説明

感光性ペーストと該感光性ペーストから形成された焼成物パターンを有するプラズマディスプレイパネル

【課題】 ピンホールや印刷ムラがない印刷が可能な、プラズマディスプレイパネルの高精細な電極を形成するために用いられる感光性ペーストであって、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対する優れた密着性、解像性、焼成性を損なうことなく、焼成皮膜を形成できる感光性ペーストを提供すること。また、このような感光性ペーストから高精細の焼成物パターンを形成したプラズマディスプレイパネルを提供すること。
【解決手段】 (A)有機バインダー、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)無機微粒子、(E)有機溶剤および(F)添加剤を含有する感光性ペーストであって、有機溶剤(E)中に沸点が210℃以上の高沸点有機溶剤を含有し、且つ、添加剤(F)としてアクリル系レベリング剤と共にアミン系、リン系及びカルボン酸系分散剤から選択される1種又は2種以上の分散剤を含有する感光性ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称する)の隔壁パターン、誘電体パターン、電極パターン及びブラックマトリックスパターンの形成に有用な感光性ペーストに関する。さらに詳しくは、安定した印刷性を有するPDP用の上記焼成物パターンを形成するために好適に用いられ得、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対する優れた密着性、解像性、焼成性を損なうことなく、焼成皮膜を形成できる感光性ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDPは、プラズマ放電による発光を利用して映像や情報の表示を行なう平面ディスプレイであり、パネル構造・駆動方法によってDC型とAC型に分類される。PDPによるカラー表示の原理は、リブ(隔壁)によって離間された前面ガラス基板と背面ガラス基板に形成された対向する両電極間のセル空間(放電空間)内でプラズマ放電を生じさせ、各セル空間内に封入されているHe、Xe等のガスの放電により発生する紫外線で背面ガラス基板内面に形成された蛍光体を励起し、3原色の可視光を発生させるものである。各セル空間は、DC型PDPにおいては格子状のリブにより区画され、一方、AC型PDPにおいては基板面に平行に列設されたリブにより区画されるが、いずれにおいてもセル空間の区画は、リブによりなされている。以下、添付図面を参照しながら簡単に説明する。
【0003】
図1は、フルカラー表示の3電極構造の面放電方式AC型PDPの構造例を部分的に示している。前面ガラス基板1の下面には、放電のための透明電極3a、3bと該透明電極のライン抵抗を下げるためのバス電極4a、4bとから成る一対の表示電極2a、2bが所定のピッチで多数列設されている。これらの表示電極2a、2bの上には、電荷を蓄積するための透明誘電体層5(低融点ガラス)が印刷、焼成によって形成され、その上に保護層(MgO)6が蒸着されている。保護層6は、表示電極の保護、放電状態の維持等の役割を有している。一方、背面ガラス基板11の上には、放電空間を区画するストライプ状のリブ(隔壁)12と各放電空間内に配されたアドレス電極(データ電極)13が所定のピッチで多数列設されている。また、各放電空間の内面には、赤(14a)、青(14b)、緑(14c)の3色の蛍光体膜が規則的に配され、フルカラー表示においては、前記のように赤、青、緑の3原色の蛍光体膜14a、14b、14cで1つの画素が構成される。
【0004】
さらに、放電空間を形成する一対の表示電極2a、2bの両側部には、画像のコントラストをさらに高めるために、同様にストライプ状のブラックパターン10,10が形成されている。
【0005】
なお、上記構造のPDPでは、一対の表示電極2aと2bの間に交流のパルス電圧を印加し、同一基板上の電極間で放電させるので、「面放電方式」と呼ばれている。
【0006】
また、上記構造のPDPでは、放電により発生した紫外線が背面基板11の蛍光体膜14a、14b、14cを励起し、発生した可視光を前面基板1の透明電極3a、3bを透して見る構造となっている。
【0007】
このような構造のPDPにおいて、前記バス電極4a、4bやアドレス電極2a、2bの形成は、従来、Cr−Cu−Crの3層を蒸着やスパッタリングにより成膜した後、フォトリソグラフィー法でパターニングが行なわれてきた。
【0008】
しかし、工程数が多く高コストとなるため、最近では、銀ペースト等の導電性ペーストをスクリーン印刷した後、焼成する方法、あるいは150μm以下の線幅とするためには、感光性導電性ペーストを塗布し、パターンマスクを通して露光した後、現像し、次いで焼成する方法が行なわれている。
【0009】
このようにして電極が形成されるPDPの基板においては、近年、大画面化、低コスト化のために大型の一枚の基板から数枚の基板をつくる多面取りが行われている。しかしながら、スクリーン印刷で基板にペーストの塗布を行った場合、ピンホールや印刷ムラが起こりやすいといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ピンホールや印刷ムラがない印刷が可能な、プラズマディスプレイパネルの高精細な電極パターン等を形成するために用いられる感光性ペーストであって、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対する優れた密着性、解像性、焼成性を損なうことなく、焼成皮膜を形成できる感光性ペーストを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、このような感光性ペーストから高精細の焼成物パターンを形成したプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の第一の態様によれば、(A)有機バインダー、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)無機微粒子、(E)有機溶剤および(F)添加剤を含有する感光性ペーストであって、有機溶剤(E)中に沸点が210℃以上の高沸点有機溶剤を含有し、且つ、添加剤(F)としてアクリル系レベリング剤と共にアミン系、リン系及びカルボン酸系分散剤から選択される1種又は2種以上の分散剤を含有する感光性ペーストが提供される。
【0013】
本発明の一形態において、前記有機溶剤(E)中に沸点210℃以上の高沸点有機溶剤としてジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有し、その含有率が感光性ペースト全量に対し5質量%以上である。
【0014】
更に本発明の他の態様によれば、前記感光性ペーストの焼成物から形成された電極を具備するプラズマディスプレイパネルが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感光性ペーストを用いピンホールの少ない塗膜を形成することで、電極の欠損や形状不良のないパネルを安定して作れることから、PDPの量産性、低コスト化にとって極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、前記目的の実現に向け鋭意研究した結果、(A)有機バインダー、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)無機微粒子、(E)有機溶剤、および(F)添加剤を含有する感光性ペーストであって、有機溶剤(E)中に沸点が210℃以上の高沸点有機溶剤を含有し、且つ、添加剤(F)としてアクリル系レベリング剤と共にアミン系、リン系及びカルボン酸系分散剤から選択される1種又は2種以上の分散剤を含有する感光性ペーストは、ガラス基板印刷後の塗膜が均一でピンホールの少ないものとなり、その結果、電極の欠損や形状不良のないパネルを安定して作製できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0017】
本発明の感光性ペーストに用いられる有機バインダー(A)としては、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂およびエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0018】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸クロライドなどにより、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、スチレンなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(7)ポリビニルアルーコールなどの水酸基含有ポリマーに多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(8)ポリビニルアルーコールなどの水酸基含有ポリマーに、テトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられ、特に(1)、(2)、(3)、(6)の樹脂が好適に用いられる。
【0019】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0020】
このカルボキシル基含有樹脂及びカルボキシル基含有感光性樹脂は、単独でまたは混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計で組成物全質量の10〜80質量%の割合で配合することが好ましい。これらのポリマーの配合量が上記範囲よりも少な過ぎる場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になり易く、充分な光硬化性および光硬化深度が得られ難く、選択的露光、現像によるパターニングが困難となる。一方、上記範囲よりも多過ぎると、焼成時のパターンのよれや線幅収縮を生じ易くなるので好ましくない。
【0021】
また、上記カルボキシル基含有樹脂及びカルボキシル基含有感光性樹脂としては、それぞれ重量平均分子量1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜70,000、および酸価50〜250mgKOH/g、かつ、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、その二重結合当量が350〜2,000、より好ましくは400〜1,500のものを好適に用いることができる。上記樹脂の分子量が1,000より低い場合、現像時の皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、100,000よりも高い場合、現像不良を生じ易いので好ましくない。また、酸価が50mgKOH/gより低い場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分で現像不良を生じ易く、一方、250mgKOH/gより高い場合、現像時に皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じるので好ましくない。さらに、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、感光性樹脂の二重結合当量が350よりも小さいと、焼成時に残渣が残り易くなり、一方、2,000よりも大きいと、現像時の作業余裕度が狭く、また光硬化時に高露光量を必要とするので好ましくない。
【0022】
本発明の感光性ペーストに用いられる光重合性モノマー(B)は、組成物の光硬化性の促進及び現像性を向上させるために用いる。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、こはく酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合性モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0023】
このような光重合性モノマー(B)の配合割合は、前記有機バインダー(カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂)(A)100質量部当り、20〜100質量部が適当である。光重合性モノマー(B)の配合量が上記範囲よりも少ない場合、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなり、一方、上記範囲を超えて多量になると、皮膜の深部に比べて表面部の光硬化が早くなるため硬化むらを生じ易くなる。
【0024】
本発明の感光性ペーストに用いられる光重合開始剤(C)の具体的なものとしては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
これらの光重合開始剤(C)の配合割合は、前記有機バインダー(カルボキシル基含有感光性樹脂及び/又はカルボキシル基含有樹脂)(A)100質量部当り、1〜30質量部が適当であり、好ましくは、5〜20質量部である。
【0026】
また、上記のような光重合開始剤(C)は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
【0027】
さらに、より深い光硬化深度を要求される場合、必要に応じて、可視領域でラジカル重合を開始するチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー784等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0028】
さらに、より深い光硬化深度を要求される場合、必要に応じて、熱重合触媒を前記光重合開始剤(C)と併用して用いることができる。この熱重合触媒は、数分から1時間程度にわたって高温におけるエージングにより未硬化の光重合性モノマーを反応させうるものであり、具体的には、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物等があり、好ましくは、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1´−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレイト、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、2−メチル−2,2´−アゾビスプロパンニトリル、2,4−ジメチル−2,2,2´,2´―アゾビスペンタンニトリル、1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2,2´,2´−アゾビス(2−メチルブタナミドオキシム)ジヒドロクロライド等が挙げられ、より好ましいものとしては環境にやさしいノンシアン、ノンハロゲンタイプの1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が挙げられる。
【0029】
本発明の感光性ペーストは無機微粒子(D)を含有し、該無機微粒子(D)として、ガラス微粒子、顔料、導電性金属粉又は金属酸化物、および無機フィラーの1種もしくは2種以上を含有することが好ましい。
無機成分の内容は、所望の焼成物パターンによって異なる。まず、隔壁パターン及び誘電体パターンの形成の場合にはガラス微粒子が用いられ、ブラックマトリックスパターンの場合にはガラス微粒子と黒色顔料が用いられる。一方、電極パターン形成の場合には、導電性粉末(導電性金属粉又は/及び金属酸化物)が用いられるが、後述するように焼成性を向上させるために適量のガラス微粒子を併用することが好ましく、また黒色電極パターンを形成する場合にはさらに黒色顔料も用いられる。その他、所望に応じて骨材(無機フィラー)を感光性ペースト組成物に添加できる。
【0030】
ガラス微粒子としては、ガラス転移点(Tg)300〜500℃、ガラス軟化点(Ts)400〜600℃を有するもの、例えば酸化鉛、酸化ビスマス、又は酸化亜鉛を主成分とするものが好適に使用できる。また、解像度の点からは、平均粒径10μm以下、好ましくは3μm以下のガラス微粒子が好適に用いられる。
【0031】
無機微粒子(D)における黒色顔料は、焼成物パターンに黒色が求められる場合に使用され、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、Al等の1種又は2種類以上の金属酸化物からなる黒色顔料を添加することができる。
【0032】
無機微粒子(D)における導電性金属粉又は金属酸化物としては、比抵抗値が1×103Ω・cm以下の導電性粉末であれば幅広く用いることができ、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの単体とその合金の他、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化ルテニウム(RuO2)などを用いることができる。これらは単独で又は2種以上の混合粉として用いることができる。
【0033】
上記導電性金属粉又は金属酸化物の形状は球状、フレーク状、樹脂状など種々のものを用いることができるが、光特性、分散性を考慮すると、球状のものを用いることが好ましい。また、平均粒径としては、解像度の点から10μm以下のもの、好ましくは5μm以下のものを用いることが適切である。また、導電性金属粉の酸化防止、組成物内での分散性向上、現像性の安定化のため、特にAg、Ni、Alについては脂肪酸による処理を行うことが好ましい。脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0034】
このような導電性金属粉又は金属酸化物の配合量の配合割合としては、前記感光性ペースト全量に対し50〜80質量%が適当である。導電性粉末の配合量が上記範囲よりも少ない場合、かかるペーストから得られる導電体パターンの充分な導電性が得られず、一方、上記範囲を超えて多量になると、基材との密着性が悪くなるので好ましくない。
【0035】
無機微粒子(D)における無機フィラーとしては、アルミナ、シリカ、ジルコン、酸化チタンなど、隔壁等の焼成物パターン内部の緻密性向上に寄与できるものは全て用いることができる。つまり、ガラス成分は焼成時に収縮するが、無機フィラーの配合量によって収縮率と内部緻密性を調整することができる。
【0036】
本発明の感光性ペーストに用いられる有機溶剤(E)としては、特に沸点が210℃以上の高沸点有機溶剤を用いることが好ましく、グリコールエステル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等);グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノトリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールトリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等);アルコール類(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、オクタンジオール、ブチルカルビトール等);炭化水素類(例えば、商品名ソルベッソ♯150、ソルベッソ♯200)等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なかでもジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好適である。なお、沸点の上限は特に限定されるものではないが、乾燥等の観点から300℃以下であることが適当である。
【0037】
このような有機溶剤(E)の好適な配合割合は、ペースト全量に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5質量%以30質量%以下である。5質量%より少ないと印刷時に版離れ不良が生じ、好ましくない。また30質量%を超えて含有するとペーストの粘度が低下し、かつ印刷後の塗膜が乾燥しにくくなるため、好ましくない。
【0038】
さらにジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等、沸点が210℃以上の高沸点有機溶剤以外の溶剤として、適宜の量の有機溶剤を配合することができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テルピネオールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明の感光性ペーストにおいては、光硬化性樹脂組成物に多量の無機粉末を配合した場合、得られる組成物の保存安定性が悪く、ゲル化や流動性の低下により塗布作業性が悪くなる傾向がある。従って、本発明の組成物では、組成物の保存安定性向上のため、無機粉末の成分である金属あるいは酸化物粉末との錯体化あるいは塩形成などの効果のある化合物を、安定剤として添加することができる。安定剤としては、無機酸としてホウ酸、有機酸としては;ギ酸、酢酸、りんご酸、マロン酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸;その他にリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などの酸が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
本発明の感光性ペーストは、添加剤(F)としてアクリル系レベリング剤と共にアミン系、リン系及びカルボン酸系分散剤から選択される1種又は2種以上の分散剤を含有する。
【0041】
アクリル系レベリング剤(消泡剤)として、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートシクロヘキシルアクリレートなどのアクリレートおよびそれに対応するメタクリレートなどを単独で、または2種以上を共重合した共重合物として用いることができる。市場で入手可能な商品では、例えば、モダフロー(サーフェス・スペシャリティーズ社製)、ポリフローNo.75、No.77、No.85、No.90、No.95、ポリフローS(いずれも共栄社化学株式会社製)、BYK−354、−350、−352、−355、−356(いずれもBYK Chemie社製)等を使用することができる。アクリル系レベリング剤は、アクリル系有機バインダーに対し適度な相溶性を有しているため、レベリング剤としてシリコーン系を用いた場合に見られるような相溶性の悪さによるはじき等の不具合を防ぐことができる。
【0042】
分散剤として、市場で入手可能な商品としては、例えば、アミン系分散剤としてDisperbyk(登録商標)−112、−161、−182、−191(いずれもBYK Chemie社製);リン系分散剤としてライトエステルP−1M(大阪有機化学工業株式会社製)、JPA−514(城北化学工業株式会社製)、Disperbyk−110、−111、−142、−180(いずれもBYK Chemie社製)、DA−325(楠本化成株式会社製);カルボン酸系分散剤としてBYK−P105(BYK Chemie社製)、フローレンG−700(共栄社化学株式会社製)等を使用することができる。
【0043】
本発明においてアクリル系レベリング剤及び分散剤の好適な配合割合は、前記有機バインダー(A)100質量部当たり、それぞれ1〜10質量部である。また、アクリル系レベリング剤と分散剤相互の配合比率は1:10〜10:1が好ましい。
【0044】
さらにまた、必要に応じて、公知慣用の酸化防止剤や、保存時の熱的安定性を向上させるための熱重合禁止剤、焼成時における基板との結合成分としての金属酸化物、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物などの微粒子を添加することもできる。
【0045】
本発明の感光性ペーストは、25℃における粘度が、好ましくは50〜200dPa・sであり、より好ましくは80〜180dPa・sである。粘度が50dPa・sより低いと印刷後にダレやはじきを起こし易く、一方200dPa・sより高いと作業性が低下し好ましくない。
【0046】
本発明の感光性ペーストは、スクリーン印刷法で基板、例えばPDPの背面基板となるガラス基板に塗布し、次いで指触乾燥性を得るために熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜120℃で5〜40分程度乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得る。その後、選択的露光、現像、焼成を行って所定のパターンを形成する。
【0047】
露光工程としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光及び非接触露光が可能である。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては50〜1000mJ/cm程度が好ましい。
【0048】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5質量%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられるが、組成物中のカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行なうことが好ましい。
【0049】
焼成工程においては、現像後の基板を空気中又は窒素雰囲気下で約500〜600℃の加熱処理を行い、所望のパターンを形成する。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」は、特に断りのない限りすべて質量部であるものとする。
ガラス粉末としては、Bi23、B23 、ZnO、SiO2、BaOをからなる無鉛ガラス粉末を粉砕し、平均粒径1.6μmとしたものを使用した。
【0051】
表1に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行なった。得られたペースト(組成物例1〜3、比較例1〜5)の粘度(dPa・s)を測定した結果、各々、158、171、165、162、177、150、162、151であった。
【0052】
粘度測定方法
E型粘度計を使用し、25℃にて5回転させたときの粘度を測定した。
【表1】

【0053】
得られた感光性ペーストの印刷特性は以下の評価方法により調べた。結果を後掲の表2に示す。
【0054】
ガラス基板上に、評価用ペーストを300メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布した。その際、スクリーンの版離れを観察した。次いで、遠赤外線乾燥炉にて90℃で15間乾燥して皮膜を形成した。次に、ライトテーブル上で乾燥塗膜を観察し、印刷ムラ、ピンホール、はじきの状態を観察した。
【0055】
版離れの状態を○〜×で評価した。
【0056】
○:版離れ良好
△:印刷時に一部、スクリーンと塗膜がくっつくが印刷後離れる
×:印刷時に一部、スクリーンと塗膜がくっつき、印刷後も剥がれない
印刷ムラがないかどうか○〜×で評価した。
【0057】
○:印刷ムラなし
△:一部あり
×:印刷ムラ大きい
ピンホールがないかどうか○、×で評価した。
【0058】
○:ピンホールがほとんど無い
×:ピンホールが多い
はじきがないかどうか○、×で評価した。
【0059】
○:はじきがほとんど無い
×:はじきが多い
【表2】

【0060】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の組成物に係るペーストは、比較組成物のペーストに比べ印刷性に優れ、均一でピンホールの無い塗膜形成が可能なことから、また沸点210℃以上の高沸点有機溶剤が5質量%以上入ることで版離れが良好となり、大画面で高精細な電極形成に役立つことを示した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】面放電方式のAC型PDPの部分分解斜視図。
【符号の説明】
【0062】
1 前面ガラス基板
2a,2b 表示電極
3a,3b 透明電極
4a,4b バス電極
5 透明誘電体層
6 保護層
10 ブラックパターン
11 背面ガラス基板
12 リブ
13 アドレス電極
14a,14b,14c 蛍光体膜
100 PDP用前面基板100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機バインダー、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)無機微粒子、(E)有機溶剤および(F)添加剤を含有する感光性ペーストであって、有機溶剤(E)中に沸点が210℃以上の高沸点有機溶剤を含有し、且つ、添加剤(F)としてアクリル系レベリング剤と共にアミン系、リン系及びカルボン酸系分散剤から選択される1種又は2種以上の分散剤を含有する感光性ペースト。
【請求項2】
有機溶剤(E)中に含有される沸点210℃以上の高沸点有機溶剤の含有率が、感光性ペースト全量に対し5質量%以上である請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項3】
有機溶剤(E)中に沸点210℃以上の高沸点有機溶剤としてジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する請求項1又は2に記載の感光性ペースト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性ペーストの焼成物から形成された焼成物パターンを有するプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2008−65267(P2008−65267A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245954(P2006−245954)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】