説明

情報通信システム

【課題】通信インフラが整備されていない環境であっても、車両が目的地へ到着する前に、目的地に関する情報を入手できる情報通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】相互に通信可能なセンタ装置と通信端末とから構成される情報通信システムであって、センタ装置と通信端末が搭載された第1車両とが通信不可能な場合、センタ側制御手段は、第1車両が目的地へ到達するまでの間のいずれかの時点において、第1車両と通信端末が搭載された第2車両とが、車車間通信可能な所定範囲内に位置するか否かを判断し、位置すると判断した場合、第1車両の目的地に関する施設情報を第2車両の通信端末へ送信する。そして、第2車両の車両側制御手段は、センタ装置から受信した施設情報を車車間通信により第1車両の通信端末へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに通信可能な通信端末とセンタ装置とから構成される情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが目的地を指定すると、行楽情報を管理する路側無線装置がその近傍の行楽情報を検索し、車載無線装置へ送信する路車間通信システムが提案されている(例えば、特許文献1)。このように、車載無線装置において目的地に関する情報を入手する場合、常に最新の情報を受信できることが期待される。
【0003】
そのため、特許文献2では、山間部等において、車両通信機と路側通信機との間の通信が確立しない場合、設置された全ての路側通信機から情報を送出する。これにより、情報を送出している路側通信機のうち、いずれかと通信を確立させることができれば、情報を入手することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−246686号公報
【特許文献2】特開2010−50704号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献2において、車両通信機を搭載した車両は、必ずしも路側通信機と通信が確立できる場所を走行するとは限らない。車両がどの場所を走行したとしても、情報を入手できる確実性を高めるためには、多くの路側通信機を設置し、通信インフラを整備する必要がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、通信インフラの整備を簡素化しつつ、通信インフラが整備されていない環境であっても、車両が目的地へ到着する前に、当該目的地に関する情報を入手できる情報通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために成された請求項1に記載の発明は、センタ装置と通信端末が搭載された第1車両とが通信不可能な場合、センタ側制御手段は、第1車両が目的地へ到達するまでの間のいずれかの時点において、第1車両と通信端末が搭載された第2車両とが、車車間通信可能な所定範囲内に位置するか否かを判断し、位置すると判断した場合、第1車両の目的地に関する施設情報を第2車両の通信端末へ送信する。そして、第2車両の車両側制御手段は、センタ装置から受信した施設情報を車車間通信により第1車両の通信端末へ送信する。このように、第1車両がセンタ装置と通信不可能な場合であっても、センタ装置にて特定した第2車両を介して施設情報を送信することで、第1車両は目的地へ到着する前に施設情報を受信することが可能となる。そのため、たとえ通信インフラが整備されていない環境であったとしても、第1車両が施設情報を入手できる可能性を向上させることができる。
【0008】
また、センタ装置にて第2車両を特定した上で施設情報を送信するので、特許文献2のように全ての路側通信機から情報を送信する必要がなく、送信量を抑えることができる。さらに、通信インフラの整備を大規模化しなくとも、簡易に実現可能となる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、第1車両の目的地に関する施設情報が更新されたか否かを判断し、更新されたと判断した場合に、請求項1に記載の各処理を行う。すなわち、目的地に関する施設情報が更新されたときに、第1車両がセンタ装置と通信不可能であったとしても、第2車両を介して施設情報を受信することができる。これにより、更新後の施設情報を受信することが可能となる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、第1車両の現在位置から目的地までの第1経路と、第2車両の現在位置から目的地までの第2経路とを決定し、第1経路における第1車両と、第2経路における第2車両とが、車車間通信可能な所定範囲内に位置するか否かを判断する。このように、各車両の現在位置から目的地までの経路を用いて、車車間通信可能な所定範囲内に位置するか否かを判断することにより、判断精度をより向上させることができる。
【0011】
なお、ここでいう第1車両の現在位置は、例えば請求項4に記載した発明のように、車両情報記憶手段に記憶された第1車両の位置及び目的地に基づいて決定するとよい。一方、第2車両の現在位置も、車両情報記憶手段に記憶された第2車両の位置及び目的地に基づいて決定するとよい。同様に、所定時刻における位置(将来の位置)について、車両情報記憶手段に記憶された車両の位置及び目的地に基づいて、決定してもよい。
【0012】
もし、車両がセンタ装置と通信不可能な場合、車両情報記憶手段に記憶された車両の位置は、当該車両の最新の位置(現在位置)とは乖離している可能性がある。そこで、センタ装置にて、車両情報記憶手段に記憶された車両の位置と目的地の情報から現在位置を決定することで、請求項3にいう判断精度を向上させることに繋がる。なお、車両から定期的もしくは複数回に渡り、センタ装置へ位置情報が送信される場合には、最後に受信した位置情報に基づいて、現在位置の決定を行えばよい。
【0013】
さらに、決定された現在位置を用いて、請求項5に記載した発明のように拡充することもできる。すなわち、請求項5に記載した発明では、第2車両の現在位置において第2車両と通信不可能であると判断した場合であっても、第2経路における所定範囲内に位置するまでのいずれかの地点において第2車両と通信可能であると判断した場合には、第1車両の目的地に関する施設情報を第2車両の通信端末へ送信する。
【0014】
このように、現在、第2車両が一時的にセンタ装置と通信不可能であるとしても、第1車両と車車間通信可能な所定範囲内に位置するより前にセンタ装置と通信可能になると判断できた場合には、当該第2車両の通信端末へ施設情報を送信する。これにより、第1車両へ施設情報を送信する第2車両の候補が多くなり、より一層、第1車両が情報を得られる可能性が高くなる。なお、第2車両への施設情報の送信は、第2車両と通信可能になるのを待ってから行えばよい。
【0015】
ここで、車車間通信可能な所定範囲内の一例として、請求項6に記載した発明のように、第1経路と第2経路とが重複する経路において、第1車両と第2車両とが対向方向に走行するか否かを判断してもよい。これは、例えば、片側一車線の道路であれば、第1車両と第2車両とがすれ違う状況か否かを判断することを意味する。このように、第1車両と近接する第2車両を特定することにより、第1車両が施設情報を入手できる確実性を向上させることができる。
【0016】
また、車車間通信可能な所定範囲内の他の例として、請求項7に記載した発明のように、第1車両と第2車両とが同時刻に所定範囲内に位置するか否かを判断してもよい。このように、時刻を加味して所定範囲内に位置するか否かを判断すれば、すれ違う状況に限定されることなく、第1車両へ施設情報を送信可能な第2車両を特定することができる。例えば、南北方向の道路と東西方向の道路とが交差する交差点において、北上する第1車両と東進する第2車両とが、同時刻に当該交差点付近に位置する場合が考えられる。また、例えば、同一の道路において、同一方向に走行する第1車両と第2車両とが、同時刻に所定範囲内に位置する場合(例えば、一方が先行車、他方が後続車)も考えられる。
【0017】
また、車両の目的地までの走行経路は、請求項8に記載した発明のように、センタ側制御手段が探索してもよいし、請求項9に記載した発明のように、車両側制御手段が探索し、走行経路の情報をセンタ装置へ送信してもよい。センタ側制御手段が走行経路を探索するよう構成すれば、走行経路情報の送信にかかる通信負荷を低減することができる。一方、通信帯域に余裕がある場合は、車両側制御手段が探索した走行経路の情報をセンタ装置へ送信し、この走行経路を使用して所定範囲内に位置するか否かを判断することにより、判断精度を向上させることができる。さらに、請求項10に記載した発明のように、走行経路の情報に時刻情報を付加した走行計画情報をセンタ装置へ送信することにより、判断精度をさらに向上させることができる。
【0018】
また、請求項11に記載の発明では、車両情報記憶手段に記憶された車両の位置と、走行経路又は走行計画情報とを用いて、車両の現在位置を推定する。これにより、車両の現在位置が不明な場合であっても、車両の現在位置から目的地までの経路を決定することが可能となる。
【0019】
また、請求項12に記載の発明では、第1車両の現在位置と目的地の位置とに応じたエリアを設定し、そのエリア内に位置する他車両(第2車両)に対して、所定範囲内に位置するか否かの判断を行う。このように、まず、設定したエリア内に位置する他車両に絞り込んでから、所定範囲内に位置するか否かの判断を行うことにより、センタ装置における処理負荷を軽減することができる。
【0020】
なお、当該エリアとしては、請求項13に記載した発明のように、第1車両の目的地を中心とし、当該第1車両の目的地から現在位置までを半径とする円を設定するとよい。つまり、当該円内に位置する他車両であれば、第1車両が目的地へ到達するまでの間のいずれかの時点において、第1車両と車車間通信可能な所定範囲内に位置する可能性が高いと考えられるからである。これにより、効率よく他車両の絞り込みを行うことができる。
【0021】
また、かかる通信端末は、請求項14に記載した発明のように、報知手段を備え、第2車両から受信した施設情報を報知するよう構成してもよい。これにより、ユーザは、目的地に関する施設情報を知ることができる。
【0022】
また、請求項15に記載の発明では、目的地が変更された場合において、第1車両がセンタ装置と通信不可能な場合、変更後の目的地の情報を、他車両(第3車両)を介してセンタ装置へ送信する。これにより、センタ装置と通信不可能な状況であっても、目的地の変更をセンタ装置へ通知することができる。さらに、その後、請求項1に記載した発明のように、第2車両を介して変更後の目的地に対する施設情報を送信してもらうことにより、センタ装置と通信不可能な状況であっても、いち早く目的地の施設情報を入手することが可能となる。
【0023】
また、請求項16に記載の発明では、第1車両が目的地へ到着した場合において、第1車両がセンタ装置と通信不可能な場合、目的地へ到着した旨の到着情報を、他車両(第3車両)を介してセンタ装置へ送信する。これにより、センタ装置と通信不可能な状況であっても、目的地に到着したことをセンタ装置へ通知することができる。そして、例えば、この通知を受けたことを契機とし、センタ装置から第1車両への施設情報の送信を停止するよう構成すれば、施設情報の送信が不必要に継続されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】情報通信システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】センタ装置の構成を示す概略図である。
【図3】通信端末の構成を示す概略図である。
【図4】施設装置の構成を示す概略図である。
【図5】施設装置とセンタ装置との通信処理を示すフローチャートである。
【図6】通信端末と通信可能エリアとの関係を示す概略図である。
【図7】目的地が設定された際の通信端末とセンタ装置との通信処理を示すフローチャートである。
【図8】センタ装置の記憶装置にて管理する情報の一例を示す図である。
【図9】車両Aの現在位置、目的地、及び案内経路を示す概略図である。
【図10】目的地に関する施設情報が更新された際の通信端末とセンタ装置との通信処理を示すフローチャートである。
【図11】車両Aの走行経路及び現在位置の確認処理を示すフローチャートである。
【図12】車両Aとすれ違う車両の検索処理を示すフローチャートである。
【図13】目的地に到着した際の通信端末とセンタ装置との通信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施の形態はあくまでも一実施例であって、本発明は必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
(第1の実施形態)
第1の実施形態における情報通信システムの構成について、図1乃至図4を用いて説明する。図1は、センタ装置100、通信端末200a、200b、及び施設装置300から構成される情報通信システムの全体構成を示す概略図である。
【0027】
センタ装置100と通信端末200a、200b、及び、センタ装置100と施設装置300とは、通信網10を介して相互に通信可能である。この通信網10は、例えば携帯電話機のアンテナ塔などを有する無線通信用の基地局(図示せず)と、基地局とセンタ装置100とを有線接続する公衆通信網やインターネットを備えて構成される。施設装置300は有線接続されている基地局を介して、センタ装置100と通信可能である。一方、通信端末200a、200bは、無線により基地局を介してセンタ装置100と通信可能である。また、通信端末200aと通信端末200bとは、狭域通信(DSRC)等により相互に通信可能である。
【0028】
図2は、センタ装置100の構成を示す概略図である。センタ装置100は、通信機101、記憶装置102、ナビゲーション装置103、制御装置105から構成される。
【0029】
通信機101は、各車両に搭載された通信端末100や施設装置300と公衆通信網を介して通信を行う。
【0030】
記憶装置102は、通信機101で受信した各種データを記憶する。例えば、車両に搭載された通信端末200から送信される目的地や、施設装置300から送信される施設情報を記憶する。揮発性のRAM等で構成されてもよいが、不揮発性のHDD等で構成されるのが望ましい。この記憶装置102が、本発明の施設情報記憶手段、車両情報記憶手段に相当する。
【0031】
ナビゲーション装置103は、地図を構成するリンクやノードに関する情報が格納された地図DB104を有し、現在位置から設定された目的地までの経路探索を行う。地図DB104には、基地局の位置とともに、公衆通信網に接続できるエリアの情報が記憶されている。この地図DB104が、本発明のセンタ側地図情報記憶手段に相当する。
【0032】
制御装置105は、センタ装置100全体を制御するコンピュータである。図示しないCPU、各機能を実現するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成される。そして、CPUがROMに記憶されるプログラムを実行することにより、各機能が実現される。この制御装置105が、本発明のセンタ側制御手段に相当する。
【0033】
図3は、車両に搭載される通信端末200の構成を示す概略図である。通信端末200は、通信機201、狭域通信機202、記憶装置203、ナビゲーション装置204、制御装置205から構成される。
【0034】
通信機201は、車両外部のセンタ装置100と、公衆通信網を介して無線により通信を行う。狭域通信機202は、他車両に搭載された通信端末200と相互に狭域通信を行う。
【0035】
記憶装置203は、例えば、揮発性のRAM又は不揮発性のHDDで構成され、通信機201や狭域通信機202で受信した施設情報等のデータを記憶する。
【0036】
ナビゲーション装置204は、入力装置205、表示装置206、地図DB207を含み、図示しないGPS受信機によりGPS衛星から受信した信号から自車両の現在位置を計算するとともに、現在位置から設定された目的地までの経路探索を行う。入力装置205は、例えばタッチパネルであり、ユーザが目的地等を入力する。表示装置206は、例えば液晶ディスプレイであり、地図とともに探索された走行経路を表示したり、目的地に関する施設情報を表示したりする。地図DB207には、地図を構成するリンクやノードに関する情報が格納される。ここで、表示装置206が本発明の報知手段に相当し、地図DB207が本発明の車両側地図情報記憶手段に相当する。
【0037】
制御装置205は、通信端末200全体を制御するコンピュータである。図示しないCPU、各機能を実現するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成される。CPUが、ROMに記憶されるプログラムを実行することにより、データの送受信制御、記憶装置203への記録制御等、各機能が実現される。この制御装置205が、本発明の車両側制御手段に相当する。
【0038】
図4は、宿泊施設や飲食店などに設けられる施設装置300の構成を示す概略図である。施設装置300は、通信機301、記憶装置302、入力装置303、表示装置304、制御装置305から構成される。
【0039】
通信機301は、外部のセンタ装置100と、公衆通信網を介して通信を行う。記憶装置302は、例えば、揮発性のRAM又は不揮発性のHDDで構成され、入力装置303で入力した情報や通信機301で受信したデータを記憶する。
【0040】
入力装置303は、例えばキーボードであり、ユーザが施設に関する情報を入力する。表示装置304は、例えば液晶ディスプレイであり、入力装置303で入力された情報や通信機301で受信したデータを表示する。
【0041】
制御装置305は、施設装置300全体を制御するコンピュータである。入力装置303にてユーザが入力した施設に関する情報を、施設IDとともにセンタ装置100へ送信する。この制御装置305は、図示しないCPU、各機能を実現するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成される。CPUが、ROMに記憶されるプログラムを実行することにより、各機能が実現される。
【0042】
続いて、施設装置300とセンタ装置100との通信処理について、図5を用いて説明する。施設装置300とセンタ装置100とは、基地局を介して有線接続された公衆通信網やインターネットにより相互に通信する。
【0043】
図5は、施設に関する情報をセンタ装置100へ送信する際のフローチャートである。ステップS10において、施設装置300の入力装置303は、ユーザから施設に関する情報の入力を受ける。施設名称、位置(経度、緯度)、住所、電話番号のほか、駐車場や建物内の混雑状況、予約状況、キャンペーン情報、割引情報などが入力される。また、過去に入力した情報の更新や削除が行われてもよい。次に、ステップS11において、制御装置305は、入力装置303にて入力された情報を、施設IDとともにセンタ装置100へ送信する。施設IDは、施設ごとの識別情報であり、予め、センタ装置から取得しておけばよい。
【0044】
センタ装置100では、ステップS12にて、通信機101が施設装置300から送信された施設に関する情報を受信し、ステップS13にて、記憶装置102にその情報を施設ごとに記憶する。
【0045】
このように、センタ装置100は、宿泊施設や飲食店などに設けられる施設装置300から施設に関する情報を受信し、記憶装置302に各施設の情報を記憶する。
【0046】
なお、施設とは宿泊施設や飲食店に限られるものではなく、公園、駅、高速道路のインターチェンジなどでもよい。また、施設装置300は、当該施設に設けられる必要はなく、例えば公園に関する情報を、市役所に設けた施設装置300から送信するよう構成してもよい。
【0047】
続いて、通信端末200を搭載した及びセンタ装置100における通信処理について、図6乃至図13を用いて説明する。
【0048】
図6は、通信端末200a〜200cをそれぞれ搭載した車両A〜Cと、センタ装置100と通信可能なエリアとの関係を示す図である。図6において、斜線で示すエリアR1が、センタ装置と通信可能なエリアである。
【0049】
通信端末200a〜200cとセンタ装置100とは、無線通信用の基地局(図示せず)を介した公衆通信網により、通信することができる。センタ装置100と基地局、飲食店(目的地X)に設置された施設端末300と基地局とは有線接続されている。一方、通信端末200a〜200cと基地局とは無線により公衆通信網に接続する。従って、公衆通信網に接続できる通信エリアR1内(通信圏内)に位置する車両A及び車両Bは、センタ装置100と通信可能である。
【0050】
一方、通信エリアR1外(通信圏外)に位置する車両Cは、センタ装置100と通信不可能な状態となる。同様に、例えば、車両Aが目的地Xへ向かうため、通信エリアR1外に移動した場合には、センタ装置100と通信不可能な状態となる。
【0051】
以下、通信エリアR1内に位置する車両Aが、目的地X(飲食店)へ向かう場合の通信処理について、図7を用いて説明する。
【0052】
図7は、ユーザにより目的地Xが設定された際の通信処理を示すフローチャートである。このとき、車両Aは、図6に示すように、通信エリアR1内に位置する。
【0053】
ステップS20で、車両Aの通信端末200aにおいて、入力装置205によりユーザが目的地Xを設定する。そして、ナビゲーション装置204は、地図DB207を参照し、現在位置から目的地Xまでの走行経路を探索する。ステップS21で、制御装置208は、車両識別情報とともに、ナビゲーション装置204から取得した現在位置及び目的地Xをセンタ装置100へ送信し、目的地Xに関する情報を問合せる。車両識別情報とは、例えば登録ナンバーでもよいし、予めセンタ装置100から車両IDを取得しておいてもよい。
【0054】
ここで、ドライバは入力装置205にて、出発時刻を指定してもよい。ナビゲーション装置204は、指定された出発時刻、あるいは現在時刻から、目的地Xへの到着予想時刻を計算する。例えば、走行経路が一般道であれば平均時速30km、高速道路であれば平均時速80kmと仮定し、走行経路の距離に応じた所要時間を求めることで、到着時刻を予想する。このように、制御装置208は、現在位置及び目的地とともに、ユーザが指定した出発時刻を送信してもよい。
【0055】
また、現在位置及び目的地とともに、リンクやノードを含む走行経路情報を送信してもよい。さらに、走行経路に対し、どこを何時に通過するかの時刻情報を付加し、走行計画情報として送信してもよい。例えば、走行経路情報に含まれる所定のノードに、そのノードを何時に通過するかの通過時刻を付加し、走行計画情報とする。
【0056】
ステップS22において、センタ装置100の制御装置105は、通信機101により受信した情報を記憶装置102へ記憶し、車両識別情報ごとに管理する。図8は、記憶装置102にて管理する情報の一例である。このように、各車両の車両ID(車両識別情報)と共に、出発地、目的地、走行経路情報又は走行計画情報、出発時刻、及び到着時刻を対応付けて記憶している。ここで、通信端末200aから出発時刻が送信されなかった場合、代替として現在時刻を記憶しておく。
【0057】
ステップS23で、制御装置105は、受信した目的地Xの施設に関する情報が記憶装置102にあるかどうか、検索する。目的地Xの施設に関する情報がなかった場合(ステップS23:N)、ステップS24において、施設情報がない旨を車両Aの通信端末200aへ送信する。一方、施設情報がある場合(ステップS23:Y)、ステップS25において、その施設情報を車両Aの通信端末200aへ送信する。目的地Xに対応する施設が複数ある場合は、すべての施設情報を送信すればよい。
【0058】
センタ装置100から目的地Xの施設に関する情報を受信した通信端末200aは、ステップS26において、その情報を表示装置206に表示する。そして、ステップS27で、ナビゲーション装置204は、経路案内を開始する。なお、ナビゲーション装置204は、センタ装置100からの通知(ステップS24、S25)を受ける前に、経路案内を開始してもよい。
【0059】
ここで、制御装置208において、予め公衆通信網を構成する基地局からの電波の強さを検出し、安定して通信可能な所定閾値以上である場合にのみ、ステップS21の問合せ処理を行ってもよい。また、センタ装置100からの通知(ステップS25)を所定時間経過しても受信できなかった場合、再度ステップS21の問合せ処理を行うよう構成してもよい。そして、この問合せ処理を所定回数繰り返してもセンタ装置100からの通知が受信できない場合、処理を中止する。
【0060】
なお、通信端末200aは、現在位置を定期的にセンタ装置100へ送信するよう構成してもよい。そして、センタ装置100の制御装置105は、受信した現在位置の変化から、今後の走行経路を予測し、その延長線上の施設を目的地と仮定し、記憶装置102にて管理してもよい。これにより、特に目的地を設定せず走行するユーザに対しても、仮定した目的地の施設情報を提供することが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。また、ユーザが目的地を急遽変更した場合など、通信エリアR1内にて、車両が当初の案内経路Laを急に逸脱してしまった場合にも、柔軟に対応することができるようになる。
【0061】
図9は、目的地Xに向かう途中の車両Aの現在位置及び案内経路Laを示す図である。図9に示すように、このとき、車両Aは通信エリアR1外に位置する。
【0062】
図10は、目的地Xに関する情報が更新された際の通信処理を示すフローチャートである。施設装置300において、ユーザが施設に関する情報を更新すると、その情報はセンタ装置100へ送信される(図5参照)。ステップS30において、センタ装置100の制御装置105は、施設に関する情報が更新されたか否かを判断する。施設装置300から施設情報を受信したことを情報が更新されたと判断してもよいし、受信した施設情報と記憶装置102に記憶されている施設情報とに差異があった場合に情報が更新されたと判断してもよい。
【0063】
施設に関する情報が更新されたと判断すると(ステップS30:Y)、記憶装置102に記憶されている情報を参照し、その施設を目的地としている車両を検索する。例えば、目的地Xの施設に関する情報が更新された場合、車両Aが検索される。そして、ステップS31で、この施設に関する最新情報を、車両Aの通信端末200aへ送信する。
【0064】
車両Aの通信端末200aは、常時受信待ちの状態である。ステップS32で、センタ装置100から施設情報を受信した場合(ステップS32:Y)、ステップS33で、その情報を表示装置205に表示するとともに、情報を受信した旨をセンタ装置100へ送信する。
【0065】
センタ装置100は、ステップS31で車両Aへ施設の最新情報を送信した後、車両Aからの応答を待つ。ステップS34において、所定時間経過しても車両Aからの送信がなかった場合(ステップS34:N)、制御装置105は、車両Aの現在位置が通信エリアR1外、つまり基地局等のインフラが整備されていない場所に位置するとみなす。そして、ステップS35、S36へ進み、車両Aの案内経路及び現在位置の確認処理、及び車両Aとすれ違う車両の検索処理を行う。
【0066】
以下、車両Aの案内経路及び現在位置の確認処理、及び車両Aとすれ違う車両の検索処理について、図11及び図12を用いて説明する。
【0067】
図11は、センタ装置100における車両Aの走行経路及び現在位置の確認処理を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS40において、制御装置105は、記憶装置102に車両Aの走行計画情報が記憶されているか否か判断する。走行計画情報が記憶されている場合(ステップS40:Y)、ステップS41において、走行計画情報と現在時刻とから、走行経路のうち車両Aが現在どこに位置するかを判断する。すなわち、走行計画情報には、走行経路のうちどこを何時に通過するかの通過時刻が含まれているため、現在時刻から車両Aの現在位置を決定することができる。現在時刻が通過時刻に合致しなくとも、現在時刻前後の通過時刻及び通過地点から、現在位置を推定すればよい。そして、ステップS42において、車両Aの走行計画情報から、車両Aの現在位置から目的地Xまでの走行経路を抽出する。
【0069】
一方、走行計画情報が記憶されていない場合(ステップS40:N)、ステップS43において、記憶装置102に記憶された車両Aの出発時刻から、現在時刻までの経過時間を計算する。車両Aの出発時刻は、車両Aの通信端末200aから送信された時刻、あるいは、その代替としてセンタ装置100が記憶した目的地設定時の時刻である。
【0070】
ステップS44では、記憶装置102に車両Aの走行経路情報が記憶されているか否か判断する。走行経路情報が記憶されていない場合(ステップS44:N)、ステップS45において、ナビゲーション装置103は、車両Aの出発地から目的地までの走行経路を探索し、記憶装置102に記憶する。
【0071】
そして、ステップS46において、経過時間と走行経路とから、車両Aの現在位置を推定する。例えば、到着予想時刻の算出と同様、平均時速を仮定して移動距離を求め、走行経路における現在位置を推定する。また、プローブカーやVICSによる渋滞情報を取得し、出発地からの走行経路における渋滞状況を考慮して現在位置を推定してもよい。そして、ステップS47で、走行経路のうち、車両Aの現在位置から目的地Xまでの走行経路を抽出する。
【0072】
ステップS48で、制御装置105は、推定した車両Aの現在位置及び目的地Xまでの走行経路を記憶装置102に記憶する。
【0073】
ここで、制御装置105は、地図DB104に記憶された公衆通信網に接続できるエリアの情報を参照し、車両Aの現在位置から目的地Xまでの走行経路の一部が通信エリアR1内に含まれる場合、車両Aとすれ違う車両の検索処理(ステップS36)は行わない。車両Aが通信エリアR1内に移動した時点で、目的地Xの施設に関する最新情報を車両Aは受信可能となるからである。
【0074】
なお、上記では目的地設定を行った時点の車両の現在位置及び目的地に基づいて、通信エリアR1外である車両Aの現在位置を推定した。しかしながら、上記構成に限られず、車両Aが定期的にセンタ装置100へ位置情報を送信するよう構成してもよい。そして、車両Aが通信エリアR1内からR1外へ移動する直前にセンタ装置100へ送信した車両Aの位置、そのときの時刻、及び目的地情報に基づいて、車両A(通信エリアR1外)の現在位置を推定するようにしてもよい。すなわち、車両Aと通信不可能な場合は、記憶装置102に記憶された車両Aの位置情報のうち、最新の位置情報に基づいて、車両Aの現在位置を推定するのである。これにより、より精度の高い現在位置の推定が可能となる。
【0075】
また、ユーザが目的地を特に設定しない場合であっても、上述したように、車両Aから受信した位置情報の変化から、センタ装置100にて目的地を仮定すれば、本処理を適用することが可能である。
【0076】
図12は、センタ装置100における車両Aとすれ違う車両の検索処理を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS50で、制御装置105は、地図DB103から目的地Xの位置情報(例えば、経度と緯度)を取得する。ステップS51で、目的地Xの位置と車両Aの現在位置との直線距離rを算出する。そして、ステップS52で、図9に点線で示すように、目的地Xの位置を中心とし、直線距離rを半径とする円R2を描く。
【0078】
ステップS53で、円R2内に位置する他車両がいるか否か判断する。他車両の現在位置は、記憶装置102に記憶された他車両の情報(図8参照)を用いて判断する。車両Aの現在位置の確認処理(図11参照)と同様の処理により、他車両の現在位置を推定する。そして、その他車両の現在位置が円R2内に位置するか否かを判断する。
【0079】
円R2内に位置する他車両がいる場合(ステップS53:Y)、ステップS54において、当該他車両から車両Aまでの直線距離を計算する。円R2内に位置する他車両が複数いる場合、車両Aからの直線距離が短い他車両から順に、以降の処理を行う。
【0080】
ステップS55で、車両Aからの直線距離が最も短い他車両を選定し、ステップS56において、当該他車両の走行経路と車両Aの走行経路とを比較し、当該他車両と車両Aとがすれ違うか否かを判断する。他車両の走行経路と車両Aの走行経路とが重複し、対向方向に走行する場合に、すれ違うと判断する。他車両の走行経路は、図8に示す他車両の情報を用いて、車両Aの走行経路の確認処理(図11参照)と同様の処理により、他車両の走行経路を推定する。
【0081】
なお、他車両が常にセンタ装置100と通信可能である場合には、当該他車両に対する現在位置の推定を行わないよう構成することもできる。すなわち、常に通信可能な状況であれば、車両から常に最新の現在位置情報をセンタ装置100へ送信できるからである。従って、当該他車両からセンタ装置100へ送信された最新の位置情報を、当該他車両の現在位置として決定する。そして、その現在位置情報を用いて、当該他車両の走行経路を推定すればよい。
【0082】
ただし、両車両の走行経路からすれ違うと判断した場合であっても、すれ違う経路を通過する時刻によっては、実際にはすれ違わない可能性がある。そのため、車両A及び車両Bについて、すれ違う経路上の所定地点を通過する時刻を計算し、同時刻に両車両がすれ違う地点があるか否か判断する。同時刻にすれ違う地点がある場合、車両Aとすれ違う車両であると判断する。なお、両車両の走行経路のうち、大部分がすれ違う経路となる場合(例えば、同じ県道N号線を対向方向から走行する場合)には、すれ違う時刻の計算は省略してもよい。
【0083】
車両Aとすれ違わない車両であると判断された場合(ステップS56:N)、ステップS57で別の車両、すなわち、円R2内に位置する他車両のうち車両Aとの直線距離が次に短い他車両を選定し、ステップS56へ戻る。
【0084】
一方、車両Aとすれ違う車両であると判断された場合(ステップS56:Y)、ステップS58において、当該他車両を通知車両として決定する。例えば、図9の例では、車両Bは円R2内に位置しており、車両Bの走行経路Lbと車両Aの走行経路Laとが重複することから、車両Aが目的地Xへ到達する前に車両Bは車両Aとすれ違うと考えられる。よって、車両Bを通知車両として決定する。制御装置105は、車両Aと車両Bのすれ違う時刻を計算し、すれ違う地点とともに記憶装置102へ記憶しておく。
【0085】
ここで、通知車両として決定する車両は、現在位置もしくは車両Aとすれ違う地点までに、センタ装置100から、目的地Xの施設の最新情報を受信できることが必要である。そのため、例えば、車両Bへ情報を送信してから、所定時間経過しても車両Bから通知がなかった場合、車両Bが通信エリアR1外に位置すると判断し、別の車両を選定する(ステップS57)。具体的には、円R2内に位置する他車両のうち次に車両Aとの直線距離が短い他車両を選定し、車両Aとすれ違うか否か判断する(ステップS56)。なお、地図DB104に記憶された公衆通信網に接続できるエリアの情報を参照し、現在位置もしくは車両Aとすれ違う地点までの走行経路すべてが、通信エリアR1外となる他車両は、予め通知車両から除外するよう構成してもよい。
【0086】
換言すれば、現在位置(通信エリアR1外)においてはセンタ装置100と通信不可能であったとしても、車両Aとすれ違う地点までにセンタ装置100と通信可能となる他車両であれば、通知車両の候補に含めるのである。なお、他車両がどの時点で通信可能となるかは、当該他車両の走行計画情報を参照して判断し、その時点で車両Aの目的地に関する施設情報を車両Bへ送信すればよい。
【0087】
このように、現在、センタ装置100と通信不可能な場所に位置する他車両でも、車両Aとすれ違う可能性があり、かつ、すれ違う地点より前に通信可能な場所へ移動する他車両であれば通知車両の候補に含めることができる。そのため、通知車両の候補が増え、車両Aが情報を取得できる可能性が一層高まる。
【0088】
図10のフローチャートに戻り、ステップS37において、センタ装置100の制御装置105は、通知車両として決定した車両Bに対し、目的地Xの施設に関する最新情報を送信し、車両Aへの情報伝達を依頼する。車両Bの制御装置105は、依頼を受信した旨をセンタ装置100へ送信する。
【0089】
両車両の移動後、ステップS38において、車両Bの通信端末200bは、車両Aとすれ違うとき、狭域通信機202による車車間通信を利用し、目的地Xの施設に関する最新情報を車両Aへ送信する。
【0090】
このように、センタ装置100は、車両Aが目的地Xに到着するまで、図10に示すフローチャートの処理を繰り返す。
【0091】
ここで、車車間通信により車両Bから車両Aへの情報伝達が成功したことを、車両A又は車両Bの制御装置105からセンタ装置100へ送信してもよい。例えば、車両Aへ情報伝達後、車両Bの制御装置105は、一定時間ごとに、情報伝達が成功した旨の情報送信を繰り返す。車両Bが通信エリアR1内に移動すると、その情報がセンタ装置100へ送信される。
【0092】
センタ装置100は、車両Aと車両Bとがすれ違う時刻になっても、情報伝達が成功した旨の通知がなかった場合、情報伝達が失敗したとみなす。そして、図11に示すフローチャートのように、別の車両を選定する(ステップS57)。なお、車両Bがセンタ装置100から情報伝達を依頼されてから一定時間経過しても、車両Aへの情報伝達を実行できなかった場合、車両Bの制御装置105から、情報伝達が失敗した旨をセンタ装置100へ送信するよう構成してもよい。
【0093】
仮に、該当する通知車両が見つからない場合は、図9に示す円R2を拡大して判断してもよい。また、センタ装置100は、別の方法により車両Aへの情報伝達を試みてもよい。例えば、車両Aと狭域通信可能な路側機(図示せず)のうち、車両Aの走行経路に位置する路側機に対して目的地Xの施設に関する最新情報を送信し、その路側機から車両Aへ情報を送信するよう構成してもよい。
【0094】
次に、車両Aが目的地Xへ到着したときの通信処理について、図13を用いて説明する。
【0095】
図13は、車両Aの通信端末200aとセンタ装置100との通信処理を示すフローチャートである。車両Aが目的地Xへ到着すると(ステップS60)、センタ装置100への通知を開始する(ステップS61s)。ステップS62で、車両Aの制御装置105は、目的地Xへ到着したことをセンタ装置100へ送信する。これを受信したセンタ装置100は、ステップS63において、車両Aの通信端末200aへ受信した旨を通知する。そして、ステップS64において、車両Aに関する情報(図8参照)を記憶装置102から消去する。以降、目的地Xの施設に関する情報が更新されても、車両Aへの送信を行わないためである。
【0096】
車両Aの制御装置105は、センタ装置100からの通知(ステップS63)があるまで、ステップS62の処理を一定時間ごとに繰り返す(ステップS61e)。例えば、図9に示すように、目的地X付近が通信エリアR1外である場合、目的地到着後、一定時間ごとにこの処理を繰り返す。そして、車両Aが通信可能なエリアR1内へ移動し、センタ装置100からの通知があった場合、ステップS65において、保持していた目的地の情報や施設情報を削除する。
【0097】
このように、車両Aとすれ違う通知車両を検索し、その通知車両から車両Aへ施設情報が伝達されるよう構成することにより、センタ装置100と通信できない場合であっても、目的地Xへ到着する前に施設情報を受信することが可能となる。そのため、通信インフラが整備されていない環境であっても、目的地とする施設に関する最新情報を入手することができる。ここで、車両Aとすれ違う車両であれば、例えば数メートルから数十メートルを通信範囲内とする狭域通信であっても、通知車両から車両Aへ確実に施設情報を伝達することができる。
【0098】
また、通信端末200からセンタ装置100へ、走行経路情報や走行計画情報を送信することにより、車両の現在位置を精度よく推定できる。そのため、通知車両を精度よく特定することができ、車両Aが情報を受信できる確実性が向上する。一方、走行経路情報が送信されない場合であっても、センタ装置100において、走行経路を探索するため、通信量を抑えつつ、車両Aへの情報伝達を実現することができる。
【0099】
また、本実施形態では、車両Aから目的地Xまでの直線距離rを半径とする円R2を用いて、通知車両を検索した。これにより、車両Aが目的地Xに到達する前に車両Aとすれ違う可能性のある他車両を、簡便に絞り込むことができる。他車両を絞り込むことにより、車両Aとすれ違うか否かの判断処理の負荷を軽減することができる。
【0100】
なお、円R2の半径は、車両Aから目的地Xまでの直線距離rに対し、所定距離長くてもよいし、短くてもよい。例えば、各車両の目的地情報から、車両Aの周囲に他車両が多く存在すると推定される場合は、直線距離rより所定距離短い半径の円を描けばよい。
【0101】
(実施形態1の変形例1)
上述の実施形態では、目的地Xの位置と車両Aの現在位置との直線距離rを半径とする円R2を用いて、通知車両を決定した。しかしながら、以下のように通知車両を決定してもよい。
【0102】
車両Aの現在位置及び目的地Xまでの走行経路Laと、他車両(車両B)の現在位置及び走行経路Lbとを比較し、どの地点ですれ違うか判断する。すれ違う地点が、車両Aの現在位置に最も近い他車両を通知車両として決定する。
【0103】
これにより、円R2内には位置しないが、車両Aとすれ違う可能性のある通知車両を検索することが可能となる。
【0104】
(実施形態1の変形例2)
上述の実施形態では、車両Aとすれ違う他車両を通知車両として決定した。しかしながら、以下のように通知車両を決定してもよい。
【0105】
車両Aの現在位置及び走行経路Laと、他車両(車両B)の現在位置及び走行経路Lbとを比較し、両車両が、同時刻に車車間通信が可能な所定距離(例えば数メートルから数十メートル)内に位置する場合、当該他車両を通知車両として決定する。まず、走行経路Laと走行経路Lbとが、車車間通信が可能な所定距離内となる区間La’、Lb’を求める。そして、車両Aが区間La’に位置する時刻Taを推定する。同様に、車両Bが区間Lb’に位置する時刻Tbを推定する。時刻TaとTbとが同時刻となる場合、車両Bを通知車両として決定する。
【0106】
このように、すれ違う状況だけでなく、同一の交差点を同時刻に通過する場合や、先行車及び後続車(所定距離内)として同一経路を同一方向へ走行する場合であってもよい。このような他車両が複数検索された場合、両車両が所定距離内となる地点が、車両Aの現在位置に最も近い他車両を通知車両として決定する。
【0107】
これにより、車両Aとすれ違う通知車両が存在しない場合であっても、車両Aへ情報伝達できる可能性のある通知車両を検索することができる。
【0108】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では目的地Xの施設情報が更新された場合について説明した。本実施例では、車両Aの目的地が変更された場合について説明する。
【0109】
目的地が変更された場合も、図7に示す目的地設定時のフローチャートと同様の処理となる。車両Aが通信エリアR1に位置する場合は、車両Aの通信端末200aは、センタ装置100と通信可能であり、すぐにセンタ装置100へ新しい目的地Yを通知する(ステップS21)。センタ装置100の制御装置105は、図8に示す車両Aの目的地情報を更新し(ステップS22)、車両Aへ目的地Yの施設情報を送信する(ステップS25)。
【0110】
しかし、車両Aが通信インフラの整備されていない環境など、通信エリアR1外に位置する場合、直接センタ装置100へ新しい目的地Yを通知することができない。そのため、車両Aは、狭域通信装置202による車車間通信により、すれ違う車両や近接車両に対して、自車両の新しい目的地Yを送信し、センタ装置100への情報伝達を依頼する。この依頼を受けた通知車両は、一定時間ごとに、センタ装置100に対し、車両Aの目的地がYへ変更された旨の情報送信処理を繰り返す。通知車両が通信エリアR1内に移動すると、その情報がセンタ装置100へ送信される。このように、車両Aの目的地が変更されたことを、車両Aの代わりに別の通知車両から、センタ装置100へ通知してもよい。
【0111】
なお、車両Aは、新しい目的地Yとともに、目的地Yまでの走行経路を通知車両へ送信し、センタ装置100への情報伝達を依頼してもよい。また、走行経路のみ変更となった場合は、走行経路のみ通知車両へ送信し、センタ装置100への情報伝達を依頼してもよい。
【0112】
これにより、センタ装置100と通信できない場合であっても、目的地の変更をセンタ装置へ送信することができる。そして、第1の実施形態で説明したように、通知車両から、新しい目的地に対する施設の最新情報を送信してもらうことにより、いち早く目的地の施設情報を入手することができる。
【0113】
(実施形態2の変形例)
上述の実施形態では、目的地が変更された場合における処理について説明した。しかしながら、以下のように変形してもよい。
【0114】
図13に示すフローチャートにおいて、車両Aは目的地Xに到着したことをセンタ装置へ送信する(ステップS62)。このとき、車両Aが通信エリアR1外に位置する場合、センタ装置100に対し、目的地Xへ到着したことを直接通知することができない(図9参照)。そのため、上述の実施例と同様、車両Aの代わりに別の通知車両から、車両Aが目的地へ到着したことをセンタ装置100へ通知する。
【0115】
このように、センタ装置100と通信できない場合であっても、第3車両を介して、目的地に到着したことをセンタ装置へ通知することができる。そして、目的地に到着した旨の通知を受けたセンタ装置は、車両Aに関する情報を記憶装置102から消去する(ステップS64)。これにより、第1車両が目的地に到着したにもかかわらず、目的地Xの施設情報が第1車両へ送信されることを防止する。
【0116】
なお、目的地の施設情報は、任意のタイミングで通信端末200がセンタ装置100へ問合せるよう構成してもよい。例えば、通信端末200の制御装置208において、公衆通信網を構成する基地局からの電波の強さを常時検出し、電波の強さが安定して通信可能な所定閾値以上か、所定閾値未満か判断する。所定閾値以上の場合、通信エリアR1内にいるとみなし、所定閾値未満の場合、通信エリアR1外にいるとみなす。そして、通信エリアR1外を経由し、現在通信エリアR2内にいると判断した場合、センタ装置100へ目的地の施設情報を問合せる。センタ装置100は、記憶している車両Aの目的地の施設情報(最新の施設情報)を送信する。
【0117】
また、本発明は、上述した実施形態の構成要素を適宜組み合わせることが可能であり、その組み合わせによりバリエーションが可能となる。
【符号の説明】
【0118】
10 公衆通信網
100 センタ装置
200 通信端末
300 施設装置
101、201、301 通信機
102、203、302 記憶装置
103、204 ナビゲーション装置
104、207 地図DB
105、208、305 制御装置
202 狭域通信機
205、303 入力装置
206、304 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に関する情報を記憶する施設情報記憶手段と、各車両の位置及び目的地の情報を記憶する車両情報記憶手段と、当該車両情報記憶手段に記憶された目的地の情報に基づき、前記施設情報記憶手段から当該目的地に関する施設情報を検索するセンタ側制御手段と、を備えるセンタ装置と、
前記センタ装置と相互に通信可能であり、かつ、車車間で相互に通信可能であって、車両の位置及び設定された目的地の情報を前記センタ装置へ送信し、当該目的地に関する施設情報を取得する車両側制御手段を備える通信端末と、
から構成される情報通信システムであって、
前記センタ側制御手段は、前記通信端末が搭載された第1車両と通信可能か否かを判断し、通信不可能と判断した場合、
前記車両情報記憶手段に記憶された前記第1車両の位置及び目的地に基づき、前記第1車両が当該第1車両の目的地へ到達するまでの間のいずれかの時点において、前記第1車両と前記通信端末が搭載された第2車両とが、車車間通信可能な所定範囲内に位置するか否かを判断し、位置すると判断した場合、前記第1車両の目的地に関する施設情報を前記第2車両の通信端末へ送信し、
前記第2車両の車両側制御手段は、前記センタ装置から受信した前記第1車両の目的地に関する施設情報を車車間通信により前記第1車両の通信端末へ送信し、
前記第1車両の車両側制御手段は、前記第2車両の通信端末から送信された当該第1車両の目的地に関する施設情報を受信することを特徴とする情報通信システム。
【請求項2】
前記センタ側制御手段は、
前記施設情報記憶手段に記憶された前記第1車両の目的地に関する施設情報が更新されたか否かを判断し、更新されたと判断した場合、前記通信端末が搭載された第1車両と通信可能か否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項3】
前記センタ側制御手段は、
前記車両情報記憶手段に記憶された前記第1車両及び前記第2車両の位置及び目的地に基づき、前記第1車両の現在位置から目的地までの第1経路と、前記第2車両の現在位置から目的地までの第2経路とを決定し、前記第1経路における前記第1車両と、前記第2経路における前記第2車両とが、前記所定範囲内に位置するか否かを判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報通信システム。
【請求項4】
前記センタ側制御手段は、
前記車両情報記憶手段に記憶された前記第1車両の位置及び目的地に基づいて前記第1車両の現在位置を決定し、
前記車両情報記憶手段に記憶された前記第2車両の位置及び目的地に基づいて前記第2車両の現在位置を決定することを特徴とする請求項3に記載の情報通信システム。
【請求項5】
前記センタ側制御手段は、
前記第2車両と通信可能か否かを判断し、
前記第2車両の現在位置において、前記第2車両と通信不可能であると判断した場合であっても、前記第2経路における前記所定範囲内に位置するまでのいずれかの地点において、前記第2車両と通信可能であると判断した場合には、前記第1車両の目的地に関する施設情報を前記第2車両の通信端末へ送信することを特徴とする請求項3又は4に記載の情報通信システム。
【請求項6】
前記センタ側制御手段は、
前記第1経路と前記第2経路とが重複する経路において、前記第1車両と前記第2車両とが対向方向に走行するか否かを判断し、対向方向に走行すると判断した場合、前記第1車両の目的地に関する施設情報を前記第2車両の通信端末へ送信することを特徴とする請求項3乃至5いずれかに記載の情報通信システム。
【請求項7】
前記センタ側制御手段は、
前記第1車両が前記所定範囲内に位置する時刻と、前記第2車両が前記所定範囲内に位置する時刻とを計算し、前記第1車両と前記第2車両とが同時刻に前記所定範囲内に位置するか否かを判断し、位置すると判断した場合、前記第1車両の目的地に関する施設情報を前記第2車両の通信端末へ送信することを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の情報通信システム。
【請求項8】
前記センタ装置は、地図情報を記憶するセンタ側地図情報記憶手段を備え、
前記センタ側制御手段は、前記センタ側地図情報記憶手段に記憶された地図情報を参照して、前記車両情報記憶手段に記憶された車両の位置から目的地までの走行経路を探索し、当該走行経路を用いて、前記第1経路又は/及び前記第2経路を決定することを特徴とする請求項3乃至7いずれかに記載の情報通信システム。
【請求項9】
前記通信端末は、地図情報を記憶する車両側地図情報記憶手段を備え、
前記車両側制御手段は、前記車両側地図情報記憶手段に記憶された地図情報を参照して、車両の現在位置から目的地までの走行経路を探索し、当該走行経路の情報を前記センタ装置へ送信し、
前記センタ側制御手段は、前記車両側制御手段にて探索された当該走行経路を用いて、前記第1経路又は/及び前記第2経路を決定することを特徴とする請求項3乃至8いずれかに記載の情報通信システム。
【請求項10】
前記車両側制御手段は、
前記走行経路の情報に当該走行経路上の所定地点を通過する時刻情報を付加し、走行計画情報として前記センタ装置へ送信することを特徴とする請求項9に記載の情報通信システム。
【請求項11】
前記センタ側制御手段は、
前記車両情報記憶手段に記憶された車両の位置と、前記走行経路又は前記走行計画情報とを用いて、当該車両の現在位置を推定することを特徴とする請求項8乃至10いずれかに記載の情報通信システム。
【請求項12】
前記センタ側制御手段は、
前記第2車両の現在位置が、前記第1車両の現在位置と目的地の位置とに応じて設定したエリア内に含まれるか否かを判断し、含まれると判断した場合、前記第1車両と前記第2車両とが前記所定範囲内に位置するか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の情報通信システム。
【請求項13】
前記センタ側制御手段は、
前記エリアとして、前記第1車両の目的地を中心とし、当該第1車両の目的地から現在位置までを半径とする円を設定することを特徴とする請求項12に記載の情報通信システム。
【請求項14】
前記通信端末は、報知手段を備え、
前記第1車両の車両側制御手段は、
前記第2車両の通信端末から受信した当該第1車両の目的地に関する施設情報を前記報知手段により報知することを特徴とする請求項1乃至13に記載の情報通信システム。
【請求項15】
前記第1車両の車両側制御手段は、前記第1車両の目的地が変更された場合において、
前記センタ装置と通信可能か否かを判断し、通信不可能と判断した場合、変更後の目的地の情報を、車車間通信により前記通信端末が搭載された第3車両へ送信し、
前記第3車両の車両側制御手段は、前記第1車両から受信した変更後の目的地の情報を、前記センタ装置へ送信することを特徴とする請求項1乃至14に記載の情報通信システム。
【請求項16】
前記第1車両の車両側制御手段は、前記第1車両が前記目的地へ到着した場合において、
前記センタ装置と通信可能か否かを判断し、通信不可能と判断した場合、当該第1車両が当該目的地へ到着した旨の到着情報を、車車間通信により前記通信端末が搭載された第3車両へ送信し、
前記第3車両の車両側制御手段は、前記第1車両から受信した前記到着情報を、前記センタ装置へ送信することを特徴とする請求項1乃至15に記載の情報通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−164198(P2012−164198A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25025(P2011−25025)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】