラズマ発生装置で処理した。大気圧ヘリウムプラズマ処理したポリスチレン超薄膜表面の接触角を接触角計/固液界面解析装置(協和界面科学)を用いて測定した。また、全反射測定法(Attenuated Total Reflection:ATR)による赤外吸収分光測定により、プラズマ処理を施したポリスチレン薄膜表面の構造解析を行った。測定には、多重反射ATRユニットを組み合わせたフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR; JASCO FT-IR6100)を用いた。更に、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS, ULVAC-PHI Quantum 2000)により、プラズマ処理を施したポリスチレン薄膜表面の構造解析を行った。
【0037】
プラズマ処理時間に対するポリスチレン薄膜の接触角の変化から、プラズマ処理表面の濡れ性変化を追跡した。プローブには、表面張力72mNm-1の超純水を用いた。未処理表面は80°以上の接触角を示し、疎水性であることが分かった。0.5分間のプラズマ照射によって、接触角がおよそ15°にまで急激に低下することが観測された。処理時間2分までは接触角は一定値を示した。3分間以上の処理により接触角が更に低下し、5°以下の超親水表面を形成することが分かったが、これはSi基板表面が露出したことによる。プラズマ処理表面は、およそ10分まで空気中に暴露すると接触角が35°程度まで増大することが分かった。その後は数日にわたって、35°程度の接触角を維持していた。従って、プラズマ照射後、直ちに微粒子固定化の工程を行う必要がある。
【0038】
全反射赤外分光測定法により、プラズマ処理によって親水化されたポリスチレン薄膜表面の構造解析を行った結果を図4に示す。プラズマ未処理の初期状態では、1600cm-1、1490cm-1付近に芳香族C=C由来の2本の鋭い吸収ピークが観測された。また730cm-1、690cm-1付近の2本の吸収ピークは芳香族一置換体であることを示している。3030cm-1、2920cm-1、2850cm-1付近に見られたピークはそれぞれ芳香族C−H、−CH3、−CH2−の存在を示すものである。スピンコート溶媒として用いたTHF由来のピークは観測されず、薄膜内に残留していないことが明らかになった。その他にみられた主なピークとしては、1450cm-1、1100cm-1付近のものが挙げられる。前者のピークは−CH2−の存在を示唆する。プリズムにZnSe結晶を用いており、入射赤外光の潜り込み深さが1100cm-1程度ではおよそ2μmになる。後者のピークは基板として用いた自然酸化SiウエハのSi−O由来であると考えられる。
【0039】
プラズマ処理により、新たに3200cm-1付近を中心としたブロードなピークの出現が確認された。これは水酸基による吸収を示すものであり、隣接する多分子間で水素結合を形成しているために幅広い吸収となっていることが示唆される。また、1700cm-1付近にカルボニル基の伸縮振動に由来した吸収ピークの出現が確認された。ポリスチレンに由来する種々のC−C、C=Cなどのピーク強度の全体的な減少が確認された。これらの結果から、プラズマ処理によってポリスチレン分子のC−C、C−H結合が切断され、ガス化したのと同時に、新たに生成されたダングリングボンドに酸素が導入されることにより水酸基やカルボニル基が形成されたと考えられる。これらは全て親水性基であることから、ポリスチレン薄膜表面に形成された親水性基によって、接触角の低下が導かれたことが分光学的に明らかにすることができた。
【0040】
プラズマ処理を3分行ったポリスチレン薄膜表面のスペクトルから、3000cm-1を中心としたポリスチレンに特徴的な振動ピーク、またカルボニル基や水酸基の形成を示唆するピーク強度が検出感度以下まで低下することがわかった。Si基板上に作製したポリスチレン薄膜が全て除去されたと考えられる。プラズマ処理時間3分において接触角がいっそう低下した理由は、プラズマによってポリスチレン膜が除去され、基板のSiウエハ表面が露出したためと言える。従って、実際の工程においてはプラズマ処理時間を2分以内とする。
【0041】
X線光電子分光測定により、プラズマ処理後のポリスチレン薄膜表面の評価を行った結果を図5に示す。(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれプラズマ処理時間0、1、2、3分のものを示す。(a)と(b)を比較すると、プラズマを照射することで530eV付近にO1s軌道に由来すると考えられるピークが現れた。また、1000eV付近にはC1s軌道のオージェ過程に関与するピークが確認され、280eV付近のC1s軌道に由来するピーク強度が減少していることから、Cの化学結合状態が変化したことが示唆された。(b)、(c)、(d)に関しては全体図からは大きな変化はみられなかったため、個々の軌道について拡大して観察する必要がある。以下、プラズマ処理時間0、2分のものについて比較し、表面の化学結合状態について検討を行った。
【0042】
図6にプラズマ処理後のC1s軌道についてのXPS測定結果を示す。プラズマ処理により主ピーク部分が若干ブロード化し、291eV付近のベンゼン環に由来するピークがほぼ消失した。ピーク分離をおこなうことで主ピークから3つのピークが得られた。Oが導入されていることを考慮して、これらはC−C、−CO、−COOに由来するものであると判断した。プラズマ処理前後でC−Cのピーク強度が減少していることから、プラズマ種の攻撃により切断されたC−Cやベンゼン環のダングリングボンドにOが導入されたと考えられる。図7にO1s、N1s軌道についてのXPS測定結果を示す。プラズマ処理によってOが積極的に導入されたが、Nについてはそれほど導入されたとは言えなかった。
【0043】
(ポリスチレンナノ粒子の単層膜の作製)
次の3つのステップにより、シリコンウエハ上に粒子径260nm又は1000nmのポリスチレンナノ粒子の単層膜を作製した。ステップ1として洗浄したシリコンウエハ上に、スピンコート法により膜厚100nmのポリスチレン薄膜を作製した。ステップ2として、この試料を誘電体でコーティングされた金属棒と金属板が対向した電極間に設置した。電極間距離は1〜2.5mmに設定した。13.56MHzのRF電源をもちいて10〜30W程度の電力を電極間に投入することにより、電極間に大気圧ヘリウムプラズマを発生させ、1分間試料表面を大気圧ヘリウムプラズマに曝した。このとき、ポリスチレン薄膜の水に対する接触角は、90度前後から15度程度まで低下した。X線光電子分光法やFT−IR分光測定法により、ポリスチレン薄膜表面に親水性基として過酸化物基、カルボン酸基、水酸基などの形成が確認された。ステップ3として、スピンコート法又は図3の装置により、プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面に1〜10wt%の濃度になるようにポリスチレンナノ粒子を加えた。ポリスチレンナノ粒子は、市販製(モリテックス社製)のものを用いた。スピンコート法の場合は、2000rpmで20秒高速回転、図3の装置を用いる場合は、1〜10μm/sの速度で基板を対向基板に対して並行移動させることにより、プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面にポリスチレンナノ粒子の単層膜を作製した。ただし、スピンコート法で作製する場合は、基板の周辺部分に多層膜が形成されるが、すぐさまエタノール等による洗浄操作によって、二層目以上の多層化部のみを除去し、単層膜を作製することができる。
【0044】
図8は、大気圧ヘリウムプラズマを照射することで表面を活性化させたポリスチレン薄膜上にスピンコート法で粒子径260nmのPSナノ粒子単層膜を作製した結果を示すSEM像である。図8(a)は、微粒子整列化工程によってPSナノ粒子の稠密膜を形成させ固定した状態を示し、多層部分が多くを占めていることが分かる。図8(b)は、(a)をエタノール中に10分間浸漬させた後の状態を示し、多層部分が除去され、ナノ粒子単層膜が作製できたことが分かる。図9は、粒子径1000nmのPSナノ粒子膜を作製した結果を示すSEM像である。広い面積にわたって均一なPSナノ粒子単層膜が作製できていることが分かる。比較として、Si基板にポリスチレン薄膜を形成せずに、大気圧プラズマ処理のみで親水化した表面に同様にPSナノ粒子膜を形成した場合、エタノール中に10分間浸漬させるとPSナノ粒子は殆ど存在しなくなった。
【0045】
図10は、端面間距離50nm、100nmのキュービック形状銀ナノ粒子を合成し、それを用いて作製した銀ナノキューブ単層膜のSEM像を示している。図11は、15nmの球状金ナノ粒子を合成し、それを用いて作製した金ナノ粒子単層膜のSEM像を示している。サイズや組成の異なる様々な微粒子で、上記方法によって単層膜を作製し、電子顕微鏡及び光学顕微鏡で観察した。すべての微粒子において、二次元的に単層状に連続した微粒子の単層膜の形成が確認された。これらの微粒子膜は超音波洗浄程度では、基板表面から剥離しないことも確認している。
【0046】
一方で、洗浄したシリコンウエハやプラズマ処理をおこなっていない基板上では、微粒子の多層化及び、微粒子膜が存在しない箇所が多数観測されている。更に、スピンコート法によって作製した場合では、二層目以上を取り除く操作において顕著な違いが現れた。シリコンウエハ上に作製したポリスチレン微粒子膜をエタノール中で超音波洗浄をおこなうと、一層目の微粒子も同時に剥離してしまい、ウエハ上にはほとんど微粒子が確認されなかった。これらの結果から、プラズマ処理によってポリスチレン薄膜表面に形成された親水性基によって、微粒子が化学的に固定化されていることが認められた。
【0047】
次に、局在表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance:LSPR)を利用したセンサーを構成するために、金属微粒子が非最密構造に集積されたアレイを作製する方法を簡単に説明する。それには、前述のように、基板の表面に六方最密状態のPSナノ粒子単層膜を作製した後、図1(e)に示すように大気圧プラズマプロセスでエッチングしてPSナノ粒子の位置はそのままで直径を減少させ、互いの粒子間に間隔が開いた非最密構造を作製する(図1(f)参照)。つまり、大気圧プラズマプロセスによる精密加工で六方非最密構造を実現し、その表面に金超薄膜を成膜することによってコア部がポリスチレン、シェル部が金から構成されたPS@Auコアシェルナノ粒子アレイを作製した。
【0048】
図12(a)は最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(b)は2.5分間の大気圧プラズマエッチングを施して作製した非最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(c)は(b)の拡大図、(d)は(c)の45°の角度から見たSEM像である。個々のポリスチレンナノ粒子の粒子径が260nmから150nmに減少し、また互いに密接していたポリスチレンナノ粒子間に一定の空隙が形成されることが分かった。加工後のナノ粒子は同一の粒径を示していたことから、投入電力15W、13.56MHzのRF電源を用いて発生させた大気圧ヘリウムプラズマ加工により、個々のポリスチレンナノ粒子がそれぞれ均一に加工されていることが分かった。試料を45°傾斜させて同様にSEMの観察をおこなったところ、加工後のナノ粒子は球状の形状を保持していることが分かった。これは、大気圧プラズマ処理によるポリスチレンナノ粒子の加工が三次元において等方的に進行していることを強く示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば医療分野において、ナノ構造体表面の検体の吸着を光学特性の変化で検出する医療用光学センシングシステムに用いることが可能である。具体的には、金属微粒子表面や金属微細構造に発生するプラズモンと光の共鳴現象である局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用したセンサーを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の微粒子単層膜の作製方法を示す概念図である。
【図2】大気圧プラズマ処理装置の概念図であり、(a)は全体側面図、(b)は棒状電極と基板との関係を示す平面図である。
【図3】狭ギャップ伸展装置の簡略側面図である。
【図4】プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面を全反射赤外分光測定法により測定した結果を示すATR−FT−IRスペクトルである。
【図5】プラズマ処理したポリスチレン薄膜表面をX線光電子分光測定により測定したXPSスペクトルを示し、(a)はプラズマ処理時間0分、(b)プラズマ処理時間1分、(c)プラズマ処理時間2分、(d)プラズマ処理時間3分の場合である。
【図6】プラズマ処理前後におけるポリスチレン薄膜表面をX線光電子分光測定により測定したC1s軌道のXPSスペクトルを示す。
【図7】プラズマ処理前後におけるポリスチレン薄膜表面をX線光電子分光測定により測定した結果を示し、(a)はO1s軌道のXPSスペクトル、(b)はN1s軌道のXPSスペクトルを示す。
【図8】(a)は微粒子整列化工程によってPSナノ粒子の稠密膜を形成させ固定した状態のSEM像を示し、(b)は(a)をエタノールで洗浄して多層部分を除去した状態のPSナノ粒子単層膜のSEM像である。
【図9】平均径1000nmのポリスチレン粒子単層膜のSEM像である。
【図10】銀ナノキューブ単層膜のSEM像である。
【図11】金ナノ粒子単層膜のSEM像である。
【図12】(a)は最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(b)は2.5分間の大気圧プラズマエッチングを施して作製した非最密構造のPSナノ粒子単層膜のSEM像、(c)は(b)の拡大図、(d)は(c)の45°の角度から見たSEM像である。
【符号の説明】
【0051】
1 基板、
2 微粒子固定用基板、
3 微粒子、
10 高周波電源、
11 マッチングユニット、
12 チャンバー、
13 真空排気系、
14 電極、
15 電極昇降機構、
16 走査テーブル、
17 電極棒、
18 アルミナ絶縁体、
19 対向電極、
20 ベース板、
21 リニアガイド、
22 ステッピングモータ、
23 X軸ステージ、
24 αβステージ、
25 Z軸ステージ、
26 下側ホルダー、
27 支持脚、
28 マイクロメータ、
29 取付枠、
30 対向基板、
P 大気圧プラズマ、
A 大気圧プラズマ処理装置、
B 狭ギャップ伸展装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、
前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、
二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、
を含むことを特徴とする微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項2】
前記微粒子として、ポリスチレン粒子、ポリアクリル酸粒子等の高分子粒子又は金、銀等の金属粒子又はシリカ、酸化チタン等の酸化物粒子を用いる請求項1記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項3】
基板表面に修飾される官能基が、過カルボン酸基のような過酸化物基、水酸基、カルボン酸基等の酸素含有基又はオレフィンやベンゼン環などのπ電子共役系の官能基又はアミノ基、アミド基、イミド基、ピリジン環、ピロール環、ピロリドン環等の窒素含有基である請求項1又は2記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項4】
前記官能基修飾工程として、洗浄した基板上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、この基板を誘電体でコーティングされた対向電極板間にギャップが1〜2.5mmになるように保持して電極間に高周波電力を投入し、大気圧プラズマを発生させて基板表面を処理する工程である請求項1〜3何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板の表面にポリスチレン溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、このポリスチレン超薄膜を、酸素を含む大気圧プラズマで処理して酸素原子を導入し、分子中にカルボニル基と水酸基を生成する請求項4記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記微粒子整列化工程が、スピンコート法又は移流集積法又は電気泳導堆積法又はLB法又はこれらの組み合わせにより、微粒子固定用基板の表面に微粒子の分散液を均一に塗布し、微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである請求項1〜5何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
前記微粒子整列化工程が、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板と対向基板の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させる電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板の表面上に微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである請求項6記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項8】
前記洗浄工程が、微粒子膜を形成した基板を洗浄溶液中で超音波洗浄し、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去するものである請求項1〜7何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項9】
前記請求項1〜8何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法によって製造された微粒子単層膜付き基板。
【請求項1】
官能基を含む若しくは官能基が合成される環境下で、有機高分子又は金属酸化物からなる基板、又は半導体若しくは金属表面を有機単分子膜、高分子超薄膜若しくは酸化物超薄膜で被膜した基板、又はそれらの複合体からなる基板の表面を大気圧プラズマ処理して、該表面に官能基が修飾された微粒子固定用基板を作製する官能基修飾工程と、
前記微粒子固定用基板の表面に、直径0.001〜10μmの粒度が揃った微粒子を分散させた分散液を塗布し、基板表面に均一に伸展して微粒子を整列させて固定する微粒子整列化工程と、
二層目以上に余分に付着した多層膜を除去する洗浄工程と、
を含むことを特徴とする微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項2】
前記微粒子として、ポリスチレン粒子、ポリアクリル酸粒子等の高分子粒子又は金、銀等の金属粒子又はシリカ、酸化チタン等の酸化物粒子を用いる請求項1記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項3】
基板表面に修飾される官能基が、過カルボン酸基のような過酸化物基、水酸基、カルボン酸基等の酸素含有基又はオレフィンやベンゼン環などのπ電子共役系の官能基又はアミノ基、アミド基、イミド基、ピリジン環、ピロール環、ピロリドン環等の窒素含有基である請求項1又は2記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項4】
前記官能基修飾工程として、洗浄した基板上に、官能基を含む溶液若しくは大気圧プラズマ処理により官能基を合成する溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、この基板を誘電体でコーティングされた対向電極板間にギャップが1〜2.5mmになるように保持して電極間に高周波電力を投入し、大気圧プラズマを発生させて基板表面を処理する工程である請求項1〜3何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板の表面にポリスチレン溶液をスピンコート法により塗布して超薄膜を形成し、このポリスチレン超薄膜を、酸素を含む大気圧プラズマで処理して酸素原子を導入し、分子中にカルボニル基と水酸基を生成する請求項4記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記微粒子整列化工程が、スピンコート法又は移流集積法又は電気泳導堆積法又はLB法又はこれらの組み合わせにより、微粒子固定用基板の表面に微粒子の分散液を均一に塗布し、微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである請求項1〜5何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
前記微粒子整列化工程が、任意の官能基が修飾された微粒子固定用基板と、表面に化学的に活性な官能基を持たない対向基板間の距離を、微粒子直径の50〜200μmの一定ギャップに保ち、そのギャップ間に導入された微粒子の分散液に対して、0〜300V/cmの電界を印加するとともに、微粒子固定用基板と対向基板の一方又は双方を一軸に50nm〜50000nm/sの相対速度で並行移動させる電気泳動アシスト狭ギャップ伸展法により、微粒子固定用基板の表面上に微粒子の稠密膜を形成させ固定するものである請求項6記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項8】
前記洗浄工程が、微粒子膜を形成した基板を洗浄溶液中で超音波洗浄し、二層目以上に余分に付着した多層膜を除去するものである請求項1〜7何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法。
【請求項9】
前記請求項1〜8何れかに記載の微粒子単層膜付き基板の製造方法によって製造された微粒子単層膜付き基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−155218(P2010−155218A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335447(P2008−335447)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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