説明

感光性導電性ペースト組成物、電極回路、およびプラズマディスプレイパネル

【課題】高精細パターン化が可能であり、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板もしくは下層に対して安定した密着性を有すると共に、優れた焼成性を有し、焼成後の基板への密着性、層間の密着性に優れ、エッジカールの発生を抑制でき、かつ低いシート抵抗値を示すような、回路パターンを形成することができる、感光性導電性ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤、及び該溶剤に不溶な(D)樹脂粒子を含有することを特徴とする感光性導電性ペースト組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性導電性ペースト組成物、それを用いて得られた電極回路、およびそれを用いて作製したプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高集積化したLSIや各種の電子部品を多数搭載するための多層基板においては、小型化や高密度化、高精細化、高信頼性の要求が高まっている。特に導体回路パターン(信号層、電源層を含む)の微細化は、小型化、高密度化には不可欠な要求として各種の方法が提案されている。
【0003】
代表的な方法としては、薄膜法、メッキ法および厚膜法がある。薄膜法はスパッタ、蒸着で製膜し、フォトリソグラフィー技術を適用することによって解像度10μm以下までの高精細化が可能であるが、この方法による導体被膜は、膜厚を厚くするには長時間を要するなどの限界があるため薄い膜しか得られず、その結果、回路としてのインピーダンスが高くなるという欠点がある。またメッキ法では焼成工程において抵抗体などの厚膜受動素子の形成が困難であるという問題がある。
【0004】
一方、厚膜法ではスクリーン印刷法が知られている。しかしながら印刷法ではスクリーン性能、スキージ硬さ、印刷速度、分散性などの最適化を図っても導体パターンの幅を50μm程度までしか細くすることができず、高精細パターンには限界があった。
【0005】
こうした中でスクリーン印刷法の欠点を改良するため、特許文献1〜5に記載されているように、導体ペーストの組成を最適化したもの、感光性樹脂を添加し、フォトリソグラフィー法により高精細パターン化を図ったもの、および金属粉末の粒子径を最適化したものが提案されているが、微細パターンの形成と低抵抗化を同時に満足するには十分でなかった。また、特許文献6に微細パターンの形成と低抵抗化を同時に満足するペーストについて記載されているが、低抵抗パターンを得るために、30μmを超えるような乾燥厚膜で塗布すると、露光時に光が導電性粉末に散乱、吸収され、透過光が減少して、基板界面が露光不十分となるため、導体パターンの剥がれが生じやすいという問題があった。
【0006】
次に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の前面基板の電極について説明する。
【0007】
PDPはプラズマ放電による発光を利用して映像や情報の表示を行う平面ディスプレイであり、パネル構造、駆動方法によってDC型とAC型に分類される。PDPによるカラー表示は、リブ(隔壁)によって離間された前面ガラス基板と背面ガラス基板に形成された対向する両電極間のセル空間(放電空間)内でプラズマ放電を生じさせ、各セル空間内に封入されているHe、Xe等のガスの放電で発生する紫外線で背面ガラス基板内面に形成された蛍光体を励起し、3原色の可視光を発生させるものである。各セル空間は、DC型PDPにおいては格子状のリブにより区画され、一方、AC型PDPにおいては基板面に平行に列設されたリブにより区画されるが、いずれにおいてもセル空間の区画は、リブによりなされている。以下、添付図面を参照しながら簡単に説明する。
【0008】
図1は、フルカラー表示の3電極構造の面放電方式PDPの構造例を部分的に示している。前面ガラス基板1の下面には、放電のための透明電極3aまたは3bと該透明電極のライン抵抗を下げるためのバス電極4aまたは4bとからなる一対の表示電極2a、2bが所定のピッチで多数列設されている。これらの表示電極2a、2bの上には、電荷を蓄積するための透明誘電体層5が低融点ガラスを含むペーストを印刷、焼成することにより形成され、その上に保護層6(MgO)が蒸着されている。保護層6は、表示電極の保護、放電状態の維持等の役割を有している。一方、背面ガラス基板7の上には、放電空間を区画するストライプ状のリブ8(隔壁)と各放電空間内に配されたアドレス電極9(データ電極)が所定のピッチで多数列設されている。また、各放電空間の内面には、赤色蛍光体膜10a、緑色蛍光体膜10b、青色蛍光体膜10cの3色の蛍光体膜が規則的に配されている。フルカラー表示においては、前記のように3原色の赤色蛍光体膜10a、緑色蛍光体膜10b、青色蛍光体膜10cで1つの画素が構成される。上記PDPでは、一対の表示電極2aと2bの間に交流のパルス電圧を印加し、同一基板上の電極間で放電させるので、「面放電方式」と呼ばれている。また、放電により発生した紫外線は背面ガラス基板7の赤色蛍光体膜10a、緑色蛍光体膜10b、青色蛍光体膜10cを励起し、発生した可視光を前面ガラス基板1の透明電極3a、3bを透して見る構造となっている。
【0009】
前記バス電極4a、4bの形成は、従来、Cr−Cu−Crの3層を蒸着やスパッタリングにより製膜した後、フォトリソグラフィー法でパターニングが行われてきた。しかし、工程数が多く高コストとなるため、最近では、銀などの導電性粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷した後、焼成する方法、あるいは150μm以下の線幅とするためには、感光性導電性ペーストを塗布し、パターンマスクを通して露光した後、現像し、次いで焼成する方法が行われている。しかしながら、上記方法は、焼成工程を経るため、必然的にバス電極4a、4bに反り(カール)が生じやすい。バス電極4a、4bに反りが生じた場合、反った部分の誘電体層の厚みが薄くなるため、ショートしやすくなるという問題が発生する。
【0010】
また、最近、PDPの前面基板においては、画面のコントラストを向上させるために、バス電極を形成する際、表示側となる下層に導電性の劣る黒色導電性ペーストの黒層を印刷し、その上に導電性の良い銀ペーストの白層を印刷し、白黒2層構造の電極を形成することがある。このように白黒2種類の導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、透過光の侵入深さが足りなく、基板との密着性低下や、基板と黒層との間及び、黒層と白層との間の層間剥離が発生しやすくなり、電極の反り(エッジカール)が生じたり、白層のライン幅に対し、黒層のライン幅が極端に小さくなったりする(アンダーカット)という問題点が発生していた。
【特許文献1】昭63−292504号公報
【特許文献2】平02−268870号公報
【特許文献3】平03−171690号公報
【特許文献4】平03−180092号公報
【特許文献5】2004−273205号公報
【特許文献6】平11−31416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、高精細パターン化が可能であり、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板もしくは下層に対して安定した密着性を有すると共に、優れた焼成性を有し、焼成後の基板への密着性、層間の密着性に優れ、エッジカールの発生を抑制でき、かつ低いシート抵抗値を示すような、回路パターンを形成することができる、感光性導電性ペースト組成物を提供することにある。さらに本発明の目的は、このような感光性導電性ペースト組成物から高精細の電極回路、特に前面基板に形成されるバス電極の上層(白層)電極回路を形成したPDPを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明によれば、感光性導電性ペースト組成物が提供され、その基本的な態様は、(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤、及び該溶剤に不溶な(D)樹脂粒子を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、膜中の光透過性を向上することで、高精細であり、かつ、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板もしくは下層に対して安定した密着性を有すると共に、優れた焼成性を有し、焼成後の基板への密着性、層間の密着性に優れ、エッジカールの発生を抑制でき、かつ低いシート抵抗値を示すような回路パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤、及び該溶剤に不溶な(D)樹脂粒子を含有することを特徴とする感光性導電性ペースト組成物に関する。
【0015】
(A)感光性有機成分とは感光性有機化合物のことであり、含有率がペースト組成物の5質量%以上、より好ましくは10〜45質量%含有することが光に対する感度の点で好ましい。
【0016】
本発明の感光性導電性ペースト組成物に含まれる(A)感光性有機成分としては、光不溶化型のものと光可溶化型のものがある。光不溶型のものとしては、(1)分子内に不飽和基などを1つ以上有する官能性のモノマー、オリゴマー、ポリマーを含有するもの、(2)芳香族ジアゾ化合物、芳香族ジアド化合物、有機ハロゲン化合物などの感光性化合物を含有するもの、(3)ジアゾ系アミンとホルムアルデヒドとの縮合物などいわゆるジアゾ樹脂といわれるもの等ある。
【0017】
また、光可溶型のものとしては、(4)ジアゾ化合物の無機塩や有機酸とのコンプレックス、キノンジアゾ類を含有するもの、(5)キノンジアゾ類を適当なポリマーバインダーと結合させたもの等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、上記のすべてを用いることができるが、取り扱いの容易性や品質設計の容易性においては、上記(1)が好ましい。
【0019】
分子内に官能基を有する感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。具体的には、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられるが、熱分解性が良いものが特に好ましく、具体的には2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどのような、水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのような、アルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。これら以外に不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることによって、感光後の現像性をさらに向上させることができる。
【0021】
不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0022】
一方、分子内に官能基を有する感光性オリゴマーや感光性ポリマーの例としては、前述のモノマーの内、すくなくとも1種類を重合して得られたオリゴマーやポリマーの側鎖または分子末端に官能基を付加させたものなどを用いることができる。少なくともアクリル酸アルキルあるいはメタクリル酸アルキルを含むこと、より好ましくは、少なくともメタクリル酸メチルを含むことによって、熱分解性の良好な重合体を得ることができる。
【0023】
好ましい官能基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0024】
このような官能基をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。
【0025】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルおよびイソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0026】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。
【0027】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05から1.0モル当量付加させることが好ましい。また、不飽和カルボン酸等の不飽和酸を共重合することによって、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、前記したものと同様、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸およびこれらの酸無水物などが挙げられる。
【0028】
このようにして得られた側鎖にカルボキシル基等の酸性基を有するポリマーもしくはオリゴマーの酸価(mgKOH/g)は、50から180、さらには50から120の範囲が好ましい。酸価が50未満であると、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が180を超えると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるため、現像液濃度を濃くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られないことがある。
【0029】
さらに有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などの非感光性ポリマーを加えてもよい。
【0030】
感光性モノマーを感光性オリゴマーや感光性ポリマーに対して0.05から10質量倍量用いることが好ましい。より好ましくは0.1から2.0質量倍量である。10質量倍量を超えると感光性導電ペーストの粘度が小さくなり、ペースト中の導電性粉末等の分散性が悪くなるため好ましくない。0.05質量倍量未満では、未露光部の現像液への溶解性が悪くなるため好ましくない。
【0031】
光重合開始剤としては、ラジカル種を発生するものから選ぶことができる。光重合開始剤の具体的な例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルプロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられるが、熱分解性が良いものが特に好ましく、具体的にはベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが好ましい。
【0032】
本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性有機成分全量に対し、0.1から40質量%の範囲で添加され、より好ましくは、2.0〜20質量%である。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎる場合には、露光部の残存率が小さくなるおそれがある。
【0033】
その他、感光性有機成分には、重合禁止剤が含まれていてもよい。
【0034】
重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソヒドロキシアミン、N−ニトロソヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その添加量は、感光性導電性ペースト全量に対して、0.1〜5.0質量%、より好ましくは、0.2〜3.0質量%である。重合禁止剤の量が少なすぎれば、保存時の熱または/および光的な安定性を向上させる効果が発揮されず、重合禁止剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0035】
また、本発明のペースト組成物においては、可塑剤、酸化防止剤等を用いても良い。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコールおよびグリセリンなどが用いられる。酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。
【0036】
(B)導電性粉末としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属類単体もしくはそれらの合金もしくはそれらの複合体または混合体を用いることができる。
【0037】
前記(B)導電性粉末の形状は、球形状、フレーク状、デンドライト状な種々のものを用いることができるが、光特性、分散性を考慮すると球状であることが好ましい。球形状であると露光時に紫外線の散乱が少ないので高精細のパターンが得られ、照射エネルギーが少なくて済む。
【0038】
これらの導電性粉末の体積基準分布の中心粒子径は0.003〜5.0μmが好ましい。0.003〜1.0μmのナノ粒子範囲も、膜の透過性を向上し、高精細化が可能である。粒子径が0.003μm未満と小さくなると粒子の製造が難しくなる。一方、粒子径が5.0μmを超えて大きくなると印刷後の回路パターンが粗くなり、パターン精度が低下し、ノイズ発生の原因になる。導電性粉末の体積基準分布の中心粒子径は、コールターカウンター法、光子相関法、レーザー回折法およびレーザードップラー法等の体積基準分布の50%粒子径より求めることができる。
【0039】
本発明では、(B)導電性粉末をペースト組成物中に40〜90質量%含有、より好ましくは50〜85質量%含有することが導電性の点で好ましい。
【0040】
(C)溶剤としては、本発明のペースト組成物を基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整するために有機溶剤が好ましく使用できる。また、溶媒は、揮発性と使用するバインダー樹脂の溶解性を主に考慮して選定する。バインダー樹脂に対する溶媒の溶解性が低いと固形分比が同一でも塗工液の粘度が高くなってしまい、塗布特性が悪化するという傾向がある。有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、ベンジルアルコール、1−ブトキシ−2−プロパン、1,2−ジアセトキシプロパン、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−エトキシプロパン、(1,2−メトキシプロポキシ)−2−プロパノール、(1,2−エトキシプロポキシ)−2−プロパノール、2−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラフルフリルアルコール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、シクロヘキサンノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、1−メチルペンチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。本発明では有機溶剤をペースト組成物中に5〜40質量%の範囲で含まれるのが好ましく、より好ましくは5〜30質量%の範囲である。有機溶剤が5質量%未満ではペーストの粘度が高くなり、塗布が困難となる。また、有機溶剤が40質量%を超えると分散粒子の沈降が速くなり、ペースト組成物の組成を安定化することが困難になり、また、乾燥に多大なエネルギーと時間を要する等の問題を生じる傾向がある。
【0041】
前記溶剤に不溶な(D)樹脂粒子としては、例えば、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。本発明ではアクリル樹脂、ポリスチレンおよびスチレン/ポリジビニルベンゼン共重合体が、ペースト内における分散性の点から好ましい。なお、樹脂粒子は、中空状であっても良い。
【0042】
(D)樹脂粒子の屈折率は1.48〜1.70であることが好ましい。より好ましくは1.48〜1.60である。屈折率が1.48未満や、屈折率が1.70より大きい樹脂粒子を用いると、樹脂粒子により光が散乱され、透過性が落ち、下層(基板)界面部が露光不十分となるため、導体パターンが剥がれやすくなる等の問題が生じる場合がある。
【0043】
(D)樹脂粒子の形状は、球形状、フレーク状など種々のものを用いることができるが、光特性、分散性を考慮すると球形状のものを用いることが好ましい。球形状は、略球形であればよいが、具体的には球形率が80個数%以上であることが好ましく、より好ましくは球形率が90個数%以上である。球形率は、顕微鏡観察において、球形もしくは楕円形の形状を有する粒子の割合であり、光学顕微鏡において、円形、楕円形として観察できる。
【0044】
(D)樹脂粒子の体積基準分布の中心粒子径は、0.1〜10μmである。より好ましくは、1.0〜5.0μm、さらに好ましくは、1.0〜3.0μmである。0.1μmに満たない場合、ペースト組成物を作製する際に凝集が生じ、露光時の散乱が大きくなり、精細なパターンの形成が困難になる傾向にある。一方、中心粒子径が10μmを超えると良好な印刷面が得にくく、また均質な乾燥膜を得ることが難しくなる。樹脂粒子の体積基準分布の中心粒子径は、コールターカウンター法、光子相関法およびレーザー回折法等の体積基準分布の50%粒子径より求めることができる。
【0045】
樹脂粒子は、溶媒に不溶であることが必要であるが、樹脂粒子の種類、溶媒の種類によっては、膨潤しやすいものもあるため、注意が必要である。樹脂粒子の膨潤が小さい場合、溶媒添加前の中心粒子径を持つ樹脂粒子を用いても同様の効果が見られるが、樹脂粒子の膨潤が大きい場合、効果が見られにくい場合がある。
【0046】
また、(D)樹脂粒子は、ペースト組成物中に0.1〜20質量%含有することが光透過性の点で好ましい。導電性粉末に対し、0.1〜3.0体積倍量含有することが好ましい。より好ましくは0.5〜2.0体積倍量含有することである。0.1体積倍量未満の添加量では、光透過性の向上の効果が見られず、3.0体積倍量を超えた添加量では、所望の導体パターン膜厚(シート抵抗値)に対し、要する印刷膜厚が厚くなりすぎてしまう傾向がある。
【0047】
その他に感光性導電性ペースト中に、ガラスフリットを含有することも可能である。ガラスフリットは導電性粉末をガラス基板上に焼き付け、また導電性粉末を焼結するための焼結助剤の効果があるためである。
【0048】
ガラスフリットのガラス転移温度(Tg)および軟化点(Ts)は、それぞれ400〜500℃、450〜550℃であることが好ましい。より好ましくはTgおよびTsがそれぞれ430〜500℃、460〜530℃である。Tg、Tsがそれぞれ400℃、450℃以上であると、ポリマーやモノマーなどの感光性有機化合物が蒸発した後にガラス焼結が始まり、有機化合物の脱バインダー性に優れ、電極剥がれが生じず、緻密かつ低抵抗の導体膜が得られる点で好ましい。また、Tg、Tsがそれぞれ500℃、550℃以下であると、600℃以下の温度で焼き付けたときに、導体膜とガラス基板とで十分な接着強度や緻密な膜が得られる点で好ましい。
【0049】
ガラスフリットの粒子径は、体積基準分布の中心粒子径が0.3〜3.0μm、90%粒子径が1.0〜5.0μmおよびトップサイズが10μm以下であることが好ましい。体積基準分布の中心粒子径、90%粒子径がそれぞれ0.3μm、1.0μm未満ではガラスフリットの粒子サイズが小さくなり紫外線が未露光部まで散乱されやすく、現像時に残膜が残ることがある。体積基準分布の中心粒子径、90%粒子径およびトップサイズがそれぞれ3.0μm、5.0μm、10μmを超えると、粗大なガラスフリットと導電粉末との熱膨張係数が異なることにより、特に10μm以下の薄膜では、導体膜の接着強度が低下し膜剥がれがおこることがある。また、粗大ガラスフリットが導体膜中に残留し、接着強度が低下する傾向が見られる。
【0050】
ガラスフリットの50〜400℃昇温過程での熱膨張係数αが50´103/47〜100 ×103/47/Kであると、ガラス基板上に焼き付けた導体膜と基板とガラスフリットの熱膨張係数の違いによる膜剥がれの抑制の点で好ましい。
【0051】
ガラスフリットの組成としては、NaO、KOおよびLiOを実質的に含有しないアルカリフリーのガラスフリットであることが好ましい。含有した場合にもガラス組成全体に対して0.5質量%以下である。これを超えて含有したガラスを用いた場合、感光性有機成分のゲル化反応によるペースト粘度上昇や回路パターン形成が出来ないという問題が生じる。
【0052】
ガラスフリットを添加する場合、その添加量は、感光性導電性ペースト全量に対して、0.5〜5.0質量%、より好ましくは、0.5〜3.0質量%である。ガラスフリットの量が少なすぎれば、電極膜との強固な接着強度が得られにくい。ガラスフリットの量が多すぎれば、導電性粉末とガラスフリットの熱膨張係数の違いによる回路パターン剥がれが起こりやすくなったり、高抵抗なパターンとなったりしてしまう。
【0053】
また、本発明のペースト組成物においては、焼成時の形状を安定させるために耐火物フィラー等を用いても良い。耐火物フィラーとしては、500〜650℃程度の焼成温度で軟化しないものが広く使用でき、軟化点が650℃以上の高軟化ガラスやアルミナ、チタニア、マグネシア、カルシア、コーディエライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミックス粉末が例示できる。耐火物フィラーの粒子径は、体積基準分布の中心粒子径が0.2〜5.0μm、最大粒子径が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは、中心粒子径が0.2〜3.0μm、最大粒子径が5.0μm以下である。
【0054】
本発明のペースト組成物は、各種成分を所定の組成となるように調合した後、プラネタリーミキサー等のミキサーによって予備分散した後、3本ローラーなどの分散機で分散・混練手段によって均質に作製する。
【0055】
ペーストの粘度は導電性粉末、感光性有機成分、樹脂粒子、溶剤およびガラスフリットの組成、可塑剤、沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は、通常2000〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えば、基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、2000〜5000cpsが好ましい。焼結した基板にスクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜40μmを得るには、2万〜20万cpsが好ましい。またグリーンシートに塗布する場合は、粘度は5万〜20万cpsが好ましい。これは低粘度であると、ペーストをグリーンシートに印刷、露光後、現像時にグリーンシート内部へ導電性粉末が浸透するため本発明の微細なパターンを得るのが難しくなるからである。
【0056】
次に、感光性導電性ペーストをセラミックス、グリーンシート、600℃以上の耐熱性ガラスあるいは焼結後のセラミック基板にスクリーン印刷法で塗布する。印刷厚みはスクリーンのメッシュ、ペーストの粘度を調整することによって任意に制御できるが、通常3.0〜150μmである。3.0μm未満の膜厚を均質に製作することは困難であり、また150μmを超えると紫外線露光において光透過が難しくなるのでパターン精度が低下する。本発明の感光性導電性ペーストの場合、露光、現像が微細にできる好ましい厚みの範囲は、3.0〜50μmである。3.0μm未満になると印刷法では均質な厚みを得ることが難しくなる。また50μmを超えると回路パターン精度が低下し、線幅/線間隔が50μm/50μm以下のパターンが得られにくくなる。
【0057】
なお、感光性導電性ペーストをガラスやセラミックスの基板上に塗布する場合、基板と塗布膜との密着性を高めるために基板の表面処理を行うこともできる。表面処理は、UV−オゾン処理、オゾン−プラズマ処理等で表面清浄化を行っても良いし、基板処理液をスピナーなどで基板上に均一に塗布した後に80〜140℃で10〜60分間乾燥することによっても容易に行うことができる。表面処理液としては、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど、あるいは有機金属、たとえば有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウムなど有機溶媒、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどで0.1〜5.0質量%濃度に希釈したものを用いることができる。
【0058】
次に、基板上に塗布したペーストの膜を乾燥する。通常、70〜150℃で、通風オーブンや赤外線乾燥炉など任意なものを用いて、数分から1時間加熱して溶剤類を蒸発させることにより行う。
【0059】
ペースト塗布膜を乾燥した後、フォトリソグラフィー法により、回路パターンを有するフィルムあるいはクロムマスクなどのマスクを用いて紫外線を照射(露光)して、感光性導電性ペーストを硬化する。この際、使用される活性光源は例えば紫外線、電子線、X線などが挙げられるが、これらの中で紫外線が好ましく、その光源としてはたとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。なかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は導体膜の厚みによって異なるが、通常、5〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて1〜30分間露光を行う。
【0060】
次に現像液を用いて露光によって硬化していない部分を除去し、いわゆるネガ型の回路パターンを形成する。現像は浸漬法やスプレー法で行う。現像液としては、前記の側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤の混合物を溶解可能な有機溶媒を使用できる。また該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。またアクリル系共重合体の側鎖にカルボキシル基が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリ水溶液の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがあげられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されずに、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部を腐食・浸食させるおそりがありあまりよくない。
【0061】
本発明の感光性導電性ペーストの調合、印刷、露光、現像工程では紫外線を遮断できるところで行う必要がある。紫外線を遮断しない場合、ペースト塗布膜が紫外線によって硬化してしまい、本発明の効果を発揮できる導体膜が得られない。
【0062】
現像後、塗布膜を空気中で焼成する。焼成条件としては特に限定されないが、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物あるいは溶媒などの有機物が完全に酸化、蒸発する好ましい条件として350〜550℃で0.25〜3時間保持後、550〜1000℃で焼成し、下層もしくは基板上に焼き付けることが好ましい。
【0063】
本発明の感光性導電性ペーストを用いて回路パターンを形成した場合、たとえば導体膜の厚みが5.0〜50μmにおいて導体の線幅が10μm以上、導体間の線間隔10μm以上のものが得られる。
【0064】
一方、本発明のペースト組成物はプラズマディスプレイの前面板にも用いることができる。前面板の製造方法について以下に述べる。
【0065】
基板としては、ソーダガラスの他にプラズマディスプレイ用の耐熱ガラスである“PP−8”(日本電気硝子社製)や、“PD200”(旭硝子社製)を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1.0〜5.0mmのものを用いることができる。
【0066】
まず、ガラス基板上に、インジウム−スズ酸化物(ITO)を蒸着し、フォトエッチング法によりパターン形成する。次いで、黒色電極用の黒色導電性ペーストを印刷する。黒色導電性ペーストは、有機バインダー、黒色顔料、導電性粉末、ガラスフリットと、フォトリソグラフィー法で用いる場合は感光性成分が主成分となる。黒色顔料としては、金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物としては、チタンブラックや、銅、鉄、マンガンの酸化物やそれらの複合酸化物、コバルト酸化物などがあるが、ガラスと混合して焼成したときに退色が少ない点でコバルト酸化物が優れている。導電性粉末としては、金属粉末または金属酸化物粉末が挙げられる。金属粉末としては電極材料として通常用いられる金、銀、銅、ニッケルなどを用いることが出来る。この黒色電極は抵抗率が大きいので、抵抗率の小さい電極を作製してバス電極を形成する必要がある。そこで、本発明の電極ペーストを、黒電極ペーストの印刷面上に印刷し、乾燥する。通常、乾燥は、通風オーブンや赤外線乾燥炉など任意なものを用いて70〜150℃で、数分から1時間加熱して溶剤類を蒸発させることにより行う。得られた乾燥膜を、フォトリソグラフィー法により、回路パターンを有するフィルムあるいはクロムマスクなどのマスクを用いて、超高圧水銀灯により、紫外線を照射して一括露光する。露光条件は黒電極膜と白電極膜の厚みによって異なるが、通常、5〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて1〜30分間露光を行う。次に現像液を用いて露光によって硬化していない部分を除去し、いわゆるネガ型のバス電極パターンを形成する。現像は浸漬法やスプレー法で行う。現像液としては、前記の側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤の混合物を溶解可能な有機溶媒を使用できる。また該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。またアクリル系共重合体の側鎖にカルボキシル基が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリ水溶液の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがあげられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜10.0質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されずに、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部を腐食・浸食させるおそりがありあまりよくない。バス電極パターンを形成後、焼成する。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類により異なるが、空気中や窒素、水素等の雰囲気下で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やローラー搬送式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、使用する樹脂が十分に脱バインダーする温度で行うのが好ましい。通常、430〜650℃での焼成を行う。焼成温度が低すぎると樹脂成分が残存しやすく、高すぎるとガラス基板に歪みが生じ割れてしまうことがある。
【0067】
次に、透明誘電体ペーストを用いて透明誘電体層を形成する。透明誘電体ペーストは、有機バインダー、有機溶剤、ガラスが主成分であるが、適宜可塑剤などの添加物を加えても良い。透明誘電体層の形成方法は特に限定されないが、例えば,スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーターなどにより、電極形成基板上に透明誘電体ペーストを全面塗布または、部分的に塗布した後に、通風オーブンや赤外線乾燥炉など任意なものを用いて乾燥し、厚膜を形成することができる。また、透明誘電体ペーストをグリーンシート化し、これを電極形成基板上にラミネートすることも可能である。厚みは、10〜50μmが好ましい。そして、焼成炉にて焼成を行う。
【0068】
最後に、保護膜を形成する。保護膜としてはMgO、MgGd、BaGd、Sr0.6Ca0.4Gd、Ba0.6Sr0.4Gd、SiO、TiO、Alから少なくとも1種類用いることができるが、特にMgOが好ましい。保護膜の作製方法であるが、電子ビーム蒸着やイオンプレーティング法など公知の技術が好適である。
【0069】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、下記の実施例において濃度はとくに断らない限り質量%で表す。
【実施例】
【0070】
以下に示す(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤、該溶剤に不要な(D)樹脂粒子を用意し、表1に示す割合で感光性導電性ペースト1〜17を作製した。
(A)感光性有機成分
ポリマー;側鎖にカルボキシル基とエチレン不飽和基を有するアクリル系共重合体で、メタクリル酸(MAA)40質量%、メチルメタクリレート(MMA)30質量%、スチレン30質量%からなる共重合体のカルボキシル基に対して、0.4当量のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加させたもの。
感光性モノマー;トリメチロールプロパントリアクリレート
光重合開始剤;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパン
増感剤;ジエチルチオキサントン
可塑剤;ジブチルフタレート
以上を、ポリマー:感光性モノマー:光重合開始剤:増感剤:可塑剤を2:1:0.1:0.1:0.1の質量比で混合した。
(B)導電性粉末
B1;Ag粉、単分散粒状、体積基準分布の中心粒子径3.2μm
B2;Ag粉、球状、球形率95個数%、体積基準分布の中心粒子径2.2μm
B3;Ag粉、単分散粒状、体積基準分布の中心粒子径0.05μm
(C)溶剤
ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(D)樹脂粒子
D1;スチレン/ジビニルベンゼン共重合体粒子、体積基準分布の中心粒子径0.1μm屈折率 1.57
D2;スチレン/ジビニルベンゼン共重合体粒子、体積基準分布の中心粒子径1.5μm、屈折率 1.57
D3;スチレン/ジビニルベンゼン共重合体粒子、体積基準分布の中心粒子径15.0μm、屈折率 1.57
D4;PMMA粒子、体積基準分布の中心粒子径3.0μm、屈折率 1.50
D5;ポリスチレン粒子、体積基準分布の中心粒子径3.0μm、屈折率 1.59
D6;ポリビニルアセテート粒子、体積基準分布の中心粒子径3.0μm、屈折率 1.47
その他
ガラスフリット;酸化ビスマス(50質量%)、二酸化珪素(20質量%)、酸化硼素(15質量%)、酸化亜鉛(10質量%)、酸化アルミニウム(3質量%)、酸化ジルコニウム(2質量%)の組成を有し、体積基準分布の中心粒子径が0.9μm、90%粒子径が1.8μm、トップサイズが3.8μm、50から350℃の昇温過程における熱膨脹係数が76´103/47/Kのもの。
【0071】
感光性導電性ペーストの製造および電極回路形成は次のとおり行った。
【0072】
溶剤と感光性有機成分のポリマーを混合し、攪拌しながら80℃で加熱し、均質に溶解させた。ついで溶液を室温まで冷却し、溶液に、感光性有機成分の感光性モノマー、光重合開始剤、増感剤、可塑剤、樹脂粒子を混合、ミキサーで混練し、有機ビヒクルを得た。
【0073】
次に、得られた有機ビヒクル、銀粉末とガラスフリットを混合し、ミキサーで混練した後、3本ローラーで混練して、ペーストを作製した。(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤、該溶剤に不溶な(D)樹脂粒子、およびガラスフリットの混合比(質量%)を表1に示す。
【0074】
実施例1〜17
上述の感光性導電ペースト1〜14をステンレスワイヤーの120メッシュのスクリーンを用いてガラス基板(旭硝子株式会社製PD200、340´260´1.8mm)上にベタ印刷し、100℃で30分間乾燥した。乾燥後の塗布膜の厚みは、導電性粉末、ポリマーおよび感光性モノマーの量、種類によって異なるが、120メッシュで28〜37μmであった。
【0075】
上記で作製した塗布膜を10〜70μmの高精細パターンを有するクロムマスクを用いて、膜面から15mW/cmの出力の超高圧水銀灯で積算光量が700mJ/cmとなるように露光した。次に25℃に保持したモノエタノールアミンの0.2重量%の水溶液を用いて現像を行い、水洗した。
【0076】
最後に空気中にて昇温し、580℃で15分間焼成し電極回路パターンを得た。
【0077】
次に、各実施例で得られた電極膜について次の評価を行った。
【0078】
焼成後の膜厚、解像度、電極ライン端部のエッジカールの量、シート抵抗、比抵抗、密着性を測定し評価した。結果を表2に示す。
【0079】
なお、膜厚は、走査電子顕微鏡(SEM)にて断面を観察して求めた。解像度は、導体膜を光学顕微鏡観察し、ラインが直線で重なり、よれが無く、かつ再現が得られるライン間隔を評価した。エッジカールは走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し求めた。比抵抗はシート抵抗を測定し、膜厚から計算で求めた。密着性はニチバン社製粘着テープ(セロテープ(登録商標)型番CT−12)でピーリングを行い、パターンの剥離がないかどうかで評価した。評価基準は、『×』:パターン剥離がある。『○』:パターン剥離が無い。
【0080】
実施例18〜31
ガラス基板(旭硝子株式会社製PD200、340´260´1.8mm)上に、ポリエステルワイヤーの300メッシュのスクリーンで下記組成の黒ペーストをベタ印刷し、120℃で20分間乾燥した。次いで、この被膜上に上述の感光性導電ペースト1〜14をポリエスエルワイヤーの255メッシュのスクリーンで印刷し、100℃で30分間乾燥し、白黒2層の被膜を形成した。
【0081】
黒色導電性ペースト組成物
導電性黒色顔料:四三酸化コバルト(Co) 10.0質量%
ガラスフリット:Bi−B系 30.0質量%
ポリマー:側鎖にカルボキシル基とエチレン不飽和基を有するアクリル系共重合体で、メタクリル酸(MAA)40質量%、メチルメタクリレート(MMA)30質量%、スチレン30質量%からなる共重合体のカルボキシル基に対して、0.4当量のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加させたもの 15.0質量%
感光性モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート 10.0質量%
光重合開始剤:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパン 5.0質量%
増感剤:ジエチルチオキサントン 5.0質量%
重合禁止剤:ρ−メトキシハイドロキノン 0.5質量%
可塑剤:ジブチルフタレート 0.5質量%
溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテル 24.0質量%
上記で作製した塗布膜にクロムマスクを用いて、膜面から15mW/cmの出力の超高圧水銀灯で積算光量が300mJ/cmとなるようにパターン露光した。次に25℃に保持した炭酸ナトリウムの0.4重量%の水溶液を用いて現像し、水洗した。
【0082】
最後に空気中にて昇温し、580℃で15分間焼成し回路パターンを得た。
【0083】
次に、各実施例で得られた電極パターンについて次の評価を行った。
【0084】
現像後と焼成後のライン形状、電極端部のエッジカールの量、密着性、現像後のアンダーカット量を測定し評価した。結果を表3に示す。
【0085】
なお、現像後と焼成後のライン形状は、電極膜側から光学顕微鏡で観察し、ラインのよれと現像残さの有無を評価した。評価基準は、『×』:ラインによれが見られたり、現像残さが見られたりする。『○』:ラインによれがなく、現像残さが見られない。
【0086】
エッジカールは走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し求めた。
【0087】
密着性はニチバン社製粘着テープ(セロテープ(登録商標)型番CT−12)でピーリングを行い、パターンの剥離がないかどうかで評価した。評価基準は、『×』:パターン剥離が下層と上層との間にある。『△』:パターン剥離が上層と下層との間では見られないが、基板と下層との間にある。『○』:パターン剥離が無い。
【0088】
アンダーカット量は、一括露光し現像後の基板において、基板面側からの白層のライン幅と黒層のライン幅の差を光学顕微鏡で観察し評価した。
【0089】
比抵抗はシート抵抗を測定し、膜厚から計算で求めた。
【0090】
比較例1〜3、4〜6
上記実施例で用いた(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤を用意し、(D)樹脂粒子を含まない表1に示す組成の感光性導電性ペースト15〜17を作製した。比較例1〜3においては実施例1と同様に電極膜を作製し、評価を行った。比較例4〜6においては実施例18と同様に2層膜を作製し、評価を行った。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】フルカラー表示の3電極構造の面放電方式PDPの構造例を部分的に示した図である。
【符号の説明】
【0095】
1 前面ガラス基板
2a、2b 表示電極
3a、3b 透明電極
4a、4b バス電極
5 透明誘電体層
6 保護層
7 背面ガラス基板
8 リブ
9 アドレス電極
10a 赤色蛍光体膜
10b 緑色蛍光体膜
10c 青色蛍光体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光性有機成分、(B)導電性粉末、(C)溶剤、及び該溶剤に不溶な(D)樹脂粒子を含有することを特徴とする感光性導電性ペースト組成物。
【請求項2】
上記(D)樹脂粒子の体積基準分布の中心粒子径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の感光性導電性ペースト組成物。
【請求項3】
感光性導電性ペースト組成物中に含まれる上記(D)樹脂粒子が、上記(B)導電性粉末に対し0.1〜3.0体積倍量含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性導電性ペースト組成物。
【請求項4】
上記(D)樹脂粒子の屈折率が1.48〜1.70であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性導電性ペースト組成物。
【請求項5】
上記(B)導電性粉末の体積基準分布の中心粒子径が0.003〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性導電性ペースト組成物。
【請求項6】
上記(D)樹脂粒子がアクリル樹脂、ポリスチレンまたはスチレン/ジビニルベンゼン共重合体からなる粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性導電性ペースト組成物。
【請求項7】
上記(A)感光性有機成分が側鎖にカルボキシル基を有するポリマーまたはオリゴマーを含んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性導電性ペースト組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性導電性ペースト組成物の焼成物から形成されている電極回路。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性導電性ペースト焼成物から前面基板の電極回路が形成されてなるプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−245704(P2009−245704A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89941(P2008−89941)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】