説明

微細構造の可動エレメントを励起する方法

【課題】初期の製造工程において、電気的な接触なくとも機械的励起の試験を行う。
【解決手段】微細構造の共鳴エレメント(14)を励起する方法に関し、このエレメントは1つの自由度に従って可動する。その方法は、当該微細構造に荷電粒子ビーム(51)を作用する工程を備えており、そのビームは、エレメントの自由度に依存して交互運動に当該エレメントを動かすように構成されている。
1つの変形では、粒子ビームは前記自由度と平行な成分を持つ入射角で前記エレメントに作用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造またはナノ構造に形成されたセンサに関し、特に、当該センサの作動を有効にする試験に関する。
【0002】
日常生活で使用されて増大している多くの品目には、微小電気機械システム(MEMS)またはナノ電気機械システム(NEMS)を備えた集積チップが含まれている。特に、加速度計またはジャイロメータには慣性MEMSセンサが含まれている。
【0003】
シリコンエッチング方法の改良と、より高い回路密度の追求とともに、チップ集積用のナノ電気機械システムは多くの発展をなしている。ナノシステムには特に共鳴感知センサエレメント(素子)が含まれることもある。当該感知エレメントは、しばしばCMOSアーキテクチャに集積され、一般に励起電極および測定電極に付随される。その感知センサは、1つの自由度で可動であり、その自由度に対して共振周波数を持っている。感知センサは、一般に50〜500nmの範囲にある寸法の一つを有している。このような感知エレメントのスケール減少は、ウエハたとえばシリコンウエハへの集積密度のみならずそれらの性能を増大するように思われており、従って、各チップの単体コストを減少させる。しかしながら、感知センサの完全性および特性は、製造プロセスの至る所で試験されなければならない。電子走査顕微鏡による単純な視覚制御によって、感知エレメントが機能するか否かを決定するのは不十分であることが判明されている。こうして、試験は、感知エレメントの共振周波数とQファクタ(quality factor)とを決定することを目指している。その試験は第1に感知エレメントを励起すること、および、第2に感知センサの動きを測定することを備えている。
【背景技術】
【0004】
感知センサを励起するために使用される公知技術は、特別なチップを備えた電子試験装置を使用している。
【0005】
この技術は、シリコンウエハの全体に、すなわち、様々なチップが互いに分離される前のウエハにトップ・ダウン・アプローチで形成されたセンサに使用される唯一のものである。それぞれの励起電極には、試験装置の先端が電気的に接触するコンタクト(接触子)が設けられている。チップはAC電圧をコンタクトに印加しその自由度に従って感知部分の動きを発生させる。しかしながら、各コンタクトは、感知センサの表面積よりも約20〜100倍大きな表面積を占有している。それ故に、感知エレメントの寸法減少は、僅かな場合を除いて、集積密度を増大させず、従って、限定したエレメントはコンタクトになる。
【0006】
コンタクトは、関連する電子回路を接続するために再使用されることもある。このことは、チップの耐用年限(寿命)の間にコンタクトが機能することを意味する。しかしながら、電子回路装置が(「IC内」技術と呼ばれる物を使って)感知エレメントと同じシリコンウエハから作られている技術では、このようなコンタクトはチップの耐用年限の間にはもはや何らの機能的な有用性も持たない。さらに、そのようなコンタクトの形成には、多くの技術的工程が要求され、過度のコストと製造プロセスの持続時間の増大とが引き起こされている。コンタクトを形成するために使用される技術工程数は、感知エレメント自身を形成するのに要求される工程数より遥かに多いこともある。コンタクトはチップ製造プロセスの最初に通常成形される。しかしながら、コンタクトの形成には、より困難な操作である感知エレメントの次の形成において多くのランダムファクタが含まれている。また、コンタクト内の金属の存在が、製造プロセスの残りの部分に対して限定ファクタになる。コンタクト自体は、試験の間、寄生現象の無視できない根源であり:これらのコンタクトには、容量感知エレメントの検出キャパシタンス(電気容量)の値よりも数百倍大きい寄生キャパシタンスが含まれていることもある。
【0007】
(IC技術において)同じウエハ上のチップレイアウトでは、感知エレメントは専用コンタクトを有していないこともある。その時、集積回路の接続トラック(接続跡)は感知エレメントを励起するために使用される。それから、この種のアーキテクチャは、集積回路から独立して感知エレメントを試験するために使用できない。その後に、誤動作の原因を切り離すこと、または、感知エレメントの機能に関して集積回路の効果を確かめることは不可能である。
【0008】
ボトムアップ・プロセスを使ってセンサを形成するためには、試験段階の間に直面される問題はいっそう都合が悪い。ボトムアップ・アプローチで作られた感知エレメントのサイズは一般的にはより小さく、その性能特性を測定することはさらに難しい。実験的な具体化では、そのような感知エレメントはコンタクトの形成前に作られる。実際には、感知エレメントの脆弱性のため、感知エレメントを破壊せずにコンタクトをその時に形成することは殆ど不可能であることが判明している。さらに、コンタクトには、ボトムアップ・アプローチで作られたセンサに対していっそう不都合となる大きさをもつ寄生キャパシタンスが含まれている。
【0009】
励起された感知エレメントの光学的測定に関する技術は、微細構造にとって不適切であるとともに、ナノ構造にとっていっそう不適切であることが判明している。実際には、光ビームは、動いている感知エレメントの大きさの数倍に相当することもある約5マイクロメータの最小サイズを有している。
【0010】
こうして、多くの研究は、走査電子顕微鏡を使って、励起された感知エレメントを測定することを提案している。そのような顕微鏡は、5nmの大きさまで低減されることもある電子ビームを放射する。Gilles, Megherbi, Raynaud, Parrain, Mathias, Leroux, Bosseboeufによる「Scanning electron microscopy for vacuum quality factor measurement of small-size MEMS resonators」、2007年12月3日の出版物は、特に、走査電子顕微鏡で実施された異なる測定方法を記述している。励起されたセンサは、顕微鏡によって放射される電子ビームを被らされる。このビームの衝撃によって、センサによる二次的な電子の放射が誘導される。この二次的な電子は、検出器によって受け取られ、励起されたセンサのシフト(変位)を識別するような方法で分析される。センサのパレメータ、たとえば、そのシフトの振幅、または、感知エレメントの共振周波数などが決定されることもある。しかしながら、この種の測定方法には欠点がある。
【0011】
さらに、大抵の試験方法は、感知エレメントの励起がたとえば同一ウエハ上の注入における機能的な電子回路の予備的接続ということを意味する場合には、製造プロセスの非常に遅い段階を除いて実施できない。従って、製造方法のうちの大抵の工程は、最初の工程に影響を及ぼす欠陥を検出する前に、実行されなければならない。その上、電気的な接触によって励起の信頼度を体系的に決定することは難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Scanning electron microscopy for vacuum quality factor measurement of small-size MEMS resonators」、Gilles, Megherbi, Raynaud, Parrain, Mathias, Leroux, Bosseboeuf、2007年12月3日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前述のような1つまたは複数の欠点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
こうして、本発明は、微細構造の共鳴エレメントを励起する方法に関し、そのエレメントは1つの自由度に従って可動であり、その方法は荷電粒子ビームを前記微細構造に作用する工程を備え、当該ビームはその自由度に依存して交互運動にエレメントを動かすように構成されている。
【0015】
1つの変形では、粒子ビームは、前記エレメントに作用されて、それを機械的影響により前記交互運動に従って動かす(駆動する)ようにしている。
【0016】
もう一つの変形によれば、粒子ビームは前記自由度と平行な成分を持つ入射角で前記エレメントに作用される。
【0017】
別の変形によれば、ビームの角度は前記自由度に対して45度より小さい。
【0018】
加えて、さらに別の変形によれば、微細構造は、前記共鳴エレメントの近傍に配置された導電性励起装置を有し、その粒子ビームは、励起装置に作用されて、共鳴エレメントと励起装置との間で容量効果により前記交互運動に従って共鳴エレメントを動かすようにしている。
【0019】
1つの変形によれば、導電性励起装置は、そのエレメントに面(対向)する励起電極と、当該励起電極に電気的に接続された導電性ユニットとを備え、その粒子ビームは前記導電性ユニットに作用される。
【0020】
さらに別の変形によれば、励起装置は、励起電極をグラウンドに接続するとともに、電気インピーダンスを有しそれを使ってその共振周波数で共鳴エレメントを動かすようにした電気回路を備えている。
【0021】
1つの変形によれば、微細構造は当該エレメントの励起の間に真空室内に位置決めされる。
【0022】
さらに別の変形によれば、前記ビームは、前記交互運動にそのエレメントを動かすように、時間的に可変な特性を有している。
【0023】
1つの変形によれば、ビームの特性は、当該微細構造が粒子ビームを交互に受け取るように微細構造に対してビームをシフトすることにより、または、微細構造に対してビームを固定したままに保って可変強度のビームを作用させることにより時間的に変化する。
【0024】
さらに別の変形によれば、ビームの可変特性は、荷電粒子の速度、当該自由度に対するビームの角度、または、ビームの振幅からなる。
【0025】
さらに別の変形によれば、ビームの特性は、その自由度に従って共鳴エレメントの動きの予想共振周波数を含めて、周波数の範囲内に含まれる可変周波数と時間的に変化する。
【0026】
さらに別の変形によれば、前記エレメントの寸法のうち1つがサブミクロン単位である。
【0027】
また、本発明は、微細構造のエレメントを試験する方法に関し、当該方法は、前述の励起方法に従って前記エレメントを励起すること、および、その自由度に従って前記エレメントの共振周波数を測定することをさらに備えている。
【0028】
1つの変形によれば、共振周波数の測定は、
異なる入射角を有する別の荷電粒子ビームを前記エレメントに対して作用させること、
別のビームの作用中に、前記エレメントによって放射された荷電粒子を検出すること、
からなる。
【0029】
さらに別の変形によれば、前記微細構造は、幾つかの類似の微細構造を含めて、ウエハにより作られ、その中で前記微細構造の幾つかは連続して試験される。
【0030】
別の変形によれば、前記微細構造は連続して試験される一方、前記ウエハは真空室内に保持される。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、指摘により与えられ、少しも制限されず、添付図面を参照してなされた以下の記述からいっそう明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】試験される微細構造の一例の正面図である。
【図2】図1の微細構造の詳細図である。
【図3】図1の微細構造の断面の図である。
【図4】本発明において一実施の形態による試験方法の間に図1の微細構造の断面の図である。
【図5】別の自由度を有する微細構造の断面の図である。
【図6】本発明の一実施の形態による試験方法の間において図5の微細構造の断面の図である。
【図7】試験されるべき微細構造の変形の正面図である。
【図8】微細構造上で試験を実施するように意図された装置の概略的な代表例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
通常、走査電子顕微鏡を使ってなされる観察により、試験結果を駄目にする共鳴エレメントのプレストレス(前もって応力を加えること)を誘発する静電荷が発生される。驚いたことに、本発明は、荷電粒子ビームを使って微細構造の共鳴エレメントを励起することを提案している。この粒子ビームは、共鳴エレメントに作用されて、それを1つの自由度に沿って交互運動に動かすようにしている。そのビームは、(当該エレメントの走査によって)そのエレメントに対してビームをシフトすることにより、または、ビームの粒子の放射を変更することにより、たとえば交互にエレメントに作用されることも有り得る。
【0034】
そのような方法を使って、外部コンタクトとの電気的な接触なしに、共鳴エレメントを励起し、従って、微細構造によって占有されるサイズを低減している。寄生キャパシタンスの導入は非常に著しく低減され、そのような寄生への励起の感知は極めて大きく減少される。また、励起は、固有(内在)のエレメントに取り付けられた何らかの機能回路から独立している。さらに、本発明によって、もし必要なら試験の結果を照合するために2つの異なる方法に従って共鳴エレメントを励起することが可能になる。荷電粒子ビームは、共鳴エレメントの適切な位置に焦点が合うほど十分に微細である寸法(大きさ)で製作可能である。
【0035】
図1はシリコンウエハで作られた微細構造1の一例の正面図である。この微細構造1はセンサを有する。センサは、シリコンウエハのエッチング11によって境界を定められた別々の構成要素を有している。センサは特に共鳴エレメント14を備えている。共鳴エレメント14はその両端でそれぞれ可動質量(可動マス)16とブロック15とに埋設されている。共鳴エレメント14はブレード形状を有しており、そのブレードの軸は可動質量16をブロック15に接合している。センサは、励起電極13と、共鳴エレメント14の中間部の何れか一方側に位置決めされた測定電極12とを備えている。共鳴エレメント14は、エッチング11により規定されたギャップによって、電極12、13から分離されている。また、センサはブロック17を有しており、そのブロック17には可動質量16が可撓性ヒンジエレメントまたは可撓性リンク19によって接続されている。
【0036】
図3で示されるように、センサはシリコンウエハ内に注入可能である。このように図示されたシリコンウエハはシリコン・オン・インシュレータ技術により作られる。シリコンウエハはシリコン基板層23を有しており、そのシリコン基板層上にはSiOのインシュレータ層(絶縁体層)22が作られている。付加的なシリコン層21はインシュレータ層22上に作られている。エッチング11はシリコン層21とインシュレータ層22とを通り抜ける。こうして、エッチング11は、センサの別々の構成要素を電気的に絶縁している。エッチング11は、フォトリソグラフィー処理によってそれ自体が公知な方法により製作可能である。
【0037】
シリコン層21で作られた或る構成要素に基板23に対しての可動性を提供するために、この構成要素の真下に凹部24が作り出されている。このように、インシュレータ層22は、共鳴エレメント14と基板23との間、および、可動質量16と基板23との間で除去されている。従って、エレメント14と可動質量16とは、シリコン層21の平面内で可動である。凹部24は、等方性化学エッチングによってそれ自体が公知な方法により形成可能である。それ自体が公知な方法では、可動質量16はシリコン層21を貫通するオリフィス18を有している。このように、インシュレータ層22は、層21の平面内でより大きい領域であるにも関わらず、等方性化学攻撃処理の間に可動質量16の全体の真下で除去され得る。それどころか、電極12、13のみならずブロック15、17はインシュレータ層22により基板23に埋設されている。
【0038】
共鳴エレメント14と可動質量16とはシリコンウエハの平面内で可動である。図2および図3の矢印で図示されているように、エレメント14の中間部は、その軸と垂直かつ並進に可動である。共鳴エレメント14の寸法および材料のみならず、質量と可動質量16に作用される力とは、この自由度に従ってエレメント14の共振周波数を規定している。この共振周波数で、共鳴エレメント14のシフトの振幅は電極13によって提供される一定の励起エネルギーに対して最大となる。
【0039】
作動中では、励起電極13は、エレメント14の交互運動を誘導するために、金属コンタクトを用いて交流電圧によって動力供給される。エレメント14は、測定電極12との静電(容量)結合にある。それ自体が公知な方法で微細構造1が作動中であると、不図示の回路はエレメント14の振動の周波数および振動数を測定するために使用される。この周波数および振動数は可動質量16の動きの関数として変化する。図示された微細構造1は、その製造方法における中間段階にある。こうして、微細構造には電極12、13用の金属コンタクトがない。
【0040】
図4は微細構造を試験する方法を表している。荷電粒子ビームたとえば電子ビーム51は真空室内においてエレメント14に作用される。電子ビーム51はエレメント14上に押圧力(プレッシャー)を発生させる。及ぼされる押圧力は或る成分をエレメント14の自由度と平行に与えている。ビーム51の強度と電子の速度とは、エレメント14の動きを誘導するのに十分なレベルに決めら(固定さ)れている。従って、ビーム51は、エレメント14の自由度に従って可変な押圧力を及ぼすように構成されている。このように、エレメントへのビーム51の順次的な適用によってエレメント14の交互運動を発生させることが可能である。図示の例では、ビームの順次的な適用は自由度に対するビーム51の角度の振れにより得られる。この振れの周波数は、エレメント14を励起することが望ましい周波数に対応している。それ故に、その自由度に従ってエレメント14に及ぼされる押圧力は可変となる。
【0041】
図4で図示されているように、独立して、エレメント14の側面および/またはエレメント14の上面に作用されるようにビーム51は構成されることもある。
【0042】
有利には、ビーム51は、その励起に便宜を与えるために、エレメント14のシフト方向に対して出来るだけ限定される角度を持って適用される。有利には、この角度は45度より小さい。理想的には、ビーム51はエレメント14のシフト方向と同一直線上にあると考えられるべきである。
【0043】
ある例ではエレメント14の動きを誘導するようにビーム51の角度変化が図示されるけれども、ビーム51の他のパラメータはその動きを誘導するために時間的に変化されることもある。
【0044】
他方、エレメント14の少なくとも一面に力を及ぼすため、または、力を及ぼさないために、エレメント14に対してビーム51のシフトを予想することは一般的には可能であり、好適にはビーム51は連続的に放射している。また、他方で、可変であるがゼロでさえ有り得る放射(すなわち強度)をビームが持つ場合には、エレメント14に対して固定(決定)されたビーム51を予想することは可能である。特に、エレメント14の一面に対して固定位置(姿勢)のチョップ(細切れ)ビーム51を作用させることは可能である。その時に、細切れ(すなわち強度変化)は所望の励起周波数でなされる。
【0045】
特に、エレメント14の励起周波数は、エレメント14の想定された共振周波数を含めて、周波数の所定範囲で変更されることも有り得る。この周波数の範囲でエレメント14を励起する際に、そのエレメントが機能するか否かを決定すること、および、その自由度に従ってその動きの共振ピークを決定することは可能である。
【0046】
ビーム51が機械力をエレメント14に及ぼしている状態で、エレメント14の励起は微細構造において何らの電気的動力供給を必要としない。エレメント14の共振周波数を測定することにより、機械的完全性だけが要求され、センサの電気的接続は利用されない。こうして、その励起方法は、金属電気コンタクトが形成される前に特に、微細構造の製造において非常に早い段階で獲得可能である。それ故に、フォトリソグラフィー処理または化学的エッチング処理における可能な機能不良は、欠陥シリコンウエハが以後の技術的段階を被らされる前に、非常に早く検出できる。
【0047】
有利には、検出ビーム52はビーム51の方向と異なる方向でエレメント14に対して作用される。ビーム52によってたとえば二次的な電子53のビームの放射が誘導され、そのビームの特性はエレメント14の位置の関数として変化する。そのシフトの間に、ビーム52はエレメント14に交互に接近するが、エレメント14に接触しない。ビーム52の下にエレメント14が存在するか否かに依存して、エレメント14は交互に二次的な電子ビーム53を発生させたり発生させなかったりする。また、このような交互(交替)は、それ自体が公知な方法で検出器により測定されることも有り得る。
【0048】
検出ビーム52は、エレメント14による反射と別の成分による走査または反射との間のより大きな相違(コントラスト)を発生させるために、エレメント14の自由度に垂直な方向に沿って最適に作用される。検出ビーム52は好適には、検出信号の変化を最適化するために、エレメント14とギャップとの間の限界すなわち静止した境界線で作用される。このように、励起ビーム51と検出ビーム52との分離により、これらのビームを最適化することが可能になる。特に、励起ビーム51によって、ビーム52により生成されたビーム53への最小限の乱れを誘導することでエレメント14を動かすことが可能になる。それ故に、検出ビーム52は、最大限の信号対雑音の比率を有するビーム53の獲得を促進する。
【0049】
ビーム51、52で生成された二次的な電子の識別をいっそう容易にするために、有利には、これらのビームは、放射された電子の密度または速度などのような別個の特性を有している。また、イオンビームと電子ビームとの組合せを予想してビーム51、52の識別を容易にすることは可能である。
【0050】
二次的な電子ビームに基づいてエレメント14の動きの検出が記述されているけれども、製造プロセスにおいて試験が十分に遅い段階で行なわれた時には測定電極12を使うことにより電気的な検出を予想することも可能である。そのような検出は、電気的な励起なしに、電気的な検出の試験を可能にすることも有り得る。こうして、電気的な検出は、電気的な励起の乱れを経験せずに、排他的な機械的作動によって特徴付けることができる。
【0051】
そのような試験方法が、種々のチップが分離される前に微細構造との接触なしに、シリコンウエハの全体を試験することに特に有利であることが判明している。試験方法は、微細構造のそれぞれで体系化することにより、または、統計的なサンプリングにより実行され得る。統計的なサンプリングのために、試験された微細構造は、その構造の試験が破壊の危険(リスク)であるならば、破棄できる。ウエハ全体の体系的な試験のために、実行される製造プロセスの段階がなんであろうと、当該試験は、微細構造が切り離される前にその微細構造の分類を行なうこと、および、以後の工程を実行することができ、従って、製造プロセスにおいて無視できないゲイン(利得)を提供している。
【0052】
図4のエレメントの寸法および特性が次のこともある:100nmのエレメント14と電極12、13との間の100nmのギャップ、自由度に従って50〜2000nmの範囲のエレメント14の幅、および、160〜4000nmの範囲のエレメント14の厚さ(基板23に対する垂線に沿う寸法)。エレメントの共振周波数は、典型的には50kHz〜1GHzの範囲で有り得る。
【0053】
図5はシリコンウエハに埋め込まれた微細構造センサの別のタイプの断面の図である。図3の例において見られるように、シリコンウエハは、SiOインシュレータ層22が置かれたシリコン基板層23を有する。追加のシリコン層21はインシュレータ層22から作られている。エッジング11はシリコン層21とインシュレータ層22とを横切っている。センサには、自由度がシリコン基板21の平面に対して垂直である振動エレメント14が含まれている。
【0054】
凹部24は、共鳴エレメント14の真下に作られている。エレメント14はシリコン層21の平面に対して垂直に可動する。エレメント14はその両端部の一方によって埋設され、他方に自由端を有している。エレメント14の自由度に従ってそのエレメント14の垂直方向の共振周波数は、それ自体が公知の方法で規定されている。
【0055】
図6のエレメントの寸法および特性は次のようであることもある:100nmのエレメント14と基板23との間のギャップ(図のG)、自由度に沿って50〜2000nmの範囲のエレメント14の厚さ(図のA)、および、160〜4000nmの範囲のエレメント14の幅(図のB)。エレメントの共振周波数は典型的には50kHz〜1GHzであることも有り得る。
【0056】
図6はこの微細構造を試験する方法を表している。電子ビーム51は真空室内でエレメント14に作用される。電子ビーム51はエレメント14の上面に対して押圧力を発生させる。及ぼされる押圧力はエレメント14の自由度と平行な成分を提供する。時間的に変化する特性を持つビーム51を適用することにより、エレメント14の交互運動が発生される。図示された例では、自由度に対するビーム51の角度は、交互に変更されている。図6で図示されるように、ビーム51は、エレメント14の上面に作用され、それから、エレメント14の何れか一方の側面に作用されるように構成されていることもある。こうして、自由度に従ってエレメント14上への押圧力は可変となる。有利には、ビーム51は、シリコン層21の平面に対する垂線に沿って作用される。ビーム51の角度は、励起の間、その平面に対する垂線に対して僅かに変化される。
【0057】
検出ビーム52は、ビーム51の方向と異なる方向でエレメント14に作用される。ビーム52は、二次的な電子ビーム53の放射を誘導する。エレメント14の位置に依存して、ビーム53の角度は変化することもあり、このことは検出器によって測定できる。また、その動きの間、ビーム52は交互に接近できるが、エレメント14と接触しない。ビーム52に対するエレメント14の位置に依存して、エレメント14は二次的な電子ビーム53の発生を変更する。
【0058】
前述の例で記述された半導体材料はシリコンであるけれども、本発明はまた別のタイプの材料、たとえば別の半導体材料を本質的に備えたウエハから作ることもできる。
【0059】
図7は粒子ビームを用いて共鳴エレメント14の励起を間接的に達成するように構成された異なる微細構造を表す。この変形により、励起の間に劣化の可能な危険を制限することが特に可能になる。
【0060】
偶然にも、励起ビーム51は励起電極13の金属コンタクトの一部41に作用される。この金属コンタクトと電極13とは中間励起装置を形成している。この形態では、エレメント14は、ビーム51により及ぼされる押圧力によってではなく電極13と共鳴エレメント14との間の容量効果によってシフトされる。金属コンタクトの一部41へのビーム51の作用の間に、電荷はその一部41へ伝達される。励起電極13はその電荷を交互に蓄積して共鳴エレメント14との容量効果を発生させる。共振回路4は、励起電極13の金属コンタクトをグラウンド(接地)に接続している。回路4の共振周波数は、エレメント14の機械的共振周波数に合わせて変えられている。回路4はその共振周波数に関しての帯域通過回路を形成している。その回路4の減衰の帯域幅および勾配は、試験されるセンサの特性の関数として適切に決定されている。ビーム51の特性が回路4の共振周波数に近づく周波数で変化すると、この回路4は高インピーダンスを持つ。励起電極13のポテンシャル(電位)は、エレメント14の交互シフトを誘導するように変化する。ビーム51の特性が回路4の共振周波数から離れて進行する周波数で変化すると、この回路4はグラウンドに短絡される。ビーム51は、たとえば、一部41でのビーム51による交互走査によって、または、その強度の変更によって、共鳴エレメント14の交互励起を誘発することも有り得る。
【0061】
この実施の形態により、コンタクトを必要とせずにエレメント14は電気的に励起されるのを可能にする。こうして、微細構造1によって占有された表面積は減少される。実際には、励起電極13の金属コンタクトによって占有された表面積は、試験用電動パッドのコンタクトの表面積よりはるかに小さい。さらに、エレメント14の電気的な励起を得つつ、何らかの励起パッドの欠如による寄生キャパシタンス値を大きく制限することは可能である。その上、回路4により、励起電極13で雑音の受動フィルタリングを得ることもまた可能である。また、そのような励起はシリコンウエハの全体で得られることも有り得る。その励起は、上で詳述されたもののような検出ビームと組合せられることも有り得る。その時に、励起ビームと検出ビームとの間の干渉は低減される。
【0062】
回路4は、センサの機能的な使用のために、励起電極13から分離され得る。こうして、センサの作動使用は回路4からの寄生を被らない。そのような分離は、何らかの適切な手段によって、特に、ヒューズを壊すことによって、レーザまたは粒子ビームによりコンタクトを切断することによって、または、再びアクセストランジスタを遮断することによって得られることも有り得る。
【0063】
図8は微細構造を試験する装置3の概略図である。装置3は、微細構造の励起のために指定された電子ビームの発生器31を備えている。装置3には、エレメント14の動きを検出するために、指定された電子ビームの発生器32が含まれている。また、その装置は二次的な電子検出器33を有している。発生器31、32のみならず検出器33はプレート35の上に伸びている。発生器31、32のみならず検出器33はプレート35に対して並進に可動する。発生器31は共鳴エレメントの交互運動を誘導するために可動する。クランプ38を設けられた支持36はプレート35に対して可動するように装着されている。たとえば、支持36は、3軸に沿って並進に可動するように装着され、または、ビームの真下に適切な方法で連続して微細構造を配置するように順に装着されていることもある。クランプ38は、試験されなければならないシリコンウエハを固定するために使用される。また、支持36で作り出された真空を用いて適切な位置にウエハを保持することは可能である。支持36、発生器31、32、および検出器33は、真空を作り出すために、チャンバ34の内側に位置決めされている。励起ビームおよび検出ビームを位置決めおよび制御するため、真空のレベルを制御するため、および、チャンバ34内に支持36をシフトするために、制御モジュールは使用される。装置3は、工業規模の適用の際に、シリコンウエハにおけるロボット制御的な被駆動負荷のため、ロックチャンバを有している。
【0064】
有利には、試験装置3は、微細構造1の画像(イメージ)を得るため、従って、視覚制御によりエレメント14の適切な位置に励起ビームを合わせることを可能にするために、電子走査型の画像装置(不図示)を備えている。
【0065】
真空下で励起ビームおよび検出ビームを適用することは、励起処理および検出処理の効率的な動作にとって望ましい。さらに、低い周囲押圧力がエレメント14のシフトを容易にする状態で、かつ、周囲押圧力によってその理論的最大値に出来るだけ近いQファクタ(factor of quality)を得ることを可能にする状態で、真空はエレメント14の励起にとって便宜を与えている。
【0066】
異なる励起ビームおよび検出ビームを使用することは試験性能にとって望ましいけれども、そのような条件が好意的であると、同一のビームが使用できる。このように、励起ビームによって誘導される二次的な電子ビームは検出されることも有り得る。励起ビームとの周波数で同調する検出を行なうことは可能である。その時、検出中の信号の処理には、エレメント14の動きによって誘導された変化に対して励起ビームにより誘導された信号を識別することが含まれることもある。エレメント14のQファクタが大きくなればなるほど、その動きによって誘導される信号の振幅を検出することが益々容易になる。
【0067】
励起電子ビームの適用中に、二次的な電子の放射方向がエレメント14の動きとともに変化する。こうして、検出器はその変化の関数としてエレメント14の動きを決定できる。また、検出器は、励起ビームの反射と回折との間の交互の関数としてエレメント14の動きを決定できる。反射は励起ビームがエレメント14に作用されている間の期間に対応する一方、回折は励起ビームがエレメント14の側面に作用されている間の期間に対応する。
【0068】
自由度と比較して小さいビーム角度は、励起を促進するが、ある方向へ不利益を引き起こしている。実際に、検出ビームは観測された自由度に対して直交するならば最適になる。従って、シリコンウエハの平面内で動くエレメント14にとって、この平面に対して垂直な検出ビームは最適になる。
【0069】
電子ビームに基づいて励起方法および測定方法が記述されているけれども、他の荷電粒子ビームが使用されることもある。イオンビームもまた使用できる。他のタイプの電荷または粒子は電子ビームの寄生効果を制限することも有り得る。
【0070】
励起方法および試験方法は工業規模処理および室内実験の両方において実施できる。
【符号の説明】
【0071】
1 微細構造
4 電気回路
13 励起電極
14 共鳴エレメント
34 真空室
41 導電性ユニット
51 荷電粒子ビーム
52 別の荷電粒子ビーム
53 荷電粒子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造(1)の共鳴エレメント(14)を励起する方法であって、前記エレメントは1つの自由度に従って可動であり、前記方法は、前記微細構造に荷電粒子ビーム(51)を作用する工程を備え、前記ビームはその自由度に依存して前記エレメントを交互運動に動かすように構成されていることを特徴とする励起方法。
【請求項2】
前記粒子ビームは、前記エレメント(14)に作用されて、前記交互運動における機械的効果によりそのエレメントを動かすようにすることを特徴とする請求項1記載の励起方法。
【請求項3】
前記粒子ビームは、前記自由度と平行な成分を持つ入射角で前記エレメント(14)に作用されることを特徴とする請求項2記載の励起方法。
【請求項4】
前記ビームの角度は、前記自由度に対し45度より小さいことを特徴とする請求項3記載の励起方法。
【請求項5】
さらに、前記微細構造は前記共鳴エレメントの近傍に置かれた導電性励起装置を有し、前記粒子ビームは、前記共鳴エレメント(14)と前記励起装置との間の容量効果による前記交互運動に従って前記共鳴エレメント(14)を動かすように前記励起装置に作用されることを特徴とする請求項1記載の励起方法。
【請求項6】
前記導電性励起装置は、前記エレメント(14)に面する励起電極(13)と、前記励起電極(13)と電気的に接続された導電性ユニット(41)とを有し、前記粒子ビームは前記導電性ユニット(41)に作用されることを特徴とする請求項5記載の励起方法。
【請求項7】
前記励起装置は、前記励起電極(13)をグランドに接続し、その共振周波数で前記共鳴エレメント(14)を動かすために使用される電気インピーダンスを有する電気回路(4)を備えていることを特徴とする請求項6記載の励起方法。
【請求項8】
前記微細構造(1)は、前記エレメント(14)の励起中に、真空室(34)内に位置決めされることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の励起方法。
【請求項9】
前記ビームは、前記交互運動に前記エレメントを動かすように、時間的に変化する特性を有することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の励起方法。
【請求項10】
前記微細構造が交互に前記粒子ビームを受け取るように前記微細構造に対する前記ビームのシフトを介して、または、前記ビームを前記微細構造に対して固定しておき可変強度のビームを作用することにより、前記ビームの前記特性が時間的に変化することを特徴とする請求項9記載の励起方法。
【請求項11】
前記ビームの可変特性には、前記荷電粒子の速度、前記自由度に対する前記ビームの角度、または、前記ビームの振幅が含まれることを特徴とする請求項9または10記載の励起方法。
【請求項12】
前記ビーム(51)の特性は、前記共鳴エレメント(14)の自由度に従って前記共鳴エレメントの動きの想定された共振周波数を含めて、ある周波数の範囲内に含まれる可変周波数とともに時間的に変化することを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の励起方法。
【請求項13】
前記エレメント(14)の寸法の1つはサブミクロン単位であることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の励起方法。
【請求項14】
微細構造のエレメントを試験する方法であって、
請求項1〜13の何れか一項による励起方法に従って前記エレメント(14)の励起を行い、
さらに、前記エレメント(14)の自由度に従って当該エレメントの共振周波数を測定することを特徴とする試験方法。
【請求項15】
前記共振周波数の測定は、前記ビーム(51)とは異なる入射角を有する別の荷電粒子ビーム(52)を作用し、
他のビーム(52)の適用中に前記エレメント(14)によって放射された荷電粒子(53)を検出することを特徴とする請求項14記載の試験方法。
【請求項16】
前記微細構造は、幾つかの類似の微細構造を含んだウエハで作られ、前記微細構造の幾つかは連続して試験されることを特徴とする請求項14または15に記載の試験方法。
【請求項17】
前記ウエハが真空室(34)内で保持されている間に、前記微細構造は連続的に試験されることを特徴とする請求項16記載の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−2456(P2011−2456A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137310(P2010−137310)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(510169217)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【Fターム(参考)】