説明

情報提供方法及び情報提供システム

【課題】可視光通信を利用して、イベントの資料などの情報を安全かつ効率的に提供する。
【解決手段】電子ファイルの暗号鍵及び復号鍵を生成する第1の処理と、暗号鍵を用いて電子ファイルを暗号化し、暗号化ファイルを無線通信により送信する第2の処理と、復号鍵を特定のプログラムで復号可能に暗号化し、暗号データを、特定エリア内を照明する照明光に重畳させて送信する第3の処理と、特定のプログラムが予めインストールされたコンピュータ装置を特定エリア内に移動させ、無線受信器を用いて暗号化ファイルを受信すると共に、光受信器を用いて暗号データが重畳された照明光を受信する第4の処理と、特定プログラムを用いて、暗号データを復号して復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて暗号化ファイルを復号し、復号した電子ファイルを表示させる第5の処理と、を少なくとも実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供方法及び情報提供システムに関し、特に、可視光通信を利用した情報提供方法及び情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
会議やセミナーなどのイベントを開催する際、従来はイベントで利用される資料を紙で配布する方法が用いられていたが、資源の消費削減のため、近年ではこの資料を電子ファイルとして参加者のコンピュータ装置に送信し、画面上で資料を閲覧する方法が用いられるようになってきている。
【0003】
電子ファイルの送信に際して、多数のメンバーが参加するイベント(例えば、セミナー)の場合、参加者全員のコンピュータ装置に対してLAN(Local Area Network)ケーブルを接続するのは大変であることから、無線LANを利用することが多い。しかしながら、無線LANでは会議室やセミナー会場などの特定エリアの外部に電波が漏れ、電波が不正に傍受される恐れがある。
【0004】
そこで、所定の場所、所定の時間及び特定の参加者に絞って、イベント中に配布する電子ファイルのアクセス権限を制御する方法が必要になる。このアクセス権限の制御に関して、例えば、下記特許文献1には、システムメンテナンスの予定表に従って、システムメンテナンスの時間帯のみ、機密ファイルへのアクセスを許可する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−038124号公報
【特許文献2】特開2008−204423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1はシステムメンテナンスに関する発明であるが、この方法をイベントに応用して、イベント開催時間帯のみ、電子ファイルへのアクセスを許可することが考えられる。しかしながら、この場合でも無線LANを利用して電子ファイルを配布すると、特定エリアの外部に電波が漏れることによって参加者以外の者に電子ファイルが不正に取得されてしまう恐れがあり、特に、機密性が高い電子ファイルを配布する場合に大きな問題となる。
【0007】
ここで、近年、照明灯が照射する可視光を利用して情報を送信する通信方法(いわゆる可視光通信)が提案されており(例えば、特許文献2参照)、この可視光通信を利用することにより特定エリアの外部での電子ファイルの不正取得を防止することは可能である。しかしながら、可視光通信の通信速度は遅く、データサイズの大きい電子ファイルを送信するには不向きである。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、可視光通信を利用して、イベントの資料などの情報を安全かつ効率的に提供することができる情報提供方法及び情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、電子ファイルを暗号化するための暗号鍵及び暗号化した前記電子ファイルを復号するための復号鍵を生成する第1の処理と、前記暗号鍵を用いて前記電子ファイルを暗号化して暗号化ファイルを生成し、当該暗号化ファイルを無線通信により送信する第2の処理と、前記復号鍵を特定のプログラムで復号可能に暗号化して暗号データを生成し、当該暗号データを、前記無線通信の電波が透過する壁で仕切られた特定エリア内を照明する照明光に重畳させて可視光通信により送信する第3の処理と、前記特定エリア内に位置したコンピュータ装置であって前記特定のプログラムが予めインストールされたコンピュータ装置が、当該コンピュータ装置に設けられた無線受信器を用いて前記暗号化ファイルを受信すると共に、当該コンピュータ装置に設けられた光受信器を用いて前記暗号データが重畳された照明光を受信する第4の処理と、前記コンピュータ装置が、前記特定プログラムを用いて、前記暗号データを復号して前記復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて前記暗号化ファイルを復号し、復号した前記電子ファイルを表示させる第5の処理と、を少なくとも実行するものである。
【0010】
また、本発明は、電子ファイルを暗号化するための暗号鍵及び暗号化した前記電子ファイルを復号するための復号鍵を生成する暗号鍵生成装置と、前記生成装置から取得した前記復号鍵を特定のプログラムで復号可能に暗号化して暗号データを生成する第1暗号器と、前記生成装置から取得した前記暗号鍵を用いて予め保存された前記電子ファイルを暗号化して暗号化ファイルを生成する第2暗号器と、無線受信器及び光受信器を備え、前記特定のプログラムが予めインストールされたコンピュータ装置と、前記第1暗号器から取得した前記暗号データを照明光に重畳させて送信する照明部と、を少なくとも備え、前記照明部は、無線通信の電波が透過する壁で仕切られた特定エリア内に設置され、前記コンピュータ装置は、前記無線受信器を用いて前記第2暗号器から前記暗号化ファイルを受信すると共に、前記特定エリア内において、前記光受信器を用いて前記照明部から前記暗号データが重畳された照明光を受信し、前記特定プログラムは、前記暗号データを復号して前記復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて前記暗号化ファイルを復号し、復号した前記電子ファイルを表示部に表示させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の情報提供方法及び情報提供システムによれば、可視光通信を利用して、イベントの資料などの情報を安全かつ効率的に提供することができる。
【0012】
その理由は、電子ファイルを暗号化し、電波を用いた無線通信を利用して配信すると共に、暗号化された電子ファイルを復号するための復号鍵と必要に応じてユーザ情報とを特定のアプリケーションで復号可能な暗号データとして、部屋内の照明灯を利用して可視光通信で特定エリアに配信し、参加者のコンピュータ装置では、無線通信機能を用いて暗号化された電子ファイルを受信すると共に、可視光通信機能を用いて上記特定エリア内で暗号データを受信し、特定のアプリケーションを用いて暗号データを復号して復号鍵と必要に応じてユーザ情報とを取り出し、その復号鍵を用いて暗号化された電子ファイルを復号し、表示部に表示させる制御を行うからである。
【0013】
このように、配線の手間が必要でなく比較的帯域の広い無線通信を利用して電子ファイルを配信するため、情報の提供を迅速に行うことができ、一方で、特定エリアの外部で電子ファイルが傍受されたとしても、電子ファイルは暗号化されており、復号するための鍵は特定エリアの外部では取得できないため、セキュリティを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係る情報提供システムの構成及び概略動作を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る参加者PCの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る可視光通信部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る復号プログラムの処理を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る復号プログラムの動作を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る情報提供システムの構成及び概略動作を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
背景技術で示したように、多数の参加者にイベントの資料等を配布する場合、無線LANの如き無線通信を利用して参加者のコンピュータ装置に電子ファイルを送信する方法が用いられるが、無線通信では、電波が会議室やセミナー会場等の特定エリアの外部でも傍受可能なため、情報が漏洩するという問題がある。
【0016】
一方、会議室等の照明は蛍光灯から高寿命のLED(Light Emitting Diode)に置き換わり始めたことから、LEDの照明灯を使用した可視光通信が注目されている。この可視光通信は電波と違って会議室の外部に漏れることがなく、人体に影響を及ぼすことがなく、電波法の制約がないという特質がある。この可視光通信を利用して電子ファイルを送信すれば、電子ファイルが特定エリアの外部に漏洩することは防止できるが、可視光通信は無線通信に比べてデータの送信速度が低く、サイズの大きい電子ファイルを送信する用途には適していない。
【0017】
そこで、本発明の一実施の形態では、配線の手間がなくデータの通信速度が大きい無線通信の長所と、特定エリアの外部に情報が漏洩しない可視光通信の長所とを利用して、電子ファイルを特定エリア内の参加者のコンピュータ装置でのみ適切に再生できる仕組みを提供する。
【0018】
具体的には、会議室やセミナー会場等の電波が遮断できない特定エリアにいる参加者に対して電子ファイルを送信する場合に、電子ファイルを暗号化した暗号化ファイルを無線LANで送信する。また、その暗号化ファイルを復号するための復号鍵を特定のアプリケーションで復号可能な暗号データに変換し、特定エリアに設けた照明部を利用した可視光通信で送信する。一方、参加者のコンピュータ装置では、無線LAN機能を利用して暗号化ファイルを受信すると共に、可視光通信機能を利用して特定エリア内で暗号データを受信し、予めインストールした特定のアプリケーションを用いて暗号データを復号して復号鍵を取り出し、その復号鍵を用いて暗号化ファイルを復号する。また、復号鍵を暗号化した暗号データの送信時期を会議予定時間に限定したり、暗号データに参加者のユーザ情報を含ませて、そのユーザ情報で認証された参加者のみが復号鍵を取り出せるようにしたり、特定のアプリケーションの動作時間をタイマで制限したりする。
【0019】
これにより、イベントに対応した、所定の場所で所定の時間で特定の参加者に絞って、電子ファイルのアクセス権限を制御することが可能となる。
【実施例1】
【0020】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る情報提供方法及び情報提供システムについて、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、本実施例の情報提供システムの構成及び概略動作を模式的に示す図であり、図2は、参加者PCの構成を示すブロック図、図3は、照明部の構成を示すブロック図である。また、図4は、参加者PCで動作する復号プログラムの処理を模式的に示す図であり、図5は、復号プログラムの詳細動作を示すフローチャート図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例の情報提供システム10は、受付装置20と、会議等に参加する参加者のコンピュータ装置(以下、参加者PC30と呼ぶ。)と、会議予定管理サーバ40と、ユーザ管理サーバ50と、暗号鍵生成装置60と、第1暗号器70と、第2暗号器80と、照明部90などを備え、これらは有線又は無線LAN通信、赤外線通信、可視光通信などを利用した通信ネットワークによって接続されている。以下、個別に説明する。
【0022】
[受付装置]
受付装置20は、受付ブースに設置され、参加者が会議の参加申し込み、支払い等を行うと、ユーザ管理サーバ50に、ユーザID及びユーザパスワードなどのユーザ情報の発行を依頼し、ユーザ管理サーバ50が発行したユーザ情報を受信し、赤外線通信等を用いて参加者PC30に送信する。
【0023】
[参加者PC]
参加者PC30は、図2(a)に示すように、制御部31と、表示部32と、操作部33などで構成され、会議の参加者と共に、受付ブースから会議室内へと移動する。
【0024】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)31a、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ31b、HDD(Hard Disk Drive)31c、通信I/F部31dなどを備え、これらはバスを介して接続されている。CPU31aは、各部の制御を行う。メモリ31bは、HDD31c、通信I/F部31dから読み込んだ種々のデータを一時的に記憶する部分であり、記憶されたデータはCPU31aによって処理され、必要に応じてHDD31cや通信I/F部31dに転送される。HDD31cは、各種プログラム(復号プログラムなど)や各種データ(ユーザ情報や電子ファイルなど)を格納し、CPU31aにより必要に応じて読み出され、メモリ31b上で実行処理される。通信I/F部31dは、無線LAN機器100と極超短波やマイクロ波を使った無線通信を行う無線送受信器、受付装置20と赤外線通信(IrDA:Infrared Data Association)を行う赤外線送受信器、照明部90と可視光通信を行う光受信器として機能する。
【0025】
上記制御部31で動作する復号プログラムは、図2(b)に示すように、プログラムに予め埋め込まれた復号鍵を用いて照明部90から可視光通信で送信される暗号データを復号し、暗号データから暗号化された電子ファイルを復号するための復号鍵とユーザ情報を取り出す暗号データ復号部と、暗号データから取り出したユーザ情報と受付装置20から取得したユーザ情報とを比較してユーザ認証を行う認証部と、認証部で認証された場合に暗号データから取り出した復号鍵を用いて無線LAN機器100を介して受信した暗号化ファイルを復号する暗号化ファイル復号部と、復号した電子ファイルに基づく文書を表示部32に表示させると共に、制御部31に備えるタイマを監視し、所定時間経過後に電子ファイルに基づく文書の表示を停止させる表示制御部として機能する。
【0026】
表示部32は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)表示装置等からなり、復号プログラムで復号した電子ファイルを表示する。
【0027】
操作部33は、表示部32上に表示された情報を操作したり、情報を入力したりする部分であり、ポインティングデバイス、キーボード、トラックボール、トラックパッド、タブレット、及びスタイラスペンなどで構成される。
【0028】
[会議予定管理サーバ]
会議予定管理サーバ40は、任意の場所(会議室の内部でも外部でもよい。)に配置され、会議の場所や開催時間などを記憶した会議予定データベースと、会議資料を電子データ化した電子ファイルを記憶する。そして、参加者PC30からの要求に応じて第2暗号器80に添付ファイルを送信すると共に、会議の開催時間になったら第1暗号器70を起動する。
【0029】
[ユーザ管理サーバ]
ユーザ管理サーバ50は、任意の場所(会議室の内部でも外部でもよい。)に配置され、受付装置20からの要求に応じてユーザID及びユーザパスワードなどのユーザ情報を発行し、そのユーザ情報を受付装置20及び第1暗号器70に送信する。
【0030】
[暗号鍵生成装置]
暗号鍵生成装置60は、任意の場所(会議室の内部でも外部でもよい。)に配置され、電子ファイルを暗号化するための暗号鍵を生成して第2暗号器80に送信すると共に、その暗号を解くための復号鍵を生成して第1暗号器70に送信する。
【0031】
[第1暗号器]
第1暗号器70は、任意の場所(会議室の内部でも外部でもよい。)に配置され、会議予定管理サーバ40からの指示に従って起動し、暗号鍵生成装置60から受信した復号鍵とユーザ管理サーバ50から受信したユーザ情報とを暗号化して暗号データを生成し、その暗号データを照明部90に送信する。
【0032】
[第2暗号器]
第2暗号器80は、任意の場所(会議室の内部でも外部でもよい。)に配置され、会議予定管理サーバ40から受信した電子ファイルを、暗号鍵生成装置60から受信した暗号鍵を用いて暗号化し、暗号化ファイルとして無線LAN機器100を経由して参加者PC30に送信する。
【0033】
なお、上記会議予定管理サーバ40、ユーザ管理サーバ50、暗号鍵生成装置60、第1暗号器70、第2暗号器80は個別の装置としてもよいし、任意に組み合わせた装置としてもよい。また、電子ファイルは、会議予定管理サーバ40以外の機器に保存してもよい。
【0034】
[照明部]
照明部90は、会議室等の無線LAN通信の電波が透過する壁で仕切られた特定エリアの内部に設置され、図3に示すように、通信I/F部91と変調部92と駆動部93と発光部94などを備える。
【0035】
通信I/F部91は、第1暗号器70から暗号データを受信する。変調部92は、光の強弱でパルス(人間の目で認識できない周波数のパルス)を作り、暗号データに応じてパルスの時間的位置を変調する。駆動部93は、変調部92で生成したパルスに応じた電流を発光部94に供給する。発光部94は、LEDやインバータ型蛍光灯、直流型蛍光灯などで構成され、パルス位置に暗号データを乗せた可視光を会議室内に照射する。
【0036】
その際、暗号データは連続して送信してもよいし、一定間隔で送信し、暗号データを送信しない期間は一定強度の光を照射してもよい。また、上記照明部90の配置や個数は任意であり、発光部94は天井等に設置してもよいし、会議室内のテーブル等に設置してもよい。また、複数の発光部94を備える場合は、その全てで可視光通信を行う必要はなく、1以上の発光部94で可視光通信を行い、他の発光部94は一定の強度で発光して通常の照明を行ってもよい。また、発光部94は会議室内の全体に光を照射してもよいし、指向性を持たせて会議室内の特定の場所(特定の参加者PC30)のみに光を照射してもよい。
【0037】
なお、図1乃至図3は、本実施例の情報提供システム10の一例であり、無線通信を利用して文書データを暗号化した暗号化ファイルを参加者PC30に送信すると共に、可視光通信を利用して暗号化ファイルを復号するための復号鍵を参加者PC30に送信することができれば、その構成や制御は適宜変更可能である。例えば、ユーザ情報による認証が必要なければ、受付装置20やユーザ管理サーバ80などは省略することができる。また、無線LAN通信や赤外線通信に代えて、2.45GHz帯の電波を利用したBluetooth通信を使用してもよい。
【0038】
次に、図1の構成の情報提供システム10の動作について説明する。
【0039】
参加者PC30を所持する参加者は、会議の受付ブースで参加申し込みを行う。受付装置20はユーザ管理サーバ50に参加登録を行い、参加者にユーザIDとユーザパスワードを発行する。ユーザIDとユーザパスワードは赤外線通信を利用して参加者PC30に送信され、赤外線通信機能を備えた参加者PC30は、ユーザIDとユーザパスワードを受け取り、そのユーザIDとユーザパスワードを復号プログラムが参照できるようにメモリ等に格納する。
【0040】
次に、参加者は会議予定時間に会議室に入室し、無線LAN機器100を介して会議予定管理サーバ40内の電子ファイルを取得する。ここで、暗号鍵生成装置60は暗号鍵と復号鍵を生成し、暗号鍵を第2暗号器80に渡し、第2暗号器80は参加者が取得する電子ファイルを暗号化する。よって、参加者PC30には暗号化された電子ファイル(暗号化ファイルと呼ぶ。)が格納される。
【0041】
一方、会議予定管理サーバ40は、会議開催時間の間、第1暗号器70を起動し続ける。第1暗号器70は、ユーザ管理サーバ50からユーザID、ユーザパスワードを受け取り、暗号鍵生成装置60から暗号化ファイルを復号する復号鍵を受け取り、それらを復号プログラムに対応する暗号鍵で暗号化し、暗号データを生成する。その暗号データは会議室の照明部90に送信され、照明部90から可視光通信で会議室内に照射される。
【0042】
参加者PC30は可視光通信機能(光受信器)を備え、照明光に重畳された暗号データを受信する。そして参加者PC30内の復号プログラムは、暗号データを用いて暗号化ファイルを復号し、復号した電子ファイルを表示部に表示する。
【0043】
図4は、参加者PC30内の復号プログラムの処理の流れを示し、図5は、そのシーケンスを示している。以下、詳細に説明する。
【0044】
復号プログラムは、赤外線通信により受付装置20からユーザID、ユーザパスワードを受信し、内部に格納する。
【0045】
また、復号プログラムは、可視光通信により照明部90(第1暗号器70)から暗号データを受信し、予め書き込まれた第1暗号器70に対応する復号鍵で復号し、その暗号データを解読して、ユーザID、ユーザパスワード、暗号化ファイルを復号するための復号鍵を取り出す(S101)。
【0046】
次に、復号プログラムは、予め格納した(受付装置20が発行した)ユーザID、ユーザパスワードと、暗号データから取り出したユーザID、ユーザパスワードとを比較し(S102)、一致しなければ、処理を終了する。
【0047】
ユーザID、ユーザパスワードが一致した場合は、暗号データから取り出した復号鍵で暗号化ファイルを復号し、表示部32に表示させる等の処理を行う(S103)。
【0048】
次に、タイマをスタートし(S104)、タイマが切れるまで待つ(S105)。そして、タイマが切れたら、表示部32の表示を停止させる処理を行う(S106)。
【0049】
復号プログラムはこのシーケンスを繰り返し、タイマが切れる前に暗号データを再度受信し、ユーザID、ユーザパスワードが一致したら、タイマをリセットし(S104)、電子ファイルに基づく文書の表示を継続する。
【0050】
このように、会議室の照明部90から暗号データが送信される限り、電子ファイルを継続して表示部32に表示することができるため、参加者は会議に必要な資料を確実に入手することができる。一方、照明部90からの暗号データの送信が途切れると、一定時間経過後に電子ファイルの閲覧が不可能になるため、会議室の外部での電子ファイルの閲覧を有効に防止することができ、情報漏洩を未然に防ぐことができる。
【0051】
なお、このタイマの設定時間は任意に設定可能であるが、会議等ではスクリーンに資料を表示する場合は照明を落とす場合があり、設定時間が短すぎると、照明を落とす度に表示が消えてしまう不都合が生じる。また、参加者が意図せずに可視光通信機能の光受信器を身体や持ち物等で覆い、照明部90からの光を遮ってしまった場合も表示が消えてしまう恐れがある。一方、設定時間が長すぎると、参加者が参加者PC30を会議室から持ち出し、会議室の外部で電子ファイルを閲覧したり、参加者以外の者に閲覧させたりする恐れがある。従って、タイマの設定時間はこれらを勘案して設定することが好ましい。
【0052】
その際、会議室の出入り口にBluetooth通信手段やRFID(Radio Frequency Identification)通信手段を設けて所定の信号を送信し、復号プログラムは、参加者PC30に予め設けたBluetooth通信機能やRFID通信機能が所定の信号を受信したら、タイマの経過時間にかかわらず、表示を停止させる制御を行うことも可能であり、このようにすれば、会議室の外部で電子ファイルが不正に閲覧される問題を回避することができる。
【0053】
また、復号プログラムは、参加者PC30に予め設けた検知部が参加者PC30の移動や傾き、折り畳み等を検出したら、表示を停止させる制御を行うことも可能であり、このようにすれば、会議室の外部で電子ファイルが不正に閲覧される問題を回避することができる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の第2の実施例に係る情報提供方法及び情報提供システムについて、図6及び図7を参照して説明する。図6は、本実施例の情報提供システムの構成及び概略動作を模式的に示す図であり、図7は、画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【0055】
前記した第1の実施例では、会議予定管理サーバ40に記憶した電子ファイルを参加者PC30に提供する場合について説明したが、会議室に画像形成装置(MFP:Multi Function Peripheral)を備えている場合は、画像形成装置で紙媒体の資料を読み取って電子ファイル化して参加者PC30に提供することもできる。
【0056】
その場合、情報提供システム10は、図6に示すように、受付装置20と、参加者PC30と、会議予定管理サーバ40と、ユーザ管理サーバ50と、暗号鍵生成装置60と、第1暗号器70と、第2暗号器80と、照明部90とに加えて、紙媒体の資料を電子データ化する第1の画像形成装置110と、必要に応じて入門証などを発行する第2の画像形成装置120とを備える。画像形成装置以外の構成要素は第1の実施例と同様であるため説明を省略し、画像形成装置について以下に説明する。
【0057】
[画像形成装置]
上記画像形成装置110(画像形成装置120も同様)は、図7に示すように、制御部111と、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿送り装置)112と、画像読取部113(スキャナ部)と、表示・操作部114と、給紙部115と、印刷部116などで構成される。
【0058】
制御部111は、各構成部を制御する部分で、CPU111a、ROMやRAMなどのメモリ111b、HDD111c、通信I/F部111dなどを備え、これらはバスを介して接続されている。CPU111aは各部の制御などを行う。メモリ111bは、HDD111c、画像読取部113、通信I/F部111dから読み込んだ種々のデータを一時的に記憶する部分で、記憶されたデータはCPU111aによって画像処理され、必要に応じてHDD111cや印刷部116に転送される。HDD111cは、CPU111aが各部を制御するためのプログラム、自装置の処理機能に関する情報などを格納し、CPU111aにより必要に応じて読み出され、メモリ111b上で実行処理される。通信I/F部111dは、受付装置20や会議予定管理サーバ40、第2暗号器80、無線LAN機器100などとの接続を確立し、データの送受信を実行する。
【0059】
ADF112は、単数もしくは複数枚の原稿用紙を自動で画像読取部113へ搬送する部分である。
【0060】
画像読取部113は、原稿台上の原稿用紙から画像データを光学的に読み取る部分であり、原稿を走査する光源と、原稿で反射された光を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Devices)等のイメージセンサと、電気信号をA/D変換するA/D変換器等により構成される。
【0061】
表示・操作部114は、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示部上に、透明電極が格子状に配置された感圧式の操作部(タッチパネル)を設けた装置であり、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号を操作信号として制御部111に出力する。
【0062】
給紙部115は、各種サイズの用紙を格納する用紙トレイで構成される。また、格納された用紙を印刷部116へ送り出す部分を含む。
【0063】
印刷部116は、電子写真方式や静電記録方式等の作像プロセスを利用した画像形成に必要な構成要素で構成され、画像読取部113から読み込んだ画像データに基づいて、用紙に画像を形成する。
【0064】
なお、図7は画像形成装置の一例であり、入門証の発行が必要ない場合は第2の画像形成装置120は省略することができる。また、第1の画像形成装置110は、紙媒体の資料を読み取って電子ファイル化して送信できればよく、給紙部115や印刷部116は省略することができる。
【0065】
次に、図6の構成の情報提供システム10の動作について説明する。
【0066】
まず、参加者PC30を所持する参加者は、会議の受付ブースで参加申し込みを行う。ここで、第1の実施例では、赤外線通信機能を用いて受付装置20から参加者PC30にユーザIDとユーザパスワードを送信したが、例えば、第2の画像形成装置120を用いて入門証にユーザIDとユーザパスワードを印刷して参加者に渡し、参加者が手動で、参加者PC30内の復号プログラムのユーザインターフェースを用いて、復号プログラムに格納してもよい。
【0067】
次に、参加者は会議予定時間に会議室に入室し、電子ファイルを取得するが、本実施例では、会議予定管理サーバ40に保存された電子ファイルではなく、第1の画像形成装置110に保存された電子ファイルを利用する。例えば、会議中に利用した紙媒体の資料を第1の画像形成装置110の画像読取部113で取り込んで、電子ファイルに変換して第2暗号器80に送信する。又は、第1の画像形成装置110にファクシミリ機能を備えている場合は、ファクシミリ機能で取り込んだデータを電子ファイルに変換して第2暗号器80に送信する。
【0068】
そして、暗号鍵生成装置60は暗号鍵と復号鍵を生成し、暗号鍵を第2暗号器80に渡し、第2暗号器80は第1の画像形成装置110から送信された電子ファイルを暗号化する。よって、参加者PC30には暗号化された電子ファイル(暗号化ファイル)が格納される。
【0069】
なお、第1の画像形成装置110の画像読取機能と電子ファイル送信機能は会議予定管理サーバ40によって制御され、第1の画像形成装置110の設置場所と利用時間が会議予定に合致した場合に、画像読取機能と電子ファイル送信機能が有効になるようにすれば、セキュリティを高めることができる。
【0070】
その後、第1の実施例と同様に、会議予定管理サーバ40は、会議開催時間の間、第1暗号器70を起動し続ける。第1暗号器70は、ユーザ管理サーバ50からユーザID、ユーザパスワードを受け取り、暗号鍵生成装置60から暗号化ファイルを復号する復号鍵を受け取り、それらを復号プログラムに対応する暗号鍵で暗号化し、暗号データを生成する。その暗号データは会議室の照明部90に送信され、照明部90から可視光通信で会議室内に照射される。
【0071】
参加者PC30は可視光通信機能を用いて、照明光に重畳された暗号データを受信する。そして、参加者PC30内の復号プログラムは、可視光通信により第1暗号器70から暗号データを受信し、予め書き込まれた第1暗号器70に対応する復号鍵で復号し、その暗号データを解読して、ユーザID、ユーザパスワード、暗号化ファイルを復号するための復号鍵を取り出し、予め格納したユーザID、ユーザパスワードと、暗号データから取り出したユーザID、ユーザパスワードとが一致したら、暗号データから取り出した復号鍵で暗号化ファイルを復号し、タイマが切れるまで電子ファイルに基づく文書を表示部32に表示させる。
【0072】
なお、上記各実施例では、ユーザID、ユーザパスワード、暗号化ファイルを復号するための復号鍵を暗号化し、可視光通信で暗号データとして送信したが、ユーザID、ユーザパスワード、復号鍵を暗号化せずにそのまま送信することも可能である。但し、その場合は、参加者PC30を操作して受信した復号鍵を解読することが可能であり、復号鍵が解読されると暗号化ファイルが会議室の外部で自由に復号されてしまう恐れはある。
【0073】
また、上記各実施例では、復号プログラムはタイマが切れたら表示を停止させたが、表示を停止させる前に所定の警告画面(例えば、「光受信器を照明灯に向けて下さい。」など)を表示するようにすれば、会議の進行を円滑に進めることができる。
【0074】
また、上記各実施例では、会議室で電子ファイルを配信するシステムを例にして説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、セミナーや株主総会など、特定エリアで開催される任意のイベントに対して同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、会議資料等の電子データを参加者に配信する情報提供システム及び情報提供方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 情報提供システム
20 受付装置
30 参加者PC
31 制御部
31a CPU
31b メモリ
31c HDD
31d 通信I/F部
32 表示部
33 操作部
40 会議予定管理サーバ
50 ユーザ管理サーバ
60 暗号鍵生成装置
70 第1暗号器
80 第2暗号器
90 照明部
91 通信I/F部
92 変調部
93 駆動部
94 発光部
100 無線LAN機器
110 第1の画像形成装置
111 制御部
111a CPU
111b メモリ
111c HDD
111d 通信I/F部
112 ADF
113 画像読取部
114 表示・操作部
115 給紙部
116 印刷部
120 第2の画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ファイルを暗号化するための暗号鍵及び暗号化した前記電子ファイルを復号するための復号鍵を生成する第1の処理と、
前記暗号鍵を用いて前記電子ファイルを暗号化して暗号化ファイルを生成し、当該暗号化ファイルを無線通信により送信する第2の処理と、
前記復号鍵を特定のプログラムで復号可能に暗号化して暗号データを生成し、当該暗号データを、前記無線通信の電波が透過する壁で仕切られた特定エリア内を照明する照明光に重畳させて可視光通信により送信する第3の処理と、
前記特定エリア内に位置したコンピュータ装置であって前記特定のプログラムが予めインストールされたコンピュータ装置が、当該コンピュータ装置に設けられた無線受信器を用いて前記暗号化ファイルを受信すると共に、当該コンピュータ装置に設けられた光受信器を用いて前記暗号データが重畳された照明光を受信する第4の処理と、
前記コンピュータ装置が、前記特定プログラムを用いて、前記暗号データを復号して前記復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて前記暗号化ファイルを復号し、復号した前記電子ファイルを表示させる第5の処理と、
を少なくとも実行する、ことを特徴とする情報提供方法。
【請求項2】
前記第3の処理では、前記復号鍵と前記コンピュータ装置を所持するユーザを特定するユーザ情報とを暗号化して前記暗号データを生成し、
前記第5の処理では、前記暗号データから前記ユーザ情報を取り出し、取り出したユーザ情報と予め保存したユーザ情報とを比較し、ユーザ情報が一致する場合は、前記暗号データから前記復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて前記暗号化ファイルを復号する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報提供方法。
【請求項3】
前記特定エリア内で行われるイベントの開催時間のみ、前記第3の処理を実行する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報提供方法。
【請求項4】
前記第5の処理では、前記電子ファイルを表示させたらタイマを起動し、その後、前記暗号データが重畳された照明光を受信することなく前記タイマで設定された時間が経過したら、前記電子ファイルの表示を停止する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の情報提供方法。
【請求項5】
電子ファイルを暗号化するための暗号鍵及び暗号化した前記電子ファイルを復号するための復号鍵を生成する暗号鍵生成装置と、前記生成装置から取得した前記復号鍵を特定のプログラムで復号可能に暗号化して暗号データを生成する第1暗号器と、前記生成装置から取得した前記暗号鍵を用いて予め保存された前記電子ファイルを暗号化して暗号化ファイルを生成する第2暗号器と、無線受信器及び光受信器を備え、前記特定のプログラムが予めインストールされたコンピュータ装置と、前記第1暗号器から取得した前記暗号データを照明光に重畳させて送信する照明部と、を少なくとも備え、
前記照明部は、無線通信の電波が透過する壁で仕切られた特定エリア内に設置され、
前記コンピュータ装置は、前記特定エリア内において、前記無線受信器を用いて前記第2暗号器から前記暗号化ファイルを受信すると共に、前記光受信器を用いて前記照明部から前記暗号データが重畳された照明光を受信し、前記特定プログラムは、前記暗号データを復号して前記復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて前記暗号化ファイルを復号し、復号した前記電子ファイルを表示部に表示させる、ことを特徴とする情報提供システム。
【請求項6】
前記特定エリア内で行われるイベント参加者のユーザ情報を記憶するユーザ管理サーバと、受付装置と、を更に備え、
前記ユーザ管理サーバは、前記受付装置からの要求に応じてユーザ情報を発行し、当該ユーザ情報を前記受付装置及び前記第1暗号器に送信し、
前記受付装置は、前記ユーザ情報を前記コンピュータ装置に送信し、
前記コンピュータ装置は、受信したユーザ情報を保存し、
前記第1暗号器は、前記ユーザ情報と前記復号鍵とを暗号化して前記暗号データを生成し、
前記特定プログラムは、前記暗号データから前記ユーザ情報を取り出し、取り出したユーザ情報と保存したユーザ情報とを比較し、ユーザ情報が一致する場合は、前記暗号データから前記復号鍵を取り出し、当該復号鍵を用いて前記暗号化ファイルを復号する、ことを特徴とする請求項5に記載の情報提供システム。
【請求項7】
イベント情報を記憶するイベント管理サーバを更に備え、
前記イベント管理サーバは、前記イベント情報に基づいて、イベント開催時間のみ前記第1暗号器を動作させる、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の情報提供システム。
【請求項8】
スキャナ機能を備えた画像形成装置を更に備え、
前記イベント管理サーバは、前記イベント情報に基づいて、イベント開催時間のみ前記画像形成装置の前記スキャナ機能を動作させ、
前記画像形成装置は、紙媒体をスキャンして前記電子ファイルとして記憶し、当該電子ファイルを前記第2暗号器に送信する、ことを特徴とする請求項7に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記特定プログラムは、前記電子ファイルを表示させたらタイマを起動し、その後、前記暗号データが重畳された照明光を受信することなく前記タイマで設定された時間が経過したら、前記電子ファイルの表示を停止する、ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一に記載の情報提供システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−44051(P2011−44051A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192715(P2009−192715)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】