説明

情報提示装置

【課題】 車両に搭載されたバッテリの充電状態に応じた航続可能距離を精度よく算出してユーザに提示することができる情報提示装置を提供すること。
【解決手段】 情報提示装置20の電子制御ユニット21は、通信ユニット24を介して気象情報を取得する。そして、電子制御ユニット21は、取得した気象情報に基づき、車両に搭載された補機類(ワイパー、ライト、エアコン、デフォッガ等)の今後の作動状況すなわち今後作動させる必要の有無を予測する。この予測によって作動が必要となる補機類について、電子制御ユニット11は、作動に伴う電力消費量を算出し、この算出した電力消費量、車両を走行させるために必要な電力消費量及びバッテリのバッテリ残量とから車両の航続可能距離を算出する。そして、電子制御ユニット11は、液晶表示ユニット13に算出した航続可能距離を表示させてユーザに提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエネルギー残量状態に応じて走行可能な経路に関する情報を提示する情報提示装置に関し、特に、車両に搭載されたバッテリの充電状態に応じた航続可能距離をユーザに提示する情報提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているような情報提示装置は知られている。この従来の情報提示装置は、受付手段が受け付けた現在位置と目的地とから経路を導き、現在位置情報を取得し、エネルギー残量を検知し、これらの情報に基づいて、航続距離算出手段は航続距離を算出し、これに応じて編集手段は走行可能範囲を設定し、この走行可能範囲に含まれる経路に関する経路情報を編集し、編集された経路情報を出力手段を介してエネルギー残量に応じた走行可能範囲をユーザに提示するようになっている。ここで、下記引用文献1においては、航続距離算出手段は、航続距離を算出するにあたり、走行している経路や、その経路の道路情報、交通情報、道路種別、天気、温度、エアコンの使用その他の具体的な状態を考慮して算出可能であることが示されている。
【0003】
そして、この点に関し、下記特許文献2には、バッテリの入出力制限値を精度よく算出するために、気温、温度、日射等を考慮してバッテリの温度変化を精度よく推定して退避先への到達可否の判断精度を向上させること、及び、エアコン動作状態も考慮して退避先への到達可否の判断精度を向上させることも示されている。また、特に、天気を考慮する点に関し、下記特許文献3には、降雪確率や降水確率を考慮して、制動部におけるスノーフェード対策制御の作動を調節することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−21522号公報
【特許文献2】特開2006−126107号公報
【特許文献3】特開2009−119889号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記特許文献1に示された従来の情報提示装置においては、航続距離算出手段が、走行している経路や、その経路の道路情報、交通情報、道路種別、天気、温度、エアコンの使用その他の具体的状態を考慮して航続距離を算出可能であることが示唆されているものの、これらの状態を考慮するための具体的な方法が開示されていない。このため、上記従来の情報提示装置においては、ユーザに対して精度の高い航続距離を提示できない可能性がある。その結果、ユーザが例えば電気自動車を利用して移動するときは、精度の低い航続距離を参考にしなければならないため、目的地まで停止することなく移動できるか否かという不安を覚える可能性がある。
【0006】
この点に関し、上記従来の情報提示装置における航続距離算出手段に対して、上記特許文献2,3に示されているように気温、温度、日射、降雪及び降水確率を考慮することを適用するようにしても、これら気温、温度、日射、降雪及び降水確率とエネルギーの残量状態との関係、より具体的には、エネルギーの消費状態が明確とならない。このため、上記従来の情報提示装置における航続距離算出手段が算出する航続距離の精度を向上させることは難しく、その結果、上述したユーザの不安を解消することが難しい。
【0007】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、車両に搭載されたバッテリの充電状態に応じた航続可能距離を精度よく算出してユーザに提示することができる情報提示装置を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両に搭載されたバッテリの充電状態に応じた航続可能距離をユーザに提示する情報提示装置において、走行に伴って変化する自車両の将来の外部環境に関する外部環境情報を取得する外部環境情報取得手段と、前記バッテリに充電されている電力量を表すバッテリ残量を検出するバッテリ残量取得手段と、前記外部環境情報取得手段によって取得された前記外部環境情報に基づいて、前記バッテリからの電力供給により作動する車載機器の作動状況を予測する車載機器作動予測手段と、前記車載機器作動予測手段によって予測された前記車載機器の作動に伴う電力消費量と、自車両を走行させるために必要な電力消費量と、前記バッテリ残量取得手段によって取得されたバッテリ残量とに基づいて、自車両の航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、前記航続可能距離算出手段によって算出された前記航続可能距離をユーザに提示する情報提示手段とを備えたことにある。
【0009】
この場合、前記外部環境情報は、例えば、走行に伴って変化する将来の気象に関する気象情報を少なくとも含むとよい。
【0010】
これらによれば、外部環境情報(例えば、気象に関する気象情報)に基づいて、将来の外部環境の変化(例えば、気象の変化等)に対応して作動させる車載機器の作動状況を予測することができる。そして、この予測された車載機器の作動状況を考慮して、すなわち、作動の予測される車載機器の電力消費量を加味して、自車両の航続可能距離を算出することができる。したがって、ユーザに対して極めて精度の高い航続可能距離を提示することができる。これにより、ユーザは自車両を利用して移動(走行)できる距離を極めて正確に把握することができ、その結果、走行中にバッテリのバッテリ残量が足りずに途中で停止してしまうかも知れないという不安を効果的に解消することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、自車両の現在地からユーザによって設定される目的地までの経路を探索する経路探索手段と、前記航続可能距離算出手段によって算出された前記航続可能距離と、前記経路探索手段によって探索された経路に従って前記目的地まで走行するときの走行距離とを比較し、前記航続可能距離が前記走行距離よりも短いときに前記経路探索手段に対して前記バッテリに充電する充電スタンドを経由する経路を再度探索させる経路再探索要求手段とを備え、前記情報提示手段は、前記航続可能距離算出手段によって算出された前記航続可能距離に加え、前記経路探索手段によって再探索された経路をユーザに提示するとよい。
【0012】
これによれば、例えば、バッテリのバッテリ残量が少なく、自車両の航続可能距離が目的地までの走行距離よりも短いときには、目的地まで到着することができないことが想定される。このため、このようなときには、目的地までの探索経路を変更して、例えば、最寄りの充電スタンドを経由する経路を再探索してユーザに提示することができる。これによっても、ユーザが知覚する走行中にバッテリのバッテリ残量が足りずに途中で停止してしまうかも知れないという不安を効果的に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る情報提示装置を適用した車両の構成を示す概略図である。
【図2】図1の情報提示装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2の電子制御ユニットが実行する情報提示プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る情報提示装置(以下、単に「本装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本装置を、車両10に適用したシステムの概略構成を示している。この車両10は、大容量のバッテリ11を搭載していて、このバッテリ11から供給される電力によって電動モータ12を駆動させて走行する電気自動車(EV)である。また、車両10には、バッテリ11からの電力の供給を受けて作動する各種補機類として、例えば、ワイパー13、ライト(フォグライトを含む)14、エアコン15及び曇り取り装置16(以下、「デフォッガ16」と称呼する。)が搭載されている。このように、車両10に搭載されたバッテリ11は、電動モータ12を始め、各種補機類(ワイパー13、ライト14、エアコン15及びデフォッガ16等)に電力を供給する必要があるため、インレット17を介して図示を省略する充電スタンド等に電気的に接続されて、充電されるようになっている。そして、このように充電されるバッテリ11の充電状態すなわちバッテリ11に充電されている電力量を表すバッテリ残量(以下、「SOC」(State Of Charge)とも称呼する。)は、バッテリ残量取得手段としての充電状態検出センサ18によって検出されるようになっている。
【0016】
車両10に搭載される情報提示装置20は、例えば、車両10の車室内における運転席近傍に配置されており、図2に示すように、互いに通信可能に接続された電子制御ユニット21、入力ユニット22、液晶表示ユニット23、通信ユニット24、記憶ユニット25、ナビゲーションユニット26及び各種センサ27を備えている。
【0017】
電子制御ユニット21は、CPU、ROM、RAM等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、後述するプログラムを含む各種プログラムを実行することにより、情報提示装置20の作動を統括的に制御する。ここで、電子制御ユニット21は、所定の周知のインターフェースを介して充電状態検出センサ18と接続されるようになっており、充電状態検出センサ18によって検出されたバッテリ11のSOCを取得できるようになっている。入力ユニット22は、液晶表示ユニット23の近傍に設けられた操作スイッチ、液晶表示ユニット23内に組み込まれて表示パネルのタッチ操作を検出するパネルタッチスイッチ等からなり、ユーザの指示を入力するものである。ここで、入力ユニット22には、後述するように、ユーザによって操作される航続可能距離確認ボタン22aが設けらている。液晶表示ユニット23は、文字、図形等を表示パネル上に表示するものである。
【0018】
通信ユニット24は、例えば、図1に概略的に示すように、インターネット網を介して、各種情報を提供するセンタに設けられたサーバ(コンピュータ)と無線通信を可能とするものである。記憶ユニット25は、ハードディスク、半導体メモリ、CD−ROM、DVD−ROM等の記憶媒体及び同記憶媒体のドライブ装置を含むものであり、予め各種プログラム(例えば、後述するプログラムやブラウザプログラム等)及び各種データ(例えば、上記各補機類13〜16を作動させる際の単位時間当たりの消費電力量データや経路探索に必要な道路データなど)を記憶している。ナビゲーションユニット26は、記憶ユニット25に予め記憶された各種データを利用してプログラムを実行することにより、各種センサ27によって検出された検出値を用いて車両10の現在地を把握するとともに、運転者に対して目的地までの経路を案内するものである。各種センサ27は、主に車両10の現在地を検出するために必要なセンサとして少なくともGPS(Global Positioning System)信号検出センサを含み、地磁気センサ、ジャイロ、車速センサ、車輪回転数センサ等を含むものである。
【0019】
なお、本実施形態においては、情報提示装置20を車両10に組み付けて設置するように実施する。しかし、例えば、ユーザが携帯する携帯情報端末装置を本発明に係る情報提示装置として実施することも可能である。この場合、携帯情報端末装置は、ユーザが携帯することを考慮してコンパクトであることを除き、構成的には上述した情報提示装置20とほぼ同様に構成され、互いに通信可能に接続された電子制御ユニット、入力ユニット、液晶表示ユニット、通信ユニット、記憶ユニット、ナビゲーションユニット及び各種センサを備え得る。したがって、このような携帯情報端末装置において後述するプログラムを実行し、ユーザに情報を提示するように実施することが可能となる。なお、ユーザが携帯する携帯情報端末装置としては、例えば、スマートフォンを含む携帯電話や通信機能を備えた携帯パーソナルコンピュータ等が好適である。
【0020】
また、上述した情報提示装置20においては、通信ユニット24を備えるように構成した。この場合、例えば、周知のインターフェースを介して、ユーザが携帯する通信装置(例えば、スマートフォンを含む携帯電話等)と接続可能であれば、通信ユニット24を省略して実施可能であることは言うまでもない。この場合、電子制御ユニット21は、周知のインターフェースを介して接続されたスマートフォンを含む携帯電話等を利用して外部のセンタに設けられたサーバと無線通信し、必要なデータ(情報)を取得することによってユーザに情報を提示することが可能となる。
【0021】
次に、上記のように構成した情報提示装置20の作動を詳細に説明する。情報提示装置20の電子制御ユニット21は、図3に示す情報提示プログラムを実行することにより、ユーザに車両10の正確な航続可能距離を提示する。以下、この情報提示プログラムを具体的に説明する。
【0022】
電子制御ユニット21は、まず、ユーザが入力ユニット22を操作することによって目的地が入力されて設定されており、この設定された目的地までの経路が探索されて探索経路が確定していれば、図3に示す情報提示プログラムの実行をステップS10にて開始する。そして、電子制御ユニット21は、情報提示プログラムの実行をステップS10にて開始すると、ステップS11に進む。
【0023】
ステップS11においては、電子制御ユニット21は、入力ユニット22に設けられた航続可能距離確認ボタン22aがユーザによって押下操作(又は、タッチ操作)されたか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット21は、航続可能距離確認ボタン22aが操作されるまでステップS11にて「No」の判定処理を繰り返し実行し、航続可能距離確認ボタン22aが操作されると「Yes」と判定してステップS12に進む。
【0024】
ステップS12においては、電子制御ユニット21は、通信ユニット24を介して、外部に設けられたセンタのサーバとの通信接続(例えば、インターネット接続)を確立する。そして、電子制御ユニット21は、センタのサーバとの間に通信接続を確立した状態で、ステップS13及びステップS14の各ステップ処理を実行する。すなわち、電子制御ユニット21は、ステップS13において、外部環境情報として、センタのサーバから現在地から設定された目的地までの間の気象に関する気象情報を取得する。なお、気象情報には、日没時刻を表す日没情報や、天気予報を表す天気予報情報、濃霧の発生を予報する濃霧予報、気温予報を表す気温予報情報、湿度予報を表す湿度予報情報等が含まれる。また、このステップS13における情報取得処理によって気象情報を取得する場合、一括して現在地から目的地までの間の気象情報を取得することに代えて、又は、加えて、例えば、車両の進行方向前方にて現在地から所定の距離だけ離れた地点における気象情報を連続的に取得するように処理することも可能である。また、電子制御ユニット21は、ステップS14にて、センタのサーバからVICS情報(より具体的には、道路渋滞情報等)を取得し、この取得したVICS情報に基づいて目的地に到着する到着予想時刻を演算する。
【0025】
ステップS15においては、電子制御ユニット21は、今後、車両10のワイパー13を作動させる必要があるか否かを判定する。具体的にステップS15の判定処理を説明すると、電子制御ユニット21は、前記ステップS13にて取得した気象情報に含まれる天気予報情報によって表される今後の(将来の)天候が雨又は雪となるか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット21は、天気予報情報によって表される今後の天候が雨又は雪になると予報されていれば「Yes」と判定してステップS16に進む。ステップS16においては、電子制御ユニット21は、前記ステップS15における判定処理に基づき、現在地から目的地まで走行する車両10が今後ワイパー13を使用することを想定する。
【0026】
このとき、電子制御ユニット21は、取得した天気予報情報と目的地までの経路情報とに基づいてワイパー13を作動させる区間を特定するとともに、前記ステップS14にて取得したVICS情報に基づいてこの特定した区間を通過するために必要な時間、すなわち、ワイパー13を作動させる作動時間を演算する。そして、続くステップS17において、電子制御ユニット21は、前記ステップS13にて入力した天気予報情報から雨又は雪となった場合における予想降水量(予想降雪量)を取得し、同取得した予想降水量(予想降雪量)におけるワイパー13の作動モード(間欠,Low,High)を選択して、ステップS18に進む。
【0027】
ステップS18においては、電子制御ユニット21は、記憶ユニット25からワイパー13の単位時間当たりの消費電力量データを取得し、前記ステップS17にて選択したワイパー13の作動モードにより、前記ステップS16にて演算した作動時間だけワイパー13を作動させたときの電力消費量Wを演算する。そして、ワイパー13の作動に伴う電力消費量Wを演算すると、電子制御ユニット21は、ステップS20に進む。
【0028】
一方、前記ステップS15における判定処理において、天気予報情報によって表される今後の天気が雨又は雪にならないと予報されていれば、電子制御ユニット21は「No」と判定してステップS19に進む。ステップS19においては、電子制御ユニット21は、今後、天候が雨又は雪とはならずワイパー13の使用が予想されないため、電力消費量Wを「0」とする。そして、電子制御ユニット21は、電力消費量Wを「0」にすると、ステップS20に進む。
【0029】
ステップS20においては、電子制御ユニット21は、今後、車両10のライト(フォグライトを含む)14を点灯させる必要があるか否かを判定する。具体的にステップS20の判定処理を説明すると、電子制御ユニット21は、前記ステップS13にて取得した気象情報に含まれる日没情報によって表される日没時刻と前記ステップS14にて演算した到着予想時刻とを比較し、日没時刻よりも目的地に到着するまでの到着予想時刻の方が遅いか否かを判定する。また、電子制御ユニット21は、前記ステップS13にて取得した気象情報に含まれる濃霧予報により今後(将来)濃霧が発生するか否かを判定する。そして、電子制御ユニット21は、日没時刻よりも到着予想時刻の方が遅い、あるいは、今後濃霧が発生すると予報されていれば、「Yes」と判定してステップS21に進む。
【0030】
ステップS21においては、電子制御ユニット21は、前記ステップS20における判定処理に基づき、現在地から目的地まで走行する車両10が今後ライト14を使用することを想定する。このとき、電子制御ユニット21は、日没時刻が近付きライト14を点灯させる必要がある時刻を特定し、この時刻と到着予想時刻とに基づいてライト14を点灯して走行する点灯時間を演算したり、取得した濃霧予報と経路情報とに基づいてフォグライト14を点灯させる区間を特定するとともに、前記ステップS14にて取得したVICS情報に基づいてこの特定した区間を通過するために必要な時間、すなわち、フォグライト14を点灯させる点灯時間を演算する。そして、続くステップS22において、電子制御ユニット21は、記憶ユニット25からライト(フォグライト)14の単位時間当たりの消費電力量データを取得し、前記ステップS21にて演算した点灯時間だけライト(フォグライト)14を点灯させたときの電力消費量Wを演算し、ステップS24に進む。
【0031】
一方、前記ステップS20における判定処理において、日没時刻よりも到着予想時刻の方が早い、あるいは、今後濃霧が発生することがないと予報されていれば、電子制御ユニット21は「No」と判定してステップS23に進む。ステップS23においては、電子制御ユニット21は、ライト(フォグライト)14の使用が予想されないため、電力消費量Wを「0」とする。そして、電子制御ユニット21は、電力消費量Wを「0」にすると、ステップS24に進む。
【0032】
ステップS24においては、電子制御ユニット21は、今後、車両10のエアコン15を作動させる必要があるか否かを判定する。具体的にステップS24の判定処理を説明すると、電子制御ユニット21は、前記ステップS13にて取得した気象情報に含まれている気温予報情報によって表される今後の(将来の)気温が上昇するか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット21は、気温予報情報によって表される今後の気温が上昇すると予報されていれば「Yes」と判定してステップS25に進む。ステップS25においては、電子制御ユニット21は、前記ステップS24の判定処理に基づき、現在地から目的地まで走行する車両10が今後エアコン15を使用することを想定する。
【0033】
このとき、電子制御ユニット21は、取得した気温予報情報と経路情報とに基づいて気温の上昇によりエアコン15を作動させる区間を特定するとともに、前記ステップS14にて取得したVICS情報に基づいてこの特定した区間を通過するために必要な時間、すなわち、エアコン15を作動させる作動時間を演算する。また、電子制御ユニット21は、取得した気温予報情報に基づき、エアコン15の設定風量を選択する。そして、続くステップS26において、電子制御ユニット21は、記憶ユニット25からエアコン15の単位時間当たりの消費電力量データを取得し、エアコン15を前記ステップS25にて演算した作動時間だけ選択した設定風量で作動させたときの電力消費量WACを演算し、ステップS28に進む。
【0034】
一方、前記ステップS24における判定処理において、今後の気温が上昇しないと予報されていれば、電子制御ユニット21は「No」と判定してステップS27に進む。ステップS27においては、電子制御ユニット21は、エアコン15の使用が予想されないため、電力消費量WACを「0」とする。そして、電子制御ユニット21は、電力消費量WACを「0」にすると、ステップS28に進む。
【0035】
ステップS28においては、電子制御ユニット21は、今後、車両10のデフォッガ16を作動させる必要があるか否かを判定する。具体的にステップS28の判定処理を説明すると、電子制御ユニット21は、前記ステップS13にて取得した気象情報に含まれている湿度予報情報によって表される今後の(将来の)湿度が上昇するか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット21は、湿度予報情報によって表される今後の湿度が上昇すると予報されていれば「Yes」と判定してステップS29に進む。
【0036】
ステップS29においては、電子制御ユニット21は、前記ステップS28の判定処理に基づき、現在地から目的地まで走行する車両10が今後デフォッガ16を使用することを想定する。このとき、電子制御ユニット21は、取得した湿度予報情報と経路情報とに基づいて湿度の上昇によりデフォッガ16を作動させる区間を特定するとともに、前記ステップS14にて取得したVICS情報に基づいてこの特定した区間を通過するために必要な時間、すなわち、デフォッガ16を作動させる作動時間を演算する。そして、続くステップS30において、電子制御ユニット21は、記憶ユニット25からデフォッガ16の単位時間当たりの消費電力量データを取得し、前記ステップS29にて演算した作動時間だけデフォッガ16を作動させたときの電力消費量Wを演算し、ステップS32に進む。
【0037】
一方、前記ステップS28における判定処理において、今後、湿度が上昇しないと予報されていれば、電子制御ユニット21は「No」と判定してステップS31に進む。ステップS31においては、電子制御ユニット21は、デフォッガ16の使用が予想されないため、電力消費量Wを「0」とする。そして、電子制御ユニット21は、電力消費量Wを「0」にすると、ステップS32に進む。
【0038】
ステップS32においては、電子制御ユニット21は、上述したワイパー13、ライト(フォグライト)14、エアコン15及びデフォッガ16、すなわち、各種補機類を作動させる(使用する)ときのトータルの電力消費量Wを演算する。すなわち、電子制御ユニット21は、前記ステップS18,19,22,23,26,27,30,31の各ステップ処理によって演算された電力消費量W、電力消費量W、電力消費量WAC及び電力消費量Wをそれぞれ加算することにより、電力消費量Wを演算する。そして、電子制御ユニット21は、補機類を作動させるときの電力消費量Wを演算すると、ステップS33に進む。
【0039】
ステップS33においては、電子制御ユニット21は、充電状態検出センサ18から現在のバッテリ11のSOC(バッテリ残量)を取得する。また、電子制御ユニット21は、車両の電動モータ12を駆動させて、目的地まで走行するために必要な電力消費量Wを演算する。なお、電力消費量Wの演算については、周知の演算方法を採用することができるため、その説明を省略する。そして、電子制御ユニット21は、SOC(バッテリ残量)を取得するとともに、車両を走行させるために必要な電力消費量Wを演算すると、ステップS34に進む。
【0040】
ステップS34においては、電子制御ユニット21は、現在のバッテリ11のSOC(バッテリ残量)に対して、前記ステップS32にて演算した各種補機類を作動させるときのトータルの電力消費量W及び前記ステップS33にて演算した走行に必要な電力消費量Wを消費する場合に、車両10が継続して走行することができる航続可能距離Lを演算する。そして、電子制御ユニット21は、続くステップS35にて、前記ステップS34にて演算した航続可能距離Lを液晶表示ユニット23上に表示させて、ユーザに提示する。
【0041】
また、電子制御ユニット21は、ステップS36にて、前記ステップS34にて演算した航続可能距離Lと、現在地から目的地までの走行距離L1とを比較し、走行距離L1が航続可能距離Lよりも大きいか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット21は、走行距離L1が航続可能距離Lよりも大きければ、現在、バッテリ11に充電されているSOC(バッテリ残量)では車両10が目的地まで走行して到着することができないため、「Yes」と判定してステップS37に進む。一方、走行距離L1が航続可能距離L以下であれば、現在、バッテリ11に充電されているSOC(バッテリ残量)で車両10が目的地まで走行して到着することができるため、電子制御ユニット21は「No」と判定してステップS38に進み、情報提示プログラムの実行を一旦終了する。
【0042】
ステップS37においては、電子制御ユニット21は、現在、設定されている目的地までの経路に対して、現在地から目的地までの間にて、例えば、現在の探索されている経路に沿って設けられている最寄りの充電スタンドを経由する経路を再探索するように、ナビゲーションユニット26に要求する。そして、電子制御ユニット21は、液晶表示ユニット13に航続可能距離Lを表示させるとともに、ナビゲーションユニット26によって再探索された経路を表示させる。これにより、電子制御ユニット21は、例えば、ナビゲーションユニット26にユーザを再探索した経路で案内させて最寄りの充電スタンドまで誘導し、車両10のバッテリ11に充電することを促す。これにより、バッテリ11のSOC(バッテリ残量)を十分に確保して車両10を目的地まで走行させることができて、ユーザは確実に目的地に到着することができる。
【0043】
以上の説明からも理解できるように、本実施形態によれば、車両10における将来の外部環境(すなわち、天候、日没、気温、湿度等)に応じた各種補機類の作動を具体的に予測して考慮し、航続可能距離Lを演算することができる。これにより、単に現時点におけるバッテリ11のSOC(バッテリ残量)のみによって演算される航続可能距離に比して極めて正確に航続可能距離Lを演算してユーザに提示することができる。したがって、ユーザは極めて正確に目的地まで移動可能であるか否かを把握することができ、その結果、SOC(バッテリ残量)が足りずに途中で停止してしまうかも知れないという不安を効果的に解消することができる。
【0044】
また、仮に、航続可能距離Lを演算することによって、バッテリ11のSOC(バッテリ残量)では目的地まで到着できないことが想定される場合には、目的地までの探索経路を速やかに再探索して変更し、最寄りの充電スタンドまで案内(誘導)することができる。これにより、車両10が停止してしまう前にバッテリ11に充電することができるため、これによっても、SOC(バッテリ残量)が足りずに途中で停止してしまうかも知れないというユーザの不安を効果的に解消することができる。
【0045】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、外部環境に合わせて、補機類としてのワイパー13、ライト(フォグライト)14、エアコン15及びデフォッガ16を作動させることを例示的に説明した。しかし、補機類としては、これらに限定されるものではなく、バッテリ11からの電力の供給を受けて作動するものであれば如何なるものをも補機類となり得ることは言うまでもない。この場合には、これらの補機類によって消費される電力を考慮することにより、上記実施形態と同様に、極めて正確に車両10の航続可能距離Lを演算することができてユーザに提示することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…車両、11…バッテリ、12…電動モータ、13…ワイパー、14…ライト(フォグライト)、15…エアコン、16…デフォッガ、17…インレット、18…充電状態検出センサ、20…情報提示装置、21…電子制御ユニット、22…入力ユニット、22a…航続可能距離確認ボタン、23…液晶表示ユニット、24…通信ユニット、25…記憶ユニット、26…ナビゲーションユニット、27…各種センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリの充電状態に応じた航続可能距離をユーザに提示する情報提示装置において、
走行に伴って変化する自車両の将来の外部環境に関する外部環境情報を取得する外部環境情報取得手段と、
前記バッテリに充電されている電力量を表すバッテリ残量を検出するバッテリ残量取得手段と、
前記外部環境情報取得手段によって取得された前記外部環境情報に基づいて、前記バッテリからの電力供給により作動する車載機器の作動状況を予測する車載機器作動予測手段と、
前記車載機器作動予測手段によって予測された前記車載機器の作動に伴う電力消費量と、自車両を走行させるために必要な電力消費量と、前記バッテリ残量取得手段によって取得されたバッテリ残量とに基づいて、自車両の航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、
前記航続可能距離算出手段によって算出された前記航続可能距離をユーザに提示する情報提示手段とを備えたことを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載した情報提示装置において、
前記外部環境情報は、
走行に伴って変化する将来の気象に関する気象情報を少なくとも含むことを特徴とする情報提示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した情報提示装置において、
自車両の現在地からユーザによって設定される目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
前記航続可能距離算出手段によって算出された前記航続可能距離と、前記経路探索手段によって探索された経路に従って前記目的地まで走行するときの走行距離とを比較し、前記航続可能距離が前記走行距離よりも短いときに前記経路探索手段に対して前記バッテリに充電する充電スタンドを経由する経路を再度探索させる経路再探索要求手段とを備え、
前記情報提示手段は、
前記航続可能距離算出手段によって算出された前記航続可能距離に加え、前記経路探索手段によって再探索された経路をユーザに提示することを特徴とする情報提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145469(P2012−145469A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4553(P2011−4553)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】