説明

情報処理方法、情報処理装置及び印刷装置

【課題】 印刷データを印刷機器で印刷する前にテスト印刷を行い、当該印刷データの印刷時における印刷機器のレジずれ特性を予測し、予測されたレジずれ特性に基づいて印刷データを補正することにより、より適切な印刷処理を可能とする情報処理方法、情報処理装置及び印刷装置を提供する。
【解決手段】 それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正するため、印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する。次いで、レジずれ分布特性及び印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する。そして、レジずれパターンに基づいて印刷データを補正して印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMYK各色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷するための情報処理方法、情報処理装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMYK各色の版(画像)を重ね合わせてカラー画像を形成するような印刷機器においては、各画像間のずれ、すなわち各色の転写後の色ずれである「版ずれ(レジずれ)」が発生するという問題がある。このレジずれに対する対応策として、一般に次の2つの方法が知られている。一つはプリンタ等の印刷機器自体に搭載された補正手段を用いる方法であり、もう一つは印刷機器によって印刷される前の元データを補正する方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一つ目の印刷機器自体に搭載された補正手段を用いる方法は、各種の精密かつ高価なセンサを用いてその都度レジずれを検出し、それに対応した補正を行うものである。その補正方法の一例としては、検出されたレジずれに基づいて印刷開始のタイミングをずらす等の各画像に対してページ全体を一様にずらす処理が一般的である。尚、このような補正方法については、補正処理そのものは非常に簡単であるため、リアルタイム処理でずれを検出して処理する補正方法として適している。
【0004】
また、もう一つの補正技術である元データに対して行う補正方法としては、ドキュメントを作成するアプリケーションや、ソフトRIP等で行うトラッピング処理が主流である。
【特許文献1】特開平08-305110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷タイミングをずらすような一つ目の補正方法では、各画像に対してページ全体を一様にずらす処理を行うため、より高品質な印刷を行うための対応が不十分である。例えば、レジずれは、印刷用紙の印刷開始部分や印刷終了部分、或いは印刷用紙の左右でそのずれ量に違いが生じる。そのため、グラフィックアーツのような高品質な印刷が要求されるハイエンド印刷においては、同一ページ内の異なる部分で発生するずれ量の違いが問題となり、上述したページ全体を一様にずらすような補正方法では適切に対応することができない。
【0006】
これに対し、トラッピング処理による補正では、各種機能や設定項目を適切に設定することによって、より詳細な補正が可能であるため、上述したような同一ページ内でずれ量が違う場合に対しても対応することが可能である。しかしながら、当該補正方法は、同一ページ内の異なる部分で発生するずれ量の違いを補正するために、より詳細な設定が必要となり、その処理自体が複雑になってしまうという問題が残る。
【0007】
また、元データに対して行う補正方法は、前述した印刷機器に搭載された補正手段による補正方法と異なり、印刷機器の印刷時のずれ状態に対応して、すなわち、レジずれに対応して補正することができない。
【0008】
一方で、元データに対して補正するトラッピング処理等の補正方法は、印刷機器に搭載された補正手段による補正処理後のデータを流用することが可能である。しかしながら、印刷機器自体に搭載される補正技術は、ソフトRIP等で補正したデータを他の印刷機器で印刷するというような方法と異なり、処理後のデータの流用には向いていないという欠点がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、印刷データを印刷機器で印刷する前にテスト印刷を行い、当該印刷データの印刷時における印刷機器のレジずれ特性を予測し、予測されたレジずれ特性に基づいて印刷データを補正することにより、より適切な印刷処理を可能とする情報処理方法、情報処理装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正する情報処理方法であって、
前記印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出工程と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測工程と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正工程と
を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正する情報処理装置であって、
前記印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出手段と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測手段と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正手段と
を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置であって、
テスト印刷を行って、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出手段と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測手段と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正手段と、
補正後の前記印刷データを前記印刷ユニットを用いて印刷する印刷手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷データを印刷機器で印刷する前にテスト印刷を行い、当該印刷データの印刷時における印刷機器のレジずれ特性を予測し、予測されたレジずれ特性に基づいて印刷データを補正することにより、より適切な印刷処理を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、レジずれ補正処理を行うプリンティングシステムについて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。図1に示すように本実施形態に係る印刷システムは、印刷装置10とこれとデータ授受が可能な情報処理装置20とから構成される。印刷装置10は、カラー画像の印刷が可能なレーザービームプリンタやインクジェットプリンタ等を用いることができる。また、情報処理装置20は、デジタルデータの各種演算が可能なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。尚、図1に示す印刷システムでは、印刷装置10と情報処理装置20はLAN等のネットワーク40を介して接続されているが、互いにローカルな状態で接続されていても、或いは情報処理装置20が印刷装置10に内蔵されたシステム構成であってもよい。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の細部構成を示すブロック図である。図2に示す情報処理装置20において、21は中央処理装置(CPU)であり、本装置全体の制御及び演算処理を行う。また、22はランダムアクセスメモリ(RAM)であり、処理毎にそれぞれのプログラム及びデータがロードされ、実行される領域である。23は読み出し専用メモリ(ROM)であり、システム制御プログラムや、フォントデータ等を記憶するための記憶領域である。
【0017】
24はキーボード制御部(KBC)であり、キーボード(KB)25からのオペレータによるキー入力によりデータを受け取ってCPU21へ伝達する制御が行われる。26はプリンタ制御部(PRTC)であり、プリンタ装置(PRT)27を制御するためのものである。尚、プリンタ装置27は、図1における印刷装置10に相当する。
【0018】
28はディスプレイ制御部(CRTC)であり、ディスプレイ装置(CRT)29への表示制御を行う。30はディスク制御部(CKC)であり、データ伝送等の制御を行うものである。31〜33は外部記憶装置であり、本実施形態ではハードディスク(HD)31、フレキシブルディスク(FD)32、或いはCD−ROM33等で実現される。尚、DVD−ROM等の他の外部記憶装置を用いてもよい。そして、本実施形態では、これらの外部記憶装置31〜33にプログラム及びデータ等を記憶させておき、実行時、必要に応じてこれらを参照又はRAM2へロードする。さらに、34はシステムバスであり、上述した各構成要素間におけるデータ転送の通路となるべきものである。
【0019】
図2に示された情報処理装置20は、基本入出力(基本I/O)プログラム、オペレーティングシステム(OS)、及び以下で説明する版ずれ(レジずれ)分布特性検出補正制御プログラムをCPU21が実行することにより動作する。
【0020】
ここで、基本I/OプログラムはROM23に記憶されており、OSはHD21に書き込まれている。そして、情報処理装置20の電源がONにされた場合、基本I/Oプログラム中のイニシャルプログラムローディング(IPL)機能により、例えばHD31からOSがRAM22に読み込まれ、読み込まれたOSの動作が開始される。
【0021】
本実施形態では、一例として、レジずれ分布特性検出補正制御プログラムや関連データは外部記憶装置のうちFD32又はCD−ROM33に格納されているものとする。図3は、本実施形態におけるレジずれ分布特性検出補正制御プログラム及び関連データが格納される可搬可能な外部記憶装置(FD32又はCD−ROM33)での記録内容を説明するための図である。図3に示されるFD32又はCD−ROM33に記録された版ずれ分布特性検出補正制御プログラム及び関連データは、FDドライブ又はCD−ROMドライブを通じて、本情報処理装置20の固有の外部記憶装置であるHD31にインストールすることができる。
【0022】
図4は、本実施形態における情報処理装置20と可搬可能な外部記憶装置(FD32又はCD−ROM33との関係を示す概要図である。ここで、FD32又はCD−ROM33を情報処理装置20のFDドライブ又はCD−ROMドライブにセットすると、HD31に格納されているOS及び基本I/Oプログラムの制御のもとに、レジずれ分布特性検出補正制御プログラム及び関連データがFD32又はCD−ROM33から読み出され、HD31にインストールされて動作可能な状態になる。図5は、版ずれ分布特性検出補正制御プログラムがHD31にインストールされて実行可能になった状態のメモリマップを示す図である。
【0023】
図6は、本実施形態に係る印刷装置10のドラム全面におけるレジずれ分布特性の検出処理手順を説明するためのフローチャートである。尚、本処理は、印刷装置10で印刷データの印刷直前に行われるレジずれ補正処理に先立って行われ、同レジずれ補正処理において使用される印刷ユニットのドラム全面におけるレジずれ分布特性を求めるものである。尚、このレジずれ分布特性の検出処理及びその後のレジずれ補正処理は、精密な印刷を必要とする直前に行うことが最も効果的であるが、当該ドラム全面のレジずれ分布特性は一度計算してハードディスク等に格納しておけば、その後のレジずれ補正処理の際に求めた同分布特性を読み出して使用することも可能である。
【0024】
まず、ドラム全面の特性を求めるために、レジずれ分布特性検出用のテストパターンをドラム一周分以上印刷できるように、部数指定をして複数枚の印刷用紙に連続して印刷する(ステップS601)。尚、図9は、本実施形態に係るレジずれ分布特性検出処理及びレジずれ補正処理の概要を図示した概要図である。ここで、ステップS601における処理は、印刷装置10からテストパターンが連続して印刷された複数枚の印刷用紙を出力する図9の「Step1」に相当する。
【0025】
次に、ステップS601での印刷結果から得られる印刷物(印刷用紙)を順にスキャナ等で読み取る(スキャニングする)(ステップS602)。この工程は例えば、印刷装置10に備えているスキャナを用いて当該印刷装置10から出力されたテストパターンが印刷された複数枚の印刷用紙をスキャニングする図9の「Step2」に相当する。
【0026】
次に、ステップS602でスキャニングされたデータをレジずれ分布特性検出補正制御プログラムがインストールされている情報処理装置20に転送する(ステップS603)。尚、この情報処理装置20は、前述したように、印刷装置10内に予め用意されていても、印刷装置10に付属のサーバ装置でも、図1に示すような印刷装置10が接続されているネットワーク40上の情報処理装置であっても構わない。尚、この工程は図9の「Step3」に相当する。
【0027】
次に、入力された複数枚のスキャニングデータに基づいて、対象とする印刷装置10に搭載されている印刷ユニットの各色のドラム全面におけるレジずれ分布特性を検出する(ステップS604)。尚、ステップS604のドラム全面におけるレジずれ分布特性の検出処理は、対象とする印刷機器(ここでは、印刷装置10)に搭載されている各色のドラムのすべてに対して個別に行う必要がある。
【0028】
図7は、図6のステップS604によるレジずれ分布特性検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0029】
まず、ステップS603で入力された複数枚のスキャニングデータに基づいて、各印刷用紙におけるずれパターンに基づいてレジずれの分布状態を検出する(ステップS604a)。図8は、テストパターンの印刷結果に基づくレジずれ分布とドラム全面のレジずれ分布との関係を示す図である。例えば、ステップS604aの処理によって、図8(a)に示すように3枚のスキャニングデータに対するレジずれ分布が検出されたとする。
【0030】
次に、ステップS603において入力されたスキャニングデータの全枚数分の用紙内のレジずれ分布を検出したかどうかを判定する(ステップS604b)。その結果、まだ残っている場合(No)はステップS604aに戻って上記検出処理を続ける。一方、すべて終了している場合(Yes)は、ステップS604cへ進む。
【0031】
ステップS604cにおいては、スキャニングした複数枚の用紙のレジずれ分布状態を比較し、そのレジずれ分布の類似点を抽出する。すなわち、ドラムの取り付け又は真円性における問題で発生するレジずれは、そのドラム特有のずれであり、ある一定のパターンをそのドラムの全面において発生させるという性質を有する。そのため、例えばロール紙のような切れ目のない用紙で切れ目のないテストパターンを流した場合は、図8(b)に示すようなパターンが現れることとなる。すなわち、このテスト印刷で出力した複数枚のパターンは、ある一定の間隔を持ちながら図8(b)に示す連続パターンの一部を再現しているに等しい。そこで、図8(a)に示す連続パターンの一部分とその周期性から、図8(b)に示すような類似パターンの連続したパターンを判定検出する。
【0032】
次に、図8(b)に示すような連続パターンと元の用紙ごとのパターンとを比較して、図8(c)に示すドラム全面におけるレジずれ分布特性と、図8(d)に示す連続出力した場合の用紙間の間隔を抽出する(ステップS604d)。
【0033】
次に、印刷装置10における最終印刷物と最新印刷物とのドラム上での間隔を検出する処理について説明する。図10は、本実施形態における印刷装置10による最終印刷物と最新印刷物とのドラム上での間隔を検出する処理の概要を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、図10に示すフローチャートに従って、個別印刷における用紙の間隔を検出する。
【0034】
まず、版ずれ検出用のテストパターンを部数指定をせずに1枚ずつ、複数枚印刷する(ステップS1001)。尚、この一連の検出処理は、前述したドラム全面のレジずれ分布特性検出処理と併せて行うことが最も効果的である。
【0035】
次に、ステップS1001での印刷結果を順に、スキャナ等でスキャニングする(ステップS1002)。そして、ステップS1002でスキャニングしたデータをレジずれ分布特性検出補正制御プログラムがインストールされている情報処理装置20に転送する(ステップS1003)。尚、この情報処理装置20は、前述したように、印刷装置10内に予め用意されていても、印刷装置10の付属のサーバ装置でも、印刷装置10が接続されているネットワーク40上の情報処理装置であっても構わない。
【0036】
次に、ステップS1003で入力したスキャンデータと、図6のフローチャートで示す検出処理によって得られたドラム全面のレジずれ分布特性とから、最終印刷物と最新印刷物のドラム上での間隔を検出する(ステップS1004)。この最終印刷物と最新印刷物とのドラム上での間隔とは、2つの印刷ジョブを同一印刷装置10に流した場合、最初のジョブの最終印刷物が印刷されたドラム上の位置と、次のジョブの最初の印刷物が印刷されるドラム上の位置との距離であり、図11における距離dのことを示している。すなわち、図11は、個別印刷による用紙の間隔を説明するための図である。図11に示す例は、印刷装置10において最初のジョブの印刷が終了した後に2つ目のジョブを同印刷装置10に流すことにより印刷結果が得られたものである。
【0037】
また、この最終印刷ジョブの最終ページの印刷位置と、最新印刷ジョブの印刷開始ページの印刷位置との間隔dの検出は、対照とする印刷機器に搭載されているドラムすべてに対して個別に行う必要がある。その際、図6で説明した複数枚のテストデータを連続印刷することによる検出処理と、図11で説明した複数枚のテストデータを単ページ毎に印刷することによる検出処理のどちらを先に行ってもよい。すなわち、どちらかのテスト結果からドラムの全面における版ずれ分布特性を求めても構わないが、同一ドラムを対象としたテスト結果はペアでその後のレジずれ補正処理に使われることとなる。
【0038】
図12は、本実施形態における印刷時のレジずれ補正処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、印刷対象となる印刷装置10によって印刷データの印刷に先立ってテストパターンを1枚印刷する(ステップS121)。次に、ステップS121による印刷処理での印刷出力物をスキャナ等でスキャニングする(ステップS122)。そして、スキャニングされたデータをレジずれ分布特性検出補正制御プログラムがインストールされている情報処理装置20に転送する(ステップS123)。尚、この情報処理装置20は、前述したように、印刷装置10内に予め用意されていても、印刷装置10に付属のサーバ装置でも、印刷装置10が接続されているネットワーク上の情報処理装置であっても構わない。
【0039】
次に、情報処理装置20では、入力されたデータから、用紙上のレジずれ分布パターンを検出する(ステップS124)。そして、検出した用紙の版ずれ分布パターンとそれ以前に前述した手順(図6等)で検出されているドラム全面におけるレジずれ分布パターンとを比較し、この用紙がドラム上のどの位置で処理されたのかを確認する(ステップS125)。次に、ステップS125で判定したテストデータを印刷処理したドラム上の位置と、検出した対象プリンタの対象ドラムにおける最終印刷時の最終ページの印刷位置と最新印刷の開始ページの印刷位置との間隔とから、次に印刷を開始した場合にドラム上のどの位置で処理されるかを算出する(ステップS126)。
【0040】
次に、ステップS126で判定したドラム上の位置から、印刷時におけるレジずれの分布パターンを予測する(ステップS127)。次に、ステップS127で予測されたレジずれ分布パターンに対して補正処理を行う(ステップS128)。
【0041】
ここで、ステップS128における補正手順の一例について図9(b)を用いて説明する。ここでは、出力される印刷媒体(用紙)の面を予めいくつかのエリアに区分する。図9(b)に示す例では、符号91に示すように、a1、a2、a3、b1、b2、b3の6エリアに分割する。そして、この次点で用紙面におけるレジずれの分布パターンが予測されているので、符号92に示すように、それぞれのエリアにおけるレジずれ量の平均値を求める。そして、求めた平均値に従って各エリアにおいて各エリアでの平均レジずれ量に対応する幅のトラッピング処理を行うことで、用紙の各個所に対応したレジずれ補正を行う。
【0042】
すなわち、本実施形態における補正処理は、印刷データを印刷する記録媒体(印刷用紙)を複数の領域(エリア)に分割し、分割されたそれぞれの領域において、予測されたレジずれ分布パターンに基づいて平均レジずれ量を算出し、それぞれの領域において算出された平均レジずれ量に基づいて印刷データを補正するものである。尚、補正処理としては、レジずれ量に基づいたトラッピング処理を行うようにする。
【0043】
ステップS128のレジずれ補正処理の後、印刷予定のジョブにおけるすべてのページに対して補正を行ったかを確認する(ステップS129)。その結果、全てのページに対する補正が終わっていない場合(No)はステップS130に進む。一方、全てのページに対する補正が終わっていた場合(Yes)はステップS131へ進む。
【0044】
ステップS130では、まだ補正が終わっていないページがあるため、そのページのドラム上での処理位置を判定する。この際、検出された連続印刷中のドラム上におけるページ間の間隔を考慮して、次のページがドラム上のどの位置で処理されるかを判定する。その後、ステップS127に戻って上記処理を繰り返す。
【0045】
一方、ステップS129で印刷ジョブ中のすべてのページに対して補正処理が終了したと確認された場合(Yes)は、補正処理が済んだデータに従って印刷装置10で印刷処理を行う(ステップS131)。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、実際の印刷に先立ってテスト印刷を行い、その時点における印刷機器に搭載されたドラムに関与するレジずれ特性を検出し、次に印刷する印刷データの印刷時におけるレジずれパターンを予測して印刷データの的確かつ詳細な補正を行うことが可能である。
【0047】
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0048】
尚、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0049】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0050】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0051】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0052】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、該ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0053】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0054】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0055】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の細部構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態におけるレジずれ分布特性検出補正制御プログラム及び関連データが格納される可搬可能な外部記憶装置(FD32又はCD−ROM33)での記録内容を説明するための図である。
【図4】本実施形態における情報処理装置20と可搬可能な外部記憶装置(FD32又はCD−ROM33)との関係を示す概要図である。
【図5】版ずれ分布特性検出補正制御プログラムがHD31にインストールされて実行可能になった状態のメモリマップを示す図である。
【図6】本実施形態に係る印刷装置10のドラム全面におけるレジずれ分布特性の検出処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6のステップS604によるレジずれ分布特性検出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図8】テストパターンの印刷結果に基づくレジずれ分布とドラム全面のレジずれ分布との関係を示す図である。
【図9】本実施形態に係るレジずれ分布特性検出処理及びレジずれ補正処理の概要を図示した概要図である。
【図10】本実施形態における印刷装置10による最終印刷物と最新印刷物とのドラム上での間隔を検出する処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図11】個別印刷による用紙の間隔を説明するための図である。
【図12】本実施形態における印刷時のレジずれ補正処理の手順を説明するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正する情報処理方法であって、
前記印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出工程と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測工程と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正工程と
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
補正後の前記印刷データを前記印刷装置で印刷する印刷工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
補正後の前記印刷データを可搬可能な記録媒体に記録する記録工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記検出工程が、少なくともシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色に対応した印刷ユニットで形成された各画像のレジずれ特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記検出工程が、前記印刷装置に備えられたそれぞれの印刷ユニットに搭載されたドラム全面のレジずれ分布特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記予測工程が、それぞれの印刷ユニットごとに、
前記テスト印刷時のテストデータのレジずれ分布特性と、前記印刷ユニットに搭載されたドラム全面のレジずれ分布特性とを比較して、前記テストデータについての前記ドラム上の処理位置を算出する工程と、
次に印刷ジョブを印刷した場合の印刷開始ページの前記ドラム上での処理位置を算出する工程と、
算出された次の印刷ジョブの印刷開始ページの前記ドラム上の処理位置に基づいて、該次の印刷ジョブの印刷時におけるレジずれパターンを予測する工程と
を有することを特徴とする請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記検出工程が、
前記テスト印刷によってテストデータが印刷された複数の記録媒体を読み取る工程と、
読み取られた複数のテストデータを所定間隔で配置することにより前記印刷ユニットのレジずれ分布特性を検出する工程と
を有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記検出工程が、前記印刷データの印刷直前に、前記レジずれ分布特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記読み取る工程が、前記印刷装置から印刷された複数の記録媒体を印刷された順番で読み取ることを特徴とする請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記読み取る工程が、前記印刷装置に備えられた複数の印刷ユニットに搭載されたそれぞれのドラムについてのテスト印刷の出力結果をすべて読み取ることを特徴とする請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記検出工程が、連続する2ページのうちの前のページが前記印刷ユニットに搭載されたドラム上で処理されたときの該ドラム上でのページの終了位置と、後のページが前記ドラム上で処理されたときの該ドラム上でのページの開始位置との距離を前記印刷ページ間隔として検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記検出工程が、部数を指定して同一データを連続して印刷するテスト印刷、又は、単一ページの印刷ジョブを複数回印刷するテスト印刷とをペアで行って、前記印刷ユニットのレジずれ特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記検出工程が、部数を指定して同一データを連続して印刷するテスト印刷、又は、単一ページの印刷ジョブを複数回印刷するテスト印刷とのいずれか一方のテスト印刷を行って、前記印刷ユニットのレジずれ特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記検出工程が、それぞれの印刷ユニットごとに、
テストデータが印刷された印刷用紙についてのレジずれ分布パターンを検出する工程と、
検出された前記レジずれ分布パターンを複数枚の前記印刷用紙について比較して、レジずれの類似パターンを抽出する工程と、
抽出された前記レジずれの類似パターンと、対象の印刷ユニットに搭載されたドラムの円周長とに基づいて、該ドラム全面における使用用紙サイズ範囲のレジずれ分布特性を検出する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
前記予測工程が、前記印刷ユニットを用いて予め用意されたテストデータを1部だけ印刷するテスト印刷を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記補正工程が、
前記印刷データを印刷する記録媒体を複数の領域に分割する工程と、
分割されたそれぞれの領域において、前記予測工程によって予測された前記レジずれパターンに基づいて平均レジずれ量を算出する工程と、
それぞれの領域において算出された前記平均レジずれ量に基づいて前記印刷データを補正する工程と
を有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記補正工程が、前記レジずれ量に基づいたトラッピング処理を行って前記印刷データを補正することを特徴とする請求項1又は16に記載の情報処理方法。
【請求項18】
それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正する情報処理装置であって、
前記印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出手段と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測手段と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項19】
それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置であって、
テスト印刷を行って、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出手段と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測手段と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正手段と、
補正後の前記印刷データを前記印刷ユニットを用いて印刷する印刷手段と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項20】
それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正するコンピュータに、
前記印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性及び印刷ページ間隔を検出する検出手順と、
前記レジずれ分布特性及び前記印刷ページ間隔に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測手順と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正手順と
を実行させるためのプログラム。
【請求項21】
請求項20に記載されたプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項22】
それぞれが異なる色に対応した複数の印刷ユニットを備え、各印刷ユニットで形成された複数色の画像を重ね合わせてカラー画像を印刷する印刷装置で印刷される印刷データを補正する情報処理方法であって、
前記印刷装置で行われたテスト印刷の結果に基づいて、それぞれの印刷ユニットでのレジずれ分布特性を検出する検出工程と、
前記レジずれ分布特性に基づいて、それぞれの印刷ユニットにおいて次の印刷時に発生するレジずれパターンを予測する予測工程と、
前記レジずれパターンに基づいて印刷データを補正する補正工程と
を有することを特徴とする情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−26983(P2006−26983A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206437(P2004−206437)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】